JP2009166741A - 車両用動力伝達装置の変速制御装置 - Google Patents

車両用動力伝達装置の変速制御装置 Download PDF

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達也 今村
Toru Matsubara
亨 松原
Atsushi Tabata
淳 田端
Yuji Iwase
雄二 岩▲瀬▼
Kenta Kumazaki
健太 熊▲崎▼
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Abstract

【課題】差動機構と有段の自動変速部とを備えた車両用動力伝達装置において燃費を向上させる制御装置を提供する。
【解決手段】有段変速制御手段82は、現在の自動変速部20の変速段などの車両状態を考慮し、車速Vとアクセル開度Accとに基づいて基本変速点PSTを決定し、その決定した基本変速点PSTに対し要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点を設定ので、エアコンの作動などアクセル開度Acc以外の要因で要求発電量が増加した場合にも、それが考慮されて自動変速部20の変速点が設定されるので、アクセル開度Acc以外の要因で要求発電量が増加し得ることが考慮されない場合と比較して車両全体として燃費を向上させ得る。また、車速Vとアクセル開度Accと要求発電量とから直接に自動変速部20の変速点が設定される場合と比較して、電子制御装置80の制御負荷を軽減できる。
【選択図】図6

Description

本発明は、差動機構と有段の自動変速部とを備えた車両用動力伝達装置において、燃費を向上させる技術に関するものである。
従来から、ハイブリッド車両に好適の用いられる車両用動力伝達装置であって、第1電動機と差動機構とを有しその第1電動機の運転状態が制御されることにより上記差動機構の差動状態が制御される差動部と、動力伝達経路の一部を構成する自動変速部と、その動力伝達経路に連結された第2電動機とを備えた車両用動力伝達装置が知られている。例えば、特許文献1に示された車両用動力伝達装置がそれである。その特許文献1に示された車両用動力伝達装置の制御装置では、最適燃費を得るために車速と運転者の要求出力を表すアクセル開度とに基づいて上記自動変速部の変速が実行される。すなわち、その自動変速部の変速比は車速とアクセル開度とに基づき決定されることになる。
特開2005−337373号公報 特開平5−99325号公報 特開平9−242868号公報
実車においては、エンジン出力は車両走行に供されるのみならず電動エアコンや外部電源への電力供給のための発電にも供される。このように電動エアコンなどの補器類の駆動等によって、発電機として機能する前記第1電動機への要求発電量が増加し、エンジン出力が増加させられることがある。そのように上記要求発電量が増加した場合、前記特許文献1に示された車両用動力伝達装置の制御装置では、前記自動変速部の変速は車速とアクセル開度とに基づいて実行されるので、上記補器類の駆動等によって上記要求発電量が増加しても上記自動変速部が変速されることはなくエンジンの回転速度上昇に伴い専ら前記差動部の変速比が変更されて上記要求発電量の増加に対処されていた。そのため、上記要求発電量が考慮された上で上記自動変速部が変速され、上記差動部の変速比が決定された方が車両全体としてより燃費の向上を図り得る場合があった。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、差動機構と有段の自動変速部とを備えた車両用動力伝達装置において燃費を向上させる制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、請求項1に係る発明は、(a)エンジンと駆動輪との間に連結された差動機構とその差動機構に動力伝達可能に連結された差動用電動機とを有しその差動用電動機の運転状態が制御されることによりその差動機構の差動状態が制御される差動部と、動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の変速制御装置であって、(b)車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速点を設定する有段変速制御手段を備えたことを特徴とする。
請求項2に係る発明では、前記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速点を決定し、その基本変速点に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速点を設定することを特徴とする。
請求項3に係る発明では、(a)前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項4に係る発明では、(a)前記基本変速点を含みその基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項5に係る発明では、(a)前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、前記自動変速部の変速による変速段の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられていることを特徴とする。
請求項7に係る発明では、前記ガード値は変速段数であることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、(a)エンジンと駆動輪との間に連結された差動機構とその差動機構に動力伝達可能に連結された差動用電動機とを有しその差動用電動機の運転状態が制御されることによりその差動機構の差動状態が制御される差動部と、動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の変速制御装置であって、(b)車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速比を設定する有段変速制御手段を備えたことを特徴とする。
請求項9に係る発明では、前記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速比を決定し、その基本変速比に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速比を設定することを特徴とする。
請求項10に係る発明では、(a)前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項11に係る発明では、(a)前記自動変速部の変速比が基本変速比とされるように変速されたとした場合の変速点である基本変速点を含みその基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項12に係る発明では、(a)前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うことを特徴とする。
請求項13に係る発明は、前記自動変速部の変速による変速比の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられていることを特徴とする。
請求項14に係る発明では、前記ガード値は変速比であることを特徴とする。
請求項15に係る発明では、前記ガード値は、前記車両用動力伝達装置が有する回転要素の回転速度を予め設定された回転速度許容値以下に抑えるための高回転防止領域であることを特徴とする。
請求項16に係る発明では、(a)前記要求発電量が変化したことにより前記自動変速部で変速された場合に、その要求発電量の変化による変速に対し変速比が逆方向に変化する前記自動変速部の変速をその要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止するヒステリシス設定手段を備え、(b)前記変速比が逆方向に変化する変速がそのヒステリシス設定手段によって禁止された場合にはその禁止された変速は行われないことを特徴とする。
請求項1に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速点を設定する有段変速制御手段が備えられているので、例えば電動エアコンの駆動などにより要求発電量が増加した場合にもそれが考慮されて、上記自動変速部の変速が実行される変速点が設定され、上記要求発電量が考慮されない場合と比較して車両全体として燃費の向上を図ることが可能である。
請求項2に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、上記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速点を決定し、その基本変速点に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速点を設定するので、上記基本変速点は2つのパラメータから決定され、電動エアコンの駆動等により上記要求発電量が増加して上記補正が必要になった場合にその補正がなされることになり、上記車速と運転者の要求出力と要求発電量との3つのパラメータから直接に上記自動変速部の変速点が設定されることと比較して、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
前記差動用電動機は前記差動機構の差動状態を制御するために発電機として機能して前記エンジンの出力トルクに対する反力トルクを発生する。このとき、上記エンジンの出力すなわち機械的エネルギが上記差動用電動機により電気的エネルギに変換されるが、その電気エネルギが伝達される電気パスの動力伝達効率は、上記差動用電動機の回転速度が零に近づき上記電気パスに伝達される電気エネルギが零に近づくほど向上する。従って、エンジンの燃料消費率が変化しないとすれば燃費向上の観点から上記差動用電動機の回転速度上昇をできるだけ抑えるように前記自動変速部の変速点が設定されその変速が実行されるべきである。この点、請求項3に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が上記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うので、上記電気パスの動力伝達効率を考慮してそもそも上記自動変速部の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記補正がなされず、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
前記車速と運転者の要求出力とに基づいて決定される基本変速点は、走行以外の目的で要求される要求発電量が無ければそのまま変速点として設定されるものであるところ、請求項4に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記基本変速点を含みその基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に上記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が上記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、上記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うので、上記要求発電量を考慮するまでも無く上記車両用動力伝達装置の動作点から判断して上記自動変速部の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記補正がなされず、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
請求項5に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が上記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速点に対する補正を行うので、上記要求発電量が車両の燃費に与える影響の大きい場合に上記補正が行われ上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
請求項6に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、前記自動変速部の変速による変速段の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられているので、上記車両用動力伝達装置の構成要素の耐久性維持を図ることが可能であり、また、駆動音の上昇などにより快適性が損なわれることを回避することが可能である。
請求項7に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、前記ガード値は変速段数であるので、ガード値の設定が容易である。
請求項8に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速比を設定する有段変速制御手段が備えられているので、例えば電動エアコンの駆動などにより要求発電量が増加した場合にもそれが考慮されて、上記自動変速部の変速比が設定され、上記要求発電量が考慮されない場合と比較して車両全体として燃費の向上を図ることが可能である。
請求項9に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、上記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速比を決定し、その基本変速比に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速比を設定するので、上記基本変速比は2つのパラメータから決定され、電動エアコンの駆動等により上記要求発電量が増加して上記補正が必要になった場合にその補正がなされることになり、上記車速と運転者の要求出力と要求発電量との3つのパラメータから直接に上記自動変速部の変速比が設定されることと比較して、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
請求項10に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うので、上記差動用電動機の回転速度が零に近づくほど向上する前記電気パスの動力伝達効率を考慮してそもそも上記自動変速部の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記補正がなされず、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
前記車速と運転者の要求出力とに基づいて決定される基本変速比は、走行以外の目的で要求される要求発電量が無ければそのまま前記自動変速部の変速比として設定されるものであるところ、請求項11に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記自動変速部の変速比が基本変速比とされるように変速されたとした場合の変速点である基本変速点を含みその基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、上記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うので、前記要求発電量を考慮するまでも無く上記車両用動力伝達装置の動作点から上記自動変速部の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記補正がなされず、上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
請求項12に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段が備えられ、(b)その補正必要性判断手段が上記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段はその基本変速比に対する補正を行うので、上記要求発電量が車両の燃費に与える影響の大きい場合に上記補正が行われ上記変速制御装置の制御負荷を軽減できる。
請求項13に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、前記自動変速部の変速による変速比の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられているので、上記車両用動力伝達装置の構成要素の耐久性維持を図ることが可能であり、また、駆動音の上昇などにより快適性が損なわれることを回避することが可能である。
請求項14に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、前記ガード値は変速比であるので、ガード値の設定が容易である。
請求項15に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、前記ガード値は、前記車両用動力伝達装置が有する回転要素の回転速度を予め設定された回転速度許容値以下に抑えるための高回転防止領域であるので、上記回転要素の回転速度が抑えられその回転要素の耐久性維持を図ることが可能であり、また、上記回転要素の高速回転による騒音などによって快適性が損なわれることを回避することが可能である。
請求項16に係る発明の車両用動力伝達装置の変速制御装置によれば、(a)前記要求発電量が変化したことにより前記自動変速部で変速された場合に、その要求発電量の変化による変速に対し変速比が逆方向に変化する上記自動変速部の変速をその要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止するヒステリシス設定手段が備えられ、(b)上記変速比が逆方向に変化する変速がそのヒステリシス設定手段によって禁止された場合にはその禁止された変速は行われないので、変動し易い上記要求発電量の変化に起因する上記自動変速部での頻繁な変速が抑制され、快適性が損なわれることを回避できる。
ここで好適には、前記自動変速部の変速点とは、前記車両用動力伝達装置全体の変速比、前記差動部の動力伝達効率、アクセル開度、および車速などの何れか1または2以上の状態量で示され上記自動変速部の変速が実行される上記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点である。
また好適には、前記エンジンの所定の動作状態を実現するため予め設定されたエンジンの動作曲線の一種である最適燃費率曲線に上記エンジンの動作点が沿ってそのエンジンが作動させられるように前記差動部の変速比つまり差動状態が制御される。このようにすれば、前記差動用電動機の運転状態の制御によりエンジンの最適燃費が実現するようにエンジンが作動し燃費向上を図ることが可能である。ここで、上記エンジンの動作点とはそのエンジンの回転速度及び出力トルクなどで示されるそのエンジンの動作状態を示す動作点である。
また好適には、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路において、エンジン、前記差動部、前記自動変速部、駆動輪の順に連結されている。
また好適には、前記差動機構は、前記エンジンに動力伝達可能に連結された第1回転要素と前記差動用電動機に動力伝達可能に連結された第2回転要素と前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第3回転要素とを有する遊星歯車装置であり、上記第1回転要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、上記第2回転要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、上記第3回転要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、前記差動機構の軸心方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型の遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸心方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また好適には、前記自動変速部の変速比と前記差動部の変速比とに基づいて前記車両用動力伝達装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、上記自動変速部の変速比を利用することで駆動力が幅広く得られるようになる。
請求項1に係る発明では前記有段変速制御手段が上記自動変速部の変速点を設定するとされている点が、請求項8に係る発明では上記有段変速制御手段が上記自動変速部の変速比を設定するとされている点で差異があるが、上記自動変速部の変速点が設定されればその変速点に基づき変速判断がされ自動変速部の変速比が変わるので、その自動変速部の変速点を設定することはすなわち自動変速部の変速比を設定することに等しく、請求項1に係る発明と請求項8に係る発明とは単一の一般的発明概念を形成するように連関している。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の制御装置が適用されるハイブリッド車両の車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」と表す)を説明する骨子図である。図1において、動力伝達装置10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、「ケース12」と表す)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図6参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この動力伝達装置10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図6参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
このように、本実施例の動力伝達装置10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、動力伝達装置10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えており、第1電動機M1の制御電流を調整することにより電気的に動力分配機構16の差動状態が制御される電気式差動部として機能する。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、差動部11の変速比γ0すなわち差動状態を制御するための差動用電動機として機能する第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
本発明の差動機構に対応する動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ0を有するシングルピニオン型の差動部遊星歯車装置24を主体として構成されている。この差動部遊星歯車装置24は、差動部サンギヤS0、差動部遊星歯車P0、その差動部遊星歯車P0を自転および公転可能に支持する差動部キャリヤCA0、差動部遊星歯車P0を介して差動部サンギヤS0と噛み合う差動部リングギヤR0を回転要素(要素)として備えている。差動部サンギヤS0の歯数をZS0、差動部リングギヤR0の歯数をZR0とすると、上記ギヤ比ρ0はZS0/ZR0である。
この動力分配機構16においては、差動部キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0は第1電動機M1に連結され、差動部リングギヤR0は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、差動部遊星歯車装置24の3要素である差動部サンギヤS0、差動部キャリヤCA0、差動部リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。このように、動力分配機構16(差動部11)に動力伝達可能に連結された第1電動機M1、第2電動機M2、およびエンジン8の運転状態が制御されることにより、動力分配機構16の差動状態、すなわち入力軸14の回転速度と伝達部材18の回転速度の差動状態が制御される。
自動変速部20は、差動部11から駆動輪34への動力伝達経路の一部を構成しており、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ1を有している。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置30は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1、第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3である。
自動変速部20では、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第1キャリヤCA1は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2と第3キャリヤCA3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された動力伝達装置10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度N18(以下、「伝達部材回転速度N18」と表す)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、動力伝達装置10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、動力伝達装置10において無段変速機が構成される。この動力伝達装置10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される動力伝達装置10全体としてのトータル変速比γTである。なお、本実施例では入力軸14の回転速度NINとエンジン回転速度Nとは同一であるので、「総合変速比γT=エンジン回転速度N/出力軸22の回転速度NOUT」としてもよい。
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、動力伝達装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する動力伝達装置10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、動力伝達装置10において有段変速機と同等の状態が構成される。
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する動力伝達装置10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される動力伝達装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度Nを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する差動部サンギヤS0、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する差動部キャリヤCA0、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する差動部リングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は差動部遊星歯車装置24のギヤ比ρ0に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第1サンギヤS1および第2サンギヤS2を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第1キャリヤCA1を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第1リングギヤR1、第2キャリヤCA2、第3キャリヤCA3を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3サンギヤS3をそれぞれ表し、それらの間隔は第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ0に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の動力伝達装置10は、動力分配機構16(差動部11)において、差動部遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(差動部キャリヤCA0)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(差動部リングギヤR0)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により差動部サンギヤS0の回転速度と差動部リングギヤR0の回転速度との関係が示される。
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される差動部リングギヤR0の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度Nを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される差動部キャリヤCA0の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される差動部サンギヤS0の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって差動部サンギヤS0の回転がエンジン回転速度Nと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Nと同じ回転で差動部リングギヤR0の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって差動部サンギヤS0の回転が零とされると、エンジン回転速度Nよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、差動部11において出力回転部材である伝達部材18(第3回転要素RE3)の回転が第1クラッチC1が係合されることで第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線XGとの交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st)の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th)の出力軸22の回転速度が示される。
図4は、本実施例の動力伝達装置10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御を実行するハイブリッド駆動制御装置としてまた差動部11の無段変速制御と自動変速部20の有段変速制御とを実行する変速制御装置として機能し、動力伝達装置10に関する駆動制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPを表す信号、シフトレバー52(図5参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度Nを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度NOUT(以下、「出力軸回転速度NOUT」と表す)に対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の要求出力に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、「第1電動機回転速度NM1」という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、「第2電動機回転速度NM2」という)を表す信号、蓄電装置56(図6参照)の充電残量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図6参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図6参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧Pを調圧するための信号、そのライン油圧Pが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
そのシフトレバー52は、動力伝達装置10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる動力伝達装置10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
図6は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、有段変速制御手段82は、自動変速部20の変速を制御する変速制御手段として機能し、詳細には、図7に示すような車速Vと一対一の比例関係にある出力軸回転速度NOUT及びアクセル開度Accを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の出力軸回転速度NOUT(車速V)およびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の要求出力としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NとエンジントルクTとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度Nと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度Nとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Tとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図8に示すようなエンジン8の動作曲線の一種である最適燃費率曲線LEF(燃費マップ、関係)にエンジン8の動作点PEG(以下、「エンジン動作点PEG」と表す)が沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTとエンジン回転速度Nとなるように、動力伝達装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。ここで、上記エンジン動作点PEGとは、エンジン回転速度N及びエンジントルクTなどで例示されるエンジン8の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン8の動作状態を示す動作点である。
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度Nを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度Nを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度Nを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ64を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第2電動機M2を走行用の駆動力源とするモータ走行をさせることができる。例えば図9の駆動力源切換線図に示されるように、ハイブリッド制御手段84は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的アクセル開度Accが小さい低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクT域、或いは出力軸回転速度NOUTが比較的低い低車速域すなわち低負荷域において、モータ走行を実行する。また、ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Nを零乃至略零に維持する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を走行用の駆動力源とするエンジン走行を行うエンジン走行領域(図9参照)であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行にはエンジン8を走行用の駆動力源とする場合と、エンジン8及び第2電動機M2の両方を走行用の駆動力源とする場合とがある。そして、本実施例のモータ走行とはエンジン8を停止して第2電動機M2を走行用の駆動力源とする走行である。
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
また、ハイブリッド制御手段84は、アクセルオフの惰性走行時(コースト走行時)やフットブレーキによる制動時などには、燃費を向上させるために車両の運動エネルギすなわち駆動輪34からエンジン8側へ伝達される逆駆動力により第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その電気エネルギすなわち第2電動機発電電流をインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する回生制御手段としての機能を有する。この回生制御は、蓄電装置56の充電残量SOCやブレーキペダル操作量に応じた制動力を得るための油圧ブレーキによる制動力の制動力配分等に基づいて決定された回生量となるように制御される。
また、ハイブリッド制御手段84は、車両全体としての要求発電量に応じて第1電動機M1の発電量をその回転速度NM1を制御することにより調整する。例えば、エアコンなどの補器類が作動した場合や電源の外部出力要求があった場合などにより車両全体の電力消費量が増加し上記要求発電量が増加した場合には、ハイブリッド制御手段84は、走行に影響させないよう車速Vに拘束される第2電動機回転速度NM2は変化させずに第1電動機回転速度NM1とエンジン回転速度Nとを同期して引き上げることで、第1電動機M1の発電量を増加させる。
図10は、出力軸回転速度NOUTと一対一の関係にある車速Vと、運転者の要求出力を表すアクセル開度Accからだけでなくエアコンなどの補器類も含め車両全体として要求される要求出力(以下、「車両要求出力」と表す)すなわちエンジン8に要求されるエンジン出力との関係を示す図であり、曲線CP1(実線)はエアコンなどの補器類が作動していない場合すなわち上記車両要求出力がアクセル開度Accで表される運転者の要求出力である場合の上記車速Vと車両要求出力との関係を示し、曲線CP2(破線)は上記補器類が作動し車両全体としての要求発電量が上記曲線CP1に対して増加した場合の上記車速Vと車両要求出力との関係を示している。図11は、出力軸回転速度NOUTと目標エンジン回転速度との関係をアクセル開度Accに応じて示した図であり、アクセル開度Accは0%から100%まで変化し得るがこの図11ではアクセル開度Accを10%ごとに40%から70%までの範囲で変化させた場合の上記出力軸回転速度NOUTと目標エンジン回転速度との関係が図示されている。この図11に示される上記出力軸回転速度NOUTと目標エンジン回転速度との関係は、最適燃費率曲線LEF(図8参照)と図10の曲線CP1(実線)で示される前記車速Vと車両要求出力との関係に基づいて求められる。
図12は動力伝達装置10の総合変速比γTと差動部11の動力伝達効率η(以下、単に「伝達効率η」と表す)との関係を示す伝達効率曲線を自動変速部20の各変速段「1st」〜「4th」ごとに表した伝達効率図であり、何れの伝達効率曲線においても第1電動機回転速度NM1が零であるときに差動部11の伝達効率ηは最高値になる。ここで、エンジン出力が機械的エネルギのまま駆動輪34に伝達される機械パスの動力伝達効率は差動部11の変速比γ0または自動変速部20の変速比γの変化に対して殆ど変化しないので、図12ではその縦軸である差動部11の伝達効率ηを前記電気パスの動力伝達効率または動力伝達装置10全体の動力伝達効率に置き換えても差し支えない。また、動力伝達装置10の総合変速比γTが同じとすれば燃費向上の観点から自動変速部20の変速段は差動部11の伝達効率ηを出来るだけ高く維持するように選択され設定されるべきであるので、図12の各変速段の伝達効率曲線の交点である理論最適変速点(ア)〜(ウ)で示されるように理想的には、動力伝達装置10の総合変速比「γT=1.863」で自動変速部20の「1st」と「2nd」との間の変速が実行され、動力伝達装置10の総合変速比「γT=1.023」で自動変速部20の「2nd」と「3rd」との間の変速が実行され、動力伝達装置10の総合変速比「γT=0.622」で自動変速部20の「3rd」と「4th」との間の変速が実行される。この図12の理論最適変速点(ア)〜(ウ)で示される総合変速比γTを図11に破線(ア)〜(ウ)として記載したグラフが図13である。そして、この図13の縦軸を目標エンジン回転速度からアクセル開度Accに置換した場合に得られる変速線図が図14に示される自動変速部20の理論最適変速線図である。この図13から図14への縦軸の置換では、例えば、図13で、アクセル開度「Acc=50%」において出力軸回転速度NOUTと目標エンジン回転速度との関係を示す曲線と「γT=1.863」を示す破線(ア)との交点P1が示す出力軸回転速度NOUTが2087rpmであると求められ、図14の座標系にて「NOUT=2087rpm,Acc=50%」の座標を示す変速点P2がプロットされる。このような作業が連続的に行われることによって図14の各理論最適変速線が図13に基づき求められる。そして、図7の変速線図は、図14の各理論最適変速線をアップシフト線とし、ビジーシフト回避のためこれを基準にヒステリシスがつくようにダウンシフト線を設けたものである。ここで、自動変速部20の変速点とは一般的に、動力伝達装置10の総合変速比γT、差動部11の伝達効率η、アクセル開度Acc、および車速Vなどの何れか1または2以上の状態量で示され自動変速部20の変速が実行される動力伝達装置10の動作状態を示す動作点であって、例えば、上記図14の変速点P2は車速Vに対応する出力軸回転速度NOUTとアクセル開度Accとで示された自動変速部20の変速が実行される動作点である。
このように、有段変速制御手段82が自動変速部20の変速判断の基にする図7の変速線図は、図10においてエアコンなどの補器類が作動していない場合の前記車速Vと車両要求出力との関係を示す曲線CP1(実線)に基づいて求められた変速線図であるので、例えばエアコンなどの補器類が作動し車両全体としての要求発電量が増加し上記車両要求出力が増加した場合すなわち図10にて上記車速Vと車両要求出力との関係が曲線CP1(実線)から曲線CP2(破線)にずれた場合には、車両全体として最適燃費が実現されるようにするために、上記車両要求出力の増加すなわち曲線CP1から曲線CP2への変化に応じて図7の変速線図から求められる変速点は変更されるべきである。
このような事情を考慮して本実施例では、エアコンなどの補器類が作動した場合や電源の外部出力要求があった場合などアクセル開度Acc以外の要因で前記車両要求出力が増加した場合にも最適燃費が実現されるように自動変速部20の変速が実行される。以下に、その制御機能の要部について説明する。
図6に戻り、有段変速制御手段82は車速センサによって車速Vを検出し、アクセル開度センサによりアクセル開度Accを検出する。また、有段変速制御手段82は、電動エアコンやデフォガの消費電力、電源の外部出力要求、走行用のアシストトルクを発生する第2電動機M2の消費電力などを検出し、動力伝達装置10の発電機として機能する第1電動機M1が発電すべき要求発電量を求める。そして有段変速制御手段82は、その検出等された車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)と要求発電量とに基づいて自動変速部20の変速点を設定する。見方を変えれば、自動変速部20の変速点が設定されればその変速点に基づき変速を実行するか否かが判断されるので、自動変速部20の変速点を設定することはすなわち自動変速部20の変速比γを設定することに等しく、自動変速部20の変速点を変速比γと言い換えても差し支えない。そのように言い換えたとすれば、有段変速制御手段82は、上記車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)と要求発電量とに基づいて自動変速部20の変速比γを設定すると表現される。
本実施例では、上記車速Vとアクセル開度Accと要求発電量との3つの状態量に基づき予め実験的に設定された条件に従って直接に自動変速部20の変速点または変速比γが設定されてもよいが電子制御装置80の負荷軽減のため、有段変速制御手段82は、上記要求発電量を考慮せずに車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)とに基づいて自動変速部20の基本変速点PSTを決定した上で、その基本変速点PSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点を設定する。これを変速比γについての表現に変えれば、有段変速制御手段82は、上記要求発電量を考慮せずに車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)とに基づいて基本変速比γSTを決定した上で、その基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速比γを設定する。ここで、自動変速部20の基本変速点PSTとは車速Vと運転者の要求出力を表すアクセル開度Accとに基づいて決定された変速点であるので図12の理論最適変速点(ア)〜(ウ)の何れかと一致し、例えば自動変速部20の「1st」から「2nd」の変速では理論最適変速点(ア)と一致し図14では1st−2nd理論最適変速線(図7のアップシフト線)上に位置する。また、上記基本変速点PSTとは、自動変速部20の変速比γが基本変速比γSTとされるように変速されたとした場合の変速点であり、逆の表現をすれば上記基本変速比γSTとは自動変速部20の基本変速点PSTで変速されたとした場合の変速比γである。
このように有段変速制御手段82が上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点または変速比γを設定する点について、以下に詳細に説明する。
有段変速制御手段82は、現在の自動変速部20の変速段、車速Vの変化方向、アクセル開度Accの変化方向を考慮し、車速Vとアクセル開度Accとに基づいて予め実験的に設定された条件である図7の変速線図のアップシフト線またはダウンシフト線上に前記基本変速点PSTを決定し、換言すればその基本変速点PSTと上述のような相互関係がある上記基本変速比γSTを決定する。例えば、有段変速制御手段82は、現在の変速段が「1st」でありアクセル開度「Acc=50%」一定で車速Vが上昇している場合には「1st」から「2nd」へのアップシフト線上の点P3(図7参照)を基本変速点PSTとして決定する。
次に有段変速制御手段82は前記要求発電量に基づいた補正を行うのであるが、本実施例では電子制御装置80の負荷軽減のため必要に応じて上記補正を行うこととされており、そのために電子制御装置80は上記補正の必要性を判断する補正必要性判断手段86を備えている。この補正必要性判断手段86は、第1電動機回転速度NM1が零を示すメカニカルロック点から動力伝達装置10の動作点が所定量以上外れた場合、具体的には第1電動機回転速度NM1望ましくはその回転速度NM1の絶対値が予め設定された回転速度判定値N以上である場合に、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をする。ここで、第1電動機回転速度NM1が零であるときに差動部11の伝達効率ηは最高値になるところ、上記回転速度判定値Nは差動部11の伝達効率η(図12参照)を向上させるために自動変速部20の変速が実行された方がよい場合があると考えられる実験的に求められた第1電動機回転速度NM1についての判定値である。従って、上記第1電動機回転速度NM1が回転速度判定値N以上であるかの判断に替えて、補正必要性判断手段86は、理解を容易にするため図12を模式的に表した図15に示すように、基本変速点PSTを含みその基本変速点PSTを基準に予め定められた領域である補正検討範囲に動力伝達装置10の動作状態を示す動作点が属する場合に、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をしてもよい。この図15の補正検討範囲は、差動部11の伝達効率ηを向上させるために自動変速部20の変速が実行された方がよい場合があると考えられる実験的に求められた動力伝達装置10の動作状態を表す領域である。また、走行以外の目的で要求される前記要求発電量が充分に小さい場合、例えば電源の外部出力要求が無くエアコンなどの補器類への電力供給も無い場合にはその要求発電量に基づく補正の必要性はそもそも無いので、補正必要性判断手段86は、有段変速制御手段82によって求められた上記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値G以上である場合に、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をしてもよい。上記要求発電量判定値Gは燃費向上の観点から上記補正が必要と判断される場合の実験的に求められた上記要求発電量の下限値である。
上述のように補正必要性判断手段86はいろいろな条件に基づき上記補正の必要性を判断できるが好適には、第1電動機回転速度NM1の絶対値が回転速度判定値N以上である場合または図15に示されるような上記補正検討範囲に動力伝達装置10の動作点が属する場合であって、かつ、前記要求発電量が要求発電量判定値G以上である場合に、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をする。なお、第1電動機回転速度NM1の絶対値が回転速度判定値N以上ではない場合または図15に示されるような上記補正検討範囲に動力伝達装置10の動作点が属さない場合には図15に示すように差動部11の伝達効率ηが充分に高いので、有段変速制御手段82は要求発電量を考慮せずに自動変速部20の変速を行わないとしてもよい。
有段変速制御手段82は、補正必要性判断手段86によって前記基本変速点PSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断がなされた場合には、決定した上記基本変速点PSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行い、その補正を行うことにより自動変速部20の変速点を設定する。このとき、上記要求発電量に基づいた補正時の補正量と上記要求発電量との関係は、例えば、車速V、アクセル開度Acc、自動変速部20の変速段などをパラメータとして予め実験的に求められ有段変速制御手段82に記憶されている。またアクセル開度Accと出力軸回転速度NOUT(車速V)とを座標軸とする図7のような変速線図において好適には、上記基本変速点PSTおよび上記補正後の変速点は、それらの点が示すアクセル開度Accが現在のアクセル開度Accと一致させられて決定され又は設定される。
そして有段変速制御手段82は、図7のような変速線図において示された動力伝達装置10の動作点が上記補正後の変速点に達している場合、具体的には現在の車速Vが上記補正後の変速点車速を越えている場合には、補正後の変速点に従って自動変速部20の変速を実行する。なお、有段変速制御手段82は、上記要求発電量に基づいた補正をしなかった場合、言い換えると、自動変速部20の変速点が基本変速点PSTである場合にはその基本変速点PSTすなわち図7の変速線図に従って自動変速部20の変速を実行する。
上述のように有段変速制御手段82は上記要求発電量に基づいた補正後の変速点に従って自動変速部20の変速を実行すると説明されているが、これを自動変速部20の変速比γについての説明に置き換えれば、有段変速制御手段82は、補正必要性判断手段86によって前記基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断がなされた場合には、決定した上記基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行い、その補正を行うことにより自動変速部20の変速比γを設定し、具体的には自動変速部20は有段変速機であるのでその自動変速部20の変速比γに対応する変速段を設定し、その変速段になるように自動変速部20の変速を実行すると言える。このとき、上記要求発電量に基づいた補正時の補正量と上記要求発電量との関係は、例えば、車速V、アクセル開度Acc、自動変速部20の変速段などをパラメータとして予め実験的に求められ有段変速制御手段82に記憶されている。なお、有段変速制御手段82は、上記要求発電量に基づいた補正をしなかった場合、言い換えると、設定された自動変速部20の変速比γが基本変速比γSTである場合には図7の変速線図の通りの変速段で変速比γが設定されたことになるので図7の変速線図に従って自動変速部20の変速を実行する。
ここで、上記要求発電量は変動し易い状態量であるので、動力伝達装置10の構成要素の耐久性維持または駆動音上昇などにより快適性が損なわれることを回避するため等の観点から、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する上記要求発電量に基づいた補正によって生じる自動変速部20の変速にはある程度の制限が設けられることが望ましい。そこで本実施例では、自動変速部20の変速による変速比γの変更幅すなわち変速段の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられ、そのガード値は有段変速制御手段82に記憶されており、有段変速制御手段82は、上記要求発電量が変化したことによって自動変速部20の変速をする場合、すなわち、上記要求発電量に基づく補正が無ければ変速せずその補正によって変速をする場合には、上記ガード値の範囲内で自動変速部20の変速をする。このガード値は、具体的には、自動変速部20の変速段数または変速比γで設定されている。上記ガード値が変速段数であれば、例えばそのガード値は変速段数が「1」と設定されており、有段変速制御手段82は、上記要求発電量に基づく補正が無い場合の変速段数である基本変速段数に対して上記補正により1段以内の変更をして自動変速部20の変速をすることはあるが、それを超えた変更による変速は行わない。また、上記ガード値が変速比γであれば、例えばそのガード値は基本変速比γSTに対して0.8〜1.5倍と設定されており、有段変速制御手段82は、決定した基本変速比γSTに対して0.8〜1.5倍の自動変速部20の変速比γを設定し変速することはあるが、そのガード値を外れて自動変速部20の変速比γを設定することはしない。或いは上記ガード値は、第1電動機M1、第2電動機M2、差動部遊星歯車P0、第1クラッチC1、第2クラッチC2などで例示される動力伝達装置10が有し動力伝達経路の一部を構成する回転要素の回転速度を予め設定された回転速度許容値NPM以下に抑えるための高回転防止領域であってもよい。そのようにガード値が設定された場合には、有段変速制御手段82は上記高回転防止領域の範囲内で自動変速部20の変速をする。
また前記要求発電量は変動し易くその変動によって自動変速部20の頻繁な変速すなわちビジーシフトが生じることを回避するため、本実施例の電子制御装置80はヒステリシス設定手段88を備えており、このヒステリシス設定手段88は、上記要求発電量が変化したことにより自動変速部20で変速された場合には、その要求発電量の変化による変速に対し自動変速部20の変速比γが逆方向に変化する自動変速部20の変速をその要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止する。例えば、有段変速制御手段82が上記要求発電量の変化によって自動変速部20のアップシフトをした場合、すなわち、上記要求発電量に基づく補正が無ければ変速しなかったがその補正をしたためにアップシフトをした場合には、そのアップシフト完了から所定時間経過するまでダウンシフトを禁止する。そして、有段変速制御手段82は、ヒステリシス設定手段88によって自動変速部20の変速が禁止された場合には、その禁止された自動変速部20の変速すなわちアップシフトもしくはダウンシフトを行わない。
以上のように、有段変速制御手段82は前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点または変速比γを設定し、その設定された自動変速部20の変速点または変速比γに基づき自動変速部20の変速をするが、要するに、図7のアップシフト線とダウンシフト線は基本変速点PSTを連ねた曲線であり図7でそれぞれのアップシフト線とダウンシフト線とによって区切られた領域が基本変速比γSTを示すので、有段変速制御手段82が上記要求発電量に基づいた補正を行うことはその要求発電量に応じて図7のアップシフト線とダウンシフト線とをずらすことである。
図16は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち、エアコンなどの補器類が作動した場合や電源の外部出力要求があった場合などアクセル開度Acc以外の要因で前記車両要求出力が増加した場合にも車両全体として最適燃費が実現されるように自動変速部20の変速を実行する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。なお本フローチャートは好適にはエンジン走行中に実行される。また、前述の図6の機能ブロック線図の説明では同じ制御内容を多面的に説明するため、前記基本変速点PSTに対する補正と前記基本変速比γSTに対する補正とのそれぞれについて並行して説明したが、より明確な説明とし理解を容易にするため本フローチャートでは主として基本変速点PSTに対する補正について説明する。
先ず、有段変速制御手段82に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、車速センサから車速Vが検出され、アクセル開度センサからアクセル開度Accが検出される。そして、現在の自動変速部20の変速段、車速Vの変化方向、アクセル開度Accの変化方向が考慮されて、上記検出された車速Vとアクセル開度Accとに基づき図7の変速線図のアップシフト線またはダウンシフト線上に基本変速点PSTが決定され、換言すれば基本変速比γSTが決定される。例えば、現在の変速段が「1st」でありアクセル開度「Acc=50%」一定で車速Vが上昇している場合には「1st」から「2nd」へのアップシフト線上の点P3(図7参照)が基本変速点PSTとして決定される。SA1の次はSA2へ移る。
有段変速制御手段82に対応するSA2においては、電動エアコンやデフォガの消費電力、電源の外部出力要求、走行用のアシストトルクを発生する第2電動機M2の消費電力などが検出され、動力伝達装置10の発電機として機能する第1電動機M1が発電すべき要求発電量が求められる。SA2の次はSA3へ移る。
補正必要性判断手段86に対応するSA3においては、図15に示される補正検討範囲に動力伝達装置10の動作点が属するか否かが判断される。この判断が肯定的である場合、すなわち、上記補正検討範囲に動力伝達装置10の動作点が属する場合、要するに図15において基本変速点PST付近で動力伝達装置10が動作している場合にはSA4に移る。一方、この判断が否定的である場合にはSA8に移る。
ここでSA3においては上記図15の補正検討範囲に替えて第1電動機回転速度NM1について判定されてもよい。そのようにした場合には、図16のSA3は図17に示すように置き換わり、図17のSA3においては、第1電動機回転速度NM1が零を示す前記メカニカルロック点から動力伝達装置10の動作点が所定量以上外れているか否か、すなわち、第1電動機回転速度NM1望ましくはその回転速度NM1の絶対値が予め設定された回転速度判定値N以上であるか否かが判断される。このように置き換えることができるのは、第1電動機回転速度NM1が零に近づくほど図15の縦軸である差動部11の伝達効率ηは最高値に近づくという関係にあるからである。なお、図16または図17のSA3にて否定的な判断がされた場合には、図15に示すように差動部11の伝達効率ηが充分に高く要求発電量を考慮するまでも無く自動変速部20で変速される必要はないので、SA3の否定的な判断後、本フローチャートでは自動変速部20の変速をしないSA8に移るものとされている。
図16に戻り、補正必要性判断手段86に対応するSA4においては、前記SA2にて求められた要求発電量が予め設定された要求発電量判定値G以上であるか否かが判断される。この判断が肯定的である場合、すなわち、上記要求発電量が要求発電量判定値G以上である場合にはSA5に移る。一方、この判断が否定的である場合、すなわち、前記要求発電量に基づいた補正をすべきほどその要求発電量が大きくない場合にはSA6に移る。
有段変速制御手段82に対応するSA5においては、SA1にて決定された前記基本変速点PSTに対しSA2にて求められた上記要求発電量に基づいた補正が行われることにより自動変速部20の変速点が設定される。このとき、上記要求発電量に基づいた補正時の補正量と上記要求発電量との関係は、例えば、車速V、アクセル開度Acc、自動変速部20の変速段などをパラメータとして予め実験的に求められ電子制御装置80に記憶されている。
有段変速制御手段82およびヒステリシス設定手段88に対応するSA6においては、SA4にて肯定的な判断がなされSA5にて補正されていればその補正後の変速点、もしくはSA4にて否定的な判断がなされていれば基本変速点PST、要するに自動変速部20の設定された変速点に基づいて自動変速部20の変速が必要か否かが判断される。具体的には、図7のような変速線図において示された動力伝達装置10の動作点が上記自動変速部20の設定された変速点に達している場合、すなわち、現在の車速Vが上記設定された変速点によって示される変速点車速を越えている場合には、その設定された変速点に従った自動変速部20の変速が必要と判断される。この判断が肯定的である場合、すなわち、自動変速部20の変速が必要である場合にはSA7に移る。一方、この判断が否定的である場合にはSA8に移る。
但し、前記要求発電量が変化したことにより自動変速部20で変速された場合には、その要求発電量の変化による変速に対し自動変速部20の変速比γが逆方向に変化する自動変速部20の変速は、その要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止される。例えば、上記要求発電量の変化によって自動変速部20のアップシフトが実行された場合、すなわち、上記要求発電量に基づく補正が無ければ変速されなかったがその補正がされたためにアップシフトが実行された場合には、そのアップシフト完了から所定時間経過するまでダウンシフトが禁止される。従って、SA6では、その禁止されている自動変速部20の変速については上記所定時間が経過するまで、前記自動変速部20の設定された変速点に基づく変速判断が肯定的であっても、SA6の判断としては否定的な判断がなされる。
有段変速制御手段82に対応するSA7においては、上記自動変速部20の設定された変速点に従って自動変速部20の変速が実行される。但し、自動変速部20の変速による変速比γの変更幅すなわち変速段の変更幅に対しては前記ガード値が設定されており、そのガード値の範囲内で自動変速部20の変速が実行される、すなわち、そのガード値によって自動変速部20の変速が制限される。このガード値は、具体的には、自動変速部20の変速段数または変速比γで設定されている。また上記ガード値は、第1電動機M1、第2電動機M2、差動部遊星歯車P0、第1クラッチC1、第2クラッチC2などで例示される動力伝達装置10が有し動力伝達経路の一部を構成する回転要素の回転速度を回転速度許容値NPM以下に抑えるための高回転防止領域であってもよい。
有段変速制御手段82に対応するSA8においては、自動変速部20の変速は実行されず現在の変速段が継続される。
本実施例によれば、有段変速制御手段82は、車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)と要求発電量とに基づいて自動変速部20の変速点を設定する。見方を変えれば、有段変速制御手段82は、上記車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)と要求発電量とに基づいて自動変速部20の変速比γを設定する。従って、エアコンなどの補器類が作動した場合や電源の外部出力要求があった場合などアクセル開度Acc以外の要因で前記車両要求出力が増加した場合にも、それが考慮されて自動変速部20の変速が実行される変速点が設定されるので、アクセル開度Acc以外の要因で上記車両要求出力すなわち上記要求発電量が増加し得ることが考慮されない場合と比較して、車両全体として燃費の向上を図ることが可能である。
また本実施例によれば、有段変速制御手段82は、現在の自動変速部20の変速段、車速Vの変化方向、アクセル開度Accの変化方向を考慮し、車速Vとアクセル開度Accとに基づいて図7の変速線図のアップシフト線またはダウンシフト線上に前記基本変速点PSTを決定し換言すればその基本変速点PSTと対応関係にある基本変速比γSTを決定し、その決定した基本変速点PSTもしくは基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点もしくは変速比γを設定する。従って、上記基本変速点PSTもしくは基本変速比γSTは2つのパラメータから決定され、エアコンなどの補器類の作動や電源の外部出力要求などにより上記要求発電量が増加して上記補正が必要になった場合にその補正がなされることになり、車速Vとアクセル開度Acc(運転者の要求出力)と要求発電量との3つのパラメータから直接に自動変速部20の変速点もしくは変速比γが設定されることと比較して、電子制御装置80の制御負荷を軽減できる。
第1電動機回転速度NM1が零に近づくほど前記電気パスに伝達される電気エネルギは減少して差動部11の伝達効率ηは向上し延いては動力伝達装置10全体の動力伝達効率が向上する。この点、本実施例によれば、補正必要性判断手段86は、第1電動機回転速度NM1望ましくはその回転速度NM1の絶対値が予め設定された回転速度判定値N以上である場合に、前記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をする。そして、有段変速制御手段82は、補正必要性判断手段86によって上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断がなされた場合には、決定した上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うことにより自動変速部20の変速点または変速比γを設定する。従って、差動部11の伝達効率ηつまり動力伝達装置10全体の動力伝達効率を考慮してそもそも自動変速部20の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記要求発電量に基づいた補正がなされず、電子制御装置80の制御負荷を軽減できる。
また本実施例によれば、補正必要性判断手段86は、基本変速点PSTを含みその基本変速点PSTを基準に予め定められた領域である補正検討範囲(図15参照)に動力伝達装置10の動作点が属する場合に、基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をしてもよい。そのようにしたとすれば、補正必要性判断手段86が上記補正検討範囲を用いて肯定的な判断をした場合に有段変速制御手段82は、決定した上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うので、上記要求発電量を考慮するまでも無く動力伝達装置10の動作点から判断して自動変速部20の変速がなされる必要性が低い場合またはその必要性が無い場合には上記要求発電量に基づいた補正がなされず、電子制御装置80の制御負荷を軽減できる。
また本実施例によれば、補正必要性判断手段86は、有段変速制御手段82によって求められた上記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値G以上である場合に、上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対する要求発電量に基づいた補正が必要であると肯定的な判断をしてもよい。そのようにしたとすれば、補正必要性判断手段86が上記要求発電量についての判断で肯定的な判断をした場合に有段変速制御手段82は、決定した上記基本変速点PSTまたは基本変速比γSTに対し上記要求発電量に基づいた補正を行うので、上記要求発電量が車両の燃費に与える影響の大きい場合に上記要求発電量に基づいた補正が行われ電子制御装置80の制御負荷を軽減できる。
また本実施例によれば、自動変速部20の変速による変速比γの変更幅すなわち変速段の変更幅に対してその変更幅の上限を定めるガード値が設けられているので、第1電動機M1、第2電動機M2、差動部遊星歯車P0、第1クラッチC1、第2クラッチC2などで例示される動力伝達装置10が有し動力伝達経路の一部を構成する回転要素の耐久性維持を図ることが可能であり、また、駆動音の上昇などにより快適性が損なわれることを回避することが可能である。
また本実施例によれば、上記ガード値は、具体的には、自動変速部20の変速段数または変速比γで設定されているので、ガード値の設定が容易であり、ガード値の範囲内で自動変速部20の変速がなされるか否かの判断が容易である。
また本実施例によれば、上記ガード値は、第1電動機M1、第2電動機M2、差動部遊星歯車P0、第1クラッチC1、第2クラッチC2などで例示される動力伝達装置10が有し動力伝達経路の一部を構成する回転要素の回転速度を予め設定された回転速度許容値NPM以下に抑えるための高回転防止領域であってもよい。そのようにガード値が設定された場合には、上記回転要素の回転速度が抑えられその回転要素の耐久性維持を図ることが可能であり、また、上記回転要素の高速回転による騒音などによって快適性が損なわれることを回避することが可能である。
また本実施例によれば、ヒステリシス設定手段88は、前記要求発電量が変化したことにより自動変速部20で変速された場合には、その要求発電量の変化による変速に対し自動変速部20の変速比γが逆方向に変化する自動変速部20の変速をその要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止する。そして、有段変速制御手段82は、ヒステリシス設定手段88によって自動変速部20の変速が禁止された場合には、その禁止された自動変速部20の変速すなわちアップシフトもしくはダウンシフトを行わない。従って、変動し易い上記要求発電量の変化に起因する自動変速部20での頻繁な変速すなわちビジーシフトが抑制され、快適性が損なわれることを回避できる。
また本実施例によれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度Nとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Tとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように設定された最適燃費率曲線LEF(図8参照)にエンジン動作点PEGが沿ってエンジン8が作動させられるように差動部11の変速比γ0を制御するので、第1電動機M1の運転状態の制御によりエンジン8の最適燃費が実現するようにエンジン8が作動し燃費向上を図ることが可能である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の実施例において、補正必要性判断手段86が補正の必要性の判断に用いる前記回転速度判定値Nは一定値であってもよいし、車速V、アクセル開度Acc、第1電動機M1の回転方向、或いは自動変速部20の変速段などに応じて異なる値とされてもよい。また、補正必要性判断手段86が補正の必要性の判断に用いる前記要求発電量判定値Gは一定値であってもよいし、車速V、アクセル開度Acc、第1電動機M1の回転方向、或いは自動変速部20の変速段などに応じて異なる値とされてもよい。
また前述の実施例においては、前記要求発電量に応えるため第1電動機M1が発電機として機能すると説明されているが、第2電動機が発電しても差し支えない。
また前述の実施例においては、自動変速部20の変速制御は予め設定されている図7の変速線図に基づいて実行されるが、運転者の要求出力としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、差動部11の変速比γ0やエンジン出力などを考慮した上で上記車両の目標出力が得られるように自動変速部20の変速制御を実行する所謂駆動力デマンド型の自動変速部20の変速制御であってもよい。
また前述の実施例では、第2電動機M2は、伝達部材18に直接連結されているが、第2電動機M2の連結位置はそれに限定されず、エンジン8又は伝達部材18から駆動輪34までの間の動力伝達経路に直接的或いは変速機、遊星歯車装置、係合装置等を介して間接的に連結されていてもよい。
また前述の実施例では、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、差動部11はその変速比γ0が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、たとえば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用することができる。
また前述の実施例において、差動部11は、動力分配機構16に設けられて差動作用を制限することにより少なくとも前進2段の有段変速機としても作動させられる差動制限装置を備えたものであってもよい。
また前述の実施例の動力分配機構16では、差動部キャリヤCA0がエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0が第1電動機M1に連結され、差動部リングギヤR0が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、差動部遊星歯車装置24の3要素CA0、S0、R0のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、たとえばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、たとえばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されていてもよい。
また前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁紛)クラッチ、電磁クラッチ、噛合型のドグクラッチなどの磁紛式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。たとえば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
また前述の実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられてそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配列されていてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、たとえば伝達部材18としてカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
また、前述の実施例の差動機構として動力分配機構16は、たとえばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また前述の実施例では、エンジン8と差動部11とが直接連結されているが、必ずしも直接連結される必要はなく、エンジン8と差動部11との間にクラッチを介して連結されていてもよい。
また前述の実施例では、差動部11と自動変速部20とが直列接続されたような構成となっているが、特にこのような構成に限定されず、動力伝達装置10全体として電気式差動を行う機能と、動力伝達装置10全体として電気式差動による変速とは異なる原理で変速を行う機能とを、備えた構成であれば本発明は適用可能であり、機械的に独立している必要はない。また、これらの配設位置や配設順序も特に限定されない。要するに、自動変速部20は、エンジン8から駆動輪34への動力伝達経路の一部を構成するように設けられておればよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが2以上の遊星歯車装置から構成されていてもよい。また、差動部遊星歯車装置24はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。また、このような2以上の遊星歯車装置から構成された場合においても、これらの遊星歯車装置の各回転要素にエンジン8、第1および第2電動機M1、M2、伝達部材18、構成によっては出力軸22が動力伝達可能に連結され、さらに遊星歯車装置の各回転要素に接続されたクラッチCおよびブレーキBの制御により有段変速と無段変速とが切り換えられるような構成であっも構わない。
また、前述の実施例の動力伝達装置10において第1電動機M1と第2回転要素RE2とは直結されており、第2電動機M2と第3回転要素RE3とは直結されているが、第1電動機M1が第2回転要素RE2にクラッチ等の係合要素を介して連結され、第2電動機M2が第3回転要素RE3にクラッチ等の係合要素を介して連結されていてもよい。
また前述の実施例において、第2電動機M2はエンジン8から駆動輪34までの動力伝達経路の一部を構成する伝達部材18に連結されているが、第2電動機M2がその動力伝達経路に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して動力分配機構16にも連結可能とされており、第1電動機M1の代わりに第2電動機M2によって動力分配機構16の差動状態を制御可能とする動力伝達装置10の構成であってもよい。
また前述の実施例において、自動変速部20は有段の自動変速機として機能する変速部であるが、無段のCVTであってもよい。
また前述の実施例において、差動部11が、第1電動機M1及び第2電動機M2を備えているが、第1電動機M1及び第2電動機M2は差動部11とは別個に動力伝達装置10に備えられていてもよい。
本発明の制御装置が適用されるハイブリッド車両の車両用動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置に備えられた自動変速部の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置における各ギヤ段の相対回転速度を説明する共線図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。 シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。 図4の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置において、出力軸回転速度とアクセル開度とをパラメータとする二次元座標に構成された、自動変速部の変速判断の基となる変速線図の一例を示す図である。 図1のエンジンの最適燃費率曲線を表す図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置において、出力軸回転速度とアクセル開度とをパラメータとする二次元座標に構成された、エンジン走行とモータ走行とを切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する予め記憶された駆動力源切換線図の一例を示す図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置において、出力軸回転速度と一対一の関係にある車速と、車両全体として要求される要求出力との関係を示す図である。 図1のハイブリッド車両の車両用動力伝達装置において、出力軸回転速度と目標エンジン回転速度との関係をアクセル開度に応じて示した図であって、アクセル開度を10%ごとに40%から70%までの範囲で変化させた場合の例を図示したものである。 図1の車両用動力伝達装置の総合変速比と差動部の動力伝達効率との関係を示す伝達効率曲線を自動変速部の各変速段「1st」〜「4th」ごとに表した伝達効率図である。 図12の伝達効率図から得られた理論最適変速点(ア)〜(ウ)で示される総合変速比を図11に破線(ア)〜(ウ)として記載した図である。 図13の縦軸を目標エンジン回転速度からアクセル開度に置換して得られた自動変速部の理論最適変速線図である。 図12を模式的に表した伝達効率図であって、図12と同様に、図1の車両用動力伝達装置の総合変速比と差動部の動力伝達効率との関係を示す伝達効率曲線を自動変速部の各変速段「1st」〜「4th」ごとに表した伝達効率図である。 図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわち、エアコンなどの補器類が作動した場合や電源の外部出力要求があった場合などアクセル開度以外の要因で車両要求出力が増加した場合にも最適燃費が実現されるように自動変速部の変速を実行する制御作動を説明するフローチャートである。 図16のフローチャートのSA3を別のステップ内容に置き換えた場合のSA3を示す図である。
符号の説明
8:エンジン
10:動力伝達装置(車両用動力伝達装置)
11:差動部
16:動力分配機構(差動機構)
20:自動変速部
34:駆動輪
80:電子制御装置(変速制御装置)
82:有段変速制御手段
86:補正必要性判断手段
88:ヒステリシス設定手段
M1:第1電動機(差動用電動機)

Claims (16)

  1. エンジンと駆動輪との間に連結された差動機構と該差動機構に動力伝達可能に連結された差動用電動機とを有し該差動用電動機の運転状態が制御されることにより該差動機構の差動状態が制御される差動部と、動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の変速制御装置であって、
    車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速点を設定する有段変速制御手段を備えた
    ことを特徴とする車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  2. 前記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速点を決定し、該基本変速点に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速点を設定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  3. 前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速点に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  4. 前記基本変速点を含み該基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速点に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  5. 前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速点に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速点に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速点に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  6. 前記自動変速部の変速による変速段の変更幅に対して該変更幅の上限を定めるガード値が設けられている
    ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  7. 前記ガード値は変速段数である
    ことを特徴とする請求項6に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  8. エンジンと駆動輪との間に連結された差動機構と該差動機構に動力伝達可能に連結された差動用電動機とを有し該差動用電動機の運転状態が制御されることにより該差動機構の差動状態が制御される差動部と、動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の変速制御装置であって、
    車速と運転者の要求出力と要求発電量とに基づいて前記自動変速部の変速比を設定する有段変速制御手段を備えた
    ことを特徴とする車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  9. 前記有段変速制御手段は、前記車速と運転者の要求出力とに基づいて基本変速比を決定し、該基本変速比に対し前記要求発電量に基づいた補正を行うことにより前記自動変速部の変速比を設定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  10. 前記差動用電動機の回転速度が予め設定された回転速度判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速比に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項9に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  11. 前記自動変速部の変速比が基本変速比とされるように変速されたとした場合の変速点である基本変速点を含み該基本変速点を基準に予め定められた領域に前記車両用動力伝達装置の動作状態を示す動作点が属する場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速比に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項9に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  12. 前記要求発電量が予め設定された要求発電量判定値以上である場合に前記基本変速比に対する補正が必要であると判断する補正必要性判断手段を備え、
    該補正必要性判断手段が前記基本変速比に対する補正が必要であると判断した場合に、前記有段変速制御手段は該基本変速比に対する補正を行う
    ことを特徴とする請求項9に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  13. 前記自動変速部の変速による変速比の変更幅に対して該変更幅の上限を定めるガード値が設けられている
    ことを特徴とする請求項8乃至12の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  14. 前記ガード値は変速比である
    ことを特徴とする請求項13に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  15. 前記ガード値は、前記車両用動力伝達装置が有する回転要素の回転速度を予め設定された回転速度許容値以下に抑えるための高回転防止領域である
    ことを特徴とする請求項6又は13に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
  16. 前記要求発電量が変化したことにより前記自動変速部で変速された場合に、該要求発電量の変化による変速に対し変速比が逆方向に変化する前記自動変速部の変速を該要求発電量の変化による変速の完了から所定時間経過するまで禁止するヒステリシス設定手段を備え、
    前記変速比が逆方向に変化する変速が該ヒステリシス設定手段によって禁止された場合には該禁止された変速は行われない
    ことを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の変速制御装置。
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