JP2009173569A - ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法 - Google Patents

ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】容積効率および濾過性を改善でき、結晶の粉砕を省略できるなどの工業スケールでの作業性の効率を向上できるビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法を提供する。
【解決手段】親水性溶媒と水との混合溶媒を用い、2−(2−〔4−(ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル)−1−ピペラジニル〕エトキシ)エタノールとフマル酸とを反応させて懸濁液を得る工程と、得られた懸濁液を加熱し、晶析させる工程とを含む、ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法に関する。
統合失調症の治療薬として、下記式(I)で示されるビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレート(以下、「クエチアピンフマレート(I)」と略称する。)が有用であることが知られている。
Figure 2009173569
このクエチアピンフマレート(I)は、下記式(II)で示される2−(2−〔4−(ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル)−1−ピペラジニル〕エトキシ)エタノール(以下、「クエチアピンベース(II)」と略称する。)とフマル酸との反応によって製造することができる。
Figure 2009173569
クエチアピンフマレート(I)の反応および晶析法としては、たとえば特開昭63−8378号公報(特許文献1)、特開昭63−243081号公報(特許文献2)、国際公開第2006/117700号パンフレット(特許文献3)、国際公開第2007/020011号パンフレット(特許文献4)に記載された方法が知られている。特許文献1には、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液とフマル酸とを加熱処理する方法について開示されてはいるが、詳細な記載はない。また特許文献2には、クエチアピンベース(II)のトルエン溶液にフマル酸のエタノール溶液を加えて加熱処理して晶析する方法が開示され、特許文献3には、クエチアピンベース(II)のメタノール溶液にフマル酸のメタノール溶液を加え、加熱処理して晶析を行うことによりクエチアピンフマレート(I)の結晶を得る方法が開示され、また、特許文献4には、クエチアピンベース(II)の粘調液とエタノールを用い、フマル酸の結晶を加えて加熱処理して晶析する方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献1〜4に記載されたような晶析溶媒を用いた場合には、溶媒に対するクエチアピンフマレート(I)の溶解度が低く、得られるクエチアピンフマレート(I)に不純物や残留溶媒を多く含み、医薬品の品質としては満足できるものではなかった。これらを解決する手段として晶析溶媒を増量させて晶析を行う方法もあるが、反応容器に対する容積効率の低下など経済的な理由から不利である。
一方、たとえば特表2006−513131号公報(特許文献5)には、クエチアピンフマレート(I)の結晶を用い、アルコール類、双極非プロトン性溶媒と水との混合溶媒で、一旦これらの結晶を溶解させたのち冷却晶析によってクエチアピンフマレート(I)結晶を得る、いわゆる再結晶を行う方法などが報告されている。しかしながら、晶析法では一旦結晶を溶解させるため、溶液中のクエチアピンフマレート(I)の過飽和度によっては結晶の析出する温度が不規則となり、その結果、高い温度で析出した場合は結晶が大きく成長し、得られる結晶は大きく、また低い温度で析出した場合は微細な結晶になる傾向にある。結晶が大きくなった場合は、結晶の粉砕などを施す必要があり、また結晶が小さくなった場合は、濾過性が悪化したりして、特に工業スケールでの作業性等の面から満足できるものではなかった。
特開昭63−8378号公報 特開昭63−243081号公報 国際公開第2006/117700号パンフレット 国際公開第2007/020011号パンフレット 特表2006−513131号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、容積効率および濾過性を改善でき、結晶の粉砕を省略できるなどの工業スケールでの作業性の効率を向上できるクエチアピンフマレート(I)の製造方法を提供することである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、親水性溶媒と水との混合溶媒を用いてクエチアピンフマレート(I)の反応および晶析を行うことで、クエチアピンフマレート(I)の溶解度を高くでき、さらにはクエチアピンベース(II)とフマル酸との反応で析出するクエチアピンフマレート(I)の結晶を溶解させることなく、懸濁させたまま加熱処理して晶析を行っても目的の品質を得られることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明のビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレート(クエチアピンフマレート(I))の製造方法は、親水性溶媒と水との混合溶媒を用い、2−(2−〔4−(ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル)−1−ピペラジニル〕エトキシ)エタノール(クエチアピンベース(II))とフマル酸とを反応させて懸濁液を得る工程と、得られた懸濁液を加熱し、晶析させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法における親水性溶媒は、アルコール類、脂肪族ケトン類、脂肪族ニトリル類、グリコール類、環状脂肪族エーテル類およびアミド類から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法における親水性溶媒は、炭素数1〜3のアルキルアルコールおよびアセトンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法における混合溶媒中の水の含有量は2〜50重量%であることが好ましい。
本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法における反応温度は20〜50℃であることが好ましい。
また本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法におけるクエチアピンフマレート(I)の懸濁液の加熱温度は50〜80℃であることが好ましく、また、加熱時間は0.5〜10時間であることが好ましい。
本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法は、従来の反応または晶析方法と異なり、極めて少ない溶媒量で反応および晶析を行うことができ、容積効率がよい。また、本発明のクエチアピンフマレート(I)の製造方法では、結晶の濾過性が改善され、結晶の粉砕を省略でき、しかも粒度の整った高品質の結晶を得られるなど、特に工業的スケールでの経済性や作業性に優れるという効果が奏される。
本発明の方法は、まず、親水性溶媒と水との混合溶媒を用い、下記式(II)で表される2−(2−〔4−(ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル)−1−ピペラジニル〕エトキシ)エタノール(クエチアピンベース(II))とフマル酸とを反応させて懸濁液を得る工程を含む。
Figure 2009173569
クエチアピンベース(II)は、上述した特許文献1〜4などに記載された公知のいずれの方法により製造することができる。
たとえば特許文献1には、以下の方法が開示されている。まず、N,N−ジメチルアニリンなどの塩基存在下で、ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11(10H)−オンとオキシ塩化リンとを反応させる。得られた11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンの反応混合物から過剰のオキシ塩化リンを除去した後、溶媒を加えて水洗などに付し、溶媒を濃縮して11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンを固体として単離する。この固体と2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−1−ピペラジンとを反応させ、得られた反応混合物を塩酸酸性の水溶液とし、有機溶媒を加え、中和して溶媒に抽出する。水洗および溶媒留去などに付すことにより、クエチアピンベース(II)を得ることができる。
また特許文献2には、11−ピペラジニルジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンと2−(2−クロルエトキシ)エタノールとを、トルエンおよびN−メチルピロリドンとの溶媒中で炭酸ナトリウム、沃化ナトリウム存在下に反応させて、クエチアピンベース(II)を得る方法が記載されている。
また、特許文献3には、トリエチルアミンなどの塩基存在下で、ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11(10H)−オンを、オキシ塩化リンと反応させて、11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンを単離することなく溶液のまま、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−1−ピペリジンとを反応させ、クエチアピンベース(II)を製造する方法が記載されている。
本発明の方法では、当該クエチアピンベース(II)とフマル酸とを反応させる工程に際して、上述した方法などで得られたクエチアピンベース(II)の溶液の溶媒の一部を予め留去することが好ましい。溶媒の留去は、攪拌混合が可能な溶媒濃度まで行なわれ、通常、クエチアピンベース(II)の溶液中の濃度として20〜30重量%程度が好ましい。溶媒濃度が高い場合は、得られたクエチアピンフマレート(I)の品質が低下してしまう虞がある。
また、上述した方法で得られたクエチアピンベース(II)は、タール分および無機物などが含まれる場合が多いため、上述した溶媒留去後、活性炭などを加えて吸着処理することが好ましい。吸着処理を行うに際しては、本発明の方法の大きな特徴の1つである親水性溶媒(後述)を用いて行なわれる。吸着処理の際の溶媒は、親水性溶媒単独、あるいは親水性溶媒と水との混合溶媒を用いてもよく、その形態は特に制限はない。また、溶媒量は、クエチアピンベース(II)1重量部に対し、通常1〜4重量部程度である。
活性炭による吸着処理を行う場合、用いる活性炭の種類に特に制限はないが、活性炭の使用量はクエチアピンベース(II)に対し、通常0.5〜5重量%程度である。処理温度は溶媒によって異なるが、通常50〜70℃の範囲であり、また処理時間についても特に制限はないが、通常0.5〜2時間程度で行われる。活性炭処理が終了すれば、上記と同様の温度で濾過、洗浄を行ってクエチアピンベース(II)の溶液を得、クエチアピンフマレート(I)の原料とすることができる。
本発明の方法においては、上述したクエチアピンベース(II)とフマル酸とを反応させる工程、ならびに、その後の得られたクエチアピンフマレート(I)を晶析する工程に、親水性溶媒と水との混合溶媒を用いることを特徴の1つとする。すなわち、本発明においては、親水性溶媒と水との混合溶媒を用いることで、クエチアピンフマレート(I)の溶媒に対する溶解度を高くすることができ、極めて少ない量の溶媒でクエチピンベース(II)とフマル酸との反応および晶析を行なうことができるという効果が奏される。
ここで、本発明で得られるクエチアピンフマレート(I)の結晶の25℃における溶媒に対する溶解度を表1に、50℃における溶媒に対する溶解度を表2に示す。なお、溶解度は溶媒100gに対する溶質の溶解する重量を示す。
Figure 2009173569
Figure 2009173569
また本発明の方法は、上述したクエチアピンベース(II)とフマル酸とを反応させる工程の後の工程において、当該反応で得られるクエチアピンフマレート(I)を溶解することなく、懸濁液のまま加熱処理を行ってクエチアピンフマレート(I)を晶析させることも特徴の1つとする。すなわち、本発明によれば、続く工程において、クエチアピンベース(II)とフマル酸との反応において析出したクエチアピンフマレート(I)の結晶を溶解させることなく、懸濁させたまま加熱処理をして、晶析を行い、これによって適度の結晶の粒度が得られ、濾過性の改善、不純物や残留溶媒の少ない品質が得られる。
なお、上述した晶析溶媒は、特表2006−513131号公報(特許文献5)に既に報告されているが、特許文献5に開示されているのは、晶析方法としてクエチアピンフマレート(I)の結晶を用い、この結晶を一旦溶解して晶析を行う、いわゆる再結晶を行なう方法であり、本発明の方法は該晶析方法と明らかに区別できるものである。また、国際公開第2007/020011号パンフレット(特許文献4)には、該晶析溶媒を用いた品質や結晶の粒度に関する効果を示す記載はない。
ここで、本発明において用いられる親水性溶媒と水との混合溶媒における親水性溶媒とは、常温において混合割合にかかわらず水との均一溶媒を形成し得る溶媒である。ここで、「混和可能」とは、使用態様において水と親水性溶媒とが分離しないことを意味し、「混和可能」な状態とは、親水性溶媒の種類と、親水性溶媒と水の含有比に依存する。このような親水性溶媒としては、アルコール類、脂肪族ケトン類、脂肪族ニトリル類、グリコール類、環状脂肪族エーテル類およびアミド類から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
アルコール類としては、たとえば炭素数1〜4のアルキルアルコール(具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールなど)などが挙げられる。脂肪族ケトン類としては、たとえばアセトンが挙げられる。脂肪族ニトリル類としては、たとえばアセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。グリコール類としては、たとえばエチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。環状脂肪族エーテル類としては、たとえば1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。アミド類としては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
上述した中でも、比較的低沸点のアルコール類およびケトン類がクエチアピンフマレート(I)結晶に残留しにくいという理由からは、親水性溶媒が、炭素数1〜3のアルキルアルコールおよびアセトンから選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。なお、本発明における親水性溶媒は上述した1種であっても2種以上であってもよい。
また本発明に用いる親水性溶媒と水との混合溶媒は、混合溶媒中の水の含有量が、2〜50重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることが好ましい。水の含有量が2重量%未満である場合、または、50重量%を超える場合には、クエチアピンフマレート(I)の溶解度が低下して、得られる結晶中に不純物を多く含みやすく、また反応容器に対する容積効率が低下するなどして好ましくない。
本発明において、反応および晶析に用いる親水性溶媒と水との混合溶媒の使用量は、クエチアピンベース(II)1重量部に対し、通常3〜10重量部、好ましくは4〜7重量部である。混合溶媒の使用量がクエチアピンベース(II)1重量部に対し3重量部未満である場合、反応で得られた懸濁液の粘性が高くなり攪拌による混合が困難となり、得られたクエチアピンフマレート(I)中に不純物が多く含まれる虞がある。また、混合溶媒の使用量がクエチアピンベース(II)1重量部に対し10重量部を超える場合には、反応容器に対する容積効率が低下したり、またクエチアピンフマレート(I)の溶解量が増加して収率を低下させる傾向にある。
また本発明においては、上述した親水性溶媒と水との混合溶媒以外の溶媒を、クエチアピンベース(II)に対し、0.4重量倍程度まで含んでもよく、これらの溶媒が混和して分離しなければよい。このような親水性溶媒と水との混合溶媒以外の溶媒として、たとえば、原料として用いるクエチアピンベース(II)などに含まれる溶媒であるトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類などが挙げられる。
本発明の方法における反応および晶析の操作は、周知の方法により行われる。たとえば、クエチアピンベース(II)を上述した親水性溶媒と水との混合溶媒に溶解した後、フマル酸を加え、結晶析出するクエチアピンフマレート(I)の懸濁液を加熱処理することで晶析が行われる。
フマル酸の使用量は、クエチアピンベース(II)1モルに対し、通常0.50〜0.70モル倍が好ましく用いられる。フマル酸の使用量がクエチアピンベース(II)1モルに対し0.50モル倍未満である場合には、クエチアピンベース(II)に対するフマル酸が不足して収率が低下する傾向にあり、また、0.70モル倍を超える場合には、クエチアピンフマレート(I)結晶にフマル酸が残存してクエチアピンフマレート(I)の純度を低下させる傾向にあるためである。
フマル酸は、固体、または、上述した親水性溶媒と水との混合溶媒などに溶解させたフマル酸の溶液の形態で用いられる。フマル酸を溶液の形態で使用する場合、溶媒量は用いる溶媒のフマル酸に対する溶解度によって異なるが、通常フマル酸1重量部に対し、10〜20重量部が好ましく用いられる。溶媒の使用量は反応容器の容積効率から、少ないほど好ましい。
フマル酸の溶解温度は、溶媒および溶媒量によって異なるが、フマル酸の溶解を促進するため、通常20〜50℃、好ましくは30〜40℃である。
本発明の方法における反応温度は、当該反応に通常採用される温度範囲内であれば特に制限されないが、20〜50℃の範囲内が好ましく、25〜40℃の範囲内がより好ましい。反応温度が20℃未満である場合には、得られる懸濁液の粘性が高くなり、攪拌による混合が困難になる虞がある。また反応温度が50℃を超える場合には、得られる懸濁液に含まれるクエチアピンフマレート(I)の結晶が大きく成長したり、あるいは当該結晶が溶解などして、目的のクエチアピンフマレート(I)の結晶の粒度が大きくなり、当該結晶の粉砕が必要となってくる場合がある。なお、反応時間は、反応量にもよるが、通常0.5〜5時間である。
本発明の方法では、反応が終了した後、得られたクエチアピンフマレート(I)の結晶を含む懸濁液の加熱処理を行い、晶析させる。加熱処理を行わない場合、得られるクエチアピンフマレート(I)の結晶が小さく、濾過性を低下させたり、さらには不純物や溶媒を多く含んだりしてしまう。
加熱処理の温度は、用いる溶媒によって異なるが、通常50〜80℃の範囲内であり、好ましくは55〜75℃の範囲内である。
加熱処理の時間は、通常0.5〜10時間であるが、好ましくは1〜5時間である。加熱処理の時間が0.5時間未満では、小さい結晶が多く残り、本発明の効果を示さない場合がある虞がある。また加熱処理の時間が10時間を超える場合には、結晶が大きく成長して大きな結晶が多くなる傾向にある。
加熱処理されたクエチアピンフマレート(I)を含む懸濁液は、通常3〜24時間、好ましくは5〜12時間かけて、通常35〜−10℃、好ましくは25〜0℃にまで徐々に冷却することにより、クエチアピンフマレート(I)の結晶をさらに析出させることが好ましい。析出した結晶を、濾過などによって母液から分離し、洗浄することにより、目的とするクエチアピンフマレート(I)の結晶を得ることができる。
結晶の乾燥は、減圧下で加熱して行われ、加熱乾燥は、通常50〜100℃の範囲、好ましくは55〜80℃の範囲で行われる。温度が50℃未満では十分に水分や溶媒が除去できず、また温度100℃を超えると着色したり不純物が増加したりして好ましくない。減圧度は、乾燥温度によって異なるが、通常2.6kPa以下で行うことが好ましい。
以下、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<製造例1:11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンの製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管および滴下装置を備えた反応容器中に、ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−〔10H〕−オンを120重量部、トルエンを1050重量部およびN,N−ジメチルアニリンを33.0重量部を仕込み、オキシ塩化リン81.0重量部を攪拌下20℃以下で約30分をかけて滴下し、ついで、110〜112℃まで加熱昇温した。同温度で7時間保温して反応を完結させた。その後、25℃以下で水、ついで4重量%炭酸水素ナトリウム水で洗浄を行い、11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンのトルエン溶液1154重量部を得た。
<製造例2:11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−1−ピペラジニル〕ジベンゾ〔1,4〕チアゼピンの製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管および滴下装置を備えた反応容器中に製造例1で得た11−クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンの全量、1−〔2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルピペラジン147.2重量部および炭酸ナトリウム39.2重量部を仕込み、攪拌下に110〜113℃まで加熱昇温した。同温度で脱水還流しながら、約7時間保温して反応を完結させた。その後、25℃まで冷却し、水で洗浄した。有機層に水840重量部を仕込み、35%塩酸で約pH4に調整した。その後、60〜65℃に加熱して同温度で30分攪拌し、トルエン層を分液して除去した。同温度で水層にメチルイソブチルケトン480重量部を加え、水酸化ナトリウム水溶液で約pH9に調整した後、水層部を分液除去した。有機層を水洗し、メチルイソブチルケトン溶液を得た。約70℃/13kPaの条件で、溶液中のメチルイソブチルケトン濃度が20〜30重量%になるまで濃縮し、11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−1−ピペラジニル〕ジベンゾ〔1,4〕チアゼピンの粘調液246.6重量部を得た。この粘調液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−1−ピペラジニル〕ジベンゾ〔1,4〕チアゼピンの含量は75.0重量%(0.482モル)であった。
<実施例1>
(活性炭処理)
温度計、攪拌装置および還流冷却管を備えた容器中に、製造例2で得た11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)−エチル)−1−ピペラジニル〕ジベンゾ〔1,4〕チアゼピンの粘調液26.7重量部、エタノール50重量部および活性炭0.5重量部を加え、60℃で30分間保温した。同温度で活性炭を濾過してエタノール20重量部で洗浄し、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
容器にフマル酸3.5重量部、エタノール66.5重量部および水3.5重量部を仕込み、約30〜40℃で溶解させ、エタノールと水との混合溶媒でのフマル酸溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
温度計、攪拌装置および還流冷却管を備えた容器中に、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液全量を仕込み、攪拌下に30〜35℃まで加熱昇温した。次いで、上記のように調製したエタノールと水との混合溶媒でのフマル酸溶液全量を30〜35℃で約30分をかけて滴下し、同温度で30分間保温して結晶を析出させた。その後、70℃まで加熱昇温したのち、懸濁液を同温度で3時間保温した。ついで、25℃まで6時間をかけて徐々に冷却し、得られた結晶を同温度で濾過し、エタノール60重量部で洗浄した。70℃/1kPaで乾燥して、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.4重量部を得た。この結晶を液体クロマトグラフィーで分析した。
<実施例2>
(活性炭処理)
エタノールの代わりに2−プロパノールを用いた以外は実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)の2−プロパノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
エタノールの代わりに2−プロパノール56重量部、水14重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作で溶液調製を行ない、2−プロパノールと水との混合溶媒でのフマル酸溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
2−プロパノールと水との混合溶媒でのフマル酸溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を80℃、結晶の洗浄溶媒に2−プロパノールを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.4重量部を得た。
<実施例3>
(活性炭処理)
エタノールの代わりにアセトンを用い、50℃で濾過した以外は実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)のアセトン溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
エタノールの代わりにアセトン56重量部、水14重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作で溶液調製を行ない、アセトンと水との混合溶媒でのフマル酸溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
アセトンと水との混合溶媒でのフマル酸溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を60℃で行ない、結晶の洗浄溶媒にアセトンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.6重量部を得た。
<実施例4>
(活性炭処理)
実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
溶液調製は行わなかった。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
エタノール濾液全量、エタノール2.0重量部、水8.0重量部を用い、粉末のフマル酸3.5重量部を約30分で加えた以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.1量部を得た。
<比較例1>
(活性炭処理)
実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
エタノール210重量部を用い、水を加えない以外は実施例1と同様の操作で溶液調製を行ない、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
フマル酸のエタノール溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を80℃で行なった以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.7重量部を得た。
<比較例2>
(活性炭処理)
実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調製)
エタノール70重量部を用い、水を加えない以外は実施例1と同様の操作を行ない、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
フマル酸のエタノール溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を80℃で行なった以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶22.0重量部を得た。
<比較例3>
(活性炭処理)
エタノールの代わりに2−プロパノールを用いる以外は実施例1と同様の操作で活性炭処理を行ない、クエチアピンベース(II)の2−プロパノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調整)
エタノールの代わりに2−プロパノール70重量部を用い、水を加えない以外は実施例1と同様の操作を行ない、フマル酸の2−プロパノール懸濁液を得た(フマル酸は溶解せず)。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
フマル酸の2−プロパノール懸濁液を全量、懸濁液の加熱処理温度を80℃で行なった以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶23.1重量部を得た。
<比較例4>
(活性炭処理)
実施例1で活性炭処理と同様の操作を行ない、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調整)
エタノール36重量部を用い、水14重量を用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
上記で得たフマル酸のエタノール溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を80℃で行なって溶解させた以外は実施例1と同様の操作を行ない、クエチアピンフマレート(I)の結晶20.2重量部を得た。
<比較例5>
(活性炭処理)
実施例1の活性炭処理と同様の操作を行い、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(フマル酸の溶液調整)
実施例1と同様の操作を行い、フマル酸のエタノール溶液を得た。
(クエチアピンフマレート(I)の製造)
上記で得たフマル酸のエタノール溶液を全量、懸濁液の加熱処理温度を70℃で保温を行わない以外は実施例1と同様の操作を行い、クエチアピンフマレート(I)の結晶21.4重量部を得た。
実施例1〜4および比較例1〜5について、溶媒中の水分含有量、晶析溶媒量、晶析時の加熱処理温度、収率、不純物含有量、残留溶媒含有量、結晶粒度、ろ過時間を表3にまとめて示す。なお、純度および不純物含有量の測定は、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製:LC10A型)によって測定した。残留溶媒の含有量の測定は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製:GC14型)によって測定した。粒度の測定は粒度測定装置(マルゼン社製:MASTERSIZER2000)によって測定した。ろ過時間の測定はろ過する面積が直径6cmのろ過器を用い、一定減圧(86kPa)の条件でろ過時間を測定した。
〔純度および不純物含有量の測定:高速液体クロマトグラフィー条件〕
・カラム:C18(5μm、4.6mm×25cm)
・検出波長:250nm
・カラム温度:40℃
・注入量:5μl、
・移動層:A液=0.01容量%トリフルオロ酢酸水
B液=アセトニトリル
・移動層グラジエント:B液 25%/15min
25〜100%/30min
100%/5min
・試料調整:試料濃度 0.2%/アセトニトリル水
〔溶媒含有量の測定:ガスクロマトグラフィー条件〕
・カラム:DB−624(3μm、75m×直径0.53mm)(J&W Scientific社製)
・検出器温度:230℃
・注入口温度:230℃
・注入量:1μl
・キャリアーガス:He 5ml/min
・検出方式:FID
・H2:50kPa
・air:50kPa
・グラジエント:60℃/15min
60→230℃/17min
230℃/5min
・試料調整:試料濃度 5%/ジメチルホルムアミド
Figure 2009173569
なお、表3中、溶媒量(重量倍)はクエチアピンベーズ(II)に対する重量倍数、収率(mol%)はクエチアピンベーズ(II)1モルに対するモルパーセント、不純物含有量(面百%)はクエチアピンフマレート(I)に含有する不純物の面積百分率パーセント、残留溶媒含有量(重量%)はクエチアピンフマレート(I)に含有する溶媒の重量パーセント、ろ過時間(分)はクエチアピンフマレート(I)結晶100gあたりのろ過時間を表す。また、表3中、加熱処理温度・処理時間の項目には、懸濁状態を括弧書きで示している。
本発明の方法によれば、クエチアピンフマレート(I)の製造において、従来の方法とは異なり、用いる溶媒が極めて少ない量で、品質がよく、粒度が整った結晶が得られる。したがって、容積効率、濾過性、結晶の粉砕の省略など、特に工業的スケールでの作業性および経済性に優れ、クエチアピンフマレート(I)の製造に極めて有利な方法を提供できる。

Claims (7)

  1. 親水性溶媒と水との混合溶媒を用い、2−(2−〔4−(ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル)−1−ピペラジニル〕エトキシ)エタノールとフマル酸とを反応させて懸濁液を得る工程と、
    得られた懸濁液を加熱し、晶析させる工程とを含む、ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの製造方法。
  2. 親水性溶媒が、アルコール類、脂肪族ケトン類、脂肪族ニトリル類、グリコール類、環状脂肪族エーテル類およびアミド類から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 親水性溶媒が、炭素数1〜3のアルキルアルコールおよびアセトンから選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 混合溶媒中の水の含有量が、2〜50重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 反応温度が20〜50℃である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの懸濁液の加熱温度が50〜80℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. ビス{2−〔2−(4−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ〕エタノール}モノフマレートの懸濁液の加熱時間が0.5〜10時間である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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