JP2009183259A - コリネ型細菌形質転換体及びそれを用いるブタノールの製造方法 - Google Patents

コリネ型細菌形質転換体及びそれを用いるブタノールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課 題】効率よくブタノールを生産する微生物、及び微生物を用いて効率よくブタノールを製造する方法を提供する。
【解決手段】コリネ型細菌中で機能する、以下の(1)〜(6)からなる群より選択される少なくとも1つ以上のDNAをコリネ型細菌に導入することを特徴とする、ブタノール生産能を有する形質転換体
(1)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードするDNA
(2)3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNA
(3) 3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードするDNA
(4)クロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードするDNA
(5)アルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNA
(6)アルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNA
【選択図】なし

Description

本発明は、ブタノール生産技術に関する。詳しくは、ブタノール生産機能を付与するために特定の遺伝子操作が施されたコリネ型細菌の形質転換体、及びそれによる効率的なブタノールの製造方法に関する。
地球温暖化、及び化石資源枯渇問題を背景に、再生可能資源を原料とした“バイオ燃料”が注目されている。ブタノールは、バイオエタノールに続く次世代バイオ燃料として、高熱含量(容量当たりの熱量がエタノールの1.5倍)、低腐食性、低含水性、ガソリンへ高混合可能、及びディーゼル油への易混合性などの多くの利点を有している。
微生物によってブタノールが生成される現象は、1861年にパスツールによって初めて報告されたが、20世紀初頭、ハイム・ワイツマンが単離したクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)を用いて本格的な工業生産化が始まった。本微生物は、糖やデンプンを原料として、ブタノール:アセトン:エタノールを6:3:1の割合で生成する。この性質を利用したのが、“アセトン・ブタノール・エタノール発酵(以下「ABE発酵」と記す。)”であり、現在のバイオプロセスによるブタノール生産も基本は変わっていない。このABE発酵が大規模実利用されたのは、第一次世界大戦勃発時にも遡る。イギリスでは火薬原料に用いるためのアセトン需要が増加したが、クロストリジウム・アセトブチリカムを用いたABE発酵によって年間約3万トンのアセトンが供給された。その後1917年には米国も参戦し、イギリスと同様、米国でも中西部コーンベルト地域にてABE発酵が行われ、生産されたアセトンが無煙火薬原料などに利用された。当時、ABE発酵にてアセトンと同時に得られるブタノールは、単なる副生成物であったが、その後、1920年以降の自動車産業の急速な成長によって、速乾塗料の材料として需要が拡大した。さらに、1936年にワイツマンのクロストリジウム・アセトブチリカムによるABE発酵の特許切れを皮切りに、日本、インド、オーストラリア、南アフリカなどの世界各国にてABE発酵によるアセトン及びブタノールの生産が開始された。各国にて第二次世界大戦時頃まで生産が続けられたが、1950年代から1960年代にかけての石油化学工業の発達による安価な生産が可能となったことと、原料である糖蜜の動物飼料への利用増加を原因としてABE発酵法は衰退した。しかし近年、世界各国でのバイオ燃料生産利用の高まりの中で、ABE発酵を利用したバイオ燃料としてのブタノール生産研究開発が再び注目されている。
これまでにブタノールを生産する菌としては、ABE発酵菌又はブタノール・イソプロパノール発酵菌として知られるクロストリディウム属細菌のクロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム・サッカロアセトブチィリカム(Clostridium saccharoacetobutylicum)、クロストリジウム・オウランティブチィリカム(Clostridium aurantibutyricum)、クロストリジウム・パスツーリアウム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム・スポロゲンズ(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム・カダベリス(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム・テタノモルフュウム(Clostridium tetanomorphum)などが報告されている 〔Keis, S. et al., Taxonomy and phylogeny of industrial solvent-producing clostridia. Int. J. Syst. Bacteriol. 45:693-705 (1995)〕、〔George, H.A. et al., Acetone, isopropanol, and butanol production by Clostridium beijerinckii (syn. Clostridium butylicum) and Clostridium aurantibutyricum. Appl. Environ. Microbiol. 45:1160-1163 (1983)〕、及び 〔Gottwald, M. et al., Formation of n-butanol from d-glucose by strains of the "Clostridium tetanomorphum" group. Appl. Environ. Microbiol. 48:573-576(1984)〕。近年、ABE発酵研究の活発化を反映して、クロストリジウム・アセトブチリカムの標準株Clostridium acetobutylicum ATCC824株、及び高ブタノール生産株Clostridium beijerinckii NCIMB8052は全ゲノムが解読されている。
しかし、クロストリジウム属細菌を用いたブタノール生産には以下の(1)〜(3)の課題が存在する。
(1)クロストリジウム属細菌は、増殖、及びブタノールの生産において絶対嫌気性条件を必要とする。従って、嫌気条件下での培養、すなわち、培養装置内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換するなどの煩雑な培養操作が必要である。また、増殖速度が極端に遅いために、増殖に伴うブタノール生産の速度が低い。これらの問題点を解決するには、高増殖速度の好気性微生物の利用が考えられるが、好気条件下でのブタノール生産技術は報告されていない。
(2)ABE発酵では、細胞増殖期において酢酸及び酪酸が生成され、細胞増殖が停止した定常期にpHの酸性化が溶媒(アセトン及びブタノール)生成期への移行の引き金となり代謝系が大幅に変化して(以下、この現象を「代謝シフト」と記す)、アセトン及びブタノールが生成される。
また、近年の分子生物学的研究により、上記代謝シフトのメカニズムに関して以下のことが判明している。ABE発酵を行うクロストリジウム属細菌は、細胞増殖停止後に胞子形成を行うが、胞子形成は転写因子Spo0Aによって引き起こされ、同時に本転写因子がブタノール生成に関わる遺伝子群の発現も誘導する。本転写因子は、細胞内のブチリルリン酸、及びアセチルリン酸濃度の増加によって活性化されることが報告されている。これらのリン酸生成は、pHの酸性化によって引き起こされると考えられ、従来経験的に認められていたpH酸性化によるブタノール生成に関わる遺伝子群の誘導が明らかになった。このように、発酵プロセスの厳密な制御が必要であり、発酵開始してからアセトン及びブタノールが生成されるまでに時間を要する、胞子形成期への移行によりアセトン及びブタノール生成が停止し、長時間生成が持続しない等の課題がある。
(3)ABE発酵菌に最も用いられているクロストリジウム・アセトブチリカムにおいて、親株より生育が早くABE発酵能を消失した変異株(退化株)が継代培養中に増大し、主要菌株となる。これはABE発酵に関わる遺伝子群が巨大プラスミドpSOL1上に存在し、このプラスミドが脱落することによりABE発酵機能が欠失することに要因する。これがABE発酵の不安定要因の一つとなっている。
したがって、これらの課題を解決する新規ブタノール生産微生物の創製及びプロセスの開発が望まれている。
クロストリジウム属細菌を用いたブタノール生産技術としては、以下のような技術が知られている。例えば、特許文献1は、胞子形成に関わる遺伝子を制御することにより、胞子形成期を遅らせ、結果としてブタノール生産を向上させる技術を開示している。また、特許文献2及び非特許文献1は、連続発酵法において、ガス−ストリッピング(gas-stripping)法により、連続的にブタノールを抽出する技術を開示している。また、非特許文献2及び非特許文献3は、クロストリジウム属細菌を固定化してブタノールを生産する技術を開示している。また、非特許文献4は、連続発酵法においてクロストリジウム属細菌の高濃度菌体を用い、菌体をリサイクルする技術を開示している。しかし、これらは、何れもクロストリジウム属細菌を用いる嫌気条件下でのブタノール生産技術であり、上記の(1)〜(3)の課題を解決するものではない。
非特許文献5には、クロストリジウム・アセトブチリカムによるグルコース基質からのブタノール発酵生産に関与する生成経路及びその各代謝工程で機能する各種の酵素が明らかにされている。しかし、遺伝子組換え手法などによるクロストリジウム属以外の微生物を利用した効率的なブタノール生産技術に関しては何ら言及されていない。
クロストリジウム属細菌以外の微生物による溶媒生産技術に関しては以下のような技術が知られている。例えば、特許文献3は、好熱性の通性嫌気性細菌ジオバチラス・エスピー BS-001株を用いて、セルロースから低級アルコールであるエタノールを主として生産し、その他にプロパノール(1-プロパノール)、イソブタノール(2-ブタノール)、ブタノール(1-ブタノール)を生産する技術を開示している。しかし、同文献の開示技術は、セルロースからエタノールを生産することに主眼をおいたものであり、ブタノールの生産能が不十分である。さらに、同文献は、ブタノール生成経路、ブタノール生成に関与する酵素及びその遺伝子に関する情報、及びブタノール生産能を向上するための遺伝子組換え手法などの効率的なブタノール生産技術についての有効な知見を何ら提供するものでない。
特許文献4には、代謝副産物としてのブタノール生成を抑制する技術が開示されている。
本文献では、Bacillus licheniformis微生物代謝経路の一つとして存在するブタノール生成経路が示されている。そして、副産物ブタノール生成を抑制するには、ブタノール生成経路中の何れかの代謝工程で機能する酵素を失活せしめることが教示されている。
非特許文献6には、クロストリディウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum) ATCC 824株由来のβ-ヒドロキシブチル-CoA デヒドロゲナーゼ(HBD)、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(別名クロトナーゼ)(CRT)、及びブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(BCD)のそれぞれの酵素をコードする遺伝子を、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に導入し、好気条件下及び嫌気条件下で培養した場合の各酵素活性を測定したことが記載されている。しかし、好気及び嫌気の両条件下でBCD活性は検出されず、従って、ブタノール生産技術を開示するものではない。
特許文献5は、クロストリジウム・アセトブチリカム由来のアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子及び3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ遺伝子、ユーグレナ グラシリス(Euglena gracilis)由来のトランス-2-エノール-CoAレダクターゼ遺伝子、クロストリジウム・ベージェリンキー由来のアルデヒド
デヒドロゲナーゼ遺伝子、並びにクロストリジウム・アセトブチリカム又はエシェリヒア・コリ由来のアルコール デヒドロゲナーゼ遺伝子を、宿主としてエシェリヒア・コリ、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)内で発現させ、ブタノールを生産する技術を開示している。しかしながら、同文献開示技術には、コリネ型細菌(コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum))を宿主としたブタノール生産技術は示されておらず、また、コリネバクテリウム・グルタミカムを宿主とした場合、同文献開示技術に示された遺伝子の組み合わせでは、ブタノールが生産できないことを本発明で明らかにしている(後記する比較例参照)。
非特許文献7及び非特許文献8は、クロストリジウム・アセトブチリカム由来のアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ、β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ、ブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ、ブチリルアルデヒド
デヒドロゲナーゼ、及びブタノール デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、宿主としてエシェリヒア・コリ内で発現させ、ブタノールを生産する技術を開示している。しかし、同文献開示技術には、コリネ型細菌(コリネバクテリウム・グルタミカム)を宿主としたブタノール生産技術は示されておらず、また、コリネバクテリウム・グルタミカムを宿主とした場合、同文献開示技術に示された遺伝子の組み合わせでは、ブタノールが生産できないことを本発明で明らかにしている(後記する比較例参照)。
発明者らはこれまでに、遺伝子組換え型コリネバクテリウム・グルタミカムを還元条件下の反応液中で反応させ、高効率に乳酸、コハク酸又はエタノールを生産する技術を開示してきた(特許文献6)。
ブタノール生産は、一般的には、嫌気的還元条件下で実施されるが、特許文献6で示されている如く、コリネ型細菌の嫌気的還元条件下での物質生産はコリネ型細菌の増殖が抑制されても行なうことができる。
このことは、物質生産に使用される炭素質の流れが目的生産物に専ら向けられ、増殖には使用されないことを意味する。そして、増殖分裂に伴う分泌物の実質的な抑制が実現されていることも意味する。従って、コリネ型細菌にブタノール生産能を組換え技術により付与することは、組換え型エシャリヒア・コリ等による増殖を伴うブタノール生産技術よりも効率的に優れた技術となるのである。
国際公開公報WO2006/007530 米国公開公報US2005089979 特開2005-261239号 米国公開公報 US20070190605 国際公開公報WO2007/041269 特許第3869788号 Bioprocessand Biosystems Engineering, Vol.27, 2005, p207-214. PakistanJournal of Biological Sciences, Vol.9, 2006, p1923-1928. AppliedBiochemistry and Biotechnology, Vol.113-116, 2004, p887-898. Journalof Biotechnology, Vol.120, p197-206. GerhardGottschalk 「Bacterial Metabolism」Second Edition, 1986by Springer-Verlage New York Inc. Journalof Bacteriology, Vol.178, 1996, p3015-3024. AppliedMicrobiology and Biotechnology, Vol.77, 2008, p1305-1316. Metabolicengineering, PMID: 17942358.
本発明は、効率よくブタノールを生産することができる微生物、及び微生物を用いて効率よくブタノールを製造することができる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、コリネ型細菌中で機能する(1)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、(2)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ)活性を有する酵素をコードする遺伝子、(3)3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、(4)クロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、(5)アルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子及び(6)アルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子をコリネ型細菌に導入した形質転換体は、ブタノールを効率よく生産することを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の微生物及びブタノールの製造方法を提供する。
項1. コリネ型細菌中で機能する、以下の(1)〜(6)からなる群より選択される少なくとも1つ以上のDNAをコリネ型細菌に導入することを特徴とする、ブタノール生産能を有する形質転換体。
(1)配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号1、2、3又は4で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
(2)配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号5、6、7又は8で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
(3)配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号9又は10で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
(4)配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号11又は12で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
(5)配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号13、14、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
(6)配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号15、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
項2. (1)において、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium
acetobutylicum)由来、配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
(2)において、配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来、配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
(3)において、配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来、配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
(4)において、配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来、配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)由来のクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
(5)において、配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、かつ、
(6)において、配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNAが、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする項1に記載の形質転換体。
項3. (1)が、ラルストニア・ユートロファ由来の配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
(2)が、クロストリジウム・アセトブチリカム由来の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA又はクロストリジウム・ベージェリンキー由来の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
(3)が、、クロストリジウム・アセトブチリカム由来の配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
(4)が、ストレプトミセス・アベルミティリス由来の配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
(5)が、エシェリヒア・コリ由来の配列番号13又は16で表わされる塩基配列からなるDNAであり、かつ
(6)が、コリネバクテリウム・グルタミカム由来の配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA又はエシェリヒア・コリ由来の配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAである
ことを特徴とする項1又は2に記載の形質転換体。
項4. (1)〜(5)又は(1)〜(6)のDNAをコリネ型細菌に導入することを特徴とする項1〜3のいずれか一項に記載の形質転換体。
項5. コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカム、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、及び、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)からなる群より選ばれるものであることを特徴とする項1〜4のいずれか一項に記載の形質転換体。
項6. コリネバクテリウム・グルタミカムが、コリネバクテリウム・グルタミカムR株(FERM P−18976)、又は、その乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)破壊株である項5に記載の形質転換体。
項7. Corynebacterium glutamicum But1(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−482)、Corynebacterium glutamicum But2(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−483)、又はCorynebacterium glutamicum But3(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−484)の名称で寄託されている形質転換体。
項8. 項1〜7の何れか一項に記載の形質転換体により、糖類を含有する培地中でブタノール生成を行なわせる工程と、生成したブタノールを回収する工程とを含むブタノールの製造方法。
本発明により、糖類等から極めて効率よくブタノールを生産する組換えブタノール生産形質転換体が提供された。
本発明により、再生可能資源を原料とした効率的なブタノール生産が可能となり、工業生産における合理的プロセスを実現することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)ブタノール生産能を有する形質転換体
本発明のブタノール生産能を有する形質転換体は、コリネ型細菌中で機能する、以下の(1)〜(6)からなる群より選択される少なくとも1つ以上のDNAをコリネ型細菌に導入することにより得られる、ブタノール生産能を有する形質転換体である。「コリネ型細菌中で機能する」とは、DNAがコードする酵素がコリネ型細菌中で発現し、所望する触媒作用を呈することを意味する。
本明細書中、 (1)〜(6)の遺伝子をブタノール生産関連遺伝子ともいう。
(1)配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号1、2、3又は4で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
(2)配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号5、6、7又は8で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
(3)配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号9又は10で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
(4)配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号11又は12で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
(5)配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号13、14、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
(6)配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号15、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA。
宿主
本発明において形質転換の対象となる宿主は、ブタノール生産関連遺伝子群を含む組換えベクターにより形質転換され、これらの遺伝子がコードするブタノール生産に関与する酵素が発現し、結果としてブタノールを生産することができるコリネ型細菌であれば特に限定されない。
宿主として用いられるコリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bargeys Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌又はマイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が好ましい。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム、例えば、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(FERM P-18976)、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020又はATCC31831等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869等のブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum);ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ-233(FERM BP-1497)もしくはMJ-233AB-41(FERM BP-1498)等のブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum);ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872等のブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)ATCC8010、ATCC4336、ATCC21056、ATCC31250、ATCC31738又はATCC35698等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)ATCC19210又はATCC27289等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)NO. 239(FERM P-13221)、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)NO. 240(FERM P-13222)又は、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)IAM1010又はマイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)IFO3764等が挙げられる。
また、コリネ型細菌は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。例えば、ラクテートデヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)、マレートデヒドロゲナーゼ(malate dehydrogenase)などの遺伝子の破壊株が挙げられる。このような遺伝子破壊株を宿主として用いることにより、ブタノールの生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
上記の宿主の中でも、とりわけ好ましいのは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(FERM P-18976)やそのラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase:LDH)遺伝子の破壊株である。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(FERM P-18976)の乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株とは、遺伝子工学的手法により、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が破壊されて、ピルビン酸から乳酸への代謝経路が遮断されるべく組換えられたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rである。このような乳酸デヒドロゲナーゼ破壊株やその作製方法については、WO2005/010182A1に記載されている。
ブタノール生産関連酵素遺伝子
本発明における(1)のDNAは、アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ(THL)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。(2)のDNAは、3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(HBD)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。(3)のDNAは、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(CRT)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。(4) のDNAは、クロトニル-CoA レダクターゼ(CCR)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。(5)のDNAは、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(BYDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。(6)のDNAは、アルコール デヒドロゲナーゼ(BDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子である。
上記(1)〜(6)のブタノール生産関連遺伝子としては、これらの遺伝子を含むDNA断片を、その配列に従って合成したDNA断片を使用することが出来る。また、ブタノール生産関連酵素タンパク質間で保存されているアミノ酸配列をもとにハイブリダイゼーション法、PCR法により断片を取得することが可能である。さらに他の既知のブタノール生産関連遺伝子配列を基に設計したミックスプライマーを用い、ディジェネレートPCRによって断片を取得することが可能である。
上記(1)〜(6)のブタノール生産関連遺伝子はコリネ型細菌内におけるブタノール生産活性が保持されている(コリネ型細菌中で機能する)限り、天然の塩基配列の一部が他の塩基(ヌクレオチド)と置換されていてもよく、削除されていてもよく、また新たに塩基(ヌクレオチド)が挿入されていてもよく、さらには塩基配列の一部が転位されていてもよい。これらの遺伝子誘導体のいずれも本発明に用いることができる。上記の一部とは、例えばアミノ酸残基換算で1乃至数個(1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)であってよい。
上記(1)〜(6)の遺伝子の起源は、ブタノールを生産する菌であってもブタノール生産能を有さない菌であってもかまわない。
ブタノールを生産する菌としては、アセトン・ブタノール発酵菌又はブタノール・イソプロパノール発酵菌として知られるクロストリディウム属細菌、例えばクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム サッカロアセトブチィリカム(Clostridium saccharoacetobutylicum)、クロストリジウム オウランティブチィリカム(Clostridium aurantibutyricum)、クロストリジウム パスツーリアウム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム スポロゲンズ(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム カダベリス(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム
テタノモルフュウム(Clostridium tetanomorphum)などが挙げられる〔Keis, S. et al., Taxonomy and phylogeny of industrial solvent-producing clostridia.Int. J.Syst. Bacteriol. 45:693-705 (1995)〕、〔George, H.A. et al., Acetone, isopropanol, and butanol production by Clostridium beijerinckii (syn. Clostridium butylicum) and Clostridium aurantibutyricum. Appl. Environ. Microbiol. 45:1160-1163 (1983)〕、〔Gottwald, M. et al., Formation of n-butanol from d-glucose by strains of the "Clostridium tetanomorphum" group. Appl. Environ. Microbiol. 48:573-576(1984)〕、〔Jones,D.T. et al., Acetone-butanol fermentation revisited. Microbiol. Rev. 50:484-524 (1986)〕。中でも、クロストリジウム アセトブチリカム及びクロストリジウム ベージェリンキー由来の遺伝子を使用するのが好ましい。
これらのクロストリディウム属細菌におけるブタノール生成経路、すなわちアセチル-CoAからブタノールへの代謝経路は、具体的にはアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAへの反応を触媒するアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)(別名チオーラゼ)(以下、遺伝子を「thiL」もしくは「paaJ」(アイソザイムが存在)、酵素を「THL」と記す)、アセトアセチル-CoAから3-ヒドロキシブチリル-CoAへの反応を触媒する3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxybutyryl-CoAdehydrogenase)(以下、遺伝子を「hbd」、酵素を「HBD」と記す)、3-ヒドロキシブチリル-CoAからクロトニル-CoAへの反応を触媒する3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)(別名クロトナーゼ)(以下、遺伝子を「crt」、酵素を「CRT」と記す)、クロトニル-CoAからブチリル-CoAへの反応を触媒するブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)(以下、遺伝子を「bcd」、酵素を「BCD」と記す)、ブチリル-CoAからブチルアルデヒドへの反応を触媒するブチリルアルデヒド デヒドロゲナーゼ(butyraldehyde dehydrogenase)(以下、遺伝子を「adhe1」、酵素を「BYDH」と記す)、及びブチルアルデヒドからブタノールへの反応を触媒するブタノール デヒドロゲナーゼ(butanol dehydrogenase)(以下、遺伝子を「adhe1」、酵素を「BDH」と記す)から構成されている。なお、上述のクロストリディウム属細菌におけるBYDHによる反応とBDHによる反応とは、一つの酵素が両触媒活性を有するbifunctional酵素により触媒され、該酵素は2種のアイソザイム遺伝子、adhe1及びadhe遺伝子によりコードされている 〔Noelling, J. et al., Genome sequence and comparative analysis of the solvent-producing bacterium Clostridium acetobutylicum. J. Bacteriol. 183:4823-4838〕及び〔Nair, R.V. et al., Molecular characterization of an aldehyde/alcohol dehydrogenase gene from Clostridium acetobutylicum ATCC 824. J. Bacteriol. 176:871-885 (1994)〕。
さらに上記のBCD活性には、エレクトロントレンスファーフラボプロテイン(ETF)アルファ-サブユニット遺伝子(以下、遺伝子を「etfA」、蛋白質を「ETFA」と記す)、及びベータ-サブユニット遺伝子(以下、遺伝子を「etfB」、蛋白質を「ETFB」と記す)が必要なことが知られている。クロストリジウム アセトブチリカムにおいては、bcd遺伝子のすぐ下流にetfA遺伝子及びetfB遺伝子が配置され、bcd-etfA-etfB遺伝子クラスターが形成されている。
本発明において、宿主としてコリネ型細菌を用いた場合、クロストリディウム属細菌由来のthiL、paaJ、hbd、及びcrt遺伝子は発現及び機能するが、bcd-etfA-etfB、adhe及びadhe1は発現及び機能しないことが明らかとなった(後記する実施例及び比較例参照)。
さらに、これらの遺伝子は、ブタノール生産能を有さない菌から取得してもよい。具体的には、以下の例があげれらる。
第1の例として、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)は、ブタノールの生産は報告されていないが、THL(本菌株においては、遺伝子が「phaA」、酵素が「PhaA」と命名されている)をコードする遺伝子を有している〔Pohlmann, A. et al., Genome sequence of the bioplastic-producing 'Knallgas' bacterium Ralstonia eutropha H16. Nat. Biotechnol. 24:1257-1262 (2006)〕。従って、(1)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子として、上述のラルストニア ユートロファ由来のPhaAをコードする遺伝子を用いてもよい。本発明では、宿主であるコリネ型細菌において、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA遺伝子を導入した場合、高いTHL活性を示すことを明らかにした(後記する実施例参照)。
第2の例として、ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス コリナス(Streptomyces collinus)、ストレプトミセス シナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)などの微生物に由来するクロトニル-CoA レダクターゼ(crotonyl-CoA reductaase)(以下、遺伝子を「ccr」、酵素を「CCR」と記す)をコードする遺伝子が挙げられる〔Wu, G. et al., Predicted highly expressed genes in the genomes of Streptomyces coelicolor and Streptomyces avermitilis and the implications for their metabolism. Microbiology 151:2175-2187 (2005)〕、〔Liu, H. et al., Role of crotonyl coenzyme A reductase in determining the ratio of polyketides monensin A and monensin B produced by Streptomyces cinnamonensis. J. Bacteriol. 181:6806-6813 (1999)〕、及び〔Han, L. et al., A novel alternate anaplerotic pathway to the glyoxylate cycle in streptomycetes. J. Bacteriol. 179:5157-5164 (1997)〕。CCRは、BCDと同様に、クロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒する酵素である。本発明においては、上記ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子に代えて、ストレプトミセス属のCCRをコードする遺伝子を(4)の遺伝子として用いてもよい。本酵素CCRをコードする遺伝子を使用するときは、エレクトロン
トレンスファー フラボプロテイン(ETF)遺伝子を導入しなくても、高いブタノール生産能が得られる。本発明では、宿主であるコリネ型細菌において、ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来のccr遺伝子を導入した場合、高いCCR活性を示すことを明らかにした(後記する実施例参照)。さらに、CCRと同じくクロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒するBCDについては、ビューティリビブリオ フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のいずれのBCDをコードする遺伝子をコリネ型細菌内に導入しても活性が検出されなかった(後記する実施例参照)。
尚、発明者らは、これまでにクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)内に導入した組換え株について、BCD活性が検出され、さらにクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子を含むブタノール生産遺伝子群をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)内に導入した組換え株がブタノールを生産することを報告している(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008))。すなわち、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)内で機能したクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内では機能しないことを示している。
第3の例として、(5)のBYDH酵素反応を触媒する酵素をコードする遺伝子として、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)をコードする、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のeutE遺伝子 (Blattner,F.R.et al., The complete genome sequence of Escherichia coli K-12. Science 277:1453-1474 (1997))及びmhpF遺伝子 (Ferrandez A. et al., Genetic characterization and expression in heterologous hosts of the 3-(3-hydroxyphenyl)propionate catabolic pathway of Escherichia coli K-12. J Bacteriol. 179:2573-2581. (1997));アルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードする、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子 (Chen Y.-M., et al., Regulation of the adhE gene, which encodes ethanol dehydrogenase in Escherichia coli. J Bacteriol. 173:8009-8013. (1991))及びロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のadhe遺伝子 (Koo OK.,et al., Cloning and characterization of the bifunctional alcohol/acetaldehyde dehydrogenase gene (adhE) in Leuconostoc mesenteroides isolated from kimchi. Biotechnol Lett. 27:505-510. (2005))が挙げられる。本発明では、宿主であるコリネ型細菌において、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のeutE遺伝子を導入した株で最も高いBYDH活性が検出され、さらに、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子又はロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のadhe遺伝子を導入した株においても活性が検出された(後記する実施例参照)。
さらに、これまで宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)又はサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、ブタノール生産させる際に使われていたクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のald遺伝子(特許第3869788号)、宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を持ちいてブタノールを生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe遺伝子及びadhe1遺伝子(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008)及びAtsumi S, et al., Metabolic engineering of Escherichia coli for 1-butanol production. Metabolic engineering, PMID: 17942358)の他、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のadhe遺伝子及びクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri)由来のaad遺伝子などクロストリディウム菌由来のBYDHをコードする遺伝子は、いずれもコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で機能しないことが明らかになった(後記する実施例参照)。
第4の例として、(6)のBDH酵素反応を触媒する酵素遺伝子として、アルコール デヒドロゲナーゼをコードする、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhA遺伝子(Kotrbova-Kozak A, et al., Transcriptionally regulated adhA gene encodes alcohol dehydrogenase required for ethanol and n-propanol utilization in Corynebacterium glutamicum R. Appl Microbiol Biotechnol. 76:1347-1356. (2997));アルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードする、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子 (Chen Y.-M., et al., Regulation of the adhE gene, which encodes ethanol dehydrogenase in Escherichia coli. J Bacteriol. 173:8009-8013. (1991))及びロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のadhe遺伝子 (Koo OK.,et al., Cloning and characterization of the bifunctional alcohol/acetaldehyde dehydrogenase gene (adhE) in Leuconostoc mesenteroides isolated from kimchi. Biotechnol Lett. 27:505-510. (2005)) が挙げられる。本発明では、宿主であるコリネ型細菌において、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhA遺伝子を導入した株で最も高いBDH活性が検出され、さらに、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子又はロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のadhe遺伝子を導入した株においても活性が検出された(後記する実施例参照)。
尚、これまで宿主としてバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)を用いて、ブタノール生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbdhB遺伝子(特許第3869788号)、宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を持ちいてブタノールを生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe遺伝子及びadhe1遺伝子(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008)及びAtsumi S, et al., Metabolic engineering of Escherichia coli for 1-butanol production. Metabolic engineering, PMID: 17942358)の他、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のadhe遺伝子及びクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri)由来のaad遺伝子などクロストリディウム菌由来のBYDHをコードする遺伝子は、いずれもコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で機能しないことが明らかになった(後記する実施例参照)。
上記(1)〜(6)の遺伝子の由来微生物の種類、組み合わせ、及び導入の順番等は限定されない。
本発明における(1)〜(6)のブタノール生産関連遺伝子の好ましい態様としては、上記(1)において、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の遺伝子(phaA)であり、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の遺伝子(それぞれthiL及びpaaJ)であり、配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の遺伝子(atoB)であることが好ましい。
上記(2)においては、配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の遺伝子(hbd)であり、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来の遺伝子(hbd)であり、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の遺伝子(phaB1)であり、配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の遺伝子(PaaH)であることが好ましい。
上記(3)においては、配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の遺伝子(crt)であり、配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の遺伝子(crt)であることが好ましい。
上記(4)においては、配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来の遺伝子(ccr)であり、配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)由来の遺伝子(ccr)であることが好ましい。
上記(5)においては、配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の遺伝子(それぞれeutE、mhpF及びadhE)であり、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来の遺伝子(adhe)であることが好ましい。
上記(6)においては、配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNAが、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子(adhA)であり、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の遺伝子(adhE)であり、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来の遺伝子(adhe)であることが好ましい。
本発明ではまた、
(1)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ(THL)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(2) 3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(HBD)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA若しくはクロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号5若しくは6で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(3) 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ(CRT)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(4) クロトニル-CoA レダクターゼ(CCR)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来の配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(5) アルデヒド デヒドロゲナーゼ(BYDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA若しくは配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号13若しくは16で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;かつ、
(6) アルコール デヒドロゲナーゼ(BDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子として、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA若しくはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA、又は配列番号15若しくは16で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いるのが好ましい。
より好ましくは、(1)が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAであり、(2)が、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA又はクロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAであり、(3)が、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来の配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAであり、(4)が、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来の配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAであり、(5)が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の配列番号13又は16で表わされる塩基配列からなるDNAであり、かつ(6)が、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の配列番号15又はエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAであることである。
ここで、例えば、「配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列」とは、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法又はプラーク・ハブリダイゼーション法等により得られるDNAを意味する。
本発明において「ストリンジェントな条件下」は、一般的な条件、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition,1989,Vol2,p11.45等に記載された条件を指す。具体的には、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合を指す。
また、本発明においては、例えば、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAと約90%以上の配列相同性を有するものであることが好ましい。より好ましくは、約92%以上、さらに好ましくは約95%以上、特に好ましくは約98%以上の配列相同性を有するものである。
本発明のブタノール生産能を有する形質転換体は、コリネ型細菌中で機能する上記(1)〜(6)のDNAのうちの少なくとも1以上をコリネ型細菌に導入することにより得られるが、上記(1)〜(5)又は(1)〜(6)のDNAをコリネ型細菌に導入することにより得られるブタノール生産能を有する形質転換体が好ましく、コリネ型細菌中で機能する上記(1)〜(6)のDNAをコリネ型細菌に導入することにより得られるブタノール生産能を有する形質転換体がより好ましい。
種々の生物由来のTHL、HBD、CRT、CCR、BYDH、BDHをコードする遺伝子の配列をPCR(polymerase chain reaction)法により増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーとしては以下のものが挙げられる。このようなプライマーとしては、THLをコードする遺伝子を増幅するための配列番号96、97の各塩基配列で表されるプライマー;HBDをコードする遺伝子を増幅するための配列番号47、48の各塩基配列で表されるプライマー;CRTをコードする遺伝子を増幅するための配列番号49、50の各塩基配列で表されるプライマー;CCRをコードする遺伝子を増幅するための配列番号102、103の各塩基配列で表されるプライマー;BYDHをコードする遺伝子を増幅するための配列番号85、86、又は配列番号89、90の各塩基配列で表されるプライマー;及びBDHをコードする遺伝子を増幅するための配列番号76、77又は配列番号89、90の各塩基配列で表されるプライマーなどが挙げられる。
PCR法は、公知のPCR装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用することができる。PCRのサイクルは、公知の技術にしたがって定めればよく、例えば、変性、アニーリング、伸張を1サイクルとし、通常10〜100サイクル、好ましくは、約20〜50サイクルの条件とすればよい。PCRの鋳型としては、上述のブタノール生成経路の酵素活性を示す微生物から単離したDNAを用いて、PCR法によりTHL、HBD、CRT、CCR、BYDH、BDHをコードする遺伝子のcDNAを増幅することができる。
PCR法によって得られた遺伝子は、適当なクローニングベクターに導入することができる。クローニング法としては、pGEM-T easy vector system(Promega社製)、TOPO TA-cloning system(Invitrogen社製)、Mighty Cloning Kit(Takara社製)などの商業的に入手可能なPCRクローニングシステムなどを使用することもできる。また、方法の1つの例を実施例で詳記するが、該領域を含むDNA断片を、既知のTHL、HBD、CRT、CCR、BYDH、BDHをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて適切に設計された合成プライマーを鋳型として用いたハイブリダイゼーション法により取得することもできる。
ベクターの構築
次いで、PCR法で得られた遺伝子を含むクローニングベクターを、微生物、例えばエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109菌株などに導入し、該菌株を形質転換する。この形質転換された菌株を、ベクター中のマーカー遺伝子に対応した適当な抗生物質(例えばアンピシリン、クロラムフェニコールなど)を含む培地で培養し、培養物から菌体を回収する。回収された菌体からプラスミドDNAを抽出する。プラスミドDNAの抽出は、公知の技術によって行なうことができ、また市販のプラスミド抽出キットを用いて簡便に抽出することもできる。市販のプラスミド抽出キットとしては、キアクイックプラスミド精製キット(商品名:Qiaquick plasmid purification kit、キアゲン社製)などが挙げられる。この抽出されたプラスミドDNAの塩基配列を決定することにより、THL、HBD、CRT、CCR、BYDH、BDHをコードする遺伝子配列を確認することができる。DNAの塩基配列の決定は、公知の方法、例えばジオキシヌクレオチド酵素法などにより決定することができる。また、キャピラリー電気泳動システムを用いて、検出には多蛍光技術を使用して塩基配列を決定することもできる。また、DNAシーケンサー、例えばABI PRISM 3730xl DNA Analyzer(アプライドバイオシステム社製)などを使用して決定することもできる。
上記の方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行なうことができる。種々の微生物のベクターや外来遺伝子の導入法及び発現法は、多くの実験書に記載されているので〔例えば、Sambrook, J. & Russel, D. W. Molecular Cloning: A Laboratory Manual(3rd Edition)CSHL Press(2001)、又はAusubel, F. et al. Current protocols in molecular biology. Green Publishing and Wiley Interscience, New York(1987)等〕、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行なうことができる。
広範囲の種類のプロモーターが本発明に使用するのに適している。そのようなプロモーターは、酵母、細菌及び他の細胞供給源を含む多くの公知の供給源から得られ、コリネ型細菌において目的遺伝子の転写を開始させる機能を有する塩基配列であればいかなるものであってもよい。例えば、コリネ型細菌においてはlac、trc、tacプロモーター等を用いることができる。本発明に使用されるプロモーターは、必要に応じて、修飾して、その調節機構を変更することができる。また、目的遺伝子の下流に配置される制御配列下のターミネーターについても、コリネ型細菌においてその遺伝子の転写を終了させる機能を有する塩基配列であれば、いかなるものであってもよい。
THL、HBD、CRT、CCR、BYDH、BDHをコードする各遺伝子を、宿主となるコリネ型細菌において、プラスミド上又は染色体上で発現させる。例えば、プラスミドを用いて、これらの遺伝子は発現可能な制御配列下に導入される。ここで「制御配列下」とはこれらの遺伝子が、例えば、プロモーター、インデューサー、オペレーター、リボソーム結合部位及び転写ターミネーター等との共同作業によ転写翻訳できることを意味する。このような目的で使用されるプラスミドベクターとしては、コリネ型細菌内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであれば良い。その具体例としては、例えば、コリネ型細菌を宿主とする場合は、ブレブバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)2256由来のpAM330〔特開昭58-67699〕、〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕及び 〔Yamaguchi, R. et al., Determination of the complete nucleotide sequence of the Brevibacterium lactofermentum plasmid pAM330 and the analysis of its genetic information. Nucleic Acids Symp. Ser. 16:265-267(1985)〕、コリネバクテリウム グルタミカム ATCC13058由来のpHM1519 〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕及びpCRY30 〔Kurusu, Y. et al., Identification of plasmid partition function in coryneform bacteria. Appl. Environ. Microbiol. 57:759-764 (1991)〕、コリネバクテリウム グルタミカム T250由来のpCG4〔特開昭57-183799〕、〔Katsumata, R. et al., Protoplast transformation of glutamate-producing bacteria with plasmid DNA. J. Bacteriol.、159:306-311 (1984)〕、pAG1、pAG3、pAG14、pAG50〔特開昭62-166890〕pEK0、pEC5、pEKEx1 〔Eikmanns, B.J. et al., A family of Corynebacterium glutamicum/Escherichia coli shuttle vectors for cloning, controlled gene expression, and promoter probing. Gene, 102:93-98 (1991)〕 とその誘導体などが挙げられる。更にはファージDNAなどが挙げられ、宿主において複製可能である限り、他のいかなるベクターも用いることができる。また、ベクターは、種々の制限酵素部位をその内部にもつマルチクローニングサイトを含んでいる、又は単一の制限酵素部位を含んでいることが好ましい。
形質転換に使用するプラスミドベクターの構築は、例えば、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のhbd及びcrt、ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来のccr、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のeutE並びにコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhAの各遺伝子を用いる場合は、塩基配列が確認された該遺伝子に、適当なプロモーター、ターミネーター等の制御配列を連結後、これを上記例示されているいずれかのプラスミドベクターの適当な制限酵素部位に挿入することにより、構築することが出来る。詳細は、実施例に記載している。
形質転換
目的遺伝子を含むプラスミドベクターのコリネ型細菌への導入方法としては、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法として、例えば電気穿孔法、コンジュゲーション法などの公知の方法で行うことができる。具体的には、コリネ型細菌の場合、電気パルス法を、公知の方法 〔Kurusu, Y. et al., Electroporation-transformation system for Coryneform bacteria by auxotrophic complementation. Agric. Biol. Chem. 54:443-447 (1990)〕 及び 〔Vertes A.A. et al., Presence of mrr- and mcr-like restriction systems in Coryneform bacteria. Res. Microbiol. 144:181-185 (1993)〕により行うことができる。
上記方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行うことができる。大腸菌や放線菌等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入法及び発現法は、多くの実験書に記載されているので(例えば、Sambrook、J.、Russel、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Edition、CSHL Press、2001;HopwoodにD.A.、Bibb、M.J.、Chater、K.F.、Bruton、C.J.、Kieser、H.M.、Lydiate、D.J.、Smith、C.P.、Ward、J.M.、Schrempf、 H.Genetic manipulation of Streptomyces:A laboratory manual、The John lnnes institute、Norwich、UK、1985等)、コリネ型細菌の場合でも、このような方法を適宜応用してベクターの選択、遺伝子の導入及び発現を行うことができる。
上記の方法により創製されるコリネ型細菌の形質転換体としては、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But1(受託番号:NITE P−482)、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But2(受託番号:NITE P−483)、及びコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But3(受託番号:NITE P−484)(いずれも、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)に寄託済み。寄託日:2008年1月29日)が挙げられる。
本発明の形質転換体は、ブタノール生産性を向上させるために、解糖系の流量の増加、ブタノール、浸透圧又は有機酸に対する耐性の増加、及び副生物(目的とする生成産物以外の炭素含有分子を意味すると理解される)生産の減少、からなる群から選択された特徴の一以上を生じる遺伝子修飾をさらに含むことができる。そのような遺伝子修飾は、具体的には、外来性遺伝子の過剰発現及び/又は内在性遺伝子の不活化、古典的突然変異誘起、スクリーニング及び/あるいは目的変異体の選別により導入することができる。
また、形質転換体は、紫外線、エックス線又は薬品等を用いる人工的な変異導入方法により変異しうるが、このように得られるどのような変異株であっても本発明の目的とするブタノール生産能を有するかぎり、本発明の形質転換された微生物として使用することができる。
かくして創製された本発明のコリネ型細菌の形質転換体(以下、単に「形質転換体」という)は、微生物の培養に通常使用される培地を用いて培養すればよい。この培地としては、通常、炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地又は合成培地等を用いることができる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトール又はグリセリン等の糖質又は糖アルコール、酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸又はグルコン酸等の有機酸、エタノール又はプロパノール等のアルコール等が挙げられる。また、所望によりノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これら炭素源の培地における濃度は通常約0.1〜10%(wt)程度である。
窒素源としては、窒素化合物、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機もしくは有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ベプトン、NZ−アミン、蛋白質加水分解物又はアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用可能である。窒素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。窒素源の培地濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト又は炭酸カルシウム等が挙げられる。これら無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。無機塩類の培地濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01〜1.0%(wt)程度である。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物又は動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
培地のpHは約5〜8が好ましい。
好ましい微生物培養培地としては、コリネ型細菌用培地としては、A培地〔Inui, M. et al., Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen deprivation conditions. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196 (2004)〕、BT培地〔Omumasaba, C.A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕等が挙げられる。
培養温度は約15〜45℃とすればよく、培養時間は約1〜7日間とすればよい。
ついで、形質転換体の培養菌体を回収する。上記の如くして得られる培養物から培養菌体を回収分離する方法としては、特に限定されず、例えば遠心分離や膜分離等の公知の方法を用いることができる。
回収された培養菌体に対して処理を加え、得られる菌体処理物を次工程に用いてもよい。前記菌体処理物としては、培養菌体に何らかの処理が加えられたものであればよく、例えば、菌体をアクリルアミド又はカラギーナン等で固定化した固定化菌体等が挙げられる。
(II)ブタノールの製造方法
上記の如くして得られる培養物から回収分離された形質転換体の培養菌体又はその菌体処理物は、好気条件下又は嫌気条件下の反応培地でのブタノール生成反応に供せられる。上記形質転換体により、糖類を含有する培地(反応培地)中でブタノール生成を行なわせる工程と、生成したブタノールを回収する工程とを含むブタノールの製造方法も本発明の1つである。
ブタノール生成方式は、回分式、流加式、連続式いずれの生成方式も可能である。
反応培地には、ブタノールの原料となる有機炭素源(例えば、糖類等)が含まれていればよい。有機炭素源としては、本発明の形質転換体が生化学反応に利用できる物質であればよい。具体的には、糖類としては、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトースもしくはマンノースなどの単糖類、セロビオース、ショ糖もしくはラクトース、マルトースなどの二糖類、又はデキストリンもしくは可溶性澱粉などの多糖類などが挙げられる。特に、単糖類、及び二糖類が好ましく、単糖類がより好ましく、中でもグルコースがさらにより好ましい。なお、本発明においては、2種以上の糖の混合糖を用いることもできる。
反応培地には、その他、形質転換体又はその処理物がその代謝機能を維持するために必要な成分、即ち、各種糖類等の炭素源;蛋白質合成に必要な窒素源;リン、カリウム又はナトリウム等の塩類;さらに鉄、マンガン又はカルシウム等の微量金属塩を含むことができる。これらの添加量は所要反応時間、目的有機化合物生産物の種類又は用いられる形質転換体の種類等により適宜定めることが出来る。用いる形質転換体によっては特定のビタミン類の添加が好ましい場合もある。炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、微量金属塩は、公知のもの、例えば形質転換体の増殖培養工程につき例示したものを用いることができる。
反応培地のpHは、約6〜8が好ましい。
形質転換体又はその菌体処理物と糖類との反応は、本発明の形質転換体又はその菌体処理物が活動できる温度条件下で行なわれることが好ましく、形質転換体又はその菌体処理物の種類などにより適宜選択することができる。通常、約25〜35℃とすればよい。
最後に、上述のようにして反応培地で生成したブタノールを回収する。ブタノールの回収は、培地を回収することにより行うことができる。また、バイオプロセスで用いられる公知の方法で培地からブタノールを分離することもできる。そのような公知の方法として、ブタノール生成液の蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法等があり、反応液組成や副生物等に応じてその分離精製採取法は適宜定めることが出来る。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 ブタノール生産遺伝子のクローニングと発現
(1)微生物からの染色体DNAの抽出
(1-1)ビューティリビブリオ フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens) ATCC19171からの染色体DNA抽出
MPYG培地[peptone 10 g, yeast extract 10 g, resazurin (0.025%) 4 ml, salt solution (CaCl2
0.2 g, MgSO4 0.2 g, K2HPO4 1 g, KH2PO4
1 g, NaHCO3 10 g, NaCl 2 g を蒸留水1Lに溶解) 40 ml, Vitamin K3-Hemin solution (Menadion 3.3 mg, Hemin 50 mgを蒸留水100 mlに溶解) 10 ml, L-cysteine.HCl 0.5 g, (NH42SO4 0.5 g, volatile fatty acid solution (propionic acid 6 ml, n-butyric acid 4 ml, n-valeric acid 1 ml, isovaleric acid 1 ml, isobutyric acid 1 ml, acetic acid 17 ml) 3.1 ml, glucose 5 g、蒸留水 888 ml、pH 7.0に調整]に、白金耳を用いてビューティリビブリオ フィブリソルベンス (Butyrivibrio fibrisolvens) ATCC19171を植菌後、対数増殖期まで37℃の嫌気チャンバー内で培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-2)クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)
NCIMB 8052からの染色体DNA抽出
Reinforced clostridial media/RCM (ベクトン・ディッキンソン社製)に、白金耳を用いてクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii) NCIMB 8052を植菌後、対数増殖期まで30℃の嫌気チャンバー内で培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-3)クロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri) type strain NBRC12016からの染色体DNA抽出
Clostridium kluyveri培地
[potassium phosphate buffer (0.02 M, pH 7.0) 980 ml, MnSO4 (0.01 M) 1 ml, Na2MoO4 (0.01 M) 1 ml, FeSO4 (0.02 M) 2.5 ml, sodium thioglycolate 0.5 g, CaCl2.2H2O 0.01 g, MgSO4.7H2O 0.25 g, (NH4)2SO4
2.6 g, sodium acetate 7.5 g, ethyl alcohol (99.5%) 15 ml, yeast extract 10 g] に、白金耳を用いてクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri) type strain NBRC12016を植菌後、対数増殖期まで37℃の嫌気チャンバー内で培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-4)コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) R (FERM P-18976) 及びコリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei) JCM12072からの染色体DNA抽出
A培地 [(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 gを蒸留水1Lに溶解] に、炭素源として、最終濃度4%になるように50% (w/v)グルコース溶液を添加した。この培地に、白金耳を用いてコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) R (FERM P-18976) 及びコリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei) JCM12072を植菌後、対数増殖期まで33℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-5)エシェリヒア コリ(Escherichia coli)K12 MG1655からの染色体DNA抽出
L培地[tryptone 10 g、yeast extract 5 g、NaCl 5 gを蒸留水1 Lに溶解]に、白金耳を用いてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)K12 MG1655を植菌後、対数増殖期まで37℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-6)ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)type strain NBRC100496からの染色体DNA抽出
MRS培地(DIFCO社製)に、白金耳を用いてロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) type strain NBRC100496を植菌後、対数増殖期まで28℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-7)マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis) NBRC3154からの染色体DNA抽出
PY培地 [polypeptone 10 g, yeast extract 2 g, MgSO4.7H2O を蒸留水1Lに溶解しpH 7.0に調整] に、白金耳を用いてマイコバクテリウム スメグマティス (Mycobacterium smegmatis) NBRC3154を植菌後、対数増殖期まで30℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-8)ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)IAM12368からの染色体DNA抽出
Nutrient Broth培地(DIFCO社製)に、白金耳を用いてラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)IAM12368を植菌後、対数増殖期まで26℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-9)ストレプトミセス アベルミティリス(Streptmyces avermitilis)MA-4848 ATCC31272からの染色体DNA抽出
YM培地 [Yeast extract 4 g、Malt extract 10 g、Glucose 4 gを蒸留水1Lに溶解、pH7.3に調整] に、白金耳を用いてストレプトミセス アベルミティリス(Streptmyces avermitilis)MA-4848 ATCC31272を植菌後、対数増殖期まで30℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-10)ストレプトミセス ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber) John Innes Centre M145 ATCCBAA-471からの染色体DNA抽出
TY培地 [tryptone 5 g, yeast extract 3 g を蒸留水1Lに溶解] に、白金耳を用いてストレプトミセス ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber) John Innes Centre M145 ATCCBAA-471を植菌後、対数増殖期まで28℃で浸透培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
(1-11)クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)の染色体DNAは、American Type Culture Collection(ATCC)より入手したクロストリジウム・アセトブチリカム ATCC824の染色体DNA(ATCC Catalog No.824D-5)を用いた。
(2) クローニングベクターの構築
(2-1)クローニングベクターpCRC732の構築
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) R 由来のtpi(triosephosphate isomerase)遺伝子のSD(Shine Dalgarno)(以降、tpiSDと記す)配列を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、tpiSD配列をクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のDNA配列(配列番号18;tpiSD配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
tpiSD配列増幅用プライマー
(a-1); 5’- AATTGGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTG -3’ (配列番号19)
(b-1); 5’- AATTCAACACACCTTTCTAAAAAGTTTCC -3’ (配列番号20)
尚、プライマー(a-1)及び(b-1)は、5'末端リン酸化プライマーである。
tpiSD配列を含むDNA断片に、上記の5’末端リン酸化プライマー(a-1)及び(b-1)を各々10μl混合し、PCRにより95℃から37℃へ温度を低下させることによりtpiSD配列を含む約0.03kbDNA断片を得た。tacプロモーターを含有するクローニングベクタ−pCRC200〔Yasuda, K. et al., Analyses of the acetate-producing pathways in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Applied Microbiology and Biotechnology. 77:853-860 (2007)〕2μlを制限酵素EcoRIで切断し、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、上記で得られたtpiSD配列を含む約0.03kbDNA断片と切断したpCRC200とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションA液とした。
得られたライゲーションA液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出した。tacプロモーターの下流にtpiSD配列を含むクローニングベクターをpCRC732と命名した。
(2-2)クローニングベクタ−pCRB205の構築
クローニングベクターpCRC200を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCRC200をクローン化するべく、クローニングベクタ−pCRC200の配列(配列番号21; pCRC200)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
pCRC200増幅用プライマー
(a-2); 5’- CTCT ACTAGT GTCGAC GGATCC TTGTGTGGAATTGTGAGCGG -3’(配列番号22)
(b-2); 5’- CTCT ACTAGT CATACGAGCCGGAAGCATAA -3’(配列番号23)
尚、プライマー(a-2)には、SpeI、SalI及びBamHI制限酵素部位が、プライマー(b-2)には、SpeI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
鋳型DNAには、tacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC200〔Yasuda, K. et al., Analyses of the acetate-producing pathways in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Applied Microbiology and Biotechnology. 77:853-860 (2007)〕を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*)
各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) pCRC200遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-2)と(b-2)の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ (pCRC200) 300秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行うと、クローニングベクターpCRC200を含む約5.0-kb DNA断片が検出できた。
上記のPCRにより増幅したpCRC200由来遺伝子を含む約5.0-kb DNA断片10μlを制限酵素SpeIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションB液とした。
得られたライゲーションB液を用いて、塩化カルシウム法 〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、該プラスミドを制限酵素SpeIで切断し、挿入制限酵素部位を確認した。
クローニングベクターpCRC200に制限酵素部位SpeI、SalI及びBamHIサイトを付加したクローニングベクターをpCRB205と命名した。
(2-3)クローニングベクタ−pCRB12の構築
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium
glutamicum)内で複製可能なプラスミドpCG1 [(特開昭57−134500)]由来のDNA複製起点(以降、pCG1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG298(宝酒造株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCG1-ori配列及びクローニングベクターpHSG298をそれぞれクローン化するべく、プラスミドpCG1(配列番号24;pCG1-ori配列)及びクローニングベクタ−pHSG298(配列番号25; クローニングベクタ−pHSG298)それぞれを基に、下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
pCG1-ori配列増幅用プライマー
(a-3); 5’- AT AGATCT AGCATGGTCGTCACAGAG -3’(配列番号26)
(b-3); 5’- AT AGATCT GGAACCGTTATCTGCCTATG -3’(配列番号27)
尚、プライマー(a-3)及び(b-3)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
クローニングベクターpHSG298増幅用プライマー
(a-4); 5’- AT AGATCT AGGTTTCCCGACTGGAAAG -3’(配列番号28)
(b-4); 5’- AT AGATCT CGTGCCAGCTGCATTAATGA -3’(配列番号29)
尚、プライマー(a-4)及び(b-4)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
鋳型DNAには、pCG1 [(特開昭57−134500)]及びクローニングベクターpHSG298(宝酒造株式会社製)を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) pCG1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-3)と(b-3)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG298を増幅する場合はプライマー(a-4)と(b-4)の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ pCG1-ori配列の場合 120秒
クローニングベクターpHSG298の場合180秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCG1-ori配列の場合約1.9-kb、クローニングベクターpHSG298の場合、約2.7-kbのDNA断片が検出できた。
上記のPCRにより増幅したプラスミドpCG1由来pCG1-ori遺伝子含む約1.9-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG298を含む約2.7-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションC液とした。
得られたライゲーションC液を用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG298約2.7-kbのDNA断片に加え、pCG1-ori配列約1.9-kbのDNA断片が認められた。
pCG1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB12と命名した。
(2-4)クローニングベクターpCRD301の構築
コリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)JCM12072由来のプラスミドpCASE1のDNA複製起点(以降、casei-oriと記す)配列及びカナマイシン耐性遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、casei-ori配列及びカナマイシン耐性遺伝子をそれぞれクローン化するべく、コリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)保有プラスミドの配列(配列番号30; casei-ori配列)及びカナマイシン耐性遺伝子(配列番号31; カナマイシン耐性遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
casei-ori配列増幅用プライマー
(a-5); 5’- AT AGATCT AGAACGTCCGTAGGAGC -3’(配列番号32)
(b-5); 5’- AT AGATCT GACTTGGTTACGATGGAC -3’(配列番号33)
尚、プライマー(a-5)及び(b-5)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
カナマイシン耐性遺伝子増幅用プライマー
(a-6); 5’- TAGAC GTCGAC ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTT
ATGAAAGCCACGTTGTGTCTCA -3’(配列番号34)
(b-6); 5’- CTCGA GCATGC ATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAAGTTA
TAGGTCTGCCTCGTGAAGAA -3’(配列番号35)
尚、プライマー(a-6)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-6)には、SphI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
鋳型DNAには、Japan. Collection of Microorganisms (JCM)より入手したコリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)JCM12072から抽出した染色体DNA及びpMV23プラスミド[Alain A. Vertes, et al., Transposon mutagenesis of coryneform bacteria. Mol. Gen. Genet. 245:397-405 (1994)]を用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) casei-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-1)と(b-1)の組み合わせ、カナマイシン耐性遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-2)と(b-2)の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ casei-ori配列の場合 90秒
カナマイシン耐性遺伝子の場合 90秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、casei-ori配列を含む約1.5-kbのDNA断片が、カナマイシン耐性遺伝子を含む約1.3-kbのDNA断片が検出できた。
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム カゼイ(Corynebacterium casei)株由来のプラスミドpCASE1のcasei-ori配列を含む約1.5-kbのDNA断片10μl及びプラスミドpT7 Blue-T Vector(ノバジェン社製)2μlを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションD液とした。
得られたライゲーションD液を用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpT7 Blue-T
Vectorを含む約2.9-kbのDNA断片に加え、casei-ori配列を含む約1.5-kbの挿入断片が認められた。
casei-ori配列を含むクローニングベクタ−をpCRD300と命名した。
上記のPCRにより増幅したpMV23プラスミド由来カナマイシン耐性遺伝子含む約1.3kbDNA断片10μl及び上述のプラスミドpCRD300 2μlを各々制限酵素SalI及びSphIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションE液とした。
得られたライゲーションE液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalI及びSphIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRD300を含む約4.2-kbのDNA断片に加え、カナマイシン耐性遺伝子を含む約1.5-kbの挿入断片が認められた。
カナマイシン耐性遺伝子を含むクローニングベクタ ーをpCRD301と命名した。
(3) ブタノール生産遺伝子のクローニング
(3-1)ビューティリビブリオ フィブリソルベンス(Butyrivibrio
fibrisolvens)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
ビューティリビブリオ フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)由来のブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)及びその活性に必要なエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(アルファ-サブユニット及びベータ-サブユニット)をコードするbcd-etfB-etfA遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、bcd-etfB-etfA遺伝子をクローン化するべく、ビューティリビブリオ フィブリソルベンス由来のDNA配列(配列番号36;bcd-etfB-etfA遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
bcd-etfB-etfA遺伝子増幅用プライマー
(a-7); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGATTTTCAGCTGGATCA -3’(配列番号37)
(b-7); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAAGCCTGTGTCTTAGCTGCC -3’(配列番号38)
尚、プライマー(a-7)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-7)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-2)クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードするthiL遺伝子及びpaaJ遺伝子、3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydrogenase)をコードするhbd遺伝子、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)をコードするcrt遺伝子、ブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)及びその活性に必要なエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(アルファ-サブユニット及びベータ-サブユニット)をコードするbcd-etfB-etfA遺伝子、アルコール デヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)をコードするbdhB遺伝子、並びにアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhe1遺伝子及びadhe遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、thiL遺伝子、paaJ遺伝子、hbd遺伝子、crt遺伝子、bcd-etfB-etfA遺伝子、bdhB遺伝子、adhe1遺伝子及びadhe遺伝子をそれぞれクローン化するべく、クロストリジウム アセトブチリカム由来のDNA配列(配列番号3;thiL遺伝子)、(配列番号2;paaJ遺伝子)、(配列番号5;hbd遺伝子)、(配列番号9;crt遺伝子)、(配列番号39;bcd-etfB-etfA遺伝子)、(配列番号40;bdhB遺伝子)、(配列番号41;adhe1遺伝子)及び(配列番号42;adhe遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
thiL遺伝子増幅用プライマー
(a-8); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAGAGATGTAGTAATAGTAAGTGCT -3’(配列番号43)
(b-8); 5’- CTCT CCCGGG CTCGAG TTAGTCTCTTTCAACTACGAGAG -3’ (配列番号44)
尚、プライマー(a-8)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-8)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
paaJ遺伝子増幅用プライマー
(a-9); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAAGAAGTTGTAATAGCTAGTGCA -3’(配列番号45)
(b-9); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT CTAGCACTTTTCTAGCAATATTGCT -3’(配列番号46)
尚、プライマー(a-9)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-9)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
hbd遺伝子増幅用プライマー
(a-10); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAAAAGGTATGTGTTATAGGTGCA -3’(配列番号47)
(b-10); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATTTTGAATAATCGTAGAAACCTTTTCCTG -3’
(配列番号48)
尚、プライマー(a-10)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-10)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
crt遺伝子増幅用プライマー
(a-11); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGAACTAAACAATGTCATCCTTGAAAA
-3’(配列番号49)
(b-11); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT CCTCCTATCTATTTTTGAAGCCTTC -3’(配列番号50)
尚、プライマー(a-11)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-11)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
bcd-etfB-etfA遺伝子増幅用プライマー
(a-12); 5’- CTCT CCCGGG ATGGATTTTAATTTAACAAGAGAACAAG -3’(配列番号51)
(b-12); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAATTATTAGCAGCTTTAACTTGAG -3’(配列番号52)
尚、プライマー(a-12)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-12)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
bdhB遺伝子増幅用プライマー
(a-13); 5’- CTCT CCCGGG GTGGTTGATTTCGAATATTCAATACC -3’(配列番号53)
(b-13); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTACACAGATTTTTTGAATATTTGTAGG -3’(配列番号54)
尚、プライマー(a-13)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-13)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhe1遺伝子増幅用プライマー
(a-14); 5’- AT CCCGGG ATATCTATCTCCAAATCTGC-3’ (配列番号55)
(b-14); 5’- AT CCCGGG CTCGAG CCAATCATAATTGTCATCCC-3’(配列番号56)
尚、プライマー(a-14)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-14)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhe遺伝子増幅用プライマー
(a-15); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAAGTTACAAATCAAAAAGAACTAAAACAAAAG -3’(配列番号57)
(b-15); 5’- CTCT CCCGGG CTCGAG TTAAAATGATTTTATATAGATATC
CTTAAGTTCACTTATAAGT -3’(配列番号58)
尚、プライマー(a-15)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-15)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-3)クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来の3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydrogenase)をコードするhbd遺伝子、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)をコードするald遺伝子、アルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhe遺伝子、並びにブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)及びその活性に必要なエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(アルファ-サブユニット及びベータ-サブユニット)をコードするbcd-etfB-etfA遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、hbd遺伝子、ald遺伝子、adhe遺伝子、及びbcd-etfB-etfA遺伝子をクローン化するべく、クロストリジウム ベージェリンキー由来のDNA配列(配列番号6;hbd遺伝子)、(配列番号59;ald遺伝子)、(配列番号60;adhe遺伝子)、及び(配列番号67;bcd-etfB-etfA遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
hbd遺伝子増幅用プライマー
(a-16); 5’- CTCT CCCGGG ATGAAAAAGATTTTTGTACTTGGAGCAGGA -3’(配列番号61)
(b-16); 5’- CTCT CCCGGG CTCGAG TTATTTAGAGTAATCATAGAATCCTTTTCC -3’(配列番号62)
尚、プライマー(a-16)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-16)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
ald遺伝子増幅用プライマー
(a-17); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAATAAAGACACACTAATACCTACAAC -3’ (配列番号63)
(b-17); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAGCCGGCAAGTACACATC -3’(配列番号64)
尚、プライマー(a-17)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-17)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhe遺伝子増幅用プライマー
(a-18); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAGAGTTACGAATCCAGAAGAATT -3’ (配列番号65)
(b-18); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATTTATTGCTGCCATTATATGA
TTTTATATACATATC -3’ (配列番号66)
尚、プライマー(a-18)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-18)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
bcd-etfB-etfA遺伝子増幅用プライマー
(a-19); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAATTTCCAATTAACTAG -3’ (配列番号68)
(b-19); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATTCAGCGCTCTTTATTTCTTTAA -3’(配列番号69)
尚、プライマー(a-19)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-19)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-4)クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)由来のブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)及びその活性に必要なエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(アルファ-サブユニット及びベータ-サブユニット)をコードするbcd-etfB-etfA遺伝子、並びにアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするaad遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、bcd-etfB-etfA遺伝子及びaad遺伝子をクローン化するべく、クロストリジウム クルイベリ由来のDNA配列(配列番号70;bcd-etfB-etfA遺伝子)及び(配列番号71;aad遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
bcd-etfB-etfA遺伝子増幅用プライマー
(a-20); 5’- CTCT CCCGGG ATGGATTTTACATTAACAAACGAGCAAAAA -3’(配列番号72)
(b-20); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAAAGATTTAAAGCTTTAACTTGT
TCTACAAATT -3’(配列番号73)
尚、プライマー(a-20)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-20)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
aad遺伝子増幅用プライマー
(a-21); 5’- CTCT CCCGGG ATGAAAGTTACAAATGTTGAGG -3’(配列番号74)
(b-21); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT CTATAACAAAGATACC -3’(配列番号75)
尚、プライマー(a-21)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-21)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-5)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のアルコール デヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)をコードするadhA遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、adhA遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム由来のDNA配列(配列番号15;adhA遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
adhA遺伝子増幅用プライマー
(a-22); 5’- CTCT GAATTC GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGACCACTGCTGCACC -3’ (配列番号76)
(b-22); 5’- CTCT GAATTC CTCGAG TTAGTAGCGAATTGCCACACG -3’(配列番号77)
尚、プライマー(a-22)には、EcoRI制限酵素部位が、プライマー(b-22)には、EcoRI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-6)エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードするatoB遺伝子、3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydrogenase)をコードするpaaH遺伝子及びfadB遺伝子、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)をコードするeutE遺伝子及びmhpF遺伝子、並びにアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhE遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、atoB遺伝子、paaH遺伝子、fadB遺伝子、eutE遺伝子、mhpF遺伝子及びadhE遺伝子をクローン化するべく、エシェリヒア コリ由来のDNA配列(配列番号4;atoB遺伝子)、(配列番号8;paaH遺伝子)、(配列番号78;fadB遺伝子)、(配列番号13;eutE遺伝子)、(配列番号14;mhpF遺伝子)及び(配列番号16;adhE遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
atoB遺伝子増幅用プライマー
(a-23); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAAAATTGTGTCATCGTCAGTG -3’(配列番号79)
(b-23); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAATTCAACCGTTCAATCACCATC -3’(配列番号80)
尚、プライマー(a-23)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-23)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
paaH遺伝子増幅用プライマー
(a-24); 5’- CTCT CCCGGG ATGATGATAAATGTGCAAACTGTGGCAGTG -3’(配列番号81)
(b-24); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATGACTCATAACCGCTCTCCAGAAGCGC -3’(配列番号82)
尚、プライマー(a-24)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-24)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
fadB遺伝子増幅用プライマー
(a-25); 5’- CTCT CCCGGG ATGCTTTACAAAGGCGACACCCTGTACCTT -3’(配列番号83)
(b-25); 5’- CTCT CCCGGG CTCGAG TTAAGCCGTTTTCAGGTCGCCAACCGGACG -3’(配列番号84)
尚、プライマー(a-25)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-25)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
eutE遺伝子増幅用プライマー
(a-26); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAATCAACAGGATATTGAACAGGT -3’(配列番号85)
(b-26); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAAACAATGCGAAACGCATCGA -3’(配列番号86)
尚、プライマー(a-26)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-26)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
mhpF遺伝子増幅用プライマー
(a-27); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAGTAAGCGTAAAGTCGCC -3’(配列番号87)
(b-27); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TCATGCCGCTTCTCCTG -3’(配列番号88)
尚、プライマー(a-27)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-27)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhE遺伝子増幅用プライマー
(a-28); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGCTGTTACTAATGTCGCTG -3’(配列番号89)
(b-28); 5’- CTCT CCCGGG ACTAGT TTAAGCGGATTTTTTCGCTTTTTTCTCA -3’(配列番号90)
尚、プライマー(a-28)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-28)には、SmaI及びSpeI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-7)ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のブタノール生産遺伝子群のクローニング
ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhe遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、adhe遺伝子をクローン化するべく、ロイコノストック メセンテロイデス由来のDNA配列(配列番号17;adhe遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
adhE遺伝子増幅用プライマー
(a-29); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGCAGAAGCAATTGCAAAGAAA -3’(配列番号91)
(b-29); 5’- CTCT CCCGGG ACTAGT TTAAAACTGATCTTTCAACAATTGACGAATTT -3(配列番号92)
尚、プライマー(a-29)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-29)には、SmaI及びSpeI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-8)マイコバクテリウム スメグマティス (Mycobacterium smegmatis)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
マイコバクテリウム スメグマティス (Mycobacterium smegmatis)由来のアルコール デヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)をコードするaad遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してaad遺伝子をクローン化するべく、マイコバクテリウム スメグマティス由来のDNA配列(配列番号93;aad遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
aad遺伝子増幅用プライマー
(a-30); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGACAAGGTGAAGGTCG -3’ (配列番号94)
(b-30); 5’- CTCT CCCGGG CTCGAG TCACTTCCCCCGAATCG -3’ (配列番号95)
尚、プライマー(a-30)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-30)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-9)ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のブタノール生産遺伝子群のクローニング
ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードするphaA遺伝子、アセトアセチル-CoAレダクターゼ(Acetoacetyl-CoA reductase)をコードするphaB1遺伝子及び3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)をコードするcrt遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してphaA遺伝子、phaB1遺伝子及びcrt遺伝子をクローン化するべく、ラルストニア ユートロファ由来のDNA配列(配列番号1;phaA遺伝子)、(配列番号7;phaB1遺伝子)及び(配列番号10;crt遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
phaA遺伝子増幅用プライマー
(a-31); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGACTGACGTTGTCATCGTATC -3’ (配列番号96)
(b-31); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATTTGCGCTCGACTGCCA -3’(配列番号97)
尚、プライマー(a-31)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-31)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
phaB1遺伝子増幅用プライマー
(a-32); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGACTCAGCGCATTGCGTA -3’ (配列番号98)
(b-32); 5’- AT CCCGGG AGATCT TCAGCCCATATGCAGGCCGC -3’(配列番号99)
尚、プライマー(a-32)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-32)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
crt遺伝子増幅用プライマー
(a-33); 5’- CTCT GAATTC GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGATCGAGTTCGCCCTG-3’ (配列番号100)
(b-33); 5’- CTCT GAATTC AGATCT CTAGGCGTTGCGCCATT -3’ (配列番号101)
尚、プライマー(a-33)には、EcoRI制限酵素部位が、プライマー(b-33)には、EcoRI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-10)ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来の3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)をコードするccr遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してccr遺伝子をクローン化するべく、ストレプトミセス アベルミティリス由来のDNA配列(配列番号11;ccr遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーをアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems) 社製「394 DNA/RNA シンセサイザー (synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
ccr遺伝子増幅用プライマー
(a-34); 5’- CTCT GAATTC GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAGGAAATCCTGGACGC -3’(配列番号102)
(b-34); 5’- CTCT GAATTC AGATCT TCAGATGTTCCGGAAGCG -3’(配列番号103)
尚、プライマー(a-34)には、EcoRI制限酵素部位が、プライマー(b-34)には、EcoRI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(3-11)ストレプトミセス ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
ストレプトミセス ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)由来の3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)をコードするccr遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、ccr遺伝子をそれぞれクローン化するべく、ストレプトマイセス ヴィオラセオルバー由来のDNA配列(配列番号12;ccr遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems) 社製「394 DNA/RNA シンセサイザー (synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
ccr 遺伝子増幅用プライマー
(a-35); 5’- CCGG GAATTC ATGACCGTGAAGGACATCC -3’(配列番号104)
(b-35); 5’- CCGG GAATTC TCAGATGTTCCGGAAGCG -3’(配列番号105)
尚、プライマー(a-35)及び(b-35)には、EcoRI制限酵素部位が付加されている。
鋳型DNAとして、以下のDNAを用いた。
ビューティリビブリオ フィブリソルベンスについては、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したビューティリビブリオ フィブリソルベンス (Butyrivivrio fibrisolvens) ATCC19171から抽出した染色体DNAを用いた。クロストリジウム アセトブチリカムについては、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)ATCC824の染色体DNA(ATCC Cataloc No. 824D-5)を用いた。クロストリジウム ベージェリンキーについては、National Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria (NCIMB)より入手したクロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii) NCIMB8052から抽出した染色体DNAを用いた。クロストリジウム クルイベリについては、NITE Biological Resource Center
(NBRC) より入手したクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri) NBRC12016から抽出した染色体DNAを用いた。コリネバクテリウム グルタミカムについては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rから抽出した染色体DNAを用いた。エシェリヒア コリについては、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)K12 MG1655から抽出した染色体DNAを用いた。ロイコノストック メセンテロイデスについては、NITE Biological Resource Center
(NBRC)より入手したロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)type strain NBRC100496から抽出した染色体DNAを用いた。マイコバクテリウム スメグマティスについては、NITE Biological Resource Center
(NBRC) より入手したマイコバクテリウム スメグマティス (Mycobacterium smegmatis) NBRC3154から抽出した染色体DNAを用いた。ラルストニア ユートロファについては、Institute of Applied Microbiology Culture Collection (IAM)より入手したラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)IAM12368から抽出した染色体DNAを用いた。ストレプトミセス アベルミティリスについては、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したストレプトミセス アベルミティリス(Streptmyces avermitilis)ATCC31272から抽出した染色体DNAを用いた。ストレプトミセス ヴィオラセオルバーについては、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したストレプトミセス ヴィオラセオルバー(Streptmyces avermitilis)MA-4848 ATCC31272から抽出した染色体DNAを用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) ビューティリビブリオ フィブリソルベンスbcd-etfB-etfA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-7) と (b-7)の組み合わせ;クロストリジウム アセトブチリカムpaaJ遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-8) と (b-8) 、thiL遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-9) と (b-9)、hbd遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-10) と (b-10)、crt遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-11) と (b-11)、bcd-etfB-etfA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-12) と (b-12)、bdhB遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-13) と (b-13)、adhe遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-14) と (b-14)、adhe1遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-15) と (b-15)の組み合わせ;クロストリジウム ベージェリンキー hbd遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-16) と (b-16)、ald遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-17) と (b-17)、adhe遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-18) と (b-18)の組み合わせ;クロストリジウム ベージェリンキー bcd-etfB-etfA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-19) と (b-19) の組み合わせ;クロストリジウム クルイベリbcd-etfB-etfA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-20) と (b-20)、aad遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-21) と (b-21)の組み合わせ;コリネバクテリウム グルタミカムadhA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-22) と (b-22) の組み合わせ;エシェリヒア コリ atoB遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-23) と (b-23) 、paaH遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-24) と (b-24) 、fadB遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-25) と (b-25) 、eutE遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-26) と (b-26) 、mhpF遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-27) と (b-27) 、adhE遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-28) と (b-28)の組み合わせ;ロイコノストック メセンテロイデスadhe遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-29) と (b-29) の組み合わせ;マイコバクテリウム スメグマティス aad遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-30) と (b-30) の組み合わせ;ラルストニア ユートロファ phaA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-31) と (b-31) 、phaB1遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-32) と (b-32) 、crt遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-33) と (b-33) の組み合わせ;ストレプトミセス アベルミティリス ccr遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-34) と (b-34) の組み合わせ;ストレプトミセス ヴィオラセオルバー ccr遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-35) と (b-35) の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃
ビューティリビブリオ フィブリソルベンス bcd-etfB-etfA遺伝子 200秒
クロストリジウム アセトブチリカム paaJ遺伝子
80秒
クロストリジウム アセトブチリカム thiL遺伝子
80秒
クロストリジウム アセトブチリカム hbd遺伝子
60秒
クロストリジウム アセトブチリカム crt遺伝子
50秒
クロストリジウム アセトブチリカム bcd-etfB-etfA遺伝子
180秒
クロストリジウム アセトブチリカム bdhB遺伝子
80秒
クロストリジウム アセトブチリカム adhe遺伝子
160秒
クロストリジウム アセトブチリカム adhe1遺伝子
170秒
クロストリジウム ベージェリンキー hbd遺伝子 60秒
クロストリジウム ベージェリンキー ald遺伝子 90秒
クロストリジウム ベージェリンキー adhe遺伝子 170秒
クロストリジウム ベージェリンキー bcd-etfB-etfA遺伝子 180秒
クロストリジウム クルイベリ bcd-etfB-etfA遺伝子 180秒
クロストリジウム クルイベリ aad遺伝子
160秒
コリネバクテリウム グルタミカム adhA遺伝子
70秒
エシェリヒア コリ atoB遺伝子
80秒
エシェリヒア コリ paaH遺伝子
90秒
エシェリヒア コリ fadB遺伝子
140秒
エシェリヒア コリ eutE遺伝子
90秒
エシェリヒア コリ mhpF遺伝子
60秒
エシェリヒア コリ adhE遺伝子
170秒
ロイコノストック メセンテロイデス adhe遺伝子
170秒
マイコバクテリウム スメグマティス aad遺伝子
60秒
ラルストニア ユートロファ phaA遺伝子
80秒
ラルストニア ユートロファ phaB1遺伝子
50秒
ラルストニア ユートロファ crt遺伝子
50秒
ストレプトミセス アベルミティリス ccr遺伝子
80秒
ストレプトミセス ヴィオラセオルバー ccr遺伝子
90秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、ビューティリビブリオ フィブリソルベンスの場合約3.2-kb、クロストリジウム アセトブチリカムpaaJ遺伝子の場合約1.2-kb、thiL遺伝子の場合約1.2-kb、hbd遺伝子の場合約0.9-kb、crt遺伝子の場合約0.8-kb、bcd-etfB-etfA遺伝子の場合約3.0-kb、bdhB遺伝子の場合約1.2-kb、adhe遺伝子の場合約2.6-kb、adhe1遺伝子の場合約2.8-kb、クロストリジウム ベージェリンキー hbd遺伝子の場合約0.9-kb、ald遺伝子の場合約1.5-kb、adhe遺伝子の場合約2.7-kb、クロストリジウム ベージェリンキー bcd-etfB-etfA遺伝子の場合約3.0-kb、クロストリジウム クルイベリbcd-etfB-etfA遺伝子の場合約3.0-kb、aad遺伝子の場合約2.6-kb、コリネバクテリウム グルタミカムadhA遺伝子の場合約1.1-kb、エシェリヒア コリ atoB遺伝子の場合約1.2-kb、paaH遺伝子の場合約1.4-kb、fadB遺伝子の場合約2.2-kb、eutE遺伝子の場合約1.4-kb、mhpF遺伝子の場合約1.0-kb、adhE遺伝子の場合約2.7-kb、ロイコノストック メセンテロイデスadhe遺伝子の場合約2.8-kb、マイコバクテリウム スメグマティス aad遺伝子の場合約1.0-kb、ラルストニア ユートロファ phaA遺伝子の場合約1.2-kb、phaB1遺伝子の場合約0.8-kb、crt遺伝子の場合約0.8-kb、ストレプトミセス アベルミティリス ccr遺伝子の場合約1.3-kb、ストレプトミセス ヴィオラセオルバー ccr遺伝子の場合約1.4-kbのDNA断片が検出できた。
(4) ブタノール生産遺伝子発現プラスミドの構築
(4-1)ブタノール生産遺伝子のpCRB205へのクローニング
前記(3)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子を含む約1.1-kb DNA断片、ラルストニア ユートロファ株由来 crt遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片 10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB205 2μlを各々制限酵素EcoRIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、各遺伝子断片を含む液とpCRB205を含む液をそれぞれ混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションF液及びG液とした。
同じく、上記PCRにより増幅したDNA断片((3-1)のビューティリビブリオ フィブリソルベンス株由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含む約3.2-kb DNA断片、(323)のクロストリジウム アセトブチリカム株由来thiL遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片、(3-2)のクロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子を含む約0.9-kb DNA断片、(3-3)のクロストリジウム ベージェリンキー由来ald遺伝子を含む約1.5-kb DNA断片、(3-3)のクロストリジウム ベージェリンキー由来adhe遺伝子を含む約2.7-kb DNA断片、(3-3)のクロストリジウム ベージェリンキー由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含む約3.0-kb DNA断片、(3-6)のエシェリヒア コリ株由来atoB遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片、(3-6)のエシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を含む約1.4-kb DNA断片、(3-6)のエシェリヒア コリ株由来mhpF遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片、又は(3-8)のマイコバクテリウム スメグマティス株由来aad遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片)10μl、及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB205 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、各遺伝子断片を含む液とpCRB205を含む液をそれぞれ混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションH液、I液、J液、K液、L液、M液、N液、O液、P液及びQ液とした。
得られた12種のライゲーションF液、G液、H液、I液、J液、K液、L液、M液、N液、O液、P液及びQ液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール50マイクロg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素EcoRIもしくはSmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB205を含む約5.0-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子(ライゲーションF液)の場合、長さ約1.1-kbの挿入断片が、ラルストニア ユートロファ株由来 crt遺伝子(ライゲーションG液)の場合、長さ約0.8-kbの挿入断片が、ビューティリビブリオ フィブリソルベンス株由来bcd-etfB-etfA遺伝子(ライゲーションH液)の場合、長さ約3.2-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来thiL遺伝子(ライゲーションI液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子(ライゲーションJ液)の場合、長さ約0.9-kbの挿入断片が、クロストリジウム ベージェリンキー由来ald遺伝子(ライゲーションK液)の場合、長さ約1.5-kbの挿入断片が、クロストリジウム ベージェリンキー由来adhe遺伝子(ライゲーションL液)の場合、長さ約2.7-kbの挿入断片が、クロストリジウム ベージェリンキー由来bcd-etfB-etfA遺伝子(ライゲーションM液)の場合、長さ約3.0-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来atoB遺伝子(ライゲーションN液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子(ライゲーションO液)の場合、長さ約1.4-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来mhpF遺伝子(ライゲーションP液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が、マイコバクテリウム スメグマティス株由来aad遺伝子(ライゲーションQ液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片がそれぞれ認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-adhA/CG、ラルストニア ユートロファ株由来 crt遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-crt/RE、ビューティリビブリオ フィブリソルベンス株由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-bcd/BF、クロストリジウム アセトブチリカム株由来thiL遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-thiL/CA、クロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-hbd/CA、クロストリジウム ベージェリンキー由来ald遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-ald/CB、クロストリジウム ベージェリンキー由来adhe遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-adhe/CB、クロストリジウム ベージェリンキー由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-bcd/CB、エシェリヒア コリ株由来atoB遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-atoB/EC、エシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-eutE/EC、エシェリヒア コリ株由来mhpF遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-mhpF/EC、マイコバクテリウム スメグマティス株由来aad遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-aad/MSとそれぞれ命名した。
(4-2)ブタノール生産遺伝子のpCRC200へのクローニング
前記(3)に示したPCRにより増幅したストレプトミセス ヴィオラセオルバー株由来ccr遺伝子を含む約1.4-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC200〔Yasuda, K. et al., Analyses of the acetate-producing pathways in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Applied Microbiology and Biotechnology. 77:853-860 (2007)〕2μlを各々制限酵素EcoRIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションR液とした。
同じく、上記のPCRにより増幅したDNA断片((3-2)のクロストリジウム アセトブチリカム株由来paaJ遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片、(3-2)のクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子を含む約0.8-kb DNA断片、(3-2)のクロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe遺伝子を含む約2.6-kb DNA断片、(3-6)のエシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子を含む約2.7-kb DNA断片、(3-7)のロイコノストック メセンテロイデスadhe遺伝子を含む約2.8-kb DNA断片、(3-9)のラルストニア ユートロファ phaA遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片、又は(3-9)のラルストニア ユートロファ phaB1遺伝子を含む約0.8-kb DNA断片)10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpCRC200 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、各遺伝子断片を含む液とpCRC200を含む液をそれぞれ混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションS液、T液、U液、V液、W液、X液及びY液とした。
得られた8種のライゲーションR液、S液、T液、U液、V液、W液、X液及びY液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、該プラスミドを制限酵素EcoRIもしくはSmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRC200約5.0kbのDNA断片に加え、ストレプトミセス ヴィオラセオルバー株由来ccr遺伝子(ライゲーションR液)の場合、長さ約1.4-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来paaJ遺伝子(ライゲーションS液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子(ライゲーションT液)の場合、長さ約0.8-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe遺伝子(ライゲーションU液)の場合、長さ約2.6-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子(ライゲーションV液)の場合、長さ約2.7-kbの挿入断片が、ロイコノストック メセンテロイデスadhe遺伝子(ライゲーションW液)の場合、長さ約2.8-kbの挿入断片が、ラルストニア ユートロファ phaA遺伝子(ライゲーションX液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が、ラルストニア ユートロファ phaB1遺伝子(ライゲーションY液)の場合、長さ約0.8-kbの挿入断片が認められた。
ストレプトミセス ヴィオラセオルバー株由来ccr遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-ccr/SV、クロストリジウム アセトブチリカム株由来paaJ遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-paaJ/CA、クロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-crt/CA、クロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-adhe/CA、エシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-adhE/EC、ロイコノストック メセンテロイデスadhe遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-adhe/LM、ラルストニア ユートロファ phaA遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-phaA/RE、ラルストニア ユートロファ phaB1遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-phaB1/REとそれぞれ命名した。
(4-3)ブタノール生産遺伝子のpCRC732へのクローニング
前記のPCRにより増幅したストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を含む約1.3-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpCRC732 2μlを各々制限酵素EcoRIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションZ液とした。
同じく、前記のPCRにより増幅したDNA断片((3-2)のクロストリジウム アセトブチリカムbcd-etfB-etfA遺伝子を含む約3.0-kb DNA断片、(3-2)のクロストリジウム アセトブチリカムbdhB遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片、(3-2)のクロストリジウム アセトブチリカムadhe1遺伝子を含む約2.8-kb DNA断片、(3-3)のクロストリジウム ベージェリンキーhbd遺伝子を含む約0.9-kb DNA断片、(3-4)のクロストリジウム クルイベリbcd-etfB-etfA遺伝子を含む約3.0-kb DNA断片、(3-4)のクロストリジウム クルイベリaad遺伝子を含む約2.6-kb DNA断片、(3-6)のエシェリヒア コリ株由来paaH遺伝子を含む約1.4-kb DNA断片、又は(3-6)のエシェリヒア コリ株由来fadB遺伝子を含む約2.2-kb DNA断片)10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpCRC732 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、各遺伝子断片を含む液とpCRC732を含む液をそれぞれ混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAA液、AB液、AC液、AD液、AE液、AF液、AG液及びAH液とした。
得られた9種のライゲーションZ液、AA液、AB液、AC液、AD液、AE液、AF液、AG液及びAH液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換しこれを、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素EcoRIもしくはSmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRC732を含む約5.0kbのDNA断片に加え、ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子(ライゲーションZ液)の場合、長さ約1.3-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカムbcd-etfB-etfA遺伝子(ライゲーションAA液)の場合、長さ約3.0-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカムbdhB遺伝子(ライゲーションAB液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカムadhe1遺伝子(ライゲーションAC液)の場合、長さ約2.8-kbの挿入断片が、クロストリジウム ベージェリンキーhbd遺伝子(ライゲーションAD液)の場合、長さ約0.9-kbの挿入断片が、クロストリジウム クルイベリbcd-etfB-etfA遺伝子(ライゲーションAE液)の場合、長さ約3.0-kbの挿入断片が、クロストリジウム クルイベリaad遺伝子(ライゲーションAF液)の場合、長さ約2.6-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来paaH遺伝子(ライゲーションAG液)の場合、長さ約1.4-kbの挿入断片が、エシェリヒア コリ株由来fadB遺伝子(ライゲーションAH液)の場合、長さ約2.2-kbの挿入断片が認められた。
ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-ccr/SA、クロストリジウム アセトブチリカムbcd-etfB-etfA遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-bcd/CA、クロストリジウム アセトブチリカムbdhB遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-bdhB/CA、クロストリジウム アセトブチリカムadhe1遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-adhe1/CA、クロストリジウム ベージェリンキーhbd遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-hbd/CB、クロストリジウム クルイベリbcd-etfB-etfA遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-bcd/CK、クロストリジウム クルイベリaad遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-aad/CK、エシェリヒア コリ株由来paaH遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-paaH/EC、エシェリヒア コリ株由来fadB遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-fadB/ECとそれぞれ命名した。
(5) ブタノール生産遺伝子活性測定株の構築
上述のプラスミド29種類pCRB205-adhA/CG、pCRB205-crt/RE、pCRB205-bcd/BF、pCRB205-thiL/CA、pCRB205-hbd/CA、pCRB205-ald/CB、pCRB205-adhe/CB、pCRB205-bcd/CB、pCRB205-atoB/EC、pCRB205-eutE/EC、pCRB205-mhpF/EC、pCRB205-aad/MS、pCRC200-ccr/SV、pCRC200-paaJ/CA、pCRC200-crt/CA、pCRC200-adhe/CA、pCRC200-adhE/EC、pCRC200-adhe/LM、pCRC200-phaA/RE、pCRC200-phaB1/RE、pCRC732-ccr/SA、pCRC732-bcd/CA、pCRC732-bdhB/CA、pCRC732-adhe1/CA、pCRC732-hbd/CB、pCRC732-bcd/CK、pCRC732-aad/CK、pCRC732-paaH/EC、及びpCRC732-fadB/ECをそれぞれ用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol.54、443-447(1990) 及び Res. Microbiol.、Vol.144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol.
Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)]を形質転換し、これをクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB205-adhA/CG、pCRB205-crt/RE、pCRB205-bcd/BF、pCRB205-thiL/CA、pCRB205-hbd/CA、pCRB205-ald/CB、pCRB205-adhe/CB、pCRB205-bcd/CB、pCRB205-atoB/EC、pCRB205-eutE/EC、pCRB205-mhpF/EC、pCRB205-aad/MS、pCRC200-ccr/SV、pCRC200-paaJ/CA、pCRC200-crt/CA、pCRC200-adhe/CA、pCRC200-adhE/EC、pCRC200-adhe/LM、pCRC200-phaA/RE、pCRC200-phaB1/RE、pCRC732-ccr/SA、pCRC732-bdhB/CA、pCRC732-adhe1/CA、pCRC732-hbd/CB、pCRC732-bcd/CK、pCRC732-aad/CK、pCRC732-paaH/EC、及びpCRC732-fadB/ECは宿主への導入が認められたが、pCRC732-bcd/CAは宿主への導入が認められなかった。
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRB205-adhA/CG、ldhA mutant/pCRB205-crt/RE、ldhA mutant/pCRB205-bcd/BF、ldhA mutant/pCRB205-thiL/CA、ldhA mutant/pCRB205-hbd/CA、ldhA mutant/pCRB205-ald/CB、ldhA mutant/pCRB205-adhe/CB、ldhA mutant/pCRB205-bcd/CB、ldhA mutant/pCRB205-atoB/EC、ldhA mutant/pCRB205-eutE/EC、ldhA mutant/pCRB205-mhpF/EC、ldhA mutant/pCRB205-aad/MS、ldhA mutant/pCRC200-ccr/SV、ldhA mutant/pCRC200-paaJ/CA、ldhA mutant/pCRC200-crt/CA、ldhA mutant/pCRC200-adhe/CA、ldhA mutant/pCRC200-adhE/EC、ldhA mutant/pCRC200-adhe/LM、ldhA mutant/pCRC200-phaA/RE、ldhA mutant/pCRC200-phaB1/RE、ldhA mutant/pCRC732-ccr/SA、ldhA mutant/pCRC732-bdhB/CA、ldhA mutant/pCRC732-adhe1/CA、ldhA mutant/pCRC732-hbd/CB、ldhA mutant/pCRC732-bcd/CK、ldhA mutant/pCRC732-aad/CK、ldhA mutant/pCRC732-paaH/EC及びldhA mutant/pCRC732-fadB/ECとそれぞれ命名した。
実施例2 ブタノール生産遺伝子を導入したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)における酵素活性測定
実施例1において構築したブタノール生産遺伝子をそれぞれ単独で導入したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(以降、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株と記す)におけるブタノール生産関連酵素、すなわちアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)(別名チオーラゼ)(以下、「THL」と記す)、3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxybutyryl-CoAdehydrogenase)(以下、「HBD」と記す)、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)(別名クロトナーゼ)(以下、「CRT」と記す)、ブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)(以下、「BCD」と記す)、クロトニル-CoA レダクターゼ(crotonyl CoA reductase)(以下、「CCR」と記す)、ブチリルアルデヒド デヒドロゲナーゼ(butyraldehyde dehydrogenase)(以下、「BYDH」と記す)、及びブタノール デヒドロゲナーゼ(butanol dehydrogenase)(以下、「BDH」と記す)の活性を以下の方法により測定した。尚、コントロールとして、宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantも同様の方法にて測定した。
(1)THL、CRT、CCRの活性測定
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O
+ 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁] に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA液体培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解] 10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA液体培地100mlに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantは、A培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体を、遠心分離 (4℃、8,000×g, 10分)により回収した。得られた菌体を、破砕液1(100mMトリス−塩酸緩衝液pH 7.5、2mMジチオスレイトール)により洗浄した。再び遠心分離し、回収した菌体を1mlの破砕液1で懸濁した後、ガラスビーズ1gを加え、超音波破砕機(Biorupter、コスモバイオ社製)により30分間ホモジナイズした。その後遠心分離(4℃、15,000×g、10分)により不溶性物質を取り除き、酵素液1を得た。タンパク質量はBio-Rad protein assay(Bio-Rad社製)により測定した。このようして得られた酵素液を用い、以下に記載の方法でTHL、CRT及びCCR活性を測定した。
(1-1)THL活性
THL活性は、アセトアセチル−CoA及びCoAを基質とし、アセトアセチル−CoAの減少に伴う303nmの吸光度減少を指標とした。(Wiesenborn D.P. et al., Thiolase from Clostridium acetobutylicum ATCC 824 and its role in the synthesis of acids and solvents. Appl. Environ. Microbiol. 54:2717-2722 (1988))。活性測定に用いた反応液は100mMトリス−塩酸緩衝液pH 7.0、10mM塩化マグネシウム、1mMジチオスレイトール、及び0.2mM CoAであり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で反応液に酵素液1を添加し、10分間静置後0.2mMとなるようにアセトアセチル-CoAを加え、反応液の吸光度減少の傾きとCoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数14,000M-1cm-1 を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したTHLをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRC200-phaA/RE、ldhA
mutant/pCRC200-paaJ/CA、ldhA mutant/pCRB205-thiL/CA、及びldhA mutant/pCRB205-atoB/ECの4株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのTHL活性測定の結果を以下の表1に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA遺伝子を導入した株で最も高いTHL活性が検出された。尚、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではTHL活性は検出されなかった。従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA遺伝子を用いた。
尚、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA遺伝子を他の微生物種に導入して、ブタノール生産を行わせた事例はこれまでない。
(1-2)CRT活性
CRT活性は、クロトニル−CoAから3-ヒドロキシブチリル−CoAを形成する際の、クロトニル−CoAの減少に伴う263nmの吸光度減少を指標とした。(Hartmanis, M.G. et al., Intermediary metabolism in Clostridium acetobutylicum: Levels of enzymes involved in the formation of acetate and butyrate. Appl. Environ. Microbiol. 47:1277-1283 (1984))。活性測定に用いた反応液は100mM トリス−塩酸緩衝液pH 7.6、50μMクロトニル−CoAであり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとクロトニル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6,700M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したCRTをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRC200-crt/CA及びldhA mutant/pCRB205-crt/REの2株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのCRT活性測定の結果を以下の表2に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のcrt遺伝子を導入した株で最も高いCRT活性が検出された。尚、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではCRT活性は検出されなかった。従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のcrt遺伝子を用いた。
(1-3)CCR活性
CCR活性は、クロトニル−CoAとNADPHからブチリル−CoAを形成する際の、NADPHの減少に伴う345nmの吸光度減少を指標とした。(Wallace KK., et al., Purification of crotonyl-CoA reductase from Streptomyces collinus and cloning, sequencing and expression of the corresponding gene in Escherichia coli. Eur. J. Biochem., 233: 954-962 (1984))。活性測定に用いた反応液は、50mM リン酸緩衝液pH 7.0、1mMジチオスレイトール、1mM EDTA、0.3mMクロトニル−CoA、及び0.15mM NADPHであり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとクロトニル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したCCRをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRC732-ccr/SA及びldhA mutant/pCRC200-ccr/SVの2株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのCCR活性測定の結果を以下の表3に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、ストレプトミセス アベルミティリス (Streptmyces avermitilis)由来のccr遺伝子を導入した株で最も高いCCR活性が検出された。尚、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではCCR活性は検出されなかった。また、後述するように、CCRと同じくクロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒するBCDについては、いずれのBCDをコードする遺伝子をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantに導入しても活性が検出されなかった(詳細は下記に示す)。従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、ストレプトミセス アベルミティリス (Streptmyces avermitilis)由来のccr遺伝子を用いた。
(2)HBD、BCD、BYDH、BDHの活性測定
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール 5μg/ml含むA寒天培地 [(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁] に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA液体培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解] 10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R単一遺伝子導入株を、クロラムフェニコール5μg/ml を含有したA液体培地100mlに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantは、A培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体を、遠心分離 (4℃、8,000×g, 10分)により回収した。得られた菌体を、BT(-グルコース)液体培地 [(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O
+ 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 mlを蒸留水1Lに溶解] 40mlに懸濁し50mlメディウム瓶に移した。以降の操作は95% N2、5% H2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内で行った。嫌気チャンバー 内でメディウム瓶を開放し3時間攪拌することで培地及び菌体を嫌気置換した。遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により菌体を回収し、破砕液2(50mM MOPS緩衝液 pH
7.0)により洗浄した。再び遠心分離し、回収した菌体を1mlの破砕液2で懸濁した後、ガラスビーズ2gを加え、1分間のボルテックスミキサーによるホモジナイズと1分間の氷上静置を10回繰り返して菌体を破砕した。その後遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により不溶性物質を取り除き、酵素液2を得た。得られた酵素液2を用い、以下に記載の方法でHBD、BCD、BYDH及びBDH活性をそれぞれ測定した。
(2-1)HBD活性
HBD活性は、アセトアセチル−CoAとNADHから3-ヒドロキシブチリル−CoAを形成する際の、NADHの減少に伴う340nmの吸光度減少を指標とした。(Hartmanis, M.G. et al., Intermediary metabolism in Clostridium acetobutylicum: Levels of enzymes involved in the formation of acetate and butyrate. Appl. Environ. Microbiol. 47:1277-1283 (1984))。活性測定に用いた反応液は、100mM MOPS緩衝液pH 7.0、1mMジチオスレイトール、0.3mMアセトアセチル−CoA、及び0.15mM NADHであり、吸光度測定には分光光度計DU-800(BECKMAN社製)を用いた。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとアセトアセチル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したHBDをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRB205-hbd/CA、ldhA mutant/pCRC732-hbd/CB、ldhA mutant/pCRC200-phaB1/RE、ldhA mutant/pCRC732-paaH/EC及びldhA mutant/pCRC732-fadB/ECの5株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのHBD活性測定の結果を以下の表4に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
なお、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaB1遺伝子がコードするHBDは、NADHを補酵素として利用する酵素として知られている。
この結果、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)及びクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のhbd遺伝子を導入した株で高いHBD活性が検出された。尚、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではHBD活性は検出されなかった。従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のhbd遺伝子を用いた。
(2-2)BCD活性
BCD活性は、フェロセニウムを電子供与体としてクロトニル−CoAからブチリル−CoAを形成する際の、フェロセニウムの酸化に伴う300nmの吸光度減少を指標とした(Lehman, T.C. et al., An acyl-coenzyme A dehydrogenase assay utilizing the ferricenium ion. Anal. Biochem., 186:280-284 (1990))。活性測定に用いた反応液は50mM MOPS緩衝液 pH 7.0であり、吸光度測定は分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて95% N2及び5% H2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内にて行った。30℃で酵素液2と0.8mMとなるようにクロトニル−CoAを反応液に添加し10分間静置後、0.2mMとなるようにフェロセニウムを添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとクロトニル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数43,000M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したBCDをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRB205-bcd/BF、ldhA mutant/pCRB205-bcd/CB及びldhA mutant/pCRC732-bcd/CKの3株、並びにびコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのBCD活性測定の結果を以下の表5に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、上記のいずれの組換え株及び宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではBCD活性は検出されなかった。また、前述するように、BCDと同じくクロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒するCCRについては、ストレプトミセス アベルミティリス (Streptmyces avermitilis)由来のccr遺伝子を導入した株で最も高いCCR活性が検出された。(詳細は上述参照)。従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、ストレプトミセス アベルミティリス (Streptmyces avermitilis)由来のccr遺伝子を用いた。
尚、発明者らは、これまでにクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)内に導入した組換え株について、上記と同様の方法により、BCD活性を検出し、さらにクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子を含むブタノール生産遺伝子をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)内に導入した組換え株がブタノールを生産することを報告している(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008))。すなわち、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)内で機能したクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbcd-etfB-etfA遺伝子は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内では機能しないことを示している。
(2-3)BYDH活性
BYDH活性は、酵母由来アルコール脱水素酵素 (Roche社製) を併用した2段階反応を利用して測定した。すなわち、BYDHによるブチリル-CoAからブチルアルデヒドへの変換と同時に、酵母由来アルコール脱水素酵素によるブチルアルデヒドからブタノールへの変換を行う。この反応では1分子のブチリル-CoAからブタノールを形成する際に、2分子のNADHを消費することから、BYDH活性の測定はNADHの減少に伴う345nmの吸光度減少を指標とした(Duerre, P. et al., Enzymatic investigtations on butanol dehydrogenase and butyraldehyde dehydrogenase in extracts of Clostridium acetobutylicum. Appl. Microbiol. Biotechnol. 26:268-272 (1987))。反応液の組成は50mM MES緩衝液pH6.0、100mM KCl、0.15mM NADH、及び3U酵母由来アルコール脱水素酵素であり、吸光度測定は分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて95% N2及び5% H2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内にて行った。30℃で反応液に酵素液2を添加し10分間静置後、0.2mM ブチリル-CoA又は対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したBCDをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRB205-eutE/EC、ldhA mutant/pCRB205-mhpF/EC、ldhA mutant/pCRB205-ald/CB、ldhA mutant/pCRB205-aad/MS、ldhA mutant/pCRC200-adhE/EC、ldhA mutant/pCRC200-adhe/LM、ldhA mutant/pCRC200-adhe/CA、ldhA mutant/pCRC732-adhe1/CA及びldhA mutant/pCRB205-adhe/CB、ldhA mutant/pCRC732-aad/CKの10株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantのBYDH活性測定の結果を以下の表6に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のアルデヒド デヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)コードするeutE遺伝子を導入した株で最も高いBYDH活性が検出され、さらに、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhE遺伝子、又はロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc
mesenteroides)由来のアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol
dehydrogenase)をコードするadhe遺伝子を導入した株においても活性が検出された。尚、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutantではBYDH活性は検出されなかった。
さらに、これまで宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、又はサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、ブタノール生産させる際に使われていたクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のald遺伝子(特許第3869788号);宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を持ちいてブタノールを生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe遺伝子及びadhe1遺伝子(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008)及びAtsumi S, et al., Metabolic engineering of Escherichia coli for 1-butanol production. Metabolic engineering, PMID: 17942358);その他、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のadhe遺伝子;及びクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri)由来のaad遺伝子などクロストリディウム菌由来のBYDHをコードする遺伝子は、いずれもコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で機能しないことが明らかになった。
従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium
glutamicum)によるブタノール生産には、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のeutE遺伝子、及びエシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子を用いた。
(2-4)BDH活性
BDH活性は、ブチルアルデヒドからブタノールを形成する際の、NADHの減少を340nmの吸光度減少を指標とした(Durre, P. et al., Enzymatic investigtations on butanol dehydrogenase and butyraldehyde dehydrogenase in extracts of Clostridium acetobutylicum. Appl. Microbiol. Biotechnol. 26:268-272 (1987))。反応液の組成は50mM MES緩衝液(pH6.0)及び0.15mM NADHであり、吸光度測定は分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて95% N2及び5% H2で置換された嫌気チャンバー (COY社製)内にて行った。30℃で反応液に酵素液2を添加し10分間静置後、35mMとなるようにブチアルデヒド又は対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
実施例1で構築したBCDをコードする遺伝子の導入株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant/pCRB205-adhA/CG、ldhA mutant/pCRC732-bdhB/CA、ldhA mutant/pCRC200-adhE/EC、ldhA mutant/pCRC200-adhe/LM、ldhA mutant/pCRC200-adhe/CA、ldhA mutant/pCRC732-adhe1/CA、ldhA mutant/pCRB205-adhe/CB及びldhA mutant/pCRC732-aad/CKの8株、並びにコントロールとして宿主として用いたコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium
glutamicum)R ldhA mutantのBDH活性測定の結果を以下の表7に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
この結果、宿主であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant自身が弱いながらもBDH活性を有することが明らかになった。また、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhA遺伝子を導入した株で最も高いBDH活性が検出され、さらに、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol dehydrogenase)をコードするadhE遺伝子、又はロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc
mesenteroides)由来のアルデヒド/アルコール デヒドロゲナーゼ(aldehyde/alcohol
dehydrogenase)をコードするadhe遺伝子を導入した株においても活性が検出された。
尚、これまで宿主としてバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)を用いて、ブタノール生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のbdhB遺伝子(特許第3869788号);宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を用いてブタノールを生産させる際に使われていたクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe遺伝子及びadhe1遺伝子(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008)及びAtsumi S, et al., Metabolic engineering of Escherichia coli for 1-butanol production. Metabolic engineering, PMID: 17942358);その他、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)由来のadhe遺伝子;及びクロストリジウム クルイベリ (Clostridium kluyveri)由来のaad遺伝子などクロストリディウム菌由来のBYDHをコードする遺伝子は、いずれもコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で機能しないことが明らかになった。
従って、以下の実施例に示すコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるブタノール生産には、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhA遺伝子、又はエシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子を用いた。
実施例3 コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1、But2、及びBut3の創製
(1) ブタノール生産遺伝子のクローニング
(1-1)クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のhbd遺伝子、crt遺伝子、bcd-etfB-etfA遺伝子及びadhe1遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、hbd遺伝子、crt遺伝子、bcd-etfB-etfA遺伝子、及びadhe1遺伝子をそれぞれクローン化するべく、クロストリジウム アセトブチリカム由来のDNA配列(配列番号5;hbd遺伝子)、(配列番号9;crt遺伝子)、(配列番号39; bcd-etfB-etfA遺伝子)及び(配列番号41; adhe1遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
hbd遺伝子増幅用プライマー
(a-36); 5’- AT CCCGGG AATTTAGGGAGGTCTGTTTA -3’ (配列番号106)
(b-36); 5’- AT CCCGGG AGATCT CCATATTATAATCCCTCCTC -3’(配列番号107)
尚、プライマー(a-36)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-36)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
crt遺伝子増幅用プライマー
(a-37); 5’- AT CCCGGG ATATTTTAGGAGGATTAGTC -3’ (配列番号108)
(b-37); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT CCTCCTATCTATTTTTGAAGCCTTC -3’(配列番号50)
尚、プライマー(a-37)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-37)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
bcd-etfB-etfA遺伝子増幅用プライマー
(a-38); 5’- CTCT CCCGGG ATGGATTTTAATTTAACAAGAGAACAAG -3’(配列番号51)
(b-38); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAATTATTAGCAGCTTTAACTTGAG -3’(配列番号52)
尚、プライマー(a-38)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-38)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhe1遺伝子増幅用プライマー
(a-39); 5’- AT CCCGGG ATATCTATCTCCAAATCTGC-3’ (配列番号55)
(b-39); 5’- AT CCCGGG CTCGAG CCAATCATAATTGTCATCCC-3’ (配列番号56)
尚、プライマー(a-39)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-39)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-2)クロストリジウム ベージェリンキー由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来のald遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、ald遺伝子をクローン化するべく、クロストリジウム ベージェリンキー由来のDNA配列(配列番号59;ald遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
ald遺伝子増幅用プライマー
(a-40); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAATAAAGACACACTAATACCTACAAC-3’ (配列番号63)
(b-40); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAGCCGGCAAGTACACATC-3’(配列番号64)
尚、プライマー(a-40)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-40)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-3)コリネバクテリウム グルタミカム由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のadhA遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してadhA遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム由来のDNA配列(配列番号15;adhA遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
adhA遺伝子増幅用プライマー
(a-41); 5’- CTCT GAATTC ATGACCACTGCTGCACC -3’ (配列番号109)
(b-41); 5’- CTCT GAATTC CTCGAG TTAGTAGCGAATTGCCACACG -3’(配列番号77)
尚、プライマー(a-41)には、EcoRI制限酵素部位が、プライマー(b-41)には、EcoRI及びXhoI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-4)エシェリヒア コリ由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のeutE遺伝子、又はadhE遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してeutE遺伝子、及びadhE遺伝子をそれぞれクローン化するべく、エシェリヒア コリ由来のDNA配列(配列番号13;eutE遺伝子)、及び(配列番号16;adhE遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied
Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
eutE遺伝子増幅用プライマー
(a-42); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAATCAACAGGATATTGAACAGGT-3’ (配列番号85)
(b-42); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTAAACAATGCGAAACGCATCGA -3’(配列番号86)
尚、プライマー(a-42)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-42)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
adhE遺伝子増幅用プライマー
(a-43); 5’- CTCT CCCGGG GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGGCTGTTACTAATGTCGCTG -3’(配列番号89)
(b-43); 5’- CTCT CCCGGG ACTAGT TTAAGCGGATTTTTTCGCTTTTTTCTCA -3’(配列番号90)
尚、プライマー(a-43)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-43)には、SmaI及びSpeI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-5)ラルストニア ユートロファ由来のブタノール生産遺伝子群のクローニング
ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaA遺伝子群を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してphaA遺伝子群をクローン化するべく、ラルストニア ユートロファ由来のDNA配列(配列番号1;phaA遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
phaA遺伝子増幅用プライマー
(a-44); 5’- AT CCCGGG TCCATTGAAAGGACTACACA -3’(配列番号110)
(b-44); 5’- CTCT CCCGGG AGATCT TTATTTGCGCTCGACTGCCA -3’(配列番号97)
尚、プライマー(a-44)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-44)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-6)ストレプトミセス アベルミティス由来のブタノール生産遺伝子のクローニング
ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来のccr遺伝子群を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してccr遺伝子をクローン化するべく、ストレプトミセス アベルミティリス由来のDNA配列(配列番号11;ccr遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
ccr遺伝子増幅用プライマー
(a-45); 5’- CTCT GAATTC GGAAACTTTTTAGAAAGGTGTGTTTCACCC
ATGAAGGAAATCCTGGACGC -3’ (配列番号102)
(b-45); 5’- CTCT GAATTC AGATCT TCAGATGTTCCGGAAGCG -3’(配列番号103)
尚、プライマー(a-45)には、EcoRI制限酵素部位が、プライマー(b-45)には、EcoRI及びBglII制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
(1-7)鋳型DNA
クロストリジウム アセトブチリカムの場合の鋳型DNAには、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)ATCC824の染色体DNA(ATCC Cataloc No. 824D-5)を用いた。クロストリジウム ベージェリンキーの場合の鋳型DNAには、National Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria (NCIMB)より入手したクロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii) NCIMB8052の染色体DNAを用いた。コリネバクテリウム グルタミカムの場合の鋳型DNAには、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rの染色体DNAを用いた。エシェリヒア コリの場合の鋳型DNAには、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)K12 MG1655の染色体DNAを用いた。ラルストニア ユートロファの場合の鋳型DNAには、Institute of Applied Microbiology Culture Collection (IAM)より入手したラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)IAM12368の染色体DNAを用いた。ストレプトミセス アベルミティリスの場合の鋳型DNAには、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したストレプトミセス アベルミティリス(Streptmyces avermitilis)ATCC31272の染色体DNAを用いた。
(1-8)PCR反応
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 ; 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) hbd遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-36)と(b-36)の組み合わせ、crt遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-37) と (b-37) の組み合わせ、bcd-etfB-etfA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-38) と (b-38) の組み合わせ、adhe1遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-39) と (b-39) の組み合わせ、ald遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-40) と (b-40) の組み合わせ、eutE遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-41) と (b-41) の組み合わせ、adhE遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-42) と (b-42) の組み合わせ、adhA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-43) と (b-43) の組み合わせ、phaA遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-44) と (b-44) の組み合わせ及びccr遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-45) と (b-45) の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃
クロストリジウム アセトブチリカム hbd遺伝子 60秒
クロストリジウム アセトブチリカム crt遺伝子 50秒
クロストリジウム アセトブチリカム bcd-etfB-etfA遺伝子 180秒
クロストリジウム アセトブチリカム adhe1遺伝子 170秒
クロストリジウム ベージェリンキー NCIMB8052 ald遺伝子 90秒
コリネバクテリウム グルタミカムadhA遺伝子 70秒
エシェリヒア コリeutE遺伝子 90秒
エシェリヒア コリadhE遺伝子 170秒
ラルストニア ユートロファphaA遺伝子 80秒
ストレプトミセス アベルミティリスccr遺伝子 90秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、クロストリジウム アセトブチリカム hbd遺伝子の場合約1.0-kb、クロストリジウム アセトブチリカム crt遺伝子の場合約0.8-kb、クロストリジウム アセトブチリカム bcd-etfB-etfA遺伝子の場合約3.0-kb、クロストリジウム アセトブチリカム adhe1遺伝子の場合約2.8-kb、クロストリジウム ベージェリンキー NCIMB8052 ald遺伝子の場合約1.5-kb、コリネバクテリウム グルタミカムadhA遺伝子の場合約1.1-kb、エシェリヒア コリeutE遺伝子の場合約1.5-kb、エシェリヒア コリadhE遺伝子の場合約2.7-kb、ラルストニア ユートロファphaA遺伝子の場合約1.2-kb、ストレプトミセス アベルミティリスccr遺伝子の場合約1.4-kbのDNA断片が検出できた。
(2) ブタノール生産遺伝子発現プラスミドの構築
(2-1)ブタノール生産遺伝子のpKK223-3へのクローニング
上記(1)のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子を含む約1.2-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAI液とした。
同じく、上記のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子を含む約0.8-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAJ液とした。
さらに、上記のPCRにより増幅したラルストニア ユ-トロファ株由来phaA遺伝子含む約1.2-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAK液とした。
得られた3種のライゲーションAI液、AJ液及びAK液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpKK223-3約4.6-kbのDNA断片に加え、クロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子(ライゲーションAI液)の場合、長さ約1.0-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子(ライゲーションAJ液)の場合、長さ約0.8-kbの挿入断片が、ラルストニア ユ-トロファ株由来phaA遺伝子(ライゲーションAK液)の場合、長さ約1.2-kbの挿入断片が認められた。
クロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-hbd/CA、クロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-crt/CA及びラルストニア ユ-トロファ株由来phaA遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-phaA/REとそれぞれ命名した。
(2-2)ブタノール生産遺伝子のpCRC200へのクローニング
上記のPCRにより増幅したエシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子含む約2.7-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC200 〔Yasuda, K. et al., Analyses of the acetate-producing pathways in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Applied Microbiology and Biotechnology. 77:853-860 (2007)〕2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAL液とした。
得られたライゲーションAL液を用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRC200約5.0kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子(ライゲーションAL液)の場合、長さ約2.7kbの挿入断片が認められた。
エシェリヒア コリ株由来adhE遺伝子を含むプラスミドをpCRC200-adhE/ECと命名した。
(2-3)ブタノール生産遺伝子のpCRB205へのクローニング
上記のPCRにより増幅したエシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子含む約1.5-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB205 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAM液とした。
同じく、上記のPCRにより増幅したクロストリジウム ベ-ジェリンキ-由来ald遺伝子を含む約1.5-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpCRB205 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAN液とした。
さらに、上記のPCRにより増幅したストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子含む約1.4-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpCRB205 2μlを各々制限酵素EcoRIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAO液とした。
得られた3種のライゲーションAM液、AN液及びAO液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール50マイクロg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIもしくはEcoRIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB205約5.0-kbのDNA断片に加え、エシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子(ライゲーションAM液)の場合、長さ約1.5-kbの挿入断片が、クロストリジウム ベ-ジェリンキ-由来ald遺伝子(ライゲーションAN液)の場合、長さ約1.5-kbの挿入断片が、ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子(ライゲーションAO液)の場合、長さ約1.4-kbの挿入断片が、認められた。
エシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-eutE/EC、クロストリジウム ベ-ジェリンキ-由来ald遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-ald/CB、ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を含むプラスミドをpCRB205-ccr/SAとそれぞれ命名した。
(2-4)ブタノール生産遺伝子のpCRC732へのクローニング
上記のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含む約3.0-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC732 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAP液とした。
同じく、上記のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe1遺伝子を含む約2.8-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC732 2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAQ液とした。
さらに、上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子を含む約1.1-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpCRC732 2μlを各々制限酵素EcoRIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAR液とした。
得られた3種のライゲーションAP液、AQ液及びAR液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIもしくはEcoRIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRC732約5.0kbのDNA断片に加え、クロストリジウム アセトブチリカム株由来bcd-etfB-etfA遺伝子(ライゲーションAP液)の場合、長さ約3.0-kbの挿入断片が、クロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe1遺伝子(ライゲーションAQ液)の場合、長さ約2.8-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子(ライゲーションAR液)の場合、長さ約1.1-kbの挿入断片が認められた。
クロストリジウム アセトブチリカム株由来bcd-etfB-etfA遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-bcd/CA、クロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe1遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-adhe1/CA及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-adhA/CGとそれぞれ命名した。
上述のプラスミドpCRB205-eutE/ECを制限酵素SalIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとエシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を連結した約1.8-kbのDNA断片と、SalIで切断した上述のプラスミドpCRC732-adhA/CGを70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約6.1-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAS液とした。
得られたライゲーションAS液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをクロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRC732-adhA/CG 約6.1-kbのDNA断片に加え、tacプロモーターとエシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を連結した約1.8-kbの挿入断片が認められた。
ここで得られたコリネバクテリウム グルタミカム株由来adhA及びエシェリヒア コリ株由来eutE遺伝子を含むプラスミドをpCRC732-adhA/CG-eutE/ECと命名した。
(2-5)ブタノール生産遺伝子のpCRB12へのクローニング
上述のプラスミドpCRB205-ccr/SAを制限酵素BamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を連結した約1.7-kbのDNA断片と、BamHIで切断した上述のプラスミドpCRB12を70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約4.6-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAT液とした。
得られたライゲーションAT液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。
ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を含むプラスミドをpCRB12-ccr/SAと命名した。
(2-6)ブタノール生産遺伝子のpCRD301へのクローニング
上述のプラスミドpCRB205-ccr/SAを制限酵素BamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を連結した約1.7kbのDNA断片と、BamHIで切断した上述のプラスミドpCRD301を70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約5.6-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAU液とした。
得られたライゲーションAU液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。
ストレプトミセス アベルミティリス株由来ccr遺伝子を含むプラスミドをpCRD301-ccr/SAと命名した。
(3) コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium
glutamicum)Rのための染色体マーカーレス遺伝子導入用プラスミドの構築
ブタノール生産遺伝子群をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株にマーカーレス染色体導入するために必要なDNA領域を、コリネバクテリウム グルタミカム R株の生育に必須でないと報告されている配列 [Appl. Environ. Microbiol.、Vol. 71、3369-3372(2005)] に基づき決定した。
SSIs 1領域及びSSIs 5領域を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際してSSIs 1領域及びSSIs 5領域をそれぞれクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム R由来のDNA配列(配列番号111;SSIs 1領域)及び(配列番号112;SSIs 5領域)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
SSIs 1領域増幅用プライマー
(a-46); 5’- AT GCATGC TTGCGTATTTCTGGAAGAAG -3’(配列番号113)
(b-46); 5’- AT GCATGC CACACCTCGATAAACCTCTC -3’(配列番号114)
尚、プライマー(a-46)及び(b-46)には、SphI制限酵素部位が付加されている。
SSIs 5領域増幅用プライマー
(a-47); 5’- CTCT GTCGAC CCAGTCAGTACATACAGGCT -3’ (配列番号115)
(b-47); 5’- CTCT GCATGC CTCTCCGCGAACGAATCCGT -3’ (配列番号116)
尚、プライマー(a-47)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-47)には、SphI制限酵素部位が、それぞれ付加されている。
鋳型DNAには、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rの染色体DNAを用いた。
実際のPCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー*) 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。
*) SSIs 1領域を増幅する場合はプライマー(a-46)と(b-46)の組み合わせ、SSIs
5領域を増幅する場合はプライマー(a-47) と (b-47)
の組み合わせでPCRを行った。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ SSIs 1領域の場合 120秒
SSIs 5領域の場合 180秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを用いて0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、SSIs 1領域の場合約2.0-kb、SSIs 5領域の場合約2.8-kbのDNA断片が検出できた。
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株由来SSIs 1領域を含む約2.0-kb DNA断片10μl及びマーカーレス染色体遺伝子導入用プラスミドpCRA725 [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004) 、(特開2006-124440)] 2μlを各々制限酵素SphIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAV液とした。
同じく、上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株由来SSIs 5領域を含む約2.8-kb DNA断片10μl及びマーカーレス染色体遺伝子導入用プラスミドpCRA725 [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004) 、(特開2006-124440)] 2μlを制限酵素SalI及びSphIで切断し、次いで70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAW液とした。
得られた2種のライゲーションAV液又はAW液それぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIもしくはSalI及びSphIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRA725約4.4-kbのDNA断片に加え、SSIs 1領域(ライゲーションAV液)の場合、長さ約2.0kbの挿入断片が、SSIs 5領域(ライゲーションAW液)の場合、長さ約2.8-kbの挿入断片が認められた。
SSIs 1領域を含むプラスミドをpCRA725-SSI1、SSIs 5領域を含むプラスミドをpCRA725-SSI5とそれぞれ命名した。
(4)染色体マーカーレス遺伝子導入用プラスミドへのブタノール生産遺伝子の導入
(4-1)クロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子及びhbd遺伝子の染色体導入用プラスミドへの導入
上述のプラスミドpKK223-3-crt/CAをBamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子を連結した約1.1-kbのDNA断片と、BglIIで切断した上述のプラスミドpCRA725-SSI1を70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約6.5-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAX液とした。
得られたライゲーションAX液を用い、塩化カルシウム法 〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミド約6.5-kbのDNA断片に加え、長さ約1.1-kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpCRA725-SSI1-crt/CAと命名した。尚、このプラスミドは、制限酵素部位BglIIが1箇所のみ存在する。
さらに、上述のプラスミドpKK223-3-hbd/CAをBamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとクロストリジウム アセトブチリカム株由来hbd遺伝子を連結した約1.2-kbのDNA断片と、BglIIで切断した上述のプラスミドpCRA725-SSI1-crt/CAを70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約7.6-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAY液とした。
得られたライゲーションAY液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミド約7.6-kbのDNA断片に加え、長さ約1.2-kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CAと命名した。尚、このプラスミドは、制限酵素部位BglIIが1箇所のみ存在する。
(4-2)ラルストニア ユートロファ株由来phaA遺伝子の染色体導入用プラスミドへの導入
上述のプラスミドpKK223-3-phaA/REをBamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとラルストニア ユ-トロファ株由来phaA遺伝子を連結した約1.5-kbのDNA断片と、BglIIで切断した上述のプラスミドpCRA725-SSI5を70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた約7.0-kbのDNA断片とを混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl及びT4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションAZ液とした。
得られたライゲーションAZ液を用い、塩化カルシウム法 〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリJM109を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、及び1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミド約7.0-kbのDNA断片に加え、長さ約1.5-kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpCRA725-SSI5-phaA/REと命名した。尚、このプラスミドは、制限酵素部位BglIIが1箇所のみ存在する。
(5) ブタノール生産遺伝子染色体導入株の構築
マーカーレス染色体遺伝子導入用ベクターpCRA725は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R内で複製不能なプラスミドである。pCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CAを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)] を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地〔A液体培地、及び1.5% 寒天〕に塗布した。上記の培地で得られた一重交叉株を、10%(W/V)スクロース含有BT寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5 g、K2HPO4 0.5 g、MgSO4.7H2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 mlを蒸留水1Lに溶解、及び1.5% 寒天〕に塗付した。
プラスミドpCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CAが染色体上の相同領域との一重交叉株の場合、pCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CA上のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性と、バチラス サブチリス(Bacillus subtilis)のsacR-sacB遺伝子の発現によるスクロース含有培地での致死性を示すのに対し、二重交叉株の場合、pCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CA上のカナマイシン耐性遺伝子の脱落によるカナマイシン感受性と、sacR-sacB遺伝子の脱落によるスクロース含有培地での生育性を示す。従って、マーカーレス染色体遺伝子導入株は、カナマイシン感受性及びスクロース含有培地生育性を示す。
そこで、カナマイシン感受性及びスクロース含有培地生育性を示した株を選択した。このクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子及びhbd遺伝子マーカーレス染色体導入株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB1と命名した。
同様に、pCRA725-SSI5-phaA/REを用いて、電気パルス法[Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB1株を形質転換し、カナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。上記の培地で得られた一重交叉株を、10%(W/V)スクロース含有BT寒天培地に塗付しカナマイシン感受性及びスクロース含有培地生育性を選択した。
この得られたクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt遺伝子、hbd遺伝子及びラルストニア ユ-トロファ株由来phaA遺伝子マーカーレス染色体導入株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2と命名した。
(6) ブタノール生産株の作製
上述のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRB205-eutE/ECを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、両プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で共存可能なプラスミドである。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRB205-eutE/ECの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But1と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表8にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But1は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P−482、寄託日:2008年1月29日)。
同様に、上述のプラスミドpCRD301-ccr/SA及びpCRC732-adhA/CG-eutE/ECを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、両プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で共存可能なプラスミドである。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRD301-ccr/SA及びpCRC732-adhA/CG-eutE/ECの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But2と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表8にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But2は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P−483、寄託日:2008年1月29日)。
さらに、上述のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRC200-adhE/ECを用いて、電気パルス法[Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、両プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で共存可能なプラスミドである。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRC200-adhE/ECの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But3と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表8にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But3は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P−484、寄託日:2008年1月29日)。
*) 表内の表示の略語は以下の通り。
<遺伝子起源略語>
CA; クロストリジウム アセトブチリカム (Clostridium acetobutylicum)
CB; クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii)
CG; コリネバクテリウム グルタミカム R (Corynebacterium glutamicum)
EC; エシェリヒア コリ (Escherichia coli)
RE; ラルストニア ユートロファ (Ralstonia eutropha)
SA; ストレプトミセス アベルミティリス (Streptmyces avermitilis)
<遺伝子組換え法略語>
C; chromosome 染色体マーカーレス導入
P; plasmid プラスミド導入
(7) ブタノール生産遺伝子比較株の作製
上述のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRB205-ald/CBを用いて、電気パルス法[Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、両プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で共存可能なプラスミドである。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRB205-ald/CBの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But4と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表8にまとめて示した。
同様に、上述のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRC732-adhe1/CAを用いて、電気パルス法[Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。尚、両プラスミドは、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)内で共存可能なプラスミドである。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB12-ccr/SA及びpCRC732-adhe1/CAの導入が認められた。得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But5と命名した。尚、本株の遺伝子組換えの概要は、表8にまとめて示した。
さらに、上述のプラスミドpCRC732-bcd/CAを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CgB2株を形質転換し、これをカナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、次いで該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認したが、上記で作製のプラスミドpCRC732-bcd/CAの一部欠失が観察され導入が認められなかった。これは、コリネバクテリウム グルタミカム内でのクロストリジウム アセトブチリカム株由来bcd-etfB-etfA遺伝子の発現がストレスを与え、プラスミドの一部欠失していることが考えられ、ブタノールを生産するために、コリネバクテリウム グルタミカム内での当該遺伝子の発現が不向きであることを意味している。
実施例4 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1、But2、But3、But4及びBut5におけるブタノール生産関連酵素の活性測定
実施例3で創製したコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1、But2、But3、But4及びBut5におけるブタノール生産関連酵素、THL、HBD、CRT、CCR、BYDH及びBDHの活性を測定した。方法は、培養の際にクロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含有した培地を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で行った。
活性測定の結果を以下の表9に示す(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)。
実施例5 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1及びBut2を用いた還元条件下における1-ブタノール生産実験
実施例3で創製したコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium
glutamicum) But1又はBut2を、クロラムフェニコール 5μg/ml及びカナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地にそれぞれ塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium
glutamicum) But1及びBut2を、クロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含むA液体培地10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium
glutamicum) But1及びBut2を、クロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含むA液体培地500mlの入った容量2Lの三角フラスコに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
このようにして培養増殖させたそれぞれの菌体を、遠心分離 (4℃、5,000×g, 15分)により回収した。得られた菌体を、終濃度10%となるようにBT(-尿素)液体培地〔0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕に懸濁した。このそれぞれの菌体懸濁液50mlを容量100mlメディウム瓶に入れ、還元条件下(反応液の酸化還元電位;-420mV乃至-450 mV、BROADREY JAMES社製、ORP Electrodeで測定)、グルコース8%、クロラムフェニコール 5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlとなるように添加し、33℃に保った水浴中で攪拌しながら1-ブタノールを生成させた。この時、反応液のpHが7.0を下回らないように5Nのアンモニア水を用いてpHコントローラー (エイブル株式会社製、型式:DT-1023)でコントロールしながら1-ブタノール生成反応を行わせた。
1-ブタノールの定量は、サンプリングした反応液を遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) し、得られた上清液をGC/MSで分析することにより行った。GC/MS分析は、DB-WAXキャピラリーカラム(30 m×0.25 mm×0.25μm; J&Wサイエンティフィック社製, USA)をセットした島津社製のガスクロマトグラフ質量分析器 (GC-MS QP-2010 plus)を用いて行った。分析条件はヘリウムガスを1.0
mL/min、スプリット比を1:20に設定し、GCオーブンの条件を40oCで5分保持した後、10oC/minで230oCまで上昇させた。一サンプルあたりの分析時間は24分であった。質量分析器はインターフェイスを250oC、イオン源 200oC、電子衝撃電圧(EI voltae) 70 eVとした。
この結果、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1は、還元条件下での1-ブタノール生成反応の開始から20時間後に85μM、60時間後に160μMの1-ブタノールを、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But2は、還元条件下での1-ブタノール生成反応の開始から20時間後に350μM、60時間後に720μMの1-ブタノールを反応液中にそれぞれ生産していた。コリネバクテリウム グルタミカム
(Corynebacterium glutamicum) But1とBut2株とは、THL、HBD、CRT、CCR及びBYDHをコードする同じ遺伝子が導入されていることは共通であり、唯一の違いは、But2株にはコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium
glutamicum)由来のBDH活性を有するadhA遺伝子をプラスミド上で発現させているが、But1株では、adhA遺伝子は組換えていない点にある(表8及び表9参照)。But1株が元来コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)が保有しているBDH活性のみであるのに対して、But2株では、BDH活性が大きく上昇していた(表9参照)。このBDH活性の違いが、But1株とBut2株の1-ブタノールの生産性の違いを反映していると考えられる。
比較例1 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But4を用いた還元条件下における1-ブタノール生産実験
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But4を用いた以外は、実施例5と同様の方法で1-ブタノール生産を評価したところ、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But4では、1-ブタノール生産が観察されなかった。コリネバクテリウム グルタミカム
(Corynebacterium glutamicum) But1とBut4の違いは、BYDH反応ステップの遺伝子として、But1にはエシェリヒア コリ (Escherichia coli)由来のeutE遺伝子を導入したのに対して、But4にはクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii) 由来のald遺伝子を導入しており(表8参照)、But1ではBDH活性が検出されているが、But4ではBDH活性は検出されていない(表9参照)。これまで宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、又はサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いた場合には、クロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii) 由来のald遺伝子を導入して1−ブタノールを生産している(国際公開公報 WO2007/041269)。すなわち、宿主としてコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)を用いて1−ブタノールを生産する場合には、上記WO2007/041269が開示するクロストリジウム ベージェリンキー (Clostridium beijerinckii) 由来のald遺伝子では機能せず、宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、又はサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いた場合とは全く異なるブタノール生産遺伝子の組み合わせが必要であることが明らかになった。
実施例6 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But3を用いた還元条件下における1-ブタノール生産実験
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)
But3を用いた以外は、実施例5と同様の方法で1-ブタノール生産を評価したところ、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But3は、還元条件下での1-ブタノール生成反応の開始から20時間後に270μM、60時間後に510μMの1-ブタノールを反応液中に生産していた。コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But3は、1-ブタノールを生産したBut1やBut2と比較した場合、THL、HBD、CRT、CCR及びBYDHをコードする同じ遺伝子が導入されていることは共通であり、相違点は、BYDHとBDHの反応ステップの遺伝子としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来の一つの酵素がBYDHとBDHの両方をコードするadhE遺伝子を導入している点にあり(表8参照)、有意なBYDHとBDH活性が検出されている(表9参照)。すなわち、宿主としてコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)を用いて1-ブタノールを生産させる場合、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子が有効である。尚、これまでに該遺伝子を発現させて、1−ブタノール生産を行わせた例はない。
比較例2 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But5を用いた還元条件下における1-ブタノール生産実験
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But5を用いた以外は、実施例5と同様の方法で1-ブタノール生産を評価したところ、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But5では、1-ブタノール生産が観察されなかった。コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But3とBut5の違いは、BYDH−BDH反応ステップの遺伝子として、But3にはエシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来のadhE遺伝子を導入しているのに対して、But5にはクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe1遺伝子を導入しており(表8参照)、But3ではBYDH、BDH活性が検出されているが、But5ではBYDH及びBDH活性は検出されていない(ただし、元来コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)はBDH活性を有している)(表9参照)。これまで宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を用いた場合には、クロストリジウム アセトブチリカム (Clostridium acetobutylicum)由来のadhe1遺伝子を導入して1−ブタノールを生産させている(Inui M., et al, Expression of Clostridium acetobutylicum butanol synthetic genes in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol., 77:1305-1316, (2008))。すなわち、宿主としてコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を用いて1−ブタノールを生産する場合には、前記WO2007/041269が開示するクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhe1遺伝子では機能せず、宿主としてエシェリヒア コリ(Escherichia coli)を用いた場合とは全く異なるブタノール生産遺伝子の組み合わせが必要であることが明らかになった。
実施例7 コリネバクテリウム
グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1、But2及びBut3を用いた反応培地の高酸化還元電位条件下における1-ブタノール生産実験
実施例3で創製したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) But1、But2又はBut3株を、クロラムフェニコール 5μg/ml及びカナマイシン 50μg/mlを含むA寒天培地に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1、But2及びBut3株を、クロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含むA液体培地10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
上記の条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)But1、But2及びBut3株を、それぞれ、クロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含むA(-尿素)液体培地〔350mM(5.22%)グルコース、0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.2% 酵母エキス、0.7%カザミノ酸、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕500mlが入っている容量1Lのジャーファーメンターに移し、28℃、1000rpm、滅菌空気を0.5L/minで通気して、22時間好気培養増殖を行なった。この間、5Nアンモニア水溶液を使用してジャーファーメンター槽内のpHを7.6に維持した。
このようにして培養増殖された菌体を、遠心分離(4℃、10分、5000×g)によって回収した。得られた菌体を、それぞれ、クロラムフェニコール5μg/ml及びカナマイシン50μg/mlを含むBT(-尿素)培地〔300mMグルコース、0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕400mlの入っている容量1Lのジャーファーメンター加え、33℃にて緩やかに攪拌し(500rpm)、還元条件下(反応液の酸化還元電位;-270mV乃至-300 mV、BROADREY JAMES社製、ORP Electrodeで測定)、ブタノール生成反応を実施した。この間、10Nアンモニア水溶液を使用して反応槽内のpHを7.0に維持した。
サンプリング及び1-ブタノールの定量は、実施例5と同様の方法により行った。
この結果、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But1は、1-ブタノール生成反応の開始から8時間後に0.9 mM(900μM)、14時間後に1.8 mMの1-ブタノールを、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But2は、1-ブタノール生成反応の開始から8時間後に1.2 mM、14時間後に2.1 mMの1-ブタノールを、コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) But3は、1-ブタノール生成反応の開始から8時間後に1.6 mM、14時間後に2.6 mMの1-ブタノールを、それぞれ反応液中に生産していた。
本発明の形質転換体を用いると、糖類から効率よくブタノールを生産することができる。
図1は、実施例3(2)項において作製したpCRB12-ccr/SA、pCRD301-ccr/SA、pCRB205-eutE/EC、pCRC732-adhA/CG-eutE/EC、及びpCRC200-adhE/ECを示す模式図である。 図2は、実施例3(4)項において作製したpCRA725-SSI1-crt/CA-hbd/CA及びpCRA725-SSI5-phaA/REを示す模式図である。

Claims (8)

  1. コリネ型細菌中で機能する、以下の(1)〜(6)からなる群より選択される少なくとも1つ以上のDNAをコリネ型細菌に導入することを特徴とする、ブタノール生産能を有する形質転換体。
    (1)配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号1、2、3又は4で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
    (2)配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号5、6、7又は8で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
    (3)配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号9又は10で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
    (4)配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号11又は12で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
    (5)配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号13、14、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルデヒド デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
    (6)配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNA、並びに、配列番号15、16又は17で表わされる塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするDNAからなる群より選択される少なくとも1種のDNA
  2. (1)において、配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来、配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号3で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来、配列番号4で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
    (2)において、配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium
    acetobutylicum)由来、配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・ベージェリンキー(Clostridium
    beijerinckii)由来、配列番号7で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来、配列番号8で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
    (3)において、配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来、配列番号10で表わされる塩基配列からなるDNAが、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来の3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
    (4)において、配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)由来、配列番号12で表わされる塩基配列からなるDNAが、ストレプトミセス・ヴィオラセオルバー(Streptomyces violaceoruber)由来のクロトニル-CoA レダクターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、
    (5)において、配列番号13で表わされる塩基配列からなるDNA、配列番号14で表わされる塩基配列からなるDNA及び配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であり、かつ、
    (6)において、配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNAが、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来、配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAが、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来、配列番号17で表わされる塩基配列からなるDNAが、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc
    mesenteroides)由来のアルコール デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の形質転換体。
  3. (1)が、ラルストニア・ユートロファ由来の配列番号1で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
    (2)が、クロストリジウム・アセトブチリカム由来の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA又はクロストリジウム・ベージェリンキー由来の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
    (3)が、クロストリジウム・アセトブチリカム由来の配列番号9で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
    (4)が、ストレプトミセス・アベルミティリス由来の配列番号11で表わされる塩基配列からなるDNAであり、
    (5)が、エシェリヒア・コリ由来の配列番号13又は16で表わされる塩基配列からなるDNAであり、かつ
    (6)が、コリネバクテリウム・グルタミカム由来の配列番号15で表わされる塩基配列からなるDNA又はエシェリヒア・コリ由来の配列番号16で表わされる塩基配列からなるDNAである
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の形質転換体。
  4. (1)〜(5)又は(1)〜(6)のDNAをコリネ型細菌に導入することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の形質転換体。
  5. コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカム、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、及び、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の形質転換体。
  6. コリネバクテリウム・グルタミカムが、コリネバクテリウム・グルタミカムR株(FERM P−18976)、又は、その乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)破壊株である請求項5に記載の形質転換体。
  7. Corynebacterium glutamicum But1(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−482)、Corynebacterium glutamicum But2(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−483)、又はCorynebacterium glutamicum But3(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター寄託微生物―受託番号:NITE P−484)の名称で寄託されている形質転換体。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の形質転換体により、糖類を含有する培地中でブタノール生成を行なわせる工程と、生成したブタノールを回収する工程とを含むブタノールの製造方法。
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