JP5352091B2 - モルホリンが固定化されたシリカ粒子よりなるコロイダルシリカ - Google Patents
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水ガラス法の活性珪酸水溶液と水酸化ナトリウムを用いて製造される通常のコロイダルシリカから、カチオン交換によりナトリウムを除去しても、シリカ粒子内部に存在するナトリウムは徐々に液相に溶出してくることはよく知られている。そのため、特許文献2には、コロイダルシリカから、カチオン交換によりナトリウムを除去した後、アンモニアを加えてアルカリ性とし、オートクレーブで98〜150℃で処理して、シリカ粒子内部に存在するナトリウムを強制的に液相に溶出させ、カチオン交換で除去する方法が記載されている。
製造工程がながく、エネルギー使用も過大となり不利な一面がある。
特許文献3に記載のコロイダルシリカは、その製造において、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩またはこれらの混合物を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献4に記載のコロイダルシリカはその製造において、水溶性のアルミニウム塩を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献5及び特許文献6に記載のコロイダルシリカはアルコキシシランをシリカ源とするので高純度で好ましいが、副生するアルコールの除去や価格など不利な一面がある。
すなわち本発明の第一の発明は、粒子の内部にモルホリンが固定化されたシリカ粒子よりなり、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であるコロイダルシリカである。
また、第二の発明は、モルホリンを含むシリカを主成分とする被膜を表面に配することによりモルホリンが固定化されたシリカ粒子よりなり、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であるコロイダルシリカである。シリカ粒子内部および/またはシリカ粒子表面にモルホリンを含有している。
また、第三の発明は、モルホリンを含有し、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜3である非球状の異形粒子群となっており、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であるコロイダルシリカである。アルカリ金属含有率は、シリカ当たり50ppm以下とすることが好ましい。
また、このコロイダルシリカのシリカ粒子の透過型電子顕微鏡観察による平均短径は5〜30nmであり、かつシリカの濃度が10〜50重量%であることが好ましい。
なお、コロイド粒子を形成と粒子成長の双方をあわせて、以下で「粒子成長」あるいは「成長」と記載することがある。
本発明のコロイダルシリカは、活性珪酸をアルカリ剤を用いて粒子成長させる際に、アルカリ剤としてモルホリンを使用して得られるコロイダルシリカである。このためモルホリンは、(1)粒子成長の過程で粒子内部に固定された形態と、(2)粒子成長後には粒子表面に固定された形態と、(3)液相に溶解した形態との3形態で存在している。
また、本発明のコロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜3である非球状の異形粒子群となっている。
非球状の異形粒子群となっているコロイダルシリカとは、屈曲した棒状の形であって、個々に異なる形をした粒子のコロイダルシリカを表し、具体的には図1または図2に示されるような形状のシリカ粒子を含有するコロイダルシリカである。長径/短径比は1.2〜10の範囲にある。その粒子は、直線状に伸長していない粒子が大半を占めており、一部は伸長していない粒子も存在する。これは一例であって、製造条件によってその形状はさまざまとなるが、真球状でない粒子が大半を占めている。
成長工程では、モルホリン以外に、水酸化テトラメチルアンモニウムや水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化コリンを併用することもできる。それらの水酸化第四級アンモニウムはモルホリンより塩基性が強く、粒子成長を短時間で行うことができるので有利な製法となる。
(1)TEM観察:(株)日立製作所、透過型電子顕微鏡H−7500型を使用した。
(2)BET法比表面積:(株)島津製作所、フローソーブ2300型を使用した。
(3)全モルホリン分析:(株)島津製作所、全有機体炭素計TOC−5000A、SSM−5000Aを使用した。炭素量よりモルホリンに換算した。具体的には、全有機体炭素量(TOC)は、全炭素量(TC)と無機体炭素量(IC)を測定後TOC=TC−ICにより求めた。TC測定の標準として炭素量1重量%のグルコース水溶液を用い、IC測定の標準として炭素量1重量%の炭酸ナトリウムを用いた。超純水を炭素量0重量%の標準とし、それぞれ先に示した標準を用い、TCは150μlと300μl、またICは250μlで検量線を作成した。サンプルのTC測定ではサンプルを約100mg採取し、900℃燃焼炉で燃焼させた。また、IC測定ではサンプルを約20mg採取し、(1+1)燐酸を約10ml添加し200℃燃焼炉で反応を促進した。
(4)液相モルホリン分析:限外濾過によりサンプルから液相を取り出し、上記(3)と同じ方法で測定した。
(5)固定化されたモルホリンの算出:全モルホリン量から液相モルホリン量を減じて、固定化されたモルホリン量を算出した。
(6)金属元素分析:(株)堀場製作所、ICP発光分析計、ULTIMA2を使用した。
脱イオン水28kgにJIS3号珪酸ソーダ(SiO2:28.8重量%、Na2O:9.7重量%、H2O:61.5重量%)5.2kgを加えて均一に混合しシリカ濃度4.5重量%の希釈珪酸ソーダを作成した。この希釈珪酸ソーダを予め塩酸によって再生したH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)20リットルのカラムに通して脱アルカリし、シリカ濃度3.7重量%でpH2.9の活性珪酸40kgを得た。
別途、モルホリン(試薬)を純水に加えて10%モルホリン水溶液を調製した。
次いで、ビルドアップの方法をとり、コロイド粒子を成長させた。すなわち、得られた活性珪酸の一部500gに攪拌下10%モルホリン水溶液70gを加えてpHを9.0とし、100℃に1時間保ち、放冷した。得られた液は、水の蒸発で460gとなっており、シリカ濃度は4.0重量%となっていた。また、25℃でのpHが9.8であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約6nmで、長径/短径比が1.5〜10の非球状シリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が3であった。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびモルホリンの使用量から、シリカ/モルホリンのモル比は3.9と算出された。コロイダルシリカの全モルホリン濃度は1.52重量%で、液相モルホリンは0.72重量%であったので、固定化されているモルホリンは0.83重量%と算出された。モルホリンがシリカに固定されていることが確認できた。
上記実施例1で得られたコロイダルシリカを再度加熱して100℃とし、1000gの活性珪酸を4時間かけて添加した。活性珪酸の添加中は100℃を維持し、10%モルホリン水溶液を同時添加しpH9〜10を維持した。同時添加で使用した10%モルホリン水溶液は30gであった。添加中の水の蒸発により放冷後には870gのコロイダルシリカを得た。シリカ濃度は6.4重量%となっていた。このコロイダルシリカは25℃でのpHが9.7であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約8nmで、長径/短径比が1.5〜6の非球状シリカの異形粒子群よりなり、長径/短径比の平均値が2.5であった。TEM写真を図1に示した。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびモルホリンの使用量から、シリカ/モルホリンのモル比は8.0と算出された。コロイダルシリカの全モルホリン濃度は1.15重量%で、液相モルホリンは0.74重量%であったので、固定化されているモルホリンは0.46重量%と算出された。モルホリンがシリカに固定されていることが確認できた。
上記実施例2で得られたコロイダルシリカの一部230gを分取して、再度加熱して100℃とし、2000gの活性珪酸を5時間かけて添加した。活性珪酸の添加中は100℃を維持し、10%モルホリン水溶液を同時添加しpH9〜10を維持した。同時添加で使用した10%モルホリン水溶液は90gであった。添加中の水の蒸発により放冷後には1360gのコロイダルシリカを得た。シリカ濃度は6.5重量%となっていた。このコロイダルシリカは25℃でのpHが9.4であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約15nmで、長径/短径比が1.5〜4の非球状シリカの異形粒子群よりなるコロイダルシリカであった。
このコロイダルシリカは、活性珪酸およびモルホリンの使用量から、シリカ/モルホリンのモル比は11.0と算出された。コロイダルシリカの全モルホリン濃度は0.86重量%で、液相モルホリンは0.41重量%であったので、固定化されているモルホリンは0.48重量%と算出された。モルホリンがシリカに固定されていることが確認できた。
続いて、分画分子量6000の中空糸型限外濾過膜(旭化成(株)製マイクローザUFモジュールSIP−1013)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度17重量%まで濃縮し、コロイダルシリカ約586gを回収した。このコロイダルシリカは25℃でのpHが9.2であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約15nmで、長径/短径比が1.5〜4の非球状の異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が2であった。また、BET法による粒子径は14.1nmであった。
モルホリンの全含有量は0.81重量%であり、シリカ/モルホリンのモル比は30であった。液相モルホリンは0.74重量%であったので、固定化されているモルホリンは0.20重量%と算出された。モルホリンがシリカに固定されていることが確認できた。また、シリカ当たりのNaとKの含有率はそれぞれ15ppmと0ppmであった。モルホリンの使用によりアルカリ金属イオンの少ないコロイダルシリカが得られた。シリカ粒子のTEM写真を図2に示した。
Claims (7)
- 粒子の内部にモルホリンが固定化されたシリカ粒子よりなり、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であることを特徴とするコロイダルシリカ。
- モルホリンを含むシリカを主成分とする被膜を表面に配することによりモルホリンが固定化されたシリカ粒子よりなり、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であることを特徴とするコロイダルシリカ。
- モルホリンを含有し、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜10であって、長径/短径比の平均値が1.5〜3である非球状の異形粒子群となっており、シリカ/モルホリンのモル比が3〜50であることを特徴とするコロイダルシリカ。
- シリカ当たりのアルカリ金属含有率が50ppm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
- 透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の平均短径が5〜30nmであり、かつシリカの濃度が10〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のコロイダルシリカの製造方法であって、
(a)珪酸アルカリ水溶液をカチオン交換樹脂に接触させて活性珪酸水溶液を調製する工程、
(b)次いで前記活性珪酸水溶液にモルホリンを添加してアルカリ性とした後、加熱してコロイド粒子を形成させる工程、
(c)加熱条件下で、前工程で形成したコロイド粒子に、アルカリ性を維持しながら前記活性珪酸水溶液とモルホリンを添加してコロイド粒子を成長させる工程、
を有することを特徴とする、コロイダルシリカの製造方法。 - (c)工程の後、
(d)コロイダルシリカを濃縮する工程、
を有することを特徴とする請求項6に記載のコロイダルシリカの製造方法。
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