JP4976727B2 - 表面処理方法、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法 - Google Patents

表面処理方法、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法 Download PDF

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本発明は、表面処理方法、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法、特に、水濡れ性のよい表面処理方法、および、セパレータ基材と樹脂被覆層との密着性を向上させ耐久性に優れた燃料電池用セパレータおよび燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304)表面を陰極とし、対極として、ニッケル含有量が3重量%未満の鉄系材料、例えば、フェライト系ステンレス鋼を用い、リン酸三ナトリウムや炭酸ナトリウムを含む緩衝水溶液を含むアルカリ水溶液中にて電気化学的処理を行って、その表面に形成された皮膜により、塗料や接着剤の濡れ性を向上させる表面処理方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、特許文献2には、粗面化したステンレス鋼に、クロムの水酸化物、クロム酸化物、鉄の水酸化物および鉄の酸化物を析出されたステンレス鋼が開示され、ゴム層との密着性を改良する方法が提案されている。さらに、特許文献3には、アルカリ水溶液中で陰極電解処理してなる塗膜密着性に優れたステンレス鋼の表面は水酸化物皮膜が形成され、この水酸化物皮膜中の原子%のCr/Fe比が1.1以上であるステンレス鋼板が記載されている。
特許第2966595号明細書 特開2005−42130号公報 特許第3668147号明細書
上述したステンレス鋼の表面処理に用いた対極は、いずれもクロムおよび/またはニッケルを含有するステンレス鋼を用いている。したがって、上述の表面処理により形成された表面処理皮膜は、鉄の水酸化物および鉄の酸化物の他に、クロムの水酸化物およびクロムの酸化物および/またはニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物が含まれる。
しかしながら、クロムの水酸化物およびクロムの酸化物は、鉄の水酸化物および鉄の酸化物に比べ、水濡れ性がやや劣り、また水性樹脂との密着性が劣ることが知られている。特に、クロム酸化物は、ステンレス鋼表面に形成されている不動態皮膜であることから、後述するように水性樹脂に対しての密着性は低い。同様に、ニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物も、鉄の水酸化物および鉄の酸化物に比べ、水濡れ性がやや劣り、また水性樹脂との密着性が劣る。
したがって、ステンレス鋼において、水濡れ性の高い、また水性樹脂との密着性がより高い表面処理皮膜の形成が望まれている。
一方、例えば、固体高分子型燃料電池は、図8に示すように、固体高分子膜からなる電解質膜52を燃料極50と空気極54との2枚の電極で挟んだ接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、さらに2枚のセパレータ40に挟持してなるセルを最小単位とし、通常、このセルを複数積み重ねて燃料電池スタック(FCスタック)とし、高圧電圧を得るようにしている。
固体高分子型燃料電池の発電の仕組みは、一般に、燃料極(アノード側電極)50に燃料ガス、例えば水素含有ガスが、一方、空気極(カソード側電極)54には酸化剤ガス、例えば主に酸素(O2)を含有するガスあるいは空気が供給される。水素含有ガスは、セパレータ40の表面に加工された細かい溝を通って燃料極50に供給され、電極の触媒の作用により電子と水素イオン(H+)に分解される。電子は外部回路を通って、燃料極50から空気極54に移動し、電流を作り出す。一方、水素イオン(H+)は電解質膜52を通過して空気極54に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合し、反応水(H2O)になる。水素(H2)と酸素(O2)および電子の結合反応と同時に発生する熱は、冷却水によって回収される。また、空気極54のあるカソード側に生成した水(以下「反応水」という)は、カソード側から排出される。
さらに、上述したMEAを挟持する2枚のセパレータは、水素ガスと酸素ガスとを隔てる役割をする仕切り板であるとともに、積み重ねられたセルを電気的に直列に接続する機能も有する。また、2枚のセパレータの表面には細かい凹凸の溝が形成され、この溝は水素含有ガスと酸素含有ガスまたは空気を流通させるガス流通路となっている。
従来のセルの構造の一例が、図9および図10に示されている。なお、図10のA−A’線に沿った断面を図9に示す。
図9、図10に示すように、2枚のセパレータ110,120の両端には、それぞれ、燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水を供給される供給連通孔12a,12b,12cおよび燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水が排出される排出連通孔14a,14b,14cが設けられ、さらに、セパレータ110,120には、供給連通孔12a,12bから供給された燃料ガスや酸化剤ガスをそれぞれ流通させるガス流路152,154が設けられている。また、セパレータ110,120の対向面にはそれぞれ凹部106,116が設けられ、接合体であるMEA30の両面周縁部には、それぞれ燃料ガスと酸化剤ガスとを隔てるためのシール材60a,60bが設けられおり、このシール材60a,60bは、それぞれ接着材70a,70bによって、2枚のセパレータ110,120に接着されて、セルが形成されている。
しかしながら、セパレータとして、ステンレス鋼(いわゆる、SUS)である場合、図3に示すように、SUS製セパレータ基材20の表面に酸化クロム膜からなる不動態皮膜22が形成されている。一方、上述した接着剤およびシール材は、近年環境に優しい素材を用いる傾向にあり、例えば、従来の溶剤に可溶な親油性の樹脂から水溶性樹脂を用いる傾向になってきている。一方、上記不動態皮膜22は、親水性の水溶性樹脂との親和性が低い。したがって、上記水溶性樹脂を接着剤として、または接着剤を用いずシール材として直接SUS製セパレータ基材20上に接着させた場合、密着力が弱く、一対のセパレータ間に上記接合体を挟持した燃料電池用セルをスタック状に積層しマニホールドにて圧力をかけてスタック締結した際にずれ応力が発生し、樹脂の剥がれが生じたり、また、その他使用中に生じる熱膨張などにより樹脂が剥がれたり、場合によっては脱着が発生したりするおそれもあった。
さらに、上記SUS製セパレータ基材を陰極とし、上述したクロム含有ステンレス鋼を対極として、リン酸三ナトリウムや炭酸ナトリウムなどの緩衝水溶液を含むアルカリ水溶液中にて陰極電解処理を行い、SUS製セパレータの表面に表面処理皮膜を形成したとしても、上述したように、この表面処理皮膜には、クロムの酸化物およびクロムの水酸化物が含まれるために、水性樹脂との密着性は今一歩であり、近年、益々燃料電池の需要が増すなか、燃料電池用セルの耐久性向上を考慮すると、さらに水性樹脂と密着性の高い表面処理皮膜が望まれる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、水濡れ性がよく水性樹脂との密着性の高い表面処理皮膜を形成する表面処理方法、ならびに、セパレータ基材上に予め樹脂層と密着性の高い鉄水和酸化物皮膜を形成し、この鉄水和酸化物皮膜上に樹脂層を形成させて耐久性に優れた燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供する。
本発明の表面処理方法、燃料電池用セパレータおよびその製造方法は、以下の特徴を有する。
(1)ステンレス鋼からなる基材の表面にアルカリ性処理液中で陰極電解処理により鉄水和酸化物皮膜を形成する表面処理方法において、前記ステンレス鋼からなる基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いる表面処理方法である。
対極として用いる導体にクロムが含まれると、表面処理により形成されたステンレス鋼上の表面処理皮膜に、鉄の水酸化物および鉄の酸化物の他、クロムの水酸化物およびクロムの酸化物が含まれる。このクロムの水酸化物およびクロムの酸化物は、鉄の水酸化物および鉄の酸化物に比べ、水濡れ性がやや劣り、また水性樹脂との密着性が劣る。特に、クロム酸化物は、ステンレス鋼表面に形成されている不動態皮膜であることから、水濡れ性にやや劣り、水性樹脂に対しての密着性は低い。一方、上述のように、対極として用いる導体に少なくともクロムが含まれていない場合、ステンレス鋼からなる基材の表面に形成された表面処理皮膜は、クロムの酸化物とクロムの水酸化物を含まないことから、水濡れ性がよく、水性樹脂との密着性がより向上する。
さらに、対極として用いる導体にクロムが含まれると、アルカリ性処理液中に、六価のクロムが溶出するため、電解処理後の処理液を排出する際に、更なる廃液処理を行う必要があり、煩雑である。また、今後RoHS指令などにより、電解処理液中に六価のクロムが存在すること自体が制限される可能性もある。
(2)上記(1)に記載の表面処理方法において、前記対極に用いる導体は、さらにニッケルを含まない。
対極として用いる導体にニッケルが含まれると、表面処理により形成されたステンレス鋼上の表面処理皮膜に、鉄の水酸化物および鉄の酸化物の他、ニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物が含まれる。このニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物は、鉄の水酸化物および鉄の酸化物に比べ、水濡れ性にやや劣り、水性樹脂との密着性が劣る。一方、上述のように、対極として用いる導体がニッケルを含まない場合、ステンレス鋼からなる基材の表面に形成された表面処理皮膜は、ニッケルの酸化物とニッケルの水酸化物を含まないことから、水濡れ性がよく、水性樹脂との密着性がより向上する。
(3)上記(1)または(2)に記載の表面処理方法において、前記対極に用いる導体は、鉄であり、前記アルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム水溶液である。
対極として用いる導体にクロムやニッケルが含まれないので、基材上に形成された表面処理皮膜は、水濡れ性が高く、また水性樹脂との密着性が高い。また、対極として用いる導体にクロムやニッケルが含まれると、アルカリ性処理液中に、リン酸三ナトリウムや炭酸ナトリウムを含む緩衝水溶液を添加しないと、陰極電解処理において、対極から表面処理皮膜を形成するための金属イオンが溶出しない。しかし、上述のように緩衝水溶液を含むアルカリ性処理液を用いて陰極電解処理を行う場合、アルカリ性処理液のpHの管理のみならず、アルカリ性処理液中に含まれる各組成物の各濃度も管理しなければならず、それらの管理が煩雑である。一方、アルカリ性処理液を水酸化ナトリウム水溶液とすることにより、水酸化ナトリウム濃度のみを管理すれば、pHの管理が容易になり、よって、陰極電解処理が簡便なものとなる。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の表面処理方法において、前記基材が、燃料電池用セパレータ基材である。
燃料電池用セパレータ基材の表面に存在する不動態皮膜上に鉄の水酸化物および鉄の酸化物からなる皮膜(以下、これらをまとめて「鉄水和酸化物皮膜」という)が形成される。上記鉄水和酸化物皮膜とセパレータ基材上の不動態皮膜とはその組成が近似するため金属結合により密着性が高い。
(5)上記(4)に記載の表面処理方法において、さらに、前記燃料電池用セパレータ基材における発電に関与する領域以外の部分に選択的に表面処理皮膜を形成する。
(6)上記(4)に記載の表面処理方法を用いて、発電に関与する領域以外の部分に選択的に表面処理皮膜が形成された燃料電池用セパレータである。
(7)ステンレス鋼からなる一対のセパレータ基材のそれぞれのガス流路を除く周縁部表面をアルカリ性処理中で陰極電解処理を行い、前記一対のセパレータ基材の周縁部表面に鉄水和酸化物皮膜を形成する鉄水和酸化物皮膜形成工程と、前記一対のセパレータ基材の少なくとも一方の鉄水和酸化物皮膜上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、を有し、前記鉄水和酸化物皮膜形成工程において、前記ステンレス鋼からなる基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いる燃料電池用セパレータの製造方法である。
燃料電池用セパレータ基材の表面に存在する不動態皮膜上に鉄の水酸化物および鉄の酸化物からなる皮膜(いわゆる、鉄水和酸化物皮膜)が形成される。上記鉄水和酸化物皮膜とセパレータ基材上の不動態皮膜とはその組成が近似するため金属結合により密着性が高い。一方、上記鉄水和酸化物皮膜は、その上に形成される樹脂層を形成する水性樹脂の親水性官能基と例えば水素結合によって結合することができるため、上記鉄水和酸化物皮膜と樹脂層との密着性も高い。したがって、一対のセパレータ間に上記接合体を挟持した燃料電池用セルをスタック状に積層しマニホールドにて圧力をかけてスタック締結した際に、ずれ応力が発生したとしても、樹脂の剥がれを防止することができ、また、その他使用中に生じる熱膨張などがあったとしても樹脂とセパレータ基材との密着性が高いため、樹脂剥がれたり、脱着するおそれもない。したがって、セパレータ同士のシール効果をより向上し、得られる燃料電池の耐久性がより向上する。
(8)上記(7)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記対極に用いる導体は、さらにニッケルを含まない。
上記同様に、燃料電池用セパレータ基材の表面に存在する不動態皮膜上に鉄の水酸化物および鉄の酸化物からなる皮膜(いわゆる、鉄水和酸化物皮膜)が形成され、この鉄水和酸化物皮膜とセパレータ基材上の不動態皮膜とはその組成が近似するため金属結合により密着性が高い。また、鉄水和酸化物皮膜は、その上に形成される樹脂層を形成する水性樹脂の親水性官能基と結合することができるため、鉄水和酸化物皮膜と樹脂層との密着性も高い。
(9)上記(7)または(8)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記対極に用いる導体は、鉄であり、前記アルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム水溶液である。
上述したように、対極として用いる導体にクロムやニッケルが含まれないので、セパレータ基材上に形成された表面処理皮膜は、水性樹脂との密着性が高い。また、対極として用いる導体にクロムやニッケルが含まれないので、アルカリ性処理液を水酸化ナトリウム水溶液とすることができ、アルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム濃度のみを管理すれば、pHの管理が容易にでき、陰極電解処理が簡便になる。
(10)上記(7)から(9)のいずれか1つに記載の燃料電池用セパレータの製造方法により製造された燃料電池用セパレータである。
上述したように、燃料電池用セパレータ基材の表面に不動態皮膜が存在した状態で鉄水和酸化物皮膜が形成され、この鉄水和酸化物皮膜と水性樹脂からなる樹脂層との密着性が高いため、一対のセパレータ間に上記接合体を挟持した燃料電池用セルをスタック状に積層しマニホールドにて圧力をかけてスタック締結した際に、ずれ応力が発生したとしても、樹脂の剥がれを防止することができ、また、その他使用中に生じる熱膨張などがあったとしても樹脂とセパレータ基材との密着性が高いため、樹脂剥がれたり、脱着するおそれもない。したがって、セパレータ同士のシール効果をより向上させることができる。
(11)ステンレス鋼からなる一対のセパレータ基材のそれぞれのガス流路を除く周縁部表面を、ステンレス鋼からなるセパレータ基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いてアルカリ性処理液中で陰極電解処理を行い、前記一対のセパレータ基材の周縁部表面に鉄水和酸化物皮膜が形成され、前記一つのセパレータ基材の少なくとも一方の鉄水和酸化物皮膜上に水溶性電着樹脂からなる樹脂層が形成された燃料電池用セパレータである。
上記同様、セパレータ基材と樹脂層の密着性が高く、セパレータ同士のシール効果をより向上させることができる。
本発明によれば、基材表面に水濡れ性の高い表面処理皮膜を形成することができる。また、セパレータ基材表面に上記表面処理皮膜を形成することによって、水性樹脂との密着性を高めることができ、その結果、セパレータ同士の密着性を向上させ、防食性に優れ、耐久性の高い燃料電池を提供することができる。
以下、表面処理方法について、燃料電池用セパレータ基材の表面処理を例に取り、以下に、図面に基づいて説明する。
[燃料電池用セパレータ基材の表面処理]
図1に示すSUS製セパレータ基材としては、例えばSUS304、SUS305、SUS310、SUS316やSUSMX7などのオーステナイト系ステンレス、SUS430などのフェライト系ステンレス、SUS403、SUS410、SUS416やSUS420などのマルテンサイト系ステンレスと、SUS631などの析出硬化系ステンレスなどのステンレス鋼が挙げられる。
本実施の形態において、図1に示すように、SUS製セパレータ基材20の両端には、それぞれ、燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水を供給される供給連通孔12a,12b,12cおよび燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水が排出される排出連通孔14a,14b,14cが設けられ、さらに、SUS製セパレータ基材20には、供給連通孔12a,12bから供給された燃料ガスや酸化剤ガスをそれぞれ流通させる凹凸溝のガス流路152,154が設けられている。ここで、上記ガス流路152,154は、上述したように、燃料ガスや酸化剤ガスをそれぞれ流通させる流路であり、したがって、ガス流路152,154は、SUS製セパレータ基材20の発電に関与する領域である。
本実施の形態では、マスキングを施したガス流路152,154を除くSUS製セパレータ20の周縁部28、すなわち、燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水を供給される供給連通孔12a,12b,12cおよび燃料ガスと酸化剤ガスと冷却水が排出される排出連通孔14a,14b,14cの周辺端部並びにセパレータ結合のためのシール領域に、陰極電解処理による鉄水和酸化物皮膜を形成する。この鉄水和酸化物皮膜は、鉄の水酸化物と鉄の酸化物の混合物からなる表面処理皮膜である。電解処理済セパレータ100には、図1に示すように、ガス流路152,154を除く周縁部に鉄水和酸化物皮膜24が形成される。
上記マスキングは、図5に示すように、電解液の浸透を阻止する略矩形のシール皮膜30a,30bをSUS製セパレータ基材20のガス流路上およびその裏面にのち脱離可能に接合してもよい。裏面も、隣り合うスタック状セルのガス流路となる場合もあるからである。なお、本実施の形態では、SUS製セパレータ基材20の両面にマスキング用のシール皮膜30a,30bを脱離可能に接合したが、これに限るものではなく、ガス流路154側のみにシール皮膜30bを施してもよい。
また、マスキングとして、絶縁性の樹脂をSUS製セパレータ基材20のガス流路上に塗布して固化させるなど、従来のマスキング方法を用いることができる。
本実施の形態の陰極電解処理において、セパレータ基材のガス流路領域をマスキングする理由は次の通りである。仮に、上述のマスキングを施すことなく陰極電解処理を行うと、セパレータ基材のガス流路領域にも、鉄水和酸化物皮膜が形成されることとなる。一方、上述したように、一対のセパレータ間に接合体を挟持して燃料電池用セルを形成し、さらにこの燃料電池用セルを積層して燃料電池を形成する。この燃料電池を使用する際に、ガス流路に燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通させると、ガス流路流域に形成された鉄水和酸化物皮膜から水酸化鉄または酸化鉄が、固体高分子膜からなる電解質膜を燃料極と空気極との2枚の電極で挟んだ接合体に徐々に溶出してゆき、燃料電池の劣化を招くおそれがある。そこで、本実施の形態では、セパレータ基材のガス流路領域をマスキングして上記陰極電解処理時に鉄水和酸化物皮膜が形成されないようにしている。
本実施の形態の陰極電解処理は、アルカリ性処理液からなる電解処理溶液中に、図1に示すSUS製セパレータ基材20の接続部15にセルモニタを接続して、陰極電界時の電位の管理を行う。一方、図4および図5に示すように、マスキング用のシール皮膜30aとSUS製セパレータ基材20との間であってSUS製セパレータ基材20の発電に関与する領域であるガス流路154(またはガス流路152)の領域のほぼ中央部の接続点18にカソードに接続し、このSUS製セパレータ基材20からなるワークを陰極とし、鉄からなる導体を陽極として、所定の厚みの鉄水和酸化物皮膜を形成する。これにより、均一な鉄水和酸化物皮膜を形成することができる。なお、上記鉄からなる導体、すなわち鉄板以外の鉄合金を陽極として用いる場合、クロム、ニッケル、鉛、水銀、カドミウムを含有しない鉄合金が好ましい。
上記陰極電解処理の条件は、図6に示すように、対極34は好ましくは鉄からなる導体であり、電解槽36中の電解処理溶液であるアルカリ性の処理液38は、0.3〜3重量%の水酸化ナトリウム溶液であり、液温が70℃〜80℃、電流密度0.01〜60A/dm2、処理時間1秒〜10分、好ましく30秒〜2分である。また、処理液38のpHは、電解処理中、pH7〜14、好ましくはpH10〜13になるように、常時または間欠的に水酸化ナトリウムのフレークまたは水酸化ナトリウム水溶液が補充される。なお、調整のしやすさから、上記条件のうち、3重量%の水酸化ナトリウム水溶液で、電流密度6A/dm2で行うことが好ましい。また、SUS製セパレータ基材20であるワークからなる陰極と対極との間の電極間の距離は、1cm〜1mの範囲で行うことができ、好ましくは1cm〜10cmである。
これにより、図6に示すように、処理液中に、鉄イオンのみ溶出するため、ワーク32の表面には、鉄の酸化物および鉄の水酸化物からなる鉄水和酸化物皮膜が形成される。さらに、鉄からなる導体であるため、アルカリ性処理液を水酸化ナトリウムのみからなる水溶液とすることができ、水酸化ナトリウム濃度のみを管理すれば、pHの管理が容易になる。さらに、鉄からなる導体であるため、弱アルカリ性で処理することも可能となり、さらにpHが管理しやすくなる。
上記条件の範囲が好ましい理由は、以下の通りである。すなわち、0.3重量%未満の水酸化ナトリウムではSUS製セパレータ基材20の表面に均一な有効な鉄水和酸化物皮膜が得られにくく、のちの水溶性電着樹脂との密着性が低くなるおそれがある。また、3重量%を超える水酸化ナトリウムでは、電解溶液の劣化が著しく、また、経済的にも不利である。また、液温が70℃未満の場合には、鉄水和酸化物皮膜の形成が不十分となり、一方80℃を超える場合には、鉄水和酸化物皮膜の形成時間が短縮し、消費電力が軽減されるものの、電解溶液濃度の管理が難しく、場合によって不均一な皮膜が形成されるおそれがある。また、電流密度0.01A/dm2未満、処理時間1秒未満の場合には、鉄水和酸化物皮膜の形成が不十分となり、のちの水溶性電着樹脂との密着性が劣化するおそれがある。一方、電流密度60A/dm2を超え、処理時間10分を超える場合には、経済的にも不利である。また、電極間の距離が1cm未満および1mを超える場合には、均一な鉄水和酸化物皮膜が形成できない。ここで、アルカリ性処理液を用いた陰極電解処理において、上記処理液のpHおよび水酸化ナトリウムの濃度、電流密度、処理時間、処理温度、電極間の距離を適宜調整することによって、SUSセパレータ基材20の表面に形成される表面処理皮膜である鉄水和酸化物皮膜の厚みを調節することができる。本実施の形態では、この鉄水和酸化物皮膜24の厚みは、最大10nmである。
また、本実施の形態では、アルカリ性処理液においてSUS製セパレータ基材20からなるワークを陰極として陰極電解処理を行っている。したがって、図2に示すように、上記鉄水和酸化物皮膜24は、SUS製セパレータ基材20表面の酸化クロム皮膜からなる不動態皮膜22上に形成される。この鉄水和酸化物皮膜24の厚みは、上述したように、最大10nmである。また、本実施の形態の鉄水和酸化物皮膜24は、SUS製セパレータ基材20の表面に存在する不動態皮膜22上に形成されるため、電解処理済セパレータ基材100(図1参照)は、処理前のSUS製セパレータ基材20の防食性を維持しつつ、さらに、上記鉄水和酸化物皮膜24とセパレータ基材上の不動態皮膜22とはその組成が近似するため金属結合により密着性が高い。
仮に、SUS製セパレータ基材20を陽極としてアルカリ溶液にて電解処理した場合には、SUS製セパレータ基材20に形成されている不動態皮膜が溶出し、さらにSUS中の鉄が溶出して酸化鉄皮膜が形成されることとなる。かかる場合、不動態皮膜が消失しているため、防食性が劣化するおそれが高い。また、SUS製セパレータ基材を陽極として酸性溶液にて電解処理した場合、やはり、不動態皮膜が溶出し、さらにSUS中のクロムが溶出して酸化クロム皮膜が形成されることとなる。かかる場合、酸化クロム皮膜は不動態皮膜であることから防食性はあるもの、水溶性樹脂に対する濡れ性が悪いままとなる。したがって、本実施の形態では、SUS製セパレータ基材20を陰極としてアルカリ性処理液にて電解処理することが好適である。
また、図7に示すように、対極44がクロムやニッケルを含有するステンレス鋼である場合、アルカリ性の処理液48を用いて陰極電解処理を行うと、処理液中に鉄イオンとクロムイオンが溶出する。その結果、ワーク32に鉄の水酸化物および鉄の酸化物の他、クロムの水酸化物およびクロムの酸化物やニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物が含まれる。このクロムの水酸化物およびクロムの酸化物およびニッケルの水酸化物およびニッケルの酸化物は、鉄の水酸化物および鉄の酸化物に比べ、水濡れ性がやや劣り、また後述する水溶性電着樹脂との密着性が劣る。特に、クロム酸化物は、ステンレス鋼表面に形成されている不動態皮膜であることから、水濡れ性にやや劣り、水溶性電着樹脂に対しての密着性が低くなる。さらに、対極44として用いる導体がクロムやニッケルを含む場合、アルカリ性処理液中に、リン酸三ナトリウムや炭酸ナトリウムを含む緩衝水溶液を添加しないと、陰極電解処理において、対極44から表面処理皮膜を形成するための金属イオン(すなわち、Fe2,3+,Cr6+など)が溶出しない。しかし、上述のように緩衝水溶液を含むアルカリ性処理液を用いて陰極電解処理を行う場合、アルカリ性処理液のpHの管理のみならず、アルカリ性処理液中に含まれる各組成物の各濃度、特にNa3PO4の濃度管理をしなければならず、それらの管理が煩雑である。したがって、本実施の形態の表面処理方法により、電解処理中における処理液の管理の簡便になる。
[燃料電池用セパレータおよびその製造方法]
本発明の好適な実施の形態の燃料電池用セパレータについて、以下に説明する。
上述のように、ステンレス鋼からなる一対のセパレータ基材のそれぞれのガス流路をマスキングした後前記ガス流路を除く周縁部表面をアルカリ性処理液中で陰極電解処理を行い、前記一対のセパレータ基材の周縁部表面に鉄水和酸化物皮膜を形成する工程を行った後、前記一対のセパレータ基材の少なくとも一方の鉄水和酸化物皮膜上に樹脂層を形成する工程を行うことによって、燃料電池用セパレータを製造することができる。
以下に、鉄水和酸化物皮膜に樹脂層を形成する工程について説明する。なお、ここでは、樹脂層を形成する樹脂として、水溶性電着樹脂を例に取り、水溶性電解樹脂を電着する工程を説明する。
図2に示すように、上述した鉄水和酸化物皮膜24上には、水溶性電着樹脂層26が形成される。この場合は、電解処理済セパレータ100(図1)のガス流路部分および電解処理済セパレータ基材100の接合体挟持面と反対面である背面領域に、上述同様のマスキング処理を施した状態で樹脂層が形成される。
マスキングを施した電解処理済セパレータ基材100(図1)を陰極とし、上記水溶性電着樹脂層26形成用の水溶性電着樹脂塗料中に浸漬し、対極との間に直流電流を印加することによって、カチオン電着により鉄水和酸化物皮膜24上に水溶性電着樹脂層26を形成する。ここで、電解処理済みセパレータ基材100(図1)は、そのガス流路152,154の裏面に相当する領域の複数箇所、または、電解処理済セパレータ基材100のマスキングされた領域を除く全面の複数箇所を電極接合部として、カソードに接続され、電解処理済セパレータ基材100からなるワークを陰極として、水溶性電着樹脂塗料が、マスキング以外の領域に電着塗装される。
上記水溶性電着樹脂層26を形成する水溶性電着樹脂塗料は、親水性官能基、例えばアミン基を有するアミン系樹脂を用いることができる。アミン系樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アミン硬化エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記アミン系樹脂は、親和性官能基であるアミン基を有することから、セパレータ基材上に形成された鉄水和酸化物皮膜24の親和性が高く、その結果、鉄水和酸化物皮膜24との密着性も高い。この鉄水和酸化物皮膜24は、上述したように、鉄の水酸化物と酸化物との混合組成であることから、アミン系樹脂におけるアミン基との水素結合可能な水酸基などがその表面に多く点在する。したがって、アミン系電着樹脂は、セパレータ基材上の鉄水和酸化物皮膜24に馴染み易く、均一な厚みで水溶性電着樹脂層を形成することができ、さらに従来より薄い厚みの樹脂層であっても十分にセパレータのシール効果を得ることができる。
したがって、一対のセパレータ間に上記接合体を挟持した燃料電池用セルをスタック状に積層しマニホールドにて圧力をかけてスタック締結した際に、ずれ応力が発生したとしても、樹脂の剥がれを防止することができ、また、その他使用中に生じる熱膨張などがあったとしても樹脂とセパレータ基材との密着性が高いため、樹脂が剥がれたり、脱着するおそれもない。したがって、セパレータ同士のシール効果をより向上し、得られる燃料電池の耐久性がより向上する。
以下に、本発明の表面処理が施された燃料電池用セパレータについて、実施例を用いて説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものはない。
[実施例1]
鉄からなる導体を対極としてアルカリ性処理液にて陰極電解処理を行ったSUS製セパレータ基材表面とクロムからなる導体を対極としてアルカリ性処理液にて陰極電解処理を行ったSUS製セパレータの表面の表面処理皮膜密着性の比較:
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材のガス流路領域に、四隅に着脱可能な吸盤を有する略矩形のゴム製のシール部材を接合する。このマスキングされたセパレータ基材を陰極とし、鉄板片を陽極として、電極間の距離を10cmとし、水酸化ナトリウム0.3〜3.0重量%の電解水溶液とし、80℃の電解水溶液中で陰極電解電流密度0.01〜6A/dm2で30秒処理した後、水洗し、上記シール部材を脱離させたのち、処理済みセパレータ基材を乾燥させた。得られた電解処理済みセパレータ基材を「セパレータ基材A」という。
上記陰極電解処理が施されたセパレータ基材Aのガス流路領域に、四隅に着脱可能な吸盤を有する略矩形のゴム製のシール部材を接合するとともに、セパレータAの接合体挟持面と反対面である背面全面に、同様にゴム製のシール部材を接続した。そののち、ポリアミドイミド樹脂塗料を含有する塗料濃度20重量%の電着浴に、上記マスキング済みのセパレータ基材Aを陰極として浸漬し、塗極比+/−:−1/2、極間距離:15cm、液温30℃に調整した。5秒で所定の電圧となるよう印加電圧を上げ、所定の電圧に達した後、115〜145秒間印加電圧を保持し、カチオン電着塗装を行った。得られた樹脂層形成セパレータ基材を「セパレータ基材C」という。
[比較例1]
オーステナイト系ステンレス鋼SUSからなるセパレータ基材のガス流路領域に、四隅に着脱可能な吸盤を有する略矩形のゴム製のシール部材を接合する。このマスキングされたセパレータ基材を陰極とし、フェライトステンレス鋼SUS430(クロム含有)からなる板片を陽極として、水酸化ナトリウム2.5重量%、リン酸三ナトリウム12水塩3.7重量%、炭酸ナトリウム4.9重量%の電解水溶液とし、80℃の電解水溶液中で陰極電解電流密度6A/dm2で120秒処理した後、水洗し、上記シール部材を脱離させたのち、処理済みセパレータ基材を乾燥させた。得られた電解処理済みセパレータ基材を「セパレータ基材B」という。
上記セパレータ基材Bのガス流路領域に、四隅に着脱可能な吸盤を有する略矩形のゴム製のシール部材を接合するとともに、セパレータBの接合体挟持面と反対面である背面全面に、同様にゴム製のシール部材を接続した。そののち、上記同様の電解浴で同条件の電着塗装条件で樹脂層を形成した。ここで得られた樹脂形成セパレータ基材を「セパレータ基材D」という。
<濡れ性試験とその濡れ性の基準>
全自動接触角計「DM700」(協和界面科学株式会社製)を用いて、純水を用いて接触角θを測定した。接触角θは0°に近づくほど水濡れ性が高いことを示す。
上記濡れ性試験の結果、上記セパレータ基材Aの表面の接触角θは5°以下であった。一方、セパレータ基材B表面の接触角θは10〜20°であった。これらより、上記陰極電解処理において、親水性の高い鉄水和酸化物皮膜が形成されたセパレータ基材Aの表面の方が濡れ性が高いことが判明した。その結果、セパレータ基材Cの方が、鉄水和酸化物皮膜の上に形成される水性電着樹脂層と水素結合(水の親和力)により密着性が高くなることが分かる。
<腐食性試験>
硫酸含有pH2.0の酸性溶液+Cl-(500ppm)中に樹脂形成基材を陽極として、対極との間に電圧を印加してゆき、上記陽極と対極との間に腐食電流が流れ出すときの電圧を測定する。
上記腐食試験を行った結果、上記陰極電解処理を行う樹脂層が形成されたセパレータ基材Cの腐食電流が流れた時の電圧は、1.2V以上であった。一方、セパレータ基材Dの腐食電流が流れた時の電圧は、0.53〜0.55Vであった。上記結果より、明らかに本発明の親水性の高い鉄水和酸化物皮膜が形成されたのちに樹脂層を形成したセパレータ基材Cの方が防食性に優れることが分かる。
本発明の表面処理方法は、水濡れ性および水性樹脂との密着性が要求されるステンレス鋼板の用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、特に燃料電池用セパレータに供することができる。また、本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法は、燃料電池を用いる用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、特に車両用の燃料電池に供することができる。
本発明の燃料電池用セパレータの陰極電解処理領域を説明するための図である。 本発明の燃料電池用セパレータにおける鉄水和酸化物皮膜と水溶性電着樹脂層との密着力について説明する模式図である。 従来の燃料電池用セパレータにおけるSUS表面と水溶性電着樹脂との密着力について説明する模式図である。 本発明の陰極電解処理において燃料電池用セパレータを陰極とする際の電極接点の位置の一例を説明する図である。 本発明において陰極電解処理の際の燃料電池用セパレータに対するマスキング用のシール皮膜と電極接点の構成を一例を説明する断面図である。 本発明の陰極電解処理の一例を説明する模式図である。 ステンレス鋼を対極とした場合の陰極電解処理の一例を説明する模式図である。 燃料電池のセルの構成および発電時のメカニズムを説明する図である。 従来の燃料電池用のセルの一態様の構成を説明する断面図である。 従来の燃料電池用のセルにおけるセパレータに接着されるシール材の位置を説明する図である。
符号の説明
20 SUS製セパレータ基材、22 不動態皮膜、24 鉄水和酸化物皮膜、26 水溶性電着樹脂層。

Claims (11)

  1. ステンレス鋼からなる基材の表面にアルカリ性処理液中で陰極電解処理により鉄水和酸化物皮膜を形成する表面処理方法において、
    前記ステンレス鋼からなる基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いる表面処理方法。
  2. 請求項1に記載の表面処理方法において、
    前記対極に用いる導体は、さらにニッケルを含まない表面処理方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の表面処理方法において、
    前記対極に用いる導体は、鉄であり、
    前記アルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム水溶液である表面処理方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面処理方法において、
    前記基材が、燃料電池用セパレータ基材である表面処理方法。
  5. 請求項4に記載の表面処理方法において、
    さらに、前記燃料電池用セパレータ基材における発電に関与する領域以外の部分に選択的に表面処理皮膜を形成する表面処理方法。
  6. 請求項4に記載の表面処理方法を用いて、発電に関与する領域以外の部分に選択的に表面処理皮膜が形成された燃料電池用セパレータ。
  7. ステンレス鋼からなる一対のセパレータ基材のそれぞれのガス流路を除く周縁部表面をアルカリ性処理中で陰極電解処理を行い、前記一対のセパレータ基材の周縁部表面に鉄水和酸化物皮膜を形成する鉄水和酸化物皮膜形成工程と、
    前記一対のセパレータ基材の少なくとも一方の鉄水和酸化物皮膜上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、を有し、
    前記鉄水和酸化物皮膜形成工程において、前記ステンレス鋼からなる基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いる燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
    前記対極に用いる導体は、さらにニッケルを含まない燃料電池用セパレータの製造方法。
  9. 請求項7または請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、
    前記対極に用いる導体は、鉄であり、
    前記アルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム水溶液である燃料電池用セパレータの製造方法。
  10. 請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法により製造された燃料電池用セパレータ。
  11. ステンレス鋼からなる一対のセパレータ基材のそれぞれのガス流路を除く周縁部表面を、ステンレス鋼からなるセパレータ基材に対し、対極は少なくともクロムを含まない導体を用いてアルカリ性処理液中で陰極電解処理を行い、前記一対のセパレータ基材の周縁部表面に鉄水和酸化物皮膜が形成され、前記一つのセパレータ基材の少なくとも一方の鉄水和酸化物皮膜上に水溶性電着樹脂からなる樹脂層が形成された燃料電池用セパレータ。
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