JP2009170368A - アルカリマンガン電池の製造方法 - Google Patents

アルカリマンガン電池の製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】アルカリ電解液の正極合剤への吸液を効果的に促進させることにより、アルカリ電解液の吸液量のばらつきの低減と吸液量の増大とを図って高い生産性で高容量のアルカリマンガン電池を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】電池ケース1内に複数個の筒状の正極合剤2A,2Bを互いに重ねた配置で挿入し、各正極合剤2A,2Bの内側に筒状セパレータ4を挿入したのち、筒状セパレータ4の内側の空間に規定量のアルカリ電解液7を注入する注液工程と、電池ケース1を収容したチャンバー23の内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに急激に大気開放する第1の吸液工程41と、第1の吸液工程41の終了後に、電池ケース1を収容したチャンバー23の内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに緩やかに大気開放する第2の吸液工程42とを有している。
【選択図】図5

Description

本発明は、アルカリマンガン電池の製造方法に関するものであり、より詳しくは、アルカリ電解液の吸液工程での正極合剤へのアルカリ電解液の吸液性を向上させて高い生産性で高容量のアルカリマンガン電池を製造できるように図ったものである。
近年、アルカリマンガン電池は、これを駆動電源として用いる携帯型電子機器やデジタルカメラなどの多機能化に伴って更なる高容量化が求められており、この傾向は今後も続くものと予想される。アルカリマンガン電池は電池構造が単純で内容積も限られているので、高容量化を達成するためには新素材の開発が必要となるが、単純な化学反応であることから、新素材の開発が困難であり、利用率の高い素材を活用するに留まっている。そこで、アルカリマンガン電池の高容量化を図るために、正極合剤の密度を高めて活物質を多く詰め込むとともにアルカリ電解液の注入量を増大させる方法が試みられている。
ところが、従来の低密度の正極合剤を用いる場合には、規定量のアルカリ電解液を注入したのち放置しておく自然吸液方式により、比較的短時間のうちに全てのアルカリ電解液が筒状セパレータおよび正極合剤に吸液されたが、高密度化された正極合剤はアルカリ電解液の吸液性が極めて悪い。この点について、図3を参照しながら説明する。図3(a)に示すように、アルカリマンガン電池では、電池ケース1内に複数個の筒状の正極合剤2A,2Bを充填し、この正極合剤2A,2Bの内側に、筒状セパレータ4および底部セパレータ3を配置したのち、底部セパレータ3と筒状セパレータ4とで囲まれたカップ状の比較的大きな容積を有する空間に規定量のアルカリ電解液7を一度に注入すると、1分後、2分後、3分後、4分後および5分後には、それぞれ図3(b)〜(f)に示すように、アルカリ電解液7が筒状セパレータ4および正極合剤2A,2Bに効率的に吸液されていくが、5分程度が経過した時点から吸液性が著しく悪くなる。
このように注入後から5分程度が経過した時点で吸液性が極端に低下するのは、後からゲル状負極を注入するための筒状セパレータ4の内側の比較的広い空間内に注入された規定量のアルカリ電解液7の液面が電池ケース1における長手方向の中程の位置となるため、筒状セパレータ4を介してアルカリ電解液7に接している下方の正極合剤2Bへはアルカリ電解液7が5分程度で迅速に吸液されるが、液面よりも上方の正極合剤2Aへの吸液が以下のように吸液メカニズムで行われるためである。すなわち、電池ケース1の底部に溜まったアルカリ電解液7は、多孔質の筒状セパレータ4により毛細管現象で吸い上げられて上方の正極合剤2A,2Bに吸液されていくが、5分程度が経過したときには、図3(f)に示すようにアルカリ電解液7の液面が極めて低くなるため、重力に抗して鉛直上方の高い位置まで吸い上げなければならなくなるので、筒状セパレータ4によるアルカリ電解液7の保液量が極端に低下する。そのため、規定量のアルカリ電解液7を高密度の正極合剤2A,2Bに自然吸液方式で吸液させるには、正極合剤2A,2Bの組成によっても異なるが、12時間ないし24時間もの長い放置時間が必要となり、生産性が著しく低下して到底実用化できない。
そこで、従来では、アルカリ電解液中に所定体積の中子状治具の全体またはその一部を挿入することにより、中子状治具の体積分だけアルカリ電解液の液面を上昇させて、上方側の正極合剤にも筒状セパレータを介してアルカリ電解液を接触させることにより、アルカリ電解液の上方側の正極合剤への吸液性の向上を図った吸液方法(特許文献1参照)が提案されている。また、従来では、筒状セパレータの内径寸法に相応した外径寸法を有し、且つ外周に多数の透孔を有する筒状ノズルを筒状セパレータ内に挿入して、ノズルの内部から各透孔を介しアルカリ電解液を外部へ吐出して筒状セパレータに吹き付けることにより、正極合剤へのアルカリ電解液の吸液を速めようと図った吸液方法(特許文献2参照)や、正極合剤を電池ケース内に装填する前に、正極合剤を予め80℃〜300℃の温度で加熱乾燥して内部の水分を完全に除去することにより、アルカリ電解液が含浸され易い状態にして正極合剤へのアルカリ電解液の吸液性を高めるように図った技術(特許文献3参照)が知られている。
特開平8−315832号公報 特開2002−231220号公報 特開平7−122265号公報
しかしながら、特許文献1〜3の吸液方法は、これらを試作して実験した結果、何れのものもアルカリ電解液を速い吸液速度で能率良く正極合剤に吸液させる効果が得られない。先ず、特許文献1の吸液方法は、アルカリ電解液の注入時から2〜3分が経過するまでの間は吸液量が増えるが、5〜6分が経過した後の吸液量は、中子状治具を用いない場合と同等程度となり、30分が経過するまで自然吸液状態に放置して吸液量を測定したが、吸液量は微増しただけであり、吸液性の向上が殆ど得られない。また、この吸液方法では、中子状治具を電池ケースから抜き出すときにアルカリ電解液も同時に持ち出され、生産に際し多くの中子状治具を必要とする上に、使用した中子状治具に付着しているアルカリ電解液を除去するための洗浄工程が必要となるなどの問題がある。
また、特許文献2のノズルを試作して実験した結果、ノズルの透孔からアルカリ電解液が吐出するのは1秒足らずの僅かな時間だけで、5〜6分が経過したときの注液量を測定したところ、例えば、注射針のようなノズルでアルカリ電解液を供給した後に自然放置した場合と同等程度であり、注液性向上の効果が殆ど得られない。しかも、ノズルの先端に液溜まりが出来て、注液量にばらつきが生じる欠点も見つかった。
さらに、特許文献3の技術は、電池の仕様によっては80℃以上の温度で加熱すると、電池特性が劣化するため、適用することができない。また、正極合剤は、成型するために水分が必要であるために予めKOH液を注入しており、このKOH液も電池反応に寄与するので、そのKOH液を乾燥して除去することは電池性能の低下を招く。
一方、従来から、電池の注液工程において電解液を効率的に吸液させるための有効な手段として、減圧吸液方式が広く知られている。この減圧吸液方式は、電解液を注入した多数の電池ケースを密閉されたチャンバーの内部に収容した状態で、チャンバー内部を所定の真空度まで減圧して電池ケース内の空気を排気し、そののちにチャンバーの内部を大気に開放することで生じる真空圧と大気圧との差圧を利用して、電解液を極板の活物質中に強制的に含浸させるように図ったものである。
ところが、この減圧吸液方式をアルカリマンガン電池の吸液工程に採用しても、吸液性の大きな向上が得られない。すなわち、アルカリマンガン電池の吸液工程では、図11に示したように、吸液後にゲル状負極を注入するための筒状セパレータ4内側の比較的広い空間に規定量のアルカリ電解液7の全てが注入されるが、この注入時から5分程度の時間経過後に、自然吸液方式により正極合剤2A,2Bに吸液されずに残った少量のアルカリ電解液7が上記広い空間における底部に溜まる状態となり、この底部に残存する少量のアルカリ電解液7が筒状セパレータ4を介して吸い上げられながら上方側の正極合剤2Aに吸液される。そのため、少量のアルカリ電解液7の液面から上方の正極合剤2Aまでの筒状セパレータ4を通じての浸透距離が長い上に、筒状セパレータ4を通じて鉛直上方へ浸透されていくアルカリ電解液7に重力が作用して上方へ円滑に浸透され難いので、筒状セ
パレータ4の保液性が低く、さらに、鉛直上方へ向け浸透されていくアルカリ電解液7に対し二つの正極合剤2A,2Bの境界個所が大きな流動抵抗となる。したがって、アルカリマンガンの製造に際しては、減圧吸液方式による吸液性向上が発揮され難い。
ところで、アルカリマンガン電池の吸液工程では、注入した規定量のアルカリ電解液の全てを正極合剤に含浸および筒状セパレータに保液させて、筒状セパレータの内側にアルカリ電解液が残存しないようにする必要がある。これは、筒状セパレータの内側に少量であってもアルカリ電解液が残存している場合、この状態でゲル状負極が注入したときに残存するアルカリ電解液7が筒状セパレータ4の底部に閉じ込められると、ゲル状負極のゲル面が高くなって筒状セパレータ4の上端部から零れ出て、電池としたときにショートが発生する。逆に、アルカリ電解液の比重がゲル状負極よりも小さいために分離が生じて、残存するアルカリ電解液が電池ケースの上部に浮き上がった場合には、浮き上がったアルカリ電解液が、電池ケース1の搬送中に飛び散ったり、電池ケースの開口近傍の封口個所に付着あるいは電池ケースの外側に溢れて汚染し、さらに、封口工程での加圧力によって漏液する不具合が生じるからである。さらに、アルカリ電解液7が残っていると、ゲル状負極を充填するノズルの先端が残存するアルカリ電解液で濡れるため、ゲル状負極がノズルに付着し易くなってゲル状負極がノズルから出終わるときの切れが悪くなる結果、ゲル状負極の充填量がばらついて規格外となる不具合が生じ易い。
そのため、アルカリマンガン電池では、アルカリ電解液の注入すべき規定量を少なめに設定して、注入したアルカリ電解液の全てを吸液させるのに必要な滞留時間が長くなるのを防止して生産性の向上を図り、且つ大きな滞留スペースを取らないように図っている。一般に、現存のアルカリマンガン電池では、吸液終了後の上方の正極合剤のアルカリ電解液の吸液量が下方の正極合剤よりも0.05g程度少ないのが実情である。このようにアルカリ電解液の注入量を少なめに設定した場合には、電池としての高負荷放電性能が低下する。
本発明は前記従来の課題に鑑みてなされたもので、アルカリ電解液の正極合剤への吸液を効果的に促進させることにより、アルカリ電解液の吸液量のばらつきの低減と吸液量の増大とを図って高い生産性で高容量のアルカリマンガン電池を製造することができる方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明のアルカリマンガン電池の製造方法は、電池ケース内に複数個の筒状の正極合剤を互いに重ねた配置で挿入し、前記各正極合剤の内側に筒状セパレータを挿入したのち、前記筒状セパレータの内側の空間に規定量のアルカリ電解液を注入する注液工程と、前記電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに急激に大気開放する第1の吸液工程と、前記第1の吸液工程の終了後に、前記電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに緩やかに大気開放する第2の吸液工程とを有していることを特徴としている。なお、ここで言う急激な大気開放とは、緩やかな大気開放に要する時間の半分以下の時間で大気開放することである。
請求項2に係る発明は、請求項1の発明における第1の吸液工程において、電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに急激に大気開放するのに加えて、前記チャンバー内部の所定圧力に加圧したのちに大気に戻すようにした。
請求項3に係る発明は、請求項2の発明における第1の吸液工程において、電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧した減圧状態から所定圧力
の加圧状態まで連続的に導いたのちに大気に戻すようにした。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3の何れの発明における第1の吸液工程に先立って、注液工程で注入されたアルカリ電解液が筒状セパレータおよび正極合剤に高効率に吸液される所定時間が経過するまでの間、電池ケースを放置してアルカリ電解液を自然吸液方式により前記筒状セパレータを介し前記正極合剤に吸液させる自然吸液工程を有している。
請求項1に係る発明によれば、第1の吸液工程において、減圧したのちに急激に大気に開放ようにしたので、正極合剤に含浸されているアルカリ電解液が、電池ケース内に急激に流入する空気によって衝撃的な力で押されることにより、正極合剤中の奥部に押し込まれる作用を受けるので、吸液量のばらつきを格段に低減することができ、さらに、第1の吸液工程のあとに、減圧状態から緩やかに大気開放する第2の吸液工程を行うことにより、吸液量の増大をも併せて図ることができる。これにより、従来のように緩やかな大気開放を繰り返す場合に比べて、吸液量のばらつきが低減して規定量よりも吸液量が不足する電池の発生を抑制できるので、アルカリ電解液の液飛びや漏液などの不具合を招くことがなく、さらに、平均吸液量の増大をも図ることもできる。
請求項2に係る発明によれば、第1の吸液工程において、急激な大気開放による吸液量のばらつき低減を図れるのに加えて、加圧により吸液量の増大を図ることができ、さらに、第2の吸液工程において、所定の真空度の減圧状態から緩やかに大気開放することで吸液量の一層の増大を図ることができる。
請求項3に係る発明によれば、第1の吸液工程において、所定の真空度の減圧状態から加圧状態まで連続的に導かれるので、一層急激な圧力変化が生じて、電池ケース内とチャンバー内部との間に大きな差圧が発生し、この大きな差圧によって正極合剤にアルカリ電解液液を強制的に吸液させる大きな力が作用するので、正極合剤が吸液し易い状況となるため、減圧状態から急激に大気開放されることによる吸液量のばらつきの低減と、加圧による吸液量の増大との二つの効果が一層大きくなる。また、続く第2の吸液工程において、所定の真空度の減圧状態から緩やかに大気開放することで、吸液量の一層の増大を図ることができる。
請求項4に係る発明によれば、減圧吸液を行う前に、電池ケース内のアルカリ電解液の相当量を筒状セパレータおよび正極合剤に予め吸液させることができ、減圧吸液工程での液飛び現象の発生を防止できる。
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。先ず、本発明の製造方法により製造するアルカリマンガン電池について、図1を参照しながら説明する。このアルカリマンガン電池は以下のような工程を経て製作される。すなわち、アルカリマンガン電池は、正極端子を兼ねる有底筒状の金属製電池ケース1の内側に沿って筒状に成型されたペレット状の二つの正極合剤2A,2Bが上下に重ねた状態で装填されたのち、電池ケース1における上方側の正極合剤2Aよりも上方の近傍個所に環状溝1aが形成される。
さらに、電池ケース1内には、正極合剤2A,2Bの内側に筒状セパレータ4が、且つ筒状セパレータ3の底部に底部セパレータ3がそれぞれ配置される。底部セパレータ3と筒状セパレータ4とで囲まれたカップ状の空間内には、規定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されて、このアルカリ電解液の全てが筒状セパレータ4を介して上下の正極合
剤2A,2Bに吸液され終わったのちに、空になった上記カップ状空間に、ゲル状電解液に亜鉛粉末状活物質を分散させた流動性を有するゲル状負極8が注入される。続いて、ゲル状負極8内に負極集電体9が挿入され、電池ケース1の上端開口部に封口板10が絶縁ガスケット11および絶縁ワッシャ12を介して嵌め込まれたのちに、電池ケース1の開口部近傍個所が内方へかしめ加工されることにより、電池ケース1の内部が密閉され、最後に電池ケース1の外周面に外装ラベル15が貼着される。このアルカリマンガン電池は、電池ケース1の下面の凸部が正極端子となり、封口板10が負極端子となる。
つぎに、本発明の第1の実施形態に係るアルカリマンガン電池の製造方法を具現化するための製造装置について、図2を参照しながら説明する。図2において、先ず、電池ケース1は、図3に示したように二つの正極合剤2A,2B、筒状セパレータ4および底部セパレータ3が挿入されたのち、開口近傍の所定個所に環状溝1aが加工され、その環状部の上部内面にピッチ(図示せず)が塗布されたのち、有底筒状の保持治具13に嵌入される。パレット14には、複数の保持治具13を摺動自在に嵌合させて鉛直の直立姿勢に保持する断面略U字形状の保持ガイド溝17が互いに平行な配置で複数列形成されている。保持ガイド溝17は、図における手前側の一端部において開口されて、電池ケース1が嵌入された保持治具13を順次嵌入させるための挿入口17aになっている。したがって、保持ガイド溝17には、保持治具13が挿入口17aから順次嵌入されていくことにより一列配置に並べられる。所定数の保持治具13が保持ガイド溝17に整列状態に保持され終わると、注液機構の注液ノズル16が、各電池ケース1の開口に向け下降されて、各電池ケース1内に規定量の電解アルカリ液7を注液する。
パレット14は、全ての保持ガイド溝17に保持している電池ケース1にアルカリ電解液7が注入され終わったときに、そのままの状態で次工程の減圧吸液工程に搬送され、この搬送中に電池ケース1内のアルカリ電解液7が図3で示した自然吸液方式によって筒状セパレータ4および正極合剤2A,2Bに吸液されていく。このとき、アルカリ電解液7が注入された電池ケース1は、保持治具13を介して保持ガイド溝17に保持されているので、ベルトコンベアで搬送される場合のように電池ケース1内のアルカリ電解液7が電池ケース1の開口から零れ出るおそれがない。
パレット14が減圧吸液工程まで搬送されて停止されると、チャンバー23が、実線で図示する待機位置から下降して、2点鎖線で示すようにパレット14の周縁上面に圧接される。このチャンバー23がパレット14上に圧接されたときには、チャンバー23の下端周面に取り付けられたシリコンゴムなどのシール部材18がパレット14との間で圧縮されることにより、チャンバー23の内部が密閉状態とされる。このチャンバー23とパレット14間のシール性は、シール部材18にグリースを薄く塗布しておけば、一層向上する。
チャンバー23には、真空吸引口24および大気開放口27が設けられている。真空吸引口24には、フレキシブル配管19を介して真空弁20および真空ポンプ21が接続されている。一方、大気開放口27は、大気開放用用電磁弁30および流量調整弁31が設けられたフレキシブル配管22を介して大気に連通されているとともに、フレキシブル配管22から分岐したフレキシブル配管32を介して加圧用電磁弁33、減圧弁34および空気供給源37が接続されている。これら真空弁20、真空ポンプ21、大気開放用用電磁弁30、流量調整弁31、加圧用電磁弁33、減圧弁34および空気供給源37は、コントローラ35が予め設定されたソフトプログラムを実行することにより作動制御される。
図4は本発明の後述する各実施形態に係るアルカリマンガン電池の製造方法を具現化する吸液工程の全体を簡略化して示したものである。この吸液工程は、大別すると、自然吸
液工程28と減圧吸液工程29とを有している。自然吸液工程28には、図2に示したパレット14を複数配列できるスペースを有している。各パレット14には、図2に示した保持ガイド溝17が複数列(この実施形態では4列の場合を例示)設けられている。これら各パレット14は、パレット14の幅に相当する所定のピッチP1で図の右方に向け間欠的に順次搬送されるようになっている。但し、電池供給機構38に対向する図の左端側に位置するパレット14は、パレット14の各保持ガイド溝17の配設間隔に相当する小さい所定のピッチP2で図の右方に向け間欠的に移送されるようになっている。パレット14の搬送手段としては、例えば、チェーンを回送させる方式またはローラーコンベア上をエアーシリンダで押す方式などを採用できる。
自然吸液工程28では、左端に位置するパレット14における電池供給機構38に対向する保持ガイド溝17上に、2個の正極合剤2A,2B、底部セパレータ3および筒状セパレータ4が挿入された電池ケース1が、図2の保持治具13に嵌入されて鉛直の直立姿勢で電池供給機構38から順次供給される。なお、本実施形態では、1パレットに4列の保持ガイドレール17を設けた構成を一例として図4に示したが、実際には、保持ガイドレール17を20〜40個の電池を並べることのできる程度の長さとし、1パレットに200〜400個を収容できるようにしたものが多用される。また、保持治具13には、嵌入された電池ケース1を吸着して確実に保持するためのマグネット(図示せず)が設けられている。一つの保持ガイドレール17上に所要個数の電池ケース1が並べ終わると、注液機構39が作動して、図2の注液ノズル16により各電池ケース1内に規定量のアルカリ電解液7がそれぞれ注入される。このとき、各電池ケース1が鉛直に直立されているので、アルカリ電解液7の注入が容易に行える。
続いて、パレット14が所定のピッチP2で図の右方に移送されて、次の保持ガイド溝17が電池供給機構38に対向し、この保持ガイド溝17に、上述したと同様に、所要個数の電池ケース1が供給され、これら各電池ケース1内に規定量のアルカリ電解液7が注入されたのち、パレット14が所定のピッチP2で図の右方に移送される。この工程を繰り返して、一つのパレット14の全ての保持ガイド溝17に電池ケース1が供給され、その電池ケース1にアルカリ電解液7が注入され終えたならば、そのパレット14が所定のピッチP1ずつ間欠的に図の右方に向け順次搬送されていく。電池ケース1にアルカリ電解液7が注入された時点から自然吸液工程28の最終段の位置まで電池ケース1が搬送されるのに要する時間は、図3で説明した自然吸液方式においてアルカリ電解液7が効率的に正極合剤2A,2Bに吸液される時間である5分に設定されている。
自然吸液方式によるアルカリ電解液7の効率的な吸液性を得られる限界時間である5分が経過したときに、パレット14を減圧吸液工程29に搬送して吸液されずに残存しているアルカリ電解液7を強制的に筒状セパレータ4および正極合剤2A,2Bに吸液させるようにしている。パレット14が減圧吸液工程29に搬送されると、図2で詳述したように、上方からチャンバー23が下降してパレット14の周縁上面に圧接されて、チャンバー23の内部が密閉状態に保持されたのち、真空弁20、真空ポンプ21、大気開放用用電磁弁31、流量調整弁31、加圧用電磁弁33、減圧別34および空気供給源37の何れかがコントローラ35により順次に作動制御されて、残存するアルカリ電解液7が筒状セパレータ4および正極合剤2A,2Bに強制的に吸液される。この減圧吸液工程29における吸液制御については後述する。
この減圧吸液が終了すると、チャンバー23が上昇して、パレット14がそのまま減圧注液工程29の次のポジションまで移送され、パレット14上にチャンバー23が下降して圧接し、上述したと同様の減圧吸液が実施される。この減圧吸液が複数のポジションで繰り返され、パレット14が減圧吸液工程29から送り出されて電池取出機構40に対向する位置に停止されると、電池取出機構40に対向している保持ガイド溝17上の各電池ケース1が電池取出機構40により取り出される。続いて、パレット14が1ピッチP2だけ移送されて次の保持ガイド溝17が電池取出機構40に対向され、その保持ガイド溝
17上の各電池ケース1が電池取出機構40に取り出され、これを繰り返してパレット14上の全ての電池ケース1が電池取出機構40に取り出される。
つぎに、上述した製造装置を用いて具現化した本発明に係るアルカリマンガン電池の製造方法の第1の実施形態における主要工程である吸液工程について説明する。図5は第1の実施形態の注液工程における時間とチャンパー23内部の真空度との関係を示す説明図である。この実施形態では、自然吸液工程28において、アルカリ電解液7が注入された各電池ケース1がセットされたパレット14を、自然吸液方式により効率的に吸液される限界時間である5分間の所要時間で搬送して、自然吸液方式で電池ケース1内のアルカリ電解液7を筒状セパレータ4および正極合剤2A,2Bに吸液させる。アルカリ電解液7の注入後から5分が経過して電池ケース1内のアルカリ電解液7が効率的に正極合剤2A,2Bに吸液された時点でパレット14が減圧吸液工程19に停止されると、チャンバー23が下降してパレット14上に圧接されて、減圧吸液工程29が開始される。
減圧吸液工程29では、第1の吸液工程41Aおよび第2の吸液工程42の順に行って、電池ケース1内に吸液されずに残存しているアルカリ電解液7を正極合剤2A,2Bに吸液させる。第1の吸液工程41Aでは、先ず、真空パンプ21が駆動されてチャンバー23内部の減圧が開始されて、真空弁20により−90Kpa程度の所要の真空度まで緩やかに減圧するよう制御される。所要の真空度に達すると、真空ポンプ21の駆動が停止され、且つ真空弁20が閉じられるとともに、大気開放用電磁弁30が開けられて真空チャンバー23内部が大気に開放される。この大気に開放する際には、流量調整弁が大きな開度に設定されて、チャンバー23内部が急激に大気に開放される。この大気に開放する速度は流量調整弁31に設定された開度によって制御される。第1の吸液工程41Aでは、緩やかに減圧したのちに急減に大気開放する第1基本吸液工程41Aaを複数回繰り返す。
第2の吸液工程42では、真空パンプ21が駆動されてチャンバー23内部の減圧が開始されて、真空弁20により−90Kpa程度の所要の真空度まで緩やかに減圧するよう制御される。所要の真空度に達すると、真空ポンプ21の駆動が停止され、且つ真空弁20が閉じられるとともに、大気開放用電磁弁30が開けられて真空チャンバー23内部が大気に開放される。この大気に開放する際には、流量調整弁が小さな開度に設定されて、チャンバー23内部が緩やかに急激に大気に開放される。この大気に開放する速度は流量調整弁31に設定された開度によって制御される。第2の吸液工程41Aでは、緩やかに減圧したのちに緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを複数回繰り返す。なお、第1基本注液工程41Aaにおける急激な大気開放とは、緩やかな大気開放の所要時間T2の半分以下の所要時間T1で大気開放することを言う。具体的には、4秒以下の所要時間で大気開口することを急激とし、10秒以上の所要時間で大気開放することを緩やかとする。
減圧吸液工程29におけるチャンバー23の設置台数は、製造すべきアルカリマンガン電池の吸液性によって決まるが、6〜8台程度となる。例えば、チャンバー23を8台設置する場合には、4〜5台のチャンバー23で第1の吸液工程41Aを行い、残りの3〜4台のチャンバー23で第2の吸液工程42を行う。
この第1の実施形態の吸液プログラムでは、緩やかに減圧したのちに急激に大気開放する第1の吸液工程41Aを設けていることにより、正極合剤2A,2Bへのアルカリ電解液の吸液量のばらつきを格段に減少させることができる。この点について以下に詳述する。減圧状態時には、正極合剤2A,2Bから排出された空気が筒状セパレータ4を通過しながら排気されるが、その空気の一部が、筒状セパレータ4を電池ケース1の内方側へ押して正極合剤2A,2Bと筒状セパレータ4の間からも排気される。そのため、筒状セパレータ4が正極合剤2A,2Bに密着できず、正極合剤2A,2Bに対しアルカリ電解液7の効率的な吸液が行われない。
つぎに、大気開放される際には、正極合剤2A,2Bが減圧状態になっているため、この正極合剤2A,2Bに筒状セパレータ4が密着する。多くのアルカリ電解液7を保液する筒状セパレータ4は、電池ケース1内に流入した大気により正極合剤2A,2Bにさらに押し付けられて、筒状セパレータ4に保液されていたアルカリ電解液7が正極合剤2A,2Bに吸液される。このとき、第1の吸液工程41Aのように急激に大気開放すると、筒状セパレータ4に保液されていた多くのアルカリ電解液7の一部が、電池ケース1内に急激に流れ込む空気によって電池ケース1の底部に払い落とされてしまい、正極合剤2A,2Bへのアルカリ電解液7の吸液量が減少する。このように急激に大気開放した場合には、筒状セパレータ4の上部が空気の流入によって震えのが目視でも確認できる。
そこで、従来の減圧吸液工程では、減圧状態から緩やかに大気に開放する吸液工程を複数回繰り返して、吸液効率の向上を図っている。この吸液効率が向上するのは、高密度でアルカリ電解液7が含浸し難い正極合剤2A,2Bに対してアルカリ電解液7を押し込むのに要する時間を費やして緩やかに大気開放しているからであると思われる。その反面、減圧状態から緩やかに大気に開放する吸液工程を繰り返す場合には、十分に吸液された電池と規定量まで吸液されていない電池とが生じる。この吸液量のばらつきは以下のような原因で発生するものである。
すなわち、正極合剤2A,2Bは、芯材のような骨格を持たず、粉体を高加圧で押し固めたものであり、このような2個の正極合剤2A,2Bを電池ケース1内に挿入したのちに、1.2トンでさらに加圧するため、電池正極合剤2A,2Bがケース1の内周面に密着して、アルカリ電解液7は電池正極合剤2A,2Bに対し内側からしか吸液されない。この状態での吸液時の正極合剤2A,2Bの吸液量には、アルカリ電解液7の正極合剤2A,2Bの内側からの吸液状態の相違や、正極合剤2A,2B中の密度分布または水分分布の相違に起因してばらつきが生じる。実用工程では、規定量よりも吸液量が不足する電池が生産ラインで発生すると、アルカリ電解液7の液飛びや漏液などの不具合を招く問題が生じる。
上述のような吸液量のばらつきは、第1の吸液工程41Aにおいて、減圧したのちに急激に大気に開放することで格段に低減することができる。これは、正極合剤2A,2Bに含浸されているアルカリ電解液7が、電池ケース1内に急激に流入する空気によって衝撃的な力で押されることにより、正極合剤2A,2B中の奥部に押し込まれる作用を受けるものであると思われる。この吸液量のばらつきの低減効果を得るためには、大気開放時間T1を3秒以下、好ましくは2.5秒以下に設定するのがよい。第1の吸液工程41Aでは、吸液量のばらつきの低減効果が得られる反面、上述のように吸液量の増大を図ることができない。そこで、第1の吸液工程41Aのあとに、減圧状態から緩やかに大気開放する第2の吸液工程42を行うことで、吸液量の増大をも併せて図ることができる。例えば、減圧吸液工程29において8回減圧する場合には、前半の4回を第1吸液工程41Aを適用し、後半の4回に第2吸液工程42を適用すれば、従来のように8回の全てにおいて緩やかに大気開放するのに比べて、吸液量のばらつきが低減して規定量よりも吸液量が不足する電池の発生を抑制できるので、アルカリ電解液7の液飛びや漏液などの不具合を招くことがなく、さらに、平均吸液量の増大をも図ることもできる。
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は第2の実施形態の注液工程における時間とチャンバー23内部の真空度との関係を示す説明図である。この実施形態において第1の実施形態と相違するのは、減圧吸液工程29の第1の吸液工程41Bにおいて、所定の真空度まで減圧したのちに急激に大気開放し、続いて、50〜100Kpa
の圧力で加圧したのち大気に戻す第1基本吸液工程41Baを複数回繰り返す工程を有することだけである。すなわち、この第2の実施形態の第1の吸液工程41Bは、第1の実施形態における第1の吸液工程41Aにおいて所定の真空度まで減圧したのちに急激に大気に開放する第1基本吸液工程41Aaのうちの一部を加圧に置換して、減圧後の急激な大気開放と加圧とを交互に繰り返すようにしたものである。この加圧は、図2の加圧用電磁弁33を開いて空気供給源37からチャンバー23内部に空気を送り込むことで行われ、その加圧する際の圧力は、減圧弁34で設定される。この加圧を採用したのは、以下のような理由によるものである。
所定の真空度に減圧したのちに急激に大気開放することによる効果は、正極合剤2A,2B中の吸液困難な個所にアルカリ電解液7を強制的に送り込むことであると思われるので、それならば、急激な大気開放に代えて加圧しても同様な効果が得られるものと考えられる。そこで、実験を行った結果、加圧した場合には、吸液量にばらつきが生じるが、時間当たりの吸液量が増大した。この吸液量が増大する効果は、減圧状態から大気開放したのち加圧することによる急激な圧力変化によって正極合剤2A,2B中にアルカリ電解液7が含浸していく進入経路を拡げられるか、正極合剤2A,2Bにおける含浸し難い狭隘な個所にアルカリ電解液7を強制的に押し込むことにより得られるものと思われる。20Kpa〜200Kpaの圧力に設定して加圧する実験を行った結果、圧力が高い程、吸液量が増加する傾向がある。しかし、多数の電池ケース1において同時に吸液を行う場合には、容積の大きなチャンバー23が必要となって加圧に耐えられなくなるので、実用上は50〜100Kpaあたりが限界であると考えられる。
この第2の実施形態では、減圧吸液工程29における第1の吸液工程41Bにおいて、急激な大気開放による吸液量のばらつき低減と加圧による吸液量の増大とを交互に図ることができ、続く第2の吸液工程42において、所定の真空度の減圧状態から緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを複数回繰り返すことで、吸液量の増大を十分に図ることができる。そのため、この第2の実施形態は、製造工程においてアルカリ電解液7が吸液され難い正極合剤2A,2Bが混入していても、吸液量が規定量よりも不足する不良電池が生じるのを効果的に抑制することができる。
つぎに、本発明の第3の実施形態について説明する。図7は第3の実施形態の注液工程における時間とチャンパー23内部の真空度との関係を示す説明図である。この実施形態において第1の実施形態と相違するのは、減圧吸液工程29の第1の吸液工程41Cにおいて、所定の真空度まで減圧したのちに急激な大気開放を経て連続的に50〜100Kpaの圧力で加圧状態とし、その加圧後に大気に戻す第1基本吸液工程41Caを複数回繰り返す工程を有することだけである。すなわち、所定の真空度まで減圧したのちに、図2の真空ポンプ21の作動を停止し、且つ真空弁20を閉じる同時に、大気開放用電磁弁30と加圧用電磁弁33とを共に開くように制御する。所定の真空度の減圧状態から加圧状態に達するまでの所要時間は、短い方が好ましく、例えば2〜3秒に設定する。そのために、減圧弁34は100〜200Kpaの圧力を加えられるように設定する。この場合には、チャンバー23をエアーシリンダまたは油圧シリンダを用いてパレット14に押し付けるようにしておけば、チャンバー23が僅かに浮き上がってパレット14から離間し、パレット14とシール部材18との隙間から空気が漏れるので、チャンバー23の内部が一定圧力以上に上がらない。
この第3の実施形態では、所定の真空度の減圧状態から加圧状態まで連続的に導かれるので、第2の実施形態よりもさらに急激な圧力変化が生じて、電池ケース1内とチャンバー23内部との間に大きな差圧が発生し、この大きな差圧によって正極合剤2A,2Bにアルカリ電解液液7を強制的に吸液させる大きな力が作用するので、正極合剤2A,2Bが吸液し易い状況となる。そのため、減圧状態から急激に大気開放されることによる吸液量のばらつきの低減と、加圧による吸液量の増大との二つの効果が一層大きくなる。続く第2の吸液工程42において、所定の真空度の減圧状態から緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを複数回繰り返すことで、吸液量の増大を十分に図ることができる。そのため、この第3の実施形態では、製造工程においてアルカリ電解液7が吸液され難い正極合剤2A,2Bが混入していても、吸液量が規定量よりも不足する不良電池が生じるのを一層効果的に抑制することができる。
上述した第1〜第3の各実施形態では、何れも自然吸液工程28を最初に実施してアルカリ電解液7を効率的に正極合剤2A,2Bに吸液させたのちに、減圧吸液工程29の第1の吸液工程41A,41B,41Cにおいて所定の真空度まで緩やかに減圧している。そのため、減圧時にアルカリ電解液7中に含まれる空気が膨張してアルカリ電解液7から飛び出す際にアルカリ電解液7を一緒に跳ね上げて電池ケース1の封口部分を濡らす、いわゆる液飛び現象が生じない。また、所定の真空度まで減圧するのに要する時間は以下のようにして設定すればよい。すなわち、正極合剤2A,2Bをアルカリ電解液7中に侵浸させた状態で減圧すると気泡が出てくるが、その出てくる気泡が大きなものから小さなものに変わるまでの時間を測定して、その測定時間を減圧に要する時間に設定すればよい。また、減圧吸液工程29における各第1の吸液工程41A,41B,41Cにおける第1基本吸液工程41Aa,41Ba,41Caの繰り返し回数は、正極合剤2A,2Bへのアルカリ電解液7の吸液量が限界値に近づいた回数を実験により求めて設定するのが好ましい。これは、上記限界値に近づくと、繰り返し回数を増やしても吸液量が微増するだけであるからで、大きな効果が得られない。
実施例1は、外径が14mmで、高さが50mmのアルカリマンガン電池を、本発明の製造方法を適用して試作して、注液性の評価試験を行ったものである。先ず、正極合剤2A,2Bは以下のようにして製作した。すなわち、二酸化マンガンと黒鉛とを90:10の重量比で混合し、この混合物とアルカリ電解液7とを100:3の重量比で混合して十分に攪拌したのち、フレーク状に圧縮成型して混合物ペレットを得た。アルカリ電解液7には、40重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用い、フレーク状の混合物ペレットを粉砕して粉末状にしたのちにふるいによって分級し、10〜100メッシュのものを中空円筒状に圧縮成形して正極合剤2A,2Bを得た。
2個の正極合剤2A,2Bを電池ケース1内に挿入したのち、1.2トンで加圧した。つぎに、正方形に切断された底部セパレータ3を正極合剤2A,2Bの中空部に挿入したのち、巻芯を用いて円筒状に3回巻回した筒状セパレータ4を正極合剤2A,2Bの中空部に挿入した。筒状セパレータ4は、イオンのみを透過させる微孔性フイルムとして再生セルロースを用い、この再生セルロースの両面に化学繊維からなる不織布をラミネートして、0.09mmの厚みに製作した。アルカリ電解液7は、33%のKOH水溶液で、1%のZnOを添加して、液比重を1.36g/cm2 (20℃)としたものを用いた。
このように電池ケース1に正極合剤2A,2B、底部セパレータ3、筒状セパレータ4を挿入した電池中間品を20セル分用意し、それぞれの重量を測定した。先ず、4セル分の電池中間品の各電池ケース1に、規格上上限となる1.83gのアルカリ電解液7をハイバーポンプを用いて注液したのち、6分間放置して、アルカリ電解液7を自然吸液方式で正極合剤2A,2Bに吸液させて、減圧装置にセットした。減圧装置は、38秒のタクトで減圧から大気開放または加圧するまでの一連の動作を何回でも繰り返すことが可能な構造になっている。そして、図8(a)に模式的に示すように、第1の実施形態で説明した所定の真空度まで減圧したのちに緩やかに大気開放する第2基本注液工程42aを14回繰り返した。この14回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、緩やかに大気開放する時間を約6秒に設定した条件で行った。
つぎに、減圧吸液が終了した各電池中間品に対し注射器を挿入して、吸液されずに電池ケース1の底部に残存しているアルカリ電解液7を吸い出した。この作業を一つの電池中間品に対し3回行い、電池ケース1内に残存しているアルカリ電解液7を全て吸い取るようにした。そののち、電池中間品の重量を再度測定して、その測定した重量からアルカリ電解液7を注液する前の電池中間品の測定重量を差し引くことにより、正極合剤2A,2Bによるアルカリ電解液7の吸液量を算出した。
つぎの4セル分の電池中間品に対して、上述と同様の方法で、図8(b)に模式的に示すように、自然吸液方式による吸液を6分間行い、続いて、第1の実施形態で説明した減圧状態から急激な大気開放を行う第1基本吸液工程41Aaを7回繰り返したのち、減圧状態から緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを7回繰り返した。この14回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、急激に大気開放する時間を約1.5秒、緩やかに大気開放する時間を約6秒に設定した条件で行った。
つぎの4セル分の電池中間品に対して、上述と同様の方法で、図8(c)に模式的に示すように、自然吸液方式による吸液を6分間行い、続いて、第2の実施形態で説明した減圧状態から急激に大気開放したのち加圧する第1基本吸液工程41Baを4回繰り返したのち、減圧状態から緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを6回繰り返した。この10回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、急激に大気開放する時間を約1.5秒、緩やかに大気開放する時間を約6秒に設定した条件で行った。
最後の4セル分の電池中間品に対して、上述と同様の方法で、図8(d)に模式的に示すように、自然吸液方式による吸液を6分間行い、続いて、第1の実施形態で説明した減圧状態から急激に大気開放する第1基本吸液工程41Aaを14回繰り返した。この14回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、急激に大気開放する時間を約1.5秒に設定した条件で行った。
上述の実験から図10に示す結果を得た。吸液量の平均値は、図8(a)〜(d)においてそれぞれ1.717g、1.736g、1.790gおよび1.666gであった。図8(a)のように減圧状態から緩やかな大気開放を14回繰り返した場合は、平均吸液量が多くなる反面、吸液量のばらつきが大きく、吸液量の少ないものが生じた。また、図8(d)のように急激な大気開放を14回繰り返した場合は、吸液量が最も少ないが、吸液量のばらつきが小さかった。この2種の相反する現象は、再現性が高く、正極合剤2A,2Bの組成や減圧回数が異なっても変わらない。
これに対し、図8(b)に示すように減圧状態から急激な大気開放と減圧状態から緩やかな大気開放とを組み合わせた場合は、図8(a)と図8(d)の各々の長所が合わさって、平均吸液量の大幅な増大は見込めないものの、正極合剤2A,2Bのアルカリ電解液7が吸液され難い個所への吸液が促進された結果、吸液量のばらつきが減少するともとに、緩やかな大気開放を繰り返す図8(a)の場合よりも吸液量が増大し、第1の実施形態で説明した効果が得られることが実証できた。また、この実験結果の吸液量のばらつきが低減し、且つ平均吸液量が増大する効果は再現性がある。また、図8(c)に示すように減圧状態から急激に大気開放したのちに加圧する場合は、加圧したことによって吸液量が最も多くなるとともに、吸液量のばらつきも格段に低減し、第2の実施形態で説明した効果が得られることが実証できた。
この実施例では、実施例1と同様の外径が14mmで、高さが50mmの形状を有するアルカリマンガン電池を本発明の製造方法によって試作して、注液性の評価試験を行ったものである。先ず、正極合剤2A,2Bは以下のようにして製作した。すなわち、二酸化マンガンと黒鉛とを90:10の重量比で混合し、この混合物とアルカリ電解液7とを100:3の重量比で混合して十分に攪拌したのち、フレーク状に圧縮成型して混合物ペレットを得た。アルカリ電解液7には、40重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用い、フレーク状の混合物ペレットを粉砕して粉末状にしたのちにふるいによって分級し、10〜100メッシュのものを中空円筒状に圧縮成形して正極合剤2A,2Bを得た。
2個の正極合剤2A,2Bを電池ケース1内に挿入したのち、1.2トンで加圧した。つきに、正方形に切断された底部セパレータ3を正極合剤2A,2Bの中空部に挿入したのち、巻芯を用いて円筒状に3回巻回した筒状セパレータ4を正極合剤2A,2Bの中空部に挿入した。筒状セパレータ4は、イオンのみを透過させる微孔性フイルムとして再生セルロースを用い、この再生セルロースの両面に化学繊維からなる不織布をラミネートして、0.09mmの厚みに製作した。このように電池ケース1に正極合剤2A,2B、底部セパレータ3、筒状セパレータ4を挿入した電池中間品を15セル分用意し、それぞれの重量を測定した。
つぎに、5セル分の電池中間品の各電池ケース1に、規格上上限となる1.83gのアルカリ電解液7をファイバーポンプを用いて注液したのち、6分間放置して、アルカリ電解液7を自然吸液方式で正極合剤2A,2Bに吸液させた。続いて、上記5セル分の電池中間品を減圧装置にセットした。減圧装置は、38秒のタクトで減圧から大気開放または加圧するまでの一連の動作を何回でも繰り返すことが可能な構造になっている。そして、図9(a)に模式的に示すように、第1の実施形態で説明した所定の真空度まで減圧したのちに緩やかに大気開放する第2基本注液工程42aを16回繰り返した。この16回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、緩やかに大気開放する時間を約10秒に設定した条件で行った。
続いて、減圧吸液が終了した各電池中間品に対し注射器を挿入して、吸液されずに電池ケース1の底部に残存しているアルカリ電解液7を吸い出した。この作業を一つの電池中間品に対し3回行い、電池ケース1内に残存しているアルカリ電解液7を全て吸い取るようにした。そののち、電池中間品の重量を再度測定して、その測定した重量からアルカリ電解液7を注液する前の電池中間品の測定重量を差し引くことにより、正極合剤2A,2Bによるアルカリ電解液7の吸液量を算出した。
つぎの5セル分の電池中間品に対して、上述と同様の方法で、図9(b)に模式的に示すように、自然吸液方式による吸液を6分間行い、続いて、第3の実施形態と同様に、−90Kpaの真空度の減圧状態から40Kpaの加圧状態まで連続的に導く第1基本吸液工程41Caを7回繰り返したのち、減圧状態から緩やかに大気開放する第2基本吸液工程42aを7回繰り返した。この14回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、減圧状態から加圧状態に導くまでの時間を2.5秒、40Kpaの加圧状態を維持する時間を約1秒、40Kpaの加圧状態から大気に戻すまでの時間を約0.5秒、緩やかに大気開放する時間を約10秒に設定した条件で行った。
つぎの5セル分の電池中間品に対して、上述と同様の方法で、図9(c)に模式的に示すように、自然吸液方式による吸液を6分間行い、続いて、第1の実施形態で説明した減
圧状態から急激に大気開放する第1基本吸液工程41Aaを16回繰り返した。この16回の吸液工程は、−90Kpaの真空度まで減圧する時間を約18秒、−90Kpaの真空度を維持する時間を約2〜3秒、急激に大気開放する時間を約2.5秒に設定した条件で行った。
上述の実験から図11に示す結果を得た。吸液量の平均値は、図8(a)〜(c)においてそれぞれ1.746g、1.754gおよび1.682gであった。図9(a)のように減圧状態から緩やかな大気開放を16回繰り返した場合は、平均吸液量が多くなる反面、吸液量のばらつきが大きく、吸液量の少ないものが生じた。一方、図9(c)のように急激な大気開放を16回繰り返した場合は、吸液量が最も少ないが、吸液量のばらつきも小さかった。この2種の相反する現象は、再現性が高く、正極合剤2A,2Bの組成や減圧回数が異なっても変わらない。
これに対し、図9(b)に示すように減圧状態から加圧状態に連続的に導く場合は、図9(a)と図9(c)の各々の長所が合わさって、平均吸液量の大幅な増大は見込めないものの、正極合剤2A,2Bのアルカリ電解液7が吸液され難い個所への吸液が促進された結果、吸液量のばらつきが減少するともとに、緩やかな大気開放を繰り返す図9(a)の場合よりも平均吸液量が増大し、第3の実施形態で説明した効果が得られることが実証できた。また、この実験結果の吸液量のばらつきが低減し、且つ平均吸液量が増大する効果は再現性がある。
この発明のアルカリマンガン電池の製造方法によれば、電池ケースを収容したチャンバー内部を減圧したのちに急激に大気に開放ようにしたので、正極合剤に含浸されているアルカリ電解液が、電池ケース内に急激に流入する空気によって衝撃的な力で押されることにより、正極合剤中の奥部に押し込まれる作用を受けるので、吸液量のばらつきを格段に低減することができ、続いて、減圧状態から緩やかに大気開放するようにしたので、吸液量の増大をも併せて図ることができるから、従来のように緩やかな大気開放を繰り返す場合に比べて、吸液量のばらつきが低減して規定量よりも吸液量が不足する電池の発生を抑制できるので、アルカリ電解液の液飛びや漏液などの不具合を招くことがなく、さらに、平均吸液量の増大をも図ることもできる。
本発明の製造方法により製造すべきアルカリマンガン電池を示す半部切断した縦断面図。 本発明の各実施形態の製造方法を具現化するための製造装置を示す斜視図。 (a)〜(f)は各実施形態の自然吸液工程における時間経過に伴うアルカリ電解液の吸液状態を順に示す縦断面図。 各実施形態における工程の全体を簡略化して示した説明図。 本発明の第1の実施形態の注液工程における時間とチャンバー内部の真空度との関係を示す説明図。 本発明の第2の実施形態の注液工程における時間とチャンバー内部の真空度との関係を示す説明図。 本発明の第3の実施形態の注液工程における時間とチャンバー内部の真空度との関係を示す説明図。 (a)〜(d)はそれぞれ本発明の実施例1の時間と真空度の関係を示す説明図。 (a)〜(c)はそれぞれ本発明の実施例2の時間と真空度の関係を示す説明図。 実施例1の(a)〜(d)の実験結果の吸液量を示す特性図。 実施例2の(a)〜(c)の実験結果の吸液量を示す特性図。
符号の説明
1 電池ケース
2A,2B 正極合剤
4 筒状セパレータ
7 アルカリ電解液
28 自然吸液工程
29 減圧吸液工程
41A,41B,41C 第1の吸液工程
42 第2の吸液工程

Claims (4)

  1. 電池ケース内に複数個の筒状の正極合剤を互いに重ねた配置で挿入し、前記各正極合剤の内側に筒状セパレータを挿入したのち、前記筒状セパレータの内側の空間に規定量のアルカリ電解液を注入する注液工程と、
    前記電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに急激に大気開放する第1の吸液工程と、
    前記第1の吸液工程の終了後に、前記電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに緩やかに大気開放する第2の吸液工程とを有していることを特徴とするアルカリマンガン電池の製造方法。
  2. 第1の吸液工程において、電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧したのちに急激に大気開放するのに加えて、前記チャンバー内部の所定圧力に加圧したのちに大気に戻すようにした請求項1記載のアルカリマンガン電池の製造方法。
  3. 第1の吸液工程において、電池ケースを収容したチャンバーの内部を所定の真空度まで緩やかに減圧した減圧状態から所定圧力の加圧状態まで連続的に導いたのちに大気に戻すようにした請求項2記載の請求項1記載のアルカリマンガン電池の製造方法。
  4. 第1の吸液工程に先立って、注液工程で注入されたアルカリ電解液が筒状セパレータおよび正極合剤に高効率に吸液される所定時間が経過するまでの間、電池ケースを放置してアルカリ電解液を自然吸液方式により前記筒状セパレータを介し前記正極合剤に吸液させる自然吸液工程を有している請求項1〜3の何れかに記載のアルカリマンガン電池の製造方法。
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