上記光パルス変調型物体検出回路を具備した物体検出装置は、変調した光パルスを使用しているため外部からの光の影響を受けにくいとの利点があり、その理由から、近年、種々の機器に搭載されている。搭載されている機器には、複写機等のOA機器などがあるが、使用される機器の環境によっては室内の照明が強く照射される場合がある。
また、近年室内で使用される照明には、その効率性及びチラツキ感の少なさから、インバータ駆動方式の蛍光灯が多く利用されている。インバータ駆動方式の蛍光灯はおよそ20KHz〜70KHzで駆動されている。
そのインバータ蛍光灯の光が、光パルス変調型物体検出装置の外乱光として入射し、蛍光灯の発光周期が光パルス変調型物体検出装置の変調信号光と同期した場合には、その検出精度を劣化させ、場合によっては誤動作することがある。このためより検出精度の高い物体検出装置が求められている。また、物体検出装置の機器内への搭載数の増加に伴い、物体検出装置の小型化に対する要望もより高まってきている。
図19は、上記従来の光パルス変調型物体検出回路において、外乱光の入力がある場合の各点の動作波形を示す。尚、図17及び図19においては、受光素子103へ入射される外乱光は(E)にて示す。
外乱光の入力がある場合には、(E)に示す波形の外乱光が発光素子102からの出力光(A)に重畳され、その結果、受光素子103への入力光は(B)に示す波形となる。
増幅回路104においては、受光素子103への入力光がその波形のまま増幅されるため、増幅回路出力電圧波形は(C)に示す波形となる。コンパレータ回路105においては、増幅回路出力電圧を内部の判定値と比較し、増幅回路出力電圧が上記判定値よりも多くなる期間でHighとなるコンパレータ出力電圧(D)を出力する。
コンパレータ出力電圧(D)においては、上記判定値と比較される増幅回路出力電圧(C)に同期信号の外乱光が重畳されているため、そのパルス信号が正常でないにもかかわらず、同期信号検知期間にHigh期間を有するコンパレータ出力信号が出力される虞がある。このため、以降の復調回路106においても複数回の同期検知が確認される虞がある。
上述のように、外乱光が入射している状態においては、正規の物体からの反射信号光あるいは透過光が、受光光として十分な検知レベルに到達していなくても、上記外乱光の影響によって検知されてしまう不都合が生じる。これにより、検出精度の低下、さらに環境が悪化した場合によっては誤動作につながる虞がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、受光素子にて検知されたパルス光の波長が判別可能であり、外乱光による影響をさらに低減し、検出精度の高い物体検出回路を実現することにある。
本発明の物体検出回路は、上記課題を解決するために、パルス変調された光を照射する発光素子と、被検出物体の有無に応じて上記発光素子からの出力パルス光を受光する受光素子と、上記受光素子にて検知されたパルス光の波長を判別する波長判別手段とを備えたことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記受光素子によってパルス光が検知された場合、その検知光の波長が上記発光素子からの出力パルス光の波長であるのか、あるいは、外乱光の波長であるのかが上記波長判別手段によって判別される。従って、上記波長判別手段において上記検知光の波長を判別することが可能であり、上記外乱光が入射した場合の誤検知を防止出来る。
また、入力信号光と外乱光との判別精度、及び光パルス変調信号の検出精度を向上するので、検出精度の高い物体検出回路の提供が可能になる。
また、上記物体検出回路において、上記波長判別手段は、ピーク感度波長の異なる2つのフォトダイオード、増幅回路及びコンパレータ回路を有する構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記2つのフォトダイオードはピーク感度波長が異なる。よって、上記受光素子によって上記発光素子からの出力パルス光が検知された場合と、上記受光素子によって上記外乱光が検知された場合とにおいて、上記2つのフォトダイオードから出力される、2つの電流の大小関係が互いに逆になる。これにより、上記2つの電流に対応し、上記増幅回路から上記コンパレータ回路へ出力される電圧値が変化するので、上記コンパレータ回路へ入力される2つの電圧の大小関係が互いに逆になる。従って、上記コンパレータ回路から出力される電圧の極性が反転するので、上記波長判別手段において上記検知光の波長を判別することが可能となる。
また、上記物体検出回路において、上記2つのフォトダイオードをモノリシック集積回路上に構成した構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記物体検出回路をより小型に構成することが可能となる。
また、上記物体検出回路において、上記2つのフォトダイオードのカソードを共通にした構成とすることができる。
上記の構成によれば、フォトダイオードの面積を小さくすることができるため、上記受光素子の小型化が可能になる。
また、上記物体検出回路において、上記受光素子にて検知されたパルス光が、上記発光素子からの出力パルス光であるか否かを判定する受光パルス判定部をさらに備えた構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記受光素子によってパルス光が検知された場合、その検知光が上記発光素子からの出力パルス光を検知したものであるのか、あるいは、外乱光を誤検知したものであるのかが上記受光パルス判定部によって判定される。これにより、正規のパルス信号と外乱光との識別が可能となり、より精度の高い検出が可能になる。
また、上記物体検出回路において、上記受光パルス判定部は、上記受光素子にて検知されたパルス光のパルス幅が上記発光素子から照射されるパルス幅に一致するか否かに基づいて、上記発光素子からの出力パルス光であるか否かを判定する構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記受光素子にて検知されたパルス光のパルス幅が上記発光素子から照射されるパルス幅に一致する場合に、その検知光が上記発光素子からの出力パルス光を検知したものであると判定できる。一方、上記受光素子にて検知されたパルス光のパルス幅が上記発光素子から照射されるパルス幅に一致しない場合には、その検知光が外乱光を誤検知したものであると判定できる。
また、上記物体検出回路において、上記受光パルス判定部は、上記受光素子にて検知されたパルス光と基準クロック信号とを入力とするAND回路と、上記AND回路の出力におけるパルス数をカウントするカウンタ回路と、上記カウンタ回路においてカウントされたパルス数が所定数であるか否かに基づいて、上記発光素子からの出力パルス光であるか否かを判定する判定回路とを備えている構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記AND回路における出力は、上記受光素子にて検知されたパルス幅期間内に含まれるクロック信号を示すものとなるため、上記カウンタ回路のカウント数は、上記受光素子にて検知されたパルス幅期間を基準クロックのクロック数で表したものとなる。このため、上記判定回路では、上記カウンタ回路においてカウントされたパルス数が所定数であるか否かに基づいて、上記発光素子からの出力パルス光を検知したものであるか否かを判定することができる。
また、上記物体検出回路において、上記受光パルス判定部は、上記受光素子にて検知されたパルス光の、所定期間内のパルス数に基づいて、上記発光素子からの出力パルス光であるか否かを判定する構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記受光素子にて検知されたパルス光の、所定期間内のパルス数に基づいて、その検知光が上記発光素子からの出力パルス光を検知したものであると判定できる。例えば、本発明において想定する外乱光がインバータ蛍光灯の光である場合には、所定期間内に多くのパルスが検知されるため、上記受光素子にて検知されたパルス光のパルス数が所定数よりも多い場合には、その検知光が外乱光を誤検知したものであると判定できる。
また、上記物体検出回路において、上記受光パルス判定部は、上記受光素子にて検知されたパルス光の、所定期間内のパルス数をカウントするカウンタ回路と、上記カウンタ回路においてカウントされたパルス数が所定数であるか否かに基づいて、上記発光素子からの出力パルス光であるか否かを判定する判定回路とを備えている構成とすることができる。
上記の構成によれば、上記カウンタ回路のカウント数は、上記受光素子にて検知されたパルス光の、所定期間内のパルス数を表したものとなる。このため、上記判定回路では、上記カウンタ回路においてカウントされたパルス数が所定数であるか否かに基づいて、上記発光素子からの出力パルス光を検知したものであるか否かを判定することができる。
また、上記物体検出回路においては、上記発光素子を除く部分をモノリシック集積回路上に構成することができる。
上記の構成によれば、上記物体検出回路をより小型に構成することが可能となる。
また、上記物体検出回路を備えた物体検出装置においては、上記受光素子の前面に可視光カット手段を備えた構成とすることができる。
上記の構成によれば、外乱光となり易いインバータ蛍光灯の光の入力を低減することができ、正規の受光パルス光(通常は赤外光)との識別が容易になる。
本発明の物体検出回路は、以上のように、パルス変調された光を照射する発光素子と、被検出物体の有無に応じて上記発光素子からの出力パルス光を受光する受光素子と、上記受光素子にて検知されたパルス光の波長を判別する波長判別手段とを備えたものである。
それゆえ、受光素子にて検知されたパルス光の波長が判別可能であり、外乱光による影響をさらに低減し、検出精度の高い物体検出回路を実現するという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。先ずは、本実施の形態1に係る物体検出回路の構成例を図1に示す。
図1に示す物体検出回路1は、光パルス変調型であり、発光素子駆動回路11、発光素子12、受光素子13、増幅回路14、コンパレータ回路15、復調回路16、変調信号発生回路17及び出力回路18を備えて構成されている。
物体検出回路1は、後述する信号検出回路19が、入力信号光波長判別手段、即ち受光素子13に入力される光パルス信号の波長を判別する波長判別手段であるという点で、図17に示す物体検出回路100と相違している。それ以外の構成は、図17に示す物体検出回路100と基本的に同一の構成である。
次に、信号検出回路19の回路図を図2に示す。信号検出回路19は、受光素子13、増幅回路14及びコンパレータ回路15を備えている。受光素子13は、フォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2を有している。増幅回路14は、アンプAMP1、アンプAMP2、抵抗R1及び抵抗R2を有している。コンパレータ回路15は、コンパレータCOMP1で構成されている。
信号検出回路19では、フォトダイオードPD1のアノード及びフォトダイオードPD2のアノードは、電気的に接地されている。フォトダイオードPD1のカソードは、アンプAMP1の反転入力端子(−)及び抵抗R1の一端に接続されている。同様に、フォトダイオードPD2のカソードは、アンプAMP2の反転入力端子(−)及び抵抗R2の一端に接続されている。アンプAMP1の非反転入力端子(+)及びアンプAMP2の非反転入力端子(+)は、電気的に接地されている。
アンプAMP1の出力端子は、抵抗R1の他端及びコンパレータCOMP1の+端子に接続されている。同様に、アンプAMP2の出力端子は、抵抗R2の他端及びコンパレータCOMP1の−端子に接続されている。コンパレータCOMP1の出力は、図1の復調回路16の入力に接続されている。
受光素子13を構成するフォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2は、ピーク感度波長、即ち相対感度−波長特性において相対感度が最大となる波長が異なっている。以下に、図1の受光素子13におけるフォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2の具体的実施例について、実施例1及び図3〜図7に基づいて説明する。実施例1に記載の受光素子20は、受光素子13として信号検出回路19に用いることが出来る。
〔実施例1〕
図3は、本実施例1に係る受光素子20の断面図である。受光素子20は、P型半導体21、P型半導体22、N型半導体23及びN型半導体24を有している。
以下に受光素子13の断面の形状について説明する。P型半導体21は、長さ(X方向)X1、深さ(Y方向)Y1のP型半導体である。なお、X=0は、P型半導体21の一端を示す。また、Y=0は受光素子13の表面を示し、信号光が入力される面である。P型半導体21の一部分に、P型半導体22、N型半導体23及びN型半導体24が構成されることにより、受光素子13が構成されている。
P型半導体22は、X=X5からX=X6、及びY=0からY=Y2の領域に構成されている。N型半導体24は、X=X4からX=X7、及びY=0からY=Y3の領域の内、P型半導体22が占める部分を除く領域に構成されている。N型半導体23は、X=X2からX=X3、及びY=0からY=Y3の領域に構成されている。
フォトダイオードは半導体のPN接合で構成されている。フォトダイオードPD1は、P型半導体21とN型半導体23とのPN接合部25で構成されている。PN接合部25は、X=X2からX=X3、及びY=Y3の部分である。同様に、フォトダイオードPD2は、P型半導体22とN型半導体24とのPN接合部26で構成されている。PN接合部26は、X=X5からX=X6、及びY=Y2の部分である。
図3において、Y3>Y2であり、フォトダイオードPD1は、受光素子13の表面からより深い箇所にあるPN接合部25で構成されている。フォトダイオードPD2は、受光素子13の表面からより浅い箇所にあるPN接合部26で構成されている。フォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2のピーク感度波長は、対応するPN接合部がより浅い箇所にある場合はより短くなり、上記対応するPN接合部がより深い箇所にある場合はより長くなる。
図4にフォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2の相対感度−波長特性の一例を示す。フォトダイオードPD1は、ピーク感度波長が約900nmであり、該ピーク感度波長における相対感度を100%とする。この場合、フォトダイオードPD2は、ピーク感度波長が約520nmであり、該ピーク感度波長における相対感度は、約43%となる。
本実施形態では、発光素子12には、赤外発光ダイオードが用いられる。図5に赤外発光ダイオードの相対光強度−波長特性の一例を示す。ピーク感度波長は約950nmである。
これに対して、外乱光を発する蛍光灯の相対光強度−波長特性の一例を図6に示す。ピーク感度波長は約550nmである。
図7に入力信号光波長判別手段としての、受光素子13を備える信号検出回路19の動作波形を示す。図7(a)は、同期変調信号である赤外光が受光素子13に入力される場合の信号検出回路19の動作を示し、図7(b)は、外乱光である蛍光灯の光が受光素子13に入力される場合の信号検出回路19の動作を示す。
図7(a)において、フォトダイオードPD1の出力電流をIpd1、フォトダイオードPD2の出力電流をIpd2とすると、入力信号光は、波長が780nmより長い赤外光である。よって、ピーク感度波長が赤外光の波長により近い約900nmであるフォトダイオードPD1の出力電流が、ピーク感度波長が約520nmであるフォトダイオードPD2の出力電流より大きくなる。
従って、フォトダイオードPD1に接続されたアンプAMP1の出力電圧(図7(a)における(g))と、フォトダイオードPD2に接続されたアンプAMP2の出力電圧(図7(a)における(h))とを比較すると、アンプAMP1の出力電圧が、アンプAMP2の出力電圧より大きくなる。これにより、コンパレータCOMP1からHighの信号が出力される(図7(a)における(i))。
図7(b)において、外乱光は、例えばインバータ駆動方式の蛍光灯の光であり、その波長は約400nm〜約600nmである。よって、ピーク感度波長が蛍光灯の光の波長により近い約520nmであるフォトダイオードPD2の出力電流が、ピーク感度波長が約900nmであるフォトダイオードPD1の出力電流より大きくなる。
よって、フォトダイオードPD1に接続されたアンプAMP1の出力電圧(図7(b)における(g))と、フォトダイオードPD2に接続されたアンプAMP2の出力電圧(図7(b)における(h))とを比較すると、アンプAMP2の出力電圧が、アンプAMP1の出力電圧より大きくなる。従って、コンパレータCOMP1から出力される信号はLowのままである(図7(b)における(i))。
次に、フォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2の他の具体的実施例について、実施例2及び図8に基づいて説明する。実施例2に記載の受光素子27は、後述する図9の信号検出回路33に用いることが出来る。
〔実施例2〕
図8は、本実施例2に係る受光素子27の断面図である。受光素子27は、P型半導体28、P型半導体29及びN型半導体30を有している。
以下に受光素子27の断面の形状について説明する。P型半導体28は、長さ(X方向)X1、深さ(Y方向)Y1のP型半導体である。なお、X=0は、P型半導体28の一端を示す。また、Y=0は受光素子27の表面を示し、信号光が入力される面である。P型半導体28の一部分に、P型半導体29及びN型半導体30が構成されることにより、受光素子27が構成されている。
P型半導体29は、X=X3からX=X4、及びY=0からY=Y2の領域に構成されている。N型半導体30は、X=X2からX=X5、及びY=0からY=Y3の領域の内、P型半導体29が占める部分を除く領域に構成されている。
フォトダイオードは半導体のPN接合で構成されている。フォトダイオードPD1は、P型半導体28とN型半導体30とのPN接合部31で構成されている。PN接合部31は、X=X2からX=X5、及びY=Y3の部分である。同様に、フォトダイオードPD2は、P型半導体29とN型半導体30とのPN接合部32で構成されている。PN接合部32は、X=X3からX=X4、及びY=Y2の部分である。
受光素子27は、フォトダイオードPD1のカソードと、フォトダイオードPD2のカソードとを共通にして、PN接合部31及びPN接合部32を上下に重ねた構成、即ちY方向に並べた構成としている。このように、それぞれのPN接合部を上下に重ねることにより、フォトダイオードの面積を小さくすることができるため、受光素子の小型化が可能になる。
以下に、信号検出回路19の他の具体的実施例について、実施例3、図9及び図10に基づいて説明する。実施例3に記載の信号検出回路33は、図1の信号検出回路19として用いることが出来る。
〔実施例3〕
図9に、本実施例3に係る信号検出回路33の回路図を示す。また、図10に、入力信号光波長判別手段としての、受光素子27を備える信号検出回路33の動作波形を示す。図10(a)は、同期変調信号である赤外光が受光素子27に入力される場合の信号検出回路33の動作を示し、図10(b)は、外乱光である蛍光灯の光が受光素子27に入力される場合の信号検出回路33の動作を示す。
図9に示すように、信号検出回路33は、受光素子27、増幅回路34及びコンパレータ回路35を備えている。受光素子27は、フォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2を有している。増幅回路34は、アンプAMP及び抵抗Rを有している。コンパレータ回路35は、コンパレータCOMPで構成されている。
信号検出回路33では、フォトダイオードPD1のアノードは、電気的に接地されている。フォトダイオードPD1のカソードは、フォトダイオードPD2のカソードに接続されている。フォトダイオードPD2のアノードは、アンプAMPの反転入力端子(−)及び抵抗Rの一端に接続されている。アンプAMPの非反転入力端子(+)は、電気的に接地されている。
アンプAMPの出力端子は、抵抗Rの他端及びコンパレータCOMPの+端子に接続されている。コンパレータCOMP1の−端子は、電源36に接続されている。電源36から出力される電圧は、コンパレータ回路35の判定値Vとなる。コンパレータCOMPの出力は、図1の復調回路16の入力に接続されている。なお、受光素子27を構成するフォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2は、図4に示す相対感度−波長特性を有するフォトダイオードを用いるが、他の相対感度−波長特性有するフォトダイオードを用いてもよい。
信号検出回路33においては、フォトダイオードPD1の出力電流Ipd1と、フォトダイオードPD2の出力電流Ipd2との差の電流が、増幅回路34に入力される。
図10(a)において、入力信号光は、波長が780nmより長い赤外光である。よって、ピーク感度波長が赤外光の波長により近い約900nmであるフォトダイオードPD1の出力電流が、ピーク感度波長が約520nmであるフォトダイオードPD2の出力電流より大きくなる。
従って、フォトダイオードPD2に接続されたアンプAMPの出力電圧(図10(a)における(j))は、正の方向に振幅し、アンプAMPの出力電圧が、コンパレータ回路35の判定値V以上になると、コンパレータCOMPからHighの信号が出力される(図10(a)における(k))。
図10(b)において、外乱光は、例えばインバータ駆動方式の蛍光灯の光であり、その波長は約400nm〜約600nmである。よって、ピーク感度波長が蛍光灯の光の波長により近い約520nmであるフォトダイオードPD2の出力電流が、ピーク感度波長が約900nmであるフォトダイオードPD1の出力電流より大きくなる。
よって、フォトダイオードPD2に接続されたアンプAMPの出力電圧(図10(b)における(j))は、負の方向に振幅する。従って、アンプAMPの出力電圧が、コンパレータ回路35の判定値V以上になることは無いので、コンパレータCOMPから出力される信号はLowのままである(図10(b)における(k))。
以上のように、本実施形態の物体検出回路1は、受光素子13によってパルス光が検知された場合、その検知光の波長が発光素子12からの出力パルス光の波長であるのか、あるいは、外乱光の波長であるのかが信号検出回路19によって判別される。従って、信号検出回路19において上記検知光の波長を判別することが可能であり、上記外乱光が入射した場合の誤検知を防止出来る。
また、上記の構成によれば、フォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2はピーク感度波長が異なる。よって、受光素子13によって発光素子12からの出力パルス光が検知された場合と、受光素子13によって外乱光が検知された場合とにおいて、フォトダイオードPD1の出力電流Ipd1とフォトダイオードPD2の出力電流Ipd2との大小関係が互いに逆になる。これにより、出力電流Ipd1及び出力電流Ipd2に対応し、増幅回路14からコンパレータ回路15へ出力される電圧値が変化するので、コンパレータ回路15へ入力される2つの電圧の大小関係が互いに逆になる。従って、コンパレータ回路15から出力される電圧の極性が反転するので、信号検出回路19において上記検知光の波長を判別することが可能となる。
なお、本実施の形態1のフォトダイオードPD1及びフォトダイオードPD2は、モノリシック集積回路上に構成した構成とすることができる。上記の構成によれば、上記物体検出回路をより小型に構成することが可能となる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図11ないし図13に基づいて説明すると以下の通りである。先ずは、本実施の形態2に係る物体検出回路の構成例を図1に示す。
図11に示す物体検出回路37は、光パルス変調型であり、発光素子駆動回路11、発光素子12、受光素子13、増幅回路14、コンパレータ回路15、パルス幅検知回路38、復調回路16、変調信号発生回路17及び出力回路18を備えて構成されている。即ち、物体検出回路37は、コンパレータ回路15と復調回路16との間にパルス幅検知回路38を設けられた点で、図1に示す物体検出回路1と相違している。また、パルス幅検知回路38には、変調信号発生回路17からクロック信号及び同期信号が入力される。それ以外の構成は、図1に示す物体検出回路1と基本的に同一の構成である。
発光素子駆動回路11からコンパレータ回路15までの構成及び動作は、図17に示す発光素子駆動回路101からコンパレータ回路105までの構成及び動作と同じである。従って、パルス幅検知回路38には、図18または図19に示すようなコンパレータ出力電圧(D)が入力される。
パルス幅検知回路38は、コンパレータ出力電圧(D)において検知パルスが発生している場合、そのパルス幅を検出することによって、上記検知パルスが、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知したものであるのか、あるいは外乱光による誤検知であるのかを判定する。
パルス幅検知回路38の構成例を図12に示す。また、図13(a)は、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知した場合の、パルス幅検知回路38における各点の動作波形を示す。
パルス幅検知回路38は、図12に示すように、AND回路39、カウンタ回路40及び判定回路41を備えて構成されている。
AND回路39には、コンパレータ回路15の出力信号(図12及び図13(a)における(G))と、変調信号発生回路17からのクロック信号(図12及び図3(a)における(H))とが入力され、AND回路39の出力信号(図12及び図13(a)における(J))はカウンタ回路40に入力される。カウンタ回路40は、変調信号発生回路17からの同期信号(図12及び図13(a)における(I))が入力している期間、AND回路39の出力信号(J)において発生しているパルスのカウント動作を行う。即ち、AND回路39の出力信号は、コンパレータ回路15の出力信号において発生しているパルスの、パルス幅に応じた数のクロックパルスを含むものとなるため、カウンタ回路40におけるカウント数は上記パルス幅を示すものとなる。
ここで、変調信号発生回路17からカウンタ回路40に入力される同期信号(I)は、発光素子駆動回路11に入力される変調信号と同一のパルス幅を有する信号である。また、変調信号発生回路17は内部に発振器を有しており、該発振器から出される基準クロック信号を所定数カウントすることで、変調信号及び上記同期信号(I)のパルス幅を決定している。変調信号発生回路17からAND回路39に入力されるクロック信号は、この基準クロック信号である。
受光素子13が、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知している場合、コンパレータ出力信号(G)において発生しているパルスのパルス幅は、同期信号(I)におけるパルス幅と等しいものとなる。この場合、AND回路39の出力信号(J)において発生しているパルスのパルス数、即ち、カウンタ回路40におけるカウント数は、発光素子駆動回路11に入力される変調信号に対応するクロック数と一致することになる。
判定回路41は、カウンタ回路40におけるカウント数が所望のカウント数か否かを判定(即ち、コンパレータ出力信号(G)のパルス幅が所望の幅かどうかを判定)し、所望の数であれば、受光素子13において正常な出力パルス光が検知されたことを示すため、復調回路16への出力信号(K)においてパルスを発生させる。
復調回路16では、図17における復調回路106と同様に、変調信号発生回路17から出力される同期信号と、パルス幅検知回路38からの出力信号との同期検出を図る。そして、出力信号(K)におけるパルスを複数回検知した場合に、出力回路18に対して、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知したことを示す検知信号を発する。
次に、図13(b)は、受光素子13で検知された入力光が外乱光である場合のパルス幅検知回路38における各点の動作波形を示す。
ここで、本実施の形態で想定される外乱光は、例えばインバータ駆動方式の蛍光灯の光である。また、変調信号発生回路17で生成される変調信号や同期信号のパルス幅は、上記インバータ蛍光灯の光において生じるパルスよりも広いパルス幅を有するように設定される。即ち、受光素子13においてインバータ蛍光灯の光が外乱光として検出された時、その検出光におけるパルス幅は、発光素子12からの出力パルス光を正常検出した場合のパルス幅よりも狭いものとなる。
この場合、コンパレータ出力信号(G)のパルス幅は、変調信号発生回路17から入力される同期信号(I)のパルス幅よりも狭いため、AND回路39の出力信号(J)において発生しているパルスのパルス数、即ち、カウンタ回路40におけるカウント数は、発光素子駆動回路11に入力される変調信号に対応するクロック数に満たないものとなる。その結果、判定回路41は、コンパレータ出力信号(G)のパルス幅が所望の幅でないと判定し、受光素子13に検知された光パルスは外乱光による誤検知であるとして、復調回路16への出力信号(K)においてパルスを発生させない。
これにより、その後段の復調回路16へのパルス信号入力がなされないため物体検知回路の信号出力がなされない。
上記の通り、物体検知回路において受光同期変調信号を検知する手段として、パルス幅を検知する回路を設けることにより、正規の同期信号と外乱光との識別が可能となり、より精度の高い検出が可能になる。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図14ないし図16に基づいて説明すると以下の通りである。先ずは、本実施の形態3に係る物体検出回路の構成例を図14に示す。
図14に示す物体検出回路42は、光パルス変調型であり、発光素子駆動回路11、発光素子12、受光素子13、増幅回路14、コンパレータ回路15、パルス数検知回路43、復調回路16、変調信号発生回路17、出力回路18を備えて構成されている。即ち、物体検出回路42は、図11に示す物体検出回路37と比べ、パルス幅検知回路38に代えてパルス数検知回路43を備えた構成である。それ以外の構成は、図11に示す物体検出回路37と同一の構成であるので、以下では詳細な説明は省略する。
図14に示す物体検出回路42においても、発光素子駆動回路11からコンパレータ回路15までの構成及び動作は、図17に示す発光素子駆動回路101からコンパレータ回路105までの構成及び動作と同じである。従って、パルス数検知回路43には、図18または図19に示すようなコンパレータ出力電圧(D)が入力される。
パルス数検知回路43は、コンパレータ出力電圧(D)において検知パルスが発生している場合、そのパルス数を検出することによって、上記検知パルスが、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知したものであるのか、あるいは外乱光による誤検知であるのかを判定する。
パルス数検知回路43の構成例を図15に示す。また、図16(a)は、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知した場合の、パルス数検知回路43における各点の動作波形を示す。
パルス数検知回路43は、図15に示すように、カウンタ回路44及び判定回路45を備えて構成されている。
カウンタ回路44には、コンパレータ回路15の出力信号(図15及び図16(a)における(G))と、変調信号発生回路17からの同期信号(図15及び図16(a)における(H))とが入力される。カウンタ回路44は、上記同期信号(H)が入力している期間、コンパレータ出力信号(G)において発生しているパルスのカウント動作を行い、そのカウント数を判定回路45へ出力する。
受光素子13が、被検出物体の有無に応じて発光素子12からの出力パルス光を正常検知している場合、コンパレータ出力信号(G)において発生しているパルスは、同期信号(H)の入力期間(同期信号期間)内において1つのパルスを有する。
判定回路45は、カウンタ回路44におけるカウント数が所望のカウント数か否かを判定(即ち、同期信号期間内におけるコンパレータ出力信号(G)のパルス数が所望の数かどうかを判定)し、所望の数(この場合は1)であれば、受光素子13において正常な出力パルス光が検知されたことを示すため、復調回路16への出力信号(I)においてパルスを発生させる。
次に、図16(b)は、受光素子13で検知された入力光が外乱光である場合のパルス数検知回路43における各点の動作波形を示す。
ここでも、本実施の形態で想定される外乱光は、例えばインバータ駆動方式の蛍光灯の光である。また、変調信号発生回路17で生成される変調信号や同期信号のパルス幅は、上記インバータ蛍光灯の光において生じるパルスが同期信号期間内に複数回含まれるように設定される。即ち、受光素子13においてインバータ蛍光灯の光が外乱光として検出された時、その検出光におけるパルス数は、発光素子12からの出力パルス光を正常検出した場合のパルス数よりも多いものとなる。
一般的に、インバータの蛍光灯は20KHz〜70KHz程度の周波数で駆動されている。この場合の周期は14us〜50usである。上記パルス数検知回路43においてインバータ外乱光を複数回以上検知することにより正規の信号光との識別を確実に実施するには、正規の同期信号光のパルス幅を100us以上にすることが好適である。
受光素子13で検知された入力光が外乱光である場合、コンパレータ出力信号(G)のパルスは、同期信号期間内において複数のパルスを有する。その結果、判定回路45は、コンパレータ出力信号(G)のパルス数が所望の数でないと判定し、受光素子13に検知された光パルスは外乱光による誤検知であるとして、復調回路16への出力信号(I)においてパルスを発生させない。
これにより、その後段の復調回路16へのパルス信号入力がなされないため物体検知回路の信号出力がなされない。
上記の通り、物体検知回路において受光同期変調信号を検知する手段として、パルス数を検知する回路を設けることにより、正規の同期信号と外乱光との識別が可能となり、より精度の高い検出が可能になる。
尚、上記実施の形態2及び3に示す物体検出回路は、発光素子を除きモノリシック集積回路上に構成することが可能である。これにより、上記物体検出回路を備えたフォトインタラプタや光電スイッチ等の物体検出装置では、より小型化された物体検出装置の提供が可能になる。
また、上記物体検出回路に可視光カットのフィルタあるいは樹脂パッケージを組み合わせることにより、よりインバータ外乱光の入射が減り、より精度の高い物体検出装置の提供が可能になる。
一般的にインバータ蛍光灯による外乱光は可視光、物体検出装置からの照射光は赤外光である。故に可視光カットフィルタあるいは可視光カット樹脂パッケージを物体検出装置の受光素子の前面に設けることによりインバータ外乱光の入力を低減することができ、正規の赤外信号光との識別が容易になる。
さらに、モノリシック上に構成した物体検出回路の上に、同じモノリシック上の可視光カットフィルタを構成することにより、物体検出回路をさらに小型化でき、より検出精度の高い物体検出装置の提供が可能になる。
実施の形態1〜実施の形態3に記載の、物体検出回路1、37、42を用いることにより、信号光と外乱光の判別が可能となり誤検出のない検出精度の高い検出装置が実現可能になる。インバータ蛍光灯以外の光が、光パルス変調型物体検出装置の外乱光として入射し、発光周期が光パルス変調型物体検出装置の変調信号光と同期してもパルス信号検出可能であるため、その検出精度を劣化させることなく、より検出精度の高い検出装置が実現可能になる。またより小型化された物体検出装置の提供が可能になる。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。