JP2009154150A - エアフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】捕集性能に優れ、製造が容易なエアフィルタを提供する。
【解決手段】エアフィルタ100は、複数のフィルタユニット2と、複数のフィルタユニット2を囲う外枠10とを備えている。フィルタユニット2は、ひだ折り加工された濾材4と、濾材4の周縁部4eを保持する支持枠6とを含むものである。隣りあう2つのフィルタユニット2,2がV字状をなしている。複数のフィルタユニット2がそれぞれの支持枠6の部分で連結されている。全てのフィルタユニット2の面内方向が外枠10の開口面の面内方向に対して傾斜する姿勢で、複数のフィルタユニット2が外枠10に嵌め込まれている。
【選択図】図1

Description

本発明は、エアフィルタに関する。
エアフィルタは、クリーンルーム、空調設備、タービン等に広く使用されている。この種のエアフィルタとしては、ひだ折り加工された濾材を外枠に固定したものが知られている。濾材として、ガラス濾材、エレクトレット濾材、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を含む濾材などが用いられる。面速2.5m/sec以上で空気を流す場合には、圧力損失が低い濾材を用い、尚かつ濾材の面積を多くとる必要がある。この要求に応えることのできるエアフィルタとして、特許文献1および2に記載されているようなエアフィルタが知られている。これらのエアフィルタは、しばしば、Vバンク型エアフィルタと呼ばれる。
Vバンク型エアフィルタは、次の手順で製造される。まず、濾材をひだ折り加工する。続いて、ひだ間隔を一定に保つために、濾材の表面にビードを形成する。ビードとは、濾材の表面に設けられた糸状の構造部のことであり、通常はホットメルト樹脂によって構成される。さらに、ひだ折り加工した濾材をV字状に成形する。最後に、濾材を外枠に固定する。外枠の寸法は、現在普及している標準品で縦横が610mm×610mmと大きい。このような大きさの外枠にぴったり嵌るように濾材をひだ折り加工するには高度な技術が要求されるし、コストも嵩む。ひだ折り加工の精度が低く、濾材と外枠との間に隙間ができたりすると捕集効率が低下するので好ましくない。
特開2002−95922号公報 特開2006−88048号公報
本発明の目的は、捕集性能に優れ、製造が容易なエアフィルタを提供することにある。
すなわち、本発明は、
複数のフィルタユニットと、
前記複数のフィルタユニットを囲う外枠とを備え、
前記複数のフィルタユニットが、それぞれ、ひだ折り加工された濾材と、前記濾材の周縁部を保持する支持枠とを含み、
隣りあう2つの前記フィルタユニットがV字状をなすように、前記複数のフィルタユニットがそれぞれの前記支持枠の部分で互いに連結され、
全ての前記フィルタユニットが前記外枠の開口面に対して傾斜する姿勢で、前記複数のフィルタユニットが前記外枠に嵌め込まれている、エアフィルタを提供する。
上記本発明によれば、複数のフィルタユニットがそれぞれの支持枠の部分で連結され、かつ外枠に嵌め込まれている。そのため、大面積の濾材のひだ折り加工を回避できる。大面積の濾材のひだ折り加工を回避することによって、生産性の改善、ひいては低コスト化を期待できる。また、複数のフィルタユニットを組み合わせることによってエアフィルタを構成するので、エアフィルタの設計の変更に対応しやすい。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態のエアフィルタの斜視図である。図2は、図1のエアフィルタに用いられたフィルタユニットの斜視図である。図3は、図2に示すフィルタユニットのIII-III断面図である。図4は、図1に示すエアフィルタのIV-IV断面図である。図5は、フィルタユニットに用いられた濾材の断面図である。
図1および図4に示すように、エアフィルタ100は、V字状をなすように互いに連結された複数のフィルタユニット2と、それらのフィルタユニット2を囲う外枠10とを備えている。図2に示すように、フィルタユニット2は、ひだ折り加工された濾材4と、濾材4の周縁部を保持する支持枠6とを備えたものである。
エアフィルタ100の外枠10の形状やフィルタユニット2の支持枠6の形状は、特に限定されないが、通常は平面図で方形状である。また、図2から理解できるように、フィルタユニット2は全体として板形状を有している。
図3に示すように、本実施形態において、フィルタユニット2の支持枠6は樹脂を主体として構成されている。そして、濾材4の周縁部4eが支持枠6に埋め込まれ、支持枠6と一体化している。このような形態で濾材4が支持枠6に固定されていると、濾材4と支持枠6との間に隙間ができないので、粉塵が濾材4で濾されることなくエアフィルタ100を通過する問題が起きにくい。つまり、捕集効率の向上を見込める。なお、「樹脂を主体として」とは、質量%で最も多く含まれる材料が樹脂であることを意味し、他の材料、例えばガラス繊維などが含まれていてもよいことを意味する。
図1および図4に示すように、本実施形態では、隣りあう2つのフィルタユニット2,2がV字状をなすように、複数のフィルタユニット2がそれぞれの支持枠6の部分で互いに連結されている。そして、全てのフィルタユニット2が外枠10の開口面に対して傾斜する姿勢で、連結された複数のフィルタユニット2が外枠10に嵌め込まれている。全てのフィルタユニット2が外枠10の開口面に対して傾斜しているので、濾材4のほぼ全面で捕集作用が発揮されうる。
本実施形態において、フィルタユニット2の数は3以上である。そして、それら3以上のフィルタユニット2がジグザグに連結されている。言い換えると、外枠10の一辺に平行な方向に沿って、フィルタユニット2に基づく山と谷とが交互に形成されるように、複数のフィルタユニット2が互いに連結されている。このようにすれば、従来のVバンク型フィルタと比べて遜色無い捕集効率を達成でき、かつ濾材の面積が大きいエアフィルタを提供できる。
図4に示すように、本実施形態では、複数のフィルタユニット2の全部が、外枠10の一方の開口面10pと他方の開口面10qとの間に収まっている。つまり、フィルタユニット2の支持枠6の部分が外枠10からはみ出していない。そのため、エアフィルタ100を積み重ねて運搬したり、保管したりするのに都合がよい。
図1に示すように、本実施形態では、外枠10の枠内で複数のフィルタユニット2がマトリクス状に配列するように、支持枠6に基づいて形成された稜線に平行な方向に沿ってフィルタユニット2が複数設けられている。つまり、外枠10の縦方向と横方向との両方向に沿ってフィルタユニット2が配列している。上記稜線に平行な方向(縦方向)に関して、フィルタユニット2は、隣り合うもの同士が面一となるように連結されている。このように、フィルタユニット2を縦横に連結することによって、目的とする大きさのエアフィルタ100を容易に組み立てることができる。大面積の濾材を幾重にもひだ折り加工する必要がある従来のエアフィルタに存在する製造工程の煩雑さを、本実施形態によって解消することができる。
エアフィルタ100の外枠10の大きさ(縦横の寸法)は特に限定されるものではないが、エアフィルタの標準寸法である610mm×610mmが一般的である。エアフィルタ100の奥行きH(図4参照)も特に限定されるものではなく、フィルタユニット2をV字状に連結するためのスペースがあればよい。V字の数は特に限定されるものではないが、エアフィルタ100の圧力損失が大きくなりすぎないように設計すればよい。V字の数は、好ましくは3〜8個である。本実施形態では、V字の稜線に平行な縦方向に3つのフィルタユニット2が配置され、稜線と直交する横方向(山と谷が交互に形成されている方向)に6つのフィルタユニット2が配置されている。つまり、外枠10の枠内に、18個のフィルタユニット2が縦横マトリクス状に配置されている。
図4に示すように、隣りあう2つのフィルタユニット2がなすV字の角度θは、例えば5°〜50°の範囲である。このような範囲でフィルタユニット2を連結することにより、外枠10の開口面積に対する、濾材4の表面積を十分に稼ぐことが可能となる。
複数のフィルタユニット2を互いに連結する方法は、特に限定されない。例えば、支持枠6と支持枠6とが溶着されることによって複数のフィルタユニット2が連結されていてもよいし、接着剤を用いて複数のフィルタユニット2が連結されていてもよいし、支持枠6と支持枠6との嵌め合いによって複数のフィルタユニット2が連結されていてもよい。さらに、連結具を用いて、複数のフィルタユニット2が連結されていてもよい。ただし、フィルタユニット2の支持枠6が樹脂製である場合、溶着によって複数のフィルタユニット2が互いに連結されていると、隙間が生じにくいので好適である。
より好ましくは、図6Aに示すように、一のフィルタユニット2の支持枠6と、そのフィルタユニット2に隣接する他のフィルタユニット2の支持枠6とにまたがることによって、それら2つのフィルタユニット2,2を連結するフィルタユニット連結部12を設けることである。フィルタユニット連結部12によれば、支持枠6と支持枠6とを直接接着したり溶着したりする場合に比べて、複数のフィルタユニット2を容易に連結できる。さらに、フィルタユニット連結部12によって、支持枠6と支持枠6との間の隙間が封じられている。これにより、捕集効率が向上する。
フィルタユニット連結部12は、帯状の形状を有する。フィルタユニット2によって形成された山(または谷)の部分に、フィルタユニット連結部12が設けられている。また、V字の稜線に平行な縦方向に関して隣りあうフィルタユニット2の支持枠6と支持枠6との間に、フィルタユニット連結部12が設けられていてもよい。
フィルタユニット連結部12は、エラストマーによって構成されていることが望ましい。好適に使用できるエラストマーとして、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーを例示できる。フィルタユニット連結部12がエラストマーによって構成されている場合、フィルタユニット連結部12のたわみが変化することによって、隣りあう2つのフィルタユニット2のなすV字の角度θが変化しうる。言い換えれば、フィルタユニット連結部12があることによって、V字の角度θを調節することが可能になっている。また、連結されたフィルタユニット2を外枠10に固定する際、角度θが微妙に変化することによって、フィルタユニット2と外枠10との間の寸法公差が自動的に解消される。そのため、フィルタユニット2を外枠10に固定する作業が極めて容易となる。
フィルタユニット連結部12は、次のような方法で形成できる。まず、上述したエラストマーを帯状に成形し、フィルタユニット連結部12としての帯状成型品を得る。そして、図6Aに示すように、支持枠6と支持枠6とにフィルタユニット連結部12がまたがって形成されるように、その帯状成型品を接着剤または溶着(熱溶着または超音波溶着)によって支持枠6に固定する。このような方法によって、複数のフィルタユニット2を簡単に連結できる。
また、公知の樹脂成形方法によってフィルタユニット連結部12を形成してもよい。例えば、射出成形法が好適に採用できる。例えば、図6Bに示すように、一方のフィルタユニット2と、他方のフィルタユニット2とを、支持枠6の側面同士が向かい合うように並べる。そして、支持枠6と支持枠6とにまたがってU字状のフィルタユニット連結部12が形成されるように、樹脂の射出成形を行う。このような方法によって、複数のフィルタユニット2を簡単に連結できる。
外枠10の材料は特に限定されない。外枠10は金属で構成されていてもよいし、樹脂で構成されていてもよい。エアフィルタの軽量化の観点から、外枠10が樹脂で構成されていることが好ましい。
連結されたフィルタユニット2が外枠10に直接固定されていてもよいが、図7に示す固定構造を採用することによって、フィルタユニット2を外枠10に簡単に固定できるようになる。具体的には、連結されたフィルタユニット2を外枠10に固定する補助枠14をさらに設けることができる。補助枠14は、フィルタユニット2と外枠10とに介在する。
図7に示すように、外枠10には、凹部10t(または凸部)が形成される一方、補助枠14には、外枠10の凹部10tに適合する形状の凸部14s(または凹部)が形成されている。補助枠14の凸部14sを外枠10の凹部10tに嵌め合わせる。詳しくは、T字状の断面を有する凸部14sを同じくT字状の断面を有する凹部10tに滑り込ませて凹部10tと凸部14sとを係合させる。これにより、補助枠14が外枠10に対して固定される。一方、補助枠14とフィルタユニット2とは、前述のフィルタユニット連結部12によって連結されている。したがって、フィルタユニット2は、補助枠14を介して外枠10に固定される。
図7に示す構造によれば、フィルタユニット2と外枠10との間に隙間が生じにくい。そのため、作業性が改善するだけでなく、捕集効率の向上も期待できる。また、外枠10が複数の部品によって構成され、かつ分解可能である場合、図7に示す構造を採用することによって、外枠10とフィルタユニット2とを簡単に分離できるようになる。そのため、フィルタユニット2を洗浄したり、フィルタユニット2を交換したりする作業を極めて簡単に行えるようになる。
なお、外枠10の4つの内周面の全てに対し、図7に示す固定構造を採用する必要はない。すなわち、外枠10の一対の内周面に対して、図7に示す固定構造を採用する。一方、外枠10の他の一対の内周面に関しても、外枠10とフィルタユニット2との間の隙間を塞ぐための工夫を講ずるとよい。例えば、外枠10とフィルタユニット2との間の隙間を埋めるためのシール材、コーキング材、ガスケット等を設けることができる。また、外枠10の内周面に溝を形成し、その溝にフィルタユニット2を嵌め合わせてもよい。
また、図8に示すように、外枠10の内側には、フィルタユニット2を支えるためのガイド16(ガイド棒)が設けられていてもよい。このようなガイド16によれば、図6Aを参照して説明したフィルタユニット連結部12および図7を参照して説明した補助枠14によってもたらされる効果と相俟って、エアフィルタの組立性がさらに改善する。
エアフィルタ100の圧力損失は、エネルギー効率の面から、面速2.5m/secで空気を流したときに300Pa以下であることが好ましく、面速3.5m/secで空気を流したときに250Pa以下であることがさらに好ましい。エアフィルタ100の設計に応じて、適切な圧力損失の濾材4を選定し濾材面積を決定すればよい。圧力損失を低減させるために、濾材4の間隔P(ひだ間隔、図3参照)を5mm以下とすることができる。
また、エアフィルタ100が30〜65%の範囲の開口率を有していると、圧力損失を低く抑えることが可能となる。ここで「開口率」とは、下記式(1)で定義される値である。下記式(1)は、エアフィルタ100を平面視したときにおける、外枠10の開口面積に対する、支持枠6の側面の面積の割合を表している(図9参照)。
(開口率)=100×{W−(y×n×2)}/W ・・・(1)
W:外枠10の横幅 (mm)
y:Dcos(θ/2) (mm)
D:支持枠6の高さ (mm)
θ:V字の角度
n:V字の数
支持枠6の側面の面積が大きくなると開口率が小さくなる。支持枠6は通気に寄与しないので、圧力損失を低減する観点において、その側面の面積が小さければ小さいほど好ましい、つまり、開口率が大きければ大きいほど好ましいとも思われる。しかし、開口率が大きすぎるのもよくない。なぜなら、濾材4の総面積が不足することによって、所望の捕集効率が得られない可能性があるとともに、却って圧力損失が増大する可能性があるからである。したがって、外枠10の寸法、支持枠6の寸法、V字の数を適切に調節することによって、エアフィルタ100の開口率を上記範囲内に収めることが好ましい。
エアフィルタ100は、水で洗浄しても性能劣化することがないため、超音波などで洗浄してもよい。
フィルタユニット2の捕集効率(濾材4の捕集効率)は、粒径0.3〜0.5μmの粒子が、線速5.3cm/secで濾材4を透過するときに99%以上あることが好ましい。より好ましくは、フィルタユニット2の捕集効率は、粒径0.3〜0.4μmの粒子が、線速5.3cm/secで濾材4を透過するときに99.97%以上である。さらに好ましくは、フィルタユニット2の捕集効率は、粒径0.1〜0.2μmの粒子が、線速5.3cm/secで濾材4を透過するときに99.9995%以上である。
フィルタユニット2において、濾材4の周縁部4eは、支持枠6の樹脂と一体化している。濾材4の周縁部4eと支持枠6の樹脂とを一体化させる方法としては、インサート成形が好ましい。ひだ折り加工された濾材4を金型にセットし、射出成形することによってフィルタユニット2が得られる。また、支持枠6の樹脂が、濾材4の周縁部4eに浸透していてもよいし、濾材4の周縁部4eの表面に食い込んで微細な凹凸構造を形成していてもよい。このような場合、濾材4が支持枠6に強固に固定されうる。
フィルタユニット2の支持枠6を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、これらの複合材などを用いることができる。樹脂の収縮率は20/1000以下であることが好ましい。より好ましくは10/1000以下である。さらに好ましくは5/1000以下である。これらの樹脂に充填材を添加すれば、収縮率をいっそう低減できる。例えば、ガラス繊維や炭素繊維を添加すれば、収縮率低減の他に強度や熱伝導率を向上させることができる。また、顔料を添加して着色したり、抗菌剤などを添加して抗菌機能を付加したりしてもよい。なお、「樹脂の収縮率」は、樹脂成形を行った後の冷却過程における寸法変化率(冷却過程での収縮量/金型の設計寸法)のことを意味する。
図5に示すように、フィルタユニット2の濾材4として、濾材本体部8と、その濾材本体部8に重ね合わされた通気性繊維材料7とによって構成されているものが好ましい。濾材本体部8として、ガラス濾材、エレクトレット濾材およびPTFE多孔質膜を用いた濾材からなる群より選ばれる1つを用いることができる。ガラス濾材は、ガラス繊維にバインダーを加えて抄紙したものである。エレクトレット濾材は、メルトブローン不織布をエレクトレット化したものである。これらの中でも、PTFE多孔質膜が濾材本体8として推奨される。
ガラス濾材は、ひだ折り加工する際に自己発塵することが知られている。タービン用途においては、これらのガラス繊維がフィルタから脱落してタービン内に入り、ファンに付着する。また、クリーンルーム用途においても清浄度が低下しやすい。さらに、ガラス濾材によると圧力損失が比較的高い。エレクトレット濾材を用いたエアフィルタは、圧力損失が低い反面、HEPAグレードの捕集効率を得ることが難しい。さらに、洗浄すると捕集効率が低下しやすい。PTFE多孔質膜を用いた濾材は、こうした弱点が殆ど克服されているため、濾材4として特に好適である。
濾材4の厚さは特に限定されるものではないが、ひだ折り加工した際の形状を保つ程度の厚さは必要であり、0.05〜1mmが好ましい。濾材4の圧力損失は、線速5.3cm/secのときに20〜300Paであることが好ましい。より好ましくは、50〜200Paである。
図3に示すように、濾材4のひだ間隔Pは、エアフィルタ100の単位面積あたりの濾材4の表面積を十分稼げる広さ、例えば1.5〜6.0mmの範囲に調整されているとよい。ひだ高さhは、例えば10〜30mmの範囲が適正である。また、濾材4の表面に前述したビードが設けられていてもよい。本実施形態では、(濾材4のひだ高さh)≒(支持枠6の高さD)としている。ただし、支持枠6の高さDと、濾材4のひだ高さhとが相違していてもよい。
通気性繊維材料7は補強材としての機能を有する。さらにそれ自身も粉塵捕集機能を有し、プレフィルタとして作用する場合もある。この場合は、濾材本体部8(例えばPTFE多孔質膜)における目詰まりが防止され、これに起因する圧力損失の上昇を抑制できるとともに、エアフィルタ100が長寿命化する。捕集理論によると、粉塵の捕集性能は、通気性繊維材料7の繊維径が細いほど向上する。そのため繊維径の細い通気性材料を上流側に配置する方が望ましい。
通気性繊維材料7としては、材質、構造、形態が特に限定されるものではないが、PTFE多孔質膜より通気性に優れた材料、例えば、フェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料を用いることができる。ただし、強度、捕集性、柔軟性、作業性の点からは不織布が好ましい。なお、通気性繊維材料7としては、特に限定するものではないが、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミドあるいはこれらの複合材などからなるものを用いることができる。さらには、高融点材料が芯部で低融点材料が鞘部を形成する芯鞘構造の繊維でできた不織布を用いることが好ましい。
濾材本体部8として好適なPTFE多孔質膜の製造方法の一例を以下に説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができて、抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用することができる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。
次に、予備成形体を、ペースト押出や圧延によってシート状に成形し、このPTFE成形体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜8を得る。なお、PTFE成形体の延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うのが望ましい。延伸倍率は特に規定されるものではなく、圧力損失と捕集効率に応じて適宜設定すればよい。延伸ムラや延伸時の破断などを考慮すると、面積延伸倍率(一軸方向の延伸倍率とそれに垂直方向の延伸倍率の積算)は、50〜900倍が好ましい。
PTFE多孔質膜8は、その平均孔径が0.01〜5μmの範囲にあり、その平均繊維径が0.01〜0.3μmの範囲にあり、5.3cm/secの流速で空気を透過させるときの圧力損失が20〜2500Paの範囲にあるとよい。
平均孔径が0.01〜5μm程度のPTFE多孔質膜8は、白色に映る。通気性繊維材料7の一般的なグレードも白色であるが、これらが着色されていてもよい。着色する方法としては特に限定するものではないが、顔料を練りこむ方法、染料によって染める方法、印刷する方法が挙げられる。また、色については特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
通気性繊維材料7に顔料を練りこむ場合は、原料であるプラスチック樹脂を溶融状態にして混練するのが一般的である。また、PTFE多孔質膜8に顔料を練りこむ場合は、PTFEファインパウダーに顔料と液状潤滑剤を加えてペースト状の混和物にすればよい。さらに、導電性などの他の機能を発現させるために複数の材料を練りこんでもよい。染料によって染める場合は、PTFE多孔質膜8あるいは通気性繊維材料7それぞれを染料に浸漬してもよいし、積層された濾材4を染料に浸漬してもよい。印刷する場合はグラビア印刷などが一般的である。
通気性繊維材料7とPTFE多孔質膜8とを積層する方法は、特に限定されるものではない。単に両者を重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネート、熱ラミネートなどの方法によって両者を積層してもよい。熱ラミネートにより積層する場合は、加熱により不織布などの通気性繊維材料7の一部を溶融させて、通気性繊維材料7とPTFE多孔質膜8とを接着および積層すればよい。また、ホットメルト樹脂のような融着剤を介在させて両者を接着および積層してもよい。
濾材4は、前述のようにPTFE多孔質膜8と通気性繊維材料7によって構成されているものであればよく、その他の構成は特に制限されない。例えば、PTFE多孔質膜8は単層でもよいし2層以上でもよい。PTFE多孔質膜8が多層構造を有する場合、寸法や特性が同一のPTFE多孔質膜を使用してもよいし、異なるPTFE多孔質膜を使用してもよい。
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。
(実施例1)
実施例1のエアフィルタを以下の手順で製造した。まず、面積延伸倍率が450倍のPTFE多孔質膜を、2枚のPET/PE芯鞘不織布(目付量30g/m2)に挟んで重ねた後、180℃に加熱した一対のロール間を通過させることにより熱ラミネートを行い、PTFE多孔質膜と通気性繊維材料の3層品の濾材(厚さ:0.32mm、圧力損失:170Pa(線速5.3cm/sec)、捕集効率:99.99%)を得た。
得られた濾材をひだ高さhが22mm、ひだ数が93になるようにひだ折り加工をした。ひだ折り加工した濾材を金型にセットし、支持枠の縦・横・高さが195mm×295mm×27mmとなるように、射出成形機でポリカーボネート樹脂(ガラス繊維30%含有)と濾材とを一体成形(肉厚:5mm)し、図2を参照して説明したフィルタユニットを得た。
このフィルタユニットを48枚準備し、V字の数が8個になるように連結した。連結されたフィルタユニットを樹脂製の外枠に固定し、図1等を参照して説明したエアフィルタ(Vバンク型フィルタ:610mm×610mm×300mm)を得た。支持枠を溶着することによってフィルタユニット同士を連結するとともに、フィルタユニットと外枠との隙間にコーキング材を充填した。
(実施例2〜6)
実施例1で用いたフィルタユニットをそれぞれ42枚、36枚、30枚、24枚および18枚準備し、これらのフィルタユニットをV字の数がそれぞれ7個、6個、5個、4個および3個となるように連結した。連結されたフィルタユニットを実施例1と同じ外枠に角度θ(図4参照)を変えて固定し、実施例1と同様のエアフィルタを得た。
(比較例1)
比較例1として、ガラス濾材とアルミニウム製外枠とを備えた市販のVバンク型フィルタ(610mm×610mm×292mm)を準備した。
次に、実施例1〜6および比較例1のエアフィルタについて、捕集効率および圧力損失を測定した。捕集効率および圧力損失の測定方法は、以下に示す通りである。
<<捕集効率の測定方法>>
エアフィルタに面速3.5m/secで空気を流しつつ、エアフィルタの上流側に、0.3〜0.4μmの範囲の平均粒径(レーザー散乱法によって測定された積算50%での粒径)を有する多分散ジオクチルフタレート(以下、「DOP」という)粒子を約106個/リットルの濃度で供給した。エアフィルタの上流側のDOP粒子濃度と、エアフィルタを透過してきた下流側のDOP粒子濃度とをパーティクルカウンターで測定し、下記式により捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
下流側濃度の単位 : 粒子個数/リットル
上流側濃度の単位 : 粒子個数/リットル
<<圧力損失の測定方法>>
エアフィルタに面速3.5m/secで空気を流したときの圧力損失を圧力計(マノメータ)で測定した。
捕集効率および圧力損失の測定結果を表1に示す。実施例1〜6および比較例1のエアフィルタの重量および開口率を表1に併せて示す。
Figure 2009154150
実施例1〜6のエアフィルタの圧力損失は、比較例1のエアフィルタのそれよりも全体的に低かった。実施例1〜6では、PTFE多孔質膜と通気性繊維材料とによって構成された濾材を用いる一方、比較例1ではガラス濾材を用いているためである。また、実施例のエアフィルタは、比較例のエアフィルタと同レベルの捕集効率を達成した。また、実施例1〜6のエアフィルタは、比較例1のエアフィルタよりも軽量であり、製造も容易であった。
実施例1〜6によると、開口率が単調増加しているにもかかわらず、圧力損失が単調減少せず、実施例3で最小となった。実施例2〜5のエアフィルタの圧力損失は、いずれも250Pa以下と好適な範囲であった。一方、実施例1および実施例6のエアフィルタの圧力損失は、それぞれ324Pa、295Paとやや大きかった。実施例2〜5の中での圧力損失の差が最大29Paであるのに対し、実施例1と実施例6との圧力損失の差は75Pa、実施例5と実施例6との圧力損失の差は46Paと大きかった。また、実施例6のエアフィルタの捕集効率は、99.85%とやや低かった。
こうした結果は、先に説明したように、エアフィルタの開口率に関連していると考えられる。つまり、本発明に属するエアフィルタの開口率は大きすぎず小さすぎないことが好ましい。具体的には、実施例2〜5のエアフィルタのように、開口率を30〜65%の範囲に設定することによって、圧力損失を極小値近傍に留めることが可能となる。
本実施形態にかかるエアフィルタの斜視図 図1のエアフィルタに用いられたフィルタユニットの斜視図 図2に示すフィルタユニットのIII-III断面図 図1に示すエアフィルタのIV-IV断面図 フィルタユニットに用いられた濾材の断面図 フィルタユニット同士の連結構造を示す模式図 図6Aと同様の模式図 フィルタユニットの外枠への固定構造を示す断面図 外枠の他の例の断面図 開口率の定義の説明図
符号の説明
2 フィルタユニット
4 濾材
4e 濾材の周縁部
6 支持枠
7 通気性繊維材料
8 PTFE多孔質膜
10 外枠
12 フィルタユニット連結部
14 補助枠
100 エアフィルタ

Claims (10)

  1. 複数のフィルタユニットと、
    前記複数のフィルタユニットを囲う外枠とを備え、
    前記複数のフィルタユニットが、それぞれ、ひだ折り加工された濾材と、前記濾材の周縁部を保持する支持枠とを含み、
    隣りあう2つの前記フィルタユニットがV字状をなすように、前記複数のフィルタユニットがそれぞれの前記支持枠の部分で互いに連結され、
    全ての前記フィルタユニットが前記外枠の開口面に対して傾斜する姿勢で、前記複数のフィルタユニットが前記外枠に嵌め込まれている、エアフィルタ。
  2. 前記フィルタユニットの数が3以上であり、
    前記複数のフィルタユニットがジグザグに連結されている、請求項1に記載のエアフィルタ。
  3. 前記複数のフィルタユニットの全部が、前記外枠の一方の開口面と他方の開口面との間に収まっている、請求項1または請求項2に記載のエアフィルタ。
  4. 前記複数のフィルタユニットが前記外枠の枠内でマトリクス状に配列するように、前記支持枠に基づいて形成された稜線に平行な方向に沿って前記フィルタユニットが複数設けられている、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
  5. 一の前記フィルタユニットの前記支持枠と、そのフィルタユニットに隣接する他の前記フィルタユニットの前記支持枠とにまたがることによって、それら2つのフィルタユニットを連結するフィルタユニット連結部をさらに備え、
    前記フィルタユニット連結部によって、前記支持枠と支持枠との間の隙間が封じられている、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
  6. 前記フィルタユニット連結部がエラストマーによって構成されている、請求項5に記載のエアフィルタ。
  7. 前記複数のフィルタユニットを前記外枠に固定するための、前記フィルタユニットと前記外枠とに介在する補助枠をさらに備えた、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
  8. 前記濾材が、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に重ね合わされた通気性繊維材料とを含み、
    前記支持枠が樹脂を主体として構成され、
    前記濾材の前記周縁部が前記支持枠に埋め込まれ、前記支持枠と一体化している、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
  9. 面速3.5m/secで空気を流したときの圧力損失が250Pa以下である、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
  10. 30〜65%の範囲の開口率を有する、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
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