JP2009173774A - 固体燃料およびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大量に発生するシュレッダーダストの吸収性能を生かし、燃料としての有効利用を図ることにある。
【解決手段】シュレッダーダスト100重量部、油泥30〜150重量部の混合物からなる固体燃料を、セメント製造設備であるNSPキルンの仮焼炉に投入し、該固体燃料をセメント製造用燃料として利用する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体燃料およびその使用方法に関し、特にシュレッダーダストの吸収性能を生かし、燃料としての再資源化を図った固体燃料およびその使用方法に関する。
シュレッダーダスト(SR:Shredder Residue)とは、使用済の廃自動車や廃家電などから再利用可能な有用部品を取り外した後の廃棄物を破砕し、さらに有価金属類を回収し
た後に残る破砕廃棄物の総称である。
上記シュレッダーダストは、樹脂、繊維、スポンジ、ゴムなどの有機物(可燃物)を主体とし、ガラスや土砂、回収されなかった金属などの無機物も含む雑多な軽量混合物(通
常、かさ比重約0.1〜0.4程度)である。
一方、オイルスラッジ(例えば重油スラッジ、原油スラッジ、廃ワイヤソーオイル等)などの油泥は、高い粘稠性を有しているものや、常温で流動性がないものや、固形分が沈降分離し固着するものがあるが、高いエネルギーを有するため、産業廃棄物として焼却処分または埋め立て処分せずに、燃料として有効利用することが図られている。例えば、近年欧州では、原油スラッジなどの油泥を単独で燃料として用いるのではなく、該油泥とおが屑などのバイオマスとを混合して固体燃料とし、セメントキルンで代替燃料として使用することが提案され、また我が国でも、同様な固体燃料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3等)。
特開昭54−39401号公報 特開2002−323213号公報 特開2006−169376号公報
従来、上記したシュレッダーダストは、その大部分がそのままあるいは減容化されて埋め立て処分されていた。しかし、処分場には限界があり、またリサイクルや環境保護の観
点からも、シュレッダーダストを有効利用することが望まれている。
そこで、本発明の目的は、近年、大量に発生するシュレッダーダストの吸収性能を生かし、燃料としての有効利用を図ることにある。
本発明者等は、上記した目的を達成すべく鋭意研究した結果、シュレッダーダストに含まれる樹脂、繊維、スポンジ、ゴムなどの有機物(可燃物)による総発熱量の高さ、および大量に含まれるスポンジや繊維による吸収能力の高さに着目し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕のものである。
〔1〕 シュレッダーダストと油泥との混合物からなることを特徴とする、固体燃料。
〔2〕 シュレッダーダスト100重量部、油泥30〜150重量部の混合物からなることを特徴とする、前記〔1〕に記載の固体燃料。
〔3〕 前記シュレッダーダストが、廃自動車シュレッダーダストであることを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕に記載の固体燃料。
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の固体燃料を、セメント製造設備に投入し、該固体燃料をセメント製造用燃料として利用することを特徴とする、固体燃料の使用方法。
〔5〕 前記固体燃料を投入するセメント製造設備が、NSPキルンの仮焼炉であることを特徴とする、前記〔4〕に記載の固体燃料の使用方法。
上記した本発明に係る固体燃料は、油泥がシュレッダーダスト、特にシュレッダーダスト中に含まれるスポンジや繊維に吸収され、そのハンドリング性が大幅に改善されると共に、油泥およびシュレッダーダストが備えた高いエネルギーを有する固体燃料となる。
また、上記した本発明に係る固体燃料の使用方法は、上記ハンドリング性が改善され高いエネルギーを有する固体燃料を、セメント製造設備、例えばNSPキルンの仮焼炉に投入し、該固体燃料をセメント製造用燃料として利用するため、大量に消費することが期待できる。
上記のことから、本発明によれば、従来においてはその大部分がそのままあるいは減容化されて埋め立て処分されていたシュレッダーダストを、資源として有効にかつ大量に使用することが可能となる。
以下、上記した本発明に係る固体燃料およびその使用方法について、詳細に説明する。
〔シュレッダーダスト〕
本発明で用いるシュレッダーダストは、先にも記載したように、使用済の廃自動車や廃家電などから再利用可能な部品やパーツを取り外した後、大型破砕機(シュレッダー)で最大粒径100mm程度に破砕し、磁力選別や手選別などで有価金属類を回収した後に残る破砕廃棄物である。
本発明においては、上記シュレッダーダストの中でも、吸収性能の高いスポンジや繊維を多量に含み、特に大量に発生する廃自動車シュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residue )を対象とすることが好ましい。
上記廃自動車シュレッダーダスト(以下、単に「ASR」と言う場合もある。)は、破砕前の自動車自体は、自動車メーカー、車種・クラス、製造年度などにより異なるものの、シュレッダー処理した後のシュレッダーダストとしてみれば、特にシュレッダーダストを多量に集めた混合物としてみれば、比較的均一な組成を有する混合物とみなすことができる。
上記ASRの組成は、本発明者等の分析によれば、目視によりその種類が分別できる19mm篩い上の成分については、概ねプラスチック類が36重量%、ゴム類が29重量%、スポンジ類が20重量%、金属類が15重量%程度であり、可燃物の割合は高く、かつ吸収能力の高いスポンジ類の割合も高いものである。また、ASRの総発熱量は、本発明者等の分析によれば、5,000kcal/kg強である。
上記ASRは、そのままの粒径で使用することもできるが、油泥との混合前あるいは混合後に、さらに微粉砕してもよい。
特に、例えばセメント製造設備において、焼成炉内にバーナーより吹き込む燃料として本発明に係る固体燃料を使用する場合には、上記ASRの最大粒径(篩の残分が5重量%以内となる目開き寸法)は、10mm以下、好ましくは5mm以下に微粉砕して用いることが好ましい。これは、該最大粒径が10mmを超えると、火炎(フレーム)を形成しにくく、燃料が着地した後も燃焼を継続するため、セメントクリンカの品質を低下させるおそれがある。特に該最大粒径を5mm以下とすれば、着地燃焼する粒体の割合が少なくなり、固体燃料の使用割合を大きくすることができるので特に好ましい。
〔油 泥〕
本発明において用いる油泥としては、オイルスラッジ(例えば重油スラッジ、原油スラッジ、廃ワイヤソーオイル等)、廃油再生残渣(廃油を蒸留設備等を用いて再生した後に残る残渣)、廃切削油、廃研削油、廃研磨油、廃塗料、廃インク、廃溶剤、グリース、廃植物油、廃食用油、脱粉体有機汚泥等の油性物質などの単独、あるいはこれらの二種以上の混合物を挙げることができる。
上記した油泥の中でも、シリコンウエハーの切り出しに使用された廃ワイヤソーオイルは、近年大量に発生しており、その処理が急務になっているため、特に本発明において好適に用いられる。また、各種オイルスラッジおよび廃油再生残渣は、分子量の大きな炭化水素を主成分とし、粘稠性が高く、固形分が分離し易いため、従来は燃料としての取り扱いが困難で、焼却処分または埋め立て処分されていたものであり、廃棄物の利用促進の観点から、本発明において好ましく用いられる。
〔混合割合〕
上記ASRと油泥との混合割合は、ASR100重量部に対し、油泥30〜150重量部が適当である。
これは、油泥の配合量が30重量部未満では、廃棄油泥の利用促進の観点、また得られる固体燃料の発熱量の観点から好ましくない。逆に油泥の配合量が150重量部を超えると、得られる固体燃料の粒子表面に多くの油が残留し、その付着性を改善することが困難であるためである。かかる観点から、油泥の配合割合は、ASR100重量部に対し、30〜150重量部が好ましく、50〜100重量部が特に好ましい。
〔混 合〕
上記ASRと油泥との混合は、コンクリートをも混練できるようなミキサ、例えばパン型ミキサ、2軸パドルミキサなどを用いて行えば、材料中の金属片、ガラス片、あるいは砂分などの存在も問題なく混合することができるために好ましい。
また、上記混合操作に際して、可燃性ガスの揮発が懸念される場合は、空気を混合機内に導入し、混合物から揮発する可燃性ガスを、爆発あるいは火災を起こさない濃度まで希釈させながら行うことが好ましい。
〔固体燃料の使用方法〕
上記混合操作により、ASRと油泥との混合物からなる本発明に係る固体燃料が得られる。この固体燃料は、油泥がASR、特にASR中に含まれるスポンジ類に吸収され、そのハンドリング性が大幅に改善されると共に、油泥およびASRが備えた高いエネルギーを有する固体燃料となる。
かかる本発明に係る固体燃料は、例えばセメント製造設備に投入し、該固体燃料をセメント製造用燃料として利用することにより、大量に消費することが期待できる。この場合、ASR中の金属分やガラス分などの不燃分は、セメント原料の一部となり、セメントクリンカに取り込まれる。
〔実施の形態〕
次に、図面を参照しつつ、本発明に係る固体燃料の製造設備、および製造した固体燃料の使用設備の一実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る固体燃料の製造設備、およびその固体燃料を使用するセメント製
造設備を概念的に示した図である。
この図1に示した設備では、ASR(A)と、油泥Oとが混合機1によって混合され、機械式搬送および機械式投入が可能な必要最低限のハンドリング性を備えた固体燃料Xに製造される。
製造された上記固体燃料Xは、車両、好ましくは天蓋付密閉車両2に積み込まれ、セメント製造設備の近傍まで運ばれる。なお、上記ASRと油泥との混合設備とセメント製造設備とが近接している場合には、上記車両による輸送は行う必要はない。
セメント製造設備の近傍まで運ばれた固体燃料Xは、ホッパー3に投入され、スクリューコンベヤー4、バケットエレベーター5、ベルトコンベヤー6等の機械式搬送装置にて
セメント製造設備であるNSPキルンの仮焼炉まで搬送される。
NSPキルン10は、図1に示したように、複数段、例えば4段のサイクロンC1,C2,C3,C4からなるサスペンションプレヒータ11と、このサスペンションプレヒータ11に付設された仮焼炉12と、該仮焼炉12および最下段のサイクロンC1に入口フッド13を介して接続されたロータリーキルン14と、このロータリーキルン14の出口部に連結されたクーラ15とから構成されている。そして、サスペンションプレヒータ11の上部に設けられた原料投入口16より投入されたセメント原料は、サスペンションプレヒータ11のサイクロンにおいて順次予熱された後、仮焼炉12に導入されて脱炭酸等の仮焼反応が行われ、その後、入口フッド13を経由してロータリーキルン14においてセメントクリンカとして焼成される。ロータリーキルン14から排出されたセメントクリンカは、クーラ15において急冷され、最終的なセメントクリンカとなる。
サスペンションプレヒータ11に付設された上記仮焼炉12の上部から、図2に示したように、2重のフラップダンパー20などのシール機能を有する機械式投入装置を介して、本発明に係る固体燃料Xが燃料として該仮焼炉12内に自然落下等により投入される。 なお、図1および図2において、実線の矢印はセメント原料の流れを示し、破線の矢印
はガスの流れを示す。
仮焼炉12内に投入された固体燃料Xは、例え粒径が粗くまた凝集した塊状物となっている場合でも、仮焼炉内に形成された高速旋回気流によって炉内に分散されるとともに加熱され、しかも旋回しながら長時間にわたって炉内に滞留することとなるため、効率よく燃焼してセメント原料の仮焼に寄与することとなる。また、例え多少の可燃分が残り、仮焼炉12から出たとしても、最終的にはロータリーキルン14内に入って該ロータリーキルン14の回転に従って窯前部側に徐々に移動しながら燃焼を完結する。また、金属分やガラス分などの不燃分は、セメント原料の一部としてセメントクリンカに取り込まれる。
上記したように、セメント製造設備であるNSPキルンの仮焼炉12に燃料として投入する場合には、特にASRを微粉砕することなくそのまま油泥と混合した粒径の粗い固体燃料Xであっても、十分に燃料として利用可能であり、固体燃料Xを、厳格なハンドリング性の調整をすることなく、容易にしかも大量にセメント製造用燃料として利用することが可能となる。
以上に記載した実施の形態では、本発明に係る固体燃料Xを、セメント製造設備であるNSPキルンの仮焼炉12に投入し、セメント製造用燃料として使用することにつき説明したが、本発明に係る固体燃料Xを、セメント製造設備であるロータリーキルン14にバーナーより吹き込み、セメント製造用燃料として使用してもよい。但し、この場合には、製造されるセメントクリンカの品質に悪影響を与えないよう、ASRを油泥との混合前あるいは混合後に微粉砕し、空気圧送が可能なものとするとともに、瞬時に完全燃焼し得る固体燃料に調整することが好ましい。また、本発明に係る固体燃料は、セメント製造設備以外の、例えばボイラーなどの燃料としても使用することが可能である。
1.使用材料
〔1〕油泥吸収材
表1に示した性状の廃自動車シュレッダーダスト(ASR)、比較として廃畳および紙屑の破砕品を用いた。
Figure 2009173774
〔2〕油泥
エンジンオイル(Mobil pro-fit SL/CFシーリング L )に水を添加してオイル分を60容積%に調整した模擬油泥(容重:0.91g/cm3 )を用いた。
2.固体燃料の製造
上記油泥吸収材と油泥とを、それぞれ重量および容積を統一した2種類の配合(油泥吸収材100gと油泥100cm3、油泥吸収材588cm3と油泥100cm3)で混合し、固体燃料を製造した。
なお、混合は、アイリッヒ社製小型インテンシブミキサーを用いて、3分間混合することにより行った。
3.固体燃料の付着量
上記製造した各固体燃料について、その付着量を測定した。
付着量の測定は、直径120mm、長さ150mmのステンレス製円筒状容器(容量:1.7L)に試料を100g投入し、該円筒状容器を軸芯を中心として46rpmの回転
数で20分間回転させ、容器内壁に付着する試料の重量を測定することにより行った。
なお、試料は、製造後(混合後)の固体燃料から製造直後に採取した。
付着量の測定結果を表2に記載する。
Figure 2009173774
4.まとめ
上記の実施例から、廃自動車シュレッダーダスト(ASR)は、廃畳や紙屑の破砕品に比しても、十分に油泥吸収能力を有している(上記実施例には記載しなかったが、木屑の付着量は10gを越え、また廃畳の破砕品でも水分量や破砕粗さによっては付着量は10gを越える。)ことが分かった。
本発明に係る固体燃料の製造設備、および製造した固体燃料を使用するセメント製造設備を概念的に示した図である。 本発明において固体燃料を投入するNSPキルンの仮焼炉(RSP式仮焼炉)を概念的に示した図である。
符号の説明
1 混合機
2 天蓋付密閉車両
3 ホッパー
4 スクリューコンベヤー
5 バケットエレベーター
6 ベルトコンベヤー
10 NSPキルン
11 サスペンションプレヒータ
C1,C2,C3,C4 サイクロン
12 仮焼炉
13 入口フッド
14 ロータリーキルン
15 クーラ
16 原料投入口
20 2重のフラップダンパー
A 廃自動車シュレッダーダスト(ASR)
O 油泥
X 固体燃料

Claims (5)

  1. シュレッダーダストと油泥との混合物からなることを特徴とする、固体燃料。
  2. シュレッダーダスト100重量部、油泥30〜150重量部の混合物からなることを特
    徴とする、請求項1に記載の固体燃料。
  3. 前記シュレッダーダストが、廃自動車シュレッダーダストであることを特徴とする、請
    求項1または2に記載の固体燃料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体燃料を、セメント製造設備に投入し、該固体燃料
    をセメント製造用燃料として利用することを特徴とする、固体燃料の使用方法。
  5. 上記固体燃料を投入するセメント製造設備が、NSPキルンの仮焼炉であることを特徴
    とする、請求項4に記載の固体燃料の使用方法。
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