JP2009185023A - 粉末組成物及びその製造方法、並びにこれを含む食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アスタキサンチン等を含む、少なくとも1種の機能性油性成分と、(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、(B)トレハロースを含む包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。該粉末組成物は、食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物に使用することができる。
【選択図】なし
Description
汎用的に用いる粉末化組成物の用途としては、粉末油脂が知られており、応用例として、パン製品・冷凍食品・洋菓子・和菓子・フライ製品・麺製品などを挙げることができる。また、別の例としてフレーバー(香料)が知られており、応用例として、チューイングガム・粉末飲料・粉末デザート・各種トイレタリー製品・繊維などをあげることができる。
特許文献4には、粉末香料の香気の保留性や酸化安定性を改善するために、アラビアガム、加工澱粉、サイクロデキストリン等の賦形剤に加えてパラチノースやラフィノースを添加することが開示されている。
特許文献5には、粉末香料におけるフレーバーの安定性、保留性を改善するために乳化剤に加えてトレハロースを用いる方法が開示されている。
また、特許文献6には、トレハロースとカゼイン等のタンパク質を含む保護コロイドを用いてカロテノイドの懸濁液を作り、その懸濁液を乾燥し、乾燥粉末を製造する方法が開示されている。
従って、本発明は、乾燥工程における収量が高く生産効率に優れ、且つ良好な長期保存安定性を有する粉末組成物と、これを用いた食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物を提供することを目的とする。
[1] 少なくとも1種の機能性油性成分と、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。
[2] 前記粉末組成物を1質量%の水溶液にしたときに得られるエマルション粒子の体積平均粒子径が10nmから200nmである[1]に記載の粉末組成物。
[3] 前記粉末組成物中の全糖類の質量に対する上記(B)成分の割合が20〜70質量%の範囲にある[1]又は[2]記載の粉末組成物。
[5] 前記(A)成分が、イヌリン及びラフィノースから選択された少なくとも1つである[1]〜[4]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
[7] 前記機能性油性成分がカロテノイド色素である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
[8] 前記カロテノイド色素が、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然抽出物である[7]に記載の粉末組成物。
[9] 前記カロテノイド色素が、ヘマトコッカス藻色素抽出物である[7]記載の粉末組成物。
[11] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物。
本発明の粉末組成物では、(A)成分としての特定の多糖類と、(B)成分としてのトレハロースとの組み合わせを含む包括剤を含むので、噴霧乾燥における乾燥性に優れ且つ粉末化過程や粉末保存時において油滴を保護することができる。また、経時保存後の粉末組成物を再溶解したときには長期保存後であっても再分散時の粒径を微細に維持して、分散液の透明性を良好に維持すると共に、且つ機能性油性成分の水分散性を良好なものにすることができる。この結果、製造工程における装置への付着損失が極めて少なく、且つ長期保存時に良好な保存安定性を示すことができる。
以下、本発明の粉末組成物について説明する。
本発明に用いられる機能性油性成分とは、食品、化粧品、医薬品に使用した際に有用な効果を示す油性成分を表す。化学構造面からは、油脂類、炭化水素、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などがある。また、それらの混合物である、各種の植物由来油、動物由来油も含まれるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロテノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造している。
これらの例として、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
これらのアスタキサンチン類は、超臨界炭酸ガスを用いて天然素材から抽出したものが、粉末としたときの臭気の点でより好ましい。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとはエステルの種類及びその含有量の点で異なることが知られている。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7、ヤマハ発動機製のアスタキサンチンPURESTA等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、抽出コストの観点から好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
このうちDHAは、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)の略称であり、6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6)の総称であるが、通常は生体にとって重要な4、7、10、13、16、19位に全てシス型の二重結合をもつ。
通常、DHAは魚油に多く含まれ、摂取することで「健康になる」または「頭がよくなる」としてサプリメントや菓子などに添加されている。DHAは精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。
DHAもやはり油脂であるため、生体内での吸収を高めるために予め乳化して微細な油滴にしておくことが好ましい。また、DHAは保存中に経時劣化し易く、経時劣化により風味が非常に悪くなることが知られている。本発明の粉末組成物に含めることによって、良好な状態で保護されて油脂の劣化や風味の低下を抑えることができると共に、容易に水に溶けるため、清涼飲料や牛乳などの水性組成物中の成分として幅広い活用が可能となる。また、本発明の粉末組成物では、DHA含量を容易に高濃度化することができると共に、水中に再分散した際の粒径も充分に小さいものとすることができるため、液の透明度を良好にすることができる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
本発明にかかるエマルション組成物における機能性油性成分の含有量は、乳化粒径の微細化と生産効率の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
本発明の粉末組成物は、(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類と、(B)トレハロースと、を含む包括剤を含有する。
本発明における包括剤は、上記(A)成分及び(B)成分を組み合わせて含むため、良好な非吸湿性を示し、エマルション組成物の乾燥を適切に行うことができる。この結果、乾燥工程において製造装置などの壁面への付着量を抑えることができる。また、乾燥時の粉末化過程や粉末保存時に油滴を保護することができる。これにより、油滴粒径を長期間の保存期間にわたって微細な状態に保ち、優れた長期安定性を示すことができる。
ガラクトース、フルクトース以外の糖類を含む場合、その含有比率は乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点からガラクトース単位とフルクトース単位を合わせた数に対して重合度で50%以下であり、好ましくは30%以下である。
本発明におけるイヌリンは、末端にグルコースを1個有するフルクトースポリマーまたはフルクトースオリゴマーである。イヌリンは広く自然界に存在することが知られており、チコリ、キクイモ、ダリア、ニンニク、ニラ、タマネギ、アガベなどに多く含まれる。イヌリンの詳細に関してはHandbook of Hydrocolloids, G.O.Phillips,P.A.Williams Ed.,397-403,(2000) CRC Pressに記載されている。一般に、ブドウ糖単位をG、果糖単位をFとして鎖長を表現する。本発明のイヌリンには、GFで表記されるスクロースは含まれない。通常天然から抽出されるイヌリンは、GF2(ケストース)、GF3(ニストース)、GF4(フラクトシルニストース)からGF60程度までのポリマーかオリゴマー、またはそれらの混合物である。
また、本発明における果糖オリゴマー及びポリマーには、β−フルクトフラノシダーゼのフラクタン転移活性を利用して、ショ糖(スクロース)から調製するものも含むことができる。この例としては、フジFF(フジ日本精糖(株)製)、GF2(明治製菓(株))を挙げることができる。
スタキオースは、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−グルコースが連なった4糖であり、自然界には大豆等の豆類やウリ科植物に比較的多く含まれる。スタキオースの販売例としては、SFSオリゴ糖(我流本舗)等が挙げられる。
また、ベルパスコースは、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−フルクトースの順に並んだ5糖であり、ソラマメ等の豆類に含まれる。スタキオースもベルバスコースもラフィノースと同様、植物より熱水抽出され、この水溶液は濃縮され、スプレードライにより粉末化される。
本発明において、包括剤は、乳化時に添加されていることが好ましいが、その一部または全部を乳化後に添加することもできる。また、ガラクトース/フルクトース含有多糖類とトレハロースとは同時に配合してもよく、別個に配合してもよい。
本発明の粉末組成物は、粉末化する前に機能性油性成分を含むエマルション組成物中の油相を水性媒体中に乳化するため、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選択された少なくとも1種の乳化剤を含有することが好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
本発明で使用可能なリン脂質としては、レシチン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスファジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができ、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンも挙げることができる。またこれらリン脂質の由来は特に限定されず、例えばダイズ油等の植物油、卵黄等の動物由来のもの等が用いられ、特に精製したものが好適である。
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
本発明で用いることができるこれらのリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
本発明における界面活性剤としては、乳化安定性の観点から、HLB10〜HLB19のものが好ましく、HLB12〜HLB17のものがより好ましい。
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
前記両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
また、グリセリン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL MGO、NIKKOL DGO、NIKKOL MGS、NIKKOL Fの各シリーズ、花王(株)製エキセル シリーズなどを挙げることができる。有機酸モノグリセリドとして、理研ビタミン(株)製ポエムG−002などを挙げることができる。ソルビタン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL SSシリーズ、SOシリーズなど、花王(株)製エマゾール シリーズなどを挙げることができる。プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL PMS−SEなどを挙げることができる。
前記界面活性剤量を0.01質量%以上とすることにより、エマルション組成物としたときの油相/水相間の界面張力を下げ易く、また、30質量%以下とすることにより、過剰量とすることがなくエマルション組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
前記ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「ラジカル捕捉剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
本発明のラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであればよく、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
エマルション組成物におけるラジカル捕捉剤の含有量は一般的には組成物全質量に対して0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
また、本発明の粉末組成物は、粉末の流動特性及びその後の打錠適性や顆粒化適性を持たせる場合に、必要に応じて賦形剤を更に含んでいてもよい。
賦形剤は一般的に用いられている水溶性物質であればよく、グルコース、果糖、麦芽糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトースなどの単糖及び多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;アラビアガム、グアーガム、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ガラクトマンナン、トラガントガム、キシログルカン、β−グルカン、カードラン、キトサン、ペクチン、プルラン、アルギン酸ナトリウムなどの増粘多糖類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプン、デンプンにエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に水溶性大豆繊維、加工澱粉、カゼイン、ゼラチン、ゼラチン分解物、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましく、吸湿性、粒子形成性の観点から、アラビアガム、デキストリン、糖アルコール、無機塩が更に好ましく、アラビアガム、デキストリンが特に好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの賦形剤は、形状維持と溶解性の観点から本発明における包括剤の質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下で用いられる。
即ち、本発明の機能性油性成分を含有する粉末組成物の製造方法は、
少なくとも1種の機能性油性成分を、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の存在下、水性媒体に乳化して、エマルション組成物を得ること(乳化工程)、前記水性媒体及び/又はエマルション組成物に、上記(A)成分及び(B)成分、即ちガラクトース/フルクトース含有多糖類とトレハロースとを含有する包括剤を添加すること(添加工程)、前記包括剤を含むエマルション組成物を乾燥すること(乾燥工程)を含む。
包括剤の添加工程は、乳化の前後のいずれであってもよく、乳化工程の前に水相、即ち、水などの水性媒体に添加されていてもよいし、乳化後に得られたエマルション組成物に添加されてもよく、乳化の前後の双方において一部ずつ添加してもよい。包括剤の添加工程は、油滴を効果的に包み込むためには乳化前に添加される方が好ましい。ここで使用可能な乳化手段は、自然乳化法、界面化学的乳化法、電気乳化法、毛管乳化法、機械的乳化法、超音波乳化法等一般に知られている乳化法のいずれも使うことができる。
高圧ホモジナイザーには大きく分けて、固定した絞り部を有するチャンバー型高圧ホモジナイザーと、絞りの開度を制御するタイプの均質バルブ型高圧ホモジナイザーがある。
チャンバー型高圧ホモジナイザーの例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜300MPa、更に好ましくは100〜250MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
本水中油滴型エマルション組成物では、上記(A)成分及び(B)成分を含む包括剤を含むので、乾燥工程においてエマルション組成物を良好な乾燥状態に調整することができ、乾燥装置や周辺の壁面等への付着を抑制することができる。この結果、乾燥工程におけるロスを低減させて収量効率を向上させることができる。
また、このような包括剤によって機能性油性成分が包括されているので、エマルション組成物を乾燥することにより、長期間保存しても保存安定性が良好な乾燥粉末を得ることができる。さらにまた、本発明の機能性粉末の製造方法により得られた粉末組成物は、エマルション組成物における水分の大半を除かれるので、長期経時中の油滴の合一による粗大化を防止し、再溶解後も微細な粒子を得ることができ、透明性を良好なものにすることができる。この結果、機能性油性成分の微細油滴状態が保持された長期安定の機能性粉末とすることができる。
本発明では熱に比較的弱い機能性素材を含むことが多いため、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましい。また、真空乾燥の一つであるが、0℃以下氷結温度以上の温度を保ちながら真空(減圧)乾燥する方法も好ましい。
真空乾燥又は減圧乾燥する場合、突沸によるエマルションの飛散を回避するため、徐々に減圧度を上げながら濃縮を繰り返しつつ、乾燥させることが好ましい。
市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
この機能性粉末を用いることにより、飲料、機能性食品、化粧品等を製造する場合、容易に飲料、機能性食品、化粧品等を製造することができる。
また、この粉末組成物を用いることにより、機能性成分の機能を損なうことなく、機能を発揮させることができ、また、再分散した製品の透明性など外観や保存時の安定性も良好である。
本発明の粉末組成物における再溶解時の透明性は、再溶解時の油滴粒径によって評価することができる。この評価では、1質量%の水溶液としたときに(復水時)の油滴粒径を、透明性の観点及び吸収性の観点から10nm〜200nmにすることが好ましく、更に良好な透明性及び分散安定性並びに上記各種保存安定性の観点から10nm〜150nmとすることが特に好ましい。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
また、エマルション組成物の粒子径は、エマルション組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって調整することができる。
前記体積平均粒径の測定方法は、油相成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、測定用ガラス管を用いて測定を行う。体積平均粒径は、分散媒屈折率として1.3313(純水)、分散媒の粘度として0.8846mPa・S(純水)に設定して測定した時の累積(50%)値として求めることができる。
即ち、本発明の食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物は、それぞれ本発明の上記粉末組成物を含むものである。
また、前記本発明の食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物は、本発明の粉末組成物と、所望の目的を達成するための添加可能な任意の成分とを、常法により混合等して、得ることができる。
ここで本粉末組成物は、目的とする各種製品組成物の形態に応じて、粉末化の状態で、又は水性媒体に再溶解して、他の成分と混合すればよい。
添加量が0.01質量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10質量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
[粉末試料Aの作製]
(エマルションの調製)
下記の成分を、70℃にて1時間溶解後、日本精機製超音波ホモジナイザーU600型を用い1分間均質化を行い、水相組成物Aを得た。
・ショ糖ラウリン酸エステル 5.2g
・モノラウリン酸デカグリセリル 5.2g
・レシチン(大豆由来) 1.9g
・イヌリン(砂糖由来) 17.2g
・トレハロース 17.2g
・純水 246.8g
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%)
5.2g
・ミックストコフェロール 1.4g
ヤマト科学製スプレードライヤADL310型を用い、噴霧圧力0.15MPa、出口温度80℃、処理量7ml/分の条件で、上記エマルションAの噴霧乾燥を行い、乾燥粉末試料Aを得た。エマルション100gを乾燥して捕集出来た乾燥粉の質量を秤り、理論量に対する収量を計算した。
試料Aにおけるイヌリンに替えて、ラフィノース(日本甜菜糖製糖(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Cの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、マルトトリオース(三菱化学フーズ(株)製オリゴトース)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Dの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、スクロース(和光純薬(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Eの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、パラチノース(三井製糖(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
試料Aにおけるイヌリンに替えて、ラクトース(和光純薬製試薬特級)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Gの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、アラビアガム(コロイドナチュレ社製インスタントガムAB)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Hの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、加工澱粉(松谷化学工業(株)製パインデックス#1)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を8.6g、トレハロースの添加量を8.6gとし、乳化時の水相における水の量を263.9gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Jの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を25.8g、トレハロースの添加量を8.6gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Kの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を8.6g、トレハロースの添加量を25.8gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Lの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を34.4g、トレハロースの添加量をゼロとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Mの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量をゼロ、トレハロースの添加量を34.4gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(再溶解粒径測定)
得られたアスタキサンチン含有粉末(A〜M)各1.00gに99.0gの純水を添加して、マグネチックスターラーにて5分間攪拌を行った。得られた水性エマルションについて、動的光散乱粒径分散測定装置FPAR−1000(大塚電子(株)製)を使用して、25℃にて粒径測定を行った。平均粒径の値は体積平均粒径で示した。
これらの結果をまとめて、表1に示した。
Claims (13)
- 少なくとも1種の機能性油性成分と、
以下の(A)成分及び(B)成分:
(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、及び
(B)トレハロース、
を含む包括剤と、
を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。 - 前記粉末組成物を1質量%の水溶液にしたときに得られるエマルション粒子の体積平均粒子径が10nmから200nmである請求項1に記載の粉末組成物。
- 前記粉末組成物中の全糖類の質量に対する上記(B)成分の割合が20〜70質量%の範囲にある請求項1又は請求項2に記載の粉末組成物。
- 前記(A)成分が、2〜60の糖単位を有する糖類である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粉末組成物。
- 前記(A)成分が、イヌリン及びラフィノースから選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粉末組成物。
- 前記粉末組成物が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粉末組成物。
- 前記機能性油性成分がカロテノイド色素である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の粉末組成物。
- 前記カロテノイド色素が、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然抽出物である請求項7に記載の粉末組成物。
- 前記カロテノイド色素が、ヘマトコッカス藻色素抽出物である請求項7記載の粉末組成物。
- 少なくとも1種の機能性油性成分を、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の存在下、水性媒体に乳化して、エマルション組成物を得ること、
前記水性媒体及び又はエマルション組成物に、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも一種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤を添加すること、
前記包括剤を含むエマルション組成物を乾燥すること、
を含む粉末組成物の製造方法。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする食品組成物。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする医薬品組成物。
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