JP2009184285A - アクチュエータ及び駆動デバイスの駆動制御方法、駆動デバイス並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の吐出制御方法、液滴吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動制御回路の簡単な制御により、駆動デバイスにおける各アクチュエータの独立した駆動制御を実現する方法等を得る。
【解決手段】固定電極となる個別電極12と、個別電極12と距離をおいて対向し、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜23を個別電極12と対向する側に有する可動電極となる振動板22とを備える液滴吐出ヘッド等のアクチュエータの駆動制御方法であって、圧電体膜23の歪みに係る圧力及び個別電極23と振動板22との間に発生する静電圧力により、振動板22を個別電極12に当接させるための第1の電圧と、振動板22を個別電極12に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、振動板22と個別電極12との間に、選択に係る電圧を印加して、振動板22を動作させる工程とを有する。
【選択図】図4
【解決手段】固定電極となる個別電極12と、個別電極12と距離をおいて対向し、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜23を個別電極12と対向する側に有する可動電極となる振動板22とを備える液滴吐出ヘッド等のアクチュエータの駆動制御方法であって、圧電体膜23の歪みに係る圧力及び個別電極23と振動板22との間に発生する静電圧力により、振動板22を個別電極12に当接させるための第1の電圧と、振動板22を個別電極12に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、振動板22と個別電極12との間に、選択に係る電圧を印加して、振動板22を動作させる工程とを有する。
【選択図】図4
Description
本発明は、微細加工素子において、加わる力(圧力)により可動部が変位等し、動作(駆動)等を行うアクチュエータ(駆動装置)、そのアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッド等の駆動デバイスの駆動制御方法に関するものである。
例えばシリコン等を加工して微小な素子等を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)が急激な進歩を遂げている。微細加工技術により形成される微細加工素子の例としては、例えば液滴吐出方式のプリンタのような記録(印刷)装置で用いられている液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、マイクロポンプ、光可変フィルタ、モータのような静電アクチュエータ等がある。
ここで、微細加工素子の一例として静電アクチュエータ(電気−機械エネルギ変換素子)を利用した液滴吐出ヘッドについて説明する。液滴吐出方式の記録(印刷)装置は、家庭用、工業用を問わず、あらゆる分野の印刷に利用されている。液滴吐出方式とは、例えば複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを対象物との間で相対移動させ、対象物の所定の位置に液滴を吐出させて印刷等の記録をするものである。この方式は、液晶(Liquid Crystal)を用いた表示装置を作製する際のカラーフィルタ、有機化合物等の電界発光(ElectroLuminescence )素子を用いた表示パネル(OLEDs)、DNA、タンパク質等、生体分子のマイクロアレイ等の製造にも利用されている。
液滴吐出ヘッドにおいて、流路の一部に液体を溜めておく複数の吐出室を備え、吐出室の少なくとも一面の壁(ここでは、底部の壁とし、以下、この壁のことを振動板ということにする)を撓ませて(駆動させて)形状変化により吐出室内の圧力を高め、連通する各ノズルから液滴を吐出させる方法がある。可動部位である振動板を変位させる力(エネルギ)として、例えば、振動板を可動電極とし、振動板と一定距離を空けて個別に対向する固定電極(以下、個別電極という)との間に静電気力(ここでは特に静電引力を用いている。以下、静電圧力という)を発生させる。液滴吐出ヘッドでは、以上のような形で静電アクチュエータを利用している。
静電アクチュエータの駆動については、例えば変位駆動の場合、振動板と個別電極との間に静電圧力を発生させ、振動板を個別電極に引き寄せる。ここで振動板は吐出室の壁面であり、その周縁の位置は変化しない(固定されたままである)。その後、静電圧力を弱める又は発生を停止させると、引き寄せられて形状変化した吐出室(変位した振動板)が元に戻って平衡状態になろうとする復元力(弾性力、以下、復元圧力という)の方が大きくなるため、振動板が元の位置に変位する。これらを繰り返すことで振動板を駆動させる。このとき、個別電極と振動板とが貼り付かないように、個別電極に圧電性薄膜を成膜しているものもある(例えば特許文献1参照)。
微細加工されたアクチュエータにおいては、例えば液滴吐出ヘッドのような駆動デバイスが複数の静電アクチュエータを有し、各静電アクチュエータが駆動しているが、基本的に各固定電極に電荷を供給する又はしないことによる、二者選択的な駆動可否の制御(二段レベルの制御)しかできないものが多かった。
しかしながら、各アクチュエータにおいて、さらに多くの駆動制御ができることが望ましい。特に、液滴吐出ヘッドでは、印刷の高画質化を図るため、着弾場所当たりの液滴吐出量を変更できたり、安定した吐出が行えたりできるように、各ノズルに対応する静電アクチュエータを制御したいという要求が高い。
例えば液滴吐出ヘッドにおいては、変位を変化させることにより吐出する液滴の量を変化させる方法が考えられるが、狭い空隙における振動板の変位制御が難しく、それに制御が複雑になるおそれがある。また、吐出回数を変化させることにより着弾場所における吐出量を変化させる方法も考えられるが、1カ所当たりの吐出回数が増えるため、印刷速度に影響を与える。
そこで駆動制御回路の簡単な制御により、駆動デバイスにおける各アクチュエータの独立した駆動制御を実現する方法を得ることを目的とする。特にこのような駆動制御を利用し、液滴吐出ヘッドにおいて複数のノズル間での液滴吐出量を変化できるような方法を得ることを目的とする。
本発明に係る駆動デバイスの駆動制御方法は、固定電極と、該固定電極と距離をおいて対向する可動電極とを備え、可動電極は、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を固定電極と対向する側に有するアクチュエータの駆動制御方法であって、圧電体膜の歪みに係る圧力及び固定電極と可動電極との間に発生する静電圧力により、可動電極を固定電極に当接させるための第1の電圧と、可動電極を固定電極に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、可動電極と固定電極との間に、選択に係る電圧を印加して、可動電極を動作させる工程とを有する。
本発明によれば、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を可動電極の固定電極と対向する側に有するようにすることで、可動電極の変位を大きくすることができる。そして、可動電極と固定電極との間に第1の電圧又は第2の電圧を選択して印加することで、複雑な構造のアクチュエータを形成しなくても、段階的な駆動制御を行うことができる。
本発明によれば、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を可動電極の固定電極と対向する側に有するようにすることで、可動電極の変位を大きくすることができる。そして、可動電極と固定電極との間に第1の電圧又は第2の電圧を選択して印加することで、複雑な構造のアクチュエータを形成しなくても、段階的な駆動制御を行うことができる。
また、本発明に係る駆動デバイスの駆動制御方法は、上記のアクチュエータの駆動制御方法を適用して駆動デバイスによる駆動を制御する。
本発明によれば、上記のアクチュエータの駆動制御方法を適用したので、段階的な駆動制御を行うことができる。
本発明によれば、上記のアクチュエータの駆動制御方法を適用したので、段階的な駆動制御を行うことができる。
また、本発明に係る駆動デバイスは、上記のアクチュエータ駆動制御方法による駆動をアクチュエータに行わせるための駆動制御回路を備える。
本発明によれば、上記のアクチュエータの駆動制御方法を適用して駆動を行わせる駆動制御回路を備えるので、段階的に可変駆動を行うことができる。
本発明によれば、上記のアクチュエータの駆動制御方法を適用して駆動を行わせる駆動制御回路を備えるので、段階的に可変駆動を行うことができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの吐出制御方法は、個別電極と、ノズルと、ノズルに連通する流路と、個別電極と所定の距離で対向し、流路の一部に設けられた振動板とを備え、振動板は、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を固定電極と対向する側に有する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法であって、圧電体膜の歪みに係る圧力及び個別電極と振動板との間に発生する静電圧力により、振動板を個別電極に当接させるための第1の電圧と、振動板を個別電極に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、振動板と個別電極との間に選択に係る電圧を印加し、振動板を変位させて流路内の液体を加圧して液滴を吐出する工程とを有する。
本発明によれば、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を振動板の個別電極と対向する側に有するようにすることで、振動板の変位を大きくすることができ、排除体積を増やし、吐出量を大きくすることができる。このとき、振動板と個別電極との間に第1の電圧又は第2の電圧のどちらか一方を選択して印加し、ノズルから液滴を吐出させるように吐出制御を行うようにしたので、液滴吐出ヘッドの構造を複雑なものにしなくても、印加する電圧を変化させるだけで、振動板の変位を異ならせて液滴吐出量を変化させることができる。これにより、例えば、同じノズルから着弾位置毎に液滴吐出量の異なるインクを吐出することにより印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
本発明によれば、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を振動板の個別電極と対向する側に有するようにすることで、振動板の変位を大きくすることができ、排除体積を増やし、吐出量を大きくすることができる。このとき、振動板と個別電極との間に第1の電圧又は第2の電圧のどちらか一方を選択して印加し、ノズルから液滴を吐出させるように吐出制御を行うようにしたので、液滴吐出ヘッドの構造を複雑なものにしなくても、印加する電圧を変化させるだけで、振動板の変位を異ならせて液滴吐出量を変化させることができる。これにより、例えば、同じノズルから着弾位置毎に液滴吐出量の異なるインクを吐出することにより印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
また、本発明に係る液滴吐出装置の吐出制御方法は、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法を適用して液滴吐出装置の吐出を制御する。
本発明によれば、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法を適用したので、液滴吐出ヘッドが有するノズルから、液滴毎に吐出特性を異ならせて吐出することができる。これにより、例えば液滴吐出装置により印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
本発明によれば、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法を適用したので、液滴吐出ヘッドが有するノズルから、液滴毎に吐出特性を異ならせて吐出することができる。これにより、例えば液滴吐出装置により印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法による吐出制御を行って、吐出対象物への液滴吐出を行うための駆動制御回路を備える。
本発明によれば、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法による吐出を液滴吐出ヘッドに行わせ得るための駆動制御回路を備えるので、液滴吐出ヘッドが有する各ノズルから、液滴の吐出特性を異ならせて吐出することができる。これにより、例えば液滴吐出装置により印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
本発明によれば、上記の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法による吐出を液滴吐出ヘッドに行わせ得るための駆動制御回路を備えるので、液滴吐出ヘッドが有する各ノズルから、液滴の吐出特性を異ならせて吐出することができる。これにより、例えば液滴吐出装置により印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図1では液滴吐出ヘッドの一部を示している。本実施の形態では、例えば静電方式で駆動する静電アクチュエータを用いるデバイスの代表として、プリンタ等、液滴吐出装置に用いられるフェイスイジェクト型の液滴吐出ヘッドについて説明する。液滴吐出ヘッドは、例えば液滴を吐出して画像を形成する等の目的のために、複数の静電アクチュエータが集約されたデバイスである。なお、構成部材を図示し、見やすくするため、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものと異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下として説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図1では液滴吐出ヘッドの一部を示している。本実施の形態では、例えば静電方式で駆動する静電アクチュエータを用いるデバイスの代表として、プリンタ等、液滴吐出装置に用いられるフェイスイジェクト型の液滴吐出ヘッドについて説明する。液滴吐出ヘッドは、例えば液滴を吐出して画像を形成する等の目的のために、複数の静電アクチュエータが集約されたデバイスである。なお、構成部材を図示し、見やすくするため、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものと異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下として説明する。
図1に示すように本実施の形態に係る液滴吐出ヘッドは、電極基板10、キャビティ基板20及びノズル基板30の3つの基板が下から順に積層されて構成される。本実施の形態では、電極基板10とキャビティ基板20とは陽極接合により接合する。また、キャビティ基板20とノズル基板30とはエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合する。
電極基板10は、厚さ約1mmの例えばホウ珪酸系の耐熱硬質ガラス等の基板を主要な材料としている。本実施形態では、ガラス基板とするが、例えば単結晶シリコンを基板とすることもできる。電極基板10の表面には、後述するキャビティ基板20の吐出室21となる凹部に合わせ、例えば深さ約0.3μmを有する複数の凹部11が形成されている。そして、凹部11の内側(特に底部)に、キャビティ基板20の各吐出室21(振動板22)と対向するように固定電極となる個別電極12が設けられ、さらにリード部13及び端子部14が一体となって設けられている(以下、特に区別する必要がない限り、これらを合わせて個別電極12として説明する)。振動板22と個別電極12との間には、振動板22が撓む(変位する)ことができる一定のギャップ(空隙)が凹部11により形成されている。個別電極12は、例えばスパッタ法により、ITOを0.1μmの厚さで凹部11の内側に成膜することで形成される。また、電極基板10には、外部のタンク(図示せず)から供給された液体を取り入れる流路となる液体供給口15となる貫通穴が設けられている。
キャビティ基板20は、例えば表面が(110)面方位のシリコン単結晶基板(以下、シリコン基板という)を主要な材料としている。キャビティ基板20には、吐出させる液体を一時的にためる吐出室21となる凹部(底壁が可動電極となる振動板22となっている)及びリザーバ24となる凹部が形成されている。さらに、キャビティ基板20の下面側(電極基板10と対向する面)には、電圧印加による電歪効果(圧電効果)により変形させ(歪ませ)、かつ、貼り付き及び短絡を防ぎ、個別電極12との間を電気的に絶縁等するための圧電体膜23を成膜している。このような条件を満たす圧電体膜23の材料としては、酸化シリコン(SiO2 )よりも比誘電率が高い、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PZTN(ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛)等がある。本実施の形態では、圧電体膜23の変形により振動板22を個別電極12に引き寄せる方向に圧力がかかるものとする。以下、特に断らない限りにおいては、各振動板22と各圧電体膜23とは一体であるものとして説明する。ここで、キャビティ基板20の下面の全面に成膜すると、任意の振動板22だけを電歪効果により変位させることが難しくなる(膜全体として変形する可能性がある)ため、本実施の形態の液滴吐出ヘッドでは、圧電体膜23は振動板22毎に分けて成膜しているものとする。そして、キャビティ基板20の下面側において、振動板22と個別電極12との間以外の部分には、例えば酸化シリコン(SiO2 )を材料とする絶縁膜23Aを成膜している。成膜方法については特に限定しないが、例えば、TEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition :TEOS−pCVDともいう)法により成膜する。ここでは絶縁膜23をTEOS膜としているが、例えばAl2 O3 (酸化アルミニウム(アルミナ))を用いてもよい。また、各吐出室21に液体を供給するリザーバ(共通液室)24となる凹部が形成されている。さらに、例えば個別電極12と各振動板22との間の電位差を安定させる(例えば振動板22を変位させないときの電位差を0とする等)端子となる共通電極端子27を備えている。
ノズル基板30についても、例えばシリコン基板を主要な材料とする。ノズル基板30には、複数のノズル31が形成されている。各ノズル31は、振動板22の変位により加圧された液体を液滴として外部に吐出する。本実施の形態では、吐出した液滴の直進性向上を図るため、ノズル31の孔を複数段で形成する。また、振動板22が撓むことでリザーバ24方向に加わる圧力を緩衝するダイヤフラム32がさらに設けられている。また、吐出室21とリザーバ24とを連通させるための溝となるオリフィス33が設けられている。
図2は液滴吐出ヘッドの断面図である。図2において、吐出室21はノズル31から吐出させる液体をためておく。吐出室21の底壁である振動板22を撓ませることにより、吐出室21内の圧力を高め、ノズル31から液滴を吐出させる。ここで、異物、水分(水蒸気)等がギャップに入り込まないように、ギャップを外気から遮断し、密閉するために電極取り出し口26に封止材25が設けられている。
図3は駆動制御回路40を中心とする構成を表す図である。図3に基づいて、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させるための制御を行う手段等について説明する。駆動制御回路40はCPU42aを中心に構成されたヘッド制御部41を備えている。ヘッド制御部41のCPU42aには、例えばコンピュータ等の外部装置50からバス51を介し、印刷用データ等を含む信号が送信される。
また、ヘッド制御部41はROM43a、RAM43b及びキャラクタジェネレータ43cを有しており、内部バス42bを介してCPU42aと接続されている。CPU42aは、ROM43a内に格納されている制御プログラムに基づいて処理を実行し、印刷用データに対応した吐出制御信号を生成する。その際、RAM43b内の記憶領域を作業領域として用い、また、文字等を印刷する等の場合、キャラクタジェネレータ43cに記憶されたキャラクタデータ等に基づく処理を行う。CPU42aが生成した吐出制御信号は、内部バス42bを介して論理ゲートアレイ45に送信される。論理ゲートアレイ45は、吐出制御信号に基づいて、後述するように、各個別電極12に対する電荷供給に関する信号を生成する。また、COM発生回路46aからは、後述するようにキャビティ基板20(振動板22)に対する電荷供給に関する信号を生成する。駆動パルス発生回路46bは同期のための信号を生成する。これらの信号は、コネクタ47を経由して、ドライバIC48に送信される。
そして、ドライバIC48は、直接又はFPC(Flexible Print Circuit)、ワイヤ等の配線49を介して電気的に端子部14、共通電極端子27と接続される。ドライバIC48の端子数が液滴吐出ヘッドのノズル31の数に足りなければ、複数のドライバIC48で構成されている場合もある。ドライバIC48は、電源及び電源回路60(以下、電源回路60という)から電力の供給を受け(電圧が印加され)、前述した各種信号に基づいて、キャビティ基板20(各振動板22)及び各個別電極12への電荷供給の開始(充電)、電荷保持及び放電(これらが電荷供給制御となる。以下、これを出力という)を実際に行う手段である。ここで、本実施の形態では、ドライバIC48からの出力波形がパルス状となるように出力を繰り返すものとする(現実には立ち上がり時間、立ち下がり時間が0ではない(意図的に行われる場合も含む)ために台形状となるが、便宜上、この出力をパルスということにする)。
そして、例えば、振動板22側、個別電極12への電荷供給等を制御することにより、電位差を発生させる(電圧を印加する)と、振動板22は個別電極12側に引き寄せられて撓む。このため吐出室21の容積は広がり、さらに液体が流れ込む。そして、撓んだ振動板22が復元圧力により元に戻ろうとするときの力が液体に加わり、ノズル31から液体を押し出して液滴が吐出される。この液滴が例えば記録対象となる記録紙に着弾することによって印刷等の記録が行われる。
図4は印加する電圧と振動板22、圧電体膜23との電気的な関係及び個別電極12と振動板22、圧電体膜23との関係を表すための断面を表す図である。ここで、個別電極12と振動板22との間に印加した印加電圧Eは、図4(a)で示すように、振動板22と個別電極12との間の静電圧力に寄与する電圧と圧電体膜23の電歪効果に寄与する電圧(以下、実効電圧という)とに分かれるものと考えられる。ここで、電圧を印加していない通常の状態は図4(b)のようになる。そして、例えば電位差を発生させて、印加電圧Eを印加するによって圧電体膜23に印加される実効電圧Va は次式(1)で表される。ここで、da は圧電体膜23の厚さ、dg は電極間距離(ギャップ長)を表す。また、εa 、εg は、それぞれ圧電体膜23、ギャップにおける比誘電率を表す。ここで、εg は1であるものとする。
図5は振動板22と個別電極12との間に所定の電圧を印加したときの振動板22等の変位量と圧力Pとの関係を表す図である。ここで、復元圧力以外は、振動板22側から個別電極12側に向かう方向(+方向とする)の圧力が加わるものとする。また、圧電体膜23の電歪効果に係る圧力は、次式(2)で表される圧電体膜23が発生するモーメントM0 から換算したものとなる。また、EA は圧電体膜23のヤング率である。そして、圧電体膜23のd31方向の圧電定数である。また、Va は上述した圧電体膜23に印加される実効電圧である。
M0 ∝EA ×d31×Va …(2)
M0 ∝EA ×d31×Va …(2)
ここで、振動板22において個別電極12方向にかかる圧力が、どの位置においても少なくとも振動板22の復元圧力以上であれば、図4(d)のように、振動板22を個別電極12に当接させることができることになる。逆に復元圧力を下回る位置があれば、図4(c)のように、当接させることができない(慣性力等により、再度復元圧力以上の位置まで振動板22が変位すれば当接することになるが、ここでは考えないこととする)。
ここで、静電圧力は距離の二乗に反比例する。そのため、ギャップ長(電極間距離)が長い場合には圧電体膜23の電歪効果に係る圧力の方が有効に作用する。そこで、静電圧力だけでなく、電歪効果に係る圧力が加わることで静電圧力が当接に有効に働く位置まで変位させることができれば、静電圧力のみで振動板22を変位させる場合よりも大きな変位を生じさせることができる。これにより、ギャップ長を長くすることができ、また、ギャップの容積(排除体積)を増やすことができ、復元圧力を大きくすることができるため、吐出量を増やすことができる。
図6は個別電極12と振動板22との間に印加する電圧に係る出力波形を表す図である。さらに、本実施の形態ではドライバIC48により、第1の電圧(高い方の電圧)及び第2の電圧(低い方の電圧)の2種類の電圧を個別電極12と振動板22との間に印加することができるようにする。ここで、第1の電圧は、圧電体膜23の電歪効果に係る圧力により振動板22を変位させ、さらに静電圧力が有効に働いて振動板22を個別電極12に当接させることができる電圧である。一方、第2の電圧は、電歪効果に係る圧力が加わることにより振動板22を一定の位置まで変位させることができるが、静電圧力が当接に有効に働く位置まで変位させることができず、復元圧力を上回れずに当接させることができない電圧である。これにより、振動板22の変位を2段階にすることができ、1度の吐出量を変化させることができる。ここで、図6では第1の電圧と第2の電圧とにおける電圧印加時間を異ならせているが、同じ時間でもよく、それぞれのタイミングに応じて制御することができる。
例えば、圧電体膜23の厚さを200nm(=0.2μm)、ギャップ長を400nm(=0.4μm)、振動板22の厚さを1μm、振動板22の幅を70μmとする。このとき、高電圧を45Vとすると、上述した(1)式から、実効電圧は約15Vとなり、振動板22が約200nm(=0.2μm)だけ個別電極12側に変位する。このとき、振動板22と個別電極12との間は約200nm(=0.2μm)であり、当接させるために必要となる電圧は約20Vとなる。振動板22と個別電極12との間の静電圧力に寄与する電圧は約30Vとなるため、振動板22を個別電極12に当接させることができる。当接により排除体積を最大にすることができるため、ノズル31からの液滴吐出量を最大にすることができる。
一方、低電圧を30Vとすると、上述した(1)式から、実効電圧は約10Vとなり、振動板22が約150nm(=0.15μm)だけ個別電極12側に変位する。このとき、振動板22と個別電極12との間は約250nm(=0.25μm)であり、当接させるために必要となる電圧は約25Vとなる。振動板22と個別電極12との間の静電圧力に寄与する電圧は約20Vとなるため、振動板22を個別電極12に当接させることができない。この場合、変位はするが当接しないため、ノズル31からの液滴吐出量は少なくなる。
以上のように実施の形態1によれば、振動板22の個別電極12と対向する側に、酸化シリコンよりも比誘電率が高い圧電体膜23を有することにより、静電圧力のみで振動板22を変位させる場合よりも大きな変位を生じさせることができ、ギャップ長を長くすることができる。そして、ギャップの容積(排除体積)を増やすことができ、復元圧力を大きくすることができるため、吐出量を増やすことができる。このとき、駆動制御回路40の制御により、ドライバIC48を介して可動電極となる振動板22と固定電極となる個別電極12との間に振動板22と個別電極12とを当接させることができる第1の電圧(高電圧)と当接させることができない第2の電圧(低電圧)の2種類の電圧で印加し、ノズル31から液滴を吐出させるような制御を行うようにしたので、例えば、段差構造の個別電極等、液滴吐出ヘッドの構造を複雑なものにしなくても、印加する電圧を変化させるだけで、振動板22の変位を異ならせて液滴吐出量を変化させることができる。これにより、例えば、同じノズルから着弾位置毎に液滴吐出量の異なるインクを吐出することにより印刷等を行う場合には高精細、高画質の印刷を行うことができる。
実施の形態2.
上述の実施の形態では、電極基板10、キャビティ基板20及びノズル基板30の3つの基板が積層されて構成された液滴吐出ヘッドについて説明したが、液滴吐出ヘッドの構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、リザーバを吐出室とは別の基板に形成し、積層した4層の基板で構成した液滴吐出ヘッドについても適用することができる。
上述の実施の形態では、電極基板10、キャビティ基板20及びノズル基板30の3つの基板が積層されて構成された液滴吐出ヘッドについて説明したが、液滴吐出ヘッドの構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、リザーバを吐出室とは別の基板に形成し、積層した4層の基板で構成した液滴吐出ヘッドについても適用することができる。
実施の形態3.
図7は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置(プリンタ100)の外観図である。また、図8は液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。図7及び図8の液滴吐出装置は液滴吐出方式(インクジェット方式)による印刷を目的とする。また、いわゆるシリアル型の装置である。図8において、被印刷物であるプリント紙110が支持されるドラム101と、プリント紙110にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
図7は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置(プリンタ100)の外観図である。また、図8は液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。図7及び図8の液滴吐出装置は液滴吐出方式(インクジェット方式)による印刷を目的とする。また、いわゆるシリアル型の装置である。図8において、被印刷物であるプリント紙110が支持されるドラム101と、プリント紙110にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
一方、ドラム101は、ベルト105等を介してモータ106により回転駆動される。また、駆動制御回路40は、印刷用データ及び制御信号に基づいて送りネジ104、モータ106を駆動させる。また、ここでは図示していないが、実施の形態1で説明したようにドライバIC48からCOM及び各SEGを出力して振動板22を振動させ、制御をしながらプリント紙110に印刷を行わせる。
ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に吐出させる用途においては、カラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機化合物等の電界発光素子を用いた表示パネル(OLED等)の基板に吐出させる用途においては、発光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途においては、例えば導電性金属を含む液体を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids :デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、布等の染料の吐出等にも利用することができる。
実施の形態4.
図9は本発明を利用した波長可変光フィルタを表す図である。上述の実施の形態は、液滴吐出ヘッドを例として説明した。本発明は液滴吐出ヘッドだけに限定されず、他の微細加工によるアクチュエータを利用した駆動デバイスにも適用することができる。例えば、図9の波長可変光フィルタは、ファブリ・ペロー干渉計の原理を利用し、可動鏡120と固定鏡121との間隔を変化させながら選択した波長の光を出力するものである。ここで、例えば、可動鏡120を圧電体となる材料の膜を積層して形成する。そして、可動鏡120を変位させるためには、可動鏡120が設けられている、シリコンを材料とする可動体122を変位させる。そのために固定電極123と可動体122(可動鏡120)とを所定の間隔(ギャップ)で対向配置する。また、固定電極123に電荷を供給して電圧印加を行うために固定電極端子124を取り出す。そして、可動体122には支持部が一体形成されており、支持部の弾性力が復元圧力となる。固定電極123側に可動体122を引き寄せて駆動動作をさせる際、前述したように、例えば、可動体122を固定電極123に当接させるような第1の電圧と、可動鏡120を撓ませるだけの第2の電圧とを、駆動制御回路40Aが選択して印加することにより、所定の駆動動作を行わせることができる。
図9は本発明を利用した波長可変光フィルタを表す図である。上述の実施の形態は、液滴吐出ヘッドを例として説明した。本発明は液滴吐出ヘッドだけに限定されず、他の微細加工によるアクチュエータを利用した駆動デバイスにも適用することができる。例えば、図9の波長可変光フィルタは、ファブリ・ペロー干渉計の原理を利用し、可動鏡120と固定鏡121との間隔を変化させながら選択した波長の光を出力するものである。ここで、例えば、可動鏡120を圧電体となる材料の膜を積層して形成する。そして、可動鏡120を変位させるためには、可動鏡120が設けられている、シリコンを材料とする可動体122を変位させる。そのために固定電極123と可動体122(可動鏡120)とを所定の間隔(ギャップ)で対向配置する。また、固定電極123に電荷を供給して電圧印加を行うために固定電極端子124を取り出す。そして、可動体122には支持部が一体形成されており、支持部の弾性力が復元圧力となる。固定電極123側に可動体122を引き寄せて駆動動作をさせる際、前述したように、例えば、可動体122を固定電極123に当接させるような第1の電圧と、可動鏡120を撓ませるだけの第2の電圧とを、駆動制御回路40Aが選択して印加することにより、所定の駆動動作を行わせることができる。
同様にモータ、センサ、SAWフィルタのような振動素子(レゾネータ)、ミラーデバイス等、他の種類の微細加工のアクチュエータ等にも上述の駆動制御方法を適用することができる。
10 電極基板、11 凹部、12 個別電極、13 リード部、14 端子部、15 液体供給口、20 キャビティ基板、21 吐出室、22 振動板、23 圧電体膜、23A 絶縁膜、24 リザーバ、25 封止材、26 電極取り出し口、27 共通電極端子、30 ノズル基板、31 ノズル、32 ダイヤフラム、33 オリフィス、40 駆動制御回路、41 ヘッド制御部、42a CPU、42b バス、43a ROM、43b RAM、43c キャラクタジェネレータ、45 論理ゲートアレイ、46a COM発生回路、46b 駆動パルス発生回路、47 コネクタ、48 ドライバIC、49 配線、50 外部装置、51 バス、60 電源回路、100 プリンタ、101 ドラム、102 液滴吐出ヘッド、103 紙圧着ローラ、104 送りネジ、105 ベルト、106 モータ、107 プリント制御手段、110 プリント紙、120 可動鏡、121 固定鏡、122 可動体、123 固定電極、124 固定電極端子。
Claims (6)
- 固定電極と、該固定電極と距離をおいて対向する可動電極とを備え、前記可動電極は、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を前記固定電極と対向する側に有するアクチュエータの駆動制御方法であって、
前記圧電体膜の歪みに係る圧力及び前記固定電極と前記可動電極との間に発生する静電圧力により、前記可動電極を前記固定電極に当接させるための第1の電圧と、前記可動電極を前記固定電極に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、
前記可動電極と前記固定電極との間に、前記選択に係る電圧を印加して、前記可動電極を動作させる工程と
を有することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。 - 請求項1記載のアクチュエータ駆動制御方法を適用して駆動デバイスによる駆動を制御することを特徴とする駆動デバイスの駆動制御方法。
- 請求項1記載のアクチュエータ駆動制御方法による駆動をアクチュエータに行わせるための駆動制御回路を備えることを特徴とする駆動デバイス。
- 個別電極と、ノズルと、該ノズルに連通する流路と、前記個別電極と所定の距離で対向する形で前記流路の一部に設けられた振動板とを備え、前記振動板は、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料からなる圧電体膜を前記固定電極と対向する側に有する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法であって、
前記圧電体膜の歪みに係る圧力及び前記個別電極と前記振動板との間に発生する静電圧力により、前記振動板を前記個別電極に当接させるための第1の電圧と、前記振動板を前記個別電極に当接させない変位をさせるための第2の電圧とのいずれか一方を選択する工程と、
前記振動板と前記個別電極との間に前記選択に係る電圧を印加し、前記振動板を変位させて前記流路内の液体を加圧して液滴を吐出する工程と
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。 - 請求項4記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法を適用して液滴吐出装置の吐出を制御することを特徴とする液滴吐出装置の吐出制御方法。
- 請求項4記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法による吐出制御を行って、吐出対象物への液滴吐出を行うための駆動制御回路を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
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JP2008028553A JP2009184285A (ja) | 2008-02-08 | 2008-02-08 | アクチュエータ及び駆動デバイスの駆動制御方法、駆動デバイス並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の吐出制御方法、液滴吐出装置 |
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