JP2009184139A - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Kunihiko Yoshida
邦彦 吉田
Yohei Ichihara
洋平 一原
Sukeyuki Matsuda
祐之 松田
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Abstract

【課題】ポリエステル系バイオプラスチックの基材樹脂に加水分解抑制剤を配合してポリエステル系バイオプラスチックの耐加水分解性を向上しつつ、成形品の固化時間が長くならず、生産性が低下しない樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】基材樹脂分子と結合して基材樹脂分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品50を製造する方法において、加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物を予め作製し、この包含物を基材樹脂に混入して成形することにより、成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除する。
【選択図】図1

Description

本発明は樹脂成形品の製造方法、より詳しくは、ポリエステル系バイオプラスチックの耐加水分解性を向上した樹脂成形品の製造方法に関する。
従来、植物等の生物資源(バイオマス)を原料として製造され、かつ廃棄時には微生物等により水と二酸化炭素とに分解されて自然環境への負荷が小さいポリエステル系バイオプラスチックとして、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート等が知られている。このようなポリエステル系バイオプラスチックは、例えばポリプロピレンやABS等の一般の合成樹脂と異なり、加水分解を受けるので、高温高湿条件化では、樹脂成形品の使用中に、空気中の水分により基材樹脂の分子鎖が切断され、低分子量化が起き、強度等の物性が低下するという問題がある。
そこで、この問題に対処するために、ポリエステル系バイオプラスチックで樹脂成形品を製造するときは、特許文献1に記載されているように、例えばポリカルボジイミド(繰り返し単位:−R−N=C=N−)等の加水分解抑制剤を基材樹脂に配合することが知られている。すなわち、加水分解抑制剤は、基材樹脂の分子鎖に存在する加水分解促進部位(例えばカルボキシル基、水酸基、アミノ基等)と化学的な結合を起こして該部位を封鎖することにより、基材樹脂の分子鎖が加水分解するのを抑制する機能を有するものである。
特開2007−182501(段落0033)
ところが、本発明者等がポリエステル系バイオプラスチックを用いた樹脂成形品の製造を研究・検討していたところ、前記のような加水分解抑制剤を配合したときは、配合しないときと比べて、成形品の固化時間(溶融状態であった樹脂が固まるまでの時間)が長くなり、成形サイクルが遅延して、生産性が低下するという問題に遭遇した。これは、1つの基材樹脂分子鎖と結合した加水分解抑制剤がさらに他の基材樹脂分子鎖と結合して分子鎖全体が長大化し、樹脂分子の運動性が阻害されて、樹脂分子の規則的配列に時間がかかり、結晶化が遅延することが主たる原因であろうと考えられる。
本発明は、ポリエステル系バイオプラスチックの基材樹脂に加水分解抑制剤を配合した場合に生じる前記問題に対処するもので、ポリエステル系バイオプラスチックの耐加水分解性を向上しつつ、成形品の固化時間が長くならず、生産性が低下しない樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、基材樹脂分子と結合して基材樹脂分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品を製造する方法であって、成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除することを特徴とする。
ここで、「基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制」とは、例えば、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との接触を断つこと又は最小限に抑えることにより達成される。
次に、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法であって、加水分解抑制剤は、基材樹脂分子の末端部と結合するものであることを特徴とする。
次に、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の樹脂成形品の製造方法であって、加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物を予め作製し、この包含物を基材樹脂に混入して成形することにより、成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除することを特徴とする。
次に、本願の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法であって、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にドライブレンドして成形することにより、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することを特徴とする。
次に、本願の請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法であって、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にインサート成形することにより、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、基材樹脂分子と結合して基材樹脂分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品を製造する方法において、成形時は、例えば、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との接触を断ち又は最小限に抑えることによって、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制するようにしたから、1つの加水分解抑制剤が複数の基材樹脂分子鎖と結合するようなことが起こらず、結果として、基材樹脂分子鎖の長大化ひいては成形品の固化時間の長期化が抑制され、生産性の低下が回避されることとなる。
一方、成形後は、例えば、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との接触を積極的に許容することによって、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合の抑制を解除するようにしたから、結果として、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合が起き易くなり、成形品の耐加水分解性が向上することとなる。
次に、請求項2に記載の発明によれば、加水分解抑制剤は、基材樹脂分子の末端部と結合するから、換言すれば、基材樹脂の分子鎖の末端部に加水分解促進部位が存在するから、例えば加水分解抑制剤が基材樹脂分子の中間部と結合する場合等と比べて、1つの加水分解抑制剤が複数の基材樹脂分子鎖と結合したときの分子鎖全体の長大化がより顕著となり、成形品の固化時間がより長期化することとなる。そして、このような状況においても、成形品の固化時間の長期化が良好に抑制され、生産性の低下が確実に回避されることとなる。
次に、請求項3に記載の発明によれば、加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物を予め作製し、この包含物を基材樹脂に混入して成形するだけで、確実、容易に、成形時における基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合の抑制と、成形後における該結合の抑制の解除とを行うことが可能となる。
より具体的には、加水分解抑制剤が前記包含物から経時で拡散することにより、包含物を基材樹脂に混入した初期は、基材樹脂中での加水分解抑制剤の拡散が一時的に抑制された状態となり、これによって、成形時には基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合が抑制される。そして、その後、包含物を基材樹脂に混入してからある程度時間が経過したときは、基材樹脂中での加水分解抑制剤の拡散がある程度進行した状態となり、これによって、成形後には基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合の抑制が解除される。
その場合に、請求項4に記載の発明によれば、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にドライブレンドして成形するだけで、確実、容易に、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することが可能となる。
ここで、基材樹脂にドライブレンドする加水分解抑制剤の包含物としては、例えば、加水分解抑制剤を高濃度で樹脂に練り込んでマスターバッチ化した粒子状物又は繊維状物等が好ましい。
同様に、請求項5に記載の発明によれば、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にインサート成形するだけで、確実、容易に、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することが可能となる。
ここで、基材樹脂にインサート成形する加水分解抑制剤の包含物としては、例えば、加水分解抑制剤を練り込んだ樹脂性フィルム状物又は繊維状物、あるいは加水分解抑制剤を含浸させた織物等が好ましい。
なお、以上のマスターバッチ化やインサート成形の他に、例えばゼオライトのような多孔性微粒子に加水分解抑制剤を吸着保持させたものを基材樹脂に添加して成形したり、例えばシリカ等の無機微粒子で加水分解抑制剤を被覆したものを基材樹脂に添加して成形してもよい。
以下、発明の最良の実施の形態及び実施例を通して本発明をさらに詳しく説述する。
図1は、本発明の最良の実施の形態に係る樹脂成形品の成形装置10の全体構成図であって、(a)は成形時を示すもの、(b)は成形後を示すものである。
この成形装置10は、主たる構成要素として、射出機20と成形型30とを有している。射出機20は、図1(a)に示すように型締め状態の成形型30のキャビティ内に溶融状態の樹脂40を射出するもので、シリンダ内に基材樹脂のペレットを投入するためのホッパ21を備えている。
成形型30は、相互に型締め及び型開きする固定型31と移動型32とを備えている。移動型32は、型締め及び型開きのために移動可能に構成され、図1(b)に示すように型開きすることにより、溶融状態であった樹脂40がキャビティ形状に賦形されて固まった樹脂成形品50が成形型30から取り出される。
本実施形態では、樹脂成形品50の基材樹脂は、ポリエステル系バイオプラスチックであり、樹脂成形品50は、例えば車室のインストルメントパネルやグローブリッドあるいはドアトリム等の自動車部品である。
ポリエステル系バイオプラスチックとしては、例えばポリ乳酸(PLA:Poly Lactic Acid)が好ましく使用可能である。ポリ乳酸は、周知のように、乳酸がエステル結合によって重合した高分子であり、デンプンや糖質あるいはセルロースを含むトウモロコシやサトウキビ等の生物資源(バイオマス)から生産可能であり、ライフサイクルで見ると、二酸化炭素(CO)の収支がゼロであるカーボンニュートラルなプラスチックである。
ポリ乳酸のようなポリエステル系樹脂の場合、専ら分子中のエステル結合が加水分解を受け、遊離のカルボン酸が生成し、そのカルボキシル基が加水分解促進部位となって加水分解が連鎖的に起こり、樹脂の低分子量化ひいては物性の低下が生じる。そこで、樹脂の初期酸価を低減して連鎖的な加水分解を回避するように、基材樹脂の分子鎖に存在するカルボキシル基と化学結合して加水分解促進部位を封鎖する加水分解抑制剤が基材樹脂に配合される。
ここで、本実施形態において好ましく使用可能なバイオプラスチックとしては、ポリ乳酸の他に、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート等がが挙げられる。
また、本実施形態において好ましく使用可能な加水分解抑制剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられ、特にポリカルボジイミド(繰り返し単位:−R−N=C=N−)が好適である。
そして、加水分解抑制剤の配合量としては、樹脂成形品の0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。配合量が0.1重量%未満では加水分解抑制効果が不足し、配合量が5重量%を超えても加水分解抑制効果はほとんど増大しない。このような観点から、加水分解抑制剤の配合量は、樹脂成形品のおよそ1重量%程度が最も好適である。
本実施形態においては、基材樹脂分子と結合して基材樹脂分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品50を製造するに際し、図1(a)に示す成形時は、例えば、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との接触を断ち又は最小限に抑えることによって、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、図1(b)に示す成形後は、例えば、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との接触を積極的に許容することによって、基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合の抑制を解除する。
そのため、加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物を予め作製し、この包含物を基材樹脂に混入して成形する。
具体的には、図2に例示するように、加水分解抑制剤を高濃度で樹脂に練り込んでマスターバッチ化した粒子状物52…52(第1の実施形態)、又は加水分解抑制剤を高濃度で樹脂に練り込んでマスターバッチ化した繊維状物(第2の実施形態)を、加水分解抑制剤の包含物とし、これを基材樹脂51のペレットと共にホッパ21に投入することにより、加水分解抑制剤の包含物52と基材樹脂51とをドライブレンドして成形した成形品50を得ることができる。
ここで、ポリ乳酸の場合、2種類の光学異性体があるが、本発明では、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、もしくはこれらの混合物のいずれも好ましく使用可能である。
したがって、これらの第1及び第2の実施の形態では、任意のポリ乳酸を用いて加水分解抑制剤のマスターバッチ52をつくり、これを任意のポリ乳酸51にドライブレンドすればよい。この結果、図2に矢印で示したように、成形後は、樹脂成形品50の内部において、加水分解抑制剤がマスターバッチ52から経時で自然に基材樹脂51中に拡散していくこととなる。
これらの第1及び第2の実施形態における成形時の樹脂40の溶融温度は、マスターバッチ52のポリ乳酸の融点程度としておく。成形時の溶融温度をこれより高くすると、マスターバッチ52が基材樹脂51中に必要以上に溶け込んでしまって、成形時に、加水分解抑制剤が基材樹脂51中に拡散してしまい、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合を抑制することができなくなる。
一方、図3に例示するように、加水分解抑制剤を練り込んだ樹脂性フィルム状物53(第3の実施形態)、又は図4に例示するように、加水分解抑制剤を練り込んだ樹脂性繊維状物54…54(第4の実施形態)、あるいは加水分解抑制剤を含浸させた織物(第5の実施形態)を、加水分解抑制剤の包含物とし、これを成形型30のキャビティ内に仕込んで溶融樹脂40を射出することにより、加水分解抑制剤の包含物53,54を基材樹脂51にインサート成形した成形品50を得ることができる。
これらの第3〜第5の実施形態では、任意のポリ乳酸又は他のバイオプラスチックあるいは綿やマニラ麻や竹等の天然繊維を用いて加水分解抑制剤含有フィルム53、含有繊維54、含浸織物をつくり、これを任意のポリ乳酸51にインサート成形すればよい。この結果、図3及び図4に矢印で示したように、成形後は、樹脂成形品50の内部において、加水分解抑制剤がフィルム53、繊維54、織物から経時で自然に基材樹脂51中に拡散していくこととなる。
これらの第3〜第5の実施形態における成形時の樹脂40の溶融温度は、加水分解抑制剤含有フィルム53、含有繊維54、含浸織物のポリ乳酸又は他のバイオプラスチックの融点程度あるいは天然繊維の分解温度以下としておく。成形時の溶融温度を過度に高くすると、前記フィルム53、繊維54、織物が基材樹脂51中に必要以上に溶け込んだり、熱分解してしまって、インサート成形にならず、成形時に、加水分解抑制剤が基材樹脂51中に拡散してしまい、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合を抑制することができなくなる。
なお、図3には、加水分解抑制剤含有フィルム53が樹脂成形品50の中央部に挟まれる例を示したが、該フィルム53を樹脂成形品50の一方又は両方の側面に配置しても構わない。
このように、本実施形態では、基材樹脂51分子と結合して基材樹脂51分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品50を製造する方法において、図1(a)に示す成形時は、例えば、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との接触を断ち又は最小限に抑えることによって、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合を抑制するようにしたから、1つの加水分解抑制剤が複数の基材樹脂51,51分子鎖と結合するようなことが起こらず、結果として、基材樹脂51分子鎖の長大化ひいては成形品50の固化時間の長期化が抑制され、生産性の低下が回避されることとなる。
一方、図1(b)に示す成形後は、例えば、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との接触を積極的に許容することによって、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合の抑制を解除するようにしたから、結果として、基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合が起き易くなり、成形品50の耐加水分解性が向上することとなる。
その場合に、加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物52,53,54を予め作製し、この包含物52,53,54を基材樹脂51に混入して成形するだけで、確実、容易に、成形時における基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合の抑制と、成形後における該結合の抑制の解除とを行うことが可能となる。
すなわち、加水分解抑制剤が前記包含物52,53,54から経時で拡散することにより、包含物52,53,54を基材樹脂51に混入した初期は、基材樹脂51中での加水分解抑制剤の拡散が一時的に抑制された状態となり、これによって、成形時には基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合が抑制されることとなる。
そして、その後、包含物52,53,54を基材樹脂51に混入してからある程度時間が経過したときは、基材樹脂51中での加水分解抑制剤の拡散がある程度進行した状態となり、これによって、成形後には基材樹脂51分子と加水分解抑制剤との結合の抑制が解除されることとなる。
具体例として第1及び第2の実施形態では、加水分解抑制剤の包含物52を基材樹脂51にドライブレンドして成形するだけで、確実、容易に、加水分解抑制剤の包含物52を基材樹脂51に混入して成形することが可能となる。
同様に、第3〜第5の実施形態では、加水分解抑制剤の包含物53,54を基材樹脂51にインサート成形するだけで、確実、容易に、加水分解抑制剤の包含物53,54を基材樹脂51に混入して成形することが可能となる。
ここで、基材樹脂51の分子鎖の末端部に加水分解促進部位が存在していると、加水分解抑制剤は、基材樹脂51分子の末端部と結合するから、例えば加水分解抑制剤が基材樹脂51分子の中間部と結合する場合等と比べて、1つの加水分解抑制剤が複数の基材樹脂51,51分子鎖と結合したときの分子鎖全体の長大化がより顕著となり、成形品50の固化時間がより長期化することとなるが、このような状況においても、成形品50の固化時間の長期化が良好に抑制され、生産性の低下が確実に回避されることとなる。
(実施例1:第1の実施形態に相当)
<調製方法>
PLA樹脂と加水分解抑制剤(ポリカルボジイミド、商品名:カルボジライト(登録商標)LA−1、日清紡績株式会社製)とを配合比(90/10)で押出成形機により押出成形を行い、得られたストランドをカットしてマスターバッチ52としての加水分解抑制剤含有樹脂粒子A…Aを得た。また、比較例(従来法)として、PLA樹脂と前記加水分解抑制剤とを配合比(99/1)で押出成形機により押出成形を行い、得られたストランドをカットして加水分解抑制剤含有樹脂粒子Bを得た。
前記押出成形に用いた装置及び成形条件等は以下の通りである。
押出成形機:株式会社プラスチック工学研究所製、商品名:BT−30
成形条件:樹脂温度=190℃
<耐加水分解性評価用の試験片の射出成形>
前記加水分解抑制剤含有樹脂粒子A…Aと、PLA樹脂とを配合比(90/10)でドライブレンドし、射出成形して実施例1の耐加水分解性評価用の試験片を得た。また、比較例として、前記加水分解抑制剤含有樹脂粒子Bをそのまま射出成形して耐加水分解性評価用の試験片を得た。さらに、参考例として、前記加水分解抑制剤含有樹脂粒子Aと同じPLA樹脂粒子のみをそのまま射出成形して耐加水分解性評価用の試験片を得た。
前記射出成形に用いた装置及び成形条件等は以下の通りである。
射出成形装置:東芝機械株式会社製、型締力:220トン
成形条件:バレル温度=180℃、金型温度110℃
<耐加水分解性評価>
以上のようにして得られた成形品(試験片)について、耐加水分解性を評価する試験を行った。すなわち、試験片を50℃、相対湿度95%の条件下に200時間放置した後、曲げ強度を測定し、初期強度に対する強度保持率(%)を耐加水分解性の指標とした。この保持率が大きいほど耐加水分解性に優れているといえる。結果を図5に示す。
・耐加水分解性
強度保持率(%)=(試験後強度÷初期強度)×100
○:強度保持率が100〜80%
△:強度保持率が80〜60%
×:強度保持率が60%以下
<固化時間評価>
また、前記試験片の射出成形時において、変形のない固化した成形品(試験片)が得られる最短の時間(射出時刻から型開き時刻までの時間)を計測し、参考例のそれに対する比率を固化時間の指標とした。この比率が小さいほど生産性に優れているといえる。結果を図5に示す。
・固化時間
○:固化時間が参考例の1.2倍以下
△:固化時間が参考例の1.2〜1.6倍
×:固化時間が参考例の1.6倍以上
(実施例2:第3の実施形態に相当)
<調製方法>
PLA樹脂と加水分解抑制剤(ポリカルボジイミド、商品名:カルボジライト(登録商標)LA−1、日清紡績株式会社製)とを配合比(90/10)で押出成形機によりフィルムに押し出し、冷却ロールで冷却して加水分解抑制剤含有フィルム53としてのフィルムCを得た。
前記押出成形に用いた装置及び成形条件等は以下の通りである。
押出成形機:株式会社プラスチック工学研究所製、商品名:BT−30
成形条件:樹脂温度=190℃
<耐加水分解性評価用の試験片の射出成形>
前記フィルムCと、PLA樹脂とを配合比が(10/90)となるようにインサート成形(フィルムCを成形品の中央部に挟む)して実施例2の耐加水分解性評価用の試験片を得た。
<耐加水分解性評価及び固化時間評価>
以上のようにして得られた成形品(試験片)について、実施例1と同様の方法で耐加水分解性及び固化時間の評価を行った。結果を図5に示す。
(実施例3:第4の実施形態に相当)
<調製方法>
PLA樹脂と加水分解抑制剤(ポリカルボジイミド、商品名:カルボジライト(登録商標)LA−1、日清紡績株式会社製)とを配合比(90/10)で押出成形機により押出成形を行い、得られたストランドを延伸機により延伸した後、カットして加水分解抑制剤含有繊維54としての繊維D…Dを得た。
<耐加水分解性評価用の試験片の射出成形>
前記繊維D…Dと、PLA樹脂とを配合比が(10/90)となるようインサート成形(繊維D…Dを成形品の内部に均一に分散させる)して実施例3の耐加水分解性評価用の試験片を得た。
<耐加水分解性評価及び固化時間評価>
以上のようにして得られた成形品(試験片)について、実施例1と同様の方法で耐加水分解性及び固化時間の評価を行った。結果を図5に示す。
図5から、ポリエステル系バイオプラスチックであるポリ乳酸を用いて、成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除するように製造した実施例1〜3は、耐加水分解性が、従来法で製造された比較例と同等に向上しながら、固化時間が、加水分解抑制剤を混入しない参考例と同等に短く、生産性も低下していないことがわかる。
なお、本発明で採用可能な成形方法は、射出成形に限定されない。
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、ポリエステル系バイオプラスチックの耐加水分解性を向上しつつ、成形品の固化時間が長くならず、生産性が低下しない樹脂成形品の製造方法を提供する技術であるから、樹脂成形品の製造方法、より詳しくは、ポリ乳酸等のポリエステル系バイオプラスチックの耐加水分解性を向上した樹脂成形品の製造方法の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
本発明の最良の実施の形態に係る樹脂成形品の成形装置の全体構成図であって、(a)は成形時を示すもの、(b)は成形後を示すものである。 第1の実施形態において、成形後に加水分解抑制剤が経時で基材樹脂中に自然拡散することを示す樹脂成形品の拡大断面図である。 同じく第3の実施形態において、成形後に加水分解抑制剤が経時で基材樹脂中に自然拡散することを示す樹脂成形品の拡大断面図である。 同じく第4の実施形態において、成形後に加水分解抑制剤が経時で基材樹脂中に自然拡散することを示す樹脂成形品の拡大断面図である。 実施例1〜3、比較例、及び参考例の耐加水分解性評価及び固化時間評価の結果を示す一覧表である。
符号の説明
10 成形装置
20 射出機
30 成形型
50 樹脂成形品
51 基材樹脂
52 加水分解抑制剤含有樹脂粒子(包含物)
53 加水分解抑制剤含有フィルム(包含物)
54 加水分解抑制剤含有繊維(包含物)

Claims (5)

  1. 基材樹脂分子と結合して基材樹脂分子の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が配合された樹脂成形品を製造する方法であって、
    成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    加水分解抑制剤は、基材樹脂分子の末端部と結合するものであることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    加水分解抑制剤が経時で拡散するように、加水分解抑制剤の包含物を予め作製し、この包含物を基材樹脂に混入して成形することにより、成形時は基材樹脂分子と加水分解抑制剤との結合を抑制し、成形後は該結合の抑制を解除することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にドライブレンドして成形することにより、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  5. 請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
    加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂にインサート成形することにより、加水分解抑制剤の包含物を基材樹脂に混入して成形することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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JP2004189860A (ja) * 2002-12-11 2004-07-08 Toyo Ink Mfg Co Ltd 縮合型熱可塑性樹脂組成物及びその利用

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