JP2009148995A - 金属被覆ポリエチレンナフタレート基板とその製造方法 - Google Patents

金属被覆ポリエチレンナフタレート基板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層とフィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さを薄くすることができる金属被覆ポリエチレンナフタレート基板とその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、下記の(1)及び(2)の要件を満足することを特徴とする。
(1)前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面は、その中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmである。
(2)前記下地金属層は、乾式めっき法により形成されたクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmである。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板とその製造方法に関し、さらに詳しくは、有機パッケージ、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、チップオンフィルム用テープ等の電子部品の素材として好適に用いられる、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、該金属層と該フィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、しかも、必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さを薄くすることができる金属被覆ポリエチレンナフタレート基板と、該基板を効率的に製造する方法に関する。
一般に、有機パッケージ(有機PKG)、プリント配線板(PWB)、フレキシブルプリント基板(FPC)、チップオンフィルム用テープ(COFテープ)等の電子部品に用いられる絶縁基板材料として、ポリイミド樹脂が多用されている。このようなポリイミド樹脂を用いた有機PKG、PWB、FPC、又はCOFテープは、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅等の金属層を被覆した金属被覆ポリイミド基板を加工することによって作製されている。
ところで、近年、電子機器の薄型、小型、軽量、高機能化等の進展に伴い、情報伝達や情報処理の高速化がさらに進み、信号の高周波化が進んだ場合、ポリイミドフィルムの使用においては、その誘電率が高いことからくる高周波における伝送損失が大きくなることが懸念されている。さらに、ポリイミドフィルムにおいては、耐熱性には優れるものの、ポリイミドポリマの性質、製法等から薄いフィルムの製造には限度があり、そのため高コスト化による経済性の問題とともに、弾性率が低いことによる腰の弱さが問題となっていた。
このため、電子部品に用いられる絶縁基板材料として、従来のポリイミドフィルムに代えて、ハンダリフローに耐え、かつ高い機械的強度を有しているポリエチレンナフタレート系フィルムを用いることが着目されている。
例えば、ポリエチレンナフタレート系フィルムは、次の(イ)〜(ニ)の特徴を有している。
(イ)ポリイミドフィルムの誘電率は3.3であるのに対して、ポリエチレンナフタレート系フィルムでは、誘電率は2.9と低いので、数GHzから百GHzの高周波領域においてもノイズの発生が少なく高速で信号を伝達することができる。
(ロ)ポリエチレンナフタレート系フィルムの吸水率は0.3%であり、ポリイミドフィルムの約1/4と少ない。したがって、ポリイミドフィルムと異なり、吸水によって高周波特性が変化しないことから、自動車のように厳しい信頼性が要求される分野にも向いている。
(ハ)ポリエチレンナフタレート系フィルムの破断強度は、280MPaであり、ポリイミドフィルム並みであるが、ヤング率は、6.1GPaであり、ポリイミドフィルムに比べて約1.7倍と高いことから、フィルムを薄くした際にもフィルムの搬送性が良好である。
(ニ)ポリエチレンナフタレート系フィルムの可視光領域での光透過性は、ポリイミドフィルムよりも優れていることから、ポリエチレンナフタレート系フィルムでは、接続部位に可視光線硬化型接着剤を用いることができる。
このようなポリエチレンナフタレート系フィルムを用いた金属被覆基板としては、ポリエチレンナフタレート系フィルムに接着剤を用いて導体層となる銅箔を貼り合わせた3層フレキシブル基板(例えば、特許文献1参照。)と、ポリエチレンナフタレート系フィルム上に接着剤を用いることなしに乾式めっき法及び/又は湿式めっき法により導体層となる銅被膜層等を直接形成した2層フレキシブル基板とに大別される。
なお、3層フレキシブル基板を用いる場合には、サブトラクティブ法によって基板上に所望の配線パターンを形成することにより3層フレキシブル配線板を製造することができる。また、2層フレキシブル基板を用いる場合には、サブトラクティブ法、又はアディティブ法によって基板上に所望の配線パターンを形成することにより2層フレキシブル配線板を製造することができる。
ところで、従来、フレキシブル基板としては、製造方法が簡単であり、低コストで製造することができる3層フレキシブル基板の使用が主流を占めていた。しかしながら、近年、電子機器の高密度化に伴い、配線幅も狭ピッチ化した配線板が求められるようになってきている。ところが、3層フレキシブル基板を用いて配線板を製造する場合には、次の(ホ)〜(チ)の問題点があった。
(ホ)ポリエチレンナフタレート系フィルム上に形成した銅被膜層に、所望の配線パターンにしたがってエッチングを行い配線部を形成する際に、配線部の側面がエッチングされる、いわゆるサイドエッチングが生ずるため、配線部の断面形状が裾広がりの台形になり易い。その解決のため、配線部間の電気的絶縁性を確保するまでエッチングを行うと、配線ピッチ幅が広くなり過ぎてしまうので、従来一般的に使用されている35μm厚さの銅箔を接着剤でポリエチレンナフタレート系フィルムと貼り合わせた3層フレキシブル基板を用いる限りにおいては、製造される配線板の配線部の狭ピッチ化を行うことには限界がある。
(ヘ)上述した高周波領域の数GHzから百GHzの信号においては、配線層表面の極めて薄い領域に集中的に信号が流れる。そのため、ポリエチレンナフタレートフィルムとの密着性を得るためのアンカーリング効果を狙って、銅箔の表面に数〜十数μm程度の凹凸を形成した場合には、この銅箔の凹凸の大きさが影響してインピーダンスの不連続点が多く形成される結果、伝送損失が大きくなってしまうので、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いた利点が低減してしまう。
(ト)また、この場合、銅箔をエッチング除去した領域では、銅箔の凹凸が接着剤層に転写されて光透過率が低くなるため、光透過性の良いポリエチレンナフタレートフィルムを用いた利点が低減してしまう。
(チ)接着剤層の厚さは、通常20〜40μmと厚いので、フレキシブル基板全体の厚みがかなり厚くなってしまうという問題もあった。
一方、2層フレキシブル基板は、接着剤なしで直接絶縁体フィルム上に銅導体層を形成するものであり、基板自体の厚さを3層フレキシブル基板に比べて薄くすることができる上に、被覆する銅被膜層の厚さも、任意の厚さに調整することができるという利点を有している。
このような2層フレキシブル基板としては、プラズマエッチングにより改質された少なくとも一つの表面を有する高分子フィルム、そのフィルム上の第1の金属窒化物層からなる層、その第1の金属窒化物層上にある第2の金属窒化物層、及びその第2の金属窒化物層上の導電性金属層からなる複合体(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。しかしながら、この複合体の提案においては、具体的なプラズマエッチング量が記載されておらず、高分子フィルムとしてポリエチレンナフタレートフィルムを用いる場合については、信頼性に密接に関わる密着性に関する開示が十分に行なわれているとは言い難い。
また、この他に、中心線平均粗さ(Ra)が30〜300nmとなるように粗面化処理をした樹脂基板表面に、スパッタリング法による、Al、Cr、Co、Ni、Cu及びAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素からなる多孔質の金属膜を被覆形成したプリント配線用基板(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。しかしながら、この提案においても、微細な導体配線の形成とその形成後の基板との密着性が考慮されているのみであり、耐熱環境における密着力(耐熱密着力)に関しては何ら示唆されておらず、依然として、過酷な熱環境下における密着性の改善は得られていなかった。
さらに、これらの他に、表面粗さとして、算術平均粗さのカットオフ値0.002mmで測定した値(Ra1)が0.05〜1μmであり、かつこの値とカットオフ値0.1mmで測定した値(Ra2)との比(Ra1/Ra2)が0.4〜1であるような表面形状を少なくとも片面に有する樹脂フィルムの表面に金属層を形成した積層体(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。しかしながら、この積層体においても、密着性の改善は常温での接着強度が開示されているのみであり、耐熱環境における密着力などに関しては何ら示唆されていない。
以上に説明したように、従来、ポリエチレンナフタレート系フィルムを用いた2層フレキシブル基板では、ポリエチレンナフタレート系フィルムと金属層との間の初期密着力が十分でなく、しかも、特に耐熱環境における密着力(以下、耐熱密着力と呼称する場合がある。)などに解決すべき課題があった。
特開2006−013135号公報(第1頁、第2頁) 特表2002−511809号公報(第1頁、第2頁) 国際公開WO2003/103352号明細書 特開2004−276401号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、有機パッケージ、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、チップオンフィルム用テープ等の電子部品の素材として好適に用いられる、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、該金属層と該フィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、しかも必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さを薄くすることができる金属被覆ポリエチレンナフタレート基板と、該基板を効率的に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板について、鋭意研究を重ねた結果、該ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面を特定の粗さにするとともに、形成された下地金属層を特定の組成及び厚みを有するニッケル合金層としたところ、該金属層と該フィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さが薄い金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が得られること、また、その製造方法としては、ポリエチレンナフタレート系フィルムを所定の粗さになるように乾式表面処理に付し、次いで乾式めっき法により所定の下地金属層を形成したところ、上記金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が効率的に得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、
下記の(1)及び(2)の要件を満足することを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が提供される。
(1)前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面は、その中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmである。
(2)前記下地金属層は、乾式めっき法により形成されたクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmである。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ニッケル合金の組成は、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記金属層とポリエチレンナフタレート系フィルムとの、初期密着力、及び150℃大気中に168時間放置した後に室温で測定する耐熱密着力のいずれもが、ピール強度で400N/m以上であることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さは、1〜50μmであることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面を、中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmになるように乾式表面処理に付し、次いで、その表面上に、乾式めっき法によりクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有したニッケル合金を主成分として含み、かつ膜厚が3〜50nmである下地金属層を形成し、続いて、該下地金属層上に銅被膜層を積層することを特徴とする、第1〜4いずれかの発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記ニッケル合金の組成は、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第5又は6の発明において、前記乾式表面処理は、酸素ガス雰囲気下に、紫外線照射処理及び/又はプラズマ処理に付すことにより行われることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第5〜7いずれかの発明において、前記乾式めっき法は、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法のいずれかであることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第5〜8いずれかの発明において、前記銅被膜層を積層する際に、まず、乾式めっき法により銅被膜層を形成し、次いで、その上に、湿式めっき法により銅被膜層を形成することを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第5〜9いずれかの発明において、前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さは、1〜50μmであることを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法が提供される。
本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板によれば、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層とフィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、しかも、必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さが薄くすることができるので、有機パッケージ、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、チップオンフィルム用テープ等の電子部品の素材として用いられ、特に、狭幅及び狭ピッチの配線部を有するフレキシブル配線板に好適に用いることができる。さらに、ポリエチレンナフタレート系フィルムでは、ポリイミドフィルムと比べて、誘電率が低いので、数GHzから百GHzの高周波領域においてもノイズの発生が少なく高速で信号を伝達することができること、ポリイミドフィルムと比べて、吸水率が低いので、吸水によって高周波特性が変化しないことから、自動車のように厳しい信頼性が要求される分野にも向いていることなどの利点がある。
また、本発明の製造方法によれば、上記金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を効率的に製造することができる。例えば、ポリエチレンナフタレート系フィルムのヤング率が高いことから、フィルムを薄くした際にもフィルムの搬送性が良好であること、可視光領域での光透過性は、ポリイミドフィルムよりも優れていることから、接続部位に可視光線硬化型接着剤を用いることができること等の利点がある。したがって、これらの工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板とその製造方法を詳細に説明する。
1.金属被覆ポリエチレンナフタレート基板
本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板は、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、下記の(1)及び(2)の要件を満足することを特徴とする。
(1)前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面は、その中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmである。
(2)前記下地金属層は、乾式めっき法により形成されたクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmである。
本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板において、ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面と、下地金属層とで、特に、上記の(1)及び(2)の要件を満足することが重要である。これによって、信頼性に密接に関わる金属層とフィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、しかも必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さが薄い2層フレキシブル基板を得ることができる。
まず、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を構成するフィルム、下地金属層及び銅被膜層について説明する。
(1)ポリエチレンナフタレート系フィルム
上記基板に用いるポリエチレンナフタレート系フィルムとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のポリエチレンナフタレートフィルムを用いることができる。例えば、帝人・デュポンフィルム(株)から、テオネックス(登録商標)等として市販されているものなどが挙げられる。
また、上記ポリエチレンナフタレート系フィルムとしては、フィルム及びフレキシブル基板としての物性を損ねない範囲内で、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤などが添加されていてもよい。また、フィルムとしての取扱い性の向上などを目的として、シリカ、クレー等の無機質材料を適宜添加されたものを用いることもできる。
上記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さとしては、特に限定されるものではないが、必要に応じて1〜50μmの範囲から選ぶことができる。これによって、フィルム厚さも含めた基板全体の厚さが、従来のポリイミドフィルムの場合に比べて薄い2層フレキシブル基板とすることができる。すなわち、前記フィルムの厚みが1μm未満では、フィルムとしての腰が弱くなるので、ハンドリング性が低下するばかりかフィルム強度も十分でなくなる。一方、前記フィルムの厚みが50μmを超えると、フィルムとしての腰が強くなりすぎて曲げにくく、また基板全体の厚さが大きくなってしまうので好ましくない。
ここで、上記ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面は、中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmに調整されていることが重要である。これにより、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層とフィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が向上する。
すなわち、表面処理として、一般的に、ポリイミドフィルム表面に、プラズマ処理、コロナ放電等の乾式表面処理、或いは湿式表面処理を行うと、表面のウィークバウンダリ(脆弱層)が取り除かれると同時に、カルボキシル基や水酸基などの親水性官能基が導入され、金属との密着性が高くなることが知られている。しかしながら、ポリエチレンナフタレート系フィルムにおいて、ポリイミドフィルムと同等の条件下に乾式表面処理を行って作製した2層フレキシブル基板では、耐熱試験の後で密着力が低下してしまう。この原因としては、前記2層フレキシブル基板の密着強度測定後の剥離界面を詳細に分析した結果から、乾式表面処理によってフィルム表面の温度がガラス転移温度(約155℃)を超えたことによりフィルムの強度が低下し、このため密着力が低下したものと考えられた。したがって、初期密着さらには耐熱密着を全てバランス良く確保するためには、乾式表面処理の制御、即ち、乾式表面処理によって得られる下地金属層が接するポリエチレンナフタレート系フィルムの表面粗さを適切に制御することが不可欠である。
なお、ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面の表面粗さとしては、実際に下地金属層と接している状態で、その中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmに調整されていることが求められる。しかしながら、前記金属層の被覆により、前記フィルムの表面粗さの変化はほとんど起こらないので、金属層被覆前の状態又は被覆後に金属層を除去した状態で求めたいずれの値を表面粗さとして用いることができる。
なお、上記表面粗さは、JIS B0601−2001に基づいたものである。ここで、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)を用い、測定範囲を1μm×1μmとして測定したものである。中心線平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の方向にX軸、縦方向にY軸をとり、y=f(x)で表したときに、次の数1により求めた値をいう。
Figure 2009148995
(但し、式中のLは基準長さを表す。)
すなわち、中心線平均粗さ(Ra)が0.5nm未満では、ポリエチレンナフタレート系フィルム表面へのカルボキシル基や水酸基などの親水性官能基が充分に導入されないので、金属層とフィルムの密着強度が不足する。
一方、中心線平均粗さ(Ra)が4nmを超えるような強い、或いは長い処理を行うと、フィルム表面の温度がガラス転移温度(約155℃)を超え、フィルムとしての強度が低くなり、金属層とフィルムの密着強度が低下する。さらに、下地金属層による均一な被覆ができなくなり、このため銅被覆層から銅がポリエチレンナフタレート系フィルムへ拡散し、それを原因として、該フィルム上に形成された金属層とフィルムの密着力が低下する。
(2)下地金属層
上記基板に用いる下地金属層としては、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmであることが重要である。
すなわち、上記下地金属層の組成としては、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含むものであるが、これらの金属をニッケルに添加して合金とすることにより、耐食性及び耐熱性が著しく向上する。しかも、下地金属層の上に積層する銅被覆層から、銅がポリエチレンナフタレート系フィルムへ拡散することを阻止することができ、金属層とフィルムの密着力を改善することが達成される。また、下地金属層には、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金以外に、乾式めっき法に用いるターゲットの作製時に取り込まれるなどして含まれる全体に対し1質量%以下の不可避不純物が副成分として存在していても良い。
上記ニッケル合金の組成としては、特に限定されるものではなく、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含むニッケル合金が用いられるが、その中で、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることが好ましい。すなわち、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンの合計値が全量に対し7質量%未満では、耐熱密着力が熱劣化により著しく低下することを防止できなくなることがある。一方、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンの合計値が全量に対し20質量%を超えると、乾式めっき法による成膜に必要とされるエネルギーが増加し、成膜中にフィルム表面の温度がガラス転移温度を超えるので、密着力が低下してしまうことがある。
なお、上記ニッケル合金の耐熱性や耐食性を向上させる目的で、遷移金属元素を目的特性に合わせて適宜添加することも可能である。ここで、添加金属としては、特に、コバルト又はタングステンが好ましい。
上記下地金属層の膜厚が3〜50nmであるが、該下地金属層の膜厚が3nm未満では、上記基板を用いて配線加工を行う際に、エッチング液がフィルムと下地金属層の間に染み込み、配線部が浮いてしまうこと等により、配線部のピール強度が著しく低下する。一方、前記下地金属層の膜厚が50nmを超えると、下地金属層の成膜時の含熱によりフィルム表面の温度がガラス転移温度を超えるので、密着力が低下してしまう。
以上に説明したように、上記のように表面粗さが制御されたポリエチレンナフタレート系フィルムと、上記の組成及び膜厚を有する下地金属層とを組み合わせることにより、それらの作用が相俟って、従来と比べて大きな密着性を得ることが達成される。
(3)銅被膜層
上記基板に用いる銅被膜層としては、下地金属層上に導電層として形成されものであれば、特に限定されるものではないが、乾式めっき法又は湿式めっき法で形成されたものが用いられる。
上記銅被膜層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、10nm〜18μmであることが好ましい。すなわち、その膜厚が10nm未満では、導電層としての電気抵抗が大きくなるため好ましくない。一方、その膜厚が18μmを超えると、成膜時の生産性が低下するばかりでなく、基板全体の厚さも厚くなってしまうので好ましくない。
次に、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の密着力について説明する。
上記基板において、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層とポリエチレンナフタレート系フィルムとの間の、初期密着力、及び150℃大気中に168時間放置した後に室温で測定する耐熱密着力のいずれもが、有機パッケージ、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、チップオンフィルム用テープ等の電子部品に用いる金属被覆樹脂基板として十分な密着性が得られる。
さらに、この中で、下地金属層のニッケル合金の組成が、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであるときには、初期密着力及び耐熱密着力のいずれもが、ピール強度で400N/m以上が達成される。
すなわち、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板においては、特に限定されるものではないが、銅被膜層を形成した後の初期密着力だけでなく、耐熱環境における耐熱密着力についても、3層フレキシブル基板と同等以上の密着力が望まれる。すなわち、3層フレキシブル基板の密着力は、通常、ピール強度で400N/mが得られるので、これらの密着力がピール強度で400N/m未満では、高温で部品や素子を実装した際に、配線の変形や剥離といった不具合が発生する恐れがある。なお、前記密着力の指標としては、ピール強度を用い、IPC−TM−650、NUMBER2.4.9に準拠した方法で測定することができる。ここで、ピール強度は、銅厚が厚くなるほど高い値を示す傾向にあるが、現在汎用されている金属被覆樹脂基板と同等の銅厚5〜12μmでの測定を基準としている。
2.金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法
本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法は、ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面を、中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmになるように乾式表面処理に付し、次いで、その表面上に、乾式めっき法によりクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有したニッケル合金を主成分として含み、かつ膜厚が3〜50nmである下地金属層を形成し、続いて、該下地金属層上に銅被膜層を積層することを特徴とする。これによって、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板が効率的に製造することができる。
上記製造方法の具体的な実施態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンナフタレート系フィルムを用いて、その脱水処理と乾式表面処理、下地金属層の形成、及び銅被覆層の形成の各工程を含む方法で行われる。
上記ポリエチレンナフタレート系フィルムとしては、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の説明において記載したものと同様のポリエチレンナフタレート系フィルムが用いられる。すなわち、ポリエチレンナフタレート系フィルムとして、特に限定されるものではなく、従来公知のポリエチレンナフタレートフィルムを用いることができる。例えば、帝人・デュポンフィルム(株)から、テオネックス(登録商標)等として市販されているものなどが挙げられる。また、上記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さとしては、特に限定されるものではないが、必要に応じて1〜50μmの範囲から選ぶことができる。これによって、フィルム厚さも含めた基板全体の厚さが、従来のポリイミドフィルムに比べて薄い2層フレキシブル基板を得ることができる。すなわち、前記フィルムの厚みが1μm未満では、フィルムとしての腰が弱くなるので、ハンドリング性が低下するばかりかフィルム強度も十分でなくなる。一方、前記フィルムの厚みが50μmを超えると、フィルムとしての腰が強くなりすぎて曲げにくく、また基板全体の厚さが大きくなってしまうので好ましくない。
以下に、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法について、上記の各工程毎に説明する。
(1)ポリエチレンナフタレート系フィルムの脱水処理工程
上記脱水処理工程は、必要に応じて行われるものであり、ポリエチレンナフタレート系フィルム中に含まれる水分を除去する工程である。市販のポリエチレンナフタレート系フィルムは、通常、水分を含んでおり、乾式めっき法により下地金属層を形成する前に、大気中及び/又は真空中で加熱を行い、該フィルム中に存在する水分を取り去っておくことが望ましい。この水分の除去が不充分である場合には、フィルムと下地金属層との密着性が低下することがある。ただし、ポリエチレンナフタレートは、ポリイミドほどの耐熱性は備えていないので、ポリイミドフィルムよりも弱い条件、例えば、150℃より低いヒーター温度で、短い処理時間で加熱することが好ましい。
(2)乾式表面処理工程
上記乾式表面処理工程は、上記脱水処理工程で得られたポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面を、中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmになるように乾式表面処理に付す工程である。
すなわち、中心線平均粗さ(Ra)が0.5nm未満、例えば乾式表面処理が無い場合、もしくは乾式表面処理があまりに弱すぎる場合では、ポリエチレンナフタレート系フィルム表面へのカルボキシル基や水酸基などの親水性官能基が充分に導入されないので、金属層とフィルムの密着強度が不足する。なお、通常、乾式表面処理により、中心線平均粗さ(Ra)を0.5nm未満に制御することは困難であり、安定的に生産することができない。
一方、ポリイミドフィルムの場合と同等にポリイミドフィルム表面のウィークバウンダリ(脆弱層)を取り除くような強い条件での処理が行われため、中心線平均粗さ(Ra)が4nmを超えると、ポリエチレンナフタレートフィルム表面にはウィークバウンダリ(脆弱層)が元々ほとんど存在せず、かつガラス転移温度もポリイミドフィルムほど高くないので、フィルム表面の温度がガラス転移温度(約155℃)を超えるため、密着強度の低下を起こす。さらに、表面粗さが大きくなることによって下地金属層による均一な被覆ができなくなり、このため銅被覆層から銅がポリエチレンナフタレート系フィルムへ拡散し、それを原因として、該フィルム上に形成された金属層とフィルムの密着力が低下する。
上記工程に用いる乾式表面処理の方法としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンナフタレート系フィルムがポリイミドフィルムほどの耐熱性は備えていないので、ポリイミドフィルムよりも弱い条件で、なおかつ中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmとなるように処理することができる方法が選ばれるが、酸素ガス雰囲気下に、紫外線照射処理及び/又はプラズマ処理に付すことが好ましい。また、これらの処理の前に、コロナ放電やイオン照射処理などを行うことがより好ましい。
上記紫外線照射処理としては、例えば、低圧水銀ランプかエキシマランプを用い、酸素雰囲気中で処理することにより、所望の表面粗さにすることができる。
また、上記プラズマ処理で改質層を形成する場合には、例えば、直流方式、交流方式、高周波方式のいずれも用いることができる。このプラズマ処理を施す装置としては、電極の形状には、特に制限はなく平板状、リング状、棒状等各種の形状の電極が使用できる。例えば、ロール状のポリエチレンナフタレート系フィルムを、プラズマ処理装置内部に設置した巻出機から巻出し、放電電極間を通過させて巻取機で巻取りながら、放電プラズマ処理を行う方法が効果的であり、好ましい。
上記乾式表面処理の方法においては、酸素ガス圧、又は投入エネルギーを調整することにより、表面粗さを制御することができるので、所望の表面粗さとなるようにこれらを調整すればよい。また、ポリエチレンナフタレート系フィルム表面の温度が重要であるので、ガラス転移温度未満となるように、表面処理条件を選定することが好ましい。
例えば、ポリイミドフィルムの場合よりも低い投入エネルギーで処理することにより、ポリエチレンナフタレート系フィルム表面の温度をガラス転移温度未満に調整しながら、フィルム表面粗さを中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmとなるように制御する。
(3)下地金属層の形成工程
上記下地金属層の形成工程は、上記乾式表面処理工程で乾式表面処理されたポリエチレンナフタレート系フィルムの表面上に、乾式めっき法によりクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有したニッケル合金を主成分として含み、かつ膜厚が3〜50nmである下地金属層を形成する工程である。
上記工程に用いるニッケル合金の組成としては、特に限定されるものではなく、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含むニッケル合金が用いられるが、その中で、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることが好ましい。すなわち、クロム、バナジウム、チタン又はモリブデンの合計値が全量に対し7質量%未満では、耐熱密着力が熱劣化により著しく低下することを防止できなくなることがある。一方、クロム、バナジウム、チタン又はモリブデンの合計値が全量に対し20質量%を超えると、乾式めっき法による成膜に必要なエネルギーが増加し、成膜中にフィルム表面の温度がガラス転移温度を超えるので、密着力が低下してしまうことがある。
また、上記下地金属層の膜厚が3nm未満では、上記基板を用いて配線加工を行う際に、エッチング液がフィルムと下地金属層の間に染み込み、配線部が浮いてしまうこと等により、配線部のピール強度が著しく低下する。一方、上記下地金属層の膜厚が50nmを超えると、下地金属層の成膜時の含熱によりフィルム表面の温度がガラス転移温度を超えるので、密着力が低下してしまう。
上記工程に用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法のいずれかであることが好ましく、スパッタリング法を用いることがより好ましい。例えば、フィルム巻取式スパッタリング装置を用いて上記ポリエチレンナフタレート系フィルムの表面上に下地金属層を形成する場合には、スパッタリングターゲットと得られる金属薄膜の組成のずれは通常はほとんどないことから、所望の下地金属層の組成と同等の組成を有する合金ターゲットをスパッタリング用カソードとして用いればよい。また、下地金属層の膜厚の制御は、フィルムの搬送速度及びスパッタリング条件を制御することで所望の膜厚とすることができる。
より具体的には、上記脱水処理及び乾式表面処理を施されたポリエチレンナフタレート系フィルムをスパッタリング装置内にセットし、スパッタリング装置内を真空排気後、Arガスを導入して、装置内を0.13〜1.3Pa程度に保持する。この状態で、スパッタリング装置内の巻取・巻出ロールに装着したポリエチレンナフタレート系フィルムを、毎分1〜20m程度の速さで搬送しながら、カソードに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し合金ターゲットにスパッタリング放電を行い、フィルム上に、所望の下地金属層を連続成膜する。
ここで、スパッタリング用直流電源より供給する電力密度としては、1〜20W/cmの範囲とすることが好ましい。このスパッタリング成膜によって、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであるニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmである下地金属層がフィルム上に形成される。
(4)銅被覆層の形成工程
上記銅被覆層の形成工程は、上記下地金属層の形成工程で形成された下地金属層上に銅被膜層を積層する工程である。
上記工程に用いる銅被覆層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、乾式めっき法と湿式めっき法のいずれも選択することができるが、この中で、特に、比較的厚い銅被覆層を形成する場合には、乾式めっき法により銅被膜層を形成し、次いで、その上に、湿式めっき法により銅被膜層を形成したものが好ましい。これにより、導電層として求められる所望の厚さを有する銅被膜層が、経済的に形成することができる。一方、銅被覆層を薄く形成する場合、例えば、50nm以下のような薄膜のみでよい場合には、乾式めっき法のみによって銅被覆層を形成することができる。
上記工程に用いる乾式めっき法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法のいずれかを用いることができる。例えば、銅ターゲットを用いて、上記下地金属層の形成の場合と同様のスパッタリング装置を用いて、銅被膜層を形成することができる。このとき、下地金属層と銅被膜層は同一真空室内で連続して形成することが好ましい。
また、乾式めっき法による銅被膜層の上に、さらに湿式めっき法により銅被膜層を積層する場合には、電気銅めっき処理のみで行う方法、又は一次めっきとして無電解銅めっき処理、二次めっきとして電解銅めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う方法のいずれを選択してもよい。ここで、湿式銅めっき処理の方法としては、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。また、このとき、乾式めっき法による銅被膜層の膜厚としては、10nm以上とすることが好ましい。すなわち、10nm未満では、銅被膜層の導電性が低く、電解銅めっき処理等を行う際に十分な給電量を確保できない。以上の方法で下地金属層上に銅被膜層を形成することにより、銅被膜層の密着度の高い2層フレキシブル基板を得ることができる。
3.フレキシブル配線板
上記金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成することによりフレキシブル配線板が得られる。また、前記基板の所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して、各種用途に用いることもできる。
より具体的な配線パターンの形成の仕方としては、例えば、次の(A)〜(C)の配線パターンが用いられる。
(A)高密度配線パターンをフレキシブルシートの少なくとも片面に個別に形成する。(B)該配線層が形成されたフレキシブルシートに、該配線層とフレキシブルシートとを貫通するヴィアホールを形成する。
(C)場合によっては、該ヴィアホール内に導電性物質を充填してホール内を導電化する。
上記配線パターンの形成方法としては、フォトエッチング等の従来公知の方法が使用でき、例えば、少なくとも片面に金属層が形成された金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を準備して、該金属層上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光現像してパターニングし、次いで、塩化第2鉄溶液などのエッチング液で該金属層を選択的にエッチング除去した後、レジストを除去して所定の配線パターンを形成する。ここで、配線をより高密度化するためには、両面に金属層が形成された2層フレキシブル基板を準備し、両面をパターン加工して基板両面に配線パターンを形成することが好ましい。全配線パターンを幾つの配線領域に分割するかどうかは、配線パターンの配線密度の分布等によるが、例えば、配線パターンを配線幅と配線間隔がそれぞれ50μm以下の高密度配線領域とその他の配線領域に分け、プリント基板との熱膨張差や取扱い上の都合等を考慮し、分割する配線基板のサイズを10〜65mm程度に設定して適宜分割すればよい。
上記ヴィアホールの形成方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えば、レーザー加工などにより、前記配線パターンの所定の位置に、該配線パターンとフレキシブルシートを貫通するヴィアホールを形成する。ヴィアホールの直径は、ホール内の導電化に支障がない範囲内で小さくすることが好ましく、通常100μm以下、好ましくは50μm以下にする。なお、ヴィアホール内には、めっき、蒸着、スパッタリング等により銅等の導電性金属を充填、あるいは所定の開孔パターンを持つマスクを使用して導電性ペーストを圧入、乾燥し、ホール内を導電化して層間の電気的接続を行う。前記導電性金属としては、銅、金、ニッケル等が挙げられる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、中心線平均粗さ(Ra)、並びにピール強度による初期密着力、及び耐熱密着力の評価方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)中心線平均粗さ(Ra)の測定:得られた基板を塩化第2鉄溶液でエッチングして下地金属層及び銅被膜層からなる金属層を除去した後、原子間力顕微鏡 NS−III D5000システム(DI社製)により、その表面の中心線平均粗さ(Ra)を測定した
(3)初期密着力の測定:IPC−TM−650、NUMBER2.4.9に準拠した方法で、ピール強度を測定した。まず、得られた基板の一部にドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光現像し、塩化第2鉄溶液で該金属層をエッチングして除去した後、レジストを除去してピール強度評価用の1mm幅のリードを形成した。ピールの角度は90°とした。リードはサブトラクティブ法あるいはセミアディティブ法で形成した。なお、ピール強度は銅厚が厚くなるほど高い値を示す傾向にあるが、密着力の測定は、現在汎用されている金属被覆樹脂基板と同等の銅厚8μmでの測定を基準として実施した。
(4)耐熱密着力の測定:1mmのリードを形成したフィルム基材を、150℃のオーブンに168時間放置し、取り出したあと室温になるまで放置したのち、上記初期密着力の測定と同様の方法で行なった。
(実施例1)
厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人・デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ83」)を用いた。このフィルムを、真空容器内で150℃以下の温度で加熱後、酸素ガス圧1.0Paの雰囲気下でプラズマ中に数秒間さらして、ポリエチレンナフタレートフィルムの脱水処理と乾式表面処理を行った。次いで、得られたフィルムに、下地金属層の第1層として、7質量%Cr−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用いた直流スパッタリング法により、7質量%Cr−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜した。続いて、その上に第2層として、Cuターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用いた直流スパッタリング法により、銅被膜層を100nmの厚さに成膜した。その後、電気めっきにより、銅被膜層を8μmまで積層して、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例2)
プラズマ雰囲気を酸素ガス圧2.0Paにしたこと以外は実施例1と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例3)
下地金属層の第1層として7質量%V−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、7質量%V−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例4)
下地金属層の第1層として7.5質量%Ti−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、7.5質量%Ti−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例5)
下地金属層の第1層として10質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、10質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例6)
下地金属層の第1層として20質量%Cr−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、20質量%Cr−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例7)
下地金属層の第1層として20質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、20質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例8)
下地金属層の第1層として6質量%Cr−10質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、6質量%Cr−10質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例9)
下地金属層の第1層として4質量%V−10質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、4質量%V−10質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例10)
下地金属層の第1層として7質量%Ti−10質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、7質量%Ti−10質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例11)
プラズマ雰囲気を酸素ガス圧3.0Paにしたこと以外は実施例6と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例12)
下地金属層を3nmの厚さに成膜したこと以外は実施例6と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例13)
下地金属層を30nmの厚さに成膜したこと以外は実施例6と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例14)
下地金属層の第1層として6質量%Cr−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、6質量%Cr−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例15)
下地金属層の第1層として6質量%V−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、6質量%V−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例16)
下地金属層の第1層として6質量%Ti−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、6質量%Ti−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例17)
下地金属層の第1層として6質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、6質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例18)
下地金属層の第1層として21質量%Cr−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、21質量%Cr−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(実施例19)
下地金属層の第1層として21質量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、21質量%Mo−Ni合金下地金属層を7nmの厚さに成膜したこと以外は実施例2と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(比較例1)
乾式表面処理として大気中でコロナ放電のみを施したこと以外は実施例6と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
(比較例2)
プラズマ処理時間を10秒以上としてポリイミドフィルムと同等の条件で行ったこと以外は実施例1と同様にして、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板を得た。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法にしたがって、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。また、上記初期密着力及び耐熱密着力の測定方法にしたがって、得られた基板のピール強度による初期密着力及び耐熱密着力を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2009148995
表1より、実施例1〜19では、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板のポリエチレンナフタレートフィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)、及び下地金属層の組成と膜厚が本発明の方法に従って行われたので、高い初期密着力及び耐熱密着力が得られることが分かる。特に、実施例1〜13では、下地金属層がクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を合金全量に対し7〜20質量%含有するニッケル合金であるので、金属層とポリエチレンナフタレート系フィルムとの間の初期密着力及び耐熱密着力のいずれもが、ピール強度で400N/m以上の値が得られる。実施例14〜19では、下地金属層のクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の含有量がこれらの条件に合わないので、初期密着力及び耐熱密着力のいずれかにおいてやや低い。
これに対して、比較例1又は2では、金属被覆ポリエチレンナフタレート基板のポリエチレンナフタレートフィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)がこれらの条件に合わないので、初期密着力及び耐熱密着力のいずれにおいても、満足すべき結果が得られないことが分かる。
以上に述べた通り、本発明の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板によれば、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層とフィルムとの初期密着力、耐熱密着力等の密着力が高く、しかも、必要に応じてフィルム厚さも含めた基板全体の厚さが薄くすることができるので、有機パッケージ、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、チップオンフィルム用テープ等の電子部品の素材として用いられ、特に、高周波信号の伝送に好適で高密度の実装が可能で、狭幅及び狭ピッチの配線部を有するフレキシブル配線板に好適に用いることができる。さらに、ポリエチレンナフタレート系フィルムでは、ポリイミドフィルムと比べて、誘電率が低いので、数GHzから百GHzの高周波領域においてもノイズの発生が少なく高速で信号を伝達することができることを利用する分野、吸水率は低いので、吸水によって高周波特性が変化しないから、自動車のように厳しい信頼性が要求される分野等に用いられる。
また、本発明の製造方法によれば、例えば、ポリエチレンナフタレート系フィルムのヤング率は高いことから、フィルムを薄くした際にもフィルムの搬送性が良好であること、可視光領域での光透過性が優れていることから、接続部位に可視光線硬化型接着剤を用いることができること等の利点を活かすことができる。

Claims (10)

  1. ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面上に、下地金属層と該下地金属層上に積層された銅被膜層とからなる金属層を有する金属被覆ポリエチレンナフタレート基板であって、
    下記の(1)及び(2)の要件を満足することを特徴とする金属被覆ポリエチレンナフタレート基板。
    (1)前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの下地金属層が接する表面は、その中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmである。
    (2)前記下地金属層は、乾式めっき法により形成されたクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するニッケル合金を主成分として含み、かつその膜厚が3〜50nmである。
  2. 前記ニッケル合金の組成は、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることを特徴とする請求項1に記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板。
  3. 前記金属層とポリエチレンナフタレート系フィルムとの、初期密着力、及び150℃大気中に168時間放置した後に室温で測定する耐熱密着力のいずれもが、ピール強度で400N/m以上であることを特徴とする請求項2に記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板。
  4. 前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さは、1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板。
  5. ポリエチレンナフタレート系フィルムの少なくとも片側の表面を、中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜4nmになるように乾式表面処理に付し、次いで、その表面上に、乾式めっき法によりクロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有したニッケル合金を主成分として含み、かつ膜厚が3〜50nmである下地金属層を形成し、続いて、該下地金属層上に銅被膜層を積層することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
  6. 前記ニッケル合金の組成は、クロム、バナジウム、チタン及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を全量に対し7〜20質量%含有し、残部がニッケルであることを特徴とする請求項5に記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
  7. 前記乾式表面処理は、酸素ガス雰囲気下に、紫外線照射処理及び/又はプラズマ処理に付すことにより行われることを特徴とする請求項5又は6に記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
  8. 前記乾式めっき法は、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法のいずれかであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
  9. 前記銅被膜層を積層する際に、まず、乾式めっき法により銅被膜層を形成し、次いで、その上に、湿式めっき法により銅被膜層を形成することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
  10. 前記ポリエチレンナフタレート系フィルムの厚さは、1〜50μmであることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の金属被覆ポリエチレンナフタレート基板の製造方法。
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