JP2009156028A - 内燃機関の燃焼制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の運転状態に応じてより好適に失火を抑制する技術を提供する。
【解決手段】気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲を取得する取得手段と、該クランク角度範囲の最遅角端のクランク角度に基づいて、燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定する設定手段と、を備える。内燃機関の運転状態に基づいて燃料噴射タイミング着火時期を算出し、燃料噴射タイミングが該遅角ガードより進角側になるように、燃料噴射制御を行う。
【選択図】図3
【解決手段】気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲を取得する取得手段と、該クランク角度範囲の最遅角端のクランク角度に基づいて、燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定する設定手段と、を備える。内燃機関の運転状態に基づいて燃料噴射タイミング着火時期を算出し、燃料噴射タイミングが該遅角ガードより進角側になるように、燃料噴射制御を行う。
【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関の燃焼制御システムに関する。
失火を抑制する技術として、燃料の着火時期を算出し、算出された着火時期が所定の失火ガードより進角側の時期になるように燃料噴射制御を補正する技術が知られている。ここで、失火ガードとは、着火時期がその時期より進角側であれば失火しないと判定可能な基準となる着火時期である。関連する技術が特許文献1に記載されている。
特開2005−98262号公報
特開2000−186598号公報
失火しない着火時期の最遅角側の限界時期がどのようなメカニズムで決まるか明確に分かっていないため、失火ガードの定め方としては、(イ)大きなマージンをとってあらゆる運転状態において失火を防止可能な失火ガードを定める、(ロ)あらゆる運転状態に応じた最適な失火ガードを適合作業によって求めていく、(ハ)失火を検知する手段を備え、実際に失火の発生が検知された場合、その時の状況に基づいて失火ガードを学習する、等の方法が考えられる。しかしながら、(イ)の方法では、失火ガードに過大なマージンが含まれることになるため、運転状態によっては、実際には失火することなく正常に燃焼可能な着火時期であっても、失火ガードより遅角側と判定されてしまう可能性があり、機関制御における制御可能範囲を無用に制限してしまう可能性があった。また、(ロ)の方法では、失火ガードの決定に必要な適合作業の工数が膨大になるという問題点があった。また、(ハ)の方法では、少なくとも1回は実際に失火が起こってしまうという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の運転状態に応じてより好適に失火を抑制する技術を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本願発明者は、スキッシュ流が燃焼に及ぼす影響に着目した。そして、スキッシュ流速があるクライテリアより速くなる条件下では、燃焼が活性化され、該クライテリアよりスキッシュ流速が遅くなると燃焼が不安定化することが見出された。スキッシュ流速はクランク角度の関数として求めることができ、その関数形はキャビティ形状等のハードウェア諸元によって略決まり、その絶対値は内燃機関の運転状態、主にエンジン回転数によって決まる。このことから、内燃機関の運転状態毎に定まる、「スキッシュ流速がクライテリアより大きくなる」という条件を満たすクランク角度の範囲の最遅角端のクランク角度は、着火時期の失火ガードとして利用することが可能であると考えられる。
そこで、本願発明者は、気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲を取得する取得手段と、前記取得手段によって特定されたクランク角度範囲のうち最遅角のクランク角度に基づいて、燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定する設定手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の燃焼制御システムを発明した。
上記の発明において、取得手段は、例えばスキッシュ流速が所定のクライテリアより大
きくなるようなクランク角度範囲として、「気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲」を特定することができる。所定のクライテリアとは、スキッシュ流速がその流速以上であれば燃焼を活発化させる効果を有すると判定可能な基準となるスキッシュ流速であり、予め実験やシミュレーション等によって求めておくことができる。このクライテリアは、固定値としても良いし、燃料の着火性にかかわる物理量に応じた可変値としても良い。クライテリアを可変値とした場合、それに応じて取得手段によって特定されるクランク角度範囲も燃料の着火性にかかわる物理量に応じた可変値とすることができる。
きくなるようなクランク角度範囲として、「気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲」を特定することができる。所定のクライテリアとは、スキッシュ流速がその流速以上であれば燃焼を活発化させる効果を有すると判定可能な基準となるスキッシュ流速であり、予め実験やシミュレーション等によって求めておくことができる。このクライテリアは、固定値としても良いし、燃料の着火性にかかわる物理量に応じた可変値としても良い。クライテリアを可変値とした場合、それに応じて取得手段によって特定されるクランク角度範囲も燃料の着火性にかかわる物理量に応じた可変値とすることができる。
取得手段によって特定されたクランク角度範囲の最遅角端のクランク角度は、上述のように、着火時期の失火ガードとすることができる。例えば、取得手段によって特定されたクランク角度範囲の最遅角端のクランク角度を失火ガードとしても良いし、当該最遅角端のクランク角度より所定のマージン分進角側のクランク角度を失火ガードとしても良い。
ここで、着火時期と燃料噴射タイミングとの関係は実験やシミュレーションなどによって求めることができるので、その関係に基づいて、着火時期の失火ガードにおいて燃料が着火するための燃料噴射タイミングを特定できる。設定手段は、着火時期の失火ガードに対応する燃料噴射タイミングに基づいて、燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定する。例えば、取得手段によって特定された前記クランク角度範囲の最遅角端のクランク角度が着火時期となるような燃料噴射タイミングを燃料噴射タイミングの遅角ガードとしても良いし、それより所定のマージン分だけ進角側のクランク角度を燃料噴射タイミングの遅角ガードとしても良い。
クライテリアを可変とする場合、着火性にかかわる物理量としては、筒内温度、筒内圧力、筒内酸素濃度等の筒内ガスに関する物理量や、燃料噴射圧力、コモンレール圧力等の燃料噴射系に関する物理量を例示できる。例えば、筒内温度が低い始動時等においては、スキッシュ流による燃焼アシストの効率が通常時より低くなる可能性があるため、クライテリアを通常時より大きくするようにしても良い。これにより、スキッシュ流による燃焼アシスト効果が大きくない状況では、「スキッシュ流速がクライテリアより大きくなる」という条件を満たすクランク角度範囲の最遅角端のクランク角度が通常時より進角側にシフトすることになるので、着火時期の失火ガードも通常時より進角側の時期になる。従って燃料噴射タイミングの遅角ガードも通常時より進角側の時期に設定される。
スキッシュ流はエンジン回転数が高くなるほど大きくなる傾向がある。従って、エンジン回転数が高い運転条件下では、「スキッシュ流速がクライテリアより大きくなる」という条件を満たすクランク角度の範囲は、エンジン回転数が低い運転条件下と比較して広くなる。よって、当該クランク角度範囲の最遅角端のクランク角度も、より遅角側の時期となる。従って、本発明によれば、例えば、エンジン回転数が高い運転条件下では燃料噴射タイミングの遅角ガードをより遅角側の時期に設定する、といった、内燃機関の運転条件に応じて適切な燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定することが可能になる。
これにより、過大なマージンを設定することなく運転条件に応じた適切な燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定することができるので、機関制御において制御可能範囲に無用な制限が課されることを抑制できる。また、内燃機関の運転条件毎にスキッシュ流とクランク角度との関係、及びクライテリアを持っておけば、運転条件に応じた適切な燃料噴射タイミングの遅角ガードを算出できるので、燃料噴射時期の遅角ガードを求めるための適合工数が膨大になることを抑制できる。ここで、クライテリアをある固定値とすれば、更にマップを縮小できる。また、ある特定の運転条件のもとでのスキッシュ流とクランク角度との関係から、その他の運転条件での当該関係を算出するようにすれば、当該特定の運転条件の下でのスキッシュ流とクランク角度との関係のみを持っておけば十分であるので
、更にマップ、従って適合工数を縮小できる。例えば、スキッシュ流とエンジン回転数との間に線形関係を仮定して、あるエンジン回転数の下でのスキッシュ流とクランク角度との関係を何倍かすることで他のエンジン回転数におけるスキッシュ流とクランク角度との関係を算出することができる。また、内燃機関の運転条件に応じたスキッシュ流速とクランク角度との関係及びクライテリアは実験やシミュレーションによって求めることができる。従って、内燃機関の運転条件に応じた着火時期の失火ガード、従って燃料噴射タイミングの遅角ガードも実験やシミュレーションによって求めることができる。このようにして求めた内燃機関の運転状態毎の燃料噴射タイミングの遅角ガードをマップ化して持っておくようにしても良い。
、更にマップ、従って適合工数を縮小できる。例えば、スキッシュ流とエンジン回転数との間に線形関係を仮定して、あるエンジン回転数の下でのスキッシュ流とクランク角度との関係を何倍かすることで他のエンジン回転数におけるスキッシュ流とクランク角度との関係を算出することができる。また、内燃機関の運転条件に応じたスキッシュ流速とクランク角度との関係及びクライテリアは実験やシミュレーションによって求めることができる。従って、内燃機関の運転条件に応じた着火時期の失火ガード、従って燃料噴射タイミングの遅角ガードも実験やシミュレーションによって求めることができる。このようにして求めた内燃機関の運転状態毎の燃料噴射タイミングの遅角ガードをマップ化して持っておくようにしても良い。
上記のようにして設定した失火ガードを実際の燃焼制御に利用する仕方として、例えば、内燃機関の運転条件に基づいて着火時期を算出し、算出された着火時期が前記失火ガードより進角側になるように燃料噴射を制御する燃焼制御システムが考えられる。このような制御システムによれば、内燃機関の運転条件に応じて、機関制御性が損なわれることなく且つ確実に失火を抑制することができる。
また、上記のようにして設定した失火ガードをより積極的な制御に利用するシステムも考えられる。例えば、内燃機関の運転条件に基づいて着火時期を算出するとともに、着火時期が遅角側であるほど好適になる所定の機関特性を制御する手段を備えた内燃機関において、前記算出された着火時期が前記失火ガードより進角側の場合、着火時期を、失火ガード近傍であって失火ガードより遅角側にならない時期まで遅角させる制御を行うようにしても良い。
ここで、「着火時期が遅角側であるほど好適になる機関特性」としては、例えばNOxのエミッションを例示できる。着火時期が遅角側になると燃焼温度が低くなるので、NOx発生量が減少する。また、着火時期が遅角側になると排気温度が上昇するので、排気昇温の要求がなされる状況を例示することができる。
現状の運転状態から算出された着火時期が、まだ失火ガードに対して余裕がある場合には、失火ガードを越えない範囲内で着火時期を遅角側にずらすことで、例えばNOx排出量をより低減することができる。また、このことは、何らかの要因(例えば吸気温度が想定よりも高い)によってNOx排出量が目標値を超えてしまうことが予想される状況において、当該要因によるNOxの増分を解消することを目的とした着火時期制御にも応用できる。すなわち、着火時期が失火ガードに対して余裕がある場合には、少なくとも目標値を超過するNOx排出量分に相当するNOx低減効果が得られるように、着火時期を遅角側にずらす補正を行うことができる。
本発明により、内燃機関の運転状態に応じてより好適に失火を抑制するすることが可能になる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本実施例に係る内燃機関の燃焼制御システムを適用する内燃機関とその吸気系及び排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は4つの気筒4を有し、気筒4内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁5を各気筒4に備えたディーゼルエンジンである。各気筒4
には吸気通路2及び排気通路3が接続されている。内燃機関1には、冷却水温を測定する水温センサ23、エンジン回転数を測定する回転数センサ6が備えられている。更に、内燃機関1には内燃機関1を制御する電子制御コンピュータであるECU7が併設されている。ECU7には水温センサ23及び回転数センサ6その他の各種センサが接続され、これらセンサからの出力信号が入力される。また、ECU7には燃料噴射弁5その他の各種機器が接続され、前記各種センサから入力される信号及び運転者による指示に基づいてこれら各種機器の動作を制御する。
には吸気通路2及び排気通路3が接続されている。内燃機関1には、冷却水温を測定する水温センサ23、エンジン回転数を測定する回転数センサ6が備えられている。更に、内燃機関1には内燃機関1を制御する電子制御コンピュータであるECU7が併設されている。ECU7には水温センサ23及び回転数センサ6その他の各種センサが接続され、これらセンサからの出力信号が入力される。また、ECU7には燃料噴射弁5その他の各種機器が接続され、前記各種センサから入力される信号及び運転者による指示に基づいてこれら各種機器の動作を制御する。
図2は、スキッシュ流速とクランク角度との関係を示した図である。横軸は上死点を0度として表したクランク角度であり、縦軸はスキッシュ流速の絶対値を表す。以下、特に断らない限り、「スキッシュ流速」はその絶対値を表すものとする。スキッシュ流速とクランク角度との関係の関数形は、主に燃焼室やキャビティの形状といったハードウェア諸元によって決まる。また、スキッシュ流速の大きさは、内燃機関の運転条件、特にエンジン回転数に応じて変化する。例えば、図2の曲線(A)はエンジン回転数NEの場合のスキッシュ流速を表し、曲線(B)はエンジン回転数がその2倍の2NEの場合のスキッシュ流速を表す。これらの曲線によって示されるように、スキッシュ流速はエンジン回転数が高回転になるほど速くなる傾向を有する。
さて、本願発明者による研究によれば、このスキッシュ流は筒内における燃料の燃焼に影響し、スキッシュ流速があるクライテリアより大きい条件下では、燃焼が活性化され、該クライテリアよりスキッシュ流速が小さくなると燃焼は安定化しない性質があることが見出された。図2において、スキッシュ流速SCがそのクライテリアを表している。図2に示すように、エンジン回転数NE(曲線A)の場合は、クランク角度θ1i〜θ1sのクランク角度範囲において、スキッシュ流速がクライテリアSCを超える。このような、スキッシュ流速がクライテリアSCを超えるクランク角度範囲では、スキッシュ流のアシストによって燃焼が活発化される。従って、このようなクランク角度範囲の中に着火時期が存在する場合、失火せずに良好な燃焼が実現する。一方、スキッシュ流速ががクライテリアSCを下回るクランク角度範囲、すなわちクランク角度がθ1sより遅角側の範囲では、スキッシュ流による燃焼のアシスト効果は得られず、燃焼は安定化しない。従って、クランク角度θ1sより遅角側の領域に着火時期が存在する場合、失火する可能性がある。
このことから、「スキッシュ流速がクライテリアSCを超える」という条件(以下、燃焼アシスト条件)を満たすクランク角度範囲(図2においてエンジン回転数NEの場合には、θ1i〜θ1s)のうち、最遅角のクランク角度(図2においてエンジン回転数NEの場合には、θ1s)は、着火時期の失火ガードとして用いることができることが見出された。ここで、失火ガードとは、着火時期がその時期より進角側であれば失火しないと判定するための基準となる着火時期である。
図2に示すように、スキッシュ流速とクランク角度との関係はエンジン回転数によって異なる。従って、燃焼アシスト条件を満たすクランク角度の範囲や、そのようなクランク角度範囲の最遅角のクランク角度も、エンジン回転数に応じて異なる。例えば、図2においてエンジン回転数2NEの場合には、燃焼アシスト条件を満たすクランク角度の範囲はθ2i〜θ2sであり、その最遅角のクランク角度はθ2sである。図2に示すように、エンジン回転数2NEの場合に燃焼アシスト条件を満たすクランク角度範囲の最遅角のクランク角度θ2sは、エンジン回転数NEの場合に燃焼アシスト条件を満たすクランク角度範囲の最遅角のクランク角度θ1sより遅角側にシフトしている。すなわち、エンジン回転数2NEの場合の失火ガードは、エンジン回転数NEの場合の失火ガードより遅角側の時期に設定できる。
このように、スキッシュ流による燃焼アシスト効果が得られる条件に基づいて失火ガードを設定することによって、内燃機関の運転条件(この場合エンジン回転数)に応じて最適な失火ガードを設定することができる。従来、例えばあらゆる運転条件において失火を防止可能なように設定されたマージンを含む固定値の失火ガードを設定するような場合、機関制御における制御可能範囲に無用な制限が課されて機関性能が十分に発揮されなくなる可能性があったが、本実施例のシステムによれば、内燃機関の運転条件に応じて最適な失火ガードが設定されるので、機関制御への制限を可及的に小さくし、機関性能を十分に引き出すことが可能な機関制御が実行可能になるとともに、着火時期が失火ガードを超えないように燃料噴射等の機関制御をすることによって確実に失火を抑制することが可能になる。
以上説明したように設定される失火ガードを用いて、本実施例のシステムでは、次のような燃料噴射制御を行う。図3は、その制御ルーチンを表すフローチャートである。
ステップS101において、ECU7は、内燃機関1の運転条件に基づいてスキッシュ流速とクランク角度との関係を算出する。上記のように、あるエンジン回転数におけるスキッシュ流速とクランク角度との関係に基づいて、別のエンジン回転数におけるスキッシュ流速とクランク角度との関係を算出することができるので、本実施例では、ある所定回転数におけるスキッシュ流速とクランク角度との関係をマップ化してECU7に記憶しておき、回転数センサ6によって測定されたエンジン回転数から、現状の運転条件下で成立するスキッシュ流速とクランク角度との関係を算出するようにした。
ステップS102において、ECU7は、失火ガードを算出する。すなわち、ステップS101において求めたスキッシュ流速とクランク角度との関係に基づいて、燃焼アシスト条件(つまり、スキッシュ流速がクライテリアSCを超える条件)を満たすクランク角度範囲の最遅角端のクランク角度を算出し、これを失火ガードとする。当該最遅角端のクランク角度に所定のマージンを加味した値を失火ガードとしても良い。
ステップS103において、ECU7は、内燃機関1の運転条件に基づいて着火時期を算出する。本実施例では、図4に示すような燃料噴射時期と着火時期との予め運転条件毎に求められた関係に基づいて、現状の運転条件における着火時期を推定する。図4の横軸は燃料噴射時期を表し、縦軸は着火時期を表す。図4に示すように、本実施例のシステムでは、燃料噴射時期と着火時期とを略リニアな関係を有するものとして扱う。
ステップS104において、ECU7は、ステップS103で求めた着火時期が、ステップS102で求めた失火ガードより遅角側か否かを判定する。ステップS104で肯定判定された場合、ECU7はステップS105に進み、否定判定された場合、ECU7はステップS106に進む。
ステップS105において、ECU7は、燃料噴射時期を進角する。すなわち、ステップS104における比較の結果判明した着火時期と失火ガードとの乖離度合に基づき、着火時期が失火ガードより進角側の時期になるように、燃料噴射時期を補正する。
ステップS106において、ECU7は、燃料噴射を実行する。ステップS105で燃料噴射時期が補正された場合は、当該補正された時期に燃料噴射を実行する。一方、ステップS104で否定判定された場合は、運転条件に応じて予め定められたベースマップに従って燃料噴射を実行する。
なお、以上述べた実施例は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施例には種々の変更を加え得る。例えば、上記実施例では
、ある所定回転数におけるスキッシュ流速とクランク角度との関係から現状の運転条件下で成立するスキッシュ流速とクランク角度との関係を求めるようにしているが、クライテリアをある固定値とする場合には、そのクライテリアよりスキッシュ流速が大きくなる条件を満たすクランク角度範囲の最遅角側限界値(失火ガード)は、予め実験によって求めることができるので、このようにして求めておいた回転数と失火ガードとの組み合わせをマップ化しておき、運転条件に応じてこのマップから当該運転条件下における着火時期の失火ガードを読み込むようにしても良い。
、ある所定回転数におけるスキッシュ流速とクランク角度との関係から現状の運転条件下で成立するスキッシュ流速とクランク角度との関係を求めるようにしているが、クライテリアをある固定値とする場合には、そのクライテリアよりスキッシュ流速が大きくなる条件を満たすクランク角度範囲の最遅角側限界値(失火ガード)は、予め実験によって求めることができるので、このようにして求めておいた回転数と失火ガードとの組み合わせをマップ化しておき、運転条件に応じてこのマップから当該運転条件下における着火時期の失火ガードを読み込むようにしても良い。
また、図4に示したような燃料噴射時期と着火時期との関係に基づいて、着火時期の失火ガードにおいて燃料が着火するための燃料噴射時期を求めることができる。そして、この燃料噴射時期を燃料噴射時期の遅角ガードとして設定し、運転条件に応じて所定のベースマップから求められた基本燃料噴射時期が、この燃料噴射時期の遅角ガードより遅角側の場合、燃料噴射時期が遅角ガードより進角側になるように補正する、という制御も可能である。この場合、燃料噴射時期と着火時期との関係、スキッシュ流による燃焼アシスト効果が期待できるスキッシュ流速のクライテリア、スキッシュ流速とクランク角度との関係、当該関係と内燃機関の運転状態との関係を考慮して、内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射時期の遅角ガードを予め求めておき、ECUのROMにマップ化しておいても良い。これにより、ECUの演算負荷を軽減できる。このようなマップを作る場合であっても、スキッシュ流による燃焼アシスト効果について何ら考慮せずに適合作業のみで着火時期の失火ガード及び燃料噴射時期の遅角ガードを求める場合と比較すれば、遙かに適合工数を軽減できる。
また、本実施例では、着火時期が失火ガードより進角側になるように燃料噴射時期を補正する制御について説明したが、着火時期を操作可能な他の制御パラメータを操作するようにしても良い。
また、本実施例ではクライテリアSCを固定値として着火時期の失火ガードを求める例について説明したが、クライテリアは可変値としても良い。例えば、着火性にかかわる物理量、例えば筒内温度、筒内圧力、筒内酸素濃度等の筒内ガスに関する物理量や、燃料噴射圧力、コモンレール圧等の燃料噴射系に関する物理量に応じた可変値としてクライテリアを設定することができる。例えば、着火性が低下する冷間始動時には、スキッシュ流による燃焼アシスト効果があまり見込めない可能性があるので、そのような場合にはクライテリアを通常時より高く設定するようにしても良い。
また、上記実施例では、着火時期が失火ガードより遅角側の場合に、進角側になるように燃料噴射時期を補正する例について説明したが、本実施例のシステムによって求められる失火ガードを利用して、より積極的な制御を行うことも可能である。例えば、着火時期が失火ガードに対して余裕がある場合には、着火時期を失火ガード近傍まで遅角させることによって、着火時期が遅角側であるほど好適な特性を示すパラメータを最適化することができる。例えば、NOxのエミッションは燃焼温度が低いほど少なくなる。また、着火時期が遅角側になるほど燃焼温度は低くなる。よって、NOxのエミッションを低減するという観点からは、着火時期が遅角側であればあるほど好ましい。従って、何らかの原因によって(例えば吸気温度が想定より高いために)、想定より多くのNOxが排出される可能性がある状況において、着火時期が失火ガードに対して余裕がある場合には、NOxのエミッションを目標値以内にすることを目的として、着火時期をいくらか失火ガードよりに遅角させる制御を行うことができる。このように、本実施例のシステムによって設定される失火ガードを用いることによって、より柔軟で制御可能範囲の広い機関制御を行うことができる。
1 内燃機関
2 吸気通路
3 排気通路
4 気筒
5 燃料噴射弁
6 回転数センサ
7 ECU
23 水温センサ
2 吸気通路
3 排気通路
4 気筒
5 燃料噴射弁
6 回転数センサ
7 ECU
23 水温センサ
Claims (3)
- 気筒内に発生するスキッシュ流の流速が燃料の燃焼を活性化し得る流速となるクランク角度範囲を取得する取得手段と、
前記取得手段によって特定されたクランク角度範囲のうち最遅角のクランク角度に基づいて、燃料噴射タイミングの遅角ガードを設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃焼制御システム。 - 請求項1において、
前記クランク角度範囲は、燃料の着火性にかかわる物理量に応じて可変とされることを特徴とする内燃機関の燃焼制御システム。 - 請求項1又は2において、
燃料噴射タイミングを算出する手段と、
前記算出された燃料噴射タイミングが前記遅角ガードより進角側になるように燃料噴射を制御する手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃焼制御システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007331423A JP2009156028A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 内燃機関の燃焼制御システム |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007331423A JP2009156028A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 内燃機関の燃焼制御システム |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=40960323
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JP2007331423A Withdrawn JP2009156028A (ja) | 2007-12-25 | 2007-12-25 | 内燃機関の燃焼制御システム |
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2007
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