JP2009167642A - 再利用可能な鉄骨架構 - Google Patents

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【課題】 既存建物の上方に設けて、既存建物に荷重をかけることなく追加設備を支持でき、再利用が容易な鉄骨架構を提供する。
【解決方法】 所定長の柱ユニットをボルト留めして形成した柱と、所定長の梁ユニットをボルト留めして形成した梁と、前記柱ユニットと梁ユニットの長さにあわせて寸法が決められて、設備機器を搭載することのできる床組みフレームユニットとを備え、既存建物の上方に設備機器を設置するための、既存建物とは独立した鉄骨架構。
【選択図】 図1

Description

本発明は、既存建物の上方に設けて、既存建物に荷重をかけることなく追加設備を支持することのできる鉄骨架構に関し、特に、建設と解体が迅速かつ容易で、再利用性に優れた点に特徴を有する鉄骨架構に関するものである。
既存の工場などへの電力の供給あるいは二酸化炭素の排出量削減などのために、工場建物等の竣工後に、太陽電池等の設備機器を設置する必要が生じることが有る。この場合、既存の工場建物等の周囲に空き地が有れば、当該空き地に必要な設備を設けることができるし、既存の工場建物の構造部材が追加設備の重量に対して十分な余剰断面を有していれば必要な設備を工場建物に搭載することができる。しかし、往々にして周辺には利用できる空き地が無く、設計荷重を超えてしまうことになるので工場建物に追加設備を搭載できない事態が起きる。
このような場合に、既存の工場建物等の補強工事を行うことは内部の生産ラインをストップさせるなどの弊害があるので、既存の工場建物等の外側を取り囲むように架構を建設し、追加設備の荷重は全て当該架構に支持させることが有効である。
このような目的で利用可能な仮設上屋が、例えば特開2002−47807号公報に開示されている。当該公報によれば、仮設上屋は、ウェブの両端部にフランジを有する形鋼からなる一対の梁が山形に接合され、これがウェブの両端部にフランジを有する形鋼からなる一対の柱の上端部に接合される。柱と梁とは方杖で結合され、山型に形成された梁と梁とがタイバーで結合されて単位フレームが形成される。この単位フレームが桁方向に複数個並設されて、つなぎ材およびブレースで結合されている(図9参照)。
上記特開2002−47807号公報に記載された仮設上屋は、仮設と表現されてはいるが一部を除いて溶接接合が前提であるために現場での作業工数が多く、工期が長くかつコスト高になりがちである。また、一旦建設した仮設上屋を解体して、また別の場所で再利用することに適合するための配慮は全くなされていない。
また、特開平9−235781号公報は、壁部の厚さが薄くて建築物内への出入りがし易すく、組立ておよび解体が容易で、解体後にその建築部材を再使用できることを目的とした組立式仮設建築物を開示する。具体的には、I形鋼の両端に通孔付き端板を固着して前後の横土台、支柱、梁および両側の縦土台、縦桟等を形成し、それらの側面の適当箇所に通孔付き座板を固着してI形鋼のフランジの適当箇所に通孔を穿つ。その前後の横土台、支柱、梁および両側の縦土台、縦桟等をそれらの上記端板、座板、フランジの適当通孔にそれぞれ挿着するボルト・ナツトにより締付け固定し、前後の隣接する上記支柱を着脱可能の筋交いにより連結する(図10参照)。
上記特開平9−235781号公報に記載された仮設建築物は、組み立て、解体および再利用に適合するように考慮されてはいるが、既存建物の上部を覆うように仮設して所定の設備機器の荷重を支持することを目的としたものではない。したがって、大きな内部空間を確保して、既存建物を無駄なく収容することに対して適合していない。
さらに、特開平5−195633号公報は、建築構築現場の上面に取付け、現場を雨、風、雪から保護する仮設屋根を開示したものである。当該仮設屋根は、並行に配置した桁材に複数の妻型フレームを架設し、隣合うフレーム間にシートを張設してなる仮設屋根であって、前記妻型フレームは中空で、相対向する二つの側壁の少なくとも一方の端部に外側に向けて開口するガイド溝を有するアルミ型材を互いに突き合わせて形成した屋根部材と、前記屋根部材の両端部に垂設した支柱とを有する。前記支柱の下端部に軸支したガイドローラを桁材上に敷設したレールに載置する(図11参照)。
上記特開平5−195633号公報に記載された仮設屋根は、現場を風雨から保護することを目的としているが、仮設屋根に設備機器を搭載することを目的としていないので、架構として十分な強度を有する配慮はなされていない。また、現場は地表面より下であることを前提とした仮設屋根なので、軒の位置にタイロッドが設けられているなど、高さの大きな建築物を収容することは考慮されていない。
特開2002−47807号公報 特開平9−235781号公報 特開平5−195633号公報
本発明は、前記従来技術が有する不便を解消して、既存建物を収容して、既存建物に荷重をかけることなく追加設備を支持することのできる鉄骨架構であって、再利用が容易な鉄骨架構に関するものである。
本発明の上記目的は、 所定長の柱ユニットをボルト留めして形成した柱と、
所定長の梁ユニットをボルト留めして形成した梁と、
前記柱ユニットと梁ユニットの長さにあわせて寸法が決められて、設備機器を搭載することのできる床組みフレームユニットとを備え、
既存建物の上方に設備機器を設置するための、既存建物とは独立した鉄骨架構によって達成される。
ここで、所定長とは、例えば柱ユニットに関しては3m、梁ユニットに関しては4mのようにユニットごとに一定の長さであっても良いし、柱ユニット梁ユニット共に3mのように一定であっても良い。また、ユニット自体は柱ユニット、梁ユニットを区別せず、必要な断面性能に応じて柱ユニットとしても、梁ユニットとしても用いられるものとしても良い。さらに、ユニット長を全て統一する必要は無く、例えば柱ユニットに関して、2mの柱ユニットと3mの柱ユニットを準備すれば、これらの3本以内の組み合わせによって、長さ2mから9mまでの全ての(1m刻みの)柱長を実現することができるので利便性が高い。梁ユニットに関しても同様である。
柱ユニットおよび梁ユニットをボルト留めして柱又は梁を形成するには、スプライスプレートを用いるのが好ましい。したがって、柱ユニットおよび梁ユニットの端部近傍には、スプライスプレートをボルト止めできるように、予めボルト穴が設けられているのが好ましい。
本発明の他の特徴によれば、前記柱と前記梁とを予め形成された柱梁接合ユニットによって相互にボルト留めして形成したフレームと、
隣接する2つのフレームの柱頭部にボルト留めされて2つのフレームを相互に締結する横つなぎ部材と、
フレームの柱頭部と隣接するフレームの柱脚部にボルト留めされて2つのフレームを相互に締結するブレース部材とを備え、
前記床組みフレームユニットは、矩形の枠と枠の対向する隅部を連結する対角部材を有し、隣接する2つのフレームの梁の間に架け渡されて梁ユニットにボルト留めされており、
フレームユニット上に機器を搭載して自立するために必要な強度を有すると共に、ボルト締結によって組み立て可能であり、ボルトを取り除くことで柱ユニット、梁ユニット、柱梁接合ユニット、横つなぎ部材、ブレース部材と床組みフレームユニットにまで解体可能な請求項1に記載の鉄骨架構が提供される。
柱梁接合ユニットは、溶接によって一体構造となったものでも良いが、複数の部材をボルトで接合したものであっても良い。柱ユニットおよび梁ユニットとボルト止めする端部には予めボルト穴が設けられているのが好ましい点については、柱ユニット、梁ユニットと同様である。柱梁接合ユニットは、柱の軸方向と梁の軸方向が直交することを前提としたものであっても良いが、隅部が鋭角または鈍角を形成するものであっても良い。1つのフレームの左右に柱の軸方向と梁の軸方向が直交することを前提とした柱梁接合ユニット用いれば、平坦な梁および屋根との相性が良い。一方、1つのフレームの左右に隅部が鋭角の柱梁接合ユニットと鈍角の柱梁接合ユニットを用いれば、片流れの屋根勾配を実現でき、2つの柱梁接合ユニットに何れも鈍角のものを用いれば、中央の高い山型のフレームを実現できる。
横つなぎ部材が連結される柱頭部は、柱の頂部近傍あるいは梁の柱頂部近傍を含めて指すものとする。ブレース部材が連結される柱脚部は、柱の下端部近傍を指すものとする。
床組みフレームユニットはそれ自体が1つの矩形で2組の対向する隅部、2つの対角部材を有するものであっても良いし、複数の矩形フレームから構成されており、各フレームが2組の対向する隅部、2つの対角部材を有するものであっても良い。対角部材は、引張方向に所定の剛性と強度を有する部材であれば断面形状を問わない。鋼製のワイヤーであっても良い。あるいは、矩形フレームの空隙部を塞ぐように設けた鋼板であっても良い。
上記鉄骨架構は、ボルト締結によって組み立て可能であり、ボルトを取り除くことで柱ユニット、梁ユニット、柱梁接合ユニットと、横つなぎ部材と、ブレース部材と、床組みフレームユニットにまで解体可能なので、建設および解体が迅速かつ容易であり、内部に収容される既存建物の大きさ、形状に応じて形状、寸法を容易に変更でき、鋼材の再利用に適している。
本発明の他の特徴によれば、鉄骨架構は、さらに柱と梁の隅部にボルト留めされた方杖材を備えている。方杖材を前提とすることによって柱梁接合ユニットおよび隅部近傍の柱ユニット、梁ユニットが負担する曲げモーメントを低減することができるので、全体として断面設計が合理化される。
方杖部材として、鋼材、低降伏点鋼またはこれらの組み合わせを用いれば、地震荷重あるいは風荷重による振動のエネルギーを方杖部材によってある程度吸収することができ、全体として構造強度の向上と共に制振効果を期待することができる。
柱ユニットと梁ユニットには、ガセットプレートをあらかじめ取り付けておき、当該ガセットプレートによって、横つなぎ部材、ブレース部材および方杖材を柱ユニットおよび梁ユニットにボルト留めするようにしても良い。この場合、横つなぎ部材等の締結がいっそう容易かつ迅速になる。ガセットプレートの柱ユニットおよび梁ユニットへの取り付けは、溶接またはボルト締結である。
柱ユニットまたは梁ユニットの断面形状は、長さに沿って一定であっても良いが、長さ方向に連続的に変化するものであっても良い。例えば、断面形状が徐々に変化する梁ユニットを用いれば、中央部で梁背の大きなフレームを実現することが容易である。また、断面形状が長さ方向に連続的に変化する柱ユニットを用いれば、脚部の断面が頂部の断面より大きな(小さな)柱を容易に実現できる。
本発明によれば、既存建物の上方に設けて、既存建物に荷重をかけることなく追加設備を支持することのできる鉄骨架構、特に、建設が迅速かつ容易で再利用に適した鉄骨架構を実現することができる。
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。実施例およびその説明は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明が以下に記載する実施例に限定されるものではないことは自明である。
図1は、本発明に基づく鉄骨架構を構成する第1のフレーム100を示す概念図である。平屋根のフレーム100は、柱110、120、梁130、柱梁接合ユニット140、150と方杖材160、170から構成されている。柱110、120は、スプライスプレート180、190を介して互いにボルト182、192で締結された2つの柱ユニット112、114、122、124からなり、2つの柱ユニットの長さは概ね等しく、柱ユニットの断面は長さ方向に変化しない。柱ユニット114、124の上部には柱梁接合ユニット140、150が、やはりスプライスプレート184、194を介してボルトで締結されている。柱梁接合ユニット140、150は、柱の軸方向と梁の軸方向が直交するするよう形成されている。
梁130は、6つの梁ユニット132、133、134、135、136、137で構成され、各梁ユニットの梁背は長さ方向に変化し、梁130の中央部ほど梁背が大きくなっている。梁ユニット相互は、柱と同様に、スプライスプレート185、186、187、188、189を介してボルト196で締結されている。
また、フレームの隅部近傍には、柱梁接合ユニット140、150と梁ユニット132、137を連結するように、ガセットプレート142、152を介して、方杖材160、170がボルト接合されている。
上記の構造を有する鉄骨架構が、符合Bで示す既存建物を覆うように設けられ、機械設備など新たに設けられる機器の荷重を支持する。本発明に基づく鉄骨架構は、構成部材がユニット化されており、これらをすべてボルト留めして建築することができるので、迅速かつ確実に建築・解体が可能である。
図2は、本発明に基づく鉄骨架構を構成する第2のフレーム200の概念図である。前記第1のフレーム100との相違点は、梁の中央部に梁背が変化しない梁ユニット210を有していることである。このように、梁を構成する梁ユニットの数を適宜選択することで、梁の長さを自由に変化させることができる。同様に、柱ユニットの数を変えれば柱の高さを変えることができることは自明である。
図3は、本発明に基づく鉄骨架構を構成する第3のフレーム300の概念図である。前記第1のフレーム100との相違点は、柱ユニット310の断面が軸方向に変化し、柱の断面が上から下方向に次第に大きくなっていることである。軸方向に断面が変化する柱ユニットを用いれば、逆に、柱の断面を上から下方向に次第に小さくすることも可能である。
図4は、梁の間に掛け渡す床組みフレームユニット400を示す概念図である。床組みフレームユニット400は2つの矩形枠組みから構成されており、各矩形枠組みは対角線上に対角部材410が設けられており、床組みフレームユニットの面内変形を拘束する。床組みフレームユニット400は、隣接するフレームの間に直接掛け渡されても良いし、隣接するフレームの間に掛け渡された補助部材上に搭載されても良いが、前者のほうが、部材数の削減、工程の簡素化の点では有利である。床組みフレームユニット400の寸法は、梁ユニットの長さ、フレーム相互間の距離と整合するように決定するのが好ましい。
図5は、本発明に基づく鉄骨架構の建設過程(1)の概念図である。既存建物Bの上部を掛け渡すように、複数のフレーム500、510を一定の間隔をあけて立設し、隣り合う2つのフレーム500、510を横つなぎ部材520、522とブレース部材530、532で連結して自立させる。
図6は、前記、本発明に基づく鉄骨架構の建設過程(1)に続く建設過程(2)の概念図である。梁上には複数の床組みフレームユニット400が敷き詰められて屋根構造を構成している。
図7は、敷き詰められた床組みフレームユニット400上に太陽電池パネル700を敷き詰めた完成状態を示す概念図である。図8は、この状態における、建物隅部を拡大して示したものである。この例では、鉄骨架構に太陽電池パネルが搭載されているが、太陽電池パネルに代わって適宜必要な機器を搭載することができ、荷重が屋根面全体にほぼ均一に分布するような例ばかりでなく、特定の位置に集中荷重が加わるような機器を搭載することも問題なく行うことができる。
本発明に基づく第1のフレームの概念図 本発明に基づく第2のフレームの概念図 本発明に基づく第3のフレームの概念図 本発明に基づく床組みフレームユニットの概念図 本発明に基づく鉄骨架構の建設過程(1)の概念図 本発明に基づく鉄骨架構の建設過程(2)の概念図 本発明に基づく鉄骨架構の完成状態の概念図 本発明に基づく鉄骨架構の隅部の概念図 従来技術に属する仮設上屋の概念図 従来技術に属する仮設建築物の概念図 従来技術に属する仮設屋根の概念図
符号の説明
100、200、300、500 ・・・ フレーム
110、120 ・・・ 柱
112、114、122、124 ・・・ 柱ユニット
130 ・・・ 梁
132、133、134、135、136、137 ・・・ 梁ユニット
140、150 ・・・ 柱梁接合ユニット
142、152 ・・・ ガセットプレート
160、170 ・・・ 方杖材
182、192 ・・・ ボルト
184、194 ・・・ スプライスプレート
400 ・・・ 床組みフレームユニット
700 ・・・ 太陽電池パネル

Claims (5)

  1. 所定長の柱ユニットをボルト留めして形成した柱と、
    所定長の梁ユニットをボルト留めして形成した梁と、
    前記柱ユニットと梁ユニットの長さにあわせて寸法が決められて、設備機器を搭載することのできる床組みフレームユニットとを備え、
    既存建物の上方に設備機器を設置するための、既存建物とは独立した鉄骨架構。
  2. 前記柱と前記梁とを予め形成された柱梁接合ユニットによって相互にボルト留めして形成したフレームと、
    隣接する2つのフレームの柱頭部にボルト留めされて2つのフレームを相互に締結する横つなぎ部材と、
    フレームの柱頭部と隣接するフレームの柱脚部にボルト留めされて2つのフレームを相互に締結するブレース部材とを備え、
    前記床組みフレームユニットは、矩形の枠と枠の対向する隅部を連結する対角部材を有し、隣接する2つのフレームの梁の間に架け渡されて梁ユニットにボルト留めされており、
    フレームユニット上に機器を搭載して自立するために必要な強度を有すると共に、ボルト締結によって組み立て可能であり、ボルトを取り除くことで柱ユニット、梁ユニット、柱梁接合ユニット、横つなぎ部材、ブレース部材と床組みフレームユニットにまで解体可能な請求項1に記載の鉄骨架構。
  3. さらに、柱と梁の隅部にボルト留めされ、鋼材、低降伏点鋼からなるダンパーまたはこれらの組み合わせからなる方杖材を備え、構造強度および/または制振効果を向上させた請求項1または2に記載の鉄骨架構。
  4. 前記柱ユニットと梁ユニットにあらかじめ取り付けられたガセットプレートによって、横つなぎ部材、ブレース部材および方杖材が柱ユニットおよび梁ユニットにボルト留めされた前記請求項2または3に記載の鉄骨架構。
  5. 前記柱ユニットまたは梁ユニットは、長さに沿って断面が連続的に変化する請求項1ないし4の何れかに記載の鉄骨架構。
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