JP2009184855A - ε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカ - Google Patents
ε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】シリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜3である非球状の異形粒子群となっているコロイダルシリカである。これは、珪酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂とを接触させて、活性珪酸水溶液を調製した後、この活性珪酸水溶液にε−カプロラクタムを加えて加熱し、ビルドアップの手法で粒子成長を行うことにより製造することができる。
【選択図】図2
Description
水ガラス法の活性珪酸水溶液と水酸化ナトリウムを用いて製造される通常のコロイダルシリカから、カチオン交換によりナトリウムを除去しても、シリカ粒子内部に存在するナトリウムは徐々に液相に溶出してくることはよく知られている。そのため、特許文献2には、コロイダルシリカから、カチオン交換によりナトリウムを除去した後、アンモニアを加えてアルカリ性とし、オートクレーブで98〜150℃で処理して、シリカ粒子内部に存在するナトリウムを強制的に液相に溶出させ、カチオン交換で除去する方法が記載されている。
製造工程がながく、エネルギー使用も過大となり不利な一面がある。
特許文献3に記載のコロイダルシリカは、その製造において、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩またはこれらの混合物を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献4に記載のコロイダルシリカはその製造において、水溶性のアルミニウム塩を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献5及び特許文献6に記載のコロイダルシリカはアルコキシシランをシリカ源とするので高純度で好ましいが、副生するアルコールの除去や価格など不利な一面がある。
すなわち本発明の第一の発明は、粒子の内部にε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカである。
また、第二の発明は、ε−カプロラクタムを含むシリカを主成分とする被膜を表面に配することによりε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカである。シリカ粒子内部および/またはシリカ粒子表面にε−カプロラクタムを含有している。
また、第三の発明は、ε−カプロラクタムを含有し、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜5である非球状の異形粒子群となっているコロイダルシリカである。アルカリ金属含有率を、シリカ当たり50ppm以下とすることも好ましい。
また、このコロイダルシリカのシリカ粒子の透過型電子顕微鏡観察による平均短径は5〜30nmであり、かつシリカの濃度が10〜50重量%であることが好ましい。
さらに、このコロイダルシリカはε−カプロラクタムを含有し、その適切な範囲は、シリカ/ε−カプロラクタムのモル比が3〜50である。
なお、コロイド粒子を形成と粒子成長の双方をあわせて、以下で「粒子成長」あるいは「成長」と記載することがある。
本発明のコロイダルシリカは、活性珪酸をアルカリ剤を用いて粒子成長させる際に、ε−カプロラクタムの存在下でアルカリ剤を使用して得られるコロイダルシリカである。このためε−カプロラクタムは、(1)粒子成長の過程で粒子内部に固定された形態と、(2)粒子成長後には粒子表面に固定された形態と、(3)液相に溶解した形態との3形態で存在している。
また、本発明のコロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜5である非球状の異形粒子群となっている。
アルカリ金属を好まないときには、アミン類や水酸化第四級アンモニウムなどの含窒素有機アルカリ化合物が使用できる。
アミン類としてはトリエタノールアミンなどの揮発性の低い3級アミン、ピペラジンなどの2級アミン、エチレンジアミンなどの脂肪族アミンが使用できる。
水酸化第四級アンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム(別名、水酸化コリン)が好ましい。
この成長工程では、常法の操作が行われ、例えばコロイド粒子の成長のため、pHが8以上となるようε−カプロラクタムとアルカリ剤を添加し、60〜240℃に加熱することで5〜20nmの粒子とするができる。また、ビルドアップの方法をとり、pHが8以上の60〜240℃の種ゾルに、活性珪酸とε−カプロラクタムとアルカリ剤、あるいは活性珪酸とアルカリ剤をpHが8〜11となるよう添加していく方法もある。このようにして、シリカの粒子径が10〜150nmの粒子とすることができる。
(1)TEM観察:(株)日立製作所、透過型電子顕微鏡H−7500型を使用した。
(2)BET法比表面積:(株)島津製作所、フローソーブ2300型を使用した。
(3)全ε−カプロラクタム分析:(株)島津製作所、全有機体炭素計TOC−5000A、SSM−5000Aを使用した。炭素量よりε−カプロラクタムに換算した。具体的には、全有機体炭素量(TOC)は、全炭素量(TC)と無機体炭素量(IC)を測定後TOC=TC−ICにより求めた。TC測定の標準として炭素量1重量%のグルコース水溶液を用い、IC測定の標準として炭素量1重量%の炭酸ナトリウムを用いた。超純水を炭素量0重量%の標準とし、それぞれ先に示した標準を用い、TCは150μlと300μl、またICは250μlで検量線を作成した。サンプルのTC測定ではサンプルを約100mg採取し、900℃燃焼炉で燃焼させた。また、IC測定ではサンプルを約20mg採取し、(1+1)燐酸を約10ml添加し200℃燃焼炉で反応を促進した。
(4)液相ε−カプロラクタム分析:限外濾過によりサンプルから液相を取り出し、上記(3)と同じ方法で測定した。
(5)固定化されたε−カプロラクタムの算出:全ε−カプロラクタム量から液相ε−カプロラクタム量を減じて、固定化されたε−カプロラクタム量を算出した。
(6)金属元素分析:(株)堀場製作所、ICP発光分析計、ULTIMA2を使用した。
脱イオン水28kgにJIS3号珪酸ソーダ(SiO2:28.8重量%、Na2O:9.7重量%、H2O:61.5重量%)5.2kgを加えて均一に混合しシリカ濃度4.5重量%の希釈珪酸ソーダを作成した。この希釈珪酸ソーダを予め塩酸によって再生したH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)20リットルのカラムに通して脱アルカリし、シリカ濃度3.7重量%でpH2.9の活性珪酸40kgを得た。
別途、ε−カプロラクタム(試薬)を純水に加えて10重量%ε−カプロラクタム水溶液を調製した。
次いで、ビルドアップの方法をとり、コロイド粒子を成長させた。すなわち、得られた活性珪酸の一部500gに攪拌下10%ε−カプロラクタム水溶液50gを加えた後、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.0とし、100℃に1時間保ち、放冷した。得られた液は、水の蒸発で460gとなっており、シリカ濃度は4.0重量%となっていた。また、25℃でのpHが10.2であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約6nmで、長径/短径比が1.5〜10の非球状シリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が4であった。TEM写真を図1に示した。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびε−カプロラクタムの使用量から、シリカ/ε−カプロラクタムのモル比は7.0と算出された。コロイダルシリカの全ε−カプロラクタム濃度は1.09重量%で、液相ε−カプロラクタムは0.94重量%であったので、固定化されているε−カプロラクタムは0.19重量%と算出された。ε−カプロラクタムがシリカに固定されていることが確認できた。
上記実施例1で得られたコロイダルシリカを再度加熱して100℃とし、1200gの活性珪酸を6時間かけて添加した。活性珪酸の添加中は100℃を維持し、10%ε−カプロラクタム水溶液と5%水酸化ナトリウム水溶液を同時添加しpH9〜10を維持した。同時添加で使用した10%ε−カプロラクタム水溶液は50gであった。添加中の水の蒸発により放冷後には1360gのコロイダルシリカを得た。シリカ濃度は4.6重量%となっていた。このコロイダルシリカは25℃でのpHが9.6であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約10nmで、長径/短径比が1.2〜5の非球状シリカの異形粒子群よりなり、長径/短径比の平均値が2であった。TEM写真を図2に示した。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびε−カプロラクタムの使用量から、シリカ/ε−カプロラクタムのモル比は12と算出された。コロイダルシリカの全ε−カプロラクタム濃度は0.74重量%で、液相ε−カプロラクタムは0.69であったので、固定化されているε−カプロラクタムは0.08重量%と算出された。ε−カプロラクタムがシリカに固定されていることが確認できた。
上記実施例2で得られたコロイダルシリカの濃縮を行った。分画分子量6000の中空糸型限外濾過膜(旭化成(株)製マイクローザUFモジュールSIP−1013)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度12重量%まで濃縮し、コロイダルシリカ約560gを回収した。このコロイダルシリカは25℃でのpHが9.4であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約10nmで、長径/短径比が1.2〜5の非球状の異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が2であった。また、BET法による比表面積換算の粒子径は9.7nmであった。
コロイダルシリカのε−カプロラクタムの全含有量は0.67重量%であり、シリカ/ε−カプロラクタムのモル比は34であった。液相ε−カプロラクタムは0.66重量%であったので、固定化されているε−カプロラクタムは0.09重量%と算出された。ε−カプロラクタムがシリカに固定されていることが確認できた。
ピペラジン(ジエチレンジアミン6水和物、試薬)34gを純水に加えて全量を190gとし8%ピペラジン水溶液を調製した。上記活性珪酸の一部500gに攪拌下10%ε−カプロラクタム水溶液50gを加えた後、8%ピペラジン水溶液11gを添加してpHを8.0とし、100℃に1時間保ち、放冷した。得られた液は、水の蒸発で460gとなっており、シリカ濃度は4.0重量%となっていた。また、25℃でのpHが9.1であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約6nmで、長径/短径比が1.5〜10の非球状シリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が4であった。実施例1で得られたコロイダルシリカと似た形状であった。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびε−カプロラクタムの使用量から、シリカ/ε−カプロラクタムのモル比は7.0と算出された。コロイダルシリカの全ε−カプロラクタム濃度は1.09重量%で、液相ε−カプロラクタムは0.94重量%であったので、固定化されているε−カプロラクタムは0.19重量%と算出された。ε−カプロラクタムがシリカに固定されていることが確認できた。また、シリカ当たりのNaとKの含有率はそれぞれ15ppmと0ppmであった。有機アルカリ剤の使用によりアルカリ金属イオンの少ないコロイダルシリカが得られた。
Claims (8)
- 粒子の内部にε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなることを特徴とするコロイダルシリカ。
- ε−カプロラクタムを含むシリカを主成分とする被膜を表面に配することによりε−カプロラクタムが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカ。
- ε−カプロラクタムを含有し、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜5である非球状の異形粒子群となっていることを特徴とするコロイダルシリカ。
- シリカ/ε−カプロラクタムのモル比が3〜50であることを特徴とする請求項1〜3に記載のコロイダルシリカ。
- シリカ当たりのアルカリ金属含有率が50ppm以下である、請求項1〜4に記載のコロイダルシリカ。
- 透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の平均短径が5〜30nmであり、かつシリカの濃度が10〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜5に記載のコロイダルシリカ。
- 以下の工程
(a)珪酸アルカリ水溶液をカチオン交換樹脂に接触させて活性珪酸水溶液を調製する工程、
(b)次いで前記活性珪酸水溶液にε−カプロラクタムとアルカリ剤を添加してアルカリ性とした後、加熱してコロイド粒子を形成させる工程、
(c)加熱条件下で、前工程で形成したコロイド粒子に、アルカリ性を維持しながら前記活性珪酸水溶液とε−カプロラクタムを添加してコロイド粒子を成長させる工程、
を有することを特徴とする、請求項1〜6に記載のコロイダルシリカの製造方法。 - (c)工程の後、
(d)コロイダルシリカを濃縮する工程、
を有することを特徴とする請求項7に記載のコロイダルシリカの製造方法。
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