JP2009162261A - 深溝玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】玉と保持器の間の油膜保持性能を向上させ、且つ、潤滑油の適度な流入・排出を促進させることにより、軸受の温度上昇を避けて、軸受の許容回転数を上げることのできる深溝玉軸受を提供する。
【解決手段】深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内外輪間に転動自在に配置された複数の玉3と、玉を円周方向に所定の間隔で保持する保持器3と、外輪側の軸方向両端にそれぞれ取り付けられた油溜板5とを備え、油潤滑の環境で使用される。油溜板5の内径Dsは玉3の公転直径PCD以下とし、内輪1の外径部と油溜板5の内径部との最短距離を玉3の直径Dwの9%以上とした。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、自動車のトランスミッション等の高速回転で使用される深溝玉軸受に係り、特に、ポンプ等で潤滑油を軸受外部から軸受内部へ供給する強制潤滑方式等、油潤滑の環境で使用される深溝玉軸受に関するものである。
例えば、転がり軸受の一種である深溝玉軸受は、アンギュラ玉軸受に比べて許容回転数は劣るものの、安価で、取り扱いが簡単なため、その許容回転数を上げることが、ユーザーから強く望まれている。転がり軸受の改良については、次のように幾つもの提案がなされている(特許文献1〜7及び非特許文献1参照。)。
まず、特許文献1には、許容回転数を上げるために、自己潤滑性・低摩擦性等の観点から、金属製保持器を避けて合成樹脂保持器を使うこと、高速回転時には保持器が振動するので、玉案内を避けて外輪案内を採用すること、回転トルク増大防止のためにポケット形状として、球面を避けて円筒形を採用すること、等が有効であることが開示されている。
また、非特許文献1には、潤滑方法として、高速回転には油潤滑が有利であることが記述されている。
また、特許文献2には、保持器形状として、転動溝を外内輪の軸方向中心からずらして、保持器ポケット底の肉厚を大きくすることが、保持器の耐久性向上に有効であることが記述されている。
また、特許文献3には、保持器ポケット底の肉厚化が、高速回転時の保持器変形抑制に有効であることが記述されている。
また、特許文献4には、軸受高速回転時の発熱を抑制するために、軌道輪の潤滑油排出側に潤滑油の流れを付勢する手段を設ける方法が開示されている。
また、特許文献5には、許容回転数を向上させる手段の1つとして、軸受内の潤滑状態を向上させることが重要であり、その潤滑状態の改善策として、図14に示すように、冠型保持器104を具備した玉軸受において、反ポケット開口側だけにシール105を設け、非シール側から潤滑油100を供給し、潤滑性能を向上させることが開示されている。
特開2002−295480号公報 実開平04−105630号公報 特開2006−226438号公報 特開平11−201173号公報 特開2007ー177858号公報 特開昭56−113826号公報 特公平5−45803号公報 「転がり軸受マニュアル」、P185、発行所 財団法人 日本規格協会、著者 綿林英一、1999年2月20日。
ところで、上記のような対策を講じても、一般的な開放型の深溝玉軸受の場合、玉が高速で公転すると、摺動部位となる玉と保持器間に存在する潤滑油が、その場に作用する遠心力によって、外側へ跳ね飛ばされ、前記摺動部に十分な潤滑油が存在しなくなり、そのために、保持器と玉が摩耗あるいは焼き付くという問題がある。
一方、軌道輪と接触するゴムシールや軌道輪と僅かな隙間を有する油溜板を装着する密閉型の深溝玉軸受の場合は、潤滑油が保持器や玉とほぼ一体となって回転するため、その遠心力の助けにより、軸受内が常に油浴状態となり、それゆえに保持器と玉の間に十分な潤滑油が存在する状態を作り出すことができるというメリットがある。
しかしながら、密閉型の深溝玉軸受の場合は、軸受内部の潤滑油量が限定されるため、軸受内が高温になりやすく、高温化により潤滑油粘度が落ちることによって、摺動面に油膜が形成されなくなり、結果的に保持器と玉が摩耗しやすくなったり、あるいは、焼き付きが発生しやすくなったりする問題があった。
また、図14に示す特許文献5に記載の深溝玉軸受の場合、供給された潤滑油100が、遠心力により軸受外径側に飛ばされ、保持器104の爪先端104a側(特に内径側)に行き渡らず、保持器104と玉103の摺動部で摩耗や焼き付きを起こすおそれがある。この問題は、軸受が高速化するほど遠心力が大きくなり顕著になるため、実際に高速化を実現することは難しいと言わざるを得ない。
特に、図15に示すように、保持器104の爪先端104aは、保持器104が軸方向にガタついた際に保持器104が抜けまいとするパチン力により玉103に押し付けられる部分であり、非常に摩耗しやすく、その部分に対する潤滑不足は、高速化する上での障害となる。
また、図16に示すように、保持器104が球面ポケット104bを有する片持形式の場合は、保持器104のポケット104bの入口径が内径側に行くにつれ小さくなるため、軸受を高速回転させた際に、保持器104が遠心力により外径側に捩れ変形し、爪先端104aの内径部(図16(b)中のEで囲んだ部分)が更に摩耗しやすくなる。
また、図17に示す特許文献6に記載の保持器のように、保持器104が、片持方式の円筒ポケット104cを有する場合は、保持器104の半径方向位置決めのためにポケット104cの内径側に保持器位置決め凸部(リップ)104dを設置する必要がある。このため、軸受を高速回転させた場合、遠心力によって、保持器104の開口端部が外径側に捩れ変形し、位置決め凸部104dが摩耗しやすいという問題がある。
また、図18(a)に示すように、玉103の中心に対して非対称な冠型樹脂保持器104を用いた軸受の場合は、高速回転時に、図18(b)に示すように、遠心力によって保持器104にクリープ変形(保持器の爪先端が外径側に開く変形)が起こりやすく、そのために局部的な応力が発生して、保持器104が疲労破損しやすいという問題もある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、玉と保持器の間の油膜保持性能を向上させ、且つ、潤滑油の適度な流入・排出を促進させることにより、軸受の温度上昇を避けて、軸受の許容回転数を上げることのできる深溝玉軸受を提供することにある。
前述した目的を達成するため、本発明は、下記(1)〜(7)を特徴としている。
(1) 外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、該複数の玉を円周方向に所定の間隔で保持する保持器と、前記外輪側の軸方向両端にそれぞれ取り付けられて前記内輪に向けて延びる一対の環状の油溜板とを備え、軸受内部に潤滑油を外部から供給する油潤滑の環境で使用される深溝玉軸受であって、
前記環状の油溜板の内径をDs、前記玉の公転直径をPCDとした場合、Ds≦PCDであり、且つ、前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする深溝玉軸受。
(2) 前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする(1)に記載の深溝玉軸受。
(3) 前記保持器の内径をDhとした場合、
Ds≦Dh
であることを特徴とする(1)または(2)に記載の深溝玉軸受。
(4) 前記保持器が鋼製の波型プレス保持器であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(5) 前記保持器が冠型樹脂保持器であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(6) 前記玉が浸炭窒化処理された鋼球よりなることを特徴とする(4)に記載の深溝玉軸受。
(7) 前記保持器の玉保持用ポケットの内側面の表面粗さが0.1μmRa以下に設定されていることを特徴とする(4)または(6)に記載の深溝玉軸受。
本発明の深溝玉軸受によれば、外輪側の軸方向両端に油溜板を取り付け、油溜板の内径Dsを玉の公転直径PCD以下に設定すると共に、内輪の外径部と油溜板板の内径部との最短距離を玉の直径の9%以上としているので、油潤滑の条件下において、軸受内部を良好な油浴状態に保ちながら、同時に適度な油貫通性を確保することができる。従って、軸受の温度上昇を抑制しながら、保持器と玉の間に安定して油膜を形成することができ、軸受潤滑状態を良好に維持することができる。特に内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の9%以上としているので、摺動部分の焼き付きを有効に防止することができる。その結果、軸受の許容回転数を上げることができる。
また、内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の11%以上とすることで、摺動部分の焼き付きをより確実に防止することができる。
さらに、油溜板の内径Dsを保持器の内径Dh以下にしているので、潤滑油を、必ず内輪側から軸受内部に入り込ませて、内輪側から軸受外部に排出させることができる。従って、潤滑油を、保持器と玉の間へ常に行き渡らせることができる。つまり、保持器の全体を油浴状態に置くことができて、保持器と玉の摺動部の潤滑状態を常に良好に保つことができ、その結果、許容回転数の増大に貢献できる。
加えて、片持タイプではなく、両持ちタイプの、玉の中心に対して対称な形状の鋼製の波型プレス保持器を用いているので、高温高速回転時における保持器の変形による保持器と外輪の接触や、保持器の強度低下を防止することができる。また、玉と軌道輪との摺動が同時に行われる軌道輪案内では、軸受のフリクショントルクが増大することになるが、波型プレス保持器を使用した場合は玉案内となってフリクショントルクを軽減できるから、許容回転数の増大に寄与することができる。また、保持器をプレス加工にて量産可能であるから、経済効果も大きくなる。
また、温度上昇により耐摩耗性の低下を来す樹脂保持器を使用しているものの、上述したように潤滑性の向上により軸受の温度上昇を抑制できるようにしているから、樹脂保持器の耐摩耗性低下を抑制することができ、樹脂保持器の持つ優れた摺動特性を活かすことができる。特に、潤滑油を保持器の先端に常に存在させることができるので、保持器の爪先端の摩耗を防止することができ、長期にわたる安定した高速回転が可能となる。また、樹脂保持器は射出成形により大量生産が可能であるから、大きな経済効果を発揮できる。また、片持タイプの冠型保持器は、高速回転時に保持器に加わる遠心力により変形が発生しやすいものの、組立性が非常に優れているので、その欠点を補うほどの著しい経済効果を発揮できる。
さらに、玉が浸炭窒化処理された鋼球よりなるので、玉のキズを防止することができ、高速回転化を実現することが可能になる。
また、保持器の玉保持用ポケットの内側面の表面粗さが0.1μmRa以下に設定されているので、玉のキズを防止することができ、高速回転化を実現することが可能になる。
以下、本発明の深溝玉軸受に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の深溝玉軸受の全体構成を示す部分破断斜視図、図2は同軸受の要部断面図、図3はその保持器の部分拡大斜視図である。
第1実施形態の深溝玉軸受は、軸受内部に潤滑油を外部から供給する油潤滑の環境下で使用されるもので、外周面に内輪軌道溝1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道溝2aを有する外輪2と、内輪軌道溝1aと外輪軌道溝2aとの間に転動自在に配置された複数の玉3と、これら複数の玉3を円周方向に所定の間隔で保持する鋼製の波型プレス保持器4と、外輪2の軸方向両端の肩部の環状溝2bに外径部が係合されて内輪1の肩部1bに向けて延びる一対の油溜板(シールドとも呼ばれる)5と、を備える。
波型プレス保持器4は、図1に示すように、外側に膨出する玉保持部4aと平坦部4bとを円周方向交互に形成した2枚の環状保持板4cを、各玉保持部4aがポケット部4pを形成するように対向させ、各平坦部4bをリベット等で結合して、一対の環状保持板4cを一体に組み立てたものである。
図3に示すように、各環状保持板4cは、SPCC(JIS G4141)等の金属板材をプレス加工して製作されており、玉3と摺接するポケット4pの内側面、即ち、玉保持部4aの内面の表面粗さが、Ra=0.1μm以下に設定されている。通常、高速回転時に油温が上昇して油の粘度が低下したとき、玉3と保持器4の摺動面に形成される油膜の厚さは低下する。油膜の厚さが低下したとき、保持器4の表面粗さが粗く、油膜厚さよりも保持器4の表面の凹凸が高いと、保持器4と玉3は直接接触してしまい、玉キズの原因となる。そのため、本実施形態では、ポケット4pの内側面を研磨して、その表面粗さを0.1μmRa以下としている。なお、ポケット4pの内側面の表面硬さは、玉3よりも十分に低いHv300以下であることが望ましい。
また、玉3は、SUJ2(軸受鋼)に浸炭窒化処理を施して耐摩耗性を高めた鋼球を採用している。即ち、本実施形態で採用している鋼製の波型プレス保持器4は、安価で、200℃以下の使用温度領域で耐摩耗性・耐クリープ性・耐疲労強度の劣化が少ないという非常に大きな利点を持つが、一方で、樹脂保持器よりも玉3への攻撃性が強い。そのために、玉3に浸炭窒化処理を施して、玉キズを抑制している。
内輪1の内輪軌道溝1aの両側の肩部1bでは、軌道溝寄り部分1cより軸方向外側が切り欠かれており、油溜板5と対向する端部側外径部を軌道溝寄り部分1cの外径より小径としている。ここで、油溜板5の内径Dsは、玉3の公転直径PCD以下の寸法(即ち、Ds≦PCD)とされ、且つ、内輪1の端部側外径部と油溜板5の内径部との最短距離y、つまり、y=〔(油溜板5の内径:Ds)−(内輪1の端部の外径:D1)〕/2が玉3の直径Dwの9%以上、好ましくは、11%以上に設計されている。
また、保持器4の内径Dhに対し、油溜板5の内径Dsが「Ds≦Dh」となっていることが望ましい。それは、Ds>Dhであると、図4に示すように、高速回転時には潤滑油100が、保持器4や玉3と共に回転して遠心力により油溜板5の内側に油浴状態を形成するが、保持器4と玉3の軸受中心側の部分へは十分に潤滑油が供給されなくなる可能性がある。この場合、保持器4と玉3の摺動部へ潤滑油100が完全には入り切らなくなって、焼き付きPを起こす確率が高くなる。
このように、外輪2の両肩部に油溜板5を取り付けることで、軸受内部の潤滑状態を常に良好な状態にすることができる。従って、玉3と保持器4の間の摺動部への潤滑油膜の生成を保証することができ、焼き付きや摩耗を抑制することができる。また、油溜板5の内径部と内輪1の端部側外径部との間に適当な大きさの隙間(開口部)yを確保しているから、油潤滑の条件下において、軸受内部を良好な油浴状態に保ちながら、同時に適度な油貫通性を確保することができ、軸受の温度上昇を抑制して、軸受の許容回転数を上げることができる。
また、本実施形態の深溝玉軸受のように、内輪1、外輪2、玉3、保持器4の全てが鋼製である場合、安価に製作できる上、200℃以下の使用温度領域において、耐摩耗性・耐クリープ性が向上すると共に、耐疲労強度の劣化がきわめて少なくなる。また、給油方式については、油潤滑であればよく、油浴と強制潤滑のどちらを採用してもよい。
なお、図5に示すように、油溜板5の内径部に、軸受内部側へ向けて折れ曲がった折り曲げ部5aを設けてもよい。これにより、潤滑油を軸受内により確実に溜めておくことができる。また、折り曲げにより、油溜板5の強度も向上することができる。この場合も、図6に示すように、Ds>Dhであると、高速回転時に潤滑油100が外周側にのみ溜まるので、保持器4や鋼球3の軸受中心側への潤滑油の供給が不十分になりやすく、焼き付きPを起こす確率が高くなる。
また、上記実施形態では、保持器4として、鋼製の波型プレス保持器を使用した場合を示したが、玉保持部と平坦部とを円周方向に交互に有した環状保持板を樹脂により形成し、その環状保持板を2枚、各玉保持部がポケット部を形成するように対向させて合体(係止孔と係止突起の係合などにより合体)させることにより、保持器4を形成することもできる。
<第2実施形態>
次に本発明の深溝玉軸受に係る第2実施形態を説明する。図7は第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。第2実施形態の深溝玉軸受は、玉3を保持する保持器として、冠型樹脂保持器14を採用したものである。その他の構成は、第1実施形態のものと同様であるから、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
この実施形態においても、油溜板5の内径Dsは、玉3の公転直径PCD以下の寸法(即ち、Ds≦PCD)とされ、且つ、内輪1の端部側外径部と油溜板5の内径部との最短距離y、つまり、y=〔(油溜板5の内径Ds)−(内輪1の端部の外径D1)〕/2が玉3の直径Dwの9%以上、好ましくは、11%以上に設計されている。
また、冠型樹脂保持器14を採用した場合にも、保持器14の内径Dhに対し、油溜板5の内径Dsが「Ds≦Dh」となっていることが望ましい。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。なお、本実施形態においては、保持器4のポケット底を流入側としているが、ポケット底の向きを流出側としてもよい。また、油流と保持器14の向きは限定しないが、保持器4のポケット底を流出側とした方が軸受内の油流がスムーズになり、より発熱が抑えられるため好ましい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上述の各実施形態では、油溜板5は外輪2の肩部に直接取り付けられているが、外輪側の軸方向両端にそれぞれ取り付けられればよい。即ち、図8(a)に示すように、油溜板として、ハウジング25の両側板25aが用いられてもよいし、図8(b)に示すように、ハウジング25の側板25aと外輪2の側面との間に板部材26を挟み、その板部材26を油溜板として用いてもよい。
<試験1>
次に、図2に示す深溝玉軸受(軸受名番6011:軸受内径=55mm、軸受外径=90mm、軸受幅18mm)を用いて、焼付き試験を行った。本試験1では、油溜板5の内径Dsを65mmに固定し、内輪1の端部の外径D1を変化させることにより、y/Dw(隙間/玉径)を変化させた深溝玉軸受を1個ずつ用意し、それぞれ次の条件下で回転させて、回転後の保持器4及び玉3の焼き付きの有無を観察した。なお、軸受構成及び試験条件は、以下の通りである。
<軸受構成>
・ 保持器材料:JIS SPCC
・ 保持器内側面の表面粗さ:0.2μmRa
・ 保持器内側面の表面硬さ:Hv280
・ 保持器の内径Dh=67.9mm
・ 玉(鋼球):SUJ2(軸受鋼)ずぶ焼き(C%=1.0%)
・ 玉の公転直径PCD=72.5mm
<試験条件>
・荷重:1500N
・潤滑油:VG24の鉱油
・潤滑方法:強制潤滑給油0.1(l/min)
・給油温度:120℃
・試験時間:焼き付きを起こさない場合は1時間で打ち切り
・回転数:1000rpmステップで行った。
焼付き試験の結果は、表1及び図9の通りであった。
Figure 2009162261
図9のグラフより分かるように、y/Dwが9%以上になると、深溝玉軸受の許容回転数の向上はほぼ飽和し、y/Dwが11%以上となると完全に飽和する。これにより、y/Dwが9%以上、望ましくは11%以上であれば、焼き付き低減に対して大きな効果が得られることが分かる。
ところで、玉3として通常の鋼球(浸炭窒化処理していない「ずぶ焼き」のもの)を用いた場合は、y/Dwが9%以上においても、試験後の鋼球表面に玉キズが認められるが、SUJ2に浸炭窒化処理(表面C%=1.1、N%=0.1、表面硬さ=Hv800)を施した鋼球を用いた場合は、玉キズが大幅に改善されることが検証された。表2に、y/Dwが11%の試験前後の鋼球の表面粗さの変化を示す。試験後の値は、キズが付いている部分の粗さを用いた。
Figure 2009162261
このように、鋼球の熱処理を浸炭窒化とすることで、玉キズを大きく抑制でき、玉キズによる耐久性劣化を防止できることが分かった。
<試験2>
次に、試験2では、図2に示す深溝玉軸受(軸受名番6011)において、y=1.14mm(y/Dw=0.11)の場合の保持器4の内径Dhと油溜板5の内径Dsの差を変化させた(ただし、保持器4の内径Dh(=67.9mm)は固定)深溝玉軸受を1個ずつ用意し、それぞれを試験1の場合と同条件下で回転させて、回転後の保持器4及び玉3の焼き付きの有無を観察し、焼付き未発生の限界を調べた。ただし、玉としては、浸炭窒化処理した鋼球を使用し、保持器としては、試験1のものを使用した。
焼付き試験の結果は、表3及び図10の通りであった。
Figure 2009162261
図10のグラフより分かるように、油溜板5の内径Dsが保持器4の内径Dhを超えると(Dh−Dsがマイナス)、焼き付き未発生の限界のdmNが低下する。つまり、図4、図6に示したように、高速回転時に潤滑油100が、保持器4や玉3と共に回転して、遠心力により油溜板5の内側に油浴状態を形成するが、保持器4と玉3の軸受中心側の部分へは十分に供給されなくなり、結果的に、摺動部へ完全に潤滑油100が入り切らなくなって、焼き付きが起こる確率が増す。従って、油溜板5の内径Dsを保持器4の内径Dh以下とする(Ds≦Dh)ことにより、保持器4と玉3の間に十分に潤滑油を行き渡らせることができ、それにより、許容回転数を向上させることができる。
ここで、焼き付き未発生のdmNが飽和している4点、即ち、保持器4の内径Dh−油溜板5の内径Ds≧0の条件を満たす4つの深溝玉軸受について、保持器4として、ポケット4pの内側面の表面粗さを0.1μmRaに改善したものを使用して鋼球の表面粗さについて試験した。その結果を表4に示す。
Figure 2009162261
この表4に示すように、保持器4として、ポケット4pの表面粗さを0.1μmRaに改善したものを使用した場合は、表面粗さが0.2μmRaのものと比べて、鋼球の表面粗さの劣化が更に小さくなった。従って、保持器4のポケット4pの内側面の表面粗さを0.1μmRa以下に設定することは、十分に意義があることが分かった。
<試験3>
次に、図7の深溝玉軸受(軸受名番6011)を用いて、振れ回り試験を行った。本試験3では、油溜板5の内径Dsを65mmに固定し、内輪1の端部外径D1を変化させることにより、y/Dw(隙間/玉径)を変化させた深溝玉軸受を1個ずつ用意し、それぞれを次の条件下で回転させて、振れ回りが発生するまでの時間を調査した。なお、軸受構成及び試験条件は、以下の通りである。
<軸受構成>
・ 保持器:球面ポケットを有する冠型樹脂保持器
・ 保持器材料:カーボン繊維15%強化46ナイロン
・ 保持器の内径Dh=67.9mm
・ 玉(鋼球):SUJ2(軸受鋼)ずぶ焼き(C%=1.0%)
・ 玉の公転直径PCD=72.5mm
<試験条件>
・ 回転数:30000rpm
・ 給油温度:120℃
・ 潤滑方法:VG24の鉱油を強制潤滑給油0.1(l/min)
・ 荷重:2000N
・ 試験時間:20Hr,50Hr,100Hr,移行100Hr毎にTP確認
振れ回り試験の結果は、表5及び図11の通りであった。
Figure 2009162261
図11に示した振れ回り試験結果により、y/Dwが9%以上となると、深溝玉軸受の振れ回り開始時間の向上がほぼ飽和し、y/Dwが11%以上となると、振れ回り開始時間の向上が完全に飽和することが分かる。これより、y/Dwは9%以上、望ましくは11%以上であると、振れ回り低減に対して大きな効果が得られることが検証された。
<試験4>
試験4では、図7の深溝玉軸受(軸受名番6011)において、y=1.14mm(y/Dw=0.11)を固定し、保持器4の内径Dhと油溜板5の内径Dsの差を変化させた(ただし、保持器4の内径Dh(=68.3mm)は固定)場合の振れ回りの発生の有無を観察した。試験条件は試験3と同様である。
振れ回り試験の結果は、表6及び図12の通りであった。
Figure 2009162261
図12のグラフより分かるように、油溜板5の内径Dsが保持器4の内径Dhを超えると(DhーDsがマイナス)、高速回転時の遠心力により油溜板5の内径側の潤滑油が、図13に示すごとく、軸受外周側に飛ばされるため、保持器14の爪先端14aの内径側の玉3との摺動部に油浴部分を形成できなくなり、振れ回りまでの時間が短くなる。従って、油溜板5の内径Dsが保持器14の内径Dh以下ならば、保持器14と玉3の間に潤滑油が十分に行き渡り、耐振れ回り性を向上させることができると言うことが分かる。
第1実施形態の深溝玉軸受の全体構成を示す部分破断斜視図である。 図1の深溝玉軸受の要部断面図である。 図1の保持器の部分拡大斜視図である。 油溜板と保持器の寸法関係を説明するための要部断面図である。 第1実施形態の変形例に係る深溝玉軸受の要部断面図である。 図5の変形例において、油溜板と保持器の寸法関係を説明するための要部断面図である。 第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。 本発明の油溜板の変形例を説明するための要部断面図である。 図2の深溝玉軸受において、油溜板と内輪間の隙間と玉径との比を変化させて行った焼付き試験の結果を示すグラフである。 図2の深溝玉軸受において、油溜板内径と保持器内径との差を変化させて行った焼付き試験の結果を示すグラフである。 図7の深溝玉軸受において、油溜板と内輪間の隙間と玉径との比を変化させて行った振れ回り試験の結果を示すグラフである。 図7の深溝玉軸受において、油溜板内径と保持器内径との差を変化させて行った焼付き試験の結果を示すグラフである。 油溜板内径と保持器内径の寸法関係を説明するための要部断面図である。 従来の深溝玉軸受の要部断面図である。 従来の深溝玉軸受の保持器を示す斜視図である。 従来の深溝玉軸受の玉と保持器を示す図である。 従来の他の深溝玉軸受の保持器を示す図である。 従来の深溝玉軸受において冠型保持器の振れ回りを説明する断面図である。
符号の説明
1 内輪
1a 内輪軌道溝
2 外輪
2a 外輪軌道溝
3 玉
4 波型プレス保持器
5 油溜板
14 冠型樹脂保持器
100 潤滑油
D1 内輪の外径
Ds 油溜板の内径
Dh 保持器の内径
PCD 玉の公転直径

Claims (7)

  1. 外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、該複数の玉を円周方向に所定の間隔で保持する保持器と、前記外輪側の軸方向両端にそれぞれ取り付けられて前記内輪に向けて延びる一対の環状の油溜板と、を備え、軸受内部に潤滑油を外部から供給する油潤滑の環境で使用される深溝玉軸受であって、
    前記環状の油溜板の内径をDs、前記玉の公転直径をPCDとした場合、Ds≦PCDであり、且つ、前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする深溝玉軸受。
  2. 前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする請求項1に記載の深溝玉軸受。
  3. 前記保持器の内径をDhとした場合、
    Ds≦Dh
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の深溝玉軸受。
  4. 前記保持器が鋼製の波型プレス保持器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
  5. 前記保持器が冠型樹脂保持器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
  6. 前記玉が浸炭窒化処理された鋼球よりなることを特徴とする請求項4に記載の深溝玉軸受。
  7. 前記保持器の玉保持用ポケットの内側面の表面粗さが0.1μmRa以下に設定されていることを特徴とする請求項4または6に記載の深溝玉軸受。
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