JP2009136279A - 梅干しの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩分を用いることなく長期保存が可能な梅干しを提供する。
【解決手段】梅原料を100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする、梅干しの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、梅干しの製造方法に関し、特に、通常の梅干しよりも塩分量の少ない梅干し(減塩梅干し)や、塩分を含まない梅干し(無塩梅干し)を、従来無かった、まったく新しい手法によって製造することができる、梅干しの製造方法に関する。また、本発明は梅蜜の製造方法、梅果汁の製造方法及び梅原料の保存方法に関する。
梅を塩漬けにし、これを干して製造される梅干しは、我が国の伝統的な食品の一つであって、日本人にとって、非常に馴染み深い食品である。また、梅干しは、古くから薬用としても供されていることから明らかなように、人の健康維持に貢献する栄養素を非常に多く含んでいる。中でも、梅に多く含まれている「クエン酸」は、疲労回復に効果があるとされ、また、人にとって重要な生化学反応回路である「クエン酸回路」の構成成分となっている。そのため、梅干しは、近年、健康食品としても、非常に注目を浴びている。しかしながら、梅干しは、梅を塩漬けしてから製造するため、塩分を非常に多く含んでいる、という問題がある。塩分の過剰摂取は、生活習慣病等の原因の一つとなってしまうことから、梅干しは、健康食品として注目されながらも、その塩分の多さが、梅干しを食する際の障壁となってしまっている。
なお、このような問題を回避するため、従来より、梅を塩漬けする際の塩の量を減らすこと等によって、塩分濃度を低くした梅干しも製造等されている。しかし、このような梅干しは、塩分濃度が低いため、製造過程全般において、腐敗したり、カビが発生し易い、という問題があった。
また、このような塩分濃度を低くした梅干しの製造方法には、通常の方法によって製造した梅干しを、水にさらして塩抜きして製造する方法もあるが、この方法では、梅干しの製造完了後に、「塩抜き」という、さらに別の工程を実施する必要があるため、作業工程が煩雑になり、時間もコストも掛かってしまう、という問題があった。さらに、水にさらして塩抜きする際に、梅干しの栄養素や風味までもが流出してしまう、という問題もあった。
従来、梅干しの製造において、塩を使用することは、腐敗の進行やカビの発生を抑え、品質の良い梅干しを製造するため、必要不可欠であると考えられていた(特許文献1〜3)。
特許文献4は、生梅を遠赤外線照射して白干し梅を製造しているが、加熱温度は90℃以下である必要があり、長期保存はできなかった。
特許文献5は、青梅又は完熟梅を加熱水蒸気で加熱して半完熟又は完熟梅状態にさせるものであり、この方法では梅干しは得られない。
特許文献6は、梅の果実を冷凍し、これを冷水又は温水に浸漬して搾汁して果汁を得、搾汁後の梅の果実を梅酢中に浸漬し、日干しして梅干しを製造する方法を開示している。この方法で得られた梅干しは、冷水又は温湯を冷凍梅に加えているため梅に含まれる有用成分が大部分流出し、かつ塩分を多量に含む梅酢を用いて作製されるため塩分が多く栄養価の低い梅干しとなり、また、得られる梅果汁も多量の水分が加えられているため、濃縮、加熱殺菌などに費用がかかるだけでなく、調味料などの使用に不適切なものであった。
さらに、生梅には、有用成分としてムメフラールは含まれていない。
特開2000−50832号公報 特開2000−139395号公報 特開2001−327273号公報 特開平11−28055号公報 特開2007−129994号公報 特開昭53−20456号公報
本発明は、塩分を用いることなく長期保存が可能な梅干しを提供することを目的とする。
また、本発明は、生梅由来の有効な梅果汁、梅肉エキス、梅蜜を簡便に提供することを目的とする。
さらに本発明は、ムメフラールのような生梅由来の有効成分を生成させることを目的とする。
さらに、本発明は、梅干しや調味料の製造に好適な梅原料の保存方法を提供することを目的とする。
本発明者は、このような実情のもと、梅原料が有している栄養素や風味を損なうことなく、さらに有用な成分含量を豊富に含む梅干しを製造する方法について、鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者は、梅原料を100℃以上の高温で加熱乾燥することにより上記の課題が達成できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の梅干しの製造方法、梅蜜ないし梅果汁の製造方法及び梅原料の保存方法を提供するものである。
項1. 梅原料を100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする、梅干しの製造方法。
項2. 梅原料が青梅および黄梅からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の梅干しの製造方法。
項3. 梅原料が、果皮に穴をあけた梅原料である項1または2に記載の梅干しの製造方法。
項4. 梅原料の果皮に穴をあけ、次いで100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする梅原料から浸出する梅蜜の製造方法。
項5. 梅原料の保存方法であって、梅原料を100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする、梅原料の保存方法。
項6. 梅原料を冷凍し、圧搾することを特徴とする、梅果汁の製造方法。
項7. 梅原料を冷凍して酵素を失活させた後、乾燥することを特徴とする、梅干しの製造方法。
本発明によれば、梅を塩漬けすることなく、梅干しを製造することができるので、塩分を含まない梅干し(無塩梅干し)を製造することができる。また、製造した無塩梅干しに、適宜、塩分を加えたり、短時間塩漬けした梅やごく少量の塩に漬けた梅等を、本発明に係る製造方法の原材料として使用することで、通常の梅干しよりも塩分量の少ない梅干し(減塩梅干し)を製造することもできる。そのため、本発明によれば、塩分の過剰摂取を気にする必要がない梅干しを、消費者に提供することができる。
本発明によれば、梅干しの製造過程において、塩漬けの工程を必要としないので、機械乾燥を利用しても、従来、塩漬けから最低1週間程度は掛かっていた梅干しの製造を、梅の収穫から数時間以内で行うこともできる。また、本発明では、梅を乾式で加熱乾燥させて梅干しとする際に、オーブン、電子レンジ、食品乾燥装置、ドライフルーツ製造装置等といった、乾燥装置を使用することができるので、通常、最低でも30日〜60日必要とされる、天日による梅干しの製造方法と比べて、梅干しの製造時間を、大幅に短縮することができる。また、本発明では、加熱により梅原料中の水分を蒸発させているため、得られた梅干しを調味液で処理して味付けをする場合、調味液の浸透性に優れており、容易に味付け等の加工をすることができる。なお、本発明による製造方法では天日干しは必要ないが、本発明の製造方法により得られた梅干しをさらに天日干しして熟成させてもよい。
本発明により得られた梅干しは、100℃以上の温度、好ましくは130℃以上の温度で加熱するので、腐敗菌が死滅するため長期保存が可能になり、さらにムメフラールのような有用成分が生成する。
本発明によれば、その外観や柔らかさ等の状態が、従来の梅干しと何ら変わらないうえ、塩分を含まない梅干しを製造することができるので、料理や調味料の原材料としても非常に好適な梅干しないし梅蜜、梅果汁を製造することができる。それ故、従来、梅干しに含まれる塩分量によって、その使用が制限されていたような料理や調味料(梅醤油、梅味噌、梅酒等)においても、梅干しを使用することが可能となり、梅干しの利用範囲が大きく拡がることになる。例えば、菓子や、日本料理以外の外国の料理においても、梅干しが利用されることが考えられる。
本発明では、梅干しを製造する際に、梅に含まれる酵素を失活させているので、当該酵素の作用による梅の腐敗を防止することができる。また、梅には、梅に含まれる酵素の働きによって、猛毒であるシアン化水素となってしまうアミグダリンが含まれているが、本発明では、梅干しを製造する際に、梅に含まれる酵素を失活させるため、このシアン化水素の発生も防ぐことができる。
本発明では、乾燥を人為的に行うことができるため、梅干しの乾燥度合いを調節することができる。そのため、半乾燥状態の梅干しや、京都北野天神の梅干しに代表されるような、水分量の非常に少ない梅干しも、自在に、かつ、短時間に製造することが可能である。
本発明に係る梅干しは、乾燥を人為的に行うことによって、短時間で水分を除去することができるため、梅を塩漬けにしなくても、製造過程全般において、腐敗が進行したり、カビが発生することが無い。
梅の加熱乾燥前に梅皮に針などで穴を開けておくと、加熱時に梅蜜が浸出してくるので、これを集めることで梅干しと梅蜜の両方を同時に得ることができる。なお、塩分の浸透圧により梅原料の水分を浸出させる場合、クエン酸も同時に浸出するため、梅干しのクエン酸含量が下がり、梅干しの酸っぱさが軽減される。梅皮に穴を開けていない梅干しの場合、クエン酸は失われないので非常に酸っぱい梅干しとなり、梅皮に穴を開けた場合にはクエン酸が浸出するため、本発明の無塩梅干しは、従来の塩分の多い梅干しと同程度の酸っぱさとなる。
本発明に係る梅干しの製造方法において、梅を加熱した場合には、加熱により、果皮が柔らかくなるため、従来の梅干しと比べても、その外観や柔らかさ等の状態において、ほとんど差異の認められない、良質の非常に食べやすい梅干しを製造することができる。
また、本発明に係る梅干しの製造方法では、梅を塩漬けしないため、浸透圧の作用によって梅から出てくる水分(梅酢)が発生しない。そのため、この梅酢とともに、梅の栄養素や、梅の風味をなす果汁等が、梅から流出してしまうことがなく、さらに、梅干しの製造現場において、梅酢の処理の問題について考慮する必要が無いという利点もある。
本発明において、梅原料の冷凍後に圧搾して得られる梅果汁は、低粘度でさらさらしており、かつ、透明性が高い。また、得られる梅果汁の水分を蒸発させて得られた梅肉エキスは、寒天ないしゼリーのような固形状になり、かつ加熱するとやわらかくなるため、取り扱いにも優れたものである。
本発明に係る梅干しの製造方法は、梅原料を100〜350℃の温度に加熱することで、(1)梅原料に含まれる酵素を失活させ、(2)細菌を死滅させ、(3)梅原料から水分含量を低下させて長期保存の可能な梅干しとし、(4)ムメフラールのような梅原料に本来含まれない有用成分を生成することができる。梅原料の加熱工程は、梅原料から水分を蒸発させて乾燥することが目的であるので、乾式で加熱する。具体的には、加熱は空気中で行うことが望ましい。加熱装置では密閉系で加熱することも可能であるが、梅原料の水分の蒸発のためには開放系で加熱するか、空気を循環させるか、乾燥した外気を導入するのが望ましい。
梅干しや漬物などは、通常塩分添加による浸透圧に基づき水分含量を下げ、高塩濃度により微生物の繁殖を抑制し、長期保存を可能にするのが一般的である。これらの水分の多い果実・野菜などの水分を失わせて保存性を高める場合、100℃を超えて加熱するときには特許文献5に示されるように過熱水蒸気を用いて湿式で加熱するか、あるいは乾式で加熱する場合には特許文献4に示されるように90℃未満、好ましくは75℃以下である必要があり、水の沸点である100℃以上に加熱すると乾燥対象物(例えば漬物の場合の大根、白菜、キュウリ、なす、かぶ等)の表面の水分が急速に失われて、表面のひび割れや組織の破壊が起こり、商品価値が損なわれると考えられていた。実際、梅原料を100℃以上で加熱した場合、表皮は乾燥してかさつき、梅干しとは大きく異なる外観のものが得られた。ところが、この梅原料の高温乾燥物を5〜10時間放置すると、品温が下がるにつれて表皮がしっとりとしてきて梅干しと同様な外観を呈することに本発明者は気付いた。これは高温乾燥後の梅原料において水分量ないし流動性の成分が内部から表面に移動して全体に均一になり、表皮がしっとりしたものと考えられる。得られた梅干しは、塩漬後に天日干しした通常の梅干しと外観上見分けがつかないものであった。さらに、本発明のように100℃以上の高温において乾式で乾燥させると、梅干し全体の水分含量も抑制でき、高温による滅菌効果と合わせて梅干しの長期保存を可能にすることが明らかになった。理論に拘束されることを望むものではないが、梅原料には多量のクエン酸が含まれるため、100℃以上の過酷な条件で加熱乾燥してもクエン酸の水分保持能が高いために過度の乾燥が起こらないものと考えられる。また、多量のクエン酸が保持されるために水分が一部保持されていても腐敗などが起こらず、保存性に優れたものとなる。
加熱温度は、100〜350℃、好ましくは110〜250℃程度、より好ましくは120〜200℃程度、特に好ましくは130〜160℃程度である。また、加熱乾燥時間は30分〜5時間程度、好ましくは1〜4時間程度である。温度が高いほど時間は短くてよい。なお、加熱温度が130℃以上になるとムメフラールの生成が増加するため好ましい。また、温度が350℃を超えると有機物質の分解が起こり得るため、長時間の加熱が難しくなる。
本発明では、この加熱工程により、穴を開けていない梅原料の10〜50重量%程度の水分が失われ、穴を開けた梅原料の場合には、水分と内容物を合わせて15〜50重量%程度の重量減少が加熱乾燥工程により起こる。なお、加熱乾燥工程では、最初は水分が急速に失われ、加熱時間が長くなるに従って水分含量の低下速度は緩やかになる。本発明では梅干しの水分含量は少ない方が望ましく、水分含量の低下速度が緩やかになるまで加熱乾燥を続けることが望ましい。上記の加熱乾燥条件では、梅原料の表皮が乾燥した状態まで加熱乾燥するのが望ましい。
梅原料の加熱乾燥に用いられる装置としては、温度を一定の範囲に制御可能な通常の乾燥装置が広く使用でき、例えばオーブン、レンジ、食品乾燥装置、ドライフルーツ製造装置、熱風乾燥装置などが使用できる。
本発明で使用する梅原料としては、青梅、黄梅(熟した梅)、完熟梅などの生梅などが挙げられる。生梅を冷凍したものや、冷凍後に解凍し、梅果汁を一部取り除いたものも、梅原料として用いることができる。梅果汁を一部除くことで、クエン酸量を低下させ、酸っぱさが緩和された梅原料が得られる。また、梅果汁には多量の水分が含まれており、乾燥を容易にする効果もある。梅原料は、梅干しをそのままあるいは味付けないし着色して従来の塩分を多量に含む梅干しと同様に食する場合には黄梅、完熟梅が好ましく、加熱乾燥後の梅干しを調味料に使う場合には、青梅と黄梅のいずれを用いてもよく、また、梅をすりつぶしたものなどでもよい。梅原料は一度に大量に収穫されるため、従来は一度に大量に処理して高塩分の梅干しや梅酒などを製造する必要があったが、本発明の製造方法により得られる梅干しは密閉容器において常温で長期保存が可能であるので、必要に応じて少しずつ処理すればよいので好ましい。
また、梅原料には、梅の果実(生梅)だけでなく、梅の果肉、すなわち、梅の果実から、種子や果皮の一部や全部を取り除いたものや、この梅の果肉を砕いたもの、潰したもの、すり下ろしたものなどの前処理を施したものも含まれる。
梅原料は、果皮に穴をあけたものを使用してもよく、穴が開いていないものを使用しても良い。穴は針で果皮を刺すことにより開けることができる。梅原料に穴が開いていると、加熱・乾燥時に梅蜜が穴から流出する。これを集めることで、梅干しと同時に梅蜜を得ることができる。梅蜜にはクエン酸が多量に含まれているため、果皮に穴を開けた場合には梅干し中のクエン酸含量が低下し、塩漬けをした通常の梅干しと同程度のクエン酸含量になり得る。一方、果皮に穴を開けない場合、クエン酸を含む梅の成分は梅干し中に閉じこめられるため、栄養価が高くクエン酸に基づきより酸っぱい梅干しが得られる。梅原料の果皮に開ける穴の大きさ、個数を調節することにより、梅から流出させる果汁の量や酸味を自在に調節することができる。加熱乾燥工程で梅蜜を集めるには、例えば網などの梅蜜が通過する支持体の上に梅原料をおいて加熱乾燥工程を行い、網の開口部を通って落下した梅蜜を集めるなどの適宜の手段により実施する。
また、梅の果皮に穴をあけてから、これを加熱、乾燥することによって、透明で、かつ、所定の時間を経過してもほとんど変色しない梅蜜を得ることができる。このようにして得た梅蜜は、単に梅を搾って得た果汁と異なり、すぐに変色してしまうことが無いため、調味料等として非常に好適なものである。
なお、梅原料に穴を開けない場合でも、本発明の方法により梅干しを製造し、得られた梅干しを容器に充填すると、梅蜜が浸出することがある。これにより得られた梅蜜も梅干しと同様に調味料などに使用できる。
一般的には、「梅干し」とは、梅を塩漬けし、これを干したものをいうが(日本農林規格)、本明細書においては、特に言及しない限り塩漬けされることなく加熱乾燥された梅原料を便宜上「梅干し」と呼ぶこととする。
本発明の好ましい実施形態において、梅原料の加熱乾燥工程は、梅原料をオーブンバットなどの開放形の容器に並べ、適当な乾燥装置に該容器を収容し100〜350℃の温度で梅原料を乾燥して、梅干しを製造する。なお、この場合において、オーブンバットに並べる梅は、収穫してへたを取り、若しくは、収穫してへたを取り水洗いした梅原料を使用することが好ましい。これは、このような梅を使用することで、非常に簡単に、無塩梅干しを製造することができるからである。また、この場合において、乾燥機内の加熱温度を130℃〜160℃の範囲内とし、かつ、加熱時間を80分〜100分の範囲内とすることが、さらに好ましい。これは、これらの範囲内とすることで、本発明に関し、最も品質に優れた梅干しを、非常に効率良く製造することができるからである。
本発明の特徴の一つは、梅原料に含まれる酵素を加熱により失活させ、乾燥させることによって、梅干しを製造する過程における梅の腐敗やカビの発生を阻止することである。この観点から、梅原料を凍結させることによりそれに含まれる酵素を失活させ、組織を破壊することで、梅原料の変質を防ぎつつ、容易に圧搾又は濾過によりクエン酸などの栄養成分の豊富な梅果汁を得ることができる。
梅原料を冷凍し、圧搾することで得られる梅果汁は、非常にさらさらした低粘度の果汁となる。また、この梅果汁は透明性が高い。梅原料を冷凍・圧搾して得られた梅果汁の水分を蒸発させると、非常に粘度の高い従来の梅肉エキスと異なり、寒天状ないしゼリー状のものになる。この寒天状ないしゼリー状の梅肉エキスは加熱することにより容易にやわらかくなるため、食品などに容易に添加することができ、天然クエン酸成分を多く含むためにサプリメントとして好適に摂取できる。従来の梅果汁は、例えば生梅をシロップ漬けにして得ていたが、本発明の梅果汁はシロップのような添加物はなく、種々の調味料の原料として、あるいは飲料の成分としても好適に用いられる。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明で低粘度の梅果汁が得られる原因として、梅原料の凍結により梅の細胞ないし果皮の構造が破壊され、水分が放出されやすくなったこと、さらに、梅原料に含まれる繊維質やペクチンなどの粘度を増加させる成分が圧搾残渣に残され、果汁には増粘させるだけの量が含まれないことが原因と考えられる。梅原料をすりおろしたものは、粘性(ペースト状)のものになり、これを濾過等することで低粘度の梅果汁を得ることは困難と考えられ、黄梅(完熟梅)のクエン酸は、これまで利用されることが無かった。従来は、クエン酸は塩とともに取り出されるため、廃棄されることが多かった。無塩梅干し製造に冷凍工程を入れることで、無塩のクエン酸を容易に取り出し、フルに活用することができる。もちろん、シロップ漬けにすれば低粘度の梅果汁は得られるが、これは多量の砂糖を含むために用途が限定される。本発明の梅果汁は、砂糖などの添加物を加えることなく製造できるので、非常に好ましいものである。
本発明において、梅原料の乾燥は、100℃以上の加熱を行うことで実現することができるが、必要な場合には、従来からある他の乾燥手段をさらに採用してもよい。例えば、梅原料の加熱後凍結し、真空状態にして水分を昇華して乾燥させる手段等を採用しても構わない。このようにして得られた梅干しは、圧搾、濾過などによりクエン酸を含む梅果汁を容易に得ることができる。
本明細書において、果皮にあいた穴は、梅蜜が梅から流出するように、梅の果肉が、果皮の一部から露出している状態すべてをいうものとする。従って、本発明において、果皮にあいた穴には、果皮の一部が果肉に至るまで傷ついた状態等も含むものとする。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1
青梅、黄梅、完熟梅をオープンバットに並べ、オーブン内で160〜180℃で約60分間加熱乾燥することにより、本発明の梅干しを得た。得られた梅干し中に含まれるムメフラールを液体クロマトグラフ法により測定したところ、74.3mg/100g梅干しの結果となった。本発明の製造方法により得られた梅干しの高い栄養価が確認された。
160〜180℃で約60分間加熱乾燥した直後の梅干しは茶色っぽい色に変化し、青梅は緑色がほんのりと残った状態であった。表皮はいずれも乾燥してカサカサになっており、到底梅干しには見えず、本発明者はこの加熱乾燥直後の乾燥物は失敗であったと考えた。ところが、これを放置して5時間以上経過すると驚くべきことに品温が室温まで下がるにつれて表皮がしっとりとしてきて従来の梅干しと同様な外観を呈するようになった。
実施例2
以下の加熱乾燥条件で黄梅を乾燥し、重量を測定し、蒸発した水分量を計算した。
(1)40gの黄梅(完熟)に穴をあけて160℃、1時間加熱で30gの梅干しが得られた。
(2)40gの黄梅(完熟)に穴はあけず160℃で1時間加熱で35gの梅干しが得られた。
(3)40gの黄梅(完熟)に穴はあけず160℃、1時間半で23gの梅干しが得られた。
上記のように、本発明の加熱乾燥工程により、かなりの水分が蒸発した。これらの梅干しは、いずれも従来の方法で得られた梅干しと同様の外観を有するものであった。
実施例3
1kgの黄梅(完熟)に剣山で穴を開け、160℃、1時間加熱することにより80ccの梅蜜を得た。その後得られた梅干しを冷蔵庫に1年間保管して、さらに約30cc(合計110cc)の梅蜜を得た。
実施例4
生梅1kgから実施例1と同様にして得た穴をあけないタイプの無塩梅干しを、ホワイトリカー(約200cc)に浸漬して、クエン酸300ccの溶液を採取した。これは茶色い、紅茶のような色であった。
実施例5
以下のようにして、生梅を凍結し、梅果汁を得た。
1.剣山で穴をあけた完熟梅を冷凍庫に入れる
一般的な家庭用冷凍庫を使用(温度−12℃〜−18℃)
包装はせず、平らに並べて冷凍する。穴あき梅が冷凍庫において一晩で完全凍結した。表皮から凍るからか、果汁の染み出しは全くなかった。
2.冷凍梅を冷凍庫から取り出して、常温に放置して30分放置すると、表面が融けはじめ、果汁がすこしづつ穴から流れ出た。
3.上記2を2層式のザルに入れたところ、染み出た果汁が容器のすき間から下の受け皿に流れ出て溜まった。この冷凍梅が果汁流出し、約半分の重量になったときに本発明の加熱乾燥を行うことで、無塩梅干しを作ることもできる。あるいは、上記2の段階で加熱乾燥をすることも可能である。収穫後すぐに加熱乾燥処理をしなくても、冷凍保存したものを、シーズン以外に取り出して梅干し製品化することも可能である。冷蔵保存だと、追熟がすすんで腐ってしまうが、冷凍保存だと腐らない利点がある。穴あけ無しの梅も冷凍から加熱乾燥を経て梅干し製品化することができるが、クエン酸を排出して、酸度を調整しやすいのは穴あけタイプである。
4. 上記3で得られた冷凍梅の皮を破らないようにすこしづつ圧力をかけて絞る(圧搾する)と、ほぼすべての果汁を取り出すことができる。なお、圧搾工程の途中で種を取り出すことができるだけ多くの梅果汁を得るために好ましい。
1kgの黄梅を冷凍させてから果汁を圧搾して、完熟梅1kgから果汁760cc(727g)を得ることができた。
本発明で得られた梅干し、梅蜜、梅果汁などは、そのまま料理に使用することもでき、食べることもできる。これらは、無塩〜うす塩〜濃塩まで任意の塩濃度に調製することができ、無塩のため、種々の味付けを自在に行うことができる。例えばハチミツ、黒砂糖、レモン風味などの香料ないしフレーバー、ハーブなどによる味付け、香り付けが可能である。さらに、梅醤油、梅みそなどに使用するのも好適である。
また、青梅を梅原料に用いた場合には、そのまま食べた場合であってもムメフラールなどの有用成分が多量に含まれているため健康増進に有用である。

Claims (7)

  1. 梅原料を100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする、梅干しの製造方法。
  2. 梅原料が青梅および黄梅からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の梅干しの製造方法。
  3. 梅原料が、果皮に穴をあけた梅原料である請求項1または2に記載の梅干しの製造方法。
  4. 梅原料の果皮に穴をあけ、次いで100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする梅原料から浸出する梅蜜の製造方法。
  5. 梅原料の保存方法であって、梅原料を100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱することにより乾燥することを特徴とする、梅原料の保存方法。
  6. 梅原料を冷凍し、圧搾することを特徴とする、梅果汁の製造方法。
  7. 梅原料を冷凍して酵素を失活させた後、乾燥することを特徴とする、梅干しの製造方法。
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