図1にこの発明の背景となる雨水貯留システム10の一例が図解される。この雨水貯留システム10は、地中に埋設される雨水貯留槽12を含み、当該雨水貯留槽12に雨水を集め、集水した雨水を一時的に貯留した後、雨水管渠や河川に排出する、或いはそのまま、周辺の地中に緩やかに浸透させる。この雨水貯留槽12は、図2―図4に示すプラスチック製の要素部材を組み合わせることによって、図5に示すような槽として構成したものである。以下、図7以降の図面を参照して後述するこの発明の理解に必要な範囲で、このようなプラスチック製の雨水貯留システム10について説明する。
雨水貯留槽12の一方側端近傍に流入施設14が、他方側端近傍に流出施設16が付設される。雨水が流入施設14から雨水貯留槽12を通り、流出施設16から流れ出るので、流入施設16側を上流側、流出施設14側を下流側と呼ぶこともできる。
流入施設14は、点検口18を含み、この点検口18は周知のように地中に埋設されるが、それの上端は地表に臨まされ、そこから人の出入りを可能にしている。点検口18の上部には、たとえば道路脇の側溝や雨水暗渠などから集めた雨水を流し込む外部流入管20が設けられ、その下部には、この雨水を雨水貯留槽12に流し込む流入管22が設けられる。また、流入管22の流入入り口にはごみ除去フィルタ24が装着されており、点検口26内に雨水とともに流入した落ち葉などのごみは、雨水貯留槽12内には入らない。
流出施設16にも点検口26が設置され、この点検口26の下部には、雨水貯留槽12からの雨水を点検口26に流出させる流出管28が取り付けられ、それよりさらに下方の点検口26の下部には外部流出管30が取り付けられる。外部流出管30は、雨水貯留槽12から点検口26に流出させた雨水を雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流するためのものであるが、放流量が急増しないようにするための流量制限オリフィスを有する。外部流出管30は、たとえばリブのない分岐継手部を有する枝付管などが用いられ、分岐継手部には、オーバフロー管32が取り付けられる。このオーバフロー管32は、雨水貯留・浸透槽12をオーバフローした雨水を雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流する。また、点検口26の上部と雨水貯留槽12との間には、空気抜き管34が設けられる。
ここで、図1に示す雨水貯留槽12について、各要素部材の一例を示す図2―図4を参照して、詳細に説明する。
図2に示す要素部材は、槽本体36であり、複数の槽本体36を縦横方向に並べる或いは上下方向に積層することによって、雨水貯留槽12の基礎形状が構成される。槽本体36は、ポリプロプレンなどの合成樹脂からなり、射出成形によってたとえば中空状に形成される。また、槽本体36には、上下方向に貫通する複数の小孔が形成される。これらの小孔は、雨水貯留槽12を形成した際に、雨水貯留槽12内での雨水の流れを容易にさせる。ただし、図面の簡素化のために、小孔の図示は省略する。
槽本体36は、基礎板38を備える。基礎板38は、矩形の板状に形成され、たとえば、その縦方向および横方向の長さは、ともに500mmである。
基礎板38の四隅には、基礎板38から上方向に突出する嵌合部40が形成される。嵌合部40は、略四角柱状に形成され、その上下方向の長さはたとえば280mmである。嵌合部40の先端部は、段差状に形成されており、槽本体36同士を縦方向に組み合わせる際に、対向するように配置した他の槽本体36の嵌合部40と嵌合する。
また、嵌合部40の間には、基礎板38から上方向に突出する把持部42が形成される。把持部42は、略直方体状に形成され、その上下方向の長さはたとえば200mmである。把持部42には、たとえば、槽本体36を持ち上げる際に作業者が把持しやすいように、直方体状の開口42aが形成されている。
図3に示す要素部材は、天板44であり、槽本体36の基礎板38にビスや木ネジ等で固定されて、雨水貯留槽12の天面を形成する板状体である(図5参照)。
また、図4に示す要素部材は、側板46であり、槽本体36の側方に嵌め込まれて、雨水貯留槽12の側面を形成する板状体である(図5参照)。側板46には、厚み方向に貫通する複数の小孔が形成され、これらの小孔は、雨水貯留槽12から雨水を漏洩させるための漏洩路として機能する。
図2―図4に示す各要素部材36,44,46を用いて、槽が組み立てられる。たとえば、図5に例示した雨水貯留槽12では、嵌合部40によって組み合わせた2つの槽本体36を縦方向(雨水貯留槽12の長手方向)に並べたものを1列として、横方向に6つの列を形成し、上下に3つの層を積層している。
図5において、雨水貯留槽12の最下層の略中央の列である列48の両側端には、側板46の代わりに管接続板50が嵌め込まれ、この管接続板50に、上述した流入管22ないし流出管28が接続される。また、列48には、雨水とともに流入した土砂を集積するための溝部材52が設けられる。
図6に示すように、溝部材52は、硬質塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、底板と、底板の両端から上方向に立ち上がる側板とによって断面略U字の凹溝状に形成される。溝部材52は、隣接する槽本体36をまたぐように槽本体36の基礎板38上に配置され、流入管22と流出管28とに亘るように設けられる。ただし、溝部材52は、縦方向に並べた槽本体36の長さに応じて適宜、切断或いは図示しない連結部材によって連結することもできる。詳細な説明は省略するが、溝部材52は、たとえば取付用の治具54によって槽本体36の把持部40に固定される。なお、木ネジやビス等によって溝部材52と槽本体36とを固定してもよい。また、図2に示す槽本体36では、嵌合部40と把持部42によって凹溝状の空間が形成されるため、列48に溝部材52を設けない場合もある。
このようにして、図5に示すような6列3層の雨水貯留槽12が、組み立てたプラスチック製の要素部材36,44,46,50と溝部材52とを組み合わせることによって形成できる。ただし、雨水貯留槽12の層数や列数は任意に設定できるとともに、各要素部材の上述の大きさや形状も単なる例示であり、それらは、必要に応じて、適宜変更され得る。
図5に示すようにして形成した雨水貯留槽12を図1に示すように地中に埋設し、その上流側に、流入施設14を配置し、下流側に流出施設16を配置する。なお、雨水貯留槽12や点検口18,26やは、土中内において、それぞれ砕石基礎150および砂基礎152の上に設置され、周囲を埋め戻した土で覆われている。そして、点検口18,26の上端開口は地表面に臨まされる。
また、図1では図面の簡素化のために省略したが、雨水貯留槽12の外周全体は、被覆部材として、たとえば第1保護シート56と第2保護シート58とにサンドイッチにされた遮水シート60に被覆される。このため、雨水貯留槽12は、雨水を一時的に内部に貯留する貯留機能と、管体を介して雨水を外部に排出する排出機能とを有する。
雨水は先に説明したように、流入施設14の外部流入管20から点検口18および流入管22を経て雨水貯留槽12に流入され、雨水貯留槽12に一時的に貯留される。そして、雨水貯留槽12に貯留された雨水は、流出施設14の流出管28から点検口26を経て、外部流出管30から雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流される。
以上で、プラスチック製の要素部材を組み立てた雨水貯留槽12を利用するこの発明の背景技術としての雨水貯留システム10を説明した。以下に、このような背景技術を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、この発明の実施例または実施形態について説明する。ただし、この発明は上述の背景技術の雨水貯留システム10にドレン管路64を設けたものであり、残余の部分を背景技術と同じにしても背景技術とは変更してもよいので、以下の説明では、上でした説明と重複する説明は省略する。
図7を参照して、この発明の一実施例の雨水貯留システム10は、雨水貯留槽12から流出施設16への雨水の流出に新しい考え方を取り入れているという点で、図1の雨水貯留システム10と異なる。上述のように、雨水貯留槽12では、最下層の下流側端部に配置される槽本体36に管接続板50が嵌め込まれ、貯留した雨水を点検口26に流出させるための流出管28が取り付けられる。そしてさらに、雨水貯留システム10には、雨水貯留槽12の底部62と、流出施設16の点検口26とを連通するドレン管路64が設けられる。
図7−図9に示すように、ドレン管路64は、雨水貯留槽12の底部62に配置されるドレンユニット66、および当該ドレンユニット66と流出施設16の点検口26とを接続するドレン接続管68とを備える。ここで、この実施例においては、雨水は、雨水貯留槽12からドレンユニット66に流入し、そしてドレン接続管68を介して、流出施設16の点検口26に流出するため、「上流側」が流路における雨水貯留槽12側を意味し、「下流側」が流路における流出施設16の点検口26側を意味する。ただし、図面の簡素化のために、図7−図9における被覆部材(第1保護シート56,第2保護シート58,遮水シート60)の図示は省略する。
図10に示すように、ドレンユニット66は、雨水の流路となる曲管70を含み、曲管70を埋め込んだ硬化部72の形状を型枠74によって定着させることによって形成される。
曲管70は、硬質ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、その呼び径は75mmである。曲管70には、垂直上方向に開口する流入口82と水平方向に開口する流出口84とが形成され、流入口82と流出口84とは、それぞれ受口構造を有する。
具体的には、曲管70は、曲がり継手76の下流側端部に短管78の一方端を接続し、その短管78の他端に両受口継手80を接続することによって形成される。曲がり継手76には、90°エルボ等を用いることができる。図11に示すように、曲がり継手76の上流側端部は、ドレンユニット66の上面66aで垂直上方向に開口しており、ドレンユニット66の流入口82として機能する。また、曲がり継手76の下流側端部には、短管78の上流側端部が挿入されて、接着接合等される。また、短管78の下流側端部は、両受口継手80の上流側端部に挿入されて、接着接合等される。そして、両受口継手80の下流側端部は、ドレンユニット66の側面66bで水平方向に開口しており、ドレンユニット66の流出口84として機能する。
上述したように、曲管70は、硬化部72に埋め込まれる。硬化部72は、セメントペースト,レジコン,モルタルおよびコンクリート等のセメントを含む硬化物であり、曲管70の強度を維持するために用いられる。図12に示すように、硬化部72は、ドレンユニット66の上面66aを平面状に形成する。
また、上述したように、硬化部72の形状は、型枠74によって定着する。図12に示すように、型枠74は、たとえば半割りにした硬質ポリ塩化ビニル管等が用いられ、ドレンユニット66の下面66cを曲面状に形成する。
詳細は後述するが、このようなドレンユニット66は、雨水貯留槽12の底部62に配置される際に、ドレンユニット用遮水シート86によって被覆される。
図13に示すように、ドレンユニット用遮水シート86は、ドレンユニット66の下面66cに沿う下面シート88と、ドレン管路66の側面66bに沿う側面シート90,92とによって形成される。
具体的には、下面シート88は、ドレンユニット66の下面66cに沿わせると両側に余部分が生じるように、長手方向の長さがドレンユニット66の下面66cの弧長よりも少し長い長方形状に形成されており、その余部分が後述する遮水シート60と融着接合をするための融着部94として機能する。
側面シート90は、半円部90aと当該半円部90aの弦側に一体的に形成される矩形部90bとを含み、ドレンユニット66の流出口84のない側面66bを覆う。半円部90aは、ドレンユニット66の側面66bに沿わせると外縁部に余部分が生じるように、ドレンユニット66の側面66bの形状よりも少し径が大きい半円状に形成されており、その余部分が下面シート88に重ね合わせて融着接合をするための融着部96として機能する。矩形部90bは、たとえば長手方向の長さが半円部90aの弦長よりも少し長い長方形状に形成されており、後述する遮水シート60と融着接合をするための融着部98として機能する。
側面シート92は、半円部92aと矩形部92bとによって側面シート90と略同形状に形成され、上述のように機能する融着部96,98を有し、ドレンユニット66の流出口84のある側面66bを覆う。ただし、側面シート92におけるドレンユニット66の流出口84に対応する位置には、孔100が形成されており、その孔100を介してドレンユニット66とドレン接続管68とを接続する。
また、上述したように、ドレン接続管68は、ドレンユニット66と流出施設16の点検口26とを接続する。ドレン接続管68は、硬質ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂によって、ドレンユニット66の流出口84とほぼ同径に形成され、その上流側端部は、ドレンユニット66の流出口84すなわち両受口継手80の下流側端部に挿入されて、接着接合等される。また、ドレン接続管68の下流側端部は、点検口26の内部で開口する。ただし、詳細は後述するが、ドレン接続管68は、ドレンユニット66と点検口26との距離に応じて、継手等によって継ぎ足すこともできる。
図14および図15を参照して、このようなドレン管路64を備える雨水貯留システム10を設ける方法を以下に示す。
先ず、雨水貯留システム10の形状や大きさに合わせて地面を掘削して、その掘削した地面上に砕石基礎150を設ける。砕石基礎150の厚みは、たとえば150mmである。そして、砕石基礎150の上に砂基礎152を積層する。砂基礎152の厚みは、たとえば50mmである。なお、ドレン管路64を設ける箇所については、予め、ドレンユニット66の形状や大きさに合わせて、地面を他よりも少し深く掘削しておき、その上に砕石基礎150および砂基礎152を設ける(図7参照)。
続いて、砂基礎152の上に、第1保護シート56を敷設する。詳細は後述するが、第1保護シート56は、雨水貯留槽12の外周全体を被覆するために用いるため、雨水貯留槽12に対応した大きさを有している。また、図14に示すように、第1保護シート56には、ドレンユニット66の流出口84すなわちドレン接続管68とほぼ同径の孔102が形成されており、その孔102を介してドレンユニット66とドレン接続管68とを接続する。
次に、上述したようなドレンユニット用遮水シート86によってドレンユニット66の側面66bと下面66cとを被覆する(図13参照)。具体的には、先ず、ドレンユニット66の下面66cに下面シート88を沿わせる。そして、側面シート90,92の半円部90a,92aをそれぞれドレンユニット66の側面66bに沿わせ、それぞれの融着部96をドレンユニット66の下面66c側に折り、融着部96と下面シート88とを融着接合する。ただし、予め、ドレンユニット66の側面66bと下面66cとを被覆できるドレンユニット用遮水シート86を加工しておいてもよい。
続いて、ドレンユニット用遮水シート86によって被覆したドレンユニット66を第1保護シート56の上の所定の箇所に配置して、ドレンユニット66にドレン接続管68を接続する。
具体的には、ドレン接続管68を、第1保護シート56の孔102とドレンユニット用遮水シート86の孔100とに挿通させて、ドレンユニット68の流出口84に挿入して接着接合等する。ただし、先ず、短いドレン接続管68をドレンユニット66に接続しておき、その後、流出施設16を設ける際に、ドレンユニット66と点検口26との距離に応じて、図示しない継手によってドレン接続管68を継ぎ足してもよい。
次に、図14に示すように、第1保護シート56ないしドレンユニット66の上に遮水シート60を敷設する。遮水シート60には、ドレンユニット66の上面66aと略等しい形状を有する孔104が形成されており、その孔104を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。遮水シート60を第1保護シート56の上に敷設する際には、孔104の位置をドレンユニット66の上面66aの位置に合わせて、遮水シート60とドレンユニット用遮水シート86の融着部94,100とが重なり合う箇所を融着接合する。
続いて、遮水シート60の上に、第2保護シート58を敷設する。第2保護シート58には、たとえばドレンユニット66の流入口82とほぼ同径で同形状の孔106が形成されており、その孔106を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。第2保護シート58を遮水シート60の上に敷設する際には、孔106の位置をドレンユニット66の流入口82の位置に合わせる。
そして、図5に示すような雨水貯留槽12を第2保護シート58の上に形成する。具体的には、図15に示すように、雨水貯留槽12の底部62、この実施例では雨水貯留槽12の下流側端部の下面との位置と、第2保護シート58の孔106の位置すなわちドレンユニット66の流入口82の位置とを合わせて、第2保護シート58の上に雨水貯留槽12を形成する。
次に、雨水貯留槽12の上流側に、流入施設14を設けて、雨水貯留槽12の下流側に流出施設16を設ける。ただし、流入施設14ないし流出施設16の設置作業は、雨水貯留槽12の設置後に限定される必要はなく、少なくとも砂基礎152を設けた後であれば任意の時に行うことができ、また、他の作業と並行して行ってもよい。
そして、流入管22および流出管28をそれぞれ管接続板50を介して雨水貯留槽12に取り付けるとともに、ドレンユニット66から延びるドレン接続管68を流出施設16の点検口26に取り付ける。
続いて、被覆部材(第1保護シート56,遮水シート60,第2保護シート58)によって、雨水貯留槽12を被覆する。ここで、この実施例では、雨水貯留システム10に貯留機能と排出機能のみを持たせるように意図しているため、被覆部材56,58,60によって雨水貯留槽12の外周全体を被覆する。具体的には、先ず、遮水シート60と第2保護シート58とによって雨水貯留槽12の外周全体を被覆して、その後、第1保護シート56によって雨水貯留槽12とドレンユニット66とを抱き合わせるように全体を覆う。
そして最後に、周囲を埋め戻して雨水貯留槽12、流入施設14および流出施設16を地中に埋設して、作業を終了する(図7参照)。
このような雨水貯留システム10によれば、雨水は、流入施設14の外部流入管20から点検口22および流入管24を介して雨水貯留槽12に流入され、雨水貯留槽12に一時的に貯留される。そして、雨水貯留槽12に貯留された雨水は、流出管28を介して点検口26に流出するとともに、雨水貯留槽12の底部62から孔104,106を介してドレンユニット66に流入し、ドレンユニット66からドレン接続管68を介して点検口26に流出する。すなわち、流出管28の管底よりも水位が低い雨水であって、流出管28から流出することができなかった雨水貯留槽12内の雨水も、雨水貯留槽12の底部62からドレン管路64を介して点検口26に流出させることができる。そして、点検口26に流入した雨水は、外部流出管30から雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流される。このように、雨水貯留システム10では、雨水貯留槽12内の雨水を全て流出させることができる。
また、ドレン管路64は、雨水貯留槽12の全長に亘る必要がなく、少なくとも雨水貯留槽12の底部62と流出施設16の点検口26とを連通できるサイズに形成すればよい。したがって、たとえば雨水貯留槽12の下方に特許文献1のような汚水ピットを設ける場合と比較して、掘削の範囲が小さく、施工にも手間がかからない。
さらに、たとえば、雨水貯留槽12の底部62と点検口26とを雨水の流路となる管によってそのまま接続すると、その管が土被りや雨水貯留槽12の荷重によって破損し、管から漏水が生じる危険性がある。しかしながら、この実施例では、ドレンユニット66は、雨水の流路となる曲管70を圧縮強度の高い硬化部72に埋め込むことによって形成されるため、土被りや雨水貯留槽12の荷重による曲管70の破損、およびそれに起因する漏水を回避することができる。
また、この実施例では、ドレンユニット66は、その上面66aが平面状に形成されるとともに、その下面66cが曲面状に形成される。このため、ドレンユニット66の上面66aと雨水貯留槽12の下面とを面合わせすることができる。したがって、雨水貯留槽12の底部62からの雨水を、漏れなくドレン管路64に流入させることができる。また、ドレンユニット66の下面66cが、曲面状に形成されることにより、被覆部材56,58,60の施工が容易であるとともに、隅角による被覆部材56,58,60の破損を回避することができる。
さらに、この実施例では、ドレン管路64は、雨水貯留槽12ではなく、被覆部材(遮水シート60)に接続される。このため、雨水貯留槽12内の雨水だけではなく、雨水貯留槽12の外部の雨水も、被覆部材(遮水シート60)の内側であればドレン管路64に流入させることができる。また、ドレン管路64の施工と雨水貯留槽12の組み立てとを独立して行うことができるため、雨水貯留システム10を設ける際の工程に制約が少ない。
さらにまた、この実施例では、ドレンユニット66が雨水貯留槽12の底部62として、雨水貯留槽12の下流側端部の下面に配置される。ここで、雨水貯留槽12の下流側端部は、流入管22の反対側に位置しているため、土砂等の堆積物が最も少ない位置であると想定される。このため、土砂等の堆積物がドレンユニット66内に流入することによる、ドレンユニット66ないしドレン接続管68の閉塞を可及的回避することができる。また、もし土砂等によってドレンユニット66ないしドレン接続管68が閉塞しても、流出施設16の近傍であるため、点検口26からホース等によって吸引すれば土砂等を除去することができる。したがって、維持管理が容易である。
なお、上述の実施例では、遮水シート60には、ドレンユニット66の上面66aと略等しい形状を有する孔104が形成されたが、これに限定される必要はなく、孔104は、少なくともドレンユニット66の流入口82より大きい形状であればよい。ただし、孔104とドレンユニット66の上面66aとが同じ形状であれば、遮水シート60とドレンユニット用遮水シート86とが融着接合しやすいので、好適である。同様に、第2保護シートには、ドレンユニット66の流入口82とほぼ同径で同形状の孔106が形成されたが、これに限定される必要はなく、孔106は、少なくともドレンユニット66の流入口82より大きい形状であればよい。
また、この実施例では、雨水貯留槽を被覆する被覆部材として、第1保護シート56と第2保護シート58とにサンドイッチにされた遮水シート60で雨水貯留槽12の外周全体を被覆したが、これに限定される必要はなく、必要に応じて任意の被覆部材によって雨水貯留槽を被覆することができる。
たとえば、外周の下部(上下方向の中央よりも下の部分の側面の全部と底面)を第1保護シート56と第2保護シート58とにサンドイッチにされた遮水シート60で覆い、雨水貯留槽12の外周の残りの部分(上下方向の中央よりも上の部分の側面と天面)を浸透シートで覆うこともできる。また、雨水貯留槽12の外周の全体を浸透シートで覆うこともできる。この場合には、雨水貯留槽12は、貯留機能と排出機能とに加え、雨水貯留槽に貯留された雨水を周辺の地中に浸透させる浸透機能が付加される。以下、「貯留機能と排出機能」か「貯留機能と排出機能と浸透機能」かを区別する必要がないときには、この明細書では、両者を包含する意味で、雨水貯留システム10または雨水貯留槽12と呼ぶことにする。
図16および図17に示すこの発明の他の実施例である雨水貯留システム10では、ドレンユニット64の流入口82に第1遮水部材108が設けられる。以下、図7に示す雨水貯留システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。なお、図面の簡素化のために、図16における被覆部材(第1保護シート56,遮水シート60,第2保護シート58)の図示は省略する。
図16に示すように、第1遮水部材108は、塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、ドレンユニット66の流入口82に設けられる。
第1遮水部材108は、矩形のシート状に形成される固定部110を含む。固定部110には、ドレンユニット66の流入口82とほぼ同径で同形状の孔112が形成されており、その孔112を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。そして、その孔112を囲むように、接続部114が下方向に突出する。
接続部114は、ドレンユニット66の流入口82すなわち曲がり継手76の上流側端部の外径と略等しい内径を有する円筒状に形成され、曲がり継手76の上流側端部の外周面と硬化部72とに挟まれるように硬化部72に埋め込まれて、曲管70に接続される。
図17を参照して、このようなドレン管路64を備える雨水貯留システム10を地中に設置する方法を以下に示す。
先ず、雨水貯留システム10の形状や大きさに合わせて地面を掘削する。そして、その掘削した地面上に砕石基礎150を設け、その上に砂基礎152を設ける。なお、ドレン管路64を配置する箇所については、予め、ドレンユニット66の形状や大きさに合わせて、地面を他よりも少し深く掘削しておき、その上に砕石基礎150および砂基礎152を設ける。
次に、砂基礎152の上の所定の箇所に、第1遮水部材108が取り付けられたドレンユニット66を配置する。続いて、ドレンユニット66とドレン接続管68とを接続する。
続いて、砂基礎150ないしドレンユニット66の上面66aに、第1保護シート56を敷設する。図17に示すように、第1保護シート56には、第1遮水部材108の固定部110とほぼ同形状の孔116が形成されており、その孔116に固定部110を挿通させて、第1保護シート56をドレンユニット66の上面66aに沿わせる。
次に、第1保護シート56ないし第1遮水部材108の上に遮水シート60を敷設する。遮水シート60には、第1遮水部材108の孔112とほぼ同径で同形状の孔118が形成されており、その孔118を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。遮水シート60を第1保護シート56の上に敷設する際には、遮水シート60の孔118の位置と第1遮水部材108の孔112の位置とを合わせて、遮水シート60と第1遮水部材108とが重なり合う箇所を融着接合する。
続いて、遮水シート60の上に、第2保護シート58を敷設する。第2保護シート58には、遮水シート60の孔118とほぼ同径で同形状の孔120が形成されており、その孔120を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。第2保護シート58を遮水シート60の上に敷設する際は、孔120の位置と遮水シート60の孔118の位置とを合わせる。
そして、雨水貯留槽12の底部62を、第2保護シート58の孔120の位置すなわちドレンユニット66の流入口82の位置に合わせて、第2保護シート58の上に雨水貯留槽12を形成する。
そして、雨水貯留槽12の上流側に、流入施設14を設けて、雨水貯留槽12の下流側に流出施設16を設ける。続いて、流入管22および流出管28をそれぞれ管接続板50を介して雨水貯留槽12に取り付けるとともに、ドレンユニット66から延びるドレン接続管68を流出施設16の点検口26に取り付ける。
次に、被覆部材(第1保護シート56,遮水シート60,第2保護シート58)によって、雨水貯留槽12を被覆し、最後に、周囲を埋め戻して雨水貯留槽12、流入施設14および流出施設16を地中に埋設して、作業を終了する(図7参照)。
このように、この実施例では、ドレンユニット66の流入口82に第1遮水部材108が設けられる。このため、第1遮水部材108を遮水シート60と融着接合するとともに、曲管70に接続することで、雨水貯留槽12からの雨水を全てドレンユニット66の流入口82に流入させることができる。したがって、ドレンユニット66の形状に合わせたドレンユニット用遮水シート86の加工が不要であり、作業時間を短縮することができる。
図18および図19に示すこの発明の他の実施例である雨水貯留システム10では、ドレンユニット66の流入口82に第2遮水部材124が設けられる。以下、図7に示す雨水貯留システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。なお、図面の簡素化のために、図18における被覆部材(第1保護シート56,遮水シート60,第2保護シート58)の図示は省略する。
図18に示すように、曲管70は、ゴム輪継手122をさらに含み、ゴム輪継手122の下流側端部に曲がり継手76の上流側端部を接続し、曲がり継手76の下流側端部に短管78の一方端を接続し、その短管の他端に両受口継手80を接続することによって形成される。
具体的には、ゴム輪継手122は、硬質ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、その上流側端部がゴム輪受口構造を有する。ゴム輪継手122の上流側端部は、ドレンユニット66の上面66aで垂直上方向に開口しており、ドレンユニット66の流入口82として機能する。また、ゴム輪継手122の下流側端部は、差口構造を有し、曲がり継手76の上流側端部に挿入されて、接着接合等される。
また、ドレン管路64は、第2遮水部材124を備える。第2遮水部材124は、塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、矩形の板状に形成される固定部126を含む。固定部126には、ドレンユニット66の流入口82とほぼ同径で同形状の孔128が形成されており、その孔128を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。そして、その孔128を囲むように、接続部130が下方向に突出する。
接続部130は、ドレンユニット66の流入口82すなわちゴム輪継手122の上流側端部の内径と略等しい外径を有する円筒状に形成され、ゴム輪継手122の上流側端部に挿入されて、ゴム輪接合される。
図19を参照して、このようなドレン管路62を備える雨水貯留システム10を地中に設置する方法を以下に示す。
先ず、雨水貯留システム10の形状や大きさに合わせて地面を掘削する。そして、その掘削した地面上に砕石基礎150を設け、その上に砂基礎152を設ける。なお、ドレン管路64を配置する箇所については、予め、ドレンユニット66の形状や大きさに合わせて、地面を他よりも少し深く掘削しておき、その上に砕石基礎150および砂基礎152を設ける。
次に、砂基礎152の上の所定の箇所に、ドレンユニット66を配置して、ドレンユニット66とドレン接続管68とを接続する。
続いて、図19に示すように、砂基礎152ないしドレンユニット66の上面66aの上に、第1保護シート56を敷設する。第1保護シート56には、ドレンユニット66の流入口82とほぼ同径で同形状の孔132が形成されており、その孔132を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。第1保護シート56を砂基礎152ないしドレンユニット66の上面66aの上に敷設する際には、孔132の位置とドレンユニット66の流入口82の位置とを合わせる。
次に、第1保護シート56の上に遮水シート60を敷設する。遮水シート60には、ドレンユニット66の流入口82すなわち第2遮水部材124の孔130とほぼ同径で同形状の孔134が形成されており、その孔134を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。遮水シート60を第1保護シート56の上に敷設する際には、遮水シート60の孔134の位置と第1保護シート56の孔132の位置とを合わせる。
続いて、遮水シート60の上に、第2保護シート58を敷設する。第2保護シート58には孔136が形成されており、その孔136を介して雨水貯留槽12の底部62からドレンユニット66に雨水が流入する。なお、孔136は、遮水シート60と遮水部材124の固定部126とが融着接合しやすいように、孔134よりもやや大きい形状に形成すると好適である。第2保護シート58を遮水シート60の上に敷設する際には、第2保護シート58の孔136の位置と遮水シート60の孔134の位置とを合わせる。
次に、第2遮水部材124をドレンユニット66の流入口82に取り付ける。第2遮水部材124をドレンユニット66に取り付ける際は、接続部130をドレンユニット66の流入口82すなわちゴム輪継手122の上流側端部に挿入して、ゴム輪接合する。そして、第2遮水部材124の固定部126と遮水シート60とが重なる箇所を融着接合する。
続いて、雨水貯留槽12の底部62を、第2遮水部材124の孔128の位置すなわちドレンユニット66の流入口82の位置に合わせて、固定部126と雨水貯留槽12の底部62とをビスや木ネジ等によって固定する。
そして、雨水貯留槽12の上流側に、流入施設14を設けて、雨水貯留槽12の下流側に流出施設16を設ける。続いて、流入管22および流出管28をそれぞれ管接続板50を介して雨水貯留槽12に取り付けるとともに、ドレンユニット66から延びるドレン接続管68を流出施設16の点検口26に取り付ける。
次に、被覆部材(第1保護シート56,遮水シート60,第2保護シート58)によって、雨水貯留槽12を被覆し、最後に、周囲を埋め戻して雨水貯留槽12、流入施設14および流出施設16を地中に埋設して、作業を終了する(図7参照)。
このように、この実施例では、ドレンユニット66の流入口82に第1遮水部材108が設けられる。このため、第1遮水部材108と遮水シート60とを融着接合することで、雨水貯留槽12からの雨水を全てドレンユニット66の流入口82に流入させることができる。したがって、ドレンユニット66の形状に合わせたドレンユニット用遮水シート86の加工が不要である。
このように、この実施例では、ドレンユニット66の流入口82に第2遮水部材124が設けられる。また、第2遮水部材124は、雨水貯留槽12の底部62に固定され、さらにドレンユニット66とゴム輪接合される。このため、地震による地盤変動などが生じても、ゴム輪によって衝撃が緩和されて、雨水貯留槽12の底部62に配置されたドレンユニット66の位置を維持することができる。したがって、雨水貯留槽12の底部62とドレンユニット66との隙間からの漏水などを回避することができる。
また、この実施例では、第2遮水部材124を雨水貯留槽12の底部62に固定して、さらにドレンユニット66とゴム輪接合すれば、雨水貯留槽12からの雨水を全てドレンユニット66の流入口82に流入させることができる。したがって、ドレンユニット66の形状に合わせたドレンユニット用遮水シート86の加工や、第1遮水部材108と遮水シート60との融着接合が不要であり、作業時間を短縮することができる。
なお、上述の各実施例ではいずれも、1つのドレン管路64によって、雨水貯留槽12の底部62と流出施設の点検口26とを連通したが、これに限定される必要はない。たとえば、ドレン管路64の口径が雨水貯留槽12からの流量に対して不足するようであれば、複数のドレン管路64によって、雨水貯留槽12の底部62と流出施設の点検口26とを連通することもできる。
また、上述の各実施例ではいずれも、雨水貯留槽12の底部62として、雨水貯留槽12の下流側端部の下面にドレン管路64を設けたが、これに限定される必要はない。たとえば、雨水貯留槽12の下面ではなく側面であっても、流出管28の管底よりも下の位置であれば、任意の位置に設けることができる。また、雨水貯留システム10を形成する地面ないし砕石基礎150や砂基礎152に微量の勾配がある場合には、雨水貯留槽12の下面ないし側面の最も低位置となる箇所にドレンユニット66を設けると好適である。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、曲管70は、複数の管ならびに継手を接続することによって形成されたが、これに限定される必要はない。たとえば、垂直上方向に開口する流入口82と水平方向に開口する流出口84とを有しているのであれば、両端部が受口構造である1つの管体によって曲管70を形成することもできる。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、雨水貯留槽12の内部の雨水は、流出管28ないしドレン管路64によって点検口26に流出され、点検口26から外部流出管30を介して雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流されたが、これに限定される必要はない。たとえば、流出管28ないしドレン管路64から、直接雨水管渠や合流式下水道管(図示せず)に放流してもよい。
また、上述の各実施例ではいずれも、曲管70をモルタル等の硬化部72に埋め込んだが、これに限定される必要はなく、たとえばウレタン樹脂やシリコーン樹脂等の合成樹脂に埋め込んでもよい。
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、型枠74として、半割りにした硬質ポリ塩化ビニル管等の半円筒体が用いられたが、これに限定される必要はなく、たとえばU字状の鉄筋コンクリート等を型枠74として用いることもできる。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、プラスチック製の要素部材36,44,46,50を組み立てることによって雨水貯留槽12を形成したが、これに限定される必要はない。たとえば、セメントペースト、レジコン,モルタルおよびコンクリート等のセメント製の要素部材によって雨水貯留槽12を形成してもよい。
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。