JP2009161838A - 銅微粒子の製造方法および銅微粒子 - Google Patents

銅微粒子の製造方法および銅微粒子 Download PDF

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浩樹 大背戸
Onori Kanamori
大典 金森
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Abstract

【課題】簡便で生産性の良い化学合成により酸化に安定な微細粒径の銅微粒子を得る方法を提供することである。
【解決手段】一価または二価の銅化合物に式1で示される化合物の存在下で還元剤を作用させる工程を含む銅微粒子の製造方法。
【化1】

(式中、R1は炭素数6から30の有機の基を示し、X1、X2、X3はNまたはCHを示す。ただしX1、X2、X3のうち少なくとも一つはNである。)
【選択図】なし

Description

本発明は、エレクトロニクス用配線形成材料などに有用な銅微粒子とその製造方法に関する。
従来から、金属微粒子は、エレクトロニクス用配線形成材料として、プリント配線、多層回路基板の内部の配線、回路基板と電子部品の接続、ICタグのアンテナに利用されており、さらに近年では、素子内部の配線に適用する試みも知られている。近年は、微細線幅の配線にも対応できるよう、微細な、具体的には概ね粒径10〜200nmの金属微粒子の利用が盛んに検討されている。(特許文献1、2)
このような金属微粒子としては、導電率が高く、かつ酸化に安定な銀からなるものが多く検討され、これを用いたインクやペーストが上市されている。しかし、銀は高価なうえ、マイグレーションを起こしやすいという性質があり、その用途は限定されている。
このような背景から、銀と同等の導電率を有し、銀より安価でマイグレーションを起こしにくい銅微粒子およびこれを用いたインクやペーストが望まれており、銅微粒子の製造方法の様々な検討が行われている。
銅微粒子の製法としては、金属銅から物理的な処理により製造する方法と、銅化合物から化学的に合成する方法がある。
金属銅から物理的な処理により銅微粒子を製造する方法としては、蒸発法(特許文献3)、プラズマを用いる方法(特許文献4)などが知られている。これらの方法は、特殊な装置が必要で、安価に大量に銅微粒子を生産するには必ずしも適していない。
これに対し、銅化合物から銅微粒子を化学的に合成する方法は、通常の合成設備で容易に対応できるため大量生産には適している。銅化合物から化学的に合成する方法の多くは、液中で1価または2価の銅化合物に還元剤を作用させて銅微粒子を析出させる方法である(例えば特許文献5)。
このとき、分散剤の存在下に上記の反応を行うことがある。ここで、分散剤とは、粒子の表面に付着する性質を有する有機物質を意味する。同義の技術用語として、キャッピング剤、保護コロイドなどがあるが、本明細書では分散剤という用語を統一して用いる。分散剤が存在すると、分散剤が銅粒子の表面に付着することにより成長が抑止されて、微細な銅粒子を安定して得ることが容易になるためである。分散剤としては、ゼラチン(特許文献6)やポリビニルピロリドン(特許文献7)のような高分子化合物、キサントゲン酸塩(非特許文献1)やジチオリン酸エステル(特許文献8)のような低分子化合物が提案されている。
分散剤には、上述の粒径制御の機能の他に分散媒中への銅微粒子の分散を容易にするという機能ももたせる場合が多い。
また、品質の優れた、具体的には例えば粒度分布が狭い、微粒子を得るための合成反応上の工夫として、混合反応器を用いる方法(特許文献9)、超音波照射を用いる方法(特許文献10)、マイクロ波照射を用いる方法(非特許文献2)などが提案されている。
このような様々な検討が多く行われているが、銅は銀と比べて酸化されやすく、粒子が微細になるほど比表面積が増大して酸化の影響を受けやすくなるため、酸化に対して安定かつ微細な(概ね粒径10〜200nmの)銅粒子を簡便に得る方法が確立されておらず、かかる銅微粒子およびそれを用いたインクやペーストは、未だ実用化には至っていない。
なお、類似の技術として、何らかの方法ですでに得られている銅微粒子をベンズトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ゼラチンなどで被覆する技術が特許文献11に記載され、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、フェナントロリン系化合物などで被覆する技術が特許文献12に記載され、1,2,3−トリアゾール系化合物などで被覆する技術が特許文献13に記載されている。これらの例では、イミダゾール系化合物や1,2,3−トリアゾール系化合物を銅微粒子の合成時に存在させるのではなく、合成後に加えており、合成時の粒径制御を意図したのではなく、粒径制御効果を示唆するものでもない。
特開昭2002−299833号公報 特開昭2002−324966号公報 特開平3−34261号公報 特開2004−256857号公報 特許第2621915号公報 特開2005−240088号公報 米国特許出願公開2006/0053972号明細書 米国特許出願公開2006/0053972号明細書 特表2004−533912号公報 特開2005−023417号公報 特開2006−117959号公報 米国公開US20050277297A1号公報 特開2007−270264号公報 H・チャイクら、「ラングミュア」、18巻、3364−3369頁(2002年) 朱海涛ら、「ジャーナル・オブ・クリスタル・グロース」、270巻、722−728頁(2004年)
本発明が解決しようとする課題は、簡便で生産性の良い化学合成により酸化に安定な微細粒径の銅微粒子を得る方法を提供することである。
発明者らは、上記の課題を適切な新規分散剤を用いることにより解決すべく検討を重ねた結果、式1で示される化合物を分散剤とすることが有効であることを見出した。
本発明の銅微粒子の製造方法は、一価または二価の銅化合物に式(I)で示される化合物の存在下で還元剤を作用させることからなる。
ここで、式1中、R1は炭素数6から30の有機の基を示し、X1、X2、X3はNまたはCHを示す。ただしX1、X2、X3のうち少なくとも一つはNである。
本発明の微粒子は、表面に式1で示される化合物が付着した、平均粒径10〜200nmの銅微粒子である。
本発明の銅微粒子の製造方法によれば、式1で示される化合物が分散剤として作用することにより、容易に微細な銅粒子を得ることができる。また、本発明の銅微粒子は、式1で示される分散剤が付着しており、酸化に対し安定である。
本発明の銅微粒子の製造方法では、原料として一価または二価の銅化合物を用いる。1価または2価の銅化合物はあらゆる公知のものが使用できる。
一価の銅化合物の具体例としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)、酢酸銅(I)一水和物、酸化銅(I)を挙げることができるが、これらに限定されない。
二価の銅化合物の具体例としては、塩化銅(II)、塩化銅(II)二水和物、臭化銅(II)、酢酸銅(II)、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)五水和物、硝酸銅(II)三水和物、塩基性炭酸銅(II)、塩化二アンモニウム銅(II)二水和物、銅(II)アセチルアセトナト、クエン酸銅(II)2.5水和物、ネオデカン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、水酸化銅(II)一水和物、酸化銅(II)を挙げることができが、これらに限定されない。
これらのうち、酸化銅(I)、酸化銅(II)、水酸化銅(II)一水和物は、還元により副生する銅化合物由来の成分が水だけであり、精製が容易になるので、最も好ましい。
本発明の銅微粒子の製造方法では、一価または二価の銅化合物に還元剤を作用させる。還元剤は、とくに限定されないが、好ましい還元剤の例を示すと、ポリオール類、アルカノールアミン類、ホルムアルデヒド、還元糖、ヒドロキノン、ヒドラジン化合物、アルミニウムハイドライド化合物、ホウ素ハイドライド化合物を挙げることができる。
ポリオール類とは、分子内に複数のアルコール性水酸基を有する化合物のことで、具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。
アルカノールアミン類とは、分子内にアルコール性水酸基を有する脂肪族アミンのことで、具体的には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルジエタノールアミンなどを例示することができる。
還元糖とは、アルデヒド基・ケトン基などの還元性の官能基を遊離型で、あるいはヘミアセタールの形で持った単糖ないしはオリゴ糖のことで、具体的には、グルコース、ガラクトース、フルクトース、グリセルアルデヒド、リボース、キシロース、マルトース、ラクトースなどを例示することができる。
ヒドラジン化合物とは、ヒドラジン、ヒドラジンの水和物、ヒドラジンの塩、ヒドラジンの置換基誘導体、ヒドラジンの置換基誘導体の塩の総称である。ヒドラジン類に属する化合物の具体例を示すと、ヒドラジン水和物、一塩酸ヒドラジン、二塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、臭酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、tert-ブチルヒドラジン塩酸塩、カルボヒドラジド、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドンなどが挙げられる。
アルミニウムハイドライド化合物とは、アルミニウム−水素結合を有する還元性の化合物を意味し、具体的には、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソプロピルアルミニウムなどを例示することができる。
ホウ素ハイドライド化合物とは、ホウ素−水素結合を有する還元性の化合物を意味し、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、リチウムトリエチルボロハイドライド、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体、ピリジン・ボラン錯体などを例示することができる。
これらのうち、本発明に用いる還元剤としては、還元が比較的穏やかで制御が容易であるアスコルビン酸およびヒドラジン化合物が特に好ましく、そのなかでも、ヒドラジン水和物が、還元剤由来の副生物がほとんど生じず、精製が容易になるため、最も好ましい。
式1で示される化合物は、分散剤すなわち銅微粒子の表面に付着する性質を有する有機物質として機能する。一価または二価の銅化合物に還元剤を作用させる際に、式1で示される化合物が存在すると、析出してきた銅微粒子の表面に式1で示される化合物が付着する。分散剤が付着することにより、銅粒子の成長が抑止され、また粒子同士が合体して大きな粒子となることも阻害され、安定して微細な銅微粒子が得られる。式1で示される化合物は、窒素を含む5員環の部分が銅粒子と結合し、R1の部分が反応溶媒と親和性が高いため、上記の顕著な効果が得られるものと考えられる。
式1中、R1は炭素数6から30の有機の基を示し、X1、X2、X3はNまたはCHを示す。ただしX1、X2、X3のうち少なくとも一つはNである。
式1において、X1、X2、X3はNまたはCHであり、X1、X2、X3のうち少なくとも一つはNである。このような化合物には、水素の結合する窒素原子が異なる複数の互変異性体を有する場合がある。互変異性体のうち式1に該当しないものがあっても、少なくとも1種の互変異性体が式1に該当すれば、当該化合物は、本発明においては式1の化合物であるとみなす。X1、X2、X3の具体的な組み合わせ、可能な互変異性体、代表的な合成文献の例を以下に示す。
(1)2−置換イミダゾール類
合成文献の例:特開平1−160969号公報。
(2)5(4)−置換イミダゾール類
合成文献の例:特開2004−323357号公報。
(3)5(3)−置換ピラゾール類
合成文献の例:ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、20巻、1681頁(1955年)。
(4)5(4)−置換−1,2,3−トリアゾール類
合成文献の例:ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー、76巻、42頁(1966年)。
(5)5(3)−置換−1,2,4−トリアゾール類
合成文献の例:ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー、76巻、5651頁(1954年)。
(6)5−置換−テトラゾール類
合成文献の例:ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、66巻、7945頁(2001年)。
式1におけるR1は、炭素数6から30の有機の基である。このようなR1を選ぶことにより、式1に示す化合物は、反応溶媒への親和性および溶解性が優れるため微細な粒径の銅微粒子を容易に得ることができる。ここで有機の基とは、以下のような基を言う。
(1)置換基を有してもよい炭化水素から導かれる1価の基。
(2)置換基を有してもよい複数の炭化水素が後述の結合基を介して結合した化合物から導かれる1価の基。
上述の(1)および(2)における置換基の具体例としては、水酸基、ケト基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲンを挙げることができる。(1)および(2)における炭化水素は、鎖状、分岐状、環状のいずれの構造であってもよく、不飽和結合を有さなくても有しても良く、脂肪族であっても芳香族であってもよい。
(2)における結合基の具体例としては、次の式に示すような基を挙げることができる。
1、すなわち炭素数6から30の有機の基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
置換基を有さない炭化水素から導かれる1価の基の具体例として、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−トリル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェニルビニル基などを挙げることができる。
置換基を有する炭化水素から導かれる1価の基の具体例として、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、2−ブロモフェニル基を挙げることができる。
複数の炭化水素が結合基を介して結合した化合物から導かれる1価の基の具体例として、2−ベンジルアミノエチル基、2−ベンゾイルアミノエチル基、ドデカノイルアミノメチル基、4−メトキシフェニル基などを挙げることができる。
1は、炭素数がある程度大きい方が、式1で示される化合物の存在下に合成した銅微粒子のインキやペーストに用いる分散媒に対する分散性が優れる傾向があるため、式1で示される化合物におけるR1は炭素数10から30の有機の基であることが好ましい。特に銅微粒子を有機溶媒に分散させて使用する用途では、式1で示される化合物におけるR1が炭素数が10から30の炭化水素から導かれる1価の基であることが好ましい。
式1で示される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明においてはこれらには限定されない。
式1で示される化合物のうち、特に式2で示される化合物は、合成が容易で、市販品も入手でき、得られる銅微粒子の分散媒への分散が優れるため、最も好ましい。上述の例示化合物のうちでは、式3、4、5の化合物が式2で示される化合物に該当する。
式2中、R1は炭素数6から30の有機の基を示す。
本発明の製造方法によって得られる銅微粒子は、粒径が微小であるにもかかわらず酸化に対し安定である。これは、式1で示される化合物が銅微粒子に強固に結合する性質をもち、酸化を抑止しているからだと発明者らは推定している。
式1で示される化合物は、単一の化合物を用いても良く、複数の化合物の混合物を用いてもよい。
本発明の銅微粒子の製造方法は、一価または二価の銅化合物に、式1で示される化合物の存在下で還元剤を作用させる工程を含む。この工程は、通常、一価または二価の銅化合物を溶解または分散させた液体に、還元剤の溶液を加えることにより行われる。このとき式1で示される化合物は、一価または二価の銅化合物を溶解または分散させる液体に溶解してもよく、還元剤の溶液に溶解させてもよく、両方に溶解してもよい。
一価または二価の銅化合物を溶解または分散させる液体と、還元剤の溶液に用いる溶媒は、同じであってもよく、異なっていても良い。異なる場合は、両者は混和することが好ましい。一価または二価の銅化合物を溶解または分散させる液体や還元剤の溶液に用いる溶媒は混合溶媒であってもよい。一価または二価の銅化合物を溶解または分散させる液体と、還元剤の溶液に用いる溶媒としては、反応を阻害しない限り、特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンおよびこれらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
一価または二価の銅化合物を溶解または分散させた液体および還元剤の溶液には、pH制御のために、酸、塩基、塩などを添加してもよい。
還元剤は、一価または二価の銅化合物に対して通常過剰に用いる。具体的には等量比で1.1〜10倍程度加えることが好ましい。
反応温度には、特に制限はないが、概ね0〜100℃の範囲が好ましい。
通常、一価または二価の銅化合物を溶解または分散させた液体を反応槽に入れ、攪拌下に還元剤の溶液を滴下する方法が用いられる。このとき、超音波やマイクロ波を照射してもよい。一価または二価の銅化合物を溶解または分散させた液体と元剤の溶液を混合反応器に導入して反応させてもよい。
反応により得られた銅微粒子の単離には、いくつかの方法をとることができる。銅微粒子を適切なフィルターを用いて濾取し、適切な溶媒で洗浄し、加熱や減圧、通風などにより乾燥する方法をとることが可能である。また、遠心分離して液相を除き、洗浄溶媒を加えて攪拌した後遠心分離する操作を行った後、乾燥する方法をとることも可能である。あるいは、限外濾過により精製したのち、加熱、減圧、スプレードライのような方法で溶媒を除去する方法も可能である。
本発明の銅微粒子は、表面に式1で示される化合物が付着した、平均粒径10〜200nmの銅微粒子である。
本発明の銅微粒子は、表面に式1で示される化合物が付着することにより、粒径が微小であっても酸化に安定であるという利点が得られる。また、表面に式1で示される化合物が付着することにより、分散媒への分散性が優れ、インキやペーストを調製する際に有利であるという利点が得られる。
また、本発明の銅微粒子に式1で示される化合物が付着していることを確認する方法としては、例えば熱重量分析・質量分析(TG−MS)または昇温熱脱着・熱分解質量分析(TPD−MS)により加熱により脱離する成分を同定することにより確認することができる。
本発明の銅微粒子の酸化の程度は、粉末X線回折を測定し、特徴的な回折ピークたとえば、2θ=43.3°(銅)、2θ=36.4°(酸化銅(I))、2θ=38.7°(酸化銅(II))を調べることにより行うことができる。
本発明の銅微粒子を微細配線、具体的には、線幅や厚みがμmオーダーの配線に適用するためには、本発明の銅微粒子の平均粒径は200nm以下であることが必要である。また、粒径があまりに小さすぎると酸化の影響を受けやすくなるので、本発明の銅微粒子の平均粒径は10nm以上であることが好ましい。微細配線への適合性と酸化の影響の双方を考慮した場合、本発明の銅微粒子の平均粒径は20〜50nmであることがより好ましい。
銅微粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、レーザー回折粒度分布計などを用いて測定することができる。
本発明の製造方法により得られる銅微粒子は、適切な分散媒に分散し、必要に応じバインダーなどの成分を配合してインク、ペーストを調製し、これをプラスチックフィルム、ガラス繊維強化プラスチック基板、ガラス基板、セラミック基板、セラミックグリーンシートなどに印刷し、加熱処理することにより銅からなる導電パターンを形成するために使用することができる。本発明の製造方法により得られる銅微粒子を用いた導電パターンは、プリント配線、多層回路基板の内部の配線、回路基板と電子部品の接続、ICタグのアンテナ、素子内部の配線などの多くのエレクトロニクス用途に適用することができる。
インクやペーストの分散媒としては、適度な揮発性を有する液体であれば、あらゆるものが使用可能であり、複数の液体を混合して用いることもできる。分散媒に用いることのできる液体の具体例を挙げると、水、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、プロピレンカーボネート、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリンなどを挙げることができる。
さらに、液状の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂も分散媒として用いることができる。
バインダーとしては、溶剤可溶性のあらゆる高分子化合物が使用可能である。具体的にはポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンなどを挙げることができる。
本発明の製造方法により得られる銅微粒子を配合して調製されたインク、ペーストを用いて印刷する方法としては、インクジェット、平版、平版オフセット、凹版(グラビア印刷など)、凹版オフセット、凸版(フレキソ版印刷など)、孔版(スクリーン印刷など)など、あらゆる公知の印刷方法を適用することができる。
本発明の製造方法により得られる銅微粒子は、導電性接着剤の導電フィラー、プラスチックの熱伝導率を高めるためのフィラー、触媒などの用途にも使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例1]
テフロンコートした攪拌子を備えたナス型フラスコ中で水酸化銅(II)(和光純薬製、98mg、1mmol)をメタノール(10ml)に懸濁させ、ここに2−ウンデシルイミダゾール (式3で示される化合物、和光純薬製、74mg、0.33mmol)とヒドラジン水和物(80%水溶液、関東化学製、1g、20mmol)をメタノール(10ml)で希釈したものを加えた。室温で一晩攪拌し、析出した固体をメンブレンフィルターでろ取後、メタノールで十分に洗浄した。その後得られた固体を減圧乾燥させることにより、銅微粒子59mgを得た。図1に走査型電子顕微鏡像を示す。走査型電子顕微鏡(SEM)により粒径を測定した結果、粒径は約50nmであった。また粉末X線回折測定の結果、得られた粒子が主成分が銅であり、ほとんど酸化銅を含まないことがわかった(図2)。
[実施例2]
分散剤として式29に示される2−ドデカノイルアミノメチルテトラゾールを合成し、これを用いて銅微粒子作製を行った。
(1)N−(シアノメチル)ドデカンアミドの合成
硫酸アミノアセトニトリル(東京化成製、2.1g,10mmol)をジクロロメタン(50ml)に懸濁し、トリエチルアミン(東京化成製、6.8ml,50mmol)を加えた。これを氷冷し、n−ドデカノイルクロライド(東京化成製、4.7ml、20mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶かした溶液を滴下漏斗にて加えた。終夜撹拌後、反応液を0.1規定塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを濾過、濃縮し、N−(シアノメチル)ドデカンアミド(4.2g)を得た。
(2)2−ドデカノイルアミノメチルテトラゾールの合成
N−(シアノメチル)ドデカンアミド(240mg,10mmol)、アジ化ナトリウム(東京化成製、130mg,30mmol)、臭化亜鉛(シグマアルドリッチ製、110mg、5mmol)をイソプロパノール(3ml)と水(6ml)の混合液に加え、115℃で5時間環流した。1規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濃縮し、2−ドデカノイルアミノメチルテトラゾール(200mg)を得た。
(3)銅微粒子の作製
塩化銅二水和物(0.170g、1mmol)をメタノール(15ml)に溶かし、ここに2−ドデカノイルアミノメチルテトラゾール(0.092g、0.33mmol)を加えた。ここに水素化ホウ素ナトリウム(関東化学製、0.125g)をメタノール(5ml)に溶かした溶液を加えた。析出した固体を沈め、デカンテーションにより上清を廃棄した。メタノール(15ml)を加え、デカンテーションを行った。さらにメタノール(15ml)を加えて固体をろ取し、乾燥させ、銅微粒子50mgを得た。走査型電子顕微鏡観察によると粒径は約50nmであった。
[比較例1]
テフロンコートした攪拌子を備えたナス型フラスコ中で水酸化銅(II)(和光純薬製、98mg、1mmol)をメタノール(10ml)に懸濁させ、ヒドラジン水和物(80%水溶液、関東化学製、1g、20mmol)をメタノール(10ml)で希釈した溶液を加えた。室温で一晩攪拌し、析出した固体をメンブレンフィルターでろ取後、メタノールで十分に洗浄した。その後得られた固体を減圧乾燥させることにより、銅微粒子69mgを得た。図3に走査型電子顕微鏡像を示す。走査型電子顕微鏡により粒径を測定した結果、粒度分布が広く、直径200nmを越える粗大粒子が混在していることがわかった。
実施例1で得られた銅微粒子のSEM像。 実施例1で得られた銅微粒子の粉末X線回折スペクトル。 比較例1で得られた銅微粒子のSEM像。

Claims (7)

  1. 一価または二価の銅化合物に、式1で示される化合物の存在下で還元剤を作用させる工程を含む銅微粒子の製造方法。
    (式中、R1は炭素数6から30の有機の基を示し、X1、X2、X3はNまたはCHを示す。ただしX1、X2、X3のうち少なくとも一つはNである。)
  2. 一価または二価の銅化合物が、水酸化銅(II)、水酸化銅(I)、水酸化銅(II)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の銅微粒子の製造方法。
  3. 還元剤がアスコルビン酸またはヒドラジン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の銅微粒子の製造方法。
  4. 還元剤がヒドラジン化合物であることを特徴とする請求項3に記載の銅微粒子の製造方法。
  5. ヒドラジン化合物がヒドラジン水和物であることを特徴とする請求項4に記載の銅微粒子の製造方法。
  6. 式1で示される化合物が下記式2で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銅微粒子の製造方法。
    (式中、R1は炭素数6から30の有機の基を示す。)
  7. 表面に式1で示される化合物が付着した、平均粒径10〜200nmの銅微粒子。
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