JP2009138553A - 内燃機関の点火時期制御装置および点火時期制御方法 - Google Patents

内燃機関の点火時期制御装置および点火時期制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノイズの影響を小さくすることにより点火時期の制御性を向上する。
【解決手段】エンジンECUの強度検出部602は、気筒毎に補正された強度を、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて検出する。点火時期制御部614は、強度を合計した90度積算値lpkknkを用いて算出されるノック強度Nと判定値VJとを比較した結果に応じて点火時期を制御する。判定値設定部700のvkd算出部702は、複数の気筒において検出された強度に応じたノック判定レベルvkdを算出する。カウント部730は、ノック判定レベルvkd以上の90度積算値lpkknkの頻度を、ノック占有率KCとしてカウントする。判定値補正部732は、ノック占有率KCに応じて判定値VJを補正する。
【選択図】図9

Description

本発明は、内燃機関の点火時期制御装置および点火時期制御方法に関し、特に、内燃機関の振動の強度と判定値とを比較した結果に応じて点火時期を制御する技術に関する。
従来より、ノッキング(ノック)の有無を判定する様々な方法が提案されている。たとえば、内燃機関より検出される振動の強度が、ノック判定値より大きいか否かによりノッキングの発生を判定する技術がある。しかしながら、内燃機関において検出される振動の強度は、内燃機関およびノックセンサなどの経年変化により変化し得る。また、内燃機関において検出される振動の強度は、内燃機関の個体毎に異なり得る。そのため、ノッキングの有無を精度よく判定するには、内燃機関において実際に検出される強度に応じてノック判定値を補正することが望ましい。
特開2007−255195号公報(特許文献1)は、内燃機関で発生する振動の強度を複数回検出するための検出部と、検出部により検出された各強度に応じて、ノッキングに起因する振動の強度に関するノック強度を算出するための第1の算出部と、ノック強度と予め定められた第1の判定値とを比較した結果に基づいて、内燃機関の点火時期を制御するための制御部と、検出部により検出された強度の中央値および標準偏差を算出するための第2の算出部と、標準偏差および予め定められた係数の積を中央値に加算して算出される第2の判定値が第1の判定値よりも大きい場合、制御部により点火時期が遅角される度合が大きくなるように、第1の判定値を補正するための第2の補正部とを含む、内燃機関の点火時期制御装置を開示する。
この公報に記載の点火時期制御装置によると、内燃機関で発生する振動の強度が複数回検出される。検出された各強度に応じて、ノッキングに起因する振動の強度に関するノック強度が算出される。このノック強度と予め定められた判定値とを比較した結果に基づいて、内燃機関の点火時期が制御される。たとえば、ノック強度が判定値よりも大きいと点火時期が遅角され、ノック強度が判定値よりも小さいと点火時期が進角される。標準偏差および予め定められた係数の積を中央値に加算して算出される第2の判定値が第1の判定値よりも大きい場合、制御部により点火時期が遅角される度合が大きくなるように、第1の判定値が補正される。これにより、ノッキングが頻発したといえる状態において、振動の強度と比較される判定値が、内燃機関で発生する振動に対して過大になることを抑制することができる。そのため、点火時期の遅角を行ない易くすることができる。その結果、ノッキングの発生を抑制することができる。
特開2007−255195号公報
ところで、内燃機関においては、吸気バルブもしくは排気バルブが閉じる際に発生する振動、燃料ポンプ(特に、筒内直接噴射インジェクタの高圧燃料ポンプ)による振動などのノイズが発生する。複数の気筒が設けられた内燃機関では、ノイズが重畳する気筒とノイズが重畳しない気筒とが混在し得る。したがって、検出される強度には、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度とが含まれ得る。そのため、検出された強度の中央値および標準偏差に基づいて判定値を設定した場合、判定値がノイズの影響を受けて誤って設定され得る。この場合、点火時期の制御性が悪化し得る。しかしながら、特開2007−255195号公報には、このような課題に関する開示も示唆もない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、点火時期の制御性を向上することができる内燃機関の点火時期制御装置および点火時期制御方法を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置は、複数の気筒が設けられた内燃機関の点火時期制御装置である。この点火時期制御装置は、気筒毎に補正された内燃機関の振動の強度を、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて検出するための検出手段と、検出された強度および第1の判定値を比較した結果に応じて内燃機関の点火時期を制御するための制御手段と、複数の気筒において検出された強度に応じた第2の判定値を設定するための設定手段と、第2の判定値以上の強度が検出された頻度をカウントするための手段と、第2の判定値以上の強度が検出された頻度に応じて第1の判定値を補正するための補正手段とを備える。第8の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第1の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて内燃機関の振動の強度が検出される。内燃機関の振動の強度および第1の判定値を比較した結果に応じて内燃機関の点火時期が制御される。第1の判定値は、第2の判定値以上の強度が検出された頻度に応じて補正される。第2の判定値は、複数の気筒において検出された強度に応じて設定される。気筒毎に補正された内燃機関の振動の強度が検出される。たとえば、ノイズが重畳する気筒の強度が小さくなるように補正されるとともに、ノイズが重畳しない気筒の強度が大きくなるように補正される。これにより、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度との差を小さくすることができる。そのため、第2の判定値に与えるノイズの影響を小さくすることができる。このような第2の判定値に基づいて、点火時期を制御するために用いられる第1の判定値が補正される。その結果、点火時期の制御性を向上することができる内燃機関の点火時期制御装置もしくは点火時期制御方法を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置においては、第1の発明の構成に加え、検出手段は、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において小さくなるように補正された内燃機関の振動の強度を検出するための手段を含む。第9の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第2の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において内燃機関の振動の強度が小さくなるように補正される。これにより、たとえば、ノイズが重畳する気筒の強度が小さくなるように補正することができる。そのため、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度との差を小さくすることができる。その結果、第1の判定値を補正するために用いられる第2の判定値に与えるノイズの影響を小さくすることができる。
第3の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置においては、第1の発明の構成に加え、検出手段は、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において大きくなるように補正された内燃機関の振動の強度を検出するための手段を含む。第10の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第3の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において内燃機関の振動の強度が大きくなるように補正される。これにより、たとえば、ノイズが重畳しない気筒の強度が大きくなるように補正することができる。そのため、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度との差を小さくすることができる。その結果、第1の判定値を補正するために用いられる第2の判定値に与えるノイズの影響を小さくすることができる。
第4の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加え、制御手段は、検出された強度が第1の判定値より大きい場合、点火時期を遅角するための手段を含む。補正手段は、第2の判定値以上の強度が検出された頻度が予め定められた頻度よりも大きい場合に第1の判定値が小さくなるように補正するための手段を含む。第11の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第4の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、検出された強度が第1の判定値より大きい場合、点火時期が遅角される。これにより、ノッキングが発生した場合に、点火時期を遅角することができる。第2の判定値以上の強度が検出された頻度が予め定められた頻度よりも大きい場合、第1の判定値が小さくされる。これにより、ノッキングが頻発した場合に、点火時期を遅角し易くすることができる。そのため、ノッキングが発生する頻度を小さくすることができる。
第5の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加え、複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備える。設定手段は、零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値を設定するための手段を含む。第12の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第5の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、複数の気筒において検出された強度の平均値が算出される。平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値および検出された強度の標準偏差を表わす第2の値が算出される。零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値が設定される。この第2の判定値を用いる内燃機関の点火時期制御装置において、点火時期の制御性を向上することができる。
第6の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加え、複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備える。設定手段は、零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値を設定するための手段と、平均値が大きいほどより小さい補正量で第2の判定値を補正するための手段とを含む。第13の発明に係る内燃機関の点火時期制御方法は、第6の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置と同様の要件を備える。
この構成によると、複数の気筒において検出された強度の平均値、検出された強度の中央値を表わす第1の値および検出された強度の標準偏差を表わす第2の値が算出される。零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値が設定される。第2の判定値は、平均値が大きいほどより小さい補正量で補正される。この第2の判定値を用いる内燃機関の点火時期制御装置において、点火時期の制御性を向上することができる。
第7の発明に係る内燃機関の点火時期制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加え、複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、検出された強度が大きいほど大きくなるとともに平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を制限せずに更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、検出された強度が大きいほど大きくなるとともに平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を予め定められる制限値以下に制限して更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備える。設定手段は、零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値を設定するための手段を含む。
この構成によると、複数の気筒において検出された強度の平均値が算出される。平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値および検出された強度の標準偏差を表わす第2の値が算出される。零より大きい係数と第2の値との積を第1の値に加算することにより第2の判定値が設定される。第1の値の更新量は、検出された強度が大きいほど大きくなるように定められる。第1の値の更新量は制限されない。第2の値の更新量は、検出された強度が大きいほど大きくなるように定められる。第2の値の更新量は予め定められる制限値以下に制限される。これにより、検出された強度に第1の値を介して速やかに追従するとともに、第2の値による変動量が制限された第2の判定値を得ることができる。そのため、内燃機関で実際に発生する強度に精度よく対応した第2の判定値を得ることができる。このような第2の判定値に基づいて、点火時期を制御するために用いられる第1の判定値が補正される。その結果、点火時期の制御性を向上することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る点火時期制御装置を搭載した車両のエンジン100について説明する。このエンジン100には複数の気筒が設けられる。本実施の形態に係る点火時期制御装置は、たとえばエンジンECU(Electronic Control Unit)200が実行するプログラムにより実現される。なお、エンジンECU200により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
エンジン100は、エアクリーナ102から吸入された空気とインジェクタ104から噴射される燃料との混合気を、燃焼室内で点火プラグ106により点火して燃焼させる内燃機関である。
点火時期は、エンジン100の運転状態に応じて設定される。以下、エンジン100の運転状態に応じて設定される点火時期を基本点火時期とも記載する。ノッキングが発生した場合などには、点火時期は基本点火時期から遅角される。
混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン108が押し下げられ、クランクシャフト110が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。エンジン100に吸入される空気の量は、スロットルバルブ114により調整される。吸気バルブ116が開いた際に燃焼室に混合気が導入される。排気バルブ118が開いた際に燃焼室から排気ガスが排出される。
エンジン100は、エンジンECU200により制御される。エンジンECU200には、ノックセンサ300と、水温センサ302と、タイミングロータ304に対向して設けられたクランクポジションセンサ306と、スロットル開度センサ308と、車速センサ310と、イグニッションスイッチ312と、エアフローメータ314とが接続されている。
ノックセンサ300は、エンジン100のシリンダブロックに設けられる。ノックセンサ300は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ300は、エンジン100の振動により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ300は、電圧を表わす信号をエンジンECU200に送信する。水温センサ302は、エンジン100のウォータージャケット内の冷却水の温度を検出し、検出結果を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。
タイミングロータ304は、クランクシャフト110に設けられており、クランクシャフト110と共に回転する。タイミングロータ304の外周には、予め定められた間隔で複数の突起が設けられている。クランクポジションセンサ306は、タイミングロータ304の突起に対向して設けられている。タイミングロータ304が回転すると、タイミングロータ304の突起と、クランクポジションセンサ306とのエアギャップが変化するため、クランクポジションセンサ306のコイル部を通過する磁束が増減し、コイル部に起電力が発生する。クランクポジションセンサ306は、起電力を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角およびクランクシャフト110の回転数を検出する。
スロットル開度センサ308は、スロットル開度を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。車速センサ310は、車輪(図示せず)の回転数を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、車輪の回転数から、車速を算出する。イグニッションスイッチ312は、エンジン100を始動させる際に、運転者によりオン操作される。エアフローメータ314は、エンジン100に吸入される空気量を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。
エンジンECU200は、電源である補機バッテリ320から供給された電力により作動する。エンジンECU200は、各センサおよびイグニッションスイッチ312から送信された信号、ROM(Read Only Memory)202に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行ない、エンジン100が所望の運転状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号およびクランク角に基づいて、予め定められたノック検出ゲート(予め定められた第1クランク角から予め定められた第2クランク角までの区間)におけるエンジン100の振動の波形(以下、振動波形と記載する)を検出し、検出された振動波形に基づいて、エンジン100にノッキングが発生したか否かを判定する。本実施の形態におけるノック検出ゲートは、燃焼行程において上死点(0度)から90度までである。なお、ノック検出ゲートはこれに限らない。
ノッキングが発生した場合、図2に示すように、エンジン100には、周波数帯A〜Cに含まれるの周波数の振動が発生する。そこで、本実施の形態においては、周波数帯A〜Cを含む広域の周波数帯Dにおける振動が検出される。
図3に示すように、エンジンECU200は、A/D(アナログ/デジタル)変換部400と、バンドパスフィルタ410と、積算部420とを含む。
A/D変換部400は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。バンドパスフィルタ410は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Dの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ410により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Dの振動のみが抽出される。
積算部420は、バンドパスフィルタ410により選別された信号、すなわち振動の強度を、クランク角度で5度分づつ積算した積算値(以下、5度積算値とも記載する)を算出する。これにより、図4に示すように、周波数帯Dの振動波形が検出される。
検出された振動波形は、振動波形がノック波形モデルに類似する度合を表わす(振動波形の形状とノック波形モデルの形状との差を表わす)相関係数Kを算出するために用いられる。図5に示すように、隣接するクランク角の強度に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度のクランク角、すなわち強度がピークになるクランク角以降のクランク角の範囲において、検出された振動波形とノック波形モデルとを比較することにより、相関係数Kが算出される。
ノック波形モデルは、ノッキングが発生した場合のエンジン100の振動波形の基準として定められる。本実施の形態において、ノック波形モデルの強度は、振動波形と比較する度に設定される。より具体的には、ノック波形モデルにおける強度の最大値が、振動波形において、隣接する強度に比べて大きい強度(強度のピーク値)と同じになるように設定される。
一方、最大値以外の強度は、エンジン回転数NEおよびエンジン100の負荷に応じて設定される。より具体的には、隣接するクランク角における強度の減衰率が、エンジン回転数NEおよびエンジン100の負荷をパラメータに有するマップに従って設定される。
たとえば、25%の減衰率で、クランク角で20度分の強度を設定する場合、図6に示すように、25%ずつ強度が減少する。なお、ノック波形モデルの強度を設定する方法はこれに限らない。
振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度との差の絶対値(ズレ量)をクランク角ごと(5度ごと)に算出することにより、相関係数Kが算出される。なお、5度以外のクランク角ごとに振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度との差の絶対値を算出するようにしてもよい。
振動波形における強度とノック波形モデルにおける強度とのクランク角ごとの差の絶対値をΔS(I)(Iは自然数)とおく。図7において斜線で示すように、ノック波形モデルの振動の強度を合計した値、すなわち、ノック波形モデルの面積をSとおく。相関係数Kは、下記の式(1)を用いて算出される。
K=(S−ΣΔS(I))/S・・・(1)
ΣΔS(I)は、ΔS(I)の総和である。なお、相関係数Kの算出方法はこれに限らない。
本実施の形態においては、相関係数Kの他、ノック強度Nが算出される。ノック強度Nは、図8において斜線で示すように、振動波形における強度(5度積算値)を合計した90度積算値lpkknkを用いて算出される。なお、90度積算値lpkknkの代わりに、振動波形における最大の強度を用いるようにしてもよい。
エンジン100にノッキングが発生していない状態におけるエンジン100の振動の強度を表わす値をBGL(Back Ground Level)と表わす。ノック強度Nは、下記の式(2)を用いて算出される。
N=lpkknk/BGL・・・(2)
なお、ノック強度Nの算出方法はこれに限らない。BGLは、各90度積算値lpkknkが検出された頻度(回数、確率ともいう)を表わす頻度分布において、標準偏差sgmと係数(たとえば「1」)との積を、中央値vmedから減算した値として算出される。ノック強度Nを算出する際、BGLは、逆対数変換して用いられる。なお、BGLの算出方法はこれに限らず、BGLをROM202に記憶しておくようにしてもよい。また、頻度分布を作成する際、90度積算値lpkknkの対数変換値が用いられる。
本実施の形態においては、振動波形の形状に基づいて算出される相関係数Kおよび振動波形の強度に基づいて算出されるノック強度Nを用いて、ノッキングが発生したか否かが1点火毎に判定される。ノッキングが発生したか否かは気筒毎に判定される。相関係数Kがしきい値K(1)以上であり、かつノック強度Nが判定値VJ以上であると、ノッキングが発生したと判定される。もしそうでないと、ノッキングが発生していないと判定される。ノック強度Nが判定値VJ以上であることは、90度積算値lpkknkが判定値VJとBGLとの積以上であることと同じである。
ノッキングが発生したと判定された場合、予め定められた量だけ点火時期が遅角される。ノッキングが発生していないと判定された場合、予め定められた量だけ点火時期が進角される。
エンジン100もしくは車両の出荷時において、ROM202に記憶される判定値VJ(出荷時における判定値VJの初期値)には、予め実験などにより定められる値が用いられる。ところが、ノックセンサ300の出力値のばらつきや劣化などにより、エンジン100で同じ振動が生じた場合であっても、検出される強度が変化し得る。この場合、判定値VJを補正し、実際に検出される強度に応じた判定値VJを用いてノッキングが発生したか否かを判定する必要がある。そこで、本実施の形態においては、予め定められた点火サイクル毎、たとえば200点火サイクル毎に、判定値VJが補正される。
図9を参照して、エンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明する機能はソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
エンジンECU200は、点火時期設定部500と、クランク角検出部600と、強度検出部602と、波形検出部604と、相関係数算出部606と、90度積算値算出部608と、算出部610と、判定部612と、点火時期制御部614と、判定値設定部700とを備える。
点火時期設定部500は、エンジン100の運転状態に応じて基本点火時期を設定する。基本点火時期は、図10に示すように、エンジン回転数NEおよび負荷KLをパラメータとして有するマップに従って設定される。
本実施の形態においては、エンジン回転数NEがしきい値NE(0)より小さく、かつ負荷KLがしきい値KL(0)より小さい運転状態(運転領域)において、MBT(Minimum advance for Best Torque)が基本点火時期として設定される。エンジン回転数NEがしきい値NE(0)より小さく、かつ負荷KLがしきい値KL(0)より小さい運転状態では、ノッキングがほとんど発生しないからである。なお、MBTとは、エンジン100の出力が最大になる点火時期を示す。
負荷KLは、エアフローメータ314により検出された吸入空気量およびエンジン回転数NEなどに基づいて算出される。なお、負荷KLを算出する方法は周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではそれらの詳細な説明は繰り返さない。
クランク角検出部600は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角を検出する。
強度検出部602は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、ノック検出ゲートにおける振動の強度を検出する。振動の強度は、クランク角に対応させて検出される。また、振動の強度は、ノックセンサ300の出力電圧値で表される。なお、ノックセンサ300の出力電圧値と対応した値で振動の強度を表してもよい。
強度検出部602は、気筒毎に補正された強度を、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて検出する。振動の強度は、気筒間の差を小さくするように気筒毎に補正される。本実施の形態においては、ノイズが重畳する気筒の強度が小さくなるように予め定められた補正量だけ補正された強度が検出される。すなわち、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において小さくなるように補正された強度が検出される。また、ノイズが重畳しない気筒の強度が大きくなるよう予め定められた補正量だけ補正された強度が検出される。すなわち、複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において大きくなるように補正された強度が検出される。なお、ノイズが重畳する気筒およびノイズが重畳しない気筒は、実験もしくはシミュレーションなどの結果、気筒の点火順序および燃料の噴射時期などから判別可能である。
波形検出部604は、振動の強度をクランク角で5度分づつ積算することにより、ノック検出ゲートにおける振動波形を検出する。振動波形は、気筒毎に検出される。
相関係数算出部606は、振動波形がノック波形モデルに類似する度合を表わす(振動波形の形状とノック波形モデルの形状との差を表わす)相関係数Kを算出する。相関係数Kは、気筒毎に算出される。
90度積算値算出部608は、振動波形における強度(5度積算値)を合計した90度積算値lpkknkを算出する。90度積算値lpkknkは、気筒毎に算出される。
算出部610は、90度積算値lpkknkを用いて、ノック強度Nを算出する。ノック強度Nは、気筒毎に算出される。判定部612は、相関係数Kおよびノック強度Nを用いて、ノッキングが発生したか否かを1点火毎に判定する。ノッキングが発生したか否かは、気筒毎に判定される。相関係数Kがしきい値K(1)以上であり、かつノック強度Nが判定値VJ以上であると、ノッキングが発生したと判定される。もしそうでないと、ノッキングが発生していないと判定される。
点火時期制御部614は、ノッキングが発生したか否かに応じて点火時期を補正することにより制御する。点火時期は、気筒毎に制御される。ノッキングが発生したと判定された場合、予め定められた量だけ点火時期が遅角される。ノッキングが発生していないと判定された場合、予め定められた量だけ点火時期が進角される。点火時期は、たとえば、MBTから遅角制限値までの範囲で進角されたり、遅角されたりする。すなわち、最も進角された場合、点火時期はMBTである。最も遅角された場合、点火時期は遅角制限値である。
判定値設定部700は、ノック強度Nと比較される判定値VJを気筒毎に設定する。判定値設定部700は、vkd算出部702と、vkd補正部704と、平均値算出部706と、中央値算出部710と、標準偏差算出部720と、カウント部730と、判定値補正部732とを備える。
vkd算出部702は、ノック判定レベルvkdを算出する。ノック判定レベルvkdは、図11に示すように、各点火サイクルにおいて算出された90度積算値lpkknkの頻度分布を用いて気筒毎に算出される。頻度分布を作成する際には、90度積算値lpkknkの対数変換値が用いられる。また、頻度分布は気筒毎に作成される。
頻度分布においては、図11に示すように、90度積算値lpkknkの中央値vmedおよび標準偏差sgmが気筒毎に算出される。さらに、中央値vmedおよび標準偏差sgmを用いて、ノック判定レベルvkdが算出される。
なお、本実施の形態においては、複数(たとえば200点火サイクル)の90度積算値lpkknkに基づいて算出される中央値および標準偏差と近似した中央値vmedおよび標準偏差sgmが1点火サイクルごとに算出される。したがって、本実施の形態において算出される中央値vmedおよび標準偏差sgmは、実際の中央値および標準偏差と異なり得る。
図11に示すように、中央値vmedに係数U(Uは定数で、たとえばU=3)と標準偏差sgmとの積を加算した値が、ノック判定レベルvkdとして算出される。係数Uは、実験などより得られたデータや知見から求められた係数である。なお、係数Uに「3」以外の値を用いるようにしてもよい。
vkd補正部704は、ノック判定レベルvkdに更新量dvを加算することにより、ノック判定レベルvkdを補正する。したがって、ノック判定レベルvkdは、下記の式(3)で表わされる。
vkd[i]=vmed[i]+U×sgm[i]+dv … (3)
式(3)における[i]は、今回値であることを示す。
更新量dvは、下記の式(4)を用いて算出される。
dv=abs(lpkknk[i-1]-vmed[i])/C … (4)
式(4)における[i−1]は前回値であることを示す。「abs(lpkknk[i-1]-vmed[i])」は、lpkknk[i-1]-vmed[i]の絶対値を示す。式(4)において、「C」は定数(たとえば「4」)である。
式(3)および式(4)から、ノック判定レベルvkdは下記の式(5)により表わされる。
vkd[i]=vmed[i]+U×sgm[i]+abs(lpkknk[i-1]-vmed[i])/C … (5)
ノック判定レベルvkdを算出する際、更新量dvは、上限ガード値verm以下に制限される。また、更新量dvは、下限ガード値min(たとえば「1」)以上に制限される。すなわち、更新量dvは、下記の不等式で表わされる。
min≦dv≦verm[i-1] … (6)
上限ガード値vermは、下記の式(7)を用いて算出される。
verm[i-1]=verm[i-2]+(lpkknk[i-1]-vmall[i-1]-verm[i-2])/D … (7)
式(7)において、「D」は定数(たとえば「16」)である。「vmall」は、複数の気筒(全ての気筒)において検出された90度積算値lpkknkの平均値である。[i−2]は、前回値のさらに前回値であることを示す。
式(3)、不等式(6)および式(7)から明らかなように、本実施の形態においては、平均値vmallが大きいほどより小さい補正量でノック判定レベルvkdが補正される。
平均値算出部706は、平均値vmallを算出する。平均値vmallは、下記の式(8)を用いて算出される。
vmall[i-1]=vmall[i-2]+(lpkknk[i-1]-vmall[i-2])/tKNMS … (8)
式(8)における「tKNMS」は、上限ガード値vermに応じて定められる値である。tKNMSは、上限ガード値vermが大きいほど小さくなるように、すなわち、上限ガード値vermが小さいほど大きくなるように設定される。
中央値算出部710は、下記の式(9)を用いて中央値vmedを算出する。
vmed[i]=vmall[i-1]+dvm[i] … (9)
式(9)における「dvm」は、補正値である。
補正値dvmは、前回値に更新量dvを加算することにより算出される。したがって、補正値dvmは、下記の式(10)により表わされる。
dvm[i]=dvm[i-1]+dv … (10)
式(8)〜(10)から明らかなように、中央値vmedは、下記の式(11)により表わされる。
vmed[i]=vmall[i-2]+(lpkknk[i-1]-vmall[i-2])/tKNMS+dvm[i-1]+dv … (11)
式(4)および式(11)から明らかなように、本実施の形態においては、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きく、かつ平均値vmallが大きいほど小さい更新量で更新することにより、中央値vmedが算出される。また、中央値vmedを算出する際、更新量dvは制限されない。したがって、本実施の形態においては、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きくなるとともに、平均値vmallが大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を制限せずに更新することにより、中央値vmedが算出される。
標準偏差算出部720は、標準偏差sgmを算出する。標準偏差sgmは、標準偏差sgmの前回値に更新量dvを加算することにより算出される。したがって、標準偏差sgmは、下記の式(12)により表わされる。
sgm[i]=sgm[i-1]+dv … (12)
式(4)および式(12)から明らかなように、本実施の形態においては、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きく、かつ平均値vmallが大きいほど小さい更新量で更新することにより、標準偏差sgmが算出される。また、標準偏差sgmを算出する際、更新量dvは、上限ガード値verm以下に、かつ下限ガード値min以上に制限される。
したがって、本実施の形態においては、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きくなるとともに、平均値vmallが大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を制限して更新することにより、標準偏差sgmが算出される。
カウント部730は、ノック判定レベルvkd以上の90度積算値lpkknkの頻度(割合)を、ノック占有率KCとして気筒毎にカウントする。
判定値補正部732は、判定値VJを気筒毎に補正する。ノック占有率KCがしきい値KC(0)以上である場合、予め定められた補正量A(1)だけ小さくなるように、判定値VJが補正される。また、ノック占有率KCがしきい値KC(0)よりも小さい場合、予め定められた補正量A(2)だけ大きくなるように判定値VJが補正される。
図12および図13を参照して、エンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、たとえば1点火サイクル毎に繰り返し実行される。すなわち、以下に説明するプログラムは複数の点火サイクルにおいて実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角を検出する。S102にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、クランク角に対応させて、気筒毎にエンジン100の振動の強度を検出する。ノイズが重畳する気筒の強度が小さくなるように、かつノイズが重畳しない気筒の強度が大きくなるように補正された強度が検出される。
S104にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300の出力電圧値(振動の強度を表わす値)を、クランク角で5度ごとに(5度分だけ)積算した5度積算値を算出することにより、エンジン100の振動波形を検出する。
S106にて、エンジンECU200は、相関係数Kを算出する。S108にて、エンジンECU200は、90度積算値lpkknkを算出する。S110にて、エンジンECU200は、ノック強度Nを算出する。
S120にて、エンジンECU200は、相関係数Kがしきい値K(1)以上であり、かつノック強度Nが判定値VJ以上であるか否かを判定する。相関係数Kがしきい値K(1)以上であり、かつノック強度Nが判定値VJ以上であると(S120にてYES)、処理はS122に移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS126に移される。
S122にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生したと判定する。S124にて、エンジンECU200は、点火時期を遅角する。S126にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生していないと判定する。S128にて、エンジンECU200は、点火時期を進角する。
図13を参照して、S200にて、エンジンECU200は、ノック占有率KCをカウントする。S202にて、エンジンECU200は、前回判定値VJを補正してからの点火サイクルの回数が、予め定められた回数以上であるか否かを判定する。前回判定値VJを補正してからの点火サイクルの回数が、予め定められた回数以上であると(S202にてYES)、処理はS204に移される。もしそうでないと(S202にてNO)、処理はS210に移される。
S204にて、ノック占有率KCに応じて判定値VJを補正する。ノック占有率KCがしきい値KC(0)以上である場合、予め定められた補正量A(1)だけ小さくなるように、判定値VJが補正される。ノック占有率KCがしきい値KC(0)よりも小さい場合、予め定められた補正量A(2)だけ大きくなるように判定値VJが補正される。
S210にて、エンジンECU200は、90度積算値lpkknkの平均値vmallを算出する。
S212にて、エンジンECU200は、中央値vmedおよび標準偏差sgmを算出する。S214にて、エンジンECU200は、ノック判定レベルvkdを算出する。S216にて、エンジンECU200は、ノック判定レベルvkdを補正する。その後、処理はS100に戻される。
なお、S100〜S216の処理を行なう順序は、図12および図13に示す順序に限らない。S100〜S216の処理を、図12および図13に示す順序とは異なる順序で実行するようにしてもよい。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態におけるエンジンECU200の動作について説明する。
エンジン100の運転中、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角が検出される(S100)。ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、クランク角に対応させて、エンジン100の振動の強度が検出される(S102)。ノックセンサ300の出力電圧値をクランク角で5度ごとに積算した5度積算値を算出することにより、エンジン100の振動波形が検出される(S104)。
ノッキングが発生したか否かを波形の形状に基づいて判定するため、ノック波形モデルを用いて相関係数Kが算出される(S106)。さらに、ノッキングに起因して発生した振動が振動波形に含まれるか否かを強度に基づいて判定するため、90度積算値lpkknkが算出される(S108)。90度積算値lpkknkをBGLで除算することにより、ノック強度Nが算出される(S110)。
相関係数Kがしきい値K(1)以上であり、かつノック強度Nが判定値VJ以上である場合(S120にてYES)、検出された波形の形状がノッキングによる波形の形状に類似しており、かつ振動の強度が大きいといえる。すなわち、ノッキングが発生した可能性が非常に高いといえる。この場合、エンジン100にノッキングが発生したと判定される(S122)。ノッキングを抑制するために、点火時期が遅角される(S124)。
一方、相関係数Kがしきい値K(1)よりも小さい場合、またはノック強度Nが判定値VJよりも小さい場合、エンジン100にノッキングが発生していないと判定される(S126)。この場合、点火時期が進角される(S128)。
ところで、エンジン100もしくは車両の出荷時において、ROM202に記憶される判定値VJ(出荷時における判定値VJの初期値)には、予め実験などにより定められる値が用いられる。ところが、ノックセンサ300の出力値のばらつきや劣化などにより、エンジン100で同じ振動が生じた場合であっても、検出される強度が変化し得る。この場合、判定値VJを補正し、実際に検出される強度に応じた判定値VJを用いてノッキングが発生したか否かを判定する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、判定値VJを補正するために、ノック判定レベルvkd以上の90度積算値lpkknkの頻度がノック占有率KCとしてカウントされる(S200)。
前回判定値VJを補正してからの点火サイクルの回数が、予め定められた回数以上であると(S202にてYES)、ノック占有率KCに応じて判定値VJが補正される(S204)。
ノック占有率KCがしきい値KC(0)以上である場合、補正量A(1)だけ小さくなるように、判定値VJが補正される。これにより、ノッキングが発生したと判定し易くすることができる。そのため、点火時期を遅角する頻度を多くすることができる。その結果、ノッキングが発生する回数を低減することができる。
ノック占有率KCがしきい値KC(0)よりも小さい場合、補正量A(2)だけ大きくなるように判定値VJが補正される。これにより、ノッキングが発生したと判定され難くすることができる。そのため、点火時期を進角する頻度を多くすることができる。その結果、エンジン100の出力を高めることができる。
さらに、90度積算値lpkknkの平均値vmallが算出される(S210)。90度積算値lpkknkの中央値vmedおよび標準偏差sgmが算出される(S212)。中央値vmedおよび標準偏差sgmを用いて、ノック判定レベルvkdが算出される(S214)。また、ノック判定レベルvkdが補正される(S216)。
ところで、前述したように、平均値vmallが大きいほど小さい更新量で更新することにより、中央値vmedが算出される。また、平均値vmallが大きいほど小さい更新量で更新することにより、標準偏差sgmが算出される。中央値vmedおよび標準偏差sgmを用いて、ノック判定レベルvkdが算出される。さらに、平均値vmallが大きいほどより小さい補正量でノック判定レベルvkdが補正される。
したがって、ノイズが重畳する気筒において検出される90度積算値lpkknkが大きいために平均値vmallが大きくなると、ノック判定レベルvkdが更新され難くなる。そのため、ノック判定レベルvkdが不必要に小さくなり得る。この場合、ノック占有率KCが誤って大きくなり得る。そのため、最終的には、点火時期が誤って遅角され得る。
そこで、本実施の形態においては、ノイズが重畳する気筒の強度が小さくなるように、かつノイズが重畳しない気筒の強度が大きくなるように補正されたエンジン100の振動の強度が検出される。これにより、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度との差を小さくすることができる。そのため、ノイズの影響を小さくして、平均値vmallが大きくならないようにすることができる。その結果、点火時期を適切に制御することができる値まで、ノック判定レベルvkdを大きくすることができる。
また、本実施の形態においては、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きくなる更新量を定め、かつ更新量を制限せずに更新することにより、中央値vmedが算出される。また、検出された90度積算値lpkknkが大きいほど大きくなる更新量を定め、かつ更新量を上限ガード値以下に制限して更新することにより、標準偏差sgmが算出される。
これにより、検出された強度に対して中央値vmedを介して速やかに追従するとともに、標準偏差sgmによる変動量が制限されたノック判定レベルvkdを得ることができる。そのため、内燃機関で実際に発生する強度に精度よく対応したノック判定レベルvkdを得ることができる。このようなノック判定レベルvkdに基づいて、点火時期を制御するために用いられる判定値VJが補正される。その結果、点火時期の制御性を向上することができる。
以上のように、本実施の形態に係る点火時期制御装置によれば、エンジンの振動の強度を用いて算出されるノック強度Nと判定値VJとを比較した結果に応じてエンジンの点火時期が制御される。判定値VJは、ノック判定レベルvkd以上の強度が検出された頻度に応じて補正される。ノック判定レベルvkdは、複数の気筒において検出された強度に応じて設定される。気筒毎に補正されたエンジンの振動の強度が検出される。これにより、ノイズが重畳する気筒の強度とノイズが重畳しない気筒の強度との差を小さくすることができる。そのため、ノック判定レベルvkdに与えるノイズの影響を小さくすることができる。このようなノック判定レベルvkdに基づいて、点火時期を制御するために用いられる判定値VJが補正される。その結果、点火時期の制御性を向上することができる。
なお、90度積算値lpkknkの代わりに、図14に示すように、振動波形における最大の強度lvpkを用いるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
エンジンを示す概略構成図である。 ノッキング時にエンジンで発生する振動の周波数帯を示す図である。 エンジンECUを示す制御ブロック図である。 エンジンの振動波形を示す図である。 振動波形とノック波形モデルとを比較した図である。 ノック波形モデルを示す図である。 ノック波形モデルの面積Sを示す図である。 90度積算値lpkknkを示す図である。 エンジンECUの機能ブロック図である。 基本点火時期を定めたマップである。 90度積算値lpkknkの頻度分布を示す図である。 エンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示す図(その1)である。 エンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示す図(その2)である。 振動波形における最大の強度lvpkを示す図である。
符号の説明
100 エンジン、104 インジェクタ、106 点火プラグ、110 クランクシャフト、116 吸気バルブ、118 排気バルブ、200 エンジンECU、202 ROM、300 ノックセンサ、302 水温センサ、304 タイミングロータ、306 クランクポジションセンサ、308 スロットル開度センサ、310 車速センサ、312 イグニッションスイッチ、314 エアフローメータ、320 補機バッテリ、400 A/D変換部、410 バンドパスフィルタ、420 積算部、500 点火時期設定部、600 クランク角検出部、602 強度検出部、604 波形検出部、606 相関係数算出部、608 90度積算値算出部、610 算出部、612 判定部、614 点火時期制御部、700 判定値設定部、702 vkd算出部、704 vkd補正部、706 平均値算出部、710 中央値算出部、720 標準偏差算出部、730 カウント部、732 判定値補正部。

Claims (14)

  1. 複数の気筒が設けられた内燃機関の点火時期制御装置であって、
    気筒毎に補正された前記内燃機関の振動の強度を、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて検出するための検出手段と、
    検出された強度および第1の判定値を比較した結果に応じて前記内燃機関の点火時期を制御するための制御手段と、
    複数の気筒において検出された強度に応じた第2の判定値を設定するための設定手段と、
    前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度をカウントするための手段と、
    前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度に応じて前記第1の判定値を補正するための補正手段とを備える、内燃機関の点火時期制御装置。
  2. 前記検出手段は、前記複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において小さくなるように補正された前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  3. 前記検出手段は、前記複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において大きくなるように補正された前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  4. 前記制御手段は、検出された強度が前記第1の判定値より大きい場合、点火時期を遅角するための手段を含み、
    前記補正手段は、前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度が予め定められた頻度よりも大きい場合に前記第1の判定値が小さくなるように補正するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  5. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、
    前記平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、
    前記平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備え、
    前記設定手段は、零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するための手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  6. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、
    検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、
    検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備え、
    前記設定手段は、
    零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するための手段と、
    前記平均値が大きいほどより小さい補正量で前記第2の判定値を補正するための手段とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  7. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、
    検出された強度が大きいほど大きくなるとともに前記平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を制限せずに更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するための手段と、
    検出された強度が大きいほど大きくなるとともに前記平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を予め定められる制限値以下に制限して更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するための手段とをさらに備え、
    前記設定手段は、零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するための手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  8. 複数の気筒が設けられた内燃機関の点火時期制御方法であって、
    気筒毎に補正された前記内燃機関の振動の強度を、気筒毎に複数の点火サイクルにおいて検出するステップと、
    検出された強度および第1の判定値を比較した結果に応じて前記内燃機関の点火時期を制御するステップと、
    複数の気筒において検出された強度に応じた第2の判定値を設定するステップと、
    前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度をカウントするステップと、
    前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度に応じて前記第1の判定値を補正するステップとを備える、内燃機関の点火時期制御方法。
  9. 前記内燃機関の強度を検出するステップは、前記複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において小さくなるように補正された前記内燃機関の振動の強度を検出するステップを含む、請求項8に記載の内燃機関の点火時期制御方法。
  10. 前記内燃機関の強度を検出するステップは、前記複数の気筒のうちの少なくともいずれか一つの気筒において大きくなるように補正された前記内燃機関の振動の強度を検出するステップを含む、請求項8に記載の内燃機関の点火時期制御方法。
  11. 点火時期を制御するステップは、検出された強度が前記第1の判定値より大きい場合、点火時期を遅角するステップを含み、
    前記第1の判定値を補正するステップは、前記第2の判定値以上の強度が検出された頻度が予め定められた頻度よりも大きい場合に前記第1の判定値が小さくなるように補正するステップを含む、請求項8〜10のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御方法。
  12. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するステップと、
    前記平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するステップと、
    前記平均値が大きいほどより小さい更新量で更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するステップとをさらに備え、
    前記第2の判定値を設定するステップは、零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するステップを含む、請求項8〜11のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御方法。
  13. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するステップと、
    検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するステップと、
    検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するステップとをさらに備え、
    前記第2の判定値を設定するステップは、
    零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するステップと、
    前記平均値が大きいほどより小さい補正量で前記第2の判定値を補正するステップとを含む、請求項8〜11のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御方法。
  14. 複数の気筒において検出された強度の平均値を算出するための手段と、
    検出された強度が大きいほど大きくなるとともに前記平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を制限せずに更新することにより、検出された強度の中央値を表わす第1の値を算出するステップと、
    検出された強度が大きいほど大きくなるとともに前記平均値が大きいほど小さくなる更新量を定め、かつ更新量を予め定められる制限値以下に制限して更新することにより、検出された強度の標準偏差を表わす第2の値を算出するステップとをさらに備え、
    前記第2の判定値を設定するステップは、零より大きい係数と前記第2の値との積を前記第1の値に加算することにより前記第2の判定値を設定するステップを含む、請求項8〜11のいずれかに記載の内燃機関の点火時期制御方法。
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