本発明のフィルタ装置について以下に詳細に説明する。図1〜図6はそれぞれ本発明のフィルタ装置における実施形態の一例を示す分解斜視図である。図1〜図6において、1aは誘電体層、1は誘電体層1aが積層されてなる積層体、2aは第1の基準電極、2bは第2の基準電極、9は内部基準電極、3a〜3dは共振器電極(第1の共振器電極)、3aは初段の共振器電極(初段の第1の共振器電極)、3dは最終段の共振器電極(最終段の第1の共振器電極)、4は結合電極、4aは接地強化部、4bは基準電極対向部、5は入力端子、5aは外部入力端子、5bは内部入力端子、6は出力端子、6aは外部出力端子、6bは内部出力端子、7は容量電極である。また、破線は、誘電体層1aの上下に位置する導体層(例えば初段の第1の共振器電極3aと入力端子5)を電気的に接続するための誘電体層1aを貫通する貫通導体があることを示している。
本実施形態のフィルタ装置は、複数の誘電体層1aが積層されてなる積層体1と、この積層体1の第1の端部に配置された第1の基準電極2aと、この積層体1の第2の端部に配置された第2の基準電極2bと、積層体1内において互いに電磁界結合するように平面視で横並びに整列され、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である第1の共振器電極3a〜3dと、共振器電極よりも3a〜3d第1の端部側に配置され、誘電体層1aを挟んで一端が初段の第1の共振器電極3aの短絡端部と対向するとともに、この対向する初段の第1の共振器電極3aの短絡端に電気的に接続され、他端が最終段の第1の共振器電極3dの短絡端部と対向するとともに、この対向する第1の共振器電極3dの短絡端に電気的に接続された結合電極4と、初段の第1の共振器電極3aに信号を入力するための入力端子5と、最終段の第1の共振器電極3dから信号を出力するための出力端子6とを具備している。そして、結合電極4は、一端と他端との間に接地する分岐部を有することを特徴とするものである。
本実施形態のフィルタ装置によれば、結合電極4が一端と他端との間に接地する分岐部を有することから、結合電極4の分岐点から接地する側への電流が増大するので、結合電極4による初段の第1の共振器電極3aと最終段の共振器電極の結合(誘導性の結合および容量性の結合)を調整(小さく)することができる。そのため、フィルタの通過帯域により近い位置(周波数)に減衰極を形成しつつ、低域側および高域側の減衰極よりさらに低域側および高域側の周波数帯の減衰量が増大した優れた減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
特に、結合電極4が第1の基準電極2aに電気的に接続される接地強化部4aを有するときには、結合電極4の分岐点から接地側(第1の基準電極2a)への電流がさらに増大するので、結合電極4による初段の第1の共振器電極3aと最終段の第1の共振器電極3dの結合(誘導性の結合および容量性の結合)をより効率よく調整(小さく)することができる。
第1の基準電極2a及び第2の基準電極2bは、誘電体層1aが積層された積層体1の上下面に、入力端子5および出力端子6の周囲を除いたほぼ全面に配置されており、接地電位に接続されている。
第1の共振器電極3a,3b,3c,3dは、積層体1の1つの層間に横並びに整列させて配置されて相互に電磁界結合(エッジ結合)している。通過帯域の近傍に減衰極を作るには第1の共振器電極を3つ以上有する必要であり、第1の共振器電極が2つ以下である場合では、結合電極の効果である減衰極を作ることができない。そのため、本実施形態のように第1の共振器電極を3つ以上有する必要がある。
隣り合う第1の共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d同士の間隔は小さい方が強い結合が得られ、容易に通過帯域を広くできるので好ましいが、短絡端から開放端の間において互いに短絡しないようにして等間隔に良好に形成するには、例えば、0.05〜0.5mm程度に設定される。横並びに配置されて相互に電磁界結合するためには、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの形状は細長い帯状のものであるのが好ましい。第1の共振器電極3a〜3dは、積層体1内において互いに電磁界結合するように平面視で横並びに整列されていればよい。図1に示すように、4つの第1の共振器電極3a〜3dが1つの誘電体層1a・1a間に配置されてもよいが、第1の共振器電極3a,3cを1つの誘電体層1a・1a間に配置し、共振器電極3b,3dを、誘電体層1aを1層介した別の誘電体層1a・1a間に配置してもよい。このように配置すると、隣り合う共振器電極間における短絡の可能性が抑制され、その形成は容易になるので好ましいが、誘電体層1aの層数が増加してフィルタ装置の厚みは厚いものとなる。
また、図1〜図6に示す例のように、第1の共振器電極3a〜3dをインターデジタル型に配置したときには、第1の共振器電極3a〜3d間の結合は磁界による結合と電界による結合とが加算されることにより、各第1の共振器電極3a〜3d間においてより強い結合が生じることによって、それぞれの共振モードにおける共振周波数の間の周波数間隔を、従来の1/4波長共振器を利用したフィルタで実現可能だった帯域を超えて調整することができ、広帯域な通過帯域を有するフィルタ装置とすることができる。また、インターデジタル型に配置された第1の共振器電極3a〜3d間の結合は強い磁界結合となり、第1の共振器電極3a〜3dのパターン幅を小さくして磁界を強める必要がないので、第1の共振器電極3a〜3dのパターン幅を大きくすることによって第1の共振器電極3a〜3dの電気抵抗を小さくし、共振器の急峻性共振の鋭さを示すQ値(quality factor)を高くすることができる。その結果として、広い通過帯域を有し急峻な減衰特性を有する、例えばUWB用途のバンドパスフィルタに適したフィルタ装置とすることができる。
また、第1の共振器電極3a〜3dをコムライン型に配置したときは、インターデジタル型と比べて第1の共振器電極3a〜3d間の結合が弱いことから、通過帯域が狭く急峻な特性が得られ、また各第1の共振器電極3a〜3dのパターン幅を小さくできることにより小型化できるため、携帯電話用や無線LAN等の比較的小型の無線機器に適したフィルタ装置となる。
インターデジタル型とコムライン型とでは、第1の共振器電極3a〜3d間の結合を同程度にすると、初段の第1の共振器電極3aと最終段の第1の共振器電極3dとの結合は通常インターデジタル型の方が弱く、また第1の共振器電極3a〜3dの段数が多いほど弱いので、結合電極4による効果は、段数の多いインターデジタル型の場合に、より顕著になる。
図1〜図6に示す例では4つの第1の共振器電極3a〜3d設けられているが、5つ以上の共振器電極を設けてもよく、損失が大きくならない程度の個数であればよい。UWBのローバンド用途では損失と減衰特性のバランスから4つが好ましい。
第1の共振器電極3a,3b,3c,3dは、第1の基準電極2a及び第2の基準電極2bと共にストリップライン共振器を構成しており、短絡端が第1の基準電極2a又は第2の基準電極2bに接続されて接地電位に接続されることによって1/4波長共振器として機能する。第1の共振器電極3a,3b,3c,3dと第1の基準電極2a又は第2の基準電極2bとの接続は、図1および図2に示すように、第1の共振器電極3a〜3dを形成した層間に第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設け、この導体層と貫通導体(図示せず)により接続したり、この導体層を誘電体層1aの端部まで延ばして誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体(図示せず)により接続したりすればよい。第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設けない場合は、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dのそれぞれを貫通導体により第1の基準電極2a・2aに接続してもよいし、第1の共振器電極3a〜3dの短絡端を誘電体層1aの端部まで延ばして誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体により第1の基準電極2a・2aに接続してもよい。端面導体で接続すると、第1の共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩を低減するシールド層として端面導体を機能させることができ、貫通導体の場合でも、その間隔を小さくしたり、第1の共振器電極3a〜3dの周りに二重以上に配列し、側面から見てできるだけ貫通導体を隙間なく配置したりすれば、同様にシールドの機能がより顕著になるので好ましい。図1および図2に示すように、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設けると、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端を第1の基準電極2a,2aに接続するのが容易となるので好ましい。
また、本実施形態のフィルタ装置は、図4および図5に示す例のように、上記構成において、第1の共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a間において、第1の共振器電極3a〜3dを平面視した場合に、複数の第1の共振器電極3a〜3dを取り囲むように内部基準電極9が形成されていることが好ましい。このようにすることにより、内部基準電極9が第1の共振器電極3a〜3dの周囲を取り囲むことによって、第1の共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩を低減することができる。
この効果はモジュール基板の中の一部の領域にフィルタ装置が形成される場合に、モジュール基板の他の領域への悪影響を防止する上で特に有用である。内部基準電極9は、上述した第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層と、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの並びの両側に形成された導体層とからなる環状のものである。第1の基準電極2aと第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの接続を、内部基準電極9の第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの並びの両側に位置する部分でも行なえば、第1の共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩をより効果的に低減することができる。
内部基準電極9と第1の共振器電極3a,3dとの距離は、第1の共振器電極3a,3dによる磁界に影響を与えてフィルタのQ値が低下し通過帯域の損失が大きくなってしまわないように、第1の共振器電極3a,3dによる磁束が通過できる距離があればよく、第1の共振器電極3a,3dと第1の基準電極2aとの間の距離より大きいことが好ましい。
結合電極4は、結合の弱い初段の第1の共振器電極3aと最終段の第1の共振器電極3dとの間の結合を強めるために設けるものであり、例えば図4に示す例において、第2段の共振器電極3bと第3段の共振器電極3cとの結合が増えると、第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2a・2aとで形成される基本的なフィルタの中心周波数がずれるなど通過帯域内のフィルタ特性が変わることになり、結合電極4を加えることによる減衰特性の設計が複雑になってしまう。また、結合電極4において初段の第1の共振器電極3aに対向する部分と最終段の第1の共振器電極3dに対向する部分とを接続するパターンの線幅が大きいと、結合電極4自身が基準電極のように機能することから第1の共振器電極3a〜3dによる磁界に影響を与えることにより、フィルタのQ値が低下して通過帯域の損失が大きくなってしまう。
そのため、初段の第1の共振器電極3aに対向する部分と最終段の第1の共振器電極3dに対向する部分とを接続する部分は、第2段および第3段の共振器電極3b・3cと対向する面積を小さくして結合をできるだけ小さくするために、小さい幅のパターンで、第2段および第3段の共振器電極3b・3cと直交するように設けるとよい。また、初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dに対向する部分までの距離を大きくすることにより結合を小さくするために、この直交する部分をさらに1層以上の誘電体層1aを挟んだ位置に形成して、貫通導体により初段の第1の共振器電極3aに対向する部分および最終段の第1の共振器電極3dに対向する部分に接続してもよい。
結合電極4と第1の共振器電極3a・3dとの間の誘電体層1aの層数により結合電極4と第1の共振器電極3a・3dとの間の距離を変更したり、結合電極4のパターン幅や長さ等のパターン形状や平面視での位置により結合電極4と第1の共振器電極3a・3dとが重なる面積を変更したりすることで、結合電極4と第1の共振器電極3a・3dとの間の電磁界結合度の強弱を調整でき、減衰極が生じる周波数を任意に設定できる。第1の共振器電極3a・3dとの間で十分な結合が得られ、フィルタ装置を作製する際の位置ずれにより初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3d以外の共振器電極3b・3cとの結合が発生してしまうことがないように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aに対向する部分および最終段の第1の共振器電極3dに対向する部分は、第1の共振器電極3a・3dの形状に沿った帯状で、第1の共振器電極3a・3dより幅の小さい形状とするのがよい。
また、結合電極4は、その一端と他端との間で分岐して第1の基準電極2aに電気的に接続される接地強化部4aを有するが、結合電極4の一端から接地強化部4aの端部までの長さは、結合電極4の一端から他端までの長さよりも長くなるようにするのが好ましい。これは、結合電極4の一端から接地強化部4aの端部までの長さの方が短いと、結合電極4の一端から他端へ電流が流れ難くなり、結合電極4の機能が大きく低下してしまうからである。
このようなことから、接地強化部4aの形状は、図2に示す例のように結合電極4から分岐して絶縁層1aを貫通して第1の基準電極2aへ接続するより形状も、図1に示す例のように、結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において分岐する形状の方が、長く形成しやすいのでよい。また、このようにすると、例えばセラミックグリーンシート上に導体ペーストを印刷することにより結合電極4を形成する際に、接地強化部4aも同時に形成することが可能となる。この場合の接地強化部4aの第1の基準電極2aとの電気的接続は、分岐して誘電体層1a・1a間に延在させてから絶縁層1aを貫通して第1の基準電極2aへ接続するようにしてもよいし、図1に示す例のように、第1の共振器電極3a〜3dの短絡端同士を接続するとともに第1の基準電極2aに電気的に接続される導体層に接続してもよい。
図7は、図5に示す例のような第1の共振器電極3a〜3dおよび内部基準電極9が形成された絶縁層1aを上面視した平面図であり、第1の共振器電極3a〜3dとその下の絶縁層1a上に形成された結合電極4(破線で示す)との重なりの例を示している。
接地強化部4aが結合電極4から分岐する位置は、結合電極4の一端から接地強化部4aの端部までの長さが結合電極4の一端から他端までの長さより長くなるようにするには、図7(a),(b),(d),(e),(f)に示す例のように、接地強化部4aは結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において平面視で第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの外側に引き出せばよい。図7(c)に示す例の場合は、結合電極4の一端から接地強化部4aの端部までの長さが短くなる。また、図7(c)に示す例の場合は、共振器電極3b,3cと重なることにより、初段の第1の共振器電極3aと開放端の向きが逆の2段の共振器電極3b(および最終段の第1の共振器電極3dと3段の共振器電極3c)とが結合されるので、互いに干渉して共振特性が低下してしまう。
初段の第1の共振器電極3aと対向する部分と最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分との間で分岐する場合は、図7(e)に示す例のように初段の第1の共振器電極3aと2段の共振器電極3bとの間または最終段の第1の共振器電極3dと3段の共振器電極3cとの間で分岐しなければならず、製造工程での位置ずれを考慮すると、共振器電極3b,3cと重ならないようにこの狭い間隔内に分岐点を設けるのは困難である。このようなことから、図7(a),(b),(d),(f)に示す例のように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aと対向する部分または最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分から分岐するのが好ましい。図7(b)に示す例もわずかではあるが接地強化部4aが共振器電極と重なるので、図7(a),(d),(f)に示す例のように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aと対向する部分または最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分から分岐し、それぞれ対向する第1の共振器電極3aまたは3dの外側に引き出すのがより好ましい。
図8は、図3に示す例のような第1の共振器電極3a〜3dが形成された絶縁層1aを上面視した平面図であり、第1の共振器電極3a〜3dとその下の絶縁層1a上に形成された結合電極4(破線で示す)との重なりの例を示している。
本実施形態のフィルタ装置は、図8に示す例のように、第1の共振器電極3a〜3dは4個以上であり、接地強化部4aは、初段および最終段の第1の共振器電極3a,3d以外の共振器電極3b,3cの短絡端部と対向するとともに短絡端に電気的に接続されることが好ましい。このようにすると、初段の第1の共振器電極3aと第3段の共振器電極3cとの結合、または最終段の第1の共振器電極3dと第2段の共振器電極3bとの結合を強めることができるので、フィルタの通過帯域により近い位置(周波数)に減衰極を形成しつつ、低域側および高域側の減衰極よりさらに低域側および高域側の周波数帯の減衰量がさらに増大した優れた減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
図8(a)に示す例のように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aの短絡端部に対向する部分と第3段の共振器電極3cの短絡端部に対向する接地強化部7aとは、互いに横並びで近い短絡端に電気的に接続されており、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aの短絡端部に対向する部分と第2段の共振器電極3bの短絡端部に対向する接地強化部7aおよび内部基準電極9を通るループ状の電流経路より、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aの短絡端部に対向する部分と共振器電極3cの短絡端部に対向する接地強化部7aおよび内部基準電極9を通るループ状の電流経路の方が短いので、上述した初段の第1の共振器電極3aと第2段の共振器電極3bとの結合による影響は小さく、初段の第1の共振器電極3aと第3段の共振器電極3cとの結合が強まることによる上記効果の方が顕著になる。同様に、最終段の第1の共振器電極3dと第3段の共振器電極3cとが結合することによる影響は小さく、最終段の第1の共振器電極3dと第2段の共振器電極3bとの結合が強まることによる上記効果の方が顕著になる。
初段の第1の共振器電極3aと第2段の共振器電極3bとの結合による影響や最終段の第1の共振器電極3dと第3段の共振器電極3cとが結合することによる影響を小さくするには、図8(b)に示す例のように、接地強化部4aは、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aと対向する部分から分岐し、第3段の共振器電極3cの短絡端部に対向するように、また、最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分から分岐し、第2段の共振器電極3bの短絡端部に対向するように形成するのが好ましい。この場合は、初段の第1の共振器電極3aと第2段の共振器電極3bとの結合や最終段の第1の共振器電極3dと第3段の共振器電極3cとの結合が小さくなるように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aと対向する部分と第3段の共振器電極3cの短絡端部に対向する部分とを接続する部分および最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分と第2段の共振器電極3bの短絡端部に対向する部分とを接続する部分の幅は、インダクタンスが大きくなり過ぎない程度に幅を小さくし、具体的には0.1mm程度にするのが好ましい。
本実施形態のフィルタ装置は、上記接地強化部4aが初段および最終段の第1の共振器電極3a,3d以外の共振器電極3b,3cの短絡端部と対向するとともに短絡端に電気的に接続される構成でない場合においては、図7(a),(b),(e)に示す例のように、接地強化部4aは結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において平面視で第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの外側に分岐して引き出されて内部基準電極9に沿って形成されていることが好ましい。このような構成とすると、平面視で接地強化部4a,4aと第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの重なりが小さくなり、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの干渉を小さくすることができるので、副次的な効果のない優れたフィルタ特性を有するフィルタ装置となる。また、接地強化部4a,4aと内部基準電極9との結合が大きくなるので、フィルタの通過帯域の高域側および低域側の減衰量がさらに増大する。
容易に平面視で接地強化部4a,4aと第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの重なりが生じないようにするには、図7(a),(d),(f)に示す例のように、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aと対向する部分または最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分からそれぞれ対向する第1の共振器電極3aまたは3dの外側に引き出すのがより好ましい。
また、接地強化部4a,4aと内部基準電極9との結合をより大きくするには、接地強化部4a,4aの長さを長くするか、幅を広くしたり、図7(f)に示す例のようにさらに外側に引き出して基準電極対向部4b,4bを設けたりして、接地強化部4a,4aと内部基準電極9とが平面視で重なる(対向する)ようにすればよい。図5に示す例のように内部基準電極9を有する場合は、接地強化部4a,4aに第1の基準電極2a,2aと対向するような基準電極対向部4b,4bを設けてもよい。この基準電極対向部4bは、内部基準電極9または第1の基準電極2a,2aのうちいずれか距離の近い方と主に対向するように設けると、より強い結合が得られるので好ましい。
一方、図1に示す例のように内部基準電極9有さない場合は、接地強化部4a,4aに第1の基準電極2a,2aと対向するような基準電極対向部4bを設けてもよい。この場合、図6に示す例のように、接地強化部4a,4aを結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において分岐して引き出すのではなく、より第1の基準電極2a,2aに近い誘電体層1a・1a間に基準電極対向部4b,4bを設けてもよい。このときの基準電極対向部4b,4bの第1の基準電極2a,2aへの電気的な接続は、第1の基準電極2a,2aに直接接続してもよいし、内部基準電極9に接続することで第1の基準電極2a,2aと電気的に接続してもよい。この場合も内部基準電極9に直接接続してもよいし、結合電極4を介して内部基準電極9に接続してもよい。
すなわち、本実施形態のフィルタ装置は、上記構成において、接地強化部4aは、第1の基準電極2a,2aまたは内部基準電極9と対向する基準電極対向部4bを有することが好ましい。これによって、基準電極対向部4bと第1の基準電極2a,2aまたは内部基準電極9との結合が大きくなり、基準電極対向部9のインピーダンスが低くなるので、結合電極4による初段の第1の共振器電極3aと最終段の第1の共振器電極3dとの結合をより容易に調整(小さく)することができ、フィルタの通過帯域の高域側および低域側の減衰量がさらに増大する。
このような効果をより顕著にするためには、基準電極対向部4b,4bは、第1の基準電極2a,2aまたは内部基準電極9との結合ができるだけ大きくなるような形状および配置とするのがよい。また、基準電極対向部4b,4bは、接地強化部4aの一部であるので、上述したように第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの結合ができるだけ小さくなるような形状および配置とするのがよい。
このようなことから、図7(f)に示す例のように、結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において接地強化部4aを分岐して引き出す場合は、第1の共振器電極3aまたは3dの外側に引き出して面積の大きい基準電極対向部4b,4bを設けるのが好ましい。また、接地強化部4aを、図6に示す例のように、結合電極4から第1の基準電極2aの方へ延びる貫通導体により引き出して、誘電体層1a・1a間に基準電極対向部4b,4bを設ける場合は、基準電極対向部4b,4bが、平面視で初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dより内側へ出ないようにするのがよい。基準電極対向部4b,4bと初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dとの間には結合電極4が存在することから、基準電極対向部4b,4bと初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dとの結合は小さいものとなるので、平面視で初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dより外側にはみ出すようにして、面積の大きい基準電極対向部4bを設けるのが好ましい。結合電極4と第1の共振器電極3a,3b,3c,3dとの結合による影響をできるだけ抑えるには、基準電極対向部4bは、結合電極4の初段の第1の共振器電極3aまたは最終段の第1の共振器電極3dと対向する部分の幅および長さ以下で、平面視したときにこの部分からはみ出さないようにするのが好ましい。
また、誘電体層1aの比誘電率等にもよるけれども、結合電極4と第1の基準電極2a,2aとの間に基準電極対向部4bを設ける方が、結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間において第1の共振器電極3a〜3dの外側に基準電極対向部4bを設ける場合と比較して、通常、配線長を短くすることができるので、この配線による不要なインダクタンスを減らすことができるので好ましい。
図1〜図7に示す例では、いずれも接地強化部4a,4aは結合電極4の両端部にそれぞれ設けられているが、少なくとも1つあれば上述したような効果は得られる。結合電極4の入出力の電流のバランス(インピーダンスのバランス)を考えると、初段の第1の共振器電極3aと結合電極4の一端との結合量と、最終段の第1の共振器電極3dと結合電極4の他端との結合量とを同程度にするのがよいので、結合電極4の一端および他端からそれぞれ同じ距離の位置にそれぞれ同様の接地強化部4aを設けるのが好ましい。接地強化部4aの数を増やすとその効果がより高まるが、結合電極4による初段の第1の共振器電極3aと最終段の第1の共振器電極3dとの結合が小さくなり過ぎると、通過帯域の低域側および高域側の減衰極の位置(周波数)がそれぞれ低域側と高域側へシフトしてしまうので結合電極4の一端部および他端部にそれぞれ1つずつ設けるのがより好ましい。
また、本実施形態のフィルタ装置は、上記構成において、図4および図5に示す例のように、第1の基準電極2aと第1の共振器電極3a〜3dとの間において誘電体層1aを挟んで第1の基準電極2aと対向するとともに、第1の共振器電極3a〜3dのそれぞれの開放端にそれぞれ電気的に接続された複数の容量電極7を有することが好ましい。これにより、容量電極7と第1の基準電極2aとの距離は第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2aとの距離より短く、これにより第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2aとの間の結合がより強くなり、第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2aとのC結合が強化されるので、各第1の共振器電極3a〜3dの長さを短縮することができ、より小型なフィルタ装置を提供することができる。
また、本実施形態のフィルタ装置は、上記構成において、図5に示す例のように、容量電極7の一部が誘電体層1aを挟んで内部基準電極9と対向するように配置されていることが好ましい。図9は図5に示すフィルタ装置のA−A断面の一例を示す断面図である。内部基準電極9は、第1の共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a・1a間と同じ誘電体層1a・1a間に形成されており、容量電極7を内部基準電極9と結合させるように対向させると、容量電極7を第1の基準電極2aのみと結合させるように対向させた場合(図9に破線で示した容量電極7aの場合)と比較して、第1の共振器電極3a〜3dと容量電極7との電気的接続を行なう貫通導体等の配線長を短くすることができるので、この配線による不要なインダクタンスを減らすことができ、インダクタンスによる副次的な共振のない優れたフィルタ特性を有するフィルタ装置とすることができる。また、第1の共振器電極3a〜3dと容量電極7との電気的接続を行なう貫通導体等の配線長が同じ場合であっても、容量電極7と内部基準電極9との間の静電容量が加わるので、第1の共振器電極3a〜3dの開放端と接地電位との間の静電容量がさらに増加し、第1の共振器電極3a〜3dの長さを短縮することができるので、より小型のバンドパスフィルタとしてのフィルタ装置を得ることができる。
容量電極7と第1の共振器電極3a〜3dとは、貫通導体で電気的に接続される。容量電極7と第1の共振器電極3a〜3dとが平面視で重なると、その重なった面積分だけ第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2aとの結合が小さくなってしまい、また、例えば第1の共振器電極3aに接続された容量電極7と他の共振器電極3b〜3dとが平面視で重なると、初段の第1の共振器電極3aと他の共振器電極3b〜3dとの結合量が変わってしまうので、図4および図5に示す例のように、容量電極7を長方形や楕円形のような細長い形状とし、第1の共振器電極3a〜3dの開放端と容量電極7の一方端とを接続し、容量電極7の他方端を第1の共振器電極3a〜3dの開放端を延長する方向に向けるとよい。
容量電極7は、図4および図5に示す例では、第1の共振器電極3a〜3dに対して誘電体層1aを挟んで下方にそれぞれ1つずつ設けられているが、第1の共振器電極3a〜3dの上下に設けてもよいし、第1の共振器電極3a〜3dの上方にそれぞれ1つずつあるいは上方または下方のいずれかにそれぞれ1つずつ設けてもよい。
入力端子5および出力端子6は、図1、図2および図4に示す例のように、貫通導体等の配線導体により電気的に接続してもよいが、誘電体層1aを挟んで第1の共振器電極3a・3dと対向するように配置し、それぞれ第1の共振器電極3a・3dと電磁界結合するようにしてもよい。この場合、図3および図5に示す例のように、入力端子5は、初段の第1の共振器電極3aに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで初段の第1の共振器電極3aと対向するように初段の第1の共振器電極3aよりも第2の端部側に配置されて初段の第1の共振器電極3aと電磁界結合する内部入力端子5bと、積層体1の外表面に形成され、内部入力端子5bに初段の第1の共振器電極3aの開放端側で接続された外部入力端子5aとを具備し、出力端子6は、最終段の第1の共振器電極3dに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで共振器電極3の最終段3dと対向するように最終段の第1の共振器電極3dよりも第2の端部側に配置されて最終段の第1の共振器電極3dと電磁界結合する内部出力端子6bと、積層体1の外表面に形成され、内部出力端子6bに最終段の第1の共振器電極3dの開放端側で接続された外部出力端子6aとを具備しているのが好ましい。
このような構成により、入力端子5と初段の第1の共振器電極3aとの間および出力端子6と最終段の第1の共振器電極3dとの間において、磁界による結合と電界による結合とが加算されて強い結合が生じるので、従来の1/4波長共振器を利用したフィルタで実現可能だった帯域より広い通過帯域であっても、それぞれの共振モードの共振周波数の間に位置する周波数における挿入損失が大きく増加することのない、広い通過帯域の全域に渡って平坦で低損失な通過特性を有するフィルタ装置を提供することができる。この結果、広い通過帯域を有し急峻な減衰特性を有する、例えばUWB用途のバンドパスフィルタに適したフィルタ装置となる。
内部入力端子5bと外部入力端子5aとの接続、および内部出力端子6bと外部出力端子6aとの接続は、図3および図5に示す例のように、誘電体層1aを貫通する貫通導体で行なえばよい。また、内部入力端子5b,外部入力端子5a,内部出力端子6bおよび外部出力端子6aをそれぞれ誘電体層1aの端部まで延ばして、端面導体で接続することもできる。第1の共振器電極3a〜3dと第1の基準電極2a・2aとの接続を端面導体で行なう場合は、端面導体の形成が導体ペーストの印刷等により他の電極と同時に行なえるので、製造上で都合がよい。
図10は図1と同様の分解斜視図であり、図10において、8は減衰共振器電極である。本実施形態のフィルタ装置は、図10に示す例のように、上記各構成において、第1の共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d間以外の積層体1内において第1の共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するように配置され、一方端が短絡端で他方端が開放端である、少なくとも1つの減衰共振器電極8を有することが好ましい。減衰共振器電極8により第1の共振器電極3a〜3dによる減衰極と通過帯域との間に反作用共振器(ノッチフィルタ)として機能する減衰極を形成することができるので、所望の通過帯域を有し、かつ特定の周波数における不要信号を除去した、より急峻な減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
減衰共振器電極8は、第1の共振器電極3a〜3d間以外の積層体1内、例えば図10に示すように、第1の共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a・1a間とは異なる誘電体層1a・1a間において第1の共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するように配置され、一方端が第1の基準電極2a・2aに接続された短絡端で、他方端が他とは接続されていない開放端である。減衰共振器電極8と第1の基準電極2a・2aとの接続は、図10に示す例のように、減衰共振器電極8の短絡端を誘電体層1aの端部まで延ばし、誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体(図示せず)により接続してもよいし、貫通導体により接続してもよい。
減衰共振器電極8は第1の共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するが、その結合量の調整により所望の減衰特性を得ることができる。例えば、所望の結合量が得られていない場合は、通過帯域の外側でカットオフ周波数の極めて近傍の帯域で急峻な減衰特性を得られても、減衰共振器電極8による減衰極の高域側(減衰極間)で減衰特性の跳ね上がりが生じるのに対し、所望の結合量が得られている場合は、このような減衰特性の跳ね上がりは生じず、急峻で跳ね上がりのない減衰特性を得ることができる。
減衰共振器電極8の数は、共振器電極3の形成領域の中心に対して対称となるようにペア(一対)で設置するのが好ましい。このようにすると、フィルタ装置を作製する際に位置ずれが発生しても、減衰共振器電極8と共振器電極3との結合が、一方が強まる方向に変化した場合であっても、他方は弱まる方向に変化するため、全体の結合量は大きく変化しないので設計値とのずれの小さいものを作るのが容易となる。
また、本実施形態のフィルタ装置は、上記構成において、減衰共振器電極8は開放端が複数に分岐した形状であり、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さがそれぞれ異なることが好ましい。このことから、減衰共振器電極8の短絡端から分岐した開放端の各先端までの電気長に応じた複数の減衰極を形成することができるので、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さを調整して複数の減衰極の位置を調整することにより、容易により急峻な減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
減衰共振器電極8の形状は、第1の共振器電極3a〜3dとの結合量に応じてその形状を調整すればよいが、全体としては第1の共振器電極3a〜3dに沿った帯状のもので開放端が複数に分岐しているものが好ましい。
減衰共振器電極8の開放端の形状は、複数に分岐し、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さがそれぞれ異なるものであれば特に制限はなく、分岐点から先端までが曲線状(この例ではいわゆる曲線的なY字状)でもよく、短絡端から開放端までの本体部も同様に曲線状でもよい。また、分岐の数も2つだけでなく、3つに分岐してもよいし、あるいはそれ以上の数に分岐していてもよい。短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さや分岐の数は、求められるフィルタ特性により必要な減衰極の周波数や減衰極の数に応じて設定すればよい。
第1の共振器電極3a〜3dに対する、結合電極4、入力端子5、出力端子6、容量電極7、および減衰共振器電極8の平面視の配置やそれぞれとの距離(間に介在する誘電体層1aの厚みまたは層数)は、特に制限はなく、所望の減衰特性となるように各電極と第1の共振器電極3a〜3dとの結合を調整するように設定すればよい。
図11は図1と同様の分解斜視図であり、図11において、3e〜3hは第2の共振器電極、3eは初段の第2の共振器電極、3hは最終段の第2の共振器電極である。本実施形態のフィルタ装置は、図11に示すように、積層体1内における第1の共振器電極3a〜3dよりも第2の端部側であって誘電体層1aを介して配置され、互いに電磁界結合するように平面視で横並びに整列され、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である複数の第2の共振器電極3e〜3hをさらに備えている。このような第2の共振器電極3e〜3hを備えていることにより、複数の第1の共振器電極3a〜3dおよび複数の第2の共振器電極3e〜3hによって形成される非常に広い2つの通過帯域の全体に渡って、それぞれの共振モードの共振周波数の間に位置する周波数においても挿入損失の増加が少ない、平坦で低損失な通過特性を得ることができる。
なお、第2の共振器電極3e〜3hについても、第1の共振器電極3a〜3dと同様に、第2の共振器電極3e〜3hに対する、結合電極4、入力端子5、出力端子6、容量電極7、および減衰共振器電極8の平面視の配置やそれぞれとの距離(間に介在する誘電体層1aの厚みまたは層数)は、特に制限はなく、所望の減衰特性となるように各電極と第2の共振器電極3e〜3hとの結合を調整するように設定すればよい。
また、本実施形態のフィルタ装置は、初段の第1の共振器電極3a及び初段の第2の共振器電極3eに信号を入力するための入力端子5と最終段の第1の共振器電極3d及び最終段の第2の共振器電極3hから信号を出力するための出力端子6とを具備している。
入力端子5は、初段の第1の共振器電極3aに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで初段の第1の共振器電極3a及び第2の共振器電極3eと対向するように第1の共振器電極3a〜3dよりも第2の端部側であって第2の共振器電極3e〜3hよりも第1の端部側に配置されて初段の第1の共振器電極3a及び第2の共振器電極3eと電磁界結合する内部入力端子5aと、積層体1の外表面に形成され、内部入力端子5aに初段の第1の共振器電極3aの開放端側で接続された外部入力端子5bとを具備している。
出力端子6は、最終段の第1の共振器電極3dに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで最終段の第1の共振器電極3d及び第2の共振器電極3hと対向するように第1の共振器電極3a〜3dよりも第2の端部側であって第2の共振器電極3e〜3hよりも第1の端部側に配置されて最終段の前記第1の共振器電極3d及び第2の共振器電極3hと電磁界結合する内部出力端子6aと、積層体1の外表面に形成され、内部出力端子6aに最終段の第1の共振器電極3dの開放端側で接続された外部出力端子6bとを具備している。
このような入力端子5及び出力端子6を備えていることにより、内部入力端子5aが初段の第1の共振器電極3aおよび初段の第2の共振器電極3eとブロードサイド結合するとともにインターデジタル型に結合するため、ブロードサイド結合によって強く電磁界結合するとともに、インターデジタル型の結合によって電界による結合と磁界による結合とが加算されてより強く電磁界結合するので、内部入力端子5aと初段の第1の共振器電極3aおよび初段の第2の共振器電極3eとを非常に強く結合させることができる。
誘電体層1aとしては、例えば、アルミナ,ムライト,窒化アルミニウム,BaO−TiO2系,CaO−TiO2系,MgO−TiO2系およびガラスセラミックス等のセラミック材料、あるいは四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE),四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂;ETFE),四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルテロアルキルビニルエーテル共重合樹脂;PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂,ポリイミド等の有機樹脂材料が用いられる。これらの材料による誘電体層1aの形状や寸法(厚みや幅,長さ)は、使用される周波数や用途等に応じて設定される。セラミック材料の場合は、より高周波の信号を伝送することが可能な、Au,Ag,Cu等の低抵抗金属からなる導体材料と同時焼成が可能な低温焼成セラミックスが好ましい。
第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,結合電極4,入力端子5,出力端子6,容量電極7,減衰共振器電極8は、誘電体層1aがセラミック材料からなる場合は、W,Mo,Mo−Mn,Au,Ag,Cu等の金属を主成分とするメタライズ層により形成することができる。また、誘電体層1aが樹脂系材料からなる場合は、厚膜印刷法,各種の薄膜形成方法,めっき法あるいは箔転写法等により形成した金属層や、このような金属層上にめっき層を形成したもの、例えばCu層,Cr−Cu合金層,Cr−Cu合金層上にNiめっき層およびAuめっき層を被着させたもの,TaN層上にNi−Cr合金層およびAuめっき層を被着させたもの,Ti層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの,Ni−Cr合金層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの等が挙げられる。これらの厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
誘電体層1a,第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,結合電極4,入力端子5,出力端子6,容量電極7,減衰共振器電極8の形成は、従来周知の方法を用いればよい。例えば誘電体層1aがガラスセラミックスから成る場合であれば、まずそれら誘電体層1aとなるガラスセラミックスのグリーンシートを準備し、グリーンシート上にスクリーン印刷法によりAg等の導体ペーストを所定形状で印刷塗布して第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,結合電極4,入力端子5,出力端子6,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターンを形成する。次に、これらの電極パターンが形成されたグリーンシートを重ねて圧着するなどして積層体を作製し、この積層体を850〜1000℃で焼成することにより形成する。
その後、外表面に露出している導体層上には、NiめっきおよびAuめっき等のめっき皮膜を形成する。誘電体層1aが有機樹脂材料から成る場合であれば、例えば有機樹脂シート上に第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,接地強化部4a,入力端子5,出力端子6,結合電極4,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターン形状に加工したCu箔を転写し、Cu箔が転写された有機樹脂シートを積層して接着剤で接着することにより形成する。
第1の基準電極2aと第1の共振器電極3a〜3dの短絡端とを接続し、第2の基準電極2bと第2の共振器電極3e〜3hの短絡端とを接続する接続導体は、それぞれ、それらの間に位置する誘電体層1a内に形成された貫通導体または誘電体層1aの端面に形成された端面導体の形態で形成することにより、積層されたそれら誘電体層1aの内部に形成するフィルタ装置の設計自由度が向上するとともに、より小型で高性能なフィルタ装置とすることができる。
このような接続導体となる貫通導体や側面導体は、誘電体層1aがガラスセラミックス等のセラミックスから成る場合には、貫通導体は、例えば前述の製造方法において第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,結合電極4,入力端子5,出力端子6,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターンを形成する前に、グリーンシートに金型加工やレーザー加工によりあらかじめ形成しておいた貫通孔内に同様の導体ペーストを印刷法等により充填することで形成することができ、端面導体は、例えば第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンの短絡端を端面に露出させたグリーンシート積層体を形成した後、同様の導体ペーストをグリーンシート積層体の側面に印刷することにより形成することができる。また、端面導体は、グリーンシートに第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの列の幅程度の貫通孔を形成しておき、第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンの短絡端をこの貫通孔に接するように形成した後、グリーンシートの積層前または積層後に導体ペーストを貫通孔の内面に印刷し、または貫通穴に充填して、貫通孔の部分で切断することによっても形成することができる。
誘電体層1aが樹脂系材料から成る場合も同様に、グリーンシートに代えて有機樹脂シートを用い、導体ペーストの印刷やめっきにより貫通孔内に貫通導体を形成したり、薄膜法等により側面導体を形成したりすればよい。第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンの短絡端を積層体の側面に露出させるには、第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンの短絡端がグリーンシート(あるいは有機樹脂シート)の端部に位置するように形成したり、第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンを形成したグリーンシート(有機樹脂シート)を積層した後に、第1の共振器電極3a〜3d及び第2の共振器電極3e〜3hの電極パターンの短絡端が側面に露出するように積層体を切断したりすればよい。
具体的には、UWBのローバンド規格に用いられるような、通過帯域の中心周波数が3.9GHzのバンドパスフィルタとしてのフィルタ装置は、図3に示すような形態であれば、例えば誘電体層1aとして比誘電率が9.4のガラスセラミックスを用い、第1の基準電極2a,第2の基準電極2b,内部基準電極9,第1の共振器電極3a〜3d,第2の共振器電極3e〜3h,結合電極4,入力端子5,出力端子6,容量電極7および貫通導体にAgメタライズを用いることにより得られる。比誘電率が9.4のガラスセラミックスは、例えば、ガラス成分としてPbO,B2O3,SiO2,Al2O3,ZnOおよびアルカリ土類金属酸化物を主成分とする結晶化ガラスが50質量%とフィラー成分としてアルミナが50質量%とからなるものを用いればよい。
このとき、誘電体層1aは、厚みを上から順に、400μm,75μm,75μm,350μmとする。第1の基準電極2a及び第2の基準電極2bは、寸法を3.35mm×5.0mmとし、内部基準電極9は外寸を3.35mm×5.0mmで内寸(開口の寸法)を2.945mm×3.5mmとする。この開口内に寸法が0.4mm×3.35mmの第1の共振器電極3a〜3dを0.155mm,0.135mm,0.155mmの間隔で横並びに整列し、各短絡端を内部基準電極9に接続して、各開放端と内部基準電極9との間隔を0.15mm、第1の共振器電極3aおよび3dと内部基準電極9との間隔を0.45mmとなるように配置する。内部基準電極9と積層体1の上面に位置する第1の基準電極2a及び内部基準電極9と積層体1の下面に位置する第2の基準電極2bとは、外周部に配列した直径0.1mmの貫通導体で接続する。
入力端子5は、0.3mm×3.35mmの内部入力端子5bを初段の第1の共振器電極3aの開放端側と平面視で0.3mm×3.35mmの範囲で重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部入力端子5aと直径0.1mmの貫通導体で接続する。出力端子6も同様に、0.3mm×3.35mmの内部出力端子6bを最終段の第1の共振器電極3dの開放端側と平面視で0.3mm×3.35mm重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部出力端子6aと直径0.1mmの貫通導体で接続する。結合電極4は、2つの0.1mm×2.0mmの対向部を1.545mm×0.1mmの接続部で接続したクランク形とし、2つの対向部がそれぞれ初段の第1の共振器電極3aおよび最終段の第1の共振器電極3dの短絡端側と平面視で0.1mm×1.8mmの範囲で重なるように配置し、内部基準電極9と重なる部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により内部基準電極9に接続する。
接地強化部4a,4aは、結合電極4の両端部において、0.1mm×1.45mmの導体層を結合電極4から第1の共振器電極3a,3dの外側に0.31mm離間させて結合電極4の対向部と端部を揃えて平行に配置し、結合電極4の一端および他端からそれぞれ1.35mmの位置で0.31mm×0.1mmの導体層で接続したL字形として、同様に内部基準電極9と重なる部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により内部基準電極9と接続する。
容量電極7は0.2mm×0.4mmおよび0.4mm×0.6mmの2つの矩形を接続した凸型で、内部基準電極9と0.4mm×0.6mmの範囲で重なり、第1の共振器電極3a,3b,3c,3dの開放端部と平面視で0.2mm×0.25mmの範囲で重なるように配置し、重なる部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により接続する。
このような実施形態のフィルタ装置のフィルタ特性は、図12の線図に実線の特性曲線で示すようなものとなる(実施例1)。また、このような実施形態のフィルタ装置によるフィルタ特性に対して、結合電極4が一端と他端との間で分岐して接地してはいないフィルタ装置(比較例)において得られるフィルタ特性は、図12に破線の特性曲線で示すようなものとなる。図12に示す線図において、縦軸は挿入損失(単位:dB)を、横軸は周波数(単位:GHz)を示す。
図12に示すフィルタ特性から、本実施形態のフィルタ装置のフィルタ特性は、通過帯域より高周波側および低域側の減衰量が大きい減衰特性を有することがわかる。
実施例1のフィルタ装置に対して、接地強化部4a,4aを、図8(b)に示す例のような形状とした以外は同じにした他の例(実施例2)のフィルタ特性は、図12と同様の図13の線図に実線の特性曲線で示すようなものとなる。破線の特性曲線は図12と同様に比較例のフィルタ特性を示す。実施例2のフィルタ装置は、具体的には、実施例1のフィルタに対して、接地強化部4aを、結合電極4の両端部において、0.1mm×1.45mmの導体層を結合電極4から第1の共振器電極3a,3dの内側に0.99mm離間させて、幅方向の中心を共振器電極3b,3cと揃えるとともに端部を結合電極4の対向部と揃えて平行に配置し、結合電極4の一端および他端からそれぞれ1.35mmの位置で0.99mm×0.1mmの導体層で接続したL字形とした。
図13に示すフィルタ特性から、実施例2のフィルタ装置のフィルタ特性は、実施例1のフィルタ装置のフィルタ特性と比較して、通過帯域の低域側および高域側の減衰極においては減衰極の位置(周波数)が僅かに低域側および高域側に調整されて減衰極の減衰量が大きくなるとともに、通過帯域の高域側においては最も高域側の減衰極が通過帯域側へシフトして2つの減衰極が同じ位置となり、位相が反転することで1つの大きな減衰極を形成することとなり、これにより通過帯域の低域側および高域側の周波数帯の減衰量がさらに増大していることがわかる。
本実施形態のフィルタ装置は、結合電極4が一端と他端との間で分岐しているとともに、第1の基準電極2aに電気的に接続される接地強化部4aを有している。これにより、結合電極4の分岐点から接地側(第1の基準電極2a)への電流を大きく増大させることができるため、フィルタの通過帯域により近い位置(周波数)に減衰極を形成しつつ、低域側および高域側の減衰極よりさらに低域側および高域側の周波数帯の減衰量が増大した優れた減衰特性を有するものであることがわかる。そして、接地強化部4a,4aが、初段および最終段の第1の共振器電極3a,3d以外の共振器電極3b,3cの短絡端部と対向するとともに短絡端に電気的に接続されているときには、初段または最終段の第1の共振器電極3a,3dと初段および最終段の共振器電極以外の第1の共振器電極3a,3dとの結合を強めることができるので、フィルタの通過帯域の低域側および高域側の減衰極の減衰量がさらに増大するとともに、通過帯域の高域側の減衰極よりさらに高域側に減衰極を形成することにより、通過帯域の低域側および高域側の周波数帯の減衰量がさらに増大した優れた減衰特性を有するものであることがわかる。
なお、従来のフィルタ装置は、比較例に対してさらに容量電極7を有さない構造である。このような従来のフィルタ装置において、本実施形態のフィルタ装置(および比較例のフィルタ装置)と同様の周波数に減衰極を有するものとするには、第1の共振器電極3a〜3dを長くしなければならず、フィルタ装置の大きさが大きくなってしまうばかりでなく、減衰極よりさらに高周波側に減衰特性の跳ね上がりがあり、無線LANで使用する帯域に対する減衰帯域において十分に減衰していないフィルタ特性となってしまう。
次に、本発明の無線モジュール及び無線通信機器について以下に説明する。図14は、本発明の無線モジュール及び無線通信機器における実施形態の一例を示す断面図である。図14において、10はフィルタ装置、11は集積回路、12はバンプ、13はプリント基板、14はRF部、15はベースバンド部、16はアンテナである。
図14に示すように、本実施形態の無線通信モジュールは、上記いずれかに記載のフィルタ装置10と、フィルタ装置10の第1の端面側(図14においては上面側)に配設され、バンプ12を介してフィルタ装置10と電気的に接続された集積回路11と、フィルタ装置10の第2の端面側(図14においては下面側)に配設され、バンプ12を介してフィルタ装置10と電気的に接続されたプリント基板13とを備えている。
また、本実施形態においては、フィルタ装置10と、フィルタ装置10の第1の端面側に配設され、バンプ12を介してフィルタ装置10と電気的に接続された集積回路11とを備えた部分がRF部14をなしており、本実施形態の無線通信機器は、このRF部14と、RF部14に電気的に接続されたプリント基板13と、プリント基板13を介してRF部14に電気的に接続されたベースバンド部15と、プリント基板13を介してRF部14に電気的に接続されたアンテナ16とを備えている。
本実施形態の無線通信モジュールおよび無線通信機器によれば、従来のフィルタ装置と比較して、フィルタの通過帯域により近い周波数に減衰極を形成しつつ、低域側および高域側の減衰極よりさらに低域側および高域側の周波数帯の減衰量が増大した優れた減衰特性を有する上記いずれかに記載のフィルタ装置を用いている。そのため、フィルタ装置を通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるとともにノイズも減少する。これにより、受信感度が向上するとともに送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるので増幅回路における消費電力が少なくなる。結果として受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域をカバーすることができるので、小型で製造コストが低い無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。
なお、本実施形態においては、集積回路11が、フィルタ装置10の第1の端面側に配設されるとともにバンプ12を介してフィルタ装置10と電気的に接続している。また、プリント基板13が、フィルタ装置10の第2の端面側に配設されるとともにバンプ12を介してフィルタ装置10と電気的に接続されている。ここで、フィルタ装置10を内蔵した基板を用いて、集積回路11を、基体の第1の端面側に配設するとともにバンプ12を介して基体と電気的に接続し、プリント基板13を、基体の第2の端面側に配設するとともにバンプ12を介して基体と電気的に接続してもよい。