JP2009173522A - メソポーラスカーボン(cnp−2)およびその製造方法 - Google Patents

メソポーラスカーボン(cnp−2)およびその製造方法 Download PDF

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Srinivasu Pavuluri
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バイシリンガム バラスブラマニアン ビーラパン
Katsuhiko Ariga
克彦 有賀
Toshiyuki Mori
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Abstract


【課題】 制御された比表面積、比孔容量および孔径を有するメソポーラスカーボンおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 メソポーラスカーボンを製造する方法は、高温マイクロ波法によって製造され、かつ、空間群がIa3dであるメソポーラスシリカと、スクロースと、水とを混合する工程と、混合する工程によって得られた混合物を加熱して、高分子化する工程と、高分子化する工程によって得られた高分子を加熱して、炭化する工程と、炭化する工程によって得られた炭化物から残留するメソポーラスシリカを除去する工程とからなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、メソポーラスカーボンおよびその製造方法に関し、より詳細には、大きな比表面積、比孔容量および孔径を有するメソポーラスカーボンおよびその製造方法に関する。
ポーラスカーボン材料は、ガス液体分離、吸着、触媒、データ格納、燃料電池および電子デバイスへの応用が期待され、注目されている。例えば、ポーラスカーボンに存在するポア(孔)のサイズが、マイクロサイズである場合には、微小な気体分子を吸着でき、メソポアサイズである場合には、高分子、色素またはビタミン等の巨大分子を吸着できる。吸着されるべき物質に応じてポア径が制御可能であることが望まれる。特に、大きな孔径を有する材料の開発が盛んである。
テンプレート合成法による大きな孔径を有するメソポーラスカーボンの製造方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、炭素源としてスクロースを、テンプレートとしてMCM−48と称され、空間群Ia3dを有するメソポーラスシリカを用いて、メソポーラスカーボンが合成される。
しかしながら、非特許文献1で用いられるMCM−48等のメソポーラスシリカは、時間の要する水熱条件下で合成されており、メソポーラスカーボンのコスト高となり得る。
R. Ryooら, J. Phys. Chem. B 103(1999)7743
したがって、本発明の目的は、制御された比表面積、比孔容量および孔径を有するメソポーラスカーボンおよびその製造方法を提供することであり、より詳細には、テンプレートとして水熱条件下で合成されていないメソポーラスシリカを採用することによる、制御された比表面積、比孔容量および孔径を有するメソポーラスカーボンおよびその製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、テンプレートとして水熱条件下で合成されていないメソポーラスシリカを採用することによる、バイモーダルな、制御された比表面積、比孔容量および孔径を有するメソポーラスカーボンおよびその製造方法を提供することである。
(発明1)発明1のメソポーラスカーボンは、空間群はIa3dであり、格子定数は最大24.5nmであり、比表面積は最大17×10/gであり、比孔容量は最大3.5cm/gであり、孔径は5.0nm以上であることを特徴とする。
(発明2)発明1に記載のメソポーラスカーボンにおいて、高温マイクロ波法によって製造され、かつ、空間群がIa3dであるメソポーラスシリカのレプリカであることを特徴とする。
(発明3)発明3のメソポーラスカーボンを製造する方法は、メソポーラスシリカと、スクロースと、水とを混合する工程であって、前記メソポーラスシリカは、高温マイクロ波法によって製造され、かつ、空間群がIa3dである、工程と、前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、高分子化する工程と、前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱して、炭化する工程と、前記炭化する工程によって得られた炭化物から残留する前記メソポーラスシリカを除去する工程とからなることを特徴とする。
(発明4)発明3に記載の方法において、前記混合する工程は、前記スクロースと前記メソポーラスシリカとの重量比が0.75以上であることを特徴とする。
(発明5)発明4に記載の方法において、前記混合する工程は、前記スクロースと前記メソポーラスシリカとの重量比が、0.75以上1.0以下であることを特徴とする。
(発明6)発明3に記載の方法において、前記高分子化する工程は、8×10℃〜10×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間加熱することを特徴とする。
(発明7)発明6に記載の方法において、前記高分子化する工程は、14×10℃〜16×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間さらに加熱することを特徴とする。
(発明8)発明7に記載の方法において、前記高分子化する工程は、スクロース、酸および水を前記混合物にさらに加え、8×10℃〜10×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間、続いて、14×10℃〜16×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間さらに加熱することを特徴とする。
(発明9)発明8に記載の方法において、前記酸は、p−トルエンスルホン酸、硝酸、リン酸および硫酸からなる群から選択されることを特徴とする。
(発明10)発明3に記載の方法において、前記炭化する工程は、前記高分子を窒素雰囲気中6×10℃〜9×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間加熱することを特徴とする。
(発明11)発明3に記載の方法において、前記除去する工程は、前記炭化物をフッ酸に溶解させ、エタノールで洗浄することを特徴とする。
(発明12)発明3に記載の方法において、前記高温マイクロ波法は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする。
(発明13)発明12に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする。
(発明14)発明12に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする。
(発明15)発明12に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×10℃〜2.5×10℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする。
(発明16)発明12に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×10℃で24時間加熱することを特徴とする。
(発明17)発明12に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×10〜2.22×10:19.5×10〜27.5×10:1.83×10〜2.75×10:1.0×10〜2.4×10のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
(発明18)発明17に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×10:19.5×10:1.83×10:1.00×10のモル比を満たすように混合することを特徴とする。
本発明のケージ型メソポーラスカーボンは、空間群がIa3dであり、格子定数が最大24.5nmであり、比表面積が最大17×10/gであり、比孔容量が最大3.5cm/gであり、孔径が5.0nm以上であることを特徴とする。このようなメソポーラスカーボンは、巨大分子の吸着に利用可能である。
本発明の方法は、メソポーラスシリカと、スクロースと、水とを混合する工程と、混合物を加熱して、高分子化する工程と、高分子を加熱して、炭化する工程と、炭化物から残留する前記メソポーラスシリカを除去する工程とからなる。上記メソポーラスシリカは、空間群がIa3dであり、高温マイクロ波法によって製造されているので、得られるメソポーラスカーボンを安価に提供することができる。
本発明によるメソポーラスカーボン(CNP−2とも呼ぶ)は、下記特徴を有する。
空間群:Ia3d
格子定数:最大24.5nm
比表面積:最大17×10/g
比孔容量:最大3.5cm/g
孔径:少なくとも5.0nm
空間群は、メソポーラスカーボンを合成する際に用いるメソポーラスシリカの空間群Ia3dが反映されている。すなわち、本発明によるメソポーラスカーボンはIa3dのメソポーラスシリカの逆レプリカである。このようなメソポーラスシリカは、高温マイクロ波法によって製造されている。
格子定数は、用いるテンプレートの格子定数を反映し、例えば、23nm〜25nmの範囲である。比表面積は、最小15×10/gであり、15×10〜17×10/gの範囲に制御されている。比孔容量は、最小2.0cm/gであり、2.0〜3.5cm/gの範囲に制御されている。このようなメソポーラスカーボンの各パラメータは、製造時の原料比によって制御される。
本発明者らは、上述の結晶構造を有し、かつ、上述の範囲で制御可能なパラメータを有するメソポーラスカーボンを創意工夫により見出した。
次に、上述のメソポーラスカーボンの製造方法を説明する。
図1は、本発明によるメソポーラスカーボンの製造工程を示すフローチャートである。
ステップS110:メソポーラスシリカと、スクロースと、水とを混合する。スクロースとメソポーラスシリカとの重量比は、好ましくは0.75以上である。重量比0.75未満の場合、スクロースがメソポーラスシリカ内に十分に充填されず、後述の炭化を目的とした加熱時にメソポーラスシリカが崩壊してしまう場合がある。例えば、もっとも大きな格子定数、比表面積、比孔容量を有するメソポーラスカーボンを得る場合には、重量比は0.75である。重量比を0.75から増加させるにつれて、格子定数、比表面積、比孔容量はそれぞれ低減する。したがって、所望の格子定数、比表面積、比孔容量に応じて、重量比を調整すればよい。特に、バイモーダルなメソポーラスカーボンを得るためには、重量比を0.75以上1.0以下の範囲にすればよい。
なお、ここで用いるメソポーラスシリカは、高温マイクロ法によって製造され、空間群がIa3dである。このようなメソポーラスシリカの製造方法を詳述する。
図2は、メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャートである。
ステップS210:ステップS210:界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する。界面活性剤P123は、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とからなり、EO20−PO70−EO20の構造を有するブロックコポリマーであり、テンプレートとして機能し得る。混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×10〜2.22×10:19.5×10〜27.5×10:1.83×10〜2.75×10:1.0×10〜2.4×10のである。この範囲であれば、所望のメソポーラスシリカを得ることができる。より好ましい混合モル比は、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×10:19.5×10:1.83×10:1.00×10であり、このモル比であれば確実にメソポーラスシリカを得ることができる。酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される。
ステップS220:混合物を加熱してテトラエトキシシランを高分子化する。加熱は、35℃で24時間、攪拌しながら行われる。これによりテトラエトキシシランが確実に高分子化される。好ましくは、ステップS210およびステップS220において、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸とを35℃3〜4時間混合した後に、テトラエトキシシランを混合し、さらに24時間混合する。界面活性剤P127に希酸(水と酸との混合物)を溶解させ、次いで、テトラエトキシシランを添加することによって、テンプレートへテトラエトキシシランを十分に充填させることができる。
ステップS230:ステップS220で得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる。マイクロ波の照射は、1.0×10℃〜2.5×10℃の温度範囲で1/2〜2時間の間行われる。マイクロ波を用いることによって、均一な加熱が可能になるので、長時間を要する水熱法と比較して、反応時間を極めて短くすることができる。このようにして得られたケイ化物は、沈殿し、目視にて確認できる。沈殿物をフィルタリングし、乾燥させる。加熱温度が高ほど、得られるメソポーラスシリカの孔容量、孔径が大きくなる。
ステップS240:ステップS230で得られたケイ化物を加熱して、残留する界面活性剤P123を除去する。加熱は、5.4×10℃で24時間行えば、十分である。
以上、このようにして、高温マイクロ波法によってテンプレートであるメソポーラスシリカシリカを得ることができる。このようなケージ型メソポーラスシリカは、空間群Ia3dを有する三次元細孔構造を有する。また、高温マイクロ波法を採用することにより、反応時間が大幅に短縮される。その結果、メソポーラスシリカの製造コストが削減され、有利である。再度、図1を参照し、本発明によるメソポーラスカーボンの製造方法を説明する。
ステップS120:ステップS110で得た混合物を加熱する。これにより、メソポーラスシリカ内に充填されたスクロースが、高分子化される。加熱は、8×10℃〜10×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間行われる。さらに14×10℃〜16×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間、加熱を行ってもよい。これにより、高分子化が促進される。
高分子化を確実にするために、さらなるスクロース、水および酸を加え、上記の加熱を行ってもよい。ここで、酸は、p−トルエンスルホン酸、硝酸、リン酸および硫酸からなる群から選択される。
ステップS130:ステップS120で得られた高分子を加熱する。これにより、高分子は炭化される。加熱は、窒素雰囲気中、6×10℃〜9×10℃の温度範囲で4〜6時間の間行われる。
ステップS140:ステップS130で得られた炭化物からメソポーラスシリカ(すなわち、テンプレート)を除去する。除去は、炭化物をフッ酸に溶解させればよい。メソポーラスシリカのみが選択的にフッ酸に溶解する。その後、炭化物をエタノール洗浄する。
このようにして、本発明によるメソポーラスカーボン(CNP−2)を得ることができる。高温マイクロ波法によって製造されたメソポーラスシリカをテンプレートとして用い、その結果、全体としての製造コストおよび製造時間を削減できるので、有利である。また、炭素源であるスクロースとメソポーラスシリカとの重量比を制御するだけで、得られるメソポーラスカーボンの特性(比表面積、比孔容量および孔径)を制御できるので、好ましい。
次に、具体的な実施例を用いて本発明の方法を説明するが、本発明を実施例に限定するものではないことを理解されたい。
まず、テンプレートであるメソポーラスシリカを合成した。界面活性剤P123(2.0g)を35℃の蒸留水(72g)および35wt%塩酸(3.95g)に溶解させた。次いで、1−ブタノール(2.0g)を加え、3時間攪拌した後、シリカ源としてテトラエトキシシラン(TEOS)(8.6g)を加えた(図2のステップS210)。混合モル比は、P123:1−ブタノール:水:酸:TEOS=0.017:1.31:195:1.83:1.00であった。
得られた混合物を35℃で24時間加熱し、TEOSを高分子化させた(図2のステップS220)。次いで、高分子を220℃で加熱しながら、2時間の間マイクロ波を照射した(図2のステップS230)。これにより、高分子をケイ化した。得られたケイ物をろ過し、洗浄することなく100℃で乾燥させた。次いで、残留する界面活性剤P123を除去するために、ろ過されたケイ化物を540℃24時間加熱した(図2のステップS240)。このようにしてメソポーラスシリカ(SNC−2と称する)を合成した。
次いで、SNC−2をテンプレートとしてメソポーラスカーボンを合成した。得られたSNC−2(1g)とスクロース(0.6g)と水(3.5g)とを混合した(図1のステップS110)。次いで、混合物を100℃、6時間オーブンで加熱した(図1のステップS120)。続いて、オーブン温度を160℃まで昇温し、さらに6時間保持した。スクロースの高分子化を確実にするために、スクロース(0.4g)、HSO(0.045g)および水(3.5g)をさらに添加し、混合物に再度上述の熱処理(100℃で6時間、続いて、160℃で6時間の加熱)を行った。
得られた高分子を窒素雰囲気下にて900℃で5時間加熱した(図1のステップS130)。これにより、高分子を炭化させた。得られた炭化物を室温にてフッ酸(5wt%)に浸漬させ、選択的にメソポーラスシリカを除去した(図1のステップS140)。このようにしてメソポーラスカーボンを合成した。ここで合成したメソポーラスカーボンをCNP−2(1.0)と称する。括弧内の数字1.0は、スクロース(実施例1では1.0g)とSNC−2(実施例1では1.0g)との重量比である。
SNC−2およびCNP−2(1.0)の粉末X線回折測定を、CuKα(λ=0.154nm)放射を用いたRigaku回折器によって行った。動作条件は、スリット幅の狭いステップスキャンモードで40kV、40mAであった。結果を図3に示し詳述する。また、回折ピークから立方晶の格子定数aを算出した。結果を表1に示し詳述する。また、ラマン分光を用いて、SNC−2(1.0)の構造を評価した。測定結果を図4に示す。
SNC−2およびCNP−2(1.0)の窒素吸脱着等温線は、77KにてQuantachrome Autosorb 1容量吸着分析を用いて測定した。吸着測定前に、いずれの試料も250℃でデガスした。結果を図5に示し詳述する。次いで、図5の相対圧0.05〜0.20の範囲からBET比表面積を求めた。また、Barret−Joyer−Halenda(BJH)法により吸着分岐から細孔径分布を算出した。結果を図6および図7に示す。さらに、図5の相対圧0.98にて吸着された窒素ガス量から比孔容量を求めた。これらの結果を表1に示す。CNP−2(1.0)の比表面積、比孔容量および孔径の結果を図8に示す。
実施例1で合成したSNC−2を用いて、スクロースとSNC−2との重量比を0.75にした以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスカーボンをCNP−2(0.75)と称する。CNP−2(0.75)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、窒素吸脱着等温線、吸着側細孔分布および脱着側細孔分布を測定するとともに、格子定数、比表面積および比孔容積の算出をした。結果を図3〜図8および表1に示し詳述する。
高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いてCNP−2(0.75)を観察した。観察は、CNP−2(0.75)のメソポアに沿った長手方向と、メソポアの断面との両方について行った。結果を図9および図10に示し詳述する。
実施例1で合成したSNC−2を用いて、スクロースとSNC−2(本明細書では単にシリカテンプレートと呼ぶ場合もある)との重量比を2.1にした以外は、実施例1と同様であるため説明を省略する。得られたメソポーラスカーボンをCNP−2(2.1)と称する。CNP−2(2.1)について、実施例1と同様に、粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、窒素吸脱着等温線、吸着側細孔分布および脱着側細孔分布を測定するとともに、格子定数、比表面積および比孔容積の算出をした。結果を図3〜図8および表1に示し詳述する。
図3は、実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のX線回折パターンを示す図である。
SNC−2のX線回折パターンは、2θ=0.8°〜1.3°の範囲に2つのブラッグ回折ピークを示す。これらは、(211)回折ピークおよび(220)回折ピークと指数付けされ、立方晶系の空間群Ia3dに相当する。実施例1〜3による各CNP−2もまた、2θ=0.8°〜1.3°の範囲に2つのブラッグ回折ピークを示した。このことから、フッ酸を用いてテンプレートのメソポーラスシリカを除去した後(図1のステップS140)もなお、テンプレートと同様の回折パターンが維持されることが分かった。このことは、得られたCNP−2は、いずれも、テンプレートのメソポーラスシリカの逆レプリカに相当し、立方晶Ia3dであることを示す。
SNC−2(2.1)の反射ピークの強度は、他のSNC−2(0.75)および(1.0)のそれと比較してわずかに大きい。これは、SNC−2(2.1)は、他のSNC−2(0.75)および(1.0)よりも多く黒鉛炭素を含むことを示唆している。
これらのX線回折パターンから格子定数aを、式a=(h+k+l1/2211を用いて求めた。結果を表1に示す。表1より、スクロースとSNC−2との重量比を制御することにより、格子定数を23.0nmから24.2nmの間になるよう調整することができることがわかった。また、CNP−2(0.75)の格子定数は、用いたテンプレートSNC−2の格子定数よりも大きかった。これは、合成時にテンプレートが熱により収縮しなかったためと考えられる。格子の収縮は、得られたCNP−2のメソポアにテンプレートが浸潤しているために、テンプレートを除去する際に生じることが分かっている。
図4は、実施例1〜3のCNP−2のラマンスペクトルa〜cを示す図である。
スペクトルa、bおよびcは、それぞれ、CNP−2(0.75)、CNP−2(1.0)およびCNP−2(2.1)のスペクトルである。いずれのスペクトルa〜cも、1349cm−1および1584cm−1を中心とした2つの明瞭なピークを示した。1584cm−1を中心とするピークは、面間のspC−C伸縮に起因する1580cm−1(Gバンド)における振動に基づく。一方、1349cm−1を中心とするピークは、理想的なフラファイト構造の炭素マイクロ構造内の欠陥に起因する1340cm−1(Dバンド)における振動に基づく。このように、わずかに中心が異なるのは、得られたCNP−2の壁に、グラファイト構造からなる無秩序形態が存在するためと考えられる。
CNP−2(2.1)のスペクトルcによれば、Gバンドは、CNP−2(0.75)およびCNP−2(1.0)のスペクトルaおよびbと比較して、狭く、かつ、高強度であった。これは、CNP−2(2.1)の壁のグラファイト構造における無秩序の程度が、CNP−2(0.75)およびCNP−2(1.0)のそれに比べて極めて低いことを示唆する。
図5は、実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図である。
いずれの窒素吸脱着等温線も、H1型ヒステリシスループを伴うタイプIV型を示した。このことから、得られたCNP−2は、SNC−2同様メソポアを有する多孔体であり、狭い細孔径分布を有するチャネル様孔構造を特徴とすることが分かった。SNC−2の吸脱着等温線は、高品質な大きなメソポーラス材料の特性である毛細管凝縮現象によるヒステリシスを示す。また、CNP−2は、いずれも、相対圧力p/p>0.5にて、均一なメソポア内での鋭い毛細管凝縮現象を示した。
特に、CNP−2(0.75)およびCNP−2(1.0)の窒素吸脱着等温線は、毛細管凝縮現象による2つのヒステリシスを示した。それぞれのヒステリシスは、均一なカーボンフレーム構造からなるメソポアによるヒステリシスと、内部粒子の結合からなるメソポアによるヒステリシスとに相当する。このことから、これらCNP−2(0.75)およびCNP−2(1.0)は、バイモーダルなメソポーラスカーボンであること、および、スクロースとシリカテンプレートとの重量比は、0.75〜1.0が好ましいことが示唆される。
表1に示すように、得られたCNP−2のBET比表面積および比孔容量は、それぞれ、1555m/g〜1713m/g、および、2.0cm/g〜3.3cm/gの範囲であった。比孔容量は、スクロースとシリカテンプレートとの重量比を制御することによって、調整できることが分かった。比表面積は、カーボンフレーム構造内にメソポア(孔)の形成に伴い、1555m/gから1713m/gまで増大した。表1より最も大きな比表面積および比孔容量を有するCNP−2を得るためには、スクロースとシリカテンプレートとの重量比が、0.75が好ましいことが示唆される。
表1は、実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2の特性を示す表である。
図6は、図5の窒素吸着等温線から求めた実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のBJH吸着細孔径分布を示す図である。
図7は、図5の窒素脱離等温線から求めた実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のBJH脱着細孔径分布を示す図である。
図6および図7から、CNP−2(0.75)、CNP−2(1.0)およびCNP−2(2.1)の細孔径分布は、狭く、それぞれ、5.1nm、6.0nmおよび4.8nmに集中し、約5.0nm以上となることがわかった。CNP−2(0.75)およびCNP−2(1.0)の細孔径分布は、カーボンフレーム構造内の内径に相当する孔と、隣接するカーボンフレーム構造間に形成される孔との2つのピークを示すことが分かった。このようなバイモーダルなメソポーラスカーボンを得るためには、前駆体(例えば、スクロースの炭素原料)がメソポーラスシリカのフレーム構造内にのみ取り込まれることが重要である。このことからも、バイモーダルなメソポーラスカーボンを得るためには、スクロースとシリカテンプレートとの重量比は、0.75〜1.0が好ましいことが示唆される。
図8は、比表面積、比孔容量および孔径のスクロースとシリカテンプレートとの重量比依存性を示す図である。
図5〜図7で得られた結果を図8にまとめる。図8より、最も比表面積および比孔容量の大きなCNP−2を得る場合には、重量比0.75が好ましく、最も大きな孔径を有するCNP−2を得る場合には、重量比1.0が好ましいことが分かる。このように、重量比(0.75以上)を制御することにより、比表面積、比孔容量および孔径を制御したCNP−2を得ることができることは、望ましい。
図9は、実施例2のCNP−2(0.75)のメソポアに沿った長手方向のHRTEM像を示す図である。
図10は、実施例2のCNP−2(0.75)のメソポアの断面のHRTEM像を示す図である。
図9および図10より、CNP−2(0.75)が、メソポーラスシリカSNC−2の正確な逆レプリカであることが明らかである。図示しないが、CNP−2(1.0)およびCNP−2(2.1)も同様の結果が得られた。
以上から、最も大きな比表面積および比孔容量を得るには、スクロースとシリカテンプレートとの重量比は、0.75が好ましく、バイモーダルなメソポーラスカーボンを得る場合には、スクロースとシリカテンプレートとの重量比は、0.75〜1.0の範囲が好ましいことが分かった。また、スクロースとシリカテンプレートとの重量比を変更することにより、比表面積、比孔容量、孔径を制御できる。なお、実施例1〜3では、220℃で加熱しながらマイクロ波処理をしたSNC−2をテンプレートとして用いたが、テンプレートは、上記温度で合成されたSNC−2に限定されない。本発明では、100℃〜250℃の温度範囲で加熱し、マイクロ波処理されたSNC−2を用いることができる。マイクロ波処理時の加熱温度によっても、得られるメソポーラスカーボン(CNP−2)の比表面積および比孔容量を制御することができることは、当業者であれば理解する。
本発明によれば、高温マイクロ法によって製造されたIa3dの結晶構造を有するメソポーラスシリカをレプリカとして用いる。これにより、従来よりも製造コストを下げることができるだけでなく、比表面積および比孔容量の大きなメソポーラスカーボンが得られる。このようなメソポーラスカーボンは、従来よりも吸着力を向上させることができるとともに、従来吸着できなかった大きな物質をも吸着することができ、また、メソポーラスカーボン内への吸着物質の拡散も容易となり得る。このようなメソポーラスカーボンは、吸着剤、燃料電池の電極、分子認識素子等のセンサに応用可能である。
本発明によるメソポーラスカーボンの製造工程を示すフローチャート メソポーラスシリカの製造工程を示すフローチャート 実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のX線回折パターン 実施例1〜3のCNP−2のラマンスペクトルa〜cを示す図 実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2の窒素吸脱着等温線を示す図 図5の窒素吸着等温線から求めた実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のBJH吸着細孔径分布を示す図 図5の窒素脱離等温線から求めた実施例1〜3のCNP−2およびSNC−2のBJH脱着細孔径分布を示す図 比表面積、比孔容量および孔径のスクロースとシリカテンプレートとの重量比依存性を示す図 実施例2のCNP−2(0.75)のメソポアに沿った長手方向のHRTEM像を示す図 実施例2のCNP−2(0.75)のメソポアの断面のHRTEM像を示す図

Claims (18)

  1. メソポーラスカーボンであって、
    前記メソポーラスカーボンの空間群は、Ia3dであり、
    前記メソポーラスカーボンの格子定数は、最大24.5nmであり、
    前記メソポーラスカーボンの比表面積は、最大17×10/gであり、
    前記メソポーラスカーボンの比孔容量は、最大3.5cm/gであり、
    前記メソポーラスカーボンの孔径は、5.0nm以上であることを特徴とする、メソポーラスカーボン。
  2. 請求項1に記載のメソポーラスカーボンにおいて、高温マイクロ波法によって製造され、かつ、空間群がIa3dであるメソポーラスシリカのレプリカであることを特徴とする、メソポーラスカーボン。
  3. メソポーラスカーボンを製造する方法であって、
    メソポーラスシリカと、スクロースと、水とを混合する工程であって、前記メソポーラスシリカは、高温マイクロ波法によって製造され、かつ、空間群がIa3dである、工程と、
    前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、高分子化する工程と、
    前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱して、炭化する工程と、
    前記炭化する工程によって得られた炭化物から残留する前記メソポーラスシリカを除去する工程と
    からなることを特徴とする、方法。
  4. 請求項3に記載の方法において、前記混合する工程は、前記スクロースと前記メソポーラスシリカとの重量比が0.75以上であることを特徴とする、方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、前記混合する工程は、前記スクロースと前記メソポーラスシリカとの重量比が、0.75以上1.0以下であることを特徴とする、方法。
  6. 請求項3に記載の方法において、前記高分子化する工程は、8×10℃〜10×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間加熱することを特徴とする、方法。
  7. 請求項6に記載の方法において、前記高分子化する工程は、14×10℃〜16×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間さらに加熱することを特徴とする、方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、前記高分子化する工程は、スクロース、酸および水を前記混合物にさらに加え、8×10℃〜10×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間、続いて、14×10℃〜16×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間さらに加熱することを特徴とする、方法。
  9. 請求項8に記載の方法において、前記酸は、p−トルエンスルホン酸、硝酸、リン酸および硫酸からなる群から選択されることを特徴とする、方法。
  10. 請求項3に記載の方法において、前記炭化する工程は、前記高分子を窒素雰囲気中6×10℃〜9×10℃の温度範囲で4時間〜6時間の間加熱することを特徴とする、方法。
  11. 請求項3に記載の方法において、前記除去する工程は、前記炭化物をフッ酸に溶解させ、エタノールで洗浄することを特徴とする、方法。
  12. 請求項3に記載の方法において、前記高温マイクロ波法は、
    界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを混合する工程と、
    前記混合する工程によって得られた混合物を加熱して、テトラエトキシシランを高分子化する工程と、
    前記高分子化する工程によって得られた高分子を加熱しながらマイクロ波を照射して、ケイ化させる工程と、
    前記ケイ化させる工程によって得られたケイ化物を加熱して、残留する前記界面活性剤P123を除去する工程とからなることを特徴とする、方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、前記酸は、塩酸、硫酸および硝酸からなる群から選択されることを特徴とする、方法。
  14. 請求項12に記載の方法において、前記高分子化する工程は、35℃で24時間攪拌しながら行うことを特徴とする、方法。
  15. 請求項12に記載の方法において、前記ケイ化させる工程は、1.0×10℃〜2.5×10℃の温度範囲で1/2〜2時間、マイクロ波を照射することを特徴とする、方法。
  16. 請求項12に記載の方法において、前記除去する工程は、前記ケイ化物をフィルタリングし、乾燥させた後に、5.4×10℃で24時間加熱することを特徴とする、方法。
  17. 請求項12に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7〜3.0:1.31×10〜2.22×10:19.5×10〜27.5×10:1.83×10〜2.75×10:1.0×10〜2.4×10のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
  18. 請求項17に記載の方法において、前記混合する工程は、界面活性剤P123と、n−ブタノールと、水と、酸と、テトラエトキシシランとを、界面活性剤P123:n−ブタノール:水:酸:テトラエトキシシラン=1.7:1.31×10:19.5×10:1.83×10:1.00×10のモル比を満たすように混合することを特徴とする、方法。
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