JP2009164999A - 電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法 - Google Patents

電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】送信データのバラツキを低減可能な電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法を提供する。
【解決手段】スレーブECU11aにて、マスターECU10より送信された送信データを受信し、受信した送信データの信号レベルを検出する。そして、この信号レベルが予め設定した閾値電圧V2よりも大きい場合には、スレーブECU11aより、マスターECU10に対してレベル変更要求信号を送信する。マスターECU10は、レベル変更要求信号が受信された場合に、送信部224より送信する送信データの信号レベルを変更する。このような処理を行うことにより、各ECU10,11a〜11cより送信される送信データの信号レベルのバラツキを低減することができ、ひいては、インパルスノイズ判定用の閾値電圧V3を小さい値に設定することができるので、インパルスノイズの発生を高精度に検出することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、電源線に制御信号を重畳して、各制御装置間の通信を行う電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法に関する。
例えば、車両に搭載される各種のモータ、ランプ等の負荷は、ワイヤハーネスにてECU(Electronic Control Unit)と接続され、該ECUより電力が供給されて駆動、停止が制御される。また、車両に搭載される複数のECUどうしの間で電力の伝送、及び制御信号の送信を行うために、各ECUどうしを接続する電源線に制御信号を重畳することにより、少ない本数のハーネスで電力、及び制御信号の双方の送信が可能なPLC(Power Line Communication)通信方式が提案され、実用に供されている。
PLC通信方式は、制御信号をASK(Amplitude Shift Keying)変調することにより「0」,「1」に相当する高周波信号に変換し、この信号を電力送信用の電源線に重畳して、電力及び制御信号を送信する。そして、受信側のECUに設けられるPLC回路及び制御部にて、電源線に重畳している制御信号を復調及びサンプリングし、このサンプリング結果に基づいて、負荷の駆動を制御する。
しかしながら、例えば、負荷が直流モータである場合には、モータの回転に伴って周期的なインパルスノイズが発生し、このインパルスノイズが電源線に重畳することがある。そして、このインパルスノイズにより、「0」,「1」からなる制御信号にエラーが発生することがあり、受信側のECUでは、例えば本来「0」であった信号が「1」であるものと誤検出するという問題が発生する。そこで、上記の問題を解決するために、例えば、特開2006−270416号公報(特許文献1)に開示された技術が提案されている。
該特許文献1では、電源線に重畳される制御信号の1ビットに対し、受信側のECUで複数回(例えば、4回)サンプリングし、且つ、インパルスノイズが発生したことをノイズ検出器で検出し、インパルスノイズの検出時には、このインパルスノイズ検出期間でのサンプリングデータを無効とし、インパルスノイズが発生していないときのサンプリングデータに基づいて、制御信号を補正する処理を行っている。例えば、1ビットの制御信号に対する4回のサンプリングデータのうち、3回のサンプリングデータがインパルスノイズの影響を受けている場合には、残りの1回のサンプリングデータ(インパルスノイズの影響を受けていないサンプリングデータ)に基づいて、この1ビットの制御信号を補正することにより、インパルスノイズによる影響を回避する手法が採用されている。
特開2006−270416号公報
上述した特許文献1に開示された技術では、電源線に重畳される制御信号がインパルスノイズであるものと誤検出されることを防止するために、ノイズ検出器に、制御信号の信号レベルよりも大きい電圧値となる閾値電圧を設定しておき、ノイズ検出器で検出される信号レベルがこの閾値電圧以上となった場合に、インパルスノイズが発生しているものと判断するようにしている。
また、ECUより送信される制御信号の信号レベルは一定ではなく、各ECU毎にバラツキが発生するので、各ECUに設けられている受信部では、最も信号レベルの大きい制御信号が受信された場合でも、この制御信号がインパルスノイズであるものと誤検出されることを防止するために、上記の閾値電圧を大きい値に設定せざるを得なくなり、この閾値を下回る信号レベルのインパルスノイズの発生を検出できなくなる。このため、インパルスノイズの継続期間を精度良く求めることができなくなり、PLC通信の信頼性が低下するという問題が発生する。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、送信データの信号レベルのバラツキを低減し、ひいては、電源線に重畳するインパルスノイズを高精度に検出することが可能な電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、電源より出力される電力を電源線を介して複数の制御装置に供給すると共に、前記電源線に制御信号を重畳して各制御装置間での通信を行う電源重畳多重通信システムにおいて、一の制御装置は、他の制御装置より送信された制御信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信された制御信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、他の制御装置に制御信号を送信すると共に、前記信号レベル検出手段で検出された信号レベルが、予め設定した信号レベルの範囲内でない場合に、前記他の制御装置にレベル変更要求信号を送信する送信手段と、前記受信手段にて、他の制御装置より送信されたレベル変更要求信号が受信された場合に、このレベル変更要求信号に基づいて、前記送信手段より送信する制御信号の信号レベルを変更する送信出力レベル調整手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記信号レベル検出手段は、前記制御信号を受信可能な最小の電圧である受信可能最小電圧(V1)よりも大きい第1の閾値電圧(V2)を設定し、前記受信手段で受信された制御信号の信号レベルが前記第1の閾値電圧V2を超える場合に、この制御信号の送信元となる制御装置に対して、送信する制御信号の信号レベルを低下させる旨のレベル変更要求信号を送信することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記第1の閾値電圧(V2)は、前記受信可能最小電圧(V1)の2倍以下の電圧に設定されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記一の制御装置は、前記電源線に重畳するノイズを検出するノイズ検出手段と、前記ノイズ検出手段にてノイズが検出された場合には、このノイズ検出期間に前記受信手段にて受信されている制御信号を補正する制御信号補正手段と、を更に備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記一の制御装置は、前記電源線に重畳するノイズを検出するノイズ検出手段と、前記ノイズ検出手段にてノイズが検出された場合には、このノイズ検出期間に前記受信手段にて受信されている制御信号を補正する制御信号補正手段と、を更に備え、前記ノイズ検出手段は、前記第1の閾値電圧(V2)よりも大きい第2の閾値電圧(V3)を設定し、該第2の閾値電圧(V3)よりも大きい電圧の信号が前記電源線に重畳している場合に、ノイズの重畳を検出することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記第2の閾値電圧(V3)は、前記受信可能最小電圧(V1)の3倍以下の電圧に設定されることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、前記電源は、車両に搭載されるバッテリであり、前記複数の制御装置は、車両に搭載されて車両搭載機器を制御することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、電源より出力される電力を電源線を介して複数の制御装置に供給すると共に、前記電源線に制御信号を重畳して各制御装置間での通信を行う電源重畳多重通信システムの、各制御装置での送信信号レベルを設定する方法であって、一の制御装置にて、他の制御装置より送信された制御信号を受信し、受信した制御信号の信号レベルを検出する段階と、前記一の制御装置にて、前記検出された信号レベルが、予め設定した信号レベルの範囲内であるか否かを判定する段階と、前記一の制御装置にて、前記検出された信号レベルが前記範囲内でないと判定された場合に、前記他の制御装置にレベル変更要求信号を送信する段階と、前記他の制御信号にて、前記レベル変更要求信号が受信された場合に、送信手段より送信する制御信号の信号レベルを変更する段階と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法では、各制御装置間で制御信号の送受信を行い、一の制御装置で受信される制御信号の信号レベルが予め設定した信号レベルの範囲内でない場合には、この制御信号の送信元となる制御装置に対して、レベル変更要求信号を送信する。そして、このレベル変更要求信号を受信した制御装置では、送信する制御信号の出力レベルを変更する処理を実行する。その結果、各制御装置にて送信する制御信号の信号レベルのバラツキを低減することができ、ひいては、ノイズ判定用の閾値電圧である第2の閾値電圧V3を低い値に設定することができ、ノイズ検出の精度を向上させることができる。その結果、電源重畳多重通信の精度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、複数のECU(制御装置)が車両内に配置されている構成を示す説明図である。図1に示すように、車両100内には4個のECU10,11a〜11c、及びバッテリ12が設けられており、各ECU10,11a〜11cとバッテリ12は電源線L1を介して接続されている。従って、各ECU10,11a〜11cは、バッテリ12より電源線L1を介して供給される電力により駆動する。
また、各ECU10,11a〜11cのうち、ECU10はマスターECUであり、ECU11a〜11cはスレーブECUであり、各スレーブECU11a〜11cは、マスターECU10より送信される制御信号に基づいて作動する。ここで、「一の制御装置」とは、各ECU10,11a〜11cのうちのいずれかのECU(例えば、マスターECU10)であり、「他の制御装置」とは、「一の制御装置」とは異なるECU(例えば、スレーブECU11a)である。
そして、各ECU10,11a〜11c間では、PLC(Power Line Communication)通信方式により制御信号(以下、「送信データ」という)の送受信が行われる。即ち、送信側となるECU(例えば、マスターECU10)では、送信データをASK方式により「0」、「1」で示される信号に変調して電源線L1に重畳し、受信側となるECU(例えば、スレーブECU11a)では、電源線L1を介して送信される信号から電力及び送信データを取り出して、バックミラー駆動用モータやパワーウインド駆動用モータの駆動、停止、或いは照明の点灯、消灯、ホーンの鳴動等を制御する。
図2は、本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムに用いられるECU10,11a〜11cの構成を示すブロック図である。なお、図1に示したマスターECU10と各スレーブECU11a〜11cは、制御の動作が異なるのみであり、装置構成は同一であるので、図2では、ECU10と表記してマスターECU10、及び各スレーブECU11a〜11cの構成について説明する。
ECU10は、例えば、マイコン等で構成される。また、図2に示すように、ECU10は電源線L1に生じるインパルスノイズを検出するインパルスノイズ検出部(ノイズ検出手段)21と、PLC回路22と、電源線L1に重畳された送信データの信号レベルの減衰防止及び回路電源側への信号除去のためのインピーダンス素子23と、電源線L1を介して送信された直流電力から所望レベルの直流電圧を生成するための回路電源部24と、制御部25と、を備えている。
PLC回路22は、所望帯域の周波数の信号を取り出すフィルタ部221と、受信部(受信手段)223と、受信信号レベル検出部(信号レベル検出手段)225と、送信部(送信手段)224と、送信出力調整部(送信出力レベル調整手段)222とを備えている。
受信部223は、電源線L1を介して他のECUより送信された「0」、「1」からなる送信データをASK復調する。制御部25において、送信データの1ビットに対して複数回(本実施形態では4回)のサンプリングを行い、このサンプリング結果に基づいて、送信データを検出する。図6は、送信データを受信して最終的な受信データを得る場合の、各信号の変化を示すタイミングチャートであり、図6(a)に示す如くの「0」、「1」からなる送信データが電源線L1に重畳している場合には、送信データが「0」のときに一定レベルの電圧信号が発生し(図6(b)のt1〜t2)、送信データが「1」のときに電圧レベルはゼロとなる(図6(b)のt0〜t1)PLC波形が受信されることとなる。そして、図6(c)に示すように、送信データの1ビットに対して4回のサンプリングを行うことにより、送信データを受信することができる。
図2に示す受信信号レベル検出部225は、受信部223で検出された送信データの電圧値を検出し、この電圧値が予め設定した閾値電圧V2(第1の閾値電圧)よりも大きいか否かを判定する。
送信部224は、他のECUへデータを送信する際に、送信データをASK方式を用いて「0」、「1」に相当する高周波信号に変調し、変調した送信データを電源線L1に重畳する処理を実行する。
送信出力調整部222は、後述するように、他のECUより送信信号のレベル変更要求信号が送信された際に、送信部224より出力する送信データの電圧レベルを変更する処理を行う。図4は、送信出力調整部222の具体的な構成を示す回路図である。図4に示すように、送信出力調整部222は、複数(この例では、5個)の抵抗R1,R2,R3,R4,R5の並列接続回路と、各抵抗R1〜R5の両端に設けられる切り換え機能を備えている。そして、制御部25より出力される指令信号により、各切り換え機能のオン、オフが制御されることにより、上記並列接続回路の抵抗値が変更される。その結果、送信部224より出力される送信データの電圧値Vinに対して、送信出力調整部222より出力される送信データの電圧値Voutは、次の(1)式で示されることになる。
Vout={R0/(Rn+R0)}*Vin …(1)
従って、各切り換え機能のオン、オフを調整することにより、送信データの電圧値を変化させることができる。具体的には、各抵抗R1〜R5のうち、より大きい抵抗を選択することにより(Rnを大きくすることにより)、電圧Voutを低下させることができる。
制御部25は、インパルスノイズ検出部21で検出されるインパルスノイズの発生タイミングに基づいて、PLC回路22で受信された制御信号(送信データ)を処理する。具体的には、受信部223により、送信データの1ビットに対して実行される4回のサンプリングの結果が同一でない場合には、インパルスノイズ検出部21で検出されるインパルスノイズの発生タイミング、及び継続時間に基づいて、受信データを補正する処理を行う。即ち、制御部25は、制御信号補正手段としての機能を備える。
以下、制御部25で実行される受信データの補正処理について、詳細に説明する。例えば、送信データの1ビットに対して4回実行されるサンプリングの途中からインパルスノイズの発生が検出された場合には、このインパルスノイズの発生が検出される直前にサンプリングしたデータをこのビットの受信データとする。即ち、図6(a)の符号「A」に示す1ビットの送信データに対して、4回実行されるサンプリング(図6(c)参照)のうち、2回目のサンプリングの時点である時刻t3にてインパルスノイズの発生が検出された場合には、その直前にサンプリングした「1」が受信データとなる。つまり、図6(c)に示す時刻t2〜t3間にサンプリングした「1」が受信データとなる。このため、図6(c)に示すエラー補正前の受信データでは、送信データ「A」は「0」となってエラーとなるが、図6(e)に示すエラー補正後の受信データでは、送信データ「A」は「1」となり、正しいデータを得ることができる。
他方、制御部25は、4回のサンプリングの途中でインパルスノイズの検出が終了した場合には、このインパルスノイズの検出が終了した直後にサンプリングしたデータをこのビットの受信データとする。即ち、図6に示す符号「B」に示す1ビットの送信データに対し、3回目のサンプリングが終了する時刻t5にてインパルスノイズの検出が終了した場合には、その直後にサンプリングした「1」が受信データとなる。つまり、図6(c)に示す時刻t5〜t6間にサンプリングした「1」が受信データとなる。このため、図6(c)に示すエラー補正前の受信データでは、送信データ「B」は「0」となってエラーとなるが、図6(e)に示すエラー補正後の受信データでは、送信データ「B」は「1」となり、正しいデータを得ることができる。
更に、制御部25は、送信データの1ビットに対して行われる複数回のサンプリング時間の全体に亘って継続してインパルスノイズが発生した場合には、チェックサムビットを用いることにより、送信データを補正して確定する処理を行う。そして、制御部25は、復調した送信データに基づいてモータ、ランプ等の各種の負荷を制御する。
以下、図7を参照してチェックサムビットについて説明する。ASK方式を用いて送信するデータは、図7に示すように、1フレームが、先頭ビット、データビットA、データビットB、チェックサムビット、及び終了ビットで構成される。
データビットAは送信元及び送信先を示すID情報を含むデータであり、例えば「0010」の4ビットのデータである。
データビットBは、制御情報を含むデータであり、例えば「01001110」の8ビットのデータである。
チェックサムビットは、データビットAとデータビットBとを加算したデータを反転したデータとして設定される。即ち、データビットAの「0010」とデータビットBの「01001110」を加算すると、「01010000」(これを「データa」とする)となり、更にこれを反転すると、「10101111」となる。この「10101111」がチェックサムビットとなる。従って、チェックサムビットと上記のデータaを加算すると「11111111」(これを「データb」とする)となり、この加算結果とならない場合には、いずれかのビットにエラーが発生していることとなる。
制御部25は、上記のデータbを監視することにより、受信データにエラーが発生しているか否かを判定し、エラーが発生している場合には、受信データを補正する。即ち、送信データの1ビットに対して行われる4回のサンプリングに対して全てインパルスノイズが重畳している場合には、チェックサムビットを用いて、受信データを補正する。
例えば、図6(a)に示す送信データの「C」に示すビットの全期間に亘ってインパルスノイズが発生している場合には、本来送信データが「1」であるにも関わらず、図6(c)に示すように、4回のサンプリングで受信されるデータは全て「0」となってしまう。そこで、上記のチェックサムビットを用いることにより、図6(e)に示すように正しい受信データ「1」を得ることができる。
次に、他のECUより送信される送信データの信号レベルが調整されていないときの、各波形の変化を図5に示すタイミングチャートを参照して説明する。図5(a)は、送信元の送信データの波形図、図5(b)は、インパルスノイズが発生しているときの、受信部223で受信されるPLC波形及びインパルスノイズの波形図、図5(c)は、送信データをサンプリングして得られる受信データを示す波形図、図5(d)は、インパルスノイズ検出部21で検出されるインパルスノイズの検出期間を示す波形図、図5(e)は、送信データをサンプリングして得られる受信データを補正した波形図、図5(f)は、最終的な受信データの波形図を示している。
図5(a)に示すように、「0」、「1」のビット列からなる送信データが送信された際には、図5(b)に示すように、送信データが「0」のときに一定レベルの電圧に達する信号が受信され、送信データが「1」のときに電圧がゼロとなる。更に、モータの回転等に起因して、時刻t3〜t5間でインパルスノイズが発生した場合には、この時間帯t3〜t5において、電源線L1にインパルスノイズが重畳することとなる。
この際、受信された信号がインパルスノイズであるか、或いは送信データであるかを判別するために、インパルスノイズ検出部21(図2)では、インパルスノイズ判定用の閾値電圧V3(第2の閾値電圧)を設定しており、この閾値電圧V3を超えるレベルの信号が受信された際に、インパルスノイズが発生しているものと判定する。ここで、インパルスノイズ判定用の閾値電圧V3は、送信データの最大電圧よりも若干大きい電圧値に設定している。例えば、他のECUより送信される送信データの最大の電圧値が図5(b)に示す電圧V4である場合には、閾値電圧V3を、この最大電圧V4よりも大きい値に設定する必要がある。
このため、図5(b)に示す例では、時刻t3〜t4間にインパルスノイズが発生しているものと判定され、時刻t4〜t5では、インパルスノイズは発生していないものと検出される(図5(d)参照)。従って、この時間帯t4〜t5では、送信データが「0」であるものと誤認識されてしまう。即ち、ノイズ検出期間が終了する時刻t4の直後のサンプリングデータは、図5(e)に示すように「0」であるので、上述した補正処理を実行した場合であっても、送信データ「B」を正しいデータである「1」に補正することができない。その結果、送信データ「B」は「1」であるにも関わらず、図5(e)、(f)に示すように、「0」であるものと判定されてしまう。
そこで、本実施形態では、以下に示す処理により、各ECU10,11a〜11cより送信される送信データの信号レベルを補正することにより、各送信データの信号レベルのバラツキを低減し、ひいては、インパルスノイズ判定用の閾値電圧V3を低い値に設定できるようにする。以下、図3に示すフローチャートを参照して、送信データの信号レベルを調整する処理手順について説明する。
図3は、マスターECU10とスレーブECU11aとの間での、データの送受信を示すシーケンス図であり、該シーケンス図に示す処理は、例えば、システムを起動させる前の段階の初期設定時に実行される。
まず、マスターECU10は、スレーブECU11aに対して、送信データ(PLC信号)を送信する。即ち、ASK方式を用いて生成される「0」、「1」からなる送信データを電源線L1に重畳して、スレーブECU11aに送信する(ステップM11)。そして、スレーブECU11aは、この送信データを受信する(ステップS11)。
スレーブECU11aは、受信された送信データ(PLC受信信号)の電圧値(信号レベル)が規定の範囲内に入っているか否かを判定する(ステップS12)。本実施形態では、規定の範囲の一例として、受信可能最小電圧V1の2倍となる閾値電圧V2(第1の閾値電圧)を設定し、上記の受信された送信データの信号レベルがこの閾値電圧V2以下となっているか否かを判定する。そして、送信データの信号レベルが第1の閾値電圧V2以下となっていない場合(規定の範囲内に入っていない場合)には(ステップS12でNO)、マスターECU10に対して、送信データの信号レベルを低下させる旨の信号であるレベル変更要求信号を送信する(ステップS13)。
マスターECU10は、レベル変更要求信号が受信されると(ステップM12)、送信出力調整部222を調整して、送信データの信号レベルを低下させる(ステップM13)。そして、マスターECU10は、信号レベルを低下させた状態で、再度送信データをスレーブECU11aに送信する(ステップM14)。
スレーブECU11aは、この送信データを受信し(ステップS14)、再度ステップS12からの処理を繰り返す。即ち、マスターECU10からスレーブECU11aに送信される送信データの信号レベルが、第1の閾値電圧V2以下となるまで(規定の範囲内となるまで)上記の処理が繰り返して実行される。
その後、スレーブECU11aで受信される送信データの信号レベルが第1の閾値電圧V2以下となった場合には(ステップS12でYES)、マスターECU10に対して、送信データのレベルが正常であることを示す送信データ確認データを送信する(ステップS15)。
マスターECU10は、この送信データ確認データを受信する(ステップM15)。更に、マスターECU10は、スレーブECU11aより送信された送信データ(PLC信号)の信号レベルが規定の範囲内に入っているか否かを判定する(ステップM16)。即ち、送信データの信号レベルが、受信可能最小電圧V1の2倍となる閾値電圧V2(第1の閾値電圧)以下となっているか否かを判定する。そして、送信データが第1の閾値電圧V2以下となっていない場合(規定の範囲内に入っていない場合)には(ステップM16でNO)、スレーブECU11aに対して、送信データの信号レベルを低下させる旨の信号であるレベル変更要求信号を送信する(ステップM17)。
スレーブECU11aは、レベル変更要求信号が受信されると(ステップS16)、送信出力調整部222を調整して、送信データの信号レベルを低下させる(ステップS17)。そして、スレーブECU11aは、信号レベルを低下させた状態で、再度送信データをマスターECU10に送信する(ステップS18)。
マスターECU10は、この送信データを受信し(ステップM18)、再度ステップM16からの処理を繰り返す。即ち、スレーブECU11aからマスターECU10に送信される送信データの信号レベルが、第1の閾値電圧V2以下となるまで(規定の範囲内となるまで)上記の処理が繰り返して実行される。
その後、マスターECU10で受信される送信データの信号レベルが第1の閾値電圧V2以下となった場合には(ステップM16でYES)、スレーブECU11aに対して、送信データのレベルが正常であることを示す送信データ確認データを送信する(ステップM19)。
スレーブECU11aは、この送信データ確認データを受信する(ステップS19)。次いで、スレーブECU11aは、送信データの信号レベルの電圧値の調整が終了したことを示す送信データをマスターECU10に送信する(ステップS20)。
マスターECU10は、この送信データを受信し(ステップM20)、送信データの出力レベル調整処理を終了する。こうして、マスターECU10と、各スレーブECU11a〜11cとの間での、送信データの信号レベルの電圧調整が行われるのである。
その結果、各ECU10,11a〜11c間で送信される送信データの信号レベルが、第1の閾値電圧V2以下となるように調整され、各ECU10,11a〜11cより送信される送信データの信号レベルのバラツキを抑制することができる。このため、インパルスノイズ検出部21にて設定するインパルスノイズの判定用の閾値電圧V3を、低い電圧に設定することができる。以下、これを図6に示すタイミングチャートを参照して説明する。
図6(a)は、送信元の送信データの波形図、図6(b)は、インパルスノイズが発生しているときの、受信部223で受信されるPLC波形及びインパルスノイズの波形図、図6(c)は、送信データをサンプリングして得られる受信データを示す波形図、図6(d)は、インパルスノイズ検出部21で検出されるインパルスノイズの検出期間を示す波形図、図6(e)は、送信データをサンプリングして得られる受信データを補正した波形図、図6(f)は、最終的な受信データの波形図を示している。
そして、図6(b)に示すように、送信データの信号レベルが閾値電圧V2以下となるように調整され、且つ、この閾値電圧V2よりも若干高い電圧(例えば、受信可能最小電圧V1の3倍の電圧)を、インパルスノイズを判定用の閾値電圧V3に設定している。従って、図5(b)に示した場合と対比して、閾値電圧V3を著しく低い値に設定することができる。
このため、インパルスノイズの検出期間を高精度に検出することができるようになる。即ち、図6(b)に示すように、時刻t3〜t5の間でインパルスノイズが発生している場合には、図6(d)に示すように、この時間帯t3〜t5の間をノイズ検出期間として検出することができる。従って、図6(a)に示す送信データ「B」に対して、図6(c)に示すように、4回のサンプリングのうち、最初の3回のサンプリングの結果が「0」であり、4回目のサンプリングの結果が「1」である場合には、この送信データ「B」は「1」であるものと判定されることとなる。
即ち、送信データの1ビットに対して実行される4回のサンプリングのうちの、途中でノイズ検出が終了した場合には、その直後のサンプリング時のデータが、このビットのデータであるものとして補正するので、4回目にサンプリングされたデータ「1」がこのビットのデータとして採用され、送信データ「B」に対して、正しいデータ「1」を得ることができる。
このようにして、本実施形態に係る電源重畳多重通信システムでは、マスターECU10と各スレーブECU11a〜11cの間で、送信データの信号レベルを調整する処理が実行され、各ECU10,11a〜11cで受信される制御信号(送信データ)の信号レベルの電圧値が閾値電圧V2以下となるように制御されるので、送信データの信号レベルのバラツキを抑制することができる。その結果、インパルスノイズ判定用の閾値電圧V3を低い電圧(例えば、受信可能最小電圧V1の3倍の電圧)に設定することができるので、インパルスノイズが発生している期間を高精度に検出することができるようになり、電源線L1にインパルスノイズが重畳したときの補正処理を、より高精度に実行することができる。
このため、PLC通信の信頼性を著しく向上させることができ、車両内の通信適用部位を増加することができ、部品点数の削減を図ることができ、ひいては車両の軽量化、小型化、省スペース化を図ることができる。このため、燃費の向上、省エネルギー、省資源化に寄与する
以上、本発明の電源重畳多重通信システム及び電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、上記した実施形態では、制御装置として車両に搭載されるECUを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の制御装置間でPLC通信方式を用いたデータ通信を行う装置に適用することができる。
PLC方式を用いて制御信号を送受信する際に、インパルスノイズによる影響を回避する上で極めて有用である。
本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムで用いられる制御装置(ECU)の接続状態を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムで用いられる制御装置(ECU)の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムで用いられる制御装置(ECU)間で実行される処理手順を示すシーケンス図である。 本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムで用いられる制御装置(ECU)に搭載される、送信出力調整部の構成を示す回路図である。 他のECUより送信される送信データの信号レベルが調整されていないときの、各波形の変化を示すタイミングチャートである。 他のECUより送信される送信データの信号レベルが調整されているときの、各波形の変化を示すタイミングチャートである。 本発明の一実施形態に係る電源重畳多重通信システムで用いられる制御装置(ECU)において用いるチェックサムビットの説明図である。
符号の説明
10 マスターECU(制御装置)
11a〜11c スレーブECU(制御装置)
12 バッテリ
21 インパルスノイズ検出部(ノイズ検出手段)
22 PLC回路
23 インピーダンス素子
24 回路電源部
25 制御部(制御信号補正手段)
100 車両
221 フィルタ部
222 送信出力調整部(送信出力レベル調整手段)
223 受信部(受信手段)
224 送信部(送信手段)
225 受信信号レベル検出部(信号レベル検出手段)
L1 電源線

Claims (8)

  1. 電源より出力される電力を電源線を介して複数の制御装置に供給すると共に、前記電源線に制御信号を重畳して各制御装置間での通信を行う電源重畳多重通信システムにおいて、
    一の制御装置は、
    他の制御装置より送信された制御信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段で受信された制御信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
    他の制御装置に制御信号を送信すると共に、前記信号レベル検出手段で検出された信号レベルが、予め設定した信号レベルの範囲内でない場合に、前記他の制御装置にレベル変更要求信号を送信する送信手段と、
    前記受信手段にて、他の制御装置より送信されたレベル変更要求信号が受信された場合に、このレベル変更要求信号に基づいて、前記送信手段より送信する制御信号の信号レベルを変更する送信出力レベル調整手段と、
    を有することを特徴とする電源重畳多重通信システム。
  2. 前記信号レベル検出手段は、前記制御信号を受信可能な最小の電圧である受信可能最小電圧(V1)よりも大きい第1の閾値電圧(V2)を設定し、前記受信手段で受信された制御信号の信号レベルが前記第1の閾値電圧V2を超える場合に、この制御信号の送信元となる制御装置に対して、送信する制御信号の信号レベルを低下させる旨のレベル変更要求信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の電源重畳多重通信システム。
  3. 前記第1の閾値電圧(V2)は、前記受信可能最小電圧(V1)の2倍以下の電圧に設定されることを特徴とする請求項2に記載の電源重畳多重通信システム。
  4. 前記一の制御装置は、前記電源線に重畳するノイズを検出するノイズ検出手段と、
    前記ノイズ検出手段にてノイズが検出された場合には、このノイズ検出期間に前記受信手段にて受信されている制御信号を補正する制御信号補正手段と、
    を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電源重畳多重通信システム。
  5. 前記一の制御装置は、前記電源線に重畳するノイズを検出するノイズ検出手段と、
    前記ノイズ検出手段にてノイズが検出された場合には、このノイズ検出期間に前記受信手段にて受信されている制御信号を補正する制御信号補正手段と、を更に備え、
    前記ノイズ検出手段は、前記第1の閾値電圧(V2)よりも大きい第2の閾値電圧(V3)を設定し、該第2の閾値電圧(V3)よりも大きい電圧の信号が前記電源線に重畳している場合に、ノイズの重畳を検出することを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の電源重畳多重通信システム。
  6. 前記第2の閾値電圧(V3)は、前記受信可能最小電圧(V1)の3倍以下の電圧に設定されることを特徴とする請求項5に記載の電源重畳多重通信システム。
  7. 前記電源は、車両に搭載されるバッテリであり、前記複数の制御装置は、車両に搭載されて車両搭載機器を制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電源重畳多重通信システム。
  8. 電源より出力される電力を電源線を介して複数の制御装置に供給すると共に、前記電源線に制御信号を重畳して各制御装置間での通信を行う電源重畳多重通信システムの、各制御装置での送信信号レベルを設定する方法であって、
    一の制御装置にて、他の制御装置より送信された制御信号を受信し、受信した制御信号の信号レベルを検出する段階と、
    前記一の制御装置にて、前記検出された信号レベルが、予め設定した信号レベルの範囲内であるか否かを判定する段階と、
    前記一の制御装置にて、前記検出された信号レベルが前記範囲内でないと判定された場合に、前記他の制御装置にレベル変更要求信号を送信する段階と、
    前記他の制御信号にて、前記レベル変更要求信号が受信された場合に、送信手段より送信する制御信号の信号レベルを変更する段階と、
    を備えることを特徴とする電源重畳多重通信システムの送信信号レベル設定方法。
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