JP2012243625A - 燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、金属基材表面に炭素層を形成する炭素層形成工程と、形成した前記炭素層を前記金属基材に圧着する圧着工程と、前記炭素層が圧着した前記金属基材を300〜850℃の温度で熱処理する熱処理工程と、を含み、前記炭素層形成工程は、黒鉛粉および結着材を含むスラリーを前記金属基材の表面に塗布することによって行われ、当該結着材は、前記熱処理により完全分解せずに炭化する結着材であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
さらに、燃料電池セル内部は高温・酸性雰囲気であるので、燃料電池用のセパレータには高耐食性も要求される。
例えば、酸洗したステンレス基材表面にカーボン粉末を含む導電性塗膜を形成したセパレータ材料(特許文献1)や、金属基材へ塗布することによりセパレータの耐食性および導電性を付与することができるカーボン粉末を含む導電性塗料、およびこの導電性塗料を塗布したセパレータ材料(特許文献2、3)が提案されている。
加えて、スラリーに結着材が含まれていることから、スラリーが乾燥した後に黒鉛粉が金属基材表面から脱落してしまうといった事態を回避することができる。その結果、炭素層と金属基材とを良好に密着させることができる。
そして、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、前記増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、アガロース、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、カードラン、サイリウムのいずれかであることが好ましい。
したがって、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法によれば、燃料電池セル内部の高温・酸性雰囲気下でも高い導電性を長時間維持できる燃料電池セパレータの製造方法を提供することができる。
加えて、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、所定の黒鉛粉を用いることにより、金属基材上に、緻密で被覆率の高い炭素層を形成することができる。
まず、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法で製造される燃料電池セパレータ(以下、適宜、セパレータという)について説明する。
セパレータは、金属基材と、当該金属基材の表面に形成された炭素層(黒鉛粉により形成される層)と、から構成される。なお、炭素層は、金属基材の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。また、セパレータとは、セパレータ用の板材も含む。
以下、セパレータを構成する金属基材、炭素層について説明する。
燃料電池セパレータの基材は、ガスの流路となる溝を形成するために必要となる加工性の点、ガスバリア性の点、導電性や熱伝導性の点から金属基材を用いる。なお、燃料電池内部環境下での耐食性の観点から、純チタン、チタン合金またはステンレス鋼からなるのが好ましい。中でも純チタンまたはチタン合金はステンレス鋼と比べて軽量であるとともに耐食性に優れるため、非常に好ましい材料である。
炭素層は、基材表面に形成される層であり、後述の黒鉛粉により構成される。
炭素層の付着量は、特に限定されないが、10〜1000μg/cm2が好ましい。10μg/cm2未満では、導電性と耐食性を確保し難く、1000μg/cm2を超えると導電性と耐食性の効果については飽和する一方で、加工性が低下するからである。
なお、炭素層は基材の表面全体に被覆されていることが好ましいが、導電性と耐食性を確保するために、基材表面の40%以上、好ましくは50%以上に被覆していればよい。
≪スラリー≫
スラリーは、黒鉛粉と結着材とを含む流動体である。そして、黒鉛粉および結着材以外の成分(溶媒)については、特に限定されず、有機溶媒や水を使用すればよい。有機溶媒は使用する樹脂を溶解するものを使用するのが良く、エタノール、トルエン、キシレン等が使用できる。
基材表面に炭素層を形成する際に使用する黒鉛粉は、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、および熱分解黒鉛粉のうちのいずれか、または、これらを主体とする黒鉛粉であるのが好ましい。
鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛粉は、粉末の粒が鱗状の形態となっているとともに、この粒自体は更に薄い黒鉛の薄片が積み重なってできている。このような黒鉛粉を用いて基材表面に炭素層を形成した後に圧着(圧延)を施すと、粉末の粒を構成する薄片同士が圧力により滑って広がり、基材表面を覆うようになる。したがって、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛粉を用いると、基材上に、緻密で、被覆率の高い炭素層を形成することができる。なお、これらの黒鉛粉の中でも、特に、膨張化黒鉛粉は薄片間に微細な空間があるため圧力を受けたときに潰れやすく、薄片間での滑りが起こることでより広がり易い。よって、膨張化黒鉛粉を用いるのが特に好ましい。
また、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛粉を用いると、低い圧下率でも、緻密な炭素層を高い被覆率で形成することが可能であるため、生産性に優れ、コスト面でもメリットが大きい。
なお、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、熱分解黒鉛のいずれかもしくはこれらの混合粉末からなる黒鉛粉を用いる場合が好ましい。
スラリー中に黒鉛粉を均一に分散させ、且つ基材と炭素層との密着性を向上させるためには適切な結着材を用いる必要がある。なお、結着材とは、対象物を結びつけるために加えられる化合物であり、詳細には、黒鉛粉同士および黒鉛粉と基材とを結びつけるための化合物である。
一方、黒鉛粉はエタノールなどの有機溶媒中には容易に分散する。しかしながら、単に黒鉛粉を有機溶媒中に分散させたものを基材上に塗布しても、乾燥後には黒鉛粉が基材とは密着せずに容易に脱落する。よって、有機溶媒を用いる場合でも炭素層を基材と良好に密着させるためにはスラリー中に樹脂などからなる結着材を含有させる必要がある。
300〜850℃の熱処理により完全分解せずに炭化する結着材を用いると、黒鉛粉同士および黒鉛粉と基材を繋ぐ役割を果たしている結着材が、後述する熱処理工程の条件において炭化して黒鉛粉同士および黒鉛粉と基材との繋がりをより強固なものにするとともに、結着材自身が炭化して導電性が得られることで、セパレータの導電性を向上させることができるからである。
なお、300〜850℃の熱処理により完全分解する化合物、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などを結着材として用いると、スラリー塗布により基材上に炭素層を形成することはできるものの、炭素層を黒鉛粉同士および黒鉛粉と基材を繋ぐ役割を果たすべき結着材が熱処理工程後には完全分解してしまう。その結果、基材上に黒鉛粉がばらばらに乗っているだけのような状態となり、基材と炭素層の密着性が得られず、基材上から炭素層が容易に脱落するため好ましくない。
なお、結着材は、前記増粘剤および前記樹脂のうち、1種から構成されていてもよいし、これらを適宜混合して用いてもよい。また、これらが主体として含有する結着材であってもよく、その場合は、結着材の総重量に対して、前記増粘剤および前記樹脂のいずれかもしくはこれらの混合したものを50重量%以上含むように調整するのが好ましい。
本発明に係る黒鉛スラリーに含まれる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アガロース、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、カードラン、サイリウムなどの増粘剤が好適に用いられる。
燃料電池セパレータの製造方法は、炭素層形成工程と、圧着工程と、熱処理工程と、を含む。なお、圧着工程として、圧着工程の一形態である圧延工程を行うことが好ましい。
以下、燃料電池セパレータの製造方法を、工程ごとに説明する。
炭素層形成工程とは、基材表面に炭素層を形成する工程である。
炭素層の形成方法としては、黒鉛粉および結着材を含むスラリーを塗布することによって行われる。
黒鉛粉および結着材を含むスラリーを塗布する方法によれば、各種コーター等の塗工装置を用いて基板上に連続的に且つ均一に塗布することが可能であり、スラリー中の黒鉛粉の濃度や塗工条件を調整することにより、基板上の黒鉛の量を容易に調整することが可能である。
前記の各種コーターを用いることにより、基材表面に適切にスラリーを連続して塗布することができ、生産性を向上させることができる。
圧着工程とは、炭素層形成工程の後に、炭素層を基材に圧着する工程である。例えば不織布などを炭素層に押し付けて擦り広げることや、炭素層を形成した材料を、樹脂製、ゴム製あるいは金属製の2本のロールの間に加圧しながら通すことにより、炭素層を潰して伸ばし、緻密な状態にしながら基材との密着性を高める。
なお、圧下率は、圧延工程前後の炭素層が形成された基材(炭素層の厚さも含む)の厚さの変化から算出した値であり、「圧下率=(t0―t1)/t0×100」(t0:炭素層形成工程後の初期厚さ、t1:圧延後の厚さ)により算出する。
熱処理工程とは、圧着工程の後に、炭素層が形成された基材を熱処理することによって、炭素層と基材との結合をより強固なものとする工程である。
なお、この熱処理は、300〜850℃の熱処理温度で熱処理を行うことができ、かつ雰囲気調整ができる熱処理炉であれば、電気炉、ガス炉等、どのような熱処理炉でも用いることができる。
熱処理工程の後、ガスの流路となる溝をプレス成形により形成する場合、切断、プレス加工等により、所望の形状に成形して、燃料電池セパレータとする工程を行ってもよい。
なお、このプレス成形工程は熱処理工程前に行うこともできる。そして、プレス成形の際、基材上の炭素層が潤滑剤としての作用を発揮するため、潤滑油無しでもプレス成形が可能であるとともに、プレス成形後も炭素層の剥離がほとんど起こらない。このためプレス成形後の脱脂洗浄が不要となりセパレータの生産性も向上する。
基材としては、JIS 1種のチタン基材(焼鈍酸洗仕上げ)とステンレス(SUS316L)の2種類を使用した。
チタン基材(焼鈍酸洗仕上げ)の化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、残部がTiおよび不可避的不純物であり、チタン基材の板厚は、0.2mmであり、サイズは50×150mmとした。当該チタン基材は、チタン原料に対して従来公知の溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程を施して得られたものである。
ステンレス(SUS316L)の化学組成は、Cr:16.7%、Ni:12.3%、Mo:2.5%、Mn:1.2%、Si:0.5%、C:0.02%、残部がFeおよび不可避不純物であり、基材の板厚は0.2mmであり、サイズは50×150mmとチタン基材と同厚さ、同サイズで作製した。
なお、スラリー中の黒鉛粉の濃度は10重量%に固定して行った。
増粘剤を用いたときの溶媒には水を、各樹脂を用いた場合の溶媒には各樹脂を溶解させる有機溶媒を選択して用いた。なおスラリー中の結着材の濃度は、用いた結着材の種類や溶媒によって適宜調整した。
その後、4段圧延機を用いて、圧延油を用いずに、3tonの荷重を掛けて1パスのみの冷間圧延を行い(圧下率3%)、基材上に炭素層を圧着させた。
次に、圧延を行った試験体より20×50mmのサイズの試験体を切り出し、真空雰囲気(6.7×10−3Pa)またはアルゴンガス中(ガス中酸素濃度2ppm)において、室温から700℃まで30分で昇温し、700℃にて3分間保持後に炉冷するという条件での熱処理を施した。
前記方法により作製した試験体について、図1に示す接触抵抗測定装置10を用いて、接触抵抗を測定した。詳細には、試験体11の両面を2枚のカーボンクロス12、12で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の2枚の銅電極13、13で挟んで荷重98N(10kgf)で加圧し、直流電流電源を用いて7.4mAの電流を通電し、カーボンクロス12、12の間に加わる電圧を電圧計で測定して、接触抵抗(初期接触抵抗)を求めた。
接触抵抗が8mΩ・cm2以下の場合を導電性が良好、8mΩ・cm2を超える場合を導電性が不良とした。
図1に示す接触抵抗測定装置10を用いて、密着性評価を行った。試験体11の両面を2枚のカーボンクロス12、12で挟み、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極13、13で挟んで荷重19.6N(2kgf)に加圧し、両面から加圧された状態を保持したまま、面内方向に試験体11を引き抜いた(引抜き試験)。
引抜き試験後、非摩擦面および摩擦面をSEM/EDXにて50倍の倍率で観察し、加速電圧を15kVとしてチタン(Ti)と炭素(C)を定量分析したときに、非摩擦面での炭素の量(原子%)に対する摩擦面での炭素の量の割合、すなわち摩擦試験後の炭素の残存率((摩擦面での炭素量(原子%)/非摩擦面での炭素量(原子%))×100)を求めた。この摩擦試験後の炭素の残存率が70%以上であったときは○(良好)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の50%以上、70%未満であるときは△(やや不良)、摩擦面での炭素の量が非摩擦面の炭素の量50%未満であるときを×(不良)と判断し、○(良好)となるものを合格と判断した。
また、炭素層密着性が合格判定となった試験体において、耐久性評価(耐久試験)を行った。すなわち、試験体を比液量が20ml/cm2である80℃の硫酸水溶液(10mmol/L)に浸漬し、さらに飽和カロメル電極(SCE)を基準として試験体に対して+600mVの電位を印加しながら100時間の浸漬処理を行った後、試験体を硫酸水溶液から取り出し、洗浄、乾燥して、前記と同様の方法で接触抵抗を測定した。
前記浸漬後(耐久試験後)の接触抵抗(表1では耐久試験後接触抵抗と示す)が20mΩ・cm2以下の場合を耐久性が合格、20mΩ・cm2を超える場合を耐久性が不合格とした。
各試験体の基材種、黒鉛粉の種類および平均粒径、結着材の種類および濃度、溶媒の種類、熱処理雰囲気、接触抵抗測定結果、炭素層密着性評価結果を表1に示す。
一方、試験体No.15〜17に係るセパレータは、結着材として300〜850℃の熱処理により完全分解するものを用いているため、炭素層の密着性が不良またはやや不良となった。
以上の結果より、本発明で規定する方法により製造した燃料電池セパレータは、導電性および炭素層(導電層)と基材との密着性に優れるとともに、耐久性にも優れることが分かった。
11 試験体
12 カーボンクロス
13 銅電極
Claims (6)
- 金属基材表面に炭素層を形成する炭素層形成工程と、
形成した前記炭素層を前記金属基材に圧着する圧着工程と、
前記炭素層が圧着した前記金属基材を300〜850℃の温度で熱処理する熱処理工程と、を含み、
前記炭素層形成工程は、黒鉛粉および結着材を含むスラリーを前記金属基材の表面に塗布することによって行われ、当該結着材は、前記熱処理により完全分解せずに炭化する結着材であることを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。 - 前記結着材が、増粘剤、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニルのうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、アガロース、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、カードラン、サイリウムのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記黒鉛粉が、鱗状黒鉛粉、鱗片状黒鉛粉、膨張化黒鉛粉、および熱分解黒鉛粉のうちのいずれか、または、これらを主体とする黒鉛粉であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記スラリー中に占める前記黒鉛粉濃度が50重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
- 前記スラリーを前記金属基材の表面に塗布する方法が、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、ロッドコーター、ディップコーター、スプレーコーターのいずれかを用いて塗布する方法であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
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