JP2009170018A - 対物レンズ、光ピックアップ及び対物レンズの設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数種類の光ディスクに対して適切な互換を実現するための位相構造を一方の面に設けて、収差等を発生させることなく光ビームを集光する対物レンズを提供する。
【解決手段】少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、収差を抑える輪帯状の位相構造11を有し、この位相構造11が、第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるための補正必要収差量を算出し、各凹部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、凹部の幅内における位置O,A,B,Cと所定の関係式から各凹部の高さを決定することにより得られた幅及び高さで形成された輪帯状の複数の凹部が、基準となる非球面形状SBに設けられるように、形成されている。
【選択図】図4
【解決手段】少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、収差を抑える輪帯状の位相構造11を有し、この位相構造11が、第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるための補正必要収差量を算出し、各凹部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、凹部の幅内における位置O,A,B,Cと所定の関係式から各凹部の高さを決定することにより得られた幅及び高さで形成された輪帯状の複数の凹部が、基準となる非球面形状SBに設けられるように、形成されている。
【選択図】図4
Description
本発明は、異なる複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられる対物レンズ、及びこれを用いた光ピックアップ、並びに対物レンズの設計方法に関する。
従来、情報信号の記録媒体として、波長785nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行うCD(Compact Disc)、波長650nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行うDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクや、さらに高密度記録を可能とするため青紫色半導体レーザ等による波長405nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行う光ディスク(以下、「高密度記録光ディスク」という。)が用いられ、この種の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うための光ディスク装置があり、この光ディスク装置には、光ディスクの半径方向へ移動され、この光ディスクに対して光ビームを照射する光ピックアップが設けられている。
このような光ピックアップは、使用波長等の異なる複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録や再生を行うこと、すなわち互換性を有することが望まれている。
光ピックアップにおいて、複数種類の光ディスク、複数の使用波長に対する互換性を持たせるためには、各光ディスクに対応した複数の対物レンズを備えるように構成することが考えられる。しかし、複数の対物レンズを備えた光ピックアップは、部品点数の増加、装置の大型化等の問題があった。
そのため、互換性を有する光ピックアップとして、複数の使用波長に対して共通の対物レンズを設けることが望まれている。そして、例えば使用波長や保護層厚等の異なる複数種類の光ディスクに対して共通の対物レンズを設ける場合には、それぞれの光ディスクに対して記録再生を行う際の、各種収差を補正する必要がある。
かかる共通の対物レンズを備え互換性を有する光ピックアップにおいて、各種収差を補正するための手法として、回折を用いる手法に加え、位相を設計することにより、非周期位相構造(Nonperiodical Phase Structures)(以下、「NPS」ともいう。)による位相シフトを用いる手法が知られている。すなわち、光源から出射され光ディスクに集光される光ビームの光路内に、例えば平板状で形状設計を行い所定の位相を付与する位相構造を有する平板状の光学素子を設けることにより、複数種類の光ディスク間の各種収差を補正し、互換性を実現するという方法が考えられる。かかる構成を有する光ピックアップは、この構成において互換性を実現するものであるが、さらに、部品点数の削減や構成の簡素化や小型化を図りたいという観点から、これらの位相構造を屈折レンズである対物レンズと別体にすることなく、対物レンズの一方又は両方のレンズ面上に位相構造を形成する所謂ハイブリッド型レンズへの要請が高まっている。
しかしながら、従来のレンズ面上に位相構造を設ける手法としては、回折を用いる手法においてごく一部に考えられているにすぎず、NPSによる位相シフトを用いる手法においては検討されていなかった(特許文献1参照)。また、その一方で、平板上で形状設計を行った位相構造を、そのままレンズ面上に設置するということも考えられるが、かかる構成としただけでは、レンズ通過後の波面が設計で狙う最適状態からずれが生じることとなり、意図しない収差の残留が発生してしまうという問題があった。
以上のように、対物レンズ等の屈折レンズのレンズ面に非周期の位相構造が設けられる所謂ハイブリッド型レンズの位相構造を設計することは、困難であり、すなわち、複数種類の光ディスクに対して互換を実現するための位相構造をレンズ面上に有する対物レンズにおいて、収差を良好に低減することは、困難であるという問題があった。
本発明の目的は、複数種類の光ディスクに対して適切な互換を実現するための位相構造が設けられることにより、収差等を発生させることなく光ビームを集光することができる対物レンズ及びこれを用いた光ピックアップ、並びに対物レンズの設計方法を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明に係る対物レンズは、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有し、上記位相構造は、上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状を決定し、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように上記位相構造で打ち消すための上記半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、上記補正必要収差量を式(1)で算出されるXで区切ることで各凹部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、上記各凹部毎に、上記凹部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凹部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凹部との交点を第2の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記非球面形状との交点を第3の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(2)を満たすように上記各凹部毎の高さを決定することにより得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された上記輪帯状の複数の凹部が、上記非球面形状に設けられるように、形成されている。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(1)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(2)
但し、式(1)及び式(2)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:正若しくは負の整数又は0、
CO:上記第4の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
OA:上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
BA:上記第3の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離
である。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(1)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(2)
但し、式(1)及び式(2)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:正若しくは負の整数又は0、
CO:上記第4の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
OA:上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
BA:上記第3の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離
である。
また、本発明に係る対物レンズは、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凸部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有し、上記位相構造は、上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状を決定し、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように上記位相構造で打ち消すための上記半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、上記補正必要収差量を式(3)で算出されるXで区切ることで各凸部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、上記各凸部毎に、上記凸部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凸部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凸部との交点を第2の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記凸部との交点を第3の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(4)を満たすように上記各凸部毎の高さを決定することにより得られた上記各凸部の幅及び高さで決定された上記輪帯状の複数の凸部が、上記非球面形状に設けられるように、形成されている。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(3)
CA+n1×AO−BO=λ1×m2 ・・・(4)
但し、式(3)及び式(4)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CA:上記第4の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
AO:上記第2の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
BO:上記第3の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離
である。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(3)
CA+n1×AO−BO=λ1×m2 ・・・(4)
但し、式(3)及び式(4)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CA:上記第4の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
AO:上記第2の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
BO:上記第3の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離
である。
また、この目的を達成するため、本発明に係る光ピックアップは、複数種類の光ディスクに対して少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを選択的に照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップにおいて、上記少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズを備える光ピックアップであり、この光ピックアップに用いる対物レンズとして、上述したようなものを用いたものである。
さらに、この目的を達成するため、本発明に係る対物レンズの設計方法は、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光するとともに、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有する対物レンズを設計する対物レンズの設計方法において、入力された上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状に基づいて、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量を算出するステップと、上記補正必要収差量を上述の式(1)で算出されるXで区切ることで各凹部の位置及び幅を算出するステップと、上記各凹部毎に、上記凹部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凹部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凹部との交点を第2の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記非球面形状との交点を第3の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、上述の式(2)を満たすように上記各凹部の高さを算出するステップと、上記各凹部の幅及び上記各凹部の高さと、上記非球面形状とから上記対物レンズの形状を算出するステップとを備える。
さらにまた、本発明に係る対物レンズの設計方法は、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光するとともに、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凸部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有する対物レンズを設計する対物レンズの設計方法において、入力された上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状に基づいて、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量を算出するステップと、上記補正必要収差量を上述の式(3)で算出されるXで区切ることで各凸部の位置及び幅を算出するステップと、上記各凸部毎に、上記凸部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凸部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凸部との交点を第2の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記凸部との交点を第3の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、上述の式(4)を満たすように上記各凸部の高さを算出するステップと、上記各凸部の幅及び上記各凸部の高さと、上記非球面形状とから上記対物レンズの形状を算出するステップとを備える。
本発明に係る対物レンズ及び光ピックアップは、その対物レンズの一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有することにより、収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することができ、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を実現する。
また、本発明に係る対物レンズの設計方法は、対物レンズの一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を算出することができ、かかる位相構造により収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することにより、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を可能とする対物レンズを設計することを実現する。
以下、本発明が適用された光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
本発明が適用された光ピックアップ1は、光記録媒体としての光ディスク2に対して情報の記録再生を行うものであり、この光ディスク2を回転操作する駆動手段としてのスピンドルモータ、この光ピックアップ装置1を光ディスク2の径方向に移動させる送りモータ等とともに光ディスク装置を構成する。そして、光ピックアップ1は、スピンドルモータによって回転操作された光ディスク2に対して保護層2a側から光を照射して情報の記録再生を行う。
ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が785nm程度の半導体レーザを用いたCD(Compact Disc)、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)等の光ディスクや、発光波長を655nm程度の半導体レーザを用いたDVD(Digital Versatile Disc)、DVD−R(Recordable)、DVD−RW(ReWritable)、DVD+RW(ReWritable)等の光ディスクや、さらに発光波長が短い405nm程度(青紫色)の半導体レーザを用いた高密度記録が可能なBD(Blu-ray Disc(登録商標))等の高密度記録光ディスクである。
以下では、例えば、光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置により情報の再生又は記録を行う光ディスク2として、保護層の厚さが0.6mmで波長650〜670nm程度の第1の波長の光ビームを記録再生光として使用するDVD等の第1の光ディスクと、保護層の厚さが1.2mmで波長760〜800nm程度の第2の波長の光ビームを記録再生光として使用するCD等の第2の光ディスクとからなる2種類の光ディスクを用いるものとして説明する。
尚、以下では、上述の第1及び第2の光ディスクを用いるものとして説明するが、本発明は、これに限られるものではなく、例えば、上述した第1及び第2の光ディスクに換えて、保護層の厚さが0.1mmで波長400〜410nm程度の光ビームを記録再生光として使用する高密度記録が可能な光ディスクを用いるように構成してもよく、さらに、上述した第1及び第2の光ディスクとともに、この高密度記録可能な光ディスクとからなる3種類の光ディスクを用いるように構成してもよい。すなわち、本発明は、上述の光ディスクのみならず光学的に記録及び/又は再生が可能な複数種類の光記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う光ピックアップを構成する対物レンズ、これを用いた光ピックアップ及び光ディスク装置にも適用される。
本発明を適用した光ピックアップ1は、図1に示すように、所定の第1の波長の光ビームを出射する第1の光源部3と、第1の波長よりも波長が長い第2の波長の光ビームを出射する第2の光源部4と、第1及び第2の光源部3,4から出射された光ビームの光路を合成する光路合成手段として第1のビームスプリッタ5と、第1のビームスプリッタ5で光路を合成された第1及び第2の波長の光ビームを対応する各光ディスク2の信号記録面に集光する対物レンズ8と、第1のビームスプリッタ5と対物レンズ8との間に設けられ、第1のビームスプリッタ5で光路を合成された第1及び第2の波長の光ビームの発散角を変換して略平行光とする発散角変換手段としてコリメータレンズ6と、コリメータレンズ6と対物レンズ8との間の光路上に設けられ、コリメータレンズ6により略平行光とされた往路の光ビームを対物レンズ8側に導くとともに、光ディスク2からの復路の光ビーム(反射光)の光路を、往路の光ビームの光路から分岐する光路分岐手段としての第2のビームスプリッタ7と、光ディスク2で反射された戻りの光ビームを検出する光検出器9と、光ディスク2で反射され第2のビームスプリッタ7で往路の光ビームから光路分岐された戻りの光ビームを光検出器9の受光部上に集光するマルチレンズ10とを備える。
第1の光源部3は、例えば、半導体レーザ等からなり、設計波長が660nm程度とする所定の第1の波長の光ビームを出射する第1の発光部を有する。第2の光源部4は、例えば、半導体レーザ等からなり、設計波長が785nm程度とする所定の第2の波長の光ビームを出射する第2の発光部とを有する。尚、第1及び第2の光源部3、4から出射される光ビームの波長は、これに限られるものではなく、例えば波長が405nm程度の波長の光ビームを出射するように構成してもよい。
また、ここでは、異なる波長の光ビームを出射する第1及び第2の出射部をそれぞれ異なる箇所に配置された複数の光源部3,4に設けるように構成したが、それぞれ同一箇所に配置された光源部に複数の出射部となる発光部を設けるように構成するようにしてもよい。その場合には、光路合成手段としての第1のビームスプリッタ5を設ける必要がない。
光路合成手段としての第1のビームスプリッタ5は、第1の光源部3から出射された第1の波長の光ビームを透過し、第2の光源部4から出射された第2の波長の光ビームを反射する光路合成面5aを有し、それぞれ入射した第1及び第2の波長の光ビームの光路を合成してコリメータレンズ6側に出射させる。
コリメータレンズ6は、第1のビームスプリッタ5と第2のビームスプリッタ7との間に配置され、通過する第1及び第2の波長の光ビームの発散角を変換する発散角変換手段として設けられ、第1及び第2の光源部3,4から出射され第1のビームスプリッタ5により光路を合成された第1及び第2の波長の光ビームの発散角を変換して略平行光にする。尚、コリメータレンズ6は、上述の配置に限られるものではなく、第1及び第2の波長の光ビームの出射部と対物レンズ8との間の光路上に配置されていればよい。
第2のビームスプリッタ7は、コリメータレンズ6と対物レンズ8との間に配置され、往路の光ビームを透過するとともに復路の光ビームを反射する光路分離面7aを有する。第2のビームスプリッタ7は、光路分離面7aにより第1及び第2の光源部3,4からの往路の光ビームを透過して対物レンズ8に導くとともに、光ディスク2で反射された復路の光ビームを反射してマルチレンズ10及び光検出器9側に導く。第2のビームスプリッタ7は、光ディスク2からの戻りの光ビームの光路を、コリメータレンズ6により略平行光とされ入射される往路の光ビームの光路から分岐する光路分岐手段として機能する。
対物レンズ8は、コリメータレンズ6により略平行光とされ第2のビームスプリッタ7を透過した光ビームを光ディスク2の信号記録面に集光させる。対物レンズ8の入射側には、図示しない開口制限手段が設けられ、この開口制限手段は、対物レンズ8に入射する各波長の光ビームの開口数を所望の開口数となるように開口制限を行う。ここで、第1の波長の光ビームは、第1の光ディスクに対応して開口数(NA)が0.6程度とされ、第2の波長の光ビームは、第2の光ディスクに対応して開口数(NA)が0.50程度とされる。
この対物レンズ8は、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状(以下、「基準非球面形状」ともいう。)に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部及び/又は突部(以下、「凸部」ともいう。)を設けるように、形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有している。
具体的には、対物レンズ8は、開口数(NA)が0.6程度とされたプラスチック製のレンズであり、その入射側の第1面8aが、上述したような基準非球面形状に対して複数の凹部及び凸部を設けるように形成された輪帯状の位相構造を有した形状とされ、その出射側の第2面8bが、非球面形状とされている。尚、ここでは対物レンズ8をプラスチック製のレンズとして構成したが、ガラス製やその他の材料により構成されたレンズにより構成するようにしてもよい。すなわち、この対物レンズ8は、その一方の面である出射側の第1面8aに、複数の光ディスクに対して波長及び保護層厚(基板厚)の差に起因する収差の発生を抑える位相構造が形成され、第1及び第2の光源部3,4から出射され、第1のビームスプリッタ5、コリメータレンズ6及び第2のビームスプリッタ7を経由して入射した第1及び第2の波長の光ビームをそれぞれ対応する第1、第2の光ディスクに対して集光する。この対物レンズ8の位相構造は、球面収差等の各収差を補正するための位相付与手段として機能するので、第1及び第2の光ディスクの波長及び保護層厚みの差に起因する球面収差等の各収差の発生を防止する。尚、ここでは、対物レンズ8の光源側の第1面8aに位相構造を設けるように構成したが、これに限られることなく、対物レンズの光ディスク側の第2面8bに、基準非球面形状に対して凹部及び/又は凸部を設けるように形成された輪帯状の位相構造を設けるように構成してもよい。
上述の位相構造は、第1面8aの光軸に直交する平面内における開口数(NA)が0.45程度、すなわち第2の光ディスクの開口制限NA2に対応した略円形状の領域の範囲内に設けられた第1の位相構造と、第1の位相構造の外側の領域であって、最外周が開口数(NA)が0.6程度、すなわち第1の光ディスクの開口制限NA1に対応した略円環状の領域の範囲内に設けられた第2の位相構造とからなる。ここで、第2の光ディスクの開口制限NA2内に設けられた第1の位相構造11は、後述のように、第1及び第2の光ディスクのフォーマットの違いにより発生する収差の補正用(以下、「フォーマット互換用」ともいう。)の位相構造であり、第2の光ディスクの開口制限NA2の外側で第1の光ディスクの開口制限NA1内に設けられた第2の位相構造は、後述のように、第1の波長に対する温度変化により発生する収差の補正用(以下、「温特補償用」ともいう。)の位相構造である。
フォーマット互換用の第1の位相構造11は、第1の波長の光ビームに収差を発生させないように決定された基準非球面形状SBに対して形成され、この基準非球面形状SBがそのままで形成されたとした場合に第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、第1の波長の光ビームには収差の影響がほとんど及ぼさないような幅WL及び高さ(深さ)HLで形成された輪帯状の複数の凹部が設けられているように形成されている。換言すると、第1の位相構造11が、基準非球面形状に対して半径方向に順次隣接した輪帯状の複数の凹部が設けられているように形成されることにより、その対物レンズ8の第1面8aの半径方向及び光軸方向を含む面の断面形状は、後述の図3に示すように、補正すべき収差に応じて、対物レンズ構成材料の基材側又は空気側に向けて所定の段差で形成される複数の段部を有するように、換言すると所定の段差で基材側に向けて掘り下げるように形成される段部や、空気側に向けて積み上げるように形成される段部を連続的に有するような形状とされている。尚、複数の凹部の幅WL及び高さHLは、後述のように凹部毎に適切な大きさとされている。このように、上述した各凹部のそれぞれが、1の位相構造を構成し、第1の位相構造11は、これらの複数の位相構造からなることにより、フォーマット互換の機能を有する。
より具体的には、第1の位相構造11は、第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、この基準非球面形状SBが形成されたとした場合に第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるようにこの第1の位相構造11で打ち消すための半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、図2に示すように、この補正必要収差量を式(5)で算出される位相差xのm1倍毎の閾値Xで区切ることで各凹部の半径方向の位置及び幅WLを決定し、対物レンズ8の光軸方向及び半径方向を含む断面において、この各凹部毎に、凹部の幅内の基準非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置Oとし、凹部が設けられなかったとすれば、第1の位置Oに入射した第1の波長の光ビームが対物レンズ8内を通過する直線と、凹部との交点を第2の位置Aとし、この第2の位置Aから光軸方向に伸ばした直線と、基準非球面形状SBとの交点を第3の位置Bとし、第1の位置Oから光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置Bから光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置Cとし、式(6)を満たすように各凹部毎の高さHLを決定することにより得られた各凹部の幅「WL」及び高さ「HL」で形成された輪帯状の複数の凹部が、基準となる非球面形状の基準面SBに対して設けられるように形成されている。尚、式(5)で示される閾値Xは、式(7)で示される位相差により算出されるものである。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(5)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(6)
x=λ1/(n1−1)・・・(7)
但し、式(5)〜式(7)中
λ1:第1の波長(μm)、
n1:対物レンズ8を構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:正若しくは負の整数又は0、
CO:第4の位置Cと第1の位置Oとを結ぶ直線の距離(μm)、
OA:第1の位置Oと第2の位置Aとを結ぶ直線の距離(μm)、
BA:第3の位置Bと第2の位置Aとを結ぶ直線の距離(μm)
である。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(5)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(6)
x=λ1/(n1−1)・・・(7)
但し、式(5)〜式(7)中
λ1:第1の波長(μm)、
n1:対物レンズ8を構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:正若しくは負の整数又は0、
CO:第4の位置Cと第1の位置Oとを結ぶ直線の距離(μm)、
OA:第1の位置Oと第2の位置Aとを結ぶ直線の距離(μm)、
BA:第3の位置Bと第2の位置Aとを結ぶ直線の距離(μm)
である。
ここで、上述の基準となる非球面形状SBは、第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面に収差を発生させないような形状とされている。また、補正必要収差量は、第1の位相構造11が設けられていない非球面形状SBとされたとした場合の第1面と、上述した第2面8bとを有する対物レンズに、第2の波長の光ビームが入射した場合に、第2の光ディスクの信号記録面に発生してしまう収差量を打ち消す図2中曲線L1で示すような収差量であり、すなわち、図2中曲線L2で示すような、この信号記録面に発生してしまう収差量の符号を反転させたものである。尚、図2中横軸は、半径方向の位置を示し、縦軸は、L2に対しては波面収差(λ)を示し、L1に対しては補正必要収差量(λ)を示すものである。
そして、図2に示すように、この曲線L1で示す補正必要収差量を、式(5)及び式(7)で示されるX(=x×m1)で区切ることにより、図3に示すような各凹部の半径方向の端部の位置Pnと、各凹部の幅WLnとを決定する。ここで、nは、正の整数(n=1,2,・・・,N−1,N,N+1,N+2,・・・)である。すなわち、図2に示すように、L1をX毎(例えば、−x,−2x,−3x,−4x)に区切ることにより、各凹部の位置P1,P2,・・・PN−1,PN+1,PN+2,・・・を決定し、この位置Pn間の距離を各凹部の幅WL1,WL2,・・・WLN−1,WLN,WLN+1,・・・を決定する。そして、図4に示すように、この各凹部の幅WLn内のそれぞれで、上述したような第1乃至第4の位置O,A,B,Cと、基準非球面形状の基準面SBに対する各凹部の光軸方向の高さHLnとを算出して決定している。尚、図4は、複数の凹部のうちの任意の一の凹部を選択して図示するものであり、上述及び以下の説明においてはこの幅WLnをWLとし、得られる高さHLnをHLとして説明する。
また、ここでは、各凹部の半径方向の位置及び幅が、補正必要収差量を式(5)のXで区切ることにより決定されて形成されるよう構成することで、第1の波長及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で分割し、さらに、各幅における凹部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されることで、後述のようなフォーマット互換性を実現するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、製造上の観点から所定の大きさに等分割したり、又は所定の大きさに分割して、さらに、後述のP−V値の観点により決定される位置及び幅となるように各凹部を形成するように構成してもよい。
また、ここでは、各凹部の高さを決定するための第1の位置Oは、図4に示すように、当該凹部の幅内の基準非球面形状SBの半径方向の中間位置とされている。第1の位置Oを中間位置に設定することで、得られた各凹部による収差の取れ残りを小さくすることができる。ここでは、第1の位置をこのように設定して各凹部を形成するように構成したが、これに限られるものではなく、第1の位置が、第1の位置を複数の箇所に設定した場合にそれぞれ得られる第1の位置と第2の位置とを結ぶ直線の傾きの平均の傾きと、当該第1の位置により得られる第2の位置とを結ぶ直線の傾きと、が同じ傾きとなるような位置とされて、得られた各凹部の幅及び高さで形成された複数の凹部が設けられるように形成されていればよい。
すなわち、これは、後述のz=g(r)で示される点O及び点Aの直線OAの傾き、すなわち、対物レンズ8に入射した光線の傾きに着目したものであり、例えば、点Oを両端位置に設定して得られた直線OAの傾きの平均値をとってもよいし、点Oを基準非球面形状SBの等間隔の多数の位置に設定して得られた直線OAの傾きの平均値をとってもよい。第1の位置を、このように直線OAの傾きの平均値の観点から選択することで、例えば当該凹部内の基準非球面形状SBの半径方向及び光軸方向を含む断面における傾きが大きい場合にも、得られた各凹部による収差の取れ残りを小さくすることができる。
これにより、第1の位相構造11を有する対物レンズ8は、第1の波長の光ビームに対して第1の位相構造11がほとんど収差に影響を及ぼさないため、この第1の波長の光ビームを、その基準となる非球面形状SBにより収差を発生させない状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
また、第1の位相構造11を有する対物レンズ8は、第2の波長の光ビームに対して第1の位相構造11が、基準非球面形状SBだけであったとしたら第2の波長の光ビームに発生してしまう収差を、打ち消して低減できる程度の位相差を与えることにより、この第2の波長の光ビームを、非球面形状SBとこれを基準に設けられた第1の位相構造11により収差を十分に低減させた状態で第2の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
上述したような第1の位相構造11が、第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、第1の波長の光ビームには収差の影響をほとんど及ぼさず、これにより上述のように第1及び第2の波長の光ビームを対応する各光ディスクの信号記録面に収差を十分に低減させた状態で集光させることができることについて説明する。そして、この説明に先立ち、従来検討されてきた平板NPSの原理や設計手法、並びにこの原理をそのまま対物レンズのような非球面形状に適用することの問題点について説明する。
まず、図5に示すように、平板状の光学素子に設けられた位相構造(以下では、「平板NPS」ともいう。)であって、高さHの凹部が設けられた位相構造に、第1及び第2の波長が入射したときの各波面の状態について説明する。尚、従来の平板NPSの設計手法においては、この位相構造の高さHを、次の関係式H=m(λ1/n1−1)を満たすようにする。ここで、式中mは、整数とする。尚、図5(a)及び図5(b)において、Hは、平板に設けられた位相構造201の高さを示し、Sλ1i及びSλ2iは、この位相構造201に入射する第1及び第2の波長の入射波面を示し、Sλ1o及びSλ2oは、入射したSλ1i及びSλ2iがこの位相構造201により位相差ΔP1,ΔP2を付与された後の第1及び第2の波長の出射波面を示し、矢印は、波面進行方向を示す。
そして、図5(a)に示すように、第1の波長の平面波面が空気(屈折率=1)側より入射した際には、その位相構造により、出射波面に生じる位相段差は2πの整数倍となり、すなわち、出射波面Sλ1oは入射波面Sλ1iと同じ状態を保つこととなる。具体的には、第1の波長の光における位相構造の構造高さHによる位相差ΔP1は、次の関係式ΔP1=Modulo[(2π((n1−1)H/λ1),2π]=Modulo[(2π×m),2π]=0に示すように、入射波面は、位相構造の影響を受けることなく出射することとなる。尚、ここで、Modulo[a,b]で示される関数は、剰余関数を示し、aをbで割ったときの余りを示すものである(以下の説明においても同様である。)。
これに対して、図5(b)に示すように、第2の波長の平面波面Sλ2iが空気側より入射した際には、その位相構造により出射波面に生じる位相段差は2πの整数倍とはならず、すなわち、出射波面Sλ2oには位相段差が生じることとなる。具体的には、第2の波長の光における位相構造の構造高さHによる位相差ΔP2は、次の関係式ΔP2=Modulo[2π((n2−1)H/λ2),2π]で示すとおりとなり、入射波面Sλ2iは、位相構造の影響を受けて位相差ΔP2が付与されて出射することとなる。
このように、従来の平板NPSの設計手法においては、第1の波長に対しては影響を及ぼさず、第2の波長に対しては所定の位相差ΔP2を与えるような高さHを設定することにより、第1の波長に対して収差を発生させず第2の波長に対しては収差を発生させてしまう対物レンズに入射する第2の波長に、所定の位相差を付与して収差を低減するというものである。この設計手法及びこの設計手法により得られる平板状位相付与素子は、平板状であるという限りにおいて優れたものではあった。
しかしながら、上述したように、部品点数の削減等の要請から、対物レンズ等の屈折レンズのレンズ面に上述の位相構造を設ける際に、この平板NPSで設計された位相構造をそのままレンズ面上に設けた場合には、レンズ面の曲率の存在により、第1の波長に対する位相差ΔP1についても第2の波長に対する位相差ΔP2についても、上述した関係からずれてしまうという問題があった。すなわち、平板状に対してはこの位相構造に略直交した光ビームが入射するとともに、略直交した光ビームが出射することにより、この位相構造の高さH分だけ位相差が付与されるのに対して、曲面状に形成されたレンズ面上に設けられた位相構造では、入射する光ビームについて、この位相構造に略直交して入射することなく、さらにレンズ内を通過する光ビーム及び出射する光ビームについてもこの位相構造に略直交して進行することなく、この位相構造を形成するための凹部が設けられた領域と、凹部が設けられていない領域とを通過する光ビームの進行方向の距離が高さHとはずれた関係になっており、これにより、上述した所望の位相差ΔP1,ΔP2を与えることができなくなる。このようなことから、最適な条件で平板NPSを設計できたとしても、実際にレンズ面上に設けられた位相構造は、第2の波長に対して収差を十分に低減したいという所望の効果を得られないだけでなく、位相構造による影響を及ぼしたくなく且つ本来収差に対して条件の厳しい第1の波長に対しても不要な収差を発生させてしまうという重大な問題を招来してしまうものであった。
これに対して、本願発明を適用した対物レンズ8を構成する第1の位相構造11は、このようなレンズ曲率による影響を考慮してこのような問題点を十分に解消するものであり、以下にこのことについて詳細に説明する。
第1の位相構造11においては、上述したように輪帯状の複数の凹部が、基準非球面形状に対して第2の光ディスクの開口制限範囲内の内周から外周に亘って、所定の高さHL及び所定の幅WLで設けられるように、この位相構造が形成されている。複数の凹部のうち、任意の一の凹部に着目して、レンズ内の任意の点Eに到達する光ビームの、第1の位相構造11が設けられていた場合の光路と、第1の位相構造11が設けられてない場合の光路とについて上述した図4を用いて説明する。図4中Pa1は、第1の位相構造11が設けられていた場合の点Eに到達する光路を示し、Pa2は、第1の位相構造11が設けられていなかった場合の点Eに到達する光路を示す。また、図4中r軸は、半径方向の座標系を示すものであり、z軸は、光軸方向の座標系を示すものであり、f(r)は、もとのレンズ形状、すなわち、基準となる非球面形状SBを示す関数であり、g(r)は、位相構造が設けられていなかったとした場合にレンズ面上の任意の点Oを通過する光線がレンズ形状により屈折されてレンズ中を透過する光線の光路を示す関数である。尚、点Eは、上述したような点Oにより決定されるg(r)上の任意の点である。
ここで、この第1の位相構造11がなかった場合の光線が、設けられていた場合の第1の位相構造11と交わる点をA(第2の位置)とし、第1の位相構造11が設けられていた場合の、この点Aを通るような光線を逆光線追跡し、この逆光線追跡した光線上の点C(第4の位置)から光軸に対し垂直方向(半径方向)に伸ばした線と交わる点をB(第3の位置)とする。また、点Aを通過した光線がレンズ内の任意の点Eを通過するものとし、この点Aを通った光線がレンズの次の面(第2面8b)と交わる点をDとする。
実線Pa1で示す第1の位相構造11が設けられている場合の光線は、点Bから点Aを経由して点Dに到達し、この光路長は、BA+AD×n1である。一方、実線Pa2で示す第1の位相構造11が設けられていない場合の光線は、点Bと同じ波面上の点Cから点O及び点Aを経由して点Dに到達し、この光路長は、CO+OA×n1+AD×n1である。このうち、点A及び点D間の光路は、物理長さと屈折率とが同じため、同じ光路長である。よって、このPa1とPa2の光路差は、CO+n1×OA−BAである。
ここで、上述の式(6)に示すように、この第1の位相構造11は、この光路差がλ1の整数倍となるように構成されていることから、第1の波長の光ビームに対しては、2πの略整数倍の位相段差を付与するのみであり影響をほとんど及ぼさず、上述したような平板NPSにより算出された位相構造をそのまま非球面形状に設ける場合の問題点である第1の波長に対して不要な収差を発生させてしまう等の問題を解消する。また、同様に第2の波長に対する光路差CO+n2×OA−BAに基づく位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、第2の波長に対してのみ所望の位相差を付与することができる。ここで、n2は、対物レンズ8を構成する材料の第2の波長に対する屈折率を示すものである。
尚、上述した点Aは、以下の式(8)及び式(9)で表される線分の交点である。また、点Bは、そこで算出されたr=rAを用いて、(rA、f(rA))で表される点であり、点Cは、(rO、f(rA))で表される点である。
z=f(r)+HL ・・・(8)
z=g(r) ・・・(9)
z=f(r)+HL ・・・(8)
z=g(r) ・・・(9)
このように、式(6)で示される各点の物理長さCO,OA,BAは、すべてHLの関数として表すことができる。よって、この式(6)を変数HLで解くことで、レンズ面上に設置する際の第1の位相構造11の位相高さHLを決定することができる。
以上のように、第2の光ディスクの開口制限NA2内に設けられた第1の位相構造11は、第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、第2の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与することにより、第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させず第2の波長の光ビームに対しては収差を発生させる非球面形状を基準に位相構造が設けられた対物レンズ8を介して、第1及び第2の波長の光ビームをそれぞれの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち第1及び第2の光ディスクに対する互換性を実現する。
ここで、上述のように決定される幅WL及び高さHLで形成された各凹部からなる第1の位相構造11の各凹部は、第1及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で幅方向に分割し、さらに各幅における凹部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されていることから、収差を低減するものであるが、例えば幅の寸法が大きい部分では、収差の取れ残りが発生することがある。このような場合に、上述の図2及び図3を用いて説明したように決定された凹部の幅のうち、例えば、凹部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下となるように凹部の幅を決定してもよい。すなわち、上述のように決定された各凹部毎に、第1の波長に対する取れ残り収差(波面収差)を算出し、これの上限(peak)及び下限(valley)の差を示すP−V値が例えば良好な収差を示す閾値0.1λ1を超えた場合には、その凹部の幅を例えば2等分、3等分の等分割や収差状態に応じた適切な複数分割等により、凹部の幅を変更してこの分割された幅毎に再度各凹部の高さを決定し、このP−V値が所定の閾値以下となるようにすることにより、さらに、全体の収差を低減することができる。
尚、上述では、対物レンズ8に設けられるフォーマット互換用の第1の位相構造として、基準非球面形状SBに対して所定の幅WL及び高さHLで形成された輪帯状の複数の凹部が設けられることにより形成される第1の位相構造11について説明したが、本発明を適用した対物レンズを構成する第1の位相構造は、これに限られるものではなく、基準非球面形状SBに対して所定の幅及び高さで形成された輪帯状の凸部が設けられることにより形成されるような以下で説明する第1の位相構造11Bのように構成してもよい。
第1の位相構造11Bは、第1の波長の光ビームに収差を発生させないように決定された基準非球面形状SBに対して形成され、この基準非球面形状SBがそのままで形成されたとした場合に第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、第1の波長の光ビームには収差の影響がほとんど及ぼさないような幅WL’及び高さHL’で形成された輪帯状の複数の凸部が設けられているように形成されている。換言すると、第1の位相構造11Bが、基準非球面形状に対して半径方向に順次隣接した輪帯状の複数の凸部が設けられているように形成されることにより、その対物レンズの第1面の半径方向及び光軸方向を含む面の断面形状は、上述と同様に、補正すべき収差に応じて、空気側又は対物レンズ構成材料の基材側に向けて所定の段差で形成される複数の段部を有するような形状とされている。尚、複数の凸部の幅WL’及び高さHL’は、後述のように凸部毎に適切な大きさとされている。このように、上述した各凸部のそれぞれが、1の位相構造を構成し、第1の位相構造11Bは、これらの複数の位相構造からなることにより、フォーマット互換の機能を有する。
より具体的には、第1の位相構造11Bは、第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、この基準非球面形状SBが形成されたとした場合に第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるようにこの第1の位相構造11Bで打ち消すための半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、この補正必要収差量を式(10)で算出される位相差x’のm1’倍毎の閾値X’で区切ることで各凸部の半径方向の位置及び幅WL’を決定し、対物レンズの光軸方向及び半径方向を含む断面において、この各凸部毎に、凸部の幅内の非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置O’とし、凸部が設けられなかったとすれば、第1の位置O’に入射した第1の波長の光ビームが対物レンズ8内を通過する直線と、凸部との交点を第2の位置A’とし、第1の位置O’から光軸方向に伸ばした直線と、凸部との交点を第3の位置B’とし、第2の位置A’から光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置B’から光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置C’とし、式(11)を満たすように各凸部毎の高さHL’を決定することにより得られた各凸部の幅「WL’」及び高さ「HL’」で形成された輪帯状の複数の凸部が、基準となる非球面形状の基準面SBに対して設けられるように形成されている。尚、式(10)で示される閾値X’は、式(12)で示される位相差により算出されるものである。
X’=λ1/(n1−1)×m1’ ・・・(10)
C’A’+n1×A’O’−B’O’=λ1×m2’ ・・・(11)
x’=λ1/(n1−1)・・・(12)
但し、式(10)〜式(12)中
λ1:第1の波長(μm)、
n1:対物レンズ8を構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1’,m2’:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
C’A’:第4の位置C’と第2の位置A’とを結ぶ直線の距離(μm)、
A’O’:第2の位置A’と第1の位置O’とを結ぶ直線の距離(μm)、
B’O’:第3の位置B’と第1の位置O’とを結ぶ直線の距離(μm)
である。
X’=λ1/(n1−1)×m1’ ・・・(10)
C’A’+n1×A’O’−B’O’=λ1×m2’ ・・・(11)
x’=λ1/(n1−1)・・・(12)
但し、式(10)〜式(12)中
λ1:第1の波長(μm)、
n1:対物レンズ8を構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1’,m2’:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
C’A’:第4の位置C’と第2の位置A’とを結ぶ直線の距離(μm)、
A’O’:第2の位置A’と第1の位置O’とを結ぶ直線の距離(μm)、
B’O’:第3の位置B’と第1の位置O’とを結ぶ直線の距離(μm)
である。
ここで、上述の基準となる非球面形状SBは、第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面に収差を発生させないような形状とされている。また、補正必要収差量は、第1の位相構造11Bが設けられていない基準非球面形状SBとされたとした場合の第1面と、上述した第2面8bとを有する対物レンズに、第2の波長の光ビームが入射した場合に、第2の光ディスクの信号記録面に発生してしまう収差量を打ち消す収差量であり、すなわち、この信号記録面に発生してしまう収差量の符号を反転させたものである。尚、各凸部の位置及び幅の算出方法については、上述の図2及び図3を用いて説明したのと同様であるので省略する。
また、ここでは、各凸部の半径方向の位置及び幅が、補正必要収差量を式(10)のX’で区切ることにより決定されて形成されるよう構成することで、第1の波長及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で分割し、さらに、各幅における凸部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されることで、後述のようなフォーマット互換性を実現するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、製造上の観点から所定の大きさに等分割したり、又は所定の大きさに分割して、さらに、上述のP−V値の観点により決定される位置及び幅となるように各凸部を形成するように構成してもよい。
また、ここでは、各凸部の高さを決定するための第1の位置O’は、図6に示すように、当該凸部の幅内の基準非球面形状SBの半径方向の中間位置とされている。第1の位置O’を中間位置に設定することで、得られた各凸部による収差の取れ残りを小さくすることができる。ここでは、第1の位置をこのように設定して各凸部を形成するように構成したが、これに限られるものではなく、第1の位置が、第1の位置を複数の箇所に設定した場合にそれぞれ得られる第1の位置と第2の位置とを結ぶ直線の傾きの平均の傾きと、当該第1の位置により得られる第2の位置とを結ぶ直線の傾きと、が同じ傾きとなるような位置とされて、得られた各凸部の幅及び高さで形成された複数の凸部が設けられるように形成されていればよい。
すなわち、これは、後述のz=g’(r)で示される点O’及び点A’の直線O’A’の傾き、すなわち、対物レンズ8に入射した光線の傾きに着目したものであり、例えば、点O’を両端位置に設定して得られた直線O’A’の傾きの平均値をとってもよいし、点O’を基準非球面形状SBの等間隔の多数の位置に設定して得られた直線O’A’の傾きの平均値をとってもよい。第1の位置O’を、このように直線O’A’の傾きの平均値の観点から選択することで、例えば当該凸部内の基準非球面形状SBの半径方向及び光軸方向を含む断面における傾きが大きい場合にも、得られた各凸部による収差の取れ残りを小さくすることができる。
これにより、第1の位相構造11Bを有する対物レンズは、第1の波長の光ビームに対して第1の位相構造11Bがほとんど収差に影響を及ぼさないため、この第1の波長の光ビームを、その基準となる非球面形状SBにより収差を発生させない状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
また、第1の位相構造11Bを有する対物レンズは、第2の波長の光ビームに対して第1の位相構造11Bが、基準非球面形状SBだけであったとしたら第2の波長の光ビームに発生してしまう収差を、打ち消して低減できる程度の位相差を与えることにより、この第2の波長の光ビームを、非球面形状SBとこれを基準に設けられた第1の位相構造11Bにより収差を十分に低減させた状態で第2の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
上述したような第1の位相構造11Bが、第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、第1の波長の光ビームには収差の影響をほとんど及ぼさず、これにより上述のように第1及び第2の波長の光ビームを対応する各光ディスクの信号記録面に収差を十分に低減させた状態で集光させることができることについて説明する。尚、ここでは、平板NPSの原理や設計手法、並びにこの原理をそのまま対物レンズのような非球面形状に適用することの問題点については上述したとおりであるので省略し、第1の位相構造11が、上述したレンズ曲率による影響を考慮してこのような問題点を十分に解消することができることについて以下に説明する。
第1の位相構造11Bにおいては、上述したように輪帯状の複数の凸部が、基準非球面形状に対して第2の光ディスクの開口制限範囲内の内周から外周に亘って、所定の高さHL’及び所定の幅WL’で設けられるように、この位相構造が形成されている。複数の凸部のうち、任意の一の凸部に着目して、レンズ内の任意の点E’に到達する光ビームの、第1の位相構造11Bが設けられていた場合の光路と、第1の位相構造11Bが設けられてない場合の光路とについて上述した図6を用いて説明する。図6中Pa1’は、第1の位相構造11Bが設けられていた場合の点E’に到達する光路を示し、Pa2’は、第1の位相構造11Bが設けられていなかった場合の点E’に到達する光路を示す。また、図6中r軸は、半径方向の座標系を示すものであり、z軸は、光軸方向の座標系を示すものであり、f’(r)は、もとのレンズ形状、すなわち、基準となる非球面形状SBを示す関数であり、g’(r)は、位相構造が設けられていなかった場合にレンズ面上の任意の点O’を通過する光線がレンズ形状により屈折されてレンズ中を通過する光線の光路を示す関数である。尚、点E’は、上述したような点O’により決定されるg’(r)上の任意の点である。
ここで、この第1の位相構造11Bがなかった場合の光線が、設けられていた場合の第1の位相構造11Bと交わる点をB’(第3の位置)とする。また、第1の位相構造11Bがあった場合に点O’を通る光線を逆光線追跡し、この逆光線追跡した光線上の第1の位相構造11Bと交わる点をA’(第2の位置)とし、さらに、この逆光線追跡した光線上であって点B’から光軸に対し垂直方向(半径方向)に伸ばした線と交わる点をC’(第4の位置)とする。また、点A’を通過した光線がレンズ内の任意の点E’を通過するものとし、この点A’を通った光線がレンズの次の面と交わる点をD’とする。
実線Pa2’で示す第1の位相構造11Bが設けられていない場合の光線は、点B’から点O’を経由して点D’に到達し、この光路長は、B’O’+O’D’×n1である。一方で、実線Pa1’で示す第1の位相構造11Bが設けられている場合の光線は、点B’と同じ波面上の点C’から点A’及び点O’を経由して点D’に到達し、この光路長は、C’A’+A’O’×n1+O’D’×n1である。このうち、点O’及び点D’間の光路は、物理長さと屈折率とが同じため、同じ光路長である。よって、このPa1’とPa2’の光路差は、C’A’+n1×A’O’−B’O’である。
ここで、上述の式(11)に示すように、この第1の位相構造11Bは、この光路差がλ1の整数倍となるように構成されていることから、第1の波長の光ビームに対しては、2πの略整数倍の位相段差を付与するのみであり影響をほとんど及ぼさず、上述したような平板NPSにより算出された位相構造をそのまま非球面形状に設ける場合の問題点である第1の波長に対して不要な収差を発生させてしまう等の問題を解消する。また、同様に第2の波長に対する光路差C’A’+n2×A’O’−B’O’に基づく位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、第2の波長に対してのみ所望の位相差を付与することができる。
尚、上述した点A’は、以下の式(13)及び式(14)で表される線分の交点である。また、点B’は、点O’の座標(rO’,zO’)を用いて、(rO’,f’(rO’)−HL’)で表される点であり、点C’は、上述のように算出されたr=rA’を用いて、(rA’,f’(rO’)−HL’)で表される点である。
z=f’(r)−HL’ ・・・(13)
z=g’(r) ・・・(14)
z=f’(r)−HL’ ・・・(13)
z=g’(r) ・・・(14)
このように、式(11)で示される各点の物理長さC’A’,A’O’,B’O’は、全てHL’の関数として表すことができる。よって、この式(11)を変数HL’で解くことで、レンズ面上に位置する際の第1の位相構造11Bの位相高さHL’を決定することができる。
以上のように、第2の光ディスクの開口制限NA2内に設けられた第1の位相構造11Bは、上述した第1の位相構造11と同様に、第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、第2の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与することにより、第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させず第2の波長の光ビームに対しては収差を発生させる非球面形状を基準に位相構造が設けられた対物レンズを介して、第1及び第2の波長の光ビームをそれぞれの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち第1及び第2の光ディスクに対する互換性を実現する。
ここで、上述のように決定される幅WL’及び高さHL’で形成された各凸部からなる第1の位相構造11Bの各凸部は、第1及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で幅方向に分割し、さらに各幅における凸部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されていることから、収差を低減するものであるが、上述した第1の位相構造11と同様に、収差の取れ残りが発生する場合には、例えば、凸部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下となるように凸部の幅を決定してもよい。
尚、上述したような第1の位相構造11のような複数の凹部からなる位相構造は、補正すべき収差が正の収差であり、すなわち、この位相構造により付与する収差が負の収差である場合に有利な構成であり、ここで説明した第1の位相構造11Bのような複数の凸部からなる位相構造は、補正すべき収差が負の収差であり、すなわち、この位相構造により付与する収差が正の収差である場合に有利な構成である。尚、あくまで、製造面を考慮して、位相構造における凹部又は凸部の各高さが小さくなるという観点から有利なだけであり、付与すべき収差が正若しくは負のいずれであったとしても、いずれの構成においても収差低減が可能である。
上述したような第1の位相構造11,11Bの外側には、上述したように円環状に設けられた第2の位相構造12が設けられている。この第2の位相構造12は、所謂温度補償用の位相構造であり、温度変化があった場合に、第2の光ディスクの開口制限NA2の外側で第1の光ディスク開口制限NA1の内側を通過する第1の波長の光ビームに所定の位相差を付与することにより、温度変化により発生する収差を補正するものである。
温度補償用の第2の位相構造12は、基準となる設計温度(以下、「基準設計温度」という。)における第1の波長の光ビームに収差を発生させないように決定された基準となる非球面形状SBに対して形成され、この基準非球面形状SBがそのままで形成されたとした場合に基準設計温度に対して最も温度差がある設計温度(以下、「最高設計温度」という。)における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、基準設計温度における第1の波長の光ビームには収差の影響がほとんど及ぼさないような幅WL’及び高さHL’で形成された輪帯状の複数の凸部が設けられているように形成されている。換言すると、第2の位相構造12が、基準非球面形状に対して半径方向に順次隣接した輪帯状の複数の凸部が設けられているように形成されることにより、その対物レンズ8の第1面8aの半径方向及び光軸方向を含む面の断面形状は、図3に示すように、補正すべき収差に応じて、空気側又は対物レンズ構成材料の基材側に向けて所定の段差で形成される複数の段部を有するような形状とされている。尚、複数の凸部の幅WL’及び高さHL’は、後述のように凸部毎に適切な大きさとされている。このように、上述した各凸部のそれぞれが、1の位相構造を構成し、第2の位相構造12は、これらの複数の位相構造からなることにより、温度補償の機能を有する。尚、以下で、この所定の幅WL’及び所定の高さHL’について説明するが、以下の説明において、上述した図6を用いて説明した第1の位相構造11Bと共通する部分については、共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
より具体的には、第2の位相構造12は、基準設計温度における第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、この基準非球面形状SBが形成されたとした場合に最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるようにこの第2の位相構造12で打ち消すための半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、この補正必要収差量を上述した式(10)で算出される位相差x’のm1’倍毎の閾値X’で区切ることで各凸部の半径方向の位置及び幅WL’を決定し、対物レンズ8の光軸方向及び半径方向を含む断面において、この各凸部毎に、凸部の幅内の基準非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置O’とし、凸部が設けられなかったとすれば、第1の位置O’に入射した基準設計温度における第1の波長の光ビームが対物レンズ8内を通過する直線と、凸部との交点を第2の位置A’とし、第1の位置O’から光軸方向に伸ばした直線と、凸部との交点を第3の位置B’とし、第2の位置A’から光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置B’から光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置C’とし、式(11)を満たすように各凸部毎の高さHL’を決定することにより得られた各凸部の幅「WL’」及び高さ「HL’」で形成された輪帯状の複数の凸部が、基準となる非球面形状の基準面SBに対して設けられるように形成されている。
尚、ここでは、補正必要収差量は、第2の位相構造12が設けられていない基準非球面形状SBとされたとした場合の第1面と、上述した第2面8bとを有する対物レンズに、最高設計温度における第1の波長の光ビームが入射した場合の第1の光ディスクの信号記録面に発生してしまう収差量を打ち消す収差量であり、すなわち、この信号記録面に発生してしまう収差を第2の位相構造12が設けられている領域で打ち消すための量である。尚、各凸部の位置及び幅の算出方法については、上述の図2及び図3を用いて説明したのと同様であるので省略する。
すなわち、この補正必要収差量を、図2を用いて説明したのと同様に、式(10)及び式(12)で示されるX’(=x’×m1’)で区切ることにより、図3に示すような各凸部の半径方向の端部の位置Pkと、各凸部の幅WL’kとを決定する。ここで、kは、正の整数(k=・・・K−1,K,K+1,・・・)である。すなわち、補正必要収差量をX’毎に区切ることにより、各凸部の位置・・・PK−1,PK,PK+1・・・を決定し、この位置Pk間の距離を各凸部の幅・・・WL’K−1,WL’K,WL’K+1・・・を決定する。そして、図6に示すように、各凸部の幅WL’k内のそれぞれで、上述したような第1乃至第4の位置O’,A’,B’,C’と、基準非球面形状の基準面SBに対する各凸部の光軸方向の高さHL’kとを算出して決定している。尚、図6は、複数の凸部のうちの任意の一の凸部を選択して図示するものであり、上述及び以下の説明においてはこの幅WL’kをWL’とし、得られる高さHL’kをHL’として説明する。
また、ここでは、各凸部の半径方向の位置及び幅が、補正必要収差量を式(10)のX’で区切ることにより決定されて形成されるよう構成することで、第1の波長及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で分割し、さらに、各幅における凸部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されることで、後述のような温度補償を実現するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、製造上の観点から所定の大きさに等分割したり、又は所定の大きさに分割して、さらに、上述のP−V値の観点により決定される位置及び幅となるように各凸部を形成するように構成してもよい。
また、各凸部の高さを決定するための第1の位置O’は、上述した第1の位相構造11Bと同様の手法により決定されている。
これにより、第2の位相構造12を有する対物レンズ8は、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対して第2の位相構造12がほとんど収差に影響を及ぼさないため、この第1の波長の光ビームを、その基準となる非球面形状SBにより収差を発生させない状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
また、第2の位相構造12を有する対物レンズ8は、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対して第2の位相構造12が、基準非球面形状SBだけであったとしたら最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生してしまう収差を、打ち消して低減できる程度の位相差を与えることにより、この最高設計温度における第1の波長の光ビームを、非球面形状SBとこれを基準に設けられた第2の位相構造12により収差を十分に低減された状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
上述したような第2の位相構造12が、最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、基準設計温度における第1の波長の光ビームには収差の影響をほとんど及ぼさず、これにより上述のように基準設計温度から最高設計温度の範囲における第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面に収差を十分に低減させた状態で集光できることについて説明する。尚、ここでは、図6を用いて上述した第1の位相構造11Bにおける説明と重複する部分については、説明を省略して説明する。
第2の位相構造12においては、上述したように輪帯状の複数の凸部が、基準非球面形状に対して第2の光ディスクの開口制限NA2範囲の外側で第1の光ディスクの開口制限NA1範囲内の内周から外周に亘って、所定の高さHL’及び所定の幅WL’で設けられるように、この位相構造が形成されている。レンズ内の任意の点E’に到達する光ビームの、第2の位相構造12が設けられていた場合の光路と、第2の位相構造12が設けられていない場合の光路とについて上述した図6を用いて説明する。尚、ここでは、図4中Pa1’は、第2の位相構造12が設けられていた場合の点E’に到達する光路を示し、Pa2’は、第2の位相構造12が設けられていなかった場合の点E’に到達する光路を示すものであり、その他のr軸、z軸、f’(r)、g’(r)については、上述した第1の位相構造11Bの場合の図4を用いた説明と同様であるので説明は省略する。また、点B’、点O’、点A’、点D’、点C’及び点E’についても上述と同様であるの説明は省略する。
実線Pa2’で示す第2の位相構造12が設けられていない場合の光線は、点B’から点O’を経由して点D’に到達し、一方で、実線Pa1’で示す第2の位相構造12が設けられている場合の光線は、点B’と同じ波面上の点C’から点A’及び点O’を経由して点D’に到達することとなる。よって、このPa1’とPa2’の光路差は、C’A’+n1×A’O’−B’O’である。尚、ここでn1は、基準設計温度における第1の波長の光ビームの屈折率を示す。
ここで、上述の式(11)に示すように、この第2の位相構造12は、この光路差がλ1の整数倍となるように構成されていることから、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対しては、2πの略整数倍の位相段差を付与するのみであり影響をほとんど及ぼさず、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対して不要な収差を発生させてしまう等の問題を解消する。また、ここで、最高設計温度における第1の波長の光ビームの屈折率をn1Hとしたときに、最高設計温度における第1の波長に対する光路差C’A’+n1H×A’O’−B’O’に基づく位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、最高設計温度における第1の波長に対してのみ所望の位相差を付与することができ、また、温度変化による形状変化を考慮して上述の光路差を設定して位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、さらに最適な位相差を付与することができる。
以上のように、第2の光ディスクの開口制限NA2の外側で第1の光ディスクの開口制限NA1内に設けられた第2の位相構造12は、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与することにより、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させず最高設計温度における第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させる非球面形状を基準に位相構造が設けられた対物レンズ8を介して、基準設計温度及び最高設計温度における第1の波長の光ビームをそれぞれ第1の光ディスクの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち、第1の波長に対する温度変化により発生する収差の補正用(温度補償用)の位相構造として機能することを実現する。
ここで、上述のように決定される幅WL’及び高さHL’で形成された各凸部からなる第2の位相構造12の各凸部は、基準設計温度及び最高設計温度に対する第1の波長に対して収差が発生しにくい状態で幅方向に分割し、さらに各幅における凸部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されていることから、収差を低減するものであるが、例えば幅の寸法が大きい部分では、収差の取れ残りが発生することがある。このような場合に、上述のように決定された凸部の幅のうち、例えば、凸部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下となるように凸部の幅を決定してもよい。
尚、上述では、対物レンズ8に設けられる第2の位相構造として、基準非球面形状SBに対して所定の幅及び高さで形成された輪帯状の凸部が設けられることにより形成される第2の位相構造12について説明したが、本発明を適用した対物レンズを構成する第2の位相構造は、これに限られるものではなく、基準非球面形状SBに対して所定の幅及び高さで形成された輪帯状の凹部が設けられることにより形成されるような以下で説明する第2の位相構造12Bのように構成してもよい。
第2の位相構造12Bは、基準設計温度における第1の波長の光ビームに収差を発生させないように決定された基準非球面形状SBに対して形成され、この基準非球面形状SBがそのままで形成されたとした場合に最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、基準設計温度における第1の波長の光ビームには収差の影響がほとんど及ぼさないような幅WL及び高さHLで形成された輪帯状の複数の凹部が設けられているように形成されている。換言すると、第2の位相構造12Bが、基準非球面形状に対して半径方向に順次隣接した輪帯状の複数の凹部が設けられているように形成されることにより、その対物レンズの第1面の半径方向及び光軸方向を含む面の断面形状は、上述と同様に、補正すべき収差に応じて、対物レンズ構成材料の基材側に向けて所定の段差で形成される複数の段部を有するような形状とされている。尚、複数の凹部の幅WL及び高さHLは、後述のように凹部毎に適切な大きさとされている。このように、上述した各凹部のそれぞれが、1の位相構造を構成し、第2の位相構造12Bは、これらの複数の位相構造からなることにより、温度補償の機能を有する。尚、以下で、この所定の幅WL及び所定の高さHLについて説明するが、以下の説明において、上述した図4を用いて説明した第1の位相構造11と共通する部分については、共通の符号を詳細な説明は省略する。
より具体的には、第2の位相構造12Bは、基準設計温度における第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準非球面形状SBを決定し、この基準非球面形状SBが形成されたとした場合に最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるようにこの第2の位相構造12Bで打ち消すための半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、この補正必要収差量を上述した式(5)で算出される位相差xのm倍毎の閾値Xで区切ることで各凹部の半径方向の位置及び幅WLを決定し、対物レンズの光軸方向及び半径方向を含む断面において、この各凹部毎に、凹部の幅内の基準非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置Oとし、凹部が設けられなかったとすれば、第1の位置Oに入射した基準設計温度における第1の波長の光ビームが対物レンズ8内を通過する直線と、凹部との交点を第2の位置Aとし、この第2の位置Aから光軸方向に伸ばした直線と、基準非球面形状SBとの交点を第3の位置Bとし、第1の位置Oから光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置Bから光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置Cとし、式(6)を満たすように各凹部毎の高さHLを決定することにより得られた各凹部の幅「WL」及び高さ「HL」で形成された輪帯状の複数の凹部が、基準となる非球面形状の基準面SBに対して設けられるように形成されている。
尚、ここでは、補正必要収差量は、第2の位相構造12Bが設けられていない非球面形状SBとされたとした場合の第1面と、上述した第2面8bとを有する対物レンズに、最高設計温度における第1の波長の光ビームが入射した場合の第1の光ディスクの信号記録面に発生してしまう収差量を打ち消す収差量であり、すなわち、この信号記録面に発生してしまう収差を第2の位相構造12Bが設けられている領域で打ち消すための量である。尚、各凸部の位置及び幅の算出方法については、上述の図2及び図3を用いて説明したのと同様であるので省略する。
また、ここでは、各凹部の半径方向の位置及び幅が、補正必要収差量を式(5)のXで区切ることにより決定されて形成されるよう構成することで、第1の波長及び第2の波長に対して収差が発生しにくい状態で分割し、さらに、各幅における凹部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されることで、後述のような温度補償を実現するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、製造上の観点から所定の大きさに等分割したり、又は所定の大きさに分割して、さらに、上述のP−V値の観点により決定される位置及び幅となるように各凹部を形成するように構成してもよい。
また、各凹部の高さを決定するための第1の位置Oは、上述した第1の位相構造11と同様の手法により決定されている。
これにより、第2の位相構造12Bを有する対物レンズは、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対して第2の位相構造12Bがほとんど収差に影響を及ぼさないため、この第1の波長の光ビームを、その基準となる非球面形状SBにより収差を発生させない状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
また、第2の位相構造12Bを有する対物レンズは、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対して第2の位相構造12が、非球面形状SBだけであったとしたら最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生してしまう収差を、打ち消して低減できる程度の位相差を与えることにより、この最高設計温度における第1の波長の光ビームを、非球面形状SBとこれを基準に設けられた第2の位相構造12Bにより収差を十分に低減された状態で第1の光ディスクの信号記録面に集光させることができる。
上述したような第2の位相構造12Bが、最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるとともに、基準設計温度における第1の波長の光ビームには収差の影響をほとんど及ぼさず、これにより上述のように、基準設計温度から最高設計温度の範囲における第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面に収差を十分に低減させた状態で集光できることについて説明する。尚、ここでは、図3を用いて上述した第1の位相構造11における説明と重複する部分については、説明を省略して説明する。
第2の位相構造12Bにおいては、上述したように輪帯状の複数の凹部が、基準非球面形状に対して第2の光ディスクの開口制限範囲の外側で第1の光ディスクの開口制限範囲内の内周から外周に亘って、所定の高さHL及び所定の幅WLで設けられるように、この位相構造が形成されている。レンズ内の任意のEに到達する光ビームの、第2の位相構造12Bが設けられていた場合の光路と、第2の位相構造12Bが設けられていない場合の光路とについて上述した図4を用いて説明する。尚、ここでは、図4中Pa1は、第2の位相構造12Bが設けられていた場合の点Eに到達する光路を示し、Pa2は、第2の位相構造12Bが設けられていなかった場合の点Eに到達する光路を示すものであり、その他のr軸、z軸、f(r)、g(r)については、上述した第1の位相構造11の場合の図4を用いた説明と同様であるので説明は省略する。また、点O、点A、点C、点B、点D及び点Eについても上述と同様であるの説明は省略する。
実線Pa2で示す第2の位相構造12Bが設けられている場合の光線は、点Bから点Aを経由して点Dに到達し、一方で、実線Pa2で示す第2の位相構造12Bが設けられていない場合の光線は、点Bと同じ波面上の点Cから点O及び点Aを経由して点Dに到達することとなる。よって、このPa1とPa2の光路差は、CO+n1×OA−BAである。尚、ここでn1は、基準設計温度における第1の波長の光ビームの屈折率を示す。
ここで、上述の式(6)に示すように、この第2の位相構造12Bは、この光路差がλ1の整数倍となるように構成されていることから、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対しては、2πの略整数倍の位相段差を付与するのみであり影響をほとんど及ぼさず、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対して不要な収差を発生させてしまう等の問題を解消する。また、ここで、最高設計温度における第1の波長の光ビームの屈折率をn1Hとしたときに、最高設計温度における第1の波長に対する光路差CO+n1H×OA−BAに基づく位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、最高設計温度における第1の波長に対してのみ所望の位相差を付与することができ、また、温度変化による形状変化を考慮して上述の光路差を設定して位相差ΔP2を所定の状態とすることにより、さらに最適な位相差を付与することができる。
以上のように、第2の光ディスクの開口制限NA2の外側で第1の光ディスクの開口制限NA1内に設けられた第2の位相構造12Bは、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与することにより、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させず最高設計温度における第1の波長の光ビームに対しては収差を発生させる非球面形状を基準に位相構造が設けられた対物レンズを介して、基準設計温度及び最高設計温度における第1の波長の光ビームをそれぞれ第1の光ディスクの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち、第1の波長に対する温度変化により発生する収差の補正用(温度補償用)の位相構造として機能することを実現する。
ここで、上述のように決定される幅WL及び高さHLで形成された各凹部からなる第2の位相構造12Bの各凹部は、基準設計温度及び最高設計温度に対する第1の波長に対して収差が発生しにくい状態で幅方向に分割し、さらに各幅における凹部の高さを収差を打ち消すような形状となるように形成されていることから、収差を低減するものであるが、上述した第2の位相構造12と同様に、収差の取れ残りが発生する場合には、例えば、凹部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下となるような凹部の幅を決定しても良い。
尚、上述したような第1の位相構造12のような複数の凸部からなる位相構造は、補正すべき収差が負の収差であり、すなわち、この位相構造により付与する収差が正の収差である場合に有利な構成であり、ここで説明した第1の位相構造12Bのような複数の凹部からなる位相構造は、補正すべき収差が正の収差であり、すなわち、この位相構造により付与する収差が負の収差である場合に有利な構成である。尚、あくまで、製造面を考慮して、位相構造における凹部又は凸部の各高さが小さくなるという観点から有利なだけであり、付与すべき収差が正若しくは負のいずれであったとしても、いずれの構成においても収差低減が可能である。
以上のように構成された対物レンズ8は、その第2の光ディスクの開口制限NA2内に設けられた第1の位相構造11,11Bにより、第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、第2の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与して、第1及び第2の波長の光ビームをそれぞれの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち第1及び第2の光ディスクに対する良好な互換性を簡易な構成で実現する。また、この対物レンズ8は、第1の位相構造11,11Bの外側、すなわち、その第2の光ディスクの開口制限NA2の外側であって第1の光ディスクの開口制限NA1内に設けられた第2の位相構造12,12Bにより、基準設計温度における第1の波長の光ビームに対してはほとんど収差に影響を及ぼさず、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対しては所定の位相差を付与して、基準設計温度から最高設計温度までの第1の波長の光ビームをそれぞれ第1の光ディスクの信号記録面に収差を低減した状態で集光させることができ、すなわち、第1の波長に対する温度変化により発生する収差を簡易な構成で低減することを実現する。
このように、本発明を適用した対物レンズ8は、その一方の面8aに、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部(突部)を設けるように形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造として第1の位相構造11,11Bを有することにより、収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することができ、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を実現する。
また、本発明を適用した対物レンズ8は、その一方の面8aに、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように形成され、温度変化があった場合に第1の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造として第2の位相構造12,12Bを有することにより、温度変化があった場合にも収差等を低減して、第1の光ディスクに対して光ビームを良好に集光することができ、簡易な構成で温度補償機能を発揮することを実現する。
尚、ここでは、第1の位相構造11及び第2の位相構造12からなる対物レンズ8を設けるように構成したが、これに限られるものではなく、第1の位相構造11,11Bのいずれか一方と、第2の位相構造12,12Bのいずれか一方を選択的に組み合わせて構成される対物レンズを構成してもよく、さらに、少なくとも第1及び第2の位相構造11,11B,12,12Bのいずれか一方を有する対物レンズを構成してもよく、その場合には、いずれか一方の機能については上述した対物レンズ8の第1の位相構造11又は第2の位相構造12と同様の機能を発揮するものである。
上述した対物レンズ8により光ディスク2の信号記録面に集光され、光ディスク2で反射され、再び対物レンズ8を経由して第2のビームスプリッタ7で反射されることにより往路光から分岐された復路の光ビームは、マルチレンズ10に入射される。マルチレンズ10は、入射したこの復路の光ビームを光検出器9のフォトディテクタに集光させる。
光検出器9は、光ディスク2の信号記録面で反射された光ビームのそれぞれを受光するためのフォトディテクタを有し、情報信号とともにトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出する。
以上のように構成された光ピックアップ装置1は、この光検出器9により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ8を駆動して、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。対物レンズ8が駆動されることにより、光ディスク2の信号記録面に対して合焦する合焦位置に移動されて、光ビームが光ディスク2の記録面上に合焦されて、光ディスク2に対して情報の記録又は再生を行う。
本発明を適用した光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置は、その対物レンズ8の一方の面である第1面8aに、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の凹部又は凸部を設けるように形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の第1の位相構造11,11Bを有することにより、収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することができ、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を実現する。このように、本発明を適用した光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置は、各波長に対する収差等を低減して互換性を実現するとともに、この互換性を実現する位相構造を、従来の平板状の位相付与素子等を設ける必要がなく、小型化を実現するとともに、対物レンズを駆動するための対物レンズ駆動手段の可動部の重量等も小さくして、さらなる小型化及び軽量化、また感度の向上等を実現して、すなわち、小型化を実現するとともに、良好な記録再生特性を実現する。
また、本発明を適用した光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置は、さらに、その対物レンズ8の一方の面である第1の面8aの第1の位相構造11,11Bの外側に、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の凹部又は凸部を設けるように形成され、温度補償用の輪帯状の第2の位相構造12,12Bを有することにより、温度変化等があった場合にも、従来の対物レンズで発生するおそれのあった収差等を発生させることなく第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを集光することができ、簡易な構成で温度変化に起因する第1の波長に対する収差を補正することを実現する。
次に、上述のような対物レンズ8の設計方法について説明する。尚、以下では、第1の位相構造11及び第2の位相構造12を有する対物レンズ8についての設計方法を説明し、第1の位相構造11に換えて第1の位相構造11Bを有する場合、若しくは、第2の位相構造12に換えて第2の位相構造12Bを有する場合、又は、第1及び第2の位相構造11,12に換えて第1及び第2の位相構造11B,12Bを有する場合については、その位相構造が非球面形状SBに対する凹部又は凸部からなることを除いて同様であり、さらに、第1の位相構造11,11B、第2の位相構造12,12Bのいずれかを有する場合については、その一部のステップを経ないことを除いて同様であるので詳細な説明を省略する。
本発明を適用した対物レンズの設計方法は、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、且つ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光するとともに、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状SBに対して、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように、形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の第1の位相構造を有する対物レンズを設計するものである。また、本発明を適用した対物レンズの設計方法は、上述の第1の位相構造に換えて、又は第1の位相構造に加えて、温度変化が発生した場合に第1の波長の光ビームに発生する収差を抑える輪帯状の第2の位相構造を有する対物レンズを設計するものである。
尚、この対物レンズの設計方法を実現する情報処理装置100は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)、キーボード、ディスプレイ等を備えた通常のコンピュータに、以下に説明する工程を実現するコンピュータプログラムがインストールされることによって、実現するものであって、図7に示すように、基準となる非球面形状を入力する入力部101と、入力された非球面形状等の条件に基づいて、後述するステップS2〜S4のように上述した第1の位相構造11の形状を算出する第1の位相構造算出部102と、入力された非球面形状等の条件に基づいて、後述するステップS5〜S7のように上述した第2の位相構造12の形状を算出する第2の位相構造算出部103と、算出された第1及び第2の位相構造11,12を含めた対物レンズの形状データを表示部や紙等の媒体に出力する出力部104とを備え、対物レンズ設計装置として機能する。以下、このような情報処理装置を用いた対物レンズの設計方法について詳細に説明する。
具体的に、この対物レンズの設計方法は、図8に示すように、決定された第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状SBを入力するステップS1と、入力された非球面形状SBに基づいて、基準となる非球面形状SBが形成されたとした場合に第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量(以下では、「互換用補正必要収差量」という。)を算出するステップS2と、この互換用補正必要収差量に基づいて、第1の位相構造11を形成するための複数の凹部の各凹部毎の幅及び高さを算出するステップS3と、ステップS3で算出された各凹部の幅及び各凹部の高さと、ステップS1で算出された基準となる非球面形状SBとから対物レンズ8に設けられる第1の位相構造11の実際の形状を算出するステップS4と、基準となる非球面形状SBに第1の位相構造11が形成されたとした場合に、温度変化があり最高設計温度となったときの第1の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量(以下では、「温度補償用補正必要収差量」という。)を算出するステップS5と、この温度補償用補正必要収差量に基づいて、第2の位相構造12を形成するための複数の凸部の各凸部毎の幅及び高さを算出するステップS6と、ステップS6で算出された各凸部の幅及び各凸部の高さと、ステップS1で算出された基準となる非球面形状SBとから対物レンズ8に設けられる第2の位相構造12の実際の形状を算出するステップS7とを備える。
ステップS1では、例えば40℃程度の設計温度(以下、「基準設計温度」という。)における、DVD等の第1の光ディスクに対する記録及び再生を考慮して決定された、第1の波長の光ビームに対して最適な対物レンズ、すなわちこのような対物レンズの算出された基準非球面形状を入力部101より入力する。ここでは、対物レンズの一方の面8aの基準となる非球面形状(基準非球面形状)SBと、他方の面8bの形状(非球面形状)とが入力される。
ステップS2において、第1の位相構造算出部102は、第2の光ディスクに変更した際に発生する収差を算出する。すなわち、このステップS2では、ステップS1で算出された第1の波長に対して最適な非球面形状SBとされた対物レンズを用いて、CD等の第2の光ディスクに対する記録及び/又は再生を行う際に、第2の波長の光ビームに発生する球面収差等の収差量を算出する。そして、この発生する収差量を打ち消すための互換用補正必要収差量を算出する。
ステップS3は、図9に示すように、ステップS2で算出された互換用補正必要収差量を式(5)で算出されるXで区切ることで第1の位相構造11を形成するための各凹部の位置及び幅を算出するステップS3−1と、各凹部毎に、凹部の幅内の基準非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置Oとし、この凹部が設けられなかったとすれば、第1の位置Oに入射した第1の波長の光ビームがこの対物レンズ8内を通過する直線と、この凹部との交点を第2の位置Aとし、第2の位置Aから光軸方向に伸ばした直線と、基準非球面形状SBとの交点を第3の位置Bとし、第1の位置Oから光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置Bから光軸に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置Cとしたとき、上述の式(6)を満たすように各凹部の高さを算出するステップS3−2とを有する。このようにステップS3は、発生球面収差を打ち消すためのキャンセル位相構造としての各凹部を設計するためのものであり、このステップS3において、第1の位相構造算出部102は、上述のように各凹部の幅、高さ等を算出する。
尚、各凹部により形成される第1の位相構造11に換えて、各凸部により形成される第1の位相構造11Bを形成する場合には、ステップS3−2において、図6を用いて上述したように、第1〜第4の位置O’,A’,B’,C’から各凸部の高さを算出する。
また、上述したように、より確実な収差低減を必要とする場合には、ステップS3−2の後に、凹部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下であることを確認するステップを追加して設けるようにし、この追加したステップにおいて、このP−V値が0.1λ以上である凹部がある場合には、その凹部の幅をさらに分割してステップS3−2に戻るようにし、このP−V値が0.1λ以上である凹部がない場合には、ステップS4に進むように構成してもよい。
ステップS4において、第1の位相構造算出部102は、ステップS3で算出された各凹部の幅及び高さと、基準非球面形状SBとを足し合わせることによって、非球面形状SBに位相構造が付与された第1の位相構造11の実際の形状を算出することができる。ここで、算出された第1の位相構造11は、上述のように第2の光ディスクの開口制限NA2内に形成されており、上述したようなフォーマット互換用の機能を有する。
ステップS5において、第2の位相構造算出部103は、温度を変更した際に発生する収差を算出する。すなわち、このステップS5では、ステップS1で算出された例えば40℃程度の基準設計温度における第1の波長に対して最適な非球面形状SBにステップS4で算出された第1の位相構造11が形成された対物レンズを用いて、設計条件として定められる最高設計温度における第1の波長の光ビームに発生する収差量を算出する。そして、この発生する収差量を打ち消すための温度補償用補正必要収差量を算出する。このとき、第1の位相構造11は、基準設計温度における第1の波長に対してほとんど収差を発生させないため、最適な非球面形状SBとされた対物レンズを用いて最高設計温度における収差量を算出するようにしてもよい。
ステップS6は、図10に示すように、ステップS5で算出された温度補償用補正必要収差量を式(10)で算出されるX’で区切ることで第2の位相構造12を形成するための各凸部の位置及び幅を算出するステップS6−1と、各凸部毎に、凸部の幅内の基準非球面形状SBの少なくとも任意の一点を第1の位置O’とし、この凸部が設けられなかったとすれば、第1の位置O’に入射した第1の波長の光ビームがこの対物レンズ8内を通過する直線と、凸部との交点を第2の位置A’とし、第1の位置O’から光軸方向に伸ばした直線と、凸部との交点を第3の位置B’とし、第2の位置A’から光軸方向に伸ばした直線と、第3の位置B’から光軸に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置C’としたとき、上述の式(11)を満たすように各凸部の高さを算出するステップS6−2とを有する。このようにステップS6は、温度変化により発生する球面収差を打ち消すためのキャンセル位相構造としての各凸部を設計するためのものであり、このステップS6において、第2の位相構造算出部103は、上述のように各凸部の幅、高さ等を算出する。
尚、各凸部により形成される第2の位相構造12に換えて、各凹部により形成される第1の位相構造12Bを形成する場合には、ステップS6−2において、図4を用いて上述したように、第1〜第4の位置O,A,B,Cから各凹部の高さを算出する。
また、上述したように、より確実な収差低減を必要とする場合には、ステップS6−2の後に、凸部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以下であることを確認するステップを追加して設けるようにし、この追加したステップにおいて、このP−V値が0.1λ以上である凸部がある場合には、その凸部の幅をさらに分割してステップS6−2に戻るようにし、このP−V値が0.1λ以上である凸部がない場合には、ステップS6に進むように構成してもよい。
ステップS7において、第2の位相構造算出部103は、ステップS6で算出された各凸部の幅及び高さと、基準非球面形状SBに第1の位相構造11が設けられたものとを足し合わせることによって、非球面形状SBに位相構造が付与された第2の位相構造12の実際の形状、すなわち、非球面形状SBに第1及び第2の位相構造11,12が設けられた対物レンズ8の第1面8aの実際の形状を算出することができる。ステップS1で対物レンズ8の第2面8aの形状が算出されているので、このステップS7により対物レンズ8の形状全体が算出されることとなる。ここで、算出された第2の位相構造12は、上述のように第2の光ディスクの開口制限NA2の外側であって第1の光ディスクの開口制限NA1内に形成されており、上述したような温度補償用の機能を有する。
以上のようなステップS1〜S7からなる対物レンズの設計方法は、第2の光ディスクの開口制限NA2内に、フォーマット互換用の第1の位相構造11と、第2の光ディスクの開口制限NA2の外側であって第1の光ディスクの開口制限NA1内に、温度補償用の第2の位相構造12とを、従来の平板NPS構造の設計で発生した上述した問題を解消して、非球面形状SBとされた基準面に対して設けた対物レンズ8を設計することができ、すなわち、レンズの一方の面8aに形成された第1及び第2の位相構造11,12によりフォーマット互換と温度補償とを実現して良好な記録再生を可能とする対物レンズ8を設計することができる。尚、ここで、ステップS1〜S4が第1の位相構造11を設計するステップとして機能し、ステップS1,S5〜7が第2の位相構造12を設計するステップとして機能している。
本発明を適用した対物レンズの設計方法は、ステップS1と、ステップS2と、ステップS3−1と、ステップS3−2とを備えることにより、対物レンズの一方の面8aに、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように形成され、第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を算出することができ、かかる位相構造により収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することにより、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を可能とする対物レンズを設計することを実現する。
本発明を適用した対物レンズの設計方法は、ステップS5と、ステップS6−1と、ステップS6−2とを備えることにより、対物レンズの一方の面8aに、基準となる非球面形状SBに半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部又は凸部を設けるように形成され、温度変化があった場合に第1の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を算出することができ、かかる位相構造により温度変化があった場合にも収差等を低減して、第1の光ディスクに対して光ビームを良好に集光することができ、簡易な構成で温度補償機能を有する対物レンズを設計することを実現する。
次に、上述したような本発明を適用した対物レンズの設計方法及び本発明を適用した対物レンズ8の実施例について説明する。また、この本発明の実施例と比較するための従来の平板NPSの考え方を適用した比較例についてもあわせて説明する。
まず、設計条件として、第1の波長の設計波長は、662.7(nm)とし、第2の波長の設計波長は、788(nm)とする。また、n1,n2は、対物レンズ8を構成する材料の、それぞれ第1、第2の波長の設計波長における屈折率を示し、n1=1.539(@662.7nm)とし、n2=1.536(@788nm)とする。また、tは、対物レンズ8の光軸位置での厚み(mm)を示し、t=1.75(mm)とする。
また、ステップS1により算出される対物レンズ8の非球面形状、すなわち、第1面8aの基準非球面形状及びSB第2面8bの非球面形状を以下の式(15)及びこの式(15)中の各非球面関数を以下に示す。尚、式(15)中において、rは、光軸からの距離(mm)を示し、F(r)は、光軸からの距離がrの位置における非球面の面頂点の接平面からの距離(mm)を示し、Kは、円推定数を示し、A,B,C,Dは、それぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数を示すものである。
対物レンズ8の光源側の第1面8aの基準非球面形状を示すR,K,A〜Dは、以下のとおりである。
<第1面形状>
R: 1.729
K:−5.087×10−1
A: 5.018×10−5
B:−1.028×10−4
C: 1.474×10−4
D:−4.261×10−5
<第1面形状>
R: 1.729
K:−5.087×10−1
A: 5.018×10−5
B:−1.028×10−4
C: 1.474×10−4
D:−4.261×10−5
また、対物レンズ8の光ディスク側の第2面8bの非球面形状を示すR,K,A〜Dは、以下のとおりである。
<第1面形状>
R:−6.739
K:−2.591
A: 0.2334×10−1
B:−0.5449×10−2
C: 0.7293×10−3
D:−0.3712×10−4
<第1面形状>
R:−6.739
K:−2.591
A: 0.2334×10−1
B:−0.5449×10−2
C: 0.7293×10−3
D:−0.3712×10−4
次に、ステップS2及びステップS3により得られた実施例の対物レンズの第1の位相構造11を形成するための各凹部の例の各凹部の位置及び高さを表1に示す。各位置間の距離が各凹部の幅を示すものとする。尚、表1には、各凹部の位置及び幅を等しくして、従来の平板NPSの考え方を適用した比較例の各凹部の高さについても示す。また、この例においては、0.776〜1.167において、上述したP−V値の観点から、ステップS3−2の後に凹部の幅を再分割して各凹部の幅及び高さを算出した。
また、ステップS5及びステップS6により得られた実施例の対物レンズの第2の位相構造12を形成するための各凸部の例の各凸部の位置及び高さを表2に示す。尚、表2には、従来の平板NPSの考え方を適用した比較例の各凸部の高さについても示す。
上述のように得られた実施例及び比較例の各凹部及び各凸部の幅及び高さと、上述した基準非球面形状SBとからS4及びS7の手法により得られる形状に形成された実施例の対物レンズと、比較例の対物レンズのレンズ評価結果について以下に説明する。
<レンズ評価結果>
(1−1)第1の波長の透過波面(第2の光ディスクの開口制限NA2の内側部分)
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図11(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図11(b)に示す。この「(1−1)」及び次の「(1−2)」で示す評価結果は、第1及び第2の光ディスクの互換用の部分のみを示し、すなわち、半径0〜1.402(mm)は、第2の光ディスクの開口制限NA2内の部分、すなわち、第1の位相構造11が設けられている部分のみを示す。尚、図11(a)及び図11(b)、並びに後述の図12、図13中において、横軸は、半径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、当該位置における波面収差(λ)を示すものである。また、図11(a)の場合の残留収差は、0.0122λrmsであり、図11(b)の場合の残留収差は、0.1136λrmsであった。
(1−1)第1の波長の透過波面(第2の光ディスクの開口制限NA2の内側部分)
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図11(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図11(b)に示す。この「(1−1)」及び次の「(1−2)」で示す評価結果は、第1及び第2の光ディスクの互換用の部分のみを示し、すなわち、半径0〜1.402(mm)は、第2の光ディスクの開口制限NA2内の部分、すなわち、第1の位相構造11が設けられている部分のみを示す。尚、図11(a)及び図11(b)、並びに後述の図12、図13中において、横軸は、半径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、当該位置における波面収差(λ)を示すものである。また、図11(a)の場合の残留収差は、0.0122λrmsであり、図11(b)の場合の残留収差は、0.1136λrmsであった。
図11(b)に示すように、比較例においては、上述の平板NPSで設計した位相構造をそのままレンズ面に設けたときの問題、すなわち、不要な収差が発生しており、特にそのレンズ面の傾斜が大きい外周部において大きな収差が発生してしまうこととなる。その一方で、図11(a)に示すように、本実施例においては、第1の波長の光ビームに対してほとんど収差を与えないように、すなわち、設計された非球面形状とされた基準非球面を通過するのとほぼ同様の状態で第1の光ディスクに集光されることとなる。この実施例にも示されているように、上述のステップS2,S3で得られた第1の位相構造、すなわち本発明を適用した対物レンズを構成する第1の位相構造11は、第1の波長の光ビームに対して影響を与えることがなく、その設計条件で算出された非球面形状の性能を維持することができる。
(1−2)第2の波長の透過波面(第2の光ディスクの開口制限NA2の内側部分)
第2の波長の光ビームとして、波長が788.0(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図12(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図12(b)に示す。また、図12(a)の場合の残留収差は、0.0489λrmsであり、図12(b)の場合の残留収差は、0.1044λrmsであった。
第2の波長の光ビームとして、波長が788.0(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図12(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図12(b)に示す。また、図12(a)の場合の残留収差は、0.0489λrmsであり、図12(b)の場合の残留収差は、0.1044λrmsであった。
図12(b)に示すように、比較例においては、上述の平板NPSで設計した位相構造をそのままレンズ面に設けたときの問題、すなわち、第1の波長に対して最適な形状とされた基準非球面形状SB等で形成された対物レンズに第2の波長の光ビームが入射することにより発生する収差を位相構造で十分に低減できず収差が発生してしまうこととなる。その一方で、図12(a)に示すように、本実施例においては、第1の波長に対して最適な形状とされた基準非球面形状SB等で形成された対物レンズに第2の波長の光ビームが入射することにより発生する収差を第1の位相構造11で十分に低減した状態で第2の光ディスクに集光させることができる。この実施例にも示されているように、上述のステップS2,S3で得られた第1の位相構造、すなわち本発明を適用した対物レンズを構成する第1の位相構造11は、上述したように第1の波長の光ビームに対して影響を与えることなく、第2の波長の光ビームに対しては上述したフォーマットの違いにより発生する収差を低減することができ、すなわち、互換性の機能を十分に発揮することができる。
(1−3)第1の波長の透過波面(第1の光ディスクの開口制限NA1の内側部分)
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.802(mm)の領域に入射した基準設計温度における光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図13(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図13(b)に示す。この「(1−3)」で示す評価結果は、互換用の部分及び第1の波長に対する温度補償用の部分を示し、すなわち、半径0〜1.802(mm)は、第1の光ディスクの開口制限NA1内の部分、すなわち、第1及び第2の位相構造11,12が設けられている部分を示す。また、図13(a)の場合の残留収差は、0.0366λrmsであり、図13(b)の場合の残留収差は、0.2477λrmsであった。
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.802(mm)の領域に入射した基準設計温度における光ビームの半径方向の位置毎の波面収差を図13(a)に示す。また、同様に比較例の対物レンズに入射した光ビームの波面収差を図13(b)に示す。この「(1−3)」で示す評価結果は、互換用の部分及び第1の波長に対する温度補償用の部分を示し、すなわち、半径0〜1.802(mm)は、第1の光ディスクの開口制限NA1内の部分、すなわち、第1及び第2の位相構造11,12が設けられている部分を示す。また、図13(a)の場合の残留収差は、0.0366λrmsであり、図13(b)の場合の残留収差は、0.2477λrmsであった。
図13(b)に示すように、比較例においては、温度補償のための回折構造により基準設計温度において、大きな収差が発生してしまい、問題となる。その一方で、図13(a)に示すように、本実施例においては、温度変化があった場合に、収差を十分に低減できるとともに、基準設計温度において不要な収差が発生することなく収差を十分に低減した状態で第1の光ディスクに集光させることができる。この実施例にも示されているように、上述のステップS5,S6で得られた第2の位相構造、すなわち本発明を適用した対物レンズを構成する第2の位相構造12は、上述したように基準設計温度における光ビームに対しても収差を発生させることがない。尚、このような第2の位相構造12は、最高設計温度における第1の波長の光ビームに対して発生する収差を低減することができ、すなわち、温度補償の機能を十分に発揮することができる。
(2−1)第1の波長の光ビームのスポット形状(第2の光ディスクの開口制限NA2の内側部分)
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの第1の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図14の実線L210に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図14の実線L211に示す。この「(2−1)」及び次の「(2−2)」で示す評価結果は、第1及び第2の光ディスクの互換用の部分のみに入射された光ビームの強度を示す。尚、図14、及び後述の図15,図16中において、横軸は、光ディスクの信号記録面上に集光されたスポットの半径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、当該位置における光の相対強度(a.u.)を示すものである。
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの第1の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図14の実線L210に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図14の実線L211に示す。この「(2−1)」及び次の「(2−2)」で示す評価結果は、第1及び第2の光ディスクの互換用の部分のみに入射された光ビームの強度を示す。尚、図14、及び後述の図15,図16中において、横軸は、光ディスクの信号記録面上に集光されたスポットの半径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、当該位置における光の相対強度(a.u.)を示すものである。
図14に示すように、実線L211で示される比較例に対して、実線L210で示される本実施例においては、光強度が高い状態で光ビームを集光することができる。また、0.61×λ/NAで得られる回折限界スポット半径0.79μm(=0.61×0.6627/0.51)に近い状態でスポットを集光することができる。このように、上述のステップS2,S3で得られた第1の位相構造、すなわち本発明を適用した対物レンズを構成する第1の位相構造11は、第1の波長に対して収差を十分に低減することにより、高い光強度が得られ、さらに良好なスポット形状で集光させることを実現する。
(2−2)第2の波長の光ビームのスポット形状(第2の光ディスクの開口制限NA2の内側部分)
第2の波長の光ビームとして、波長が788.0(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの第2の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図15の実線L220に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図15の実線L221に示す。
第2の波長の光ビームとして、波長が788.0(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.402(mm)の領域に入射した光ビームの第2の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図15の実線L220に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図15の実線L221に示す。
図15に示すように、実線L221で示される比較例に対して、実線L220で示される本実施例においては、光強度が高い状態で光ビームを集光することができる。また、回折限界スポット半径0.94μm(=0.61×0.788/0.51)に近い状態でスポットを集光することができる。このように、上述のステップS2,S3で得られた第1の位相構造、すなわち本発明を適用した対物レンズを構成する第1の位相構造11は、第2の波長に対しても収差を十分に低減することにより、高い光強度が得られ、さらに良好なスポット形状で集光させることを実現する。
(2−3)第1の波長の光ビームのスポット形状(第1の光ディスクの開口制限NA1の内側部分)
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.802(mm)の領域に入射した基準設計温度における光ビームの第1の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図16の実線L230に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図16の実線L231に示す。
第1の波長の光ビームとして、波長が662.7(nm)で、且つ上述した実施例の対物レンズの半径0〜1.802(mm)の領域に入射した基準設計温度における光ビームの第1の光ディスクの信号記録面上のスポットの半径方向の位置における強度分布を図16の実線L230に示す。また、同様に、比較例の対物レンズに入射した光ビームの信号記録面上のスポットの強度分布を図16の実線L231に示す。
図16に示すように、実線L231で示される比較例に対して、実線L230で示される本実施例においては、光強度が高い状態で光ビームを集光することができる。また、回折限界スポット半径0.62μm(=0.61×0.6627/0.65)に近い状態でスポットを集光することができる。このように、上述のステップS5,S6で得られた第2の位相構造、すなわち、本発明を適用した対物レンズを構成する第2の位相構造12は、基準設計温度における光ビームに対しても不要な収差を発生させることがない。尚、このような第2の位相構造12は、最高設計温度における光ビームに対しても収差を発生させることなく、すなわち、温度補償の機能を十分に発揮することができる。
以上のように、本実施例により得られた対物レンズは、その第1の位相構造により、収差等を発生させることなく各光ディスクに対して光ビームを集光することができ、簡易な構成で複数種類の光ディスクに対する互換性を実現して、良好な記録再生特性を実現するとともに、その第2の位相構造により、温度変化等があった場合にも、従来の対物レンズで発生するおそれのあった収差等を発生させることなく第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを集光することができ、簡易な構成で温度変化に起因する第1の波長に対する収差を補正することを実現して、温度変化があった場合にも良好な記録再生特性を実現する。
1 光ピックアップ、 2 光ディスク、 3 第1の光源部、 4 第2の光源部、 5 第1のビームスプリッタ、 6 コリメータレンズ、 7 第2のビームスプリッタ、 8 対物レンズ、 9 光検出器、 10 マルチレンズ、 11 第1の位相構造、 12 第2の位相構造
Claims (11)
- 複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、
少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有し、
上記位相構造は、上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状を決定し、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように上記位相構造で打ち消すための上記半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、上記補正必要収差量を式(1)で算出されるXで区切ることで各凹部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、上記各凹部毎に、上記凹部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凹部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凹部との交点を第2の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記非球面形状との交点を第3の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(2)を満たすように上記各凹部毎の高さを決定することにより得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された上記輪帯状の複数の凹部が、上記非球面形状に設けられるように、形成されている対物レンズ。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(1)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(2)
但し、式(1)及び式(2)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CO:上記第4の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
OA:上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
BA:上記第3の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離
である。 - 上記位相構造は、上記第1の位置が、上記凹部の幅内の上記非球面形状の半径方向の中間位置とされて得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された複数の凹部が設けられるように形成されている請求項1記載の対物レンズ。
- 上記位相構造は、上記第1の位置が、上記第1の位置を複数の箇所に設定した場合にそれぞれ得られる上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の傾きの平均の傾きと、当該第1の位置により得られる第2の位置とを結ぶ直線の傾きと、が同じ傾きとなるような位置とされて、得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された複数の凹部が設けられるように形成されている請求項1記載の対物レンズ。
- 上記位相構造は、上記決定された幅で形成される上記各凹部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以上となってしまう場合に、当該幅をさらに分割して各凹部の位置及び幅を決定し、上記さらに分割した各凹部毎の上記第1乃至第4の位置が上記式(2)を満たすように上記各凹部毎の高さを決定することにより得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された複数の凹部が設けられるように形成されている請求項1記載の対物レンズ。
- 複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズにおいて、
少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凸部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有し、
上記位相構造は、上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状を決定し、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように上記位相構造で打ち消すための上記半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、上記補正必要収差量を式(3)で算出されるXで区切ることで各凸部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、上記各凸部毎に、上記凸部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凸部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凸部との交点を第2の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記凸部との交点を第3の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(4)を満たすように上記各凸部毎の高さを決定することにより得られた上記各凸部の幅及び高さで決定された上記輪帯状の複数の凸部が、上記非球面形状に設けられるように、形成されている対物レンズ。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(3)
CA+n1×AO−BO=λ1×m2 ・・・(4)
但し、式(3)及び式(4)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CA:上記第4の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
AO:上記第2の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
BO:上記第3の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離
である。 - 上記位相構造は、上記第1の位置が、上記凸部の幅内の上記非球面形状の半径方向の中間位置とされて、得られた上記各凸部の幅及び高さで形成された複数の凹部が設けられるように形成されている請求項5記載の対物レンズ
- 上記位相構造は、上記第1の位置が、上記第1の位置を複数の箇所に設定した場合にそれぞれ得られる上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の傾きの平均の傾きと、当該第1の位置により得られる第2の位置とを結ぶ直線の傾きと、が同じ傾きとなるような位置とされて、得られた上記各凸部の幅及び高さで形成された複数の凸部が設けられるように形成されている請求項5記載の対物レンズ。
- 上記位相構造は、上記決定された幅で形成される上記各凹部内における取れ残りの収差のP−V値が0.1λ以上となってしまう場合に、当該幅をさらに分割して各凹部の位置及び幅を決定し、上記さらに分割した各凸部毎の上記第1乃至第4の位置が上記式(4)を満たすように上記各凸部毎の高さを決定することにより得られた上記各凸部の幅及び高さで形成された複数の凸部が設けられるように形成されている請求項5記載の対物レンズ。
- 複数種類の光ディスクに対して少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを選択的に照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップにおいて、
上記少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光する対物レンズを備え、
上記対物レンズは、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に、半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有し、
上記位相構造は、上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状を決定し、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように上記位相構造で打ち消すための上記半径方向の位置毎の補正必要収差量を算出し、上記補正必要収差量を式(5)で算出されるXで区切ることで各凹部の上記半径方向の位置及び幅を決定し、上記各凹部毎に、上記凹部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凹部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凹部との交点を第2の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記非球面形状との交点を第3の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(6)を満たすように上記各凹部毎の高さを決定することにより得られた上記各凹部の幅及び高さで形成された上記輪帯状の複数の凹部が、上記非球面形状に設けられるように、形成されている光ピックアップ。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(5)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(6)
但し、式(5)及び式(6)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CO:上記第4の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
OA:上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
BA:上記第3の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離
である。 - 複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光するとともに、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凹部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有する対物レンズを設計する対物レンズの設計方法において、
入力された上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状に基づいて、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量を算出するステップと、
上記補正必要収差量を式(7)で算出されるXで区切ることで各凹部の位置及び幅を算出するステップと、
上記各凹部毎に、上記凹部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凹部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凹部との交点を第2の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記非球面形状との交点を第3の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(8)を満たすように上記各凹部の高さを算出するステップと、
上記各凹部の幅及び上記各凹部の高さと、上記非球面形状とから上記対物レンズの形状を算出するステップとを備える対物レンズの設計方法。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(7)
CO+n1×OA−BA=λ1×m2 ・・・(8)
但し、式(7)及び式(8)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CO:上記第4の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
OA:上記第1の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
BA:上記第3の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離
である。 - 複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ、少なくとも第1及び第2の波長の光ビームを対応する光ディスクに対して集光するとともに、少なくとも一方の面に、基準となる非球面形状に半径方向に所定の幅及び光軸方向に所定の高さの輪帯状の複数の凸部を設けるように、形成され、上記第1及び第2の波長の光ビームを集光する際に発生する収差を抑える輪帯状の位相構造を有する対物レンズを設計する対物レンズの設計方法において、
入力された上記第1の波長の光ビームに収差を発生させないような基準となる非球面形状に基づいて、上記非球面形状が形成されたとした場合に上記第2の波長の光ビームに発生する収差を抑えるように打ち消すための補正必要収差量を算出するステップと、
上記補正必要収差量を式(9)で算出されるXで区切ることで各凸部の位置及び幅を算出するステップと、
上記各凸部毎に、上記凸部の幅内の上記非球面形状の少なくとも任意の一点を第1の位置とし、上記凸部が設けられなかったとすれば、上記第1の位置に入射した上記第1の波長の光ビームが当該対物レンズ内を通過する直線と、上記凸部との交点を第2の位置とし、上記第1の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記凸部との交点を第3の位置とし、上記第2の位置から上記光軸方向に伸ばした直線と、上記第3の位置から上記光軸方向に直交する方向に伸ばした直線との交点を第4の位置とし、式(10)を満たすように上記各凸部の高さを算出するステップと、
上記各凸部の幅及び上記各凸部の高さと、上記非球面形状とから上記対物レンズの形状を算出するステップとを備える対物レンズの設計方法。
X=λ1/(n1−1)×m1 ・・・(9)
CA+n1×AO−BO=λ1×m2 ・・・(10)
但し、式(9)及び式(10)中
λ1:上記第1の波長、
n1:当該対物レンズを構成する材料の第1の波長に対する屈折率、
m1,m2:それぞれ正若しくは負の整数又は0、
CA:上記第4の位置と上記第2の位置とを結ぶ直線の距離、
AO:上記第2の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離、
BO:上記第3の位置と上記第1の位置とを結ぶ直線の距離
である。
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Legal Events
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20111115 |
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A02 | Decision of refusal |
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