JP2009134910A - 燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】防食性に優れ耐久性がより向上した燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】燃料電池用セパレータ20は、開口部を有する金属製のセパレータ基材10の表面に電着塗装により炭素含有樹脂からなる樹脂被覆を形成し、さらに樹脂被覆されたセパレータ基材10を焼成し基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させることにより、セパレータ基材10の表面に均一な膜厚のカーボン被膜22が形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】燃料電池用セパレータ20は、開口部を有する金属製のセパレータ基材10の表面に電着塗装により炭素含有樹脂からなる樹脂被覆を形成し、さらに樹脂被覆されたセパレータ基材10を焼成し基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させることにより、セパレータ基材10の表面に均一な膜厚のカーボン被膜22が形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池、特に、基材表面に均一な厚みを有するカーボン被膜が形成され耐食性および導電性に優れた燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法並びに燃料電池に関する。
例えば、固体高分子型燃料電池は、図7に示すように、固体高分子膜からなる電解質膜52を燃料極50と空気極54との2枚の電極で挟んだ接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、さらに2枚のセパレータ40に挟持してなるセルを最小単位とし、通常、このセルを複数積み重ねて燃料電池スタック(FCスタック)とし、高圧電圧を得るようにしている。
固体高分子型燃料電池の発電の仕組みは、一般に、燃料極(アノード側電極)50に燃料ガス、例えば水素含有ガスが、一方、空気極(カソード側電極)54には酸化剤ガス、例えば主に酸素(O2)を含有するガスあるいは空気が供給される。水素含有ガスは、セパレータ40の表面に加工された細かい溝を通って燃料極50に供給され、電極の触媒の作用により電子と水素イオン(H+)に分解される。電子は外部回路を通って、燃料極50から空気極54に移動し、電流を作り出す。一方、水素イオン(H+)は電解質膜52を通過して空気極54に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合し、反応水(H2O)になる。水素(H2)と酸素(O2)および電子の結合反応と同時に発生する熱は、冷却水によって回収される。また、空気極54のあるカソード側に生成した水(以下「反応水」という)は、カソード側から排出される。
上記セパレータ40は、導電性、耐食性、ガスの不透過性など様々な機能が要求されている。そこで、燃料電池のセパレータの製造方法についていくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、カーボン素材または耐食性の金属からなる導電材をエポキシ樹脂などの樹脂に混ぜ合わせ、この導電材含有樹脂を金属からなるセパレータ基材の表面に塗布し、熱硬化させて樹脂膜が形成された高分子電解質型燃料電池用のセパレータが提案されている。また、特許文献2には、フォトレジスト、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル(MMA)のいずれかの有機亜合物にカーボンを添加してなる混合物を、金属からなる基材の電極接触面と反応ガス用溝表面のみにスピンコートにより塗布し500℃以上550℃以下で焼成してなる固体高分子型燃料電池用セパレータの製造方法が提案されている。
一方、特許文献3には、フェノール樹脂成形材料を金型に射出成形し、さらに窒素ガス雰囲気下1500℃で炭化焼成してなる燃料電池用セパレータが提案されている。また、特許文献4には、フェノール樹脂を炭化焼成してなるセパレータの表面に、さらに炭化珪素、炭化チタン、窒化チタン等の耐蝕性導電性被膜を形成してなる燃料電池用セパレータが提案されている。
なお、特許文献5には、金属製セパレータ基材の表面に電着塗装を行いさらにセパレータ基材を乾燥させる工程まで行う電着室を用いて、セパレータ基材に塗膜を形成させる方法が提案されている。
上記特許文献1,2では、カーボン素材を含有する樹脂によりセパレータ基材が被覆されていることから、耐蝕性および導電性の特性は有するものの、樹脂被膜であるため導電性が今一歩であった。また、特許文献3,4に記載のカーボン素材からなるセパレータ基材は、導電性および耐蝕性に優れるもののその強度の面でやや問題がある。
一方、例えば、カーボン素材を溶液に分散させ、カーボン素材含有溶液をスプレー等によりセパレータ用基材表面に塗布した場合には、図6の点線で囲んだ部分Bに示すように、セパレータ基材の発電に関する領域に形成された燃料ガス、酸化剤ガスまたは冷却水等が通過する流路の壁面は、平坦部に比べてカーボン膜圧が薄くなってしまう。さらに、図6の点線で囲んだ部分Cに示すように、セパレータ基材の平置き状態でのスプレー塗布だけでは、セパレータ基材の端面や開口部の開口端面(いわゆる、エッジ部)には、カーボン素材が被覆されない。
さらに、上記スプレー塗布の後に乾燥させた場合、塗布後の液タレ等により、図5に示すように、得られたカーボン被膜の厚みが不均一になり、またセパレータ基材の端面や開口部の開口端面(いわゆる、エッジ部)には、カーボン被覆が形成されない。
したがって、上記図5,図6に示すような不均一な膜厚のカーボン被膜では、セパレータの耐食性および導電性はその平面上で不均一になり、その結果、セパレータとしての耐久性は劣り、また上記不均一カーボン被膜が形成されたセパレータを用いた燃料電池は、その発電効率が低下してしまうおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みを有するカーボン被膜を形成させ耐食性および導電性に優れた燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法並びに燃料電池を提供する。
本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法並びに燃料電池は、以下の特徴を有する。
(1)開口部を有する金属製の基材の表面に電着塗装ののち炭化させてなるカーボン被膜を備えた燃料電池用セパレータである。
上記燃料電池用セパレータは、公差の範囲内で均一な膜厚のカーボン被膜がその表面に形成されているため、従来に比べ導電性および耐食性に優れた燃料電池用セパレータを提供できる。
(2)上記(1)に記載の燃料電池用セパレータにおいて、発電に関与する領域と前記開口部を有する周辺領域の表面にカーボン被膜が形成されている燃料電池用セパレータである。
(3)開口部を有する金属製の基材の表面に電着塗装により炭素含有樹脂からなる樹脂被覆を形成する工程と、基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させ前記基材の表面にカーボン被膜を形成する工程と、を有する燃料電池用セパレータの製造方法である。
電着塗装を用いることにより、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みの炭素含有樹脂からなる樹脂被膜が形成される。さらに、基材の表面に形成された樹脂被膜の炭素含有樹脂からなる樹脂を炭化させることによって、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みのカーボン被膜が形成される。したがって、その表面に公差の範囲で均一な導電性および耐食性を有するカーボン被覆が形成された燃料電池用セパレータは耐久性に優れ、また上記カーボン被膜が形成された燃料電池用セパレータを用いた燃料電池は、発電効率が向上する。
(4)上記(3)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記樹脂被膜を形成する工程は、前記金属製の基材における発電に関与する領域と前記開口部を有する周辺領域の表面に同時に樹脂被覆を形成する燃料電池用セパレータの製造方法である。
金属製の基材における発電に関与する領域と前記開口部を有する周辺領域の表面に同時に樹脂被覆を形成し、その後樹脂被膜を炭化させるだけで、公差の範囲内で均一な膜厚保を有するカーボン被膜を簡便に形成することができる。
(5)上記(3)または(4)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記炭化させる温度は、前記炭素含有樹脂の架橋温度より高い温度である燃料電池用セパレータの製造方法である。
架橋温度より高い温度にて炭化することによって、電着塗装により塗布された炭素含有樹脂を架橋させ、最終的に架橋済みの樹脂被膜を炭化させることで、密度の高いカーボン被膜をセパレータ基材の表面に形成させることができる。
(6)上記(3)または(4)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記炭素含有樹脂は、熱硬化性樹脂からなり、前記炭化させる温度は、140℃以上である燃料電池用セパレータの製造方法である。
熱硬化樹脂を用いた場合には、140℃以上で熱硬化性樹脂が硬化しさらに炭化するため、密度の高いカーボン被膜をセパレータ基材の表面に形成させることができる。
(7)上記(3)または(4)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記炭素含有樹脂は、熱可塑性樹脂からなり、前記炭化させる温度は、200℃以上であって、炭化時間は1秒以上60秒以下である燃料電池用セパレータの製造方法である。
熱可塑性樹脂は、一般に炭化温度より低い温度で融解を始める。したがって、融解による樹脂被膜のタレを抑制するため、200℃以上の高温で短時間でフラッシュ炭化を行うことにより、均一な膜厚のカーボン被膜が形成される。
(8)電解質膜と前記電解質膜を挟持する燃料極と空気極とからなる接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、前記セパレータは、上記(3)から(7)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法により製造されている燃料電池である。
上記カーボン被膜が形成された燃料電池用セパレータを用いた燃料電池は、耐久性を有し、さらに発電効率が向上する。
本発明によれば、電着塗装を用いることにより、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みの炭素含有樹脂からなる樹脂被膜が形成され、さらに、基材の表面に形成された樹脂被膜の炭素含有樹脂からなる樹脂を炭化させることによって、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みのカーボン被膜が形成された燃料電池用セパレータを提供することができる。さらに、その表面に公差の範囲内で均一な導電性および耐食性を有するカーボン被覆が形成された燃料電池用セパレータは耐久性に優れる。
また、上記カーボン被膜が形成された導電性に優れた燃料電池用セパレータを用いることによって、従来に比べ発電効率が向上した燃料電池を提供することができる。
以下、燃料電池用セパレータの製造方法の一例を、以下に、図面に基づいて説明する。
[燃料電池用セパレータおよびその製造方法]
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池用セパレータ20は、開口部14を有する金属製のセパレータ基材の表面に均一な膜厚のカーボン被膜22が形成されている。さらに詳細に説明すると、本実施の形態の燃料電池用セパレータ20の両端には、それぞれ、燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水を供給される供給連通孔および燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水が排出される排出連通孔として機能する開口部14が設けられ、さらに、燃料電池用セパレータ20には、開口部14の一部の供給連通孔から供給された燃料ガスや酸化剤ガスをそれぞれ流通させる凹凸溝のガス流路が設けられた発電に関与する領域12が形成されている。
図1に示すように、本実施の形態の燃料電池用セパレータ20は、開口部14を有する金属製のセパレータ基材の表面に均一な膜厚のカーボン被膜22が形成されている。さらに詳細に説明すると、本実施の形態の燃料電池用セパレータ20の両端には、それぞれ、燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水を供給される供給連通孔および燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水が排出される排出連通孔として機能する開口部14が設けられ、さらに、燃料電池用セパレータ20には、開口部14の一部の供給連通孔から供給された燃料ガスや酸化剤ガスをそれぞれ流通させる凹凸溝のガス流路が設けられた発電に関与する領域12が形成されている。
さらに、図1のA−A線に沿った断面を図2に示す。図2に示すように、本願実施の形態の燃料電池用セパレータ20は、セパレータ基材10の発電に関する領域12(「発電領域」ともいう)およびその周辺の開口部14を有する領域の開口部14(いわゆる、エッジ部)のほぼ全表面に亘って、均一な膜厚のカーボン被膜22が形成されている。特に、開口部14の開口側面にも発電に関する領域12の表面とほぼ同一のカーボン被膜22が形成されている。
上記カーボン被膜22の膜厚は1μm以上、経時における防食耐久性の観点から4μm以上が好ましい。なお、通常、燃料電池に電圧がかかると、燃料電池用セパレータの表面に形成されたカーボン被膜は、酸化性雰囲気下において酸素と反応しCO2に変化していくため、カーボン被膜の膜厚が薄くなっていく。
金属製のセパレータ基材10としては、導通可能な金属製の基板であれば如何なる基板でもよいが、例えば、アルミニウム製基板、鉄製基板、鉄合金製基板、ステンレス製基板、チタン製基板を用いることができ、さらに、ステンレス製基板としては、例えばSUS304、SUS305、SUS310、SUS316やSUSMX7などのオーステナイト系ステンレス、SUS430などのフェライト系ステンレス、SUS403、SUS410、SUS416やSUS420などのマルテンサイト系ステンレスと、SUS631などの析出硬化系ステンレスなどのステンレス鋼からなる基板が挙げられる。
次に、本実施の形態における燃料電池用セパレータの製造方法の一例について、図3,図4を用いて以下に説明する。
図4に示すように、本実施の形態における燃料電池用セパレータの製造方法は、セパレータ基材の表面に電着塗装により炭素含有樹脂からなる樹脂被覆を形成する工程(S100)と、基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させ前記セパレータ基材の表面にカーボン被膜を形成する工程(S102)とを有する。
上記樹脂被覆形成工程は、例えば、図3に示すように、マスキングをすることなくセパレータ基材10における発電に関与する領域12(図1)と開口部14(図1)を有する周辺領域の両方を露出したまま、セパレータ基材10(図2)をワーク32として陰極とし、上記樹脂皮膜をほぼ全表面に形成するために、電解槽36に貯留された水性電着樹脂塗料液38中に浸漬し、対極34との間に直流電流を印加する。これにより、セパレータ基材10の発電に関与する領域12(発電領域)およびエッジ部(図2)(開口部14の開口側面を含む)に、カチオン電着により樹脂皮膜22を形成する。ここで、セパレータ基材10(図2)の複数箇所を電極接合部として、カソードに接続され、セパレータ基材10からなるワーク32を陰極として、水溶性電着樹脂塗料が、その表面のほぼ全面に電着塗装される。
上記樹脂皮膜を形成するカチオン電着塗装用の水溶性電着樹脂塗料としては、炭素原子含有樹脂からなる水溶性電着樹脂塗料であって、例えば可撓性樹脂からなる水溶性電着樹脂塗料や熱硬化性樹脂からなる水溶性電着樹脂塗料などが挙げられる。
上記可撓性樹脂からなる水溶性電着樹脂塗料に用いられる可撓性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンなどが挙げられ、また、上記熱硬化性樹脂からなる水溶性電着樹脂塗料に用いられる熱硬化性樹脂としては、イミド系樹脂、アミド系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。なお、一般に、ウレタン系樹脂は、その構造に応じて可撓性樹脂と熱硬化性樹脂のそれぞれに分類されるため、使用するウレタン系樹脂の構造と特性に応じ、可撓性樹脂、熱硬化性樹脂に分類して用いる。
さらに、上記熱硬化性樹脂としては、親水性官能基、例えばアミン基を有するアミン系樹脂を用いることが好適であり、アミン系樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アミン硬化エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記カチオン電着塗装を用いることにより、セパレータ基材の表面に均一な厚みの炭素含有樹脂からなる樹脂被膜が形成される。
上述した熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂による樹脂被膜の膜厚は、後述する炭化工程(図4のS102)により得られるカーボン被膜の所望の膜厚に応じて、適宜選択される。例えば、使用する炭素含有樹脂の炭素量およびその樹脂構造に応じて、最終的に炭化して得られるカーボン被膜の膜厚を予めシミュレーションしておき、カチオン電着塗装における樹脂被膜の膜厚を設定してもよい。
次いで、その表面に均一な膜厚の樹脂被覆が形成されたセパレータ基材を焼成し、さらに基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させることによって、セパレータ基材(図2)の表面にカーボン被膜22(図2)が形成される。
セパレータ基材の表面に形成された公差の範囲内で均一膜厚の樹脂被膜を炭化させることによって、基材表面に公差の範囲内で均一な厚みのカーボン被膜が形成される。したがって、その表面に公差の範囲内で均一な導電性および耐食性を有するカーボン被覆が形成された燃料電池用セパレータは耐久性に優れ、また上記カーボン被膜が形成された燃料電池用セパレータを用いた燃料電池は、発電効率が向上する。
上記炭素含有樹脂が、上述した熱硬化性樹脂からなる場合には、140℃以上の温度で1時間以上で炭化させる。例えば、上記熱硬化性樹脂がアミン系樹脂の場合には、300℃以上の温度で1時間以上で炭化させることが好ましい。なお、不飽和ポリエステル樹脂の最低炭化温度は通常約140℃である。
熱硬化樹脂を用いた場合には、上記温度以上で熱硬化性樹脂を硬化させ、さらに炭化させることによって、密度の高いカーボン被膜22(図2)をセパレータ基材10の表面に形成させることができる。
また、上記炭素含有樹脂が、上述した熱可塑性樹脂からなる場合には、200℃以上、例えば200℃から800℃の温度で1秒以上60秒以下の炭化時間で、炭化させる。なお、ポリプロピレンの炭化温度は通常約200℃であり、一方800度を超えると、炭素含有樹脂は通常炭素原子又は二酸化炭素(CO2)になってしまう。
熱可塑性樹脂は、一般に炭化温度より低い温度で融解を始める。したがって、融解による樹脂被膜のタレを抑制するため、200℃以上の高温で短時間でフラッシュ炭化を行うことにより、均一な膜厚のカーボン被膜を形成することができる。
[燃料電池]
本実施の形態の燃料電池は、電解質膜と前記電解質膜を挟持する燃料極と空気極とからなる接合体と、前記接合体を挟持する一対の燃料電池用セパレータとから構成されるセルを積層してなり、前記燃料電池用セパレータは、上述した燃料電池用セパレータの製造方法により製造された燃料電池用セパレータである。
本実施の形態の燃料電池は、電解質膜と前記電解質膜を挟持する燃料極と空気極とからなる接合体と、前記接合体を挟持する一対の燃料電池用セパレータとから構成されるセルを積層してなり、前記燃料電池用セパレータは、上述した燃料電池用セパレータの製造方法により製造された燃料電池用セパレータである。
上記カーボン被膜が形成された燃料電池用セパレータを用いた燃料電池は、従来に比べ発電効率が向上する。また、セパレータの耐久性が向上することから、燃料電池自体の耐久性も向上し、さらに、燃料電池用セパレータの表面に形成されたカーボン被膜が公差の範囲内で均一な膜厚を有するため、セル面内の厚みも均一になり、その結果、セルを公差の範囲内で均一な圧力で積層していくことができるため、歪みを生じにくく、さらに燃料電池の耐久性が向上する。
以下に、本発明の表面処理が施された燃料電池用セパレータについて、実施例を用いて説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものはない。
[実施例1]
熱硬化性樹脂であるポリアミドイミド樹脂をカチオン電着塗料とし、上記ポリアミドイミド樹脂からなるカチオン電着塗料の塗料濃度20重量%の電着浴に、オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材を陰極として浸漬し、塗極比+/−:−1/2、極間距離:15cm、液温30℃に調整した。5秒で所定の電圧となるよう印加電圧を上げ、所定の電圧に達した後、115〜145秒間印加電圧を保持し、カチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータにおける樹脂被膜の厚みは20μmであった。得られた樹脂被膜形成セパレータを高性能焼成炉を用いて窒素ガス雰囲気中で、300℃で1時間炭化させることにより、セパレータ基材の表面に膜厚4μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータA」という。
熱硬化性樹脂であるポリアミドイミド樹脂をカチオン電着塗料とし、上記ポリアミドイミド樹脂からなるカチオン電着塗料の塗料濃度20重量%の電着浴に、オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材を陰極として浸漬し、塗極比+/−:−1/2、極間距離:15cm、液温30℃に調整した。5秒で所定の電圧となるよう印加電圧を上げ、所定の電圧に達した後、115〜145秒間印加電圧を保持し、カチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータにおける樹脂被膜の厚みは20μmであった。得られた樹脂被膜形成セパレータを高性能焼成炉を用いて窒素ガス雰囲気中で、300℃で1時間炭化させることにより、セパレータ基材の表面に膜厚4μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータA」という。
[実施例2]
熱可塑性樹脂であるアクリル系樹脂をカチオン電着塗料とし、上記アクリル系樹脂からなるカチオン電着塗料の塗料濃度20重量%の電着浴に、オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材を陰極として浸漬し、塗極比+/−:−1/2、極間距離:15cm、液温30℃に調整した。5秒で所定の電圧となるよう印加電圧を上げ、所定の電圧に達した後、115〜145秒間印加電圧を保持し、カチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータにおける樹脂被膜の厚みは20μmであった。得られた樹脂被膜形成セパレータを高性能焼成炉を用いて窒素ガス雰囲気中で、800℃で30秒間炭化させることにより、セパレータ基材の表面に膜厚4μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータB」という。
熱可塑性樹脂であるアクリル系樹脂をカチオン電着塗料とし、上記アクリル系樹脂からなるカチオン電着塗料の塗料濃度20重量%の電着浴に、オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材を陰極として浸漬し、塗極比+/−:−1/2、極間距離:15cm、液温30℃に調整した。5秒で所定の電圧となるよう印加電圧を上げ、所定の電圧に達した後、115〜145秒間印加電圧を保持し、カチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータにおける樹脂被膜の厚みは20μmであった。得られた樹脂被膜形成セパレータを高性能焼成炉を用いて窒素ガス雰囲気中で、800℃で30秒間炭化させることにより、セパレータ基材の表面に膜厚4μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータB」という。
[比較例1]
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材に、10重量%から50重量%カーボン粒子が分散されたポリアミド樹脂塗料を導電性塗料として用い、実施例1と同一条件にてカチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータの樹脂皮膜の厚みは20μmであった、このセパレータを「セパレータC」という。
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材の全面を露出したままセパレータ基材に、10重量%から50重量%カーボン粒子が分散されたポリアミド樹脂塗料を導電性塗料として用い、実施例1と同一条件にてカチオン電着塗装を行った。得られた樹脂皮膜形成セパレータの樹脂皮膜の厚みは20μmであった、このセパレータを「セパレータC」という。
[比較例2]
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材に、カーボン粒子をキシレンに20重量%分散させた分散液をスプレー塗布とし乾燥させて、セパレータ基材の表面に膜厚10μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータD」という。
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材に、カーボン粒子をキシレンに20重量%分散させた分散液をスプレー塗布とし乾燥させて、セパレータ基材の表面に膜厚10μmのカーボン被膜を形成した。得られた燃料電池用セパレータを「セパレータD」という。
<腐食性試験>
硫酸含有pH2.0の酸性溶液+Cl-(500ppm)中に樹脂形成基材を陽極として、対極との間に電圧を印加していき、上記陽極と対極との間に腐食電流が流れ出すときの電圧を測定する。
硫酸含有pH2.0の酸性溶液+Cl-(500ppm)中に樹脂形成基材を陽極として、対極との間に電圧を印加していき、上記陽極と対極との間に腐食電流が流れ出すときの電圧を測定する。
上記腐食試験を行った結果、上記半導体層を形成した後樹脂被覆を形成したセパレータ基材A,Bの腐食電流が流れた時の電圧は、1.2V以上であった。一方、セパレータ基材C,Dの腐食電流が流れた時の電圧は、0.31〜0.37であった。上記結果より、明らかに本発明の炭化処理により得られた均一膜厚のカーボン被膜が形成されたセパレータ基材A,Bの方が防食性に優れることが分かる。
本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法は、燃料電池を用いる用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、特に車両用の燃料電池に供することができる。
10 セパレータ基材、 12 発電に関与する領域、14 開口部、20 燃料電池用セパレータ、22 カーボン被膜。
Claims (8)
- 開口部を有する金属製の基材の表面に電着塗装ののち炭化させてなるカーボン被膜を備えたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 請求項1に記載の燃料電池用セパレータにおいて、
発電に関与する領域と前記開口部を有する周辺領域の表面にカーボン被膜が形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 開口部を有する金属製の基材の表面に電着塗装により炭素含有樹脂からなる樹脂被覆を形成する工程と、
基材表面に被覆された炭素含有樹脂を炭化させ前記基材の表面にカーボン被膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 請求項3に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記樹脂被膜を形成する工程は、前記金属製の基材における発電に関与する領域と前記開口部を有する周辺領域の表面に同時に樹脂被覆を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記炭化させる温度は、前記炭素含有樹脂の架橋温度より高い温度であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記炭素含有樹脂は、熱硬化性樹脂からなり、
前記炭化させる温度は、140℃以上であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記炭素含有樹脂は、熱可塑性樹脂からなり、
前記炭化させる温度は、200℃以上であって、炭化時間は1秒以上60秒以下であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。 - 電解質膜と前記電解質膜を挟持する燃料極と空気極とからなる接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、
前記セパレータは、請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法により製造されていることを特徴とする燃料電池。
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JP2012243625A (ja) * | 2011-05-20 | 2012-12-10 | Kobe Steel Ltd | 燃料電池セパレータの製造方法 |
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