本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
先ず、一対の車輪を備え、該一対の車輪が回転することにより走行可能な車であって、長手方向両端部にて前記一対の車輪を回転可能に支持する支持体と、前記支持体を回動させることにより該支持体に支持された前記車輪を上下移動させるためのアクチュエーターと、前記車の姿勢の変化に応じて前記アクチュエーターを制御する制御部と、を有する車。
かかる車では、該車の姿勢の変化に応じて前記アクチュエーターを能動的に制御することが可能になる。これにより、前記制御部は、走行中の車体姿勢を能動的に制御することが可能になる。この結果、走行中の車体姿勢の安定性をより向上させた車が実現可能となる。
なお、車の姿勢は、該車が水平な地面上に静置しているとき、又は、水平な地面を直進走行しているときの姿勢が基本姿勢となる。また、「車の姿勢が変化する」とは、該車の姿勢が左右又は前後に傾いた姿勢に変化することを意味する。また、「車輪を上下移動させる」とは、車輪を車(より正確には車体)から見て、アクチュエーターが制御される前に該車輪が位置した位置、よりも上方又は下方に移動させることを意味する。
また、上記の車において、前記姿勢に応じた信号を出力する姿勢センサを有し、前記制御部は、前記姿勢センサが出力する前記信号の変化に応じて前記アクチュエーターを制御することとしてもよい。かかる構成により、制御部がアクチュエーターを精度良く制御することが可能になる。
また、上記の車において、前記車が凸部を有する地面を走行する際に、前記一対の車輪のうちの一方の車輪のみが該凸部を通過する場合、前記一方の車輪が前記凸部に差し掛かったときに、前記姿勢が変化して前記姿勢センサが出力する前記信号が変化すると、前記制御部が該信号の変化に応じて前記アクチュエーターを制御することにより、前記一方の車輪を上方に移動させ、該一方の車輪が、前記地面に接触したまま上方位置に位置した状態で、前記凸部を通過することとしてもよい。
さらに、前記車が凹部を有する地面を走行する際に、前記一対の車輪のうちの一方の車輪のみが該凹部を通過する場合、前記一方の車輪が前記凹部に差し掛かったときに、前記姿勢が変化して前記姿勢センサが出力する前記信号が変化すると、前記制御部が該信号の変化に応じて前記アクチュエーターを制御することにより、前記一方の車輪を下方に移動させ、該一方の車輪が、前記地面に接触したまま下方位置に位置した状態で、前記凹部を通過することとしてもよい。
以上のような動作により、前記一方の車輪が凸部(凹部)に差し掛かったときに車の姿勢が変化したとしても、制御部が車体姿勢を制御することにより、当該車体姿勢が安定した状態で前記車は走行し続けることが可能になる(すなわち、車体姿勢が安定した状態で一方の車輪が凸部(凹部)を通過する)。なお、「上方位置(下方位置)」とは、車(より正確には車体)から見て、アクチュエーターが制御される前に車輪が位置した位置、よりも上方(下方)に位置する位置を意味する。また、「凸部(凹部)を通過する」とは、該凸部(該凹部)上を車輪が移動することを意味する。
また、上記の車において、前記支持体を回動させることにより前記車輪を前後移動させるための第二のアクチュエーターを有し、前記車が凸部を有する地面を走行する際に、前記一対の車輪の双方が該凸部を通過する場合、前記双方が前記凸部に差し掛かったときに、前記姿勢が変化して前記姿勢センサが出力する前記信号が変化すると、前記制御部が該信号の変化に応じて前記アクチュエーター及び前記第二のアクチュエーターを制御することにより、前記双方のうちの一方の車輪を上方かつ前方に移動させてから、他方の車輪を上方かつ前方に移動させ、前記一方の車輪が、前記地面に接触したまま上方位置に位置した状態で前記凸部を通過してから、前記他方の車輪が前記地面に接触したまま上方位置に位置した状態で前記凸部を通過することとしてもよい。
さらに、前記車が凹部を有する地面を走行する際に、前記一対の車輪の双方が該凹部を通過する場合、前記双方が前記凹部に差し掛かったときに、前記姿勢が変化して前記姿勢センサが出力する前記信号が変化すると、前記制御部が該信号の変化に応じて前記アクチュエーター及び前記第二のアクチュエーターを制御することにより、前記双方のうちの一方の車輪を下方かつ前方に移動させてから、他方の車輪を下方かつ前方に移動させ、前記一方の車輪が、前記地面に接触したまま下方位置に位置した状態で前記凹部を通過してから、前記他方の車輪が前記地面に接触したまま下方位置に位置した状態で前記凹部を通過することとしてもよい。
以上のような動作により、前記一対の車輪の双方が凸部(凹部)に差し掛かったときに車の姿勢が変化したとしても、制御部が車体姿勢を制御することにより、当該車体姿勢が安定した状態で前記車は走行し続けることが可能になる(すなわち、車体姿勢が安定した状態で一対の車輪の双方が凸部(凹部)を通過する)。なお、「車輪を前後移動させる」とは、車輪を車(より正確には車体)から見て、第二のアクチュエーターが制御される前に車輪が位置した位置、よりも前方又は後方に移動させることを意味する。
また、上記の車において、前記車輪毎に備えられた、該車輪を回転させるためのモータを有し、前記制御部は、前記第二のアクチュエーターを制御するときに前記モータを該モータ毎に制御することにより、前記一対の車輪のうち、前方に移動させる前記車輪の回転速度を後方に移動させる前記車輪の回転速度よりも大きくさせることとしてもよい。
かかる構成であれば、一対の車輪のうちの一方の車輪が凸部(凹部)を通過してから他方の車輪が該凸部(該凹部)を通過するように、前記車は走行することが可能になる。ここで、「回転速度」とは、単位時間当たりに車輪が回転する回数を意味する。
また、上記の車において、前記一対の車輪、前記支持部、前記アクチュエーター、前記第二のアクチュエーター、及び、前記車輪毎に備えられた前記モータを、それぞれ2つずつ有し、当該2つのうちの一方は前記車の前方側に位置し、他方は該車の後方側に位置することとしてもよい。かかる構成により走行中の車体姿勢の安定性がより向上した四輪車が実現可能になる。
また、上記の車において、人又は物を載せるための台と、該台を支持するための第二の支持体と、前記第二の支持体を回動させることにより、前記台の状態を水平方向に対して前後に傾いた傾斜状態から非傾斜状態へ復帰させるための第三のアクチュエーターと、を有し、前記制御部は、前記台の状態が前記傾斜状態になると、前記第三のアクチュエーターを制御することとしてもよい。
かかる構成であれば、車が前傾(後傾)することに伴って、前記台の状態が傾斜状態となったとしても、該台の状態を非傾斜状態に復帰させることが可能になる。なお、「非傾斜状態」については後述する。
また、上記の車において、該車は、人又は物を前記台に載せた状態で走行可能な車であることとしてもよい。かかる車であれば、前記台に載せられる人にとっては、該車の乗り心地が向上し、前記台に載せられる物については、その積載状態が安定する。
===車の構成例===
以下に、本実施の形態に係る車10の構成例について説明する。
<<車の機器構成>>
先ず、図1乃至図4を用いて、車10の機器構成の概要を説明する。
図1は、車10の外観を模式的に示した斜視図である。図2は、車10を正面側から見た図である。図3は、車10を上方から見た図である。なお、図2及び図3には、車10の内部構造を示す都合上、車10の外側からは本来見えない部品についても図示している。図4は、図3のA−A断面図である。図5は、図4に図示された第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200についての拡大図である。
また、図1には座標軸としてのX軸、Y軸、及びZ軸が、図2にはY軸及びZ軸が、図3にはX軸及びY軸が、図4にはX軸及びZ軸が、それぞれ示されている。ここで、X軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときの該車10の前後方向に相当する。また、X軸方向は、車10が水平な地面を直進走行する際の直進方向と一致する。Y軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときの該車10の左右方向に相当する。つまり、Y軸方向は、水平方向であって、X軸方向と直交する方向である。また、Y軸方向は、車10が水平な地面を直進走行する際に車輪21、22、23、24の回転軸方向と一致する。Z軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときの該車10の上下方向に相当する。また、Z軸方向は鉛直方向と一致する。
本実施形態の車10は、図1に示すように、互いに同径である4つの車輪21、22、23、24を有する車である。すなわち、車10は、一対の車輪を2つ有し、当該2つのうちの一方は該車10の前方側に位置し、他方は後方側に位置している。そして、それぞれの一対の車輪が回転することにより、該車10は地面を走行する。以下、前方側に位置した一対の車輪を前方側車輪21、22とも呼び、後方側に位置した一対の車輪を後方側車輪23、24とも呼ぶ。
なお、前方側車輪21、22の各々の回転軸は、同一直線上にあり、車10の姿勢が基本姿勢であるときにはY軸方向に略平行である。同様に、後方側車輪23、24の各々の回転軸も同一直線上にあり、車10の姿勢が基本姿勢であるときにはY軸方向に略平行である。
また、本実施形態では、図2に示すように、車輪21、22、23、24を回転させるためのモータ31、32、33、34が該車輪毎に備えられている。そして、本実施形態では、モータ31、32、33、34をそれぞれ個別に制御することが可能である。換言すると、車輪21、22、23、24の回転速度を該車輪毎に制御することが可能である。
車10は、図1に示すように、車輪21、22、23、24、及び、モータ31、32、33、34の他に、車体12と、支持体としての車輪支持アーム40、42とを有する。
車輪支持アーム40、42は、図1に示すように、長尺体であり、後述するケーシング14の長手方向両端の先に配置されている。図2や図3に示すように、車輪支持アーム40、42の長手方向両端部には、前記モータ31、32、33、34が固定されている。そして、モータ31、32、33、34の回転軸を介して前記車輪21、22、23、24が車輪支持アーム40、42の長手方向両端部に回転可能に支持されている。
また、図1に示すように、車輪支持アーム40、42は、車10の前方側及び後端側にそれぞれ設けられている。前方側に位置する車輪支持アーム40が前方側車輪21、22を、後方側に位置する車輪支持アーム42が後輪側車輪23、24を、それぞれ支持している。
なお、車輪支持アーム40、42は、その長手方向が、該車輪支持アーム40、42が支持する車輪21、22、23、24の回転軸方向に沿った状態で車10に備えられている。したがって、車輪支持アーム40、42の長手方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときにはY軸方向に略平行である。
車体12は、図1に示すように、ケーシング14と、台としての載置台16とを有している。
ケーシング14は、鋼材からなる構造体であり、上壁、下壁、及び、側壁を有する。このケーシング14の長手方向が車10の前後方向となる。したがって、ケーシング14の長手方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときにはX軸方向と一致する。また、図1に示すように、ケーシング14の長手方向両端部には側壁が備えられておらず、上壁及び下壁のみが備えられている。すなわち、ケーシング14の長手方向両端部には、上壁及び下壁が張り出した状態で備えられていることになる。
載置台16は、人又は物を載せるための略矩形状の平板台である。すなわち、本実施形態の車10は、人又は物を前記載置台16に載せた状態で走行可能な車である。載置台16は、図1等に示すように、ケーシング14の長手方向中央部の上方に位置している。また、載置台16の長手方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときにはケーシング14の長手方向に沿っている。
載置台16の下面には、第二の支持体としての一対の台支持アーム18が取り付けられている。この一対の台支持アーム18の各々は、載置台16の下面から下方に延出した長尺体である。台支持アーム18は、車10の左右方向においてケーシング14よりも外側に位置する位置にて載置台16を支持している。なお、台支持アーム18の長手方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときには、鉛直方向(すなわち、Z軸方向)に略平行である。
さらに、図3に示すように、車10は、アクチュエーターとしての第一アクチュエーター100、110、第二のアクチュエーターとしての第二アクチュエーター200、210、及び、第三のアクチュエーターとしての第三アクチュエーター300を有している。
第一アクチュエーター100、110及び第二アクチュエーター200、210は、それぞれ、車輪支持アーム40、42毎に備えられている。すなわち、図4に示すように、本実施形態の車10は、2つの第一アクチュエーター100、110と、2つの第二アクチュエーター200、210とを有している。そして、一方の第一アクチュエーター100及び一方の第二アクチュエーター200は、車10の前方側に位置している。他方の第一アクチュエーター110及び他方の第二アクチュエーター210は、車10の後方側に位置している。
なお、前方側の第一アクチュエーター100は、後方側の第一アクチュエーター110と同じ構造及び機能を有する。同様に、前方側の第二アクチュエーター200は、後方側の第二アクチュエーター210と同じ構造及び機能を有する。このため、以下では、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200についてのみ説明する。
第一アクチュエーター100は、車輪支持アーム40を支持するとともに、該車輪支持アーム40を後述のアーム支持部102の中心軸を中心にして回動させるための機構である。この第一アクチュエーター100は、図4に示すように、前記ケーシング14の長手方向端部において該ケーシング14の上壁と下壁との間に配置されている。また、第一アクチュエーター100は、図5に示すように、アーム支持部102と、駆動モータ104と、駆動力伝達部106とを有している。
アーム支持部102は、車輪支持アーム40を支持するための円筒状の部材である。このアーム支持部102は、図5に示すように、ケーシング14の長手方向端部側に位置し、その一部は該ケーシング14よりも外側に突き出ている。そして、アーム支持部102の一端面に車輪支持アーム40の長手方向中央部がボルト止めされることにより、該車輪支持アーム40が前記アーム支持部102に支持される。なお、アーム支持部102の中心軸方向は、車輪支持アーム40の長手方向と略直交し、ケーシング14の長手方向(すなわち、車10の前後方向)に略平行である。したがって、当該中心軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときには、X軸方向に略平行である。
駆動モータ104はDCサーボモータであり、該駆動モータ104が有する回転軸は正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能である。駆動力伝達部106は、アーム支持部102及び駆動モータ104の双方を支持するとともに、駆動モータ104からの駆動力をアーム支持部102に伝達するためのものである。この駆動力伝達部106は、複数のギア(不図示)を有し、駆動モータ104の回転軸の回転を減速して前記アーム支持部102に伝達する。そして、駆動モータ104からの駆動力がアーム支持部102まで伝達されると、該アーム支持部102がその中心軸周りに回動するようになる。なお、駆動力伝達部106には、図5に示すように、第二アクチュエーター200が有するアクチュエーター保持部205(詳細は後述する)が取り付けられている。そして、当該アクチュエーター保持部205により、第一アクチュエーター100はケーシング14の上壁と下壁との間に保持される。
以上のような構造を有する第一アクチュエーター100では、駆動モータ104が回転することにより、アーム支持部102が、その中心軸を中心にして車輪支持アーム40と一体的に回動する。なお、前述したように、駆動モータ104の回転軸は正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能であるため、車輪支持アーム40は、アーム支持部102の中心軸を中心にして正回動方向及び逆回動方向のいずれにも回動可能である。
そして、車輪支持アーム40が前記中心軸周りに回動する結果、前方側車輪21、22の各々が上下移動するようになる。より正確に説明すると、例えば、車輪支持アーム40が車10の正面から見て反時計回りに回動したときには、図2に示すように、前方側車輪21、22のうちの車輪21が上方位置に移動し、車輪22が下方位置に移動する。そして、車輪支持アーム40が回動する際、車体12の姿勢は変わらない。すなわち、本実施形態では、車体12の姿勢を維持しつつ、上下方向において、前方側車輪21、22の各々の、車体12に対する相対位置を変えることが可能である。
具体的に説明すると、前方側車輪21、22の双方が水平な地面に接触した状態で車10が該地面を走行する場合、前方側車輪21、22は上下方向において同一位置にある。このとき、車輪支持アーム40の長手方向が水平方向となる(すなわち、Y軸方向に略平行である)。そして、上記の状態にある車10において第一アクチュエーター100が作動すると、車輪支持アーム40がアーム支持部102の中心軸を中心にして回動し、一方の車輪が上方に移動し、他方の車輪が下方に移動する。つまり、図2に示すように、車輪支持アーム40の長手方向が水平方向に対して傾き、一方の車輪が位置する位置と他方の車輪が位置する位置とが、上下方向においてずれるようになる。一方、車体12の姿勢は、第一アクチュエーター100の作動前後で変化せず、前方側車輪21、22の双方が水平な地面に接触していたときの姿勢のまま維持される。なお、本実施形態では、図2に示すように、第一アクチュエーター100を駆動することによって、車輪支持アーム40の長手方向が水平方向に対して最大約28.5度傾くまで該車輪支持アーム40を回動させることが可能である。
以上のような動作を車体12から見て改めて説明すると、第一アクチュエーター100を駆動することにより、車体12の前方側車輪21、22に対する相対位置を変えることが可能になると言える。つまり、第一アクチュエーター100を駆動することにより、前記車体12をアーム支持部102の中心軸を中心にして、前方側車輪21、22に対して相対的に回動させることが可能である。これにより、車10の姿勢が基本姿勢から左右に傾いた姿勢に変化した場合、第一アクチュエーター100によって車体12の姿勢を起こすことが可能になる。ここで、車体12の姿勢を起こすとは、車10の姿勢が左右に傾いた姿勢になったことにより同じく左右に傾いた車体12の姿勢を、該車体12の左右方向が水平方向となる姿勢(以下、水平姿勢ともいう)に復帰させることである。
具体的に説明すると、例えば、車10が凸部を有する地面を走行している際、前方側車輪21、22のうちの一方の車輪が前記凸部に差し掛かると、前記車10の姿勢が左(右)に傾く。車10の姿勢が左(右)に傾くと、車体12の姿勢も左(右)に傾いた姿勢になる。さらに、上下方向において、前記一方の車輪がより上方に、他方の車輪がより下方に、それぞれ位置するようになる。このときに、第一アクチュエーター100を駆動すると、前記車体12がアーム支持部102の中心軸を中心にして、前方側車輪21、22に対して相対的に回動する。すなわち、前方側車輪21、22が地面に接触し続ける一方、車体12は、車10の正面から見て右回り(左回り)に該車10が傾いた分だけ回動させた位置に位置するようになる。これにより、車体12の姿勢が水平姿勢に復帰することとなる。
第二アクチュエーター200は、第一アクチュエーター100を介して前記車輪支持アーム40を支持するとともに、該車輪支持アーム40を後述の回動軸202を中心にして回動させるための機構である。この第二アクチュエーター200は、図4に示すように、前記ケーシング14の長手方向端部に取り付けられている。また、第二アクチュエーター200は、図5に示すように、駆動モータ201と、回動軸202と、駆動力伝達部203と、連結部204と、アクチュエーター保持部205とを有している。
駆動モータ201はDCサーボモータであり、該駆動モータ201が有する回転軸は、正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能である。回動軸202は、前記駆動モータ201からの駆動力により回動する軸であり、その軸方向は車の上下方向に沿っている。当該軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときには、Z軸方向に略平行である。
駆動力伝達部203は、連結部204との協働により、駆動モータ201からの駆動力を回動軸202に伝達するためのものである。この駆動力伝達部203は、図5に示すように、ベルトプーリー機構からなる。つまり、駆動モータ201の回転軸の回転が、該回転軸と直結した駆動プーリー203aからベルト203bを介して従動プーリー203cに伝達された後、該従動プーリー203cと直結した軸203dまで伝達される。この結果、駆動モータ201の回転軸の回転が減速されて前記軸203dに伝達され、該軸203dがその中心軸を中心にして回動するようになる。
また、従動プーリー203cと直結した軸203dと回動軸202とは連結部204により連結している。この連結部204によって、従動プーリー203cに直結された軸203dは、回動軸202と一体的に回動する。また、連結部204は、図5に示すように、ケーシング14の上壁に取り付けられている。
アクチュエーター保持部205は、前述したように、第一アクチュエーター100をケーシング14の上壁及び下壁の間に保持するためのものである。そして、アクチュエーター保持部205は、第一アクチュエーター100を保持することにより、該第一アクチュエーター100に支持された車輪支持アーム40を支持することになる。アクチュエーター保持部205は、図5に示すように、第一アクチュエーター100の駆動力伝達部106に取り付けられる。
また、アクチュエーター保持部205は、図5に示すように、上端部205aと、下端部205bと、を有する。アクチュエーター保持部205を第一アクチュエーター100の駆動力伝達部106に取り付けると、該駆動力伝達部106は前記上端部205a及び下端部205bの間に位置する。そして、アクチュエーター保持部205は、駆動力伝達部106に取り付けられた状態でケーシング14内に配置される。ケーシング14内では、上端部205aがケーシング14の上壁に対向し、下端部205bがケーシング14の下壁に対向する。また、上端部205aには、回動軸202を挿入するための挿入孔が設けられている。下端部205bには、後述する下軸207の軸部207aを嵌入するための嵌入孔が設けられている。
そして、アクチュエーター保持部205の上端部205aは、図5に示すように、回動軸202の先端部が前記挿入孔に挿入された状態で、該回動軸202に軸着された軸着部206にボルト止めされている。これにより、回動軸202が回動すると、軸着部206、及び、軸着部206に固定されたアクチュエーター保持部205も一体的に回動することになる。さらに、アクチュエーター保持部205に保持された第一アクチュエーター100、及び、該第一アクチュエーター100に支持された車輪支持アーム40も、回動軸202を中心にして回動することになる。
一方、アクチュエーター保持部205の下端部205bは、図5に示すように、下軸207の軸部207aが前記嵌入孔に嵌入された状態で、該下軸207の固定部207bにボルト止めされている。下軸207の軸部207aは軸受を介してケーシング14の下壁に回動自在に支持されている。そして、アクチュエーター保持部205が回動軸202を中心にして回動する際には、下軸207も該アクチュエーター保持部205と一体的に回動する。すなわち、下軸207は、アクチュエーター保持部205の回動を妨げることなく、該アクチュエーター保持部205の下端部205bを支持する。なお、当然ながら、回動軸202の軸中心と、下軸207の軸中心とは一致する。
以上のような構造を有する第二アクチュエーター200では、駆動モータ201が回転することにより回動軸202が回動する。そして、回動軸202が回動すると、アクチュエーター保持部205、該アクチュエーター保持部205に保持された第一アクチュエーター100、が前記回動軸202を中心にして回動する。この結果、図3に示すように、第一アクチュエーター100に支持された車輪支持アーム40が、回動軸202を中心にして回動する。なお、前述したように、駆動モータ201の回転軸は正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能であるため、車輪支持アーム40は、回動軸202を中心にして正回動方向及び逆回動方向のいずれにも回動可能である。
そして、車輪支持アーム40が回動軸202を中心にして回動する結果、前方側車輪21、22の各々が前後移動するようになる。より正確に説明すると、例えば、車輪支持アーム40が車10の上方から見て反時計回りに回動したときには、図3に示すように、前方側車輪21、22のうちの車輪22が前方位置に移動し、車輪21が後方位置に移動する。
このような前方側車輪21、22の各々の前後移動により、該前方側車輪21、22の各々の回転軸方向が変化する。具体的に説明すると、当該回転軸方向は、車10が直進走行しているときには、Y軸方向に略平行である。そして、第二アクチュエーター200が作動すると、前記回転軸方向は、Y軸方向に対して傾くようになる。この結果、車10の走行方向が変わることになる。このような意味で、第二アクチュエーター200、210は、車10の走行方向を変えるための機構、すなわち、ステアリング機構とも言える。なお、本実施形態では、図3に示すように、第二アクチュエーター200を駆動することによって、前記回転軸方向がY軸方向に対して最大約50度傾くまで車輪支持アーム40を回動させることが可能である。
第三アクチュエーター300は、前述した2つの台支持アーム18を支持するとともに、該2つの台支持アーム18、及び、該2つの台支持アーム18に支持された載置台16を、後述の回動軸304を中心にして回動させるための機構である。この第三アクチュエーター300は、図4に示すように、前記ケーシング14の長手方向中央部にて該ケーシング14内に収容されている。また、第三アクチュエーター300は、図4に示すように、駆動モータ302と、回動軸304と、駆動力伝達部306とを有している。
駆動モータ302はDCサーボモータであり、該駆動モータ302が有する回転軸は、正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能である。回動軸304は、駆動モータ302からの駆動力によりに回動する軸であり、その軸方向は車の左右方向に沿っている。なお、当該軸方向は、車10の姿勢が基本姿勢であるときには、Y軸方向に略平行である。この回動軸304の両端部は、ケーシング14の側壁を貫通している。そして、回動軸304の、ケーシング14の側壁を貫通した部分に、前記台支持アーム18の下端部が固定支持されている。したがって、回動軸304が回動する際には、前記台支持アーム18が一体的に回動することになる。
駆動力伝達部306は、駆動モータ302の駆動力を回動軸304に伝達するためのものである。この駆動力伝達部306は、複数のギア(不図示)を有し、駆動モータ302の回転軸の回転を減速して回動軸304に伝達する。そして、駆動モータ302からの駆動力が回動軸304まで伝達されると、該回動軸304が回動する。
以上のような構造を有する第三アクチュエーター100では、駆動モータ302が回転すると、回動軸304が、該回動軸304に支持された2つの台支持アーム18と一体的に回動する。これにより、載置台16が回動軸304を中心にして回動する。なお、前述したように、駆動モータ302の回転軸は正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転可能であるため、台支持アーム18及び載置台16は、回動軸304を中心にして正回動方向及び逆回動方向のいずれにも回動可能である。
そして、載置台16が回動軸304を中心にして回動する結果、該載置台16の状態が水平方向に対して前後に傾斜した傾斜状態となったときに、該載置台16の状態を前記傾斜状態から非傾斜状態に復帰させることが可能になる。ここで、非傾斜状態とは、載置台16の長手方向が水平方向となる状態を意味する。
具体的に説明すると、車10の姿勢が基本姿勢から前後に傾いた姿勢に変化すると、車体12の姿勢も前後に傾いた姿勢となる。このため、載置台16の状態が非傾斜状態(より正確には、水平である状態)から傾斜状態に変化する。このときに、第三アクチュエーター300を駆動すると、載置台16が回動軸304を中心にして、ケーシング14に対して相対的に回動する。すなわち、ケーシング14の状態を傾斜状態に維持したまま、載置台16を、車10が傾いた向きとは反対の向きに該車10が傾いた分だけ回動させた位置、に位置させることが可能になる。これにより、載置台16の状態を傾斜状態から非傾斜状態に復帰させることが可能になる。
<<車の制御構成>>
次に、車10の制御ユニットの構成について図6を用いて説明する。図6は、車10の制御ユニットを示すブロック図である。なお、図6では、第一アクチュエーター100、110、第二アクチュエーター200、210、及び、モータ31、32、33、34について、車10の前方側に位置したものをまとめて前方ユニットと表記し、後方側に位置したものをまとめて後方ユニットと表記している。また、同図では、モータ31、32、33、34について、車10の正面から見て右側に位置したモータ31、33を右側モータと表記し、左側に位置したモータ32、34を左側モータ32、34と表記している。
車10の制御ユニットは、図6に示すように、制御部としてのコントローラ400を有する。このコントローラ400は、CPU402と、メモリ404と、制御回路406とを有し、車10の走行方向や車体12の姿勢等を制御する。CPU402は、車10全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ404は、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。
そして、コントローラ400は、CPU402がメモリ404に格納されているプログラムを実行することにより、制御回路406を介して、第一アクチュエーター100、110、第二アクチュエーター200、210、第三アクチュエーター300、及び、モータ31、32、33、34を制御する。なお、前述したように、2つの第一アクチュエーター100、110が備えられており、コントローラ400は、該2つの第一アクチュエーター100、110をそれぞれ個別に制御する。同様に、コントローラ400は、2つの第二アクチュエーター200、210をそれぞれ個別に制御する。さらに、コントローラ400は、車輪毎に備えられたモータ31、32、33、34を該モータ毎に制御する。
また、車10の制御ユニットは、図6に示すように、車10の姿勢を監視するための姿勢センサ500を有する。この姿勢センサ500は、前記姿勢に応じた信号をコントローラ400に向けて出力する。本実施形態の姿勢センサ500は、加速度センサ及びジャイロセンサにより構成されている。また、本実施形態に係る姿勢センサ500は、第一センサ500aと第二センサ500bとを有する。第一センサ500aからの出力信号は、車10の姿勢が左右に傾いた姿勢に変化したときに変化する。第二センサ500bからの出力信号は、車10の姿勢が前後に傾いた姿勢に変化したときに変化する。
以上のような制御ユニットにより、車10は、姿勢センサ500によって該車10の姿勢が監視されながら、地面を走行する。そして、車10の走行中、該車10の姿勢が変化すると、前記姿勢センサ500からの出力信号が変化する。この姿勢センサ500の出力信号の変化に応じて、コントローラ400は、前方ユニット及び後方ユニットを制御する。これにより、車10が走行している間の車体12の姿勢が制御されることになる。
また、車10の姿勢が基本姿勢から前後に傾いた姿勢に変化した際には、第二センサ500bからの出力信号が変化し、当該出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車10の走行中における載置台16の状態が制御されることになる。
なお、本実施形態に係る姿勢センサ500は、車10の姿勢が変化した際、当該姿勢の変化が、前方側車輪21、22が地面の状況が変化する箇所(例えば、凸部や凹部)に差し掛かったことに起因したものであるのか、あるいは、後方側車輪23、24が上記箇所に差し掛かったことに起因したものであるのか、を判断する機能を有している。
さらに、本実施形態では、車10の制御ユニットが、姿勢センサ500とは異なるセンサを有する。このセンサ(以下、外界センサ510)は、例えば、車10が走行している地面の状況(例えば、凸部又は凹部の有無)を検知し、当該状況に応じた信号をコントローラ400に向けて出力する。外界センサ510からの出力信号は、コントローラ400が姿勢センサ500の出力信号の変化に応じて前方ユニット及び後方ユニットを制御する際に、補助的に用いられる。但し、これに限定されるものではなく、車10の制御ユニットが外界センサ510を有しないこととしてもよい。
===車の動作例===
上述したように、本実施形態の車10では、走行中に該車10の姿勢が変化すると、コントローラ400が姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じた制御を行う。具体的に説明すると、例えば、車10が凸部又は凹部を有する地面(所謂、不整地)を走行する場合に、該車10の車輪21、22、23、24が凸部や凹部に差し掛かると、該車10の姿勢が基本姿勢から傾いた状態に変化する。これに伴って、姿勢センサ500からの出力信号が変化する。このとき、コントローラ400が、当該出力信号の変化に応じて第一アクチュエーター100、110等を制御する。これにより、車体12の姿勢が制御されながら、車10は走行し続ける。
以下、不整地を走行する車10の動作例について、図7乃至図10を用いて詳しく説明する。
図7は、車10が凸部を有する地面を走行する際に前方側車輪21、22のうちの一方の車輪22のみが該凸部を通過するケース(第一ケース)について説明するための状態遷移図である。図8は、車10が凹部を有する地面を走行する際に一方の車輪22のみが該凹部を通過するケース(第二ケース)について説明するための状態遷移図である。図9は、車10が凸部を有する地面を走行する際に前方側車輪21、22の双方が該凸部を通過するケース(第三ケース)について説明するための状態遷移図である。図10は、車10が凹部を有する地面を走行する際に前方側車輪21、22の双方が該凹部を通過するケース(第四ケース)について説明するための状態遷移図である。
図7乃至図10の各図には、車10の状態の遷移を経時的に示している。また、各図には、各状態にある車10を該車10の上方側から見た図(左図)と、該車10の側面(より正確には、車10の正面から見て左側面)から見た図(中央図)と、該車10の正面から見た図(右図)と、が示されている。なお、図7乃至図10においては、車10の状態の遷移を明示的に表すために、該車10を模式的に示すこととし、該車10の一部(例えば、第一アクチュエーター100、110)についてはその表示を省略することとする。
<<第一ケースでの動作例>>
先ず、図7を参照しながら、第一ケースにおける車10の動作例について説明する。
最初の状態Aにおいて、車10は水平な地面を、図7にて白抜きの矢印にて示された方向に直進している。このとき、車10の姿勢は基本姿勢であるため、車体12の姿勢は水平姿勢であり、かつ、前後にも傾いていない姿勢(すなわち、車体12の前後方向が水平方向となる姿勢であり、以下、直立姿勢とも言う)である。したがって、載置台16は略水平になっている。そして、姿勢センサ500は、車10の姿勢が基本姿勢にあることを示す信号をコントローラ400に向けて出力する。
車10の直進方向において、前方側車輪21、22の車輪間隔(車10の左右方向における前方側車輪21、22の車輪間隔)よりも短い幅を有する凸部、がある場合、状態Aにある車10が直進走行し続けると、やがて、前方側車輪21、22のうちの一方の車輪22(車10の正面から見て左側の車輪)が前記凸部に差し掛かる。そして、当該一方の車輪22が前記凸部に差し掛かると、車10の姿勢が変化して、該車10の状態が状態Aから状態Bに遷移する。
より具体的に説明すると、前記一方の車輪22が凸部に差し掛かると、他方の車輪21(車10の正面から見て右側の車輪)が凸部より低い地面に接触したまま、該一方の車輪22が該凸部に乗り上がる。このため、車10が該車10の正面から見て右に(すなわち、状態Bを示す図中、右図にて矢印にて示す向きに)傾く。さらに、前記一方の車輪22が凸部に差し掛かり該凸部に乗り上がった際、後輪側車輪23、24の双方が該凸部より低い地面に接触したままである結果、車10が後傾する(すなわち、状態Bを示す図中、中央図にて矢印にて示す向きに傾く)。この結果、水平姿勢、かつ、直立姿勢であった車体12の姿勢が、車10の正面から見て右に傾き、かつ、後傾した姿勢に変化する。したがって、水平であった載置台16も、右に傾き、かつ、後傾した状態になる。
上記のように車10の姿勢が変化すると、姿勢センサ500は、車10の姿勢が変化後の姿勢にあることを示す信号を出力するようになる。すなわち、車10の姿勢の変化に伴い、姿勢センサ500からの出力信号が変化する。そして、コントローラ400が、前記出力信号の変化を受けて、車体12の姿勢及び載置台16の状態を制御する。具体的には、コントローラ400は、姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。この結果、車10の状態が状態Bから状態Cに遷移する。
より具体的に説明すると、前記凸部に一方の車輪22が差し掛かると、車10の姿勢が右に傾いた姿勢に変化するため、第一センサ500aからの出力信号が変化する。このとき、姿勢センサ500は、車10の姿勢の変化が前方側車輪21、22及び後方側車輪23、24のうち、前方側車輪21、22(より正確には車輪22)が凸部に差し掛かったことに起因したものであることを判断する。かかる判断の下、コントローラ400が、第一センサ500aからの出力信号の変化を受けて、前方側の第一アクチュエーター100を駆動する。また、コントローラ400は、変化後の前記出力信号から、車10が右に傾いたときの傾き角度(以下、車10が左右に傾いたときの傾き角度を、単に傾き角度と言う)を算出し、当該傾き角度から第一アクチュエーター100の制御量を決定する。そして、コントローラ400は、決定された制御量だけ第一アクチュエーター100を駆動する。これにより、車輪支持アーム40が、前記傾き角度分、車10の正面から見て時計回り(すなわち、状態Cを示す図中、右図にて矢印にて示す向き)に回動する。
この結果、車輪支持アーム40に支持された前方側車輪21、22のうち、一方の車輪22が上方に移動し、他方の車輪21が下方に移動する。換言すると、前方側車輪21、22の双方が地面に接触したまま、車体12が、車10の正面から見て反時計回りに前記傾き角度だけ回動させた位置に位置するようになる。これにより、車10の正面から見て右に傾いた車体12の姿勢を、水平姿勢に復帰させることが可能になる。
また、前記凸部に一方の車輪22が差し掛かると、車10の姿勢は後傾した姿勢に変化するため、第二センサ500bからの出力信号が変化する。コントローラ400は、第二センサ500bからの出力信号の変化を受けて、第三アクチュエーター300を駆動する。また、コントローラ400は、変化後の前記出力信号から、車10が後傾したときの傾き角度(以下、車10が前後に傾いたときの傾き角度を倒れ角度と言う)を算出し、倒れ角度から第三アクチュエーター300の制御量を決定する。そして、コントローラ400は、決定された制御量だけ第三アクチュエーター300を駆動する。これにより、台支持アーム18、及び、該台支持アーム18に支持された載置台16が回動軸304を中心にして、前記倒れ角度分、前側(すなわち、状態Cを示す図中、中央図にて矢印にて示す向き)に回動する。
この結果、載置台16の状態を、水平方向に対して後傾した傾斜状態から非傾斜状態に復帰させることが可能になる。さらに、第一アクチュエーター100により車体12の姿勢が水平姿勢に復帰されるため、載置台16は再び水平となる。
以上のように、姿勢センサ500により車10の姿勢の変化が検知されると、コントローラ400は、当該姿勢の変化に応じて第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を駆動する。また、コントローラ400は、車10の姿勢の変化(具体的には、傾き角度や倒れ角度の変化)から、第一アクチュエーター100や第三アクチュエーター300の制御量を決定するフィードバック制御を実行する。したがって、一方の車輪22が凸部に差し掛かってから該凸部の上面に到達するまでの間、車10の姿勢が変化する都度、コントローラ400は、前記制御量を決定して、該制御量だけ第一アクチュエーター100や第三アクチュエーター300を駆動する。この結果、一方の車輪22が凸部に差し掛かった後に車10が直進走行し続けると、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触したまま上方位置に位置した状態で前記凸部を通過するようになる。なお、他方の車輪21は、一方の車輪22が前記凸部に差し掛かった後にも、凸部よりも低い水平な地面に接触したまま該地面上を移動する。
状態Cにある車10が更に前方へ走行すると、一方の車輪22が凸部を下り始める。このとき、車10の姿勢が再び変化し、姿勢センサ500からの出力信号も変化する。このため、コントローラ400は、姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車輪支持アーム40が、車10の正面から見て反時計回り(すなわち、状態Dを示す図中、右図にて矢印にて示す向き)に回動する。換言すると、車体12が、前方側車輪21、22に対して相対的に、車10の正面から見て時計回りに回動する。また、台支持アーム18及び載置台16が回動軸304を中心にして後側(すなわち、状態Dを示す図中、中央図にて矢印にて示す向き)に回動する。
そして、一方の車輪22が凸部を下り始めてから該凸部を下り終えるまでの間、車10の姿勢が変化する都度、コントローラ400は、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300の制御量を決定し、該制御量だけ第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を駆動する。この結果、一方の車輪22が凸部を下り始めた後に車10が直進走行し続けると、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触しながら前記凸部を下りるようになる。そして、一方の車輪22が凸部を下り終えた時点で、車10の姿勢は、該一方の車輪22が凸部に差し掛かる前の姿勢に復帰する。つまり、車10の状態が状態Dに遷移する。
以上の一連の動作により、車10が凸部を有する地面を走行する際に一方の車輪22のみが該凸部を通過する場合、前記一方の車輪22が該凸部に差し掛かった後にも、車体12の姿勢が安定した状態で(具体的には、載置台16の状態が水平状態に維持しながら)、車10は走行することが可能になる。
なお、コントローラ400が前方側の第一アクチュエーター100を制御して前方側車輪21、22を上下移動させる際、該コントローラ400は、後方側の第一アクチュエーター110を制御して、後方側車輪23、24を前方側車輪21、22の上下移動に追動させることとしてもよい。あるいは、後方側の第一アクチュエーター110を制御せず、前方側の第一アクチュエーター100のみを制御することとしてもよい。
また、車10が直進方向に走行し続けると、後方側車輪23、24の一方の車輪24が凸部に差し掛かって再び車10の姿勢が変化する。このとき、コントローラ400は、姿勢センサ500の出力信号の変化に応じて、後方側の第一アクチュエーター110及び第三アクチュエーター300を制御することになるが、当該制御については、上述の内容と略同様であるためるため、説明を省略する。
<第二ケースでの動作例>>
次に、図8を参照しながら、第二ケースにおける車10の動作例について説明する。なお、第一ケースと説明が重複する部分については省略する。
状態Aにある車10が水平な地面を直進走行している際、直進方向前方に、前方側車輪21、22の車輪間隔よりも短い幅を有する凹部、がある場合、該車10が直進走行し続けると、やがて、前方側車輪21、22のうちの一方の車輪22が前記凹部に差し掛かる。当該一方の車輪22が前記凹部に差し掛かると、車10の状態が状態Aから状態Bに遷移する。つまり、車10が該車10の正面から見て左に傾き、かつ、前傾する。
上記のように車10の姿勢が変化すると、姿勢センサ500からの出力信号が変化する。このとき、車10の姿勢の変化が、前方側車輪21、22(より正確には車輪22)が凹部に差し掛かったことに起因したものであると判断される。かかる判断の下、そして、コントローラ400は、前記姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御するようになる。この結果、車10の状態が、状態Bから状態Cに遷移する。
具体的に説明すると、第一センサ500aからの出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第一アクチュエーター100を制御する。これにより、車輪支持アーム40が、車10の正面から見て反時計回りに、該車10が左に傾いたときの傾き角度だけ回動する。この結果、一方の車輪22が下方に移動し、他方の車輪21が上方に移動する。換言すると、車体12が、車10の正面から見て時計回りに前記傾き角度だけ回動させた位置に位置するようになり、該車体12の姿勢が水平姿勢に復帰する。また、第二センサ500bからの出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第三アクチュエーター300を制御する。これにより、台支持アーム18及び載置台16が、回動軸304を中心にして後側に、車10が前傾したときの倒れ角度だけ回動する。これにより、傾斜状態にある載置台16の状態が非傾斜状態に復帰する。さらに、車体12の姿勢が水平姿勢に復帰されるため、載置台16は再び水平になる。
そして、一方の車輪22が凹部に差し掛かってから該凹部の底面に到達するまでの間、車10の姿勢が変化する都度、コントローラ400は、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触したまま下方位置に位置した状態で前記凹部を通過する。なお、他方の車輪21は、一方の車輪22が前記凹部に差し掛かった後にも、凹部よりも高い水平な地面に接触したまま該地面上を移動する。
状態Cにある車10が更に前方へ走行し、一方の車輪22が凹部から上り始めるようになると、該一方の車輪22が該凹部を上り終えるまで、車10の姿勢が変化する都度、コントローラ400は、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触しながら前記凹部から上るようになる。つまり、車10の状態が状態Dに遷移し、該車10は直進走行し続ける。
以上の一連の動作により、該車10が凹部を有する地面を走行する際に一方の車輪22のみが該凹部を通過する場合、前記一方の車輪22が該凹部に差し掛かった後にも、載置台16の状態を水平に維持した状態で車10は走行し続けることが可能になる。
なお、第一ケースと同様、コントローラ400が前方側の第一アクチュエーター100を制御して前方側車輪21、22を上下移動させる際、後方側の第一アクチュエーター110を制御して後方側車輪23、24が前方側車輪21、22の上下移動に追動させることとしてもよく、あるいは、後方側の第一アクチュエーター110を制御せず、前方側の第一アクチュエーター100のみを制御することとしてもよい。
<<第三ケースでの動作例>>
次に、図9を参照しながら、第三ケースにおける車10の動作例について説明する。なお、第一ケース及び第二ケースと説明が重複する部分については説明を省略する。
状態Aにある車10が水平な地面を直進走行する際、該車10の直進方向前方に、車輪間隔より長い幅を有する凸部があると、前方側車輪21、22の双方が該凸部に差し掛かることにより、車10の姿勢が変化する。そして、前記双方が前記凸部に差し掛かると、姿勢センサ500からの出力信号が変化し、コントローラ400が当該出力信号の変化に応じて、車体12の姿勢及び載置台16の状態を制御する。
具体的に説明すると、第三ケースでは、先ず、前方側車輪21、22のうち、一方の車輪22が前記凸部に差し掛かることにより、車10の状態は状態Bに遷移し、該車10が、該車10の正面から見て右に傾き、かつ、後傾する。このように車10の姿勢が変化すると、姿勢センサ500からの出力信号が変化する。また、車10の姿勢の変化が、前方側車輪21、22が凸部に差し掛かったことに起因したものであると判断される。かかる判断の下、コントローラ400は、当該出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200と、第三アクチュエーター300とを制御するようになる。この結果、車10の状態が状態Bから状態Dまで遷移する。
より具体的に説明すると、第一センサ500aからの出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第一アクチュエーター100を制御する。これにより、車輪支持アーム40が、車10の正面から見て時計回りに、該車10が右に傾いたときの傾き角度だけ回動する。この結果、一方の車輪22が上方に移動し、他方の車輪21が下方に移動する。換言すると、車体12が、車10の正面から見て反時計回りに前記傾き角度だけ回動させた位置に位置するようになり、該車体12の姿勢が水平姿勢に復帰する。
そして、コントローラ400は、第一センサ500aからの出力信号の変化に応じて、第一アクチュエーター100とともに、第二アクチュエーター200を制御する。つまり、コントローラ400は、第一センサ500aからの出力信号の変化から、第二アクチュエーター200の制御量を決定し、当該制御量だけ該第二アクチュエーター200を制御する。これにより、車輪支持アーム40が、回動軸202を中心にして前記制御量に相当する回動量だけ回動する。このとき、車輪支持アーム40は、車10の上方から見て反時計回り(すなわち、状態Cを示す図中、左図にて矢印に示す向き)に回動する。この結果、一方の車輪22が前方(車10の進行方向においてより前方)に移動し、他方の車輪21が後方(前記進行方向においてより後方)に移動する。したがって、先に凸部に差し掛かった一方の車輪22が、先ず、該凸部を通過するようになる。
また、本実施形態のコントローラ400は、前方側の第二アクチュエーター200を制御する際に、前方側車輪21、22の各々に備えられたモータ31、32を該モータ毎に制御する。具体的には、前方側車輪21、22のうち、前方に移動させる一方の車輪22の回転速度を後方に移動させる他方の車輪21の回転速度よりも大きくさせるように前記モータ31、32を制御する。これにより、前方側車輪21、22の各々の前後移動を円滑に行うとともに、第二アクチュエーター200に掛かる負荷を軽減することが可能になる。
ところで、前述したように、前方側の第二アクチュエーター200を駆動すると、前方側車輪21、22の各々の回転軸方向が変化することにより、車10の走行方向が変化することになる。前方側車輪21、22の各々の回転軸方向が変化したときに車10が走行し続けるためには、後方側車輪23、24が前方側車輪21、22に追動する必要がある。すなわち、前方側の第二アクチュエーター200を駆動した場合、車10が走行し続けるためには、後方側の第二アクチュエーター210を駆動して、後方側車輪23、24のうちの一方の車輪24(すなわち、車10の正面から見て左側の車輪)を前方に、他方の車輪23(すなわち、車10の正面から見て右側の車輪)を後方に、それぞれ移動させる必要がある。また、後方側の第二アクチュエーター210を制御する際には、後輪側車輪23、24の各々に備えられたモータ33、34を該モータ毎に制御することにより、前方に移動させる一方の車輪24の回転速度を後方に移動させる他方の車輪23の回転速度よりも大きくさせることになる。
また、第二センサ500bからの出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第三アクチュエーター300を制御する。これにより、傾斜状態にある載置台16の状態が非傾斜状態に復帰し、さらに、車体12の姿勢が水平姿勢に復帰される結果、該載置台16は再び水平になる。
車10が以上までの動作を行うことにより、該車10の状態は状態Cに遷移する。すなわち、コントローラ400が第一センサ500aからの出力信号の変化に応じて第一アクチュエーター100、第二アクチュエーター200、及びモータ31、32を制御することにより、一方の車輪22が上方かつ前方に移動し、他方の車輪21が下方かつ後方に移動する。その後、車10は走行し続け、コントローラ400は、一方の車輪22が該凸部の上面に到達するまで、車10の姿勢が変化する都度、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触したまま上方位置に位置した状態で前記凸部を通過する。また、他方の車輪21は、前記一方の車輪22が凸部に差し掛かってから該凸部の上面に到達するまでの間、凸部に差し掛かることなく該凸部の手前に位置する。この結果、車10の状態は状態Cから状態Dに遷移する。
なお、本実施形態では、図9に示すように、第二アクチュエーター200、210が作動した結果、車10の進行方向が徐々に変化するものとして説明する。具体的には、車10の上方から見て左側に傾くように変化する。但し、後方側車輪23、24の前後移動の仕方(換言すると、後方側の第二アクチュエーター210の制御の仕方)によっては、車10の進行方向が変化せずに、車体12のみが横方向に動く可能性がある。
その後、状態Dにある車10が更に前方へ走行すると、他方の車輪21が凸部に差し掛かるようになり、該車10の状態が状態Eに遷移する。つまり、他方の車輪21が凸部に差し掛かることにより、車10の姿勢が、該車10の正面から見て、状態Dにあるときの姿勢から左に傾いた姿勢になる。この結果、車体12の姿勢は、車10の正面から見て、状態Dにあるときの姿勢(すなわち、水平姿勢)から左に傾いた姿勢となる。したがって、水平であった載置台16の状態も左に傾いた状態になる。さらに、載置台16の状態は、他方の車輪21が凸部に差し掛かることによって前傾した状態になる。
以上のように車10の姿勢が変化すると、当該姿勢の変化が前記他方の車輪21が凸部に差し掛かったことに起因したものと判断された上で、コントローラ400が、姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200と、第三アクチュエーター300と、モータ31、32とを制御する。このとき、コントローラ400は、後方側の第二アクチュエーター210及び後方側車輪23、24に備えられたモータ33、34についても制御する。この結果、車の状態が状態Eから状態Gに遷移する。
具体的に説明すると、コントローラ400は、姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200を制御する。これにより、車輪支持アーム40が、車10の正面から見て反時計回りに回動し、かつ、該車10の上方から見て時計回りに回動する。この結果、他方の車輪21が上方かつ前方に、一方の車輪22が下方かつ後方に、それぞれ移動する。したがって、車10から見て左に傾いた車体12の姿勢が、水平姿勢に復帰する。さらに、コントローラ400は、第三アクチュエーター300を制御する結果、載置台16は水平となる。
そして、車10が走行し続けると、一方の車輪22に続いて、他方の車輪21が凸部を通過するようになり、車10の状態が状態Eから状態Fに遷移する。この間、コントローラ400は、他方の車輪21が凸部に差し掛かってから該凸部の上面に達するまで、車10の姿勢が変化する都度、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定したまま、他方の車輪21が、一方の車輪22と同様に地面に接触したまま上方位置に位置した状態で前記凸部を通過するようになる。この結果、車10の状態は状態Gに変遷し、前方側車輪21、22の双方が凸部を通過するようになる。
その後、車10は走行方向を変えながら走行していき、最終的に、前方側車輪21、22が凸部に差し掛かる前の走行方向(すなわち、当初、車10が直進走行していたときの直進方向)に走行するようになる。これにより、車10の状態は状態Hに変遷し、該車10は前記直進方向に直進走行し続ける。
以上の一連の動作により、該車10が凸部を有する地面を走行する際に前方側車輪21、22の双方が該凸部を通過する場合、該双方が該凸部に差し掛かったときには、一方の車輪22に該凸部を通過させてから、他方の車輪21に該凸部を通過させるように車10は走行する。その際、車10は、載置台16を水平に維持したまま走行することが可能である。
<<第四ケースでの動作例>>
次に、図10を参照しながら、第四ケースにおける車10の動作例について説明する。なお、第一ケース乃至第三ケースと説明が重複する部分については、説明を省略する。
状態Aにある車10が水平な地面を直進する際、該車10の直進方向前方に、車輪間隔より長い幅を有する凹部があると、前方側車輪21、22の双方が該凹部に差し掛かることにより、車10の姿勢が変化する。これにより、姿勢センサ500からの出力信号が変化する。そして、コントローラ400が、姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、車体12の姿勢及び載置台16の状態を制御する。
具体的に説明すると、第四ケースでは、先ず、前方側車輪21、22のうち、一方の車輪22が先ず前記凹部に差し掛かることにより、車10の状態は状態Bに遷移し、該車10は、該車10の正面から見て左に傾き、かつ、前傾する。このとき、姿勢センサ500により、車10の姿勢の変化が、前方側車輪21、22が凹部に差し掛かったことに起因したものと判断されるとともに、前記姿勢センサ500からの出力信号が変化する。そして、上記の判断結果の下で、コントローラ400が、前記姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200と、第三アクチュエーター300とを制御する。この結果、車10の状態が状態Bから状態Dまで遷移する。
より具体的に説明すると、コントローラ400が、第一センサ500aからの出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200を制御する。また、このとき、コントローラ400は、第二センサ500bからの出力信号の変化に応じて、第三アクチュエーター300を駆動する。さらに、コントローラ400は、第二アクチュエーター200を制御する際に、前方側車輪21、22に備えられたモータ31、32を該モータ毎に制御するとともに、後方側の第二アクチュエーター210、及び、後方側車輪23、24に備えられたモータ33、34を該モータ毎に制御する。
これにより、車輪支持アーム40が、車10の正面から見て反時計回りに該車10が傾いたときの傾き角度だけ回動し、かつ、車10の上方から見て時計回りに回動する。この結果、一方の車輪22が下方かつ前方に移動し、他方の車輪21が上方かつ後方に移動する。また、載置台16の状態が非傾斜状態に復帰する。
したがって、車10の正面から見て左に傾いた車体12の姿勢が水平姿勢に復帰するとともに、載置台16が再び水平になる。また、車10が走行し続けることにより、先に凹部に差し掛かった一方の車輪22が、先ず、該凹部を通過するようになる。
以上までの動作により、車10の状態は状態Cに遷移する。その後、車10は走行し続け、コントローラ400は、一方の車輪22が該凹部の底面に到達するまで、車10の姿勢が変化する都度、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定したまま、一方の車輪22が地面に接触したまま下方位置に位置した状態で前記凹部を通過する。また、他方の車輪21は、前記一方の車輪22が凹部に差し掛かってから該凹部の底面に到達するまでの間、該凹部に差し掛かることなく該凹部の手前に位置する。この結果、車10の状態は状態Cから状態Dに遷移する。
その後、状態Dにある車10が更に前方へ走行すると、他方の車輪21が凹部に差し掛かるようになり、該車10の状態が状態Eに遷移する。つまり、他方の車輪21が凹部に差し掛かると、車10の姿勢が、該車10の正面から見て、状態Dにあるときの姿勢から右に傾いた姿勢になる。さらに、載置台16の状態は、他方の車輪21が凹部に差し掛かることによって後傾した状態になる。このとき、姿勢センサ500からの出力信号が変化し、コントローラ400が当該出力信号の変化に応じて、前方側の第一アクチュエーター100及び第二アクチュエーター200と、モータ31、32とを制御する。これにより、他方の車輪21が下方かつ前方に、一方の車輪22が上方かつ後方に移動する。また、コントローラ400は、前方側の第二アクチュエーター200を制御する際に、モータ31、32を該モータ毎に制御するとともに、後方側の第二アクチュエーター210及び後方側車輪23、24に備えられたモータ33、34を制御する。
これにより、車10から見て右に傾いた車体12の姿勢が水平姿勢に復帰し、載置台16が再び水平になる。そして、車10が走行し続けると、一方の車輪22に続いて、他方の車輪21も凹部に差し掛かる。この結果、車10の状態が状態Eから状態Fに遷移する。
その後、コントローラ400は、他方の車輪21が凹部に差し掛かってから該凹部の底面に達するまで、車10の姿勢が変化する都度、第一アクチュエーター100及び第三アクチュエーター300を制御する。これにより、車体12の姿勢が安定した状態で、他方の車輪21が、地面に接触したまま下方位置に位置した状態で前記凹部を通過するようになる。この結果、車10の状態は状態Gに遷移し、前方側車輪21、22の双方が凹部を通過するようになる。そして、車10は、前方側車輪21、22が凹部に差し掛かる前の走行方向に、再び直進走行するようになる。これにより、車10の状態は状態Hに遷移する。なお、第三ケースで述べたように、後方側車輪23、24の前後移動の仕方によっては、第二アクチュエーター200、210を駆動した場合であっても、車10の進行方向が変化せず、車体12のみが横方向に動くことがある。
以上の一連の動作により、該車10が凹部を有する地面を走行する際に前方側車輪21、22の双方が該凹部を通過する場合、該双方が該凹部に差し掛かったときには、一方の車輪22に該凹部を通過させてから、他方の車輪21に該凹部を通過させるように車10は走行する。その際、車10は、載置台16を水平に維持した状態で走行することが可能である。
===本実施形態の車の有効性について===
本実施形態の車10は、前方側車輪21、22及び後方側車輪23、24を備え、該前方側車輪21、22及び後方側車輪23、24が回転することにより走行可能な車である。そして、該車10は、長手方向両端部にて前方側車輪21、22及び後方側車輪23、24を回転可能に支持する車輪支持アーム40、42と、該車輪支持アーム40、42を回動させることにより該車輪支持アーム40、42に支持された車輪21、22、23、24を上下移動させるための第一アクチュエーター100、110と、車10の姿勢の変化に応じて前記第一アクチュエーター100、110を制御するコントローラ400と、を有する。この結果、走行中の車体姿勢の安定性をより向上させた車を提供することが可能になる。
すなわち、『発明が解決しようとする課題』の項で説明したように、従来から、車輪を上下移動させるための機構を備えた車が存在する一方で、当該機構の用途は限られたものであった。例えば、車輪を上下移動させる機構は車の走行中の振動を抑制するために用いられていた。
一方、車輪を上下移動させるための機構を、走行中の車体姿勢を安定させるために用いることが要求されている。また、走行中の車体姿勢の安定性については、車の性能として特に重要視されることがある。例えば、人を載せるための載置台16を備え、該載置台16に人を載せた状態で走行して該人を搬送する車である場合、走行中の車体姿勢が不安定であると、適切な搬送に支障を来たす虞がある。特に、上記の車が不整地を走行する場合には、車体姿勢が不安定になり易く、適切な搬送がより一層困難となる。
これに対し、本実施形態の車10では、車10の姿勢を姿勢センサ500により監視し、該姿勢センサ500からの出力信号が変化すると、当該出力信号の変化に応じて、コントローラ400が第一アクチュエーター100、110を制御することにより、前記車輪21、22、23、24を上下移動させる。このような車輪21、22、23、24の上下移動により、前述したように、車体12の姿勢を左右に傾いた姿勢から水平姿勢に復帰させることが可能になる。つまり、本実施形態では、上記構成により、車10の走行中における車体12の姿勢を能動的に制御することが可能になる。これにより、車体12の姿勢が安定した状態で走行可能な車、すなわち、走行中の前記姿勢の安定性をより向上させた車が実現されることになる。
以上により、本実施形態の車10において載置台16に人を載せた場合、走行中の車体姿勢の安定性が向上する結果、前記載置台16に載った人にとって乗り心地が良くなる。したがって、本実施形態の車10は、例えば、自力歩行することが困難な高齢者が移動する際の移動手段として好適である。また、載置台16に物を載せた場合には、該載置台16に載せられた物の積載状態が安定する。このため、本実施形態の車10であれば、該車10が不整地を走行する場合であっても、載置台16上の物を適切に運搬することが可能になる。
また、本実施形態の車10は、前述したように、車10の姿勢に応じた信号を出力するための姿勢センサ500を有していることとした。そして、コントローラ400は、当該姿勢センサ500からの出力信号の変化に応じて、第一アクチュエーター100、110等を制御することとした。これにより、車体12の姿勢を精度良く制御することが可能になる。
また、本実施形態の車10は、載置台16の状態が水平方向に対して前後に傾いた傾斜状態から非傾斜状態に復帰させるための第三アクチュエーター300を有することとした。そして、コントローラ400は、載置台16の状態が傾斜状態になると、第三アクチュエーター300を制御することとした。このように、コントローラ400が、車体12の姿勢とともに載置台16の状態を制御する結果、車10の走行中、載置台16が水平に維持されることになる。
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態には、主として、本発明の車について記載されているが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。