JP2009134026A - 光学デバイス、波長可変フィルタモジュール、および光スペクトラムアナライザ - Google Patents
光学デバイス、波長可変フィルタモジュール、および光スペクトラムアナライザ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】第1の光反射部25を備える可動板21と、可動板21を変位可能に支持する弾性部23とが設けられた第1の基体2と、第1の光反射部25に対向する第2の光反射部34が設けられた第2の基体3とを有し、可動板21と弾性部23とが接合膜41を介して接合されており、接合膜41は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、Si骨格に結合する脱離基とを含み、接合膜41は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、接合膜41の表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜41の表面の当該領域に発現した接着性によって、可動板21と弾性部23とを接合している。
【選択図】図2
Description
例えば、特許文献1にかかる波長可変フィルタは、板状の可動部(可動板)がその厚さ方向に変位可能に設けられた可動基板と、可動板の変位を許容しつつ可動基板に対向する固定基板とが互いに接合されている。そして、可動板の固定基板側の面上と、固定基板の可動板に対向する面上とには、それぞれ反射膜が形成されている。この1対の反射膜間に形成された光学ギャップに光が入射されると、干渉作用により、光学ギャップの長さに応じた波長の光のみが射出(波長分離)される。
そのため、可動部および支持部の材質、形状、大きさ等の設計自由度が低く、波長可変フィルタの光学特性や機械的特性を所望のものとすることが難しかった。
本発明の光学デバイスは、第1の光反射部を備える可動板と、該可動板をその厚さ方向に変位可能に支持する弾性部とが設けられた第1の基体と、
前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする。
これにより、設計自由度を高めつつ、優れた機械的特性および光学特性を発揮することができる。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、可動板および弾性部のそれぞれに対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、可動板と弾性部とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の光学デバイスでは、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、Si骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の光学デバイスでは、前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、可動板と弾性部とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、光学デバイスの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、可動板と弾性部とをより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。さらに、接合膜が優れた撥液性を示す。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
本発明の光学デバイスでは、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、可動板と弾性部との間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高い光学デバイスが得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明の光学デバイスでは、前記可動板の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、可動板と接合膜との間の接合強度をより高めることができ、ひいては、可動板と弾性部との接合強度を高めることができる。
これにより、弾性部と接合膜との間の接合強度をより高めることができ、ひいては、可動板と弾性部との接合強度を高めることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、可動板または弾性部の表面を特に最適化することができる。
これにより、可動板と接合膜との間の接合強度を高め、光学デバイスの耐久性を向上させることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記弾性部と前記接合膜との間に、中間層を有することが好ましい。
これにより、弾性部と接合膜との間の接合強度を高め、光学デバイスの耐久性を向上させることができる。
これにより、可動板と接合膜との間、および、弾性部と接合膜との間において、それぞれ接合強度を高めることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
これにより、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中のSi骨格が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格と脱離基との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
これにより、可動板または弾性部等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜を確実に活性化させることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、可動板または弾性部に損傷等が生じるのを避けつつ、単に圧縮するのみで、接合膜に十分な接着性を発現させることができる。
前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属酸化物に脱離基が結合したものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いた光学デバイスによっても、設計自由度を高めるとともに低コスト化を図りつつ、寸法精度を優れたものとし、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
凹部を有し、該凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属原子と有機成分で構成される脱離基とを含むものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いた光学デバイスによっても、設計自由度を高めるとともに低コスト化を図りつつ、寸法精度を優れたものとし、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い可動板が得られる。また、可動板の構成材料としてガラスを用いた場合、可視光域での波長分離を行うことができる。一方、可動板の構成材料としてシリコンを用いた場合、赤外域での波長分離を行うことができる。また、特にシリコンは機械的特性に優れ弾性変形を繰り返しても疲労が生じないため、長期にわたり、可動板を安定して変位させ、より高精度な波長分離を行うことができる。
樹脂材料は、比較的低い剛性を有している。そのため、弾性部の長尺化を防止しつつ、可動板の変位に要する駆動力を小さいものとし、光学デバイスの小型化および省電力化を図ることができる。
これにより、弾性部の長尺化を防止しつつ、可動板の変位に要する駆動力を小さくものとし、光学デバイスの小型化および省電力化を図ることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記第2の基体には、凹部が形成され、該凹部の底面に前記第2の光反射部が設けられていることが好ましい。
これにより、スペーサを介在させることなく第1の基体と第2の基体とを接合しても、光学ギャップを確保することができる。
これにより、可動板を静電力により変位させることができる。
これにより、低コスト化を図りつつ、広い波長範囲での波長分離を行うことができる波長可変フィルタモジュールを提供することが可能となる。
本発明の光スペクトラムアナライザは、本発明の光学デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、低コスト化を図りつつ、広い波長範囲での波長分析を行うことができる光スペクトラムアナライザを提供することが可能となる。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
(光学デバイス(波長可変フィルタ))
図1は、本発明の光学デバイス(波長可変フィルタ)の実施形態を示す平面図、図2は、図1におけるA−A線断面図、図3は、図1に示す光学デバイスに備えられた第2の基体を説明するための図、図4は、図1に示す光学デバイスに備えられた接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図5は、図1に示す光学デバイスに備えられた接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1中および図3中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
このような光学デバイス1は、互いに接合された第1の基体(第1の構造体)2および第2の基体(第2の構造体)3を有し、これらの間に、光を干渉させるためのギャップ、すなわち光学ギャップG1が形成されている。そして、この光学ギャップG1に光Lが入射すると、干渉作用により、光学ギャップG1の大きさに応じた波長の光だけが射出する。
第1の基体2は、光学ギャップG1を可変とするための可動板(板状の可動部)21と、支持部22と、可動板21を支持部22に対し上下方向(すなわち可動板21の厚さ方向)に変位可能とするようにこれらを連結する複数の弾性部(連結部)23とを有している。また、第1の基体2は、可動板21および各弾性部23と支持部22との間に、異形状の開口部24が形成されている。ここで、各弾性部23は、可動板21および支持部22にそれぞれ接合膜41を介して接合されている。なお、接合膜41については、後に詳述する。
可動板21の構成材料としては、用いる光の波長に関し光透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンのようなシリコン材料、石英ガラス、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等が好適に用いられる。
また、上記のような材料に、酸化処理(酸化膜形成)、めっき処理、不働態化処理、窒化処理等の各処理を施した材料でもよい。
また、可動板21には、第2の基体3と対向する側の面(すなわち、可動板21の下面)上に、光を比較的高い反射率で反射させる第1の光反射部である第1の反射膜(HRコート)25が形成され、第2の基体3と対向する側とは反対側の面(すなわち、可動板21の上面)上に、光の反射を抑制する第1の反射防止膜(ARコート)26が形成されている。
第1の反射防止膜26は、図2に示すように光学デバイス1の下方から光学ギャップG1に入射した光が第1の基体2の上面と外気との界面で図中下方に反射されるのを防止するためのものである。
低屈折率層を構成する材料としては、第1の反射膜25や第1の反射防止膜26に必要な光学特性を得ることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、MgF2、SiO2などが挙げられる。
第1の駆動電極28は、前述した第1の反射膜25の外周を囲むように円環状をなしている。
なお、第1の駆動電極28の形状は、前述したものに限定されない。また、第1の駆動電極28は、周方向にて複数に分割されていてもよい。この場合、分割された複数の電極間で、印加する電圧を異ならせることにより、可動板21の姿勢(平行度)を変化させることができる。
このような第1の駆動電極28の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。
このような可動板21を囲むように支持部22が形成され、可動板21は、複数の弾性部23を介して支持部22に支持されている。
このような第1の基体2に対し、支持部22の下面で、第2の基体3が接合されている。
このような第2の基体3の構成材料としては、用いる光の波長に関し光透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
特に、第1の基体2の熱膨張係数(特に支持部22の熱膨張係数)と第2の基体3の熱膨張係数との差は、できるだけ小さいほうが好ましく、具体的には、50×10−7℃−1以下であるのが好ましい。
これにより、第1の基体2および第2の基体3が高温下または低温下にさらされたときに、第1の基体2と第2の基体3との間に生じる応力を低減して、第1の基体2または第2の基体3の損傷を防止することができる。
第1の凹部31は、その外形が円形をなしており、前述した可動板21と弾性部23と開口部24とに対応する位置に配置されている。また、第1の凹部31の底面上には、可動板21の外周部に対応する位置で、円環状の第2の駆動電極33、図示しない絶縁膜がこの順で積層されている。
第2の駆動電極33は、図示しない通電回路に接続されており、第2の駆動電極33と前述した第1の駆動電極28との間に電位差を生じさせることが可能となっている。この通電回路には、後述する検出回路(図示せず)の検出結果に基づき通電回路の駆動を制御するための制御手段(図示せず)が接続されている。
このような第2の駆動電極33の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。
このような第1の凹部31内の空間内に、可動板21の駆動のための駆動ギャップとして、静電ギャップG2が形成される。すなわち、第1の駆動電極28と第2の駆動電極33との間に、静電ギャップG2が形成される。
第2の凹部32は、その外形が円形をなし、前述した第1の凹部31とほぼ同心でかつ第1の凹部31および可動板21の外径よりも小さい外径を有している。また、第2の凹部32の底面(第2の基体3の可動板21側の面)上には、ほぼ円形をなす第2の反射膜34が設けられている。
第2の凹部32の底面上に第2の反射膜34が設けられているので、第2の駆動電極33と第1の駆動電極28や可動板21との間の距離に関係なく、第2の凹部32の深さに応じた使用可能波長帯域とすることができる。そのため、様々な使用波長帯域の光学デバイス1を製造しても、駆動電圧を低減することができる。
溝部35および第3の凹部36は、その深さが第1の凹部31の深さとほぼ同等となっており、これらの底面上には、第2の駆動電極33に接続される引出し電極331が設けられている。
また、引出し電極331の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。そして、引出し電極331は、前述した第2の駆動電極33と一体的に形成されているのが好ましい。
第2の反射防止膜37は、図2に示すように光学デバイス1の下方から光学ギャップG1に向け照射された光が第2の基体3の下面と外気との界面で図中下方に反射されるのを防止するためのものである。なお、第1の反射膜25や第1の反射防止膜26の構成は、前述した第2の反射膜34や第2の反射防止膜37の構成と同様である。
前述したような第1の基体2と第2の基体3とは、接合膜41と同様の接合膜42を介して接合されている。なお、第1の基体2と第2の基体3との接合は、接合膜41と異なるものを用いてもよく、その際、例えば、接着剤や個体接合等を用いることができる。
ここで、接合膜41について詳述する。
接合膜41は、各弾性部23の一端部と可動板21とを接合するとともに、各弾性部23の他端部と支持部22とを接合している。なお、以下の説明では、接合膜41について、各弾性部23と可動板21との接合を代表的に説明し、各弾性部23と支持部22との接合に関しては、各弾性部23と可動板21との接合と同様であるので、その説明を省略する。
そして、接合膜41は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜41の表面に発現した接着性によって、各弾性部23と可動板21とを接合している。
そして、この接合膜41にエネルギーが付与されると、図5に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、活性手304が生じる。これにより、接合膜41の弾性部23側の面41aに接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜41により、可動板21と各弾性部23とが接合されている。なお、各弾性部23に接合膜41を形成し、その接合膜41の可動板21側の面にエネルギー付与により活性手304を生じさせ、可動板21と各弾性部23とを接合してもよい。
このような接合膜41は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このため、可動板21と各弾性部23との間の距離を高い寸法精度で一定に保持することができる。その結果、光学デバイス1全体の寸法精度を優れたものとすることができる。
また、直接接合や陽極接合のような固体接合とは異なり、可動板21および各弾性部23のそれぞれの材質が限られることがない。例えば、可動板21および各弾性部23のそれぞれの構成材料を必要な光学特性や機械的特性に応じて最適化することができる。さらに、可動板21と各弾性部23との接触部分のうちの一部の領域のみを部分的に接合することができる。そのため、光学デバイス1の設計自由度を高めることができる。
また、接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られないため、光学デバイス1の低コスト化を図ることができる。
また、接合膜41を用いて可動板21と各弾性部23とを接合したことにより、接着剤がはみ出すといった従来のエポキシ系接着剤などの接着剤のような問題が生じることがない。したがって、はみ出した接着剤が可動板21の変位を妨げることがない。また、はみ出した接着剤を除去する手間も必要ないため、光学デバイス1の生産効率を向上させることもできる。
なお、接合膜41中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜41の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜41の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
このような接合膜41は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、後述するようなプラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜41を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜41は、可動板21と各弾性部23とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜41は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、光学デバイス1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
このような構成を有する光学デバイス1の動作(作用)を説明する。
一方、図2に示すように、光学デバイス1の下方から光学ギャップG1に向け光Lが照射されると、光Lは、第2の反射防止膜37、第2の基体3、第2の反射膜34を透過して、光学ギャップG1に入射する。このとき、この光Lは、第2の反射防止膜37により、ほとんど損失せずに光学ギャップG1に入射する。
入射した光は、第1の反射膜25と第2の反射膜34との間において、反射を繰り返す(干渉する)。この際、第1の反射膜25および第2の反射膜34により、光Lの損失を抑えることができる。
なお、本実施形態では、光学ギャップG1に入射した光を光学デバイス1の上方へ出射したが、光学ギャップG1に入射した光を光学デバイス1の下方へ出射してもよい。
また、本実施形態では、光学デバイス1に対し、その下方から光を入射したが、上方から光を入射してもよい。
次に、光学デバイス1の製造方法の一例を図6ないし図9に基づいて説明する。
図6〜図8は、図1および図2に示す光学デバイスの製造工程を説明するための図、図9は、図8(b)に示す接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、図6〜図8は、図1のA−A線断面に対応する断面を示している。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図6〜8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[A] 第2の基体3を形成する工程
−A1−
まず、第2の基体3を形成するための基板として、図6(a)に示すように、光透過性を有する基板5を用意する。
基板5としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。基板5の構成材料としては、第2の基体3の説明で述べたものを用いることができる。
次に、図6(b)に示すように、基板5の一方の面上にマスク層6を形成(マスキング)する。
マスク層6を構成する材料としては、例えば、Au/Cr、Au/Ti、Pt/Cr、Pt/Tiなどの金属、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン等が挙げられる。マスク層6の構成材料にシリコンを用いると、マスク層6と基板5との密着性が向上する。マスク層6の構成材料に金属を用いると、形成されるマスク層6の視認性が向上する。
マスク層6は、例えば、化学気相成膜法(CVD法)、スパッタリング法、蒸着法等の気相成膜法、メッキ法等により形成することができる。
次に、図6(c)に示すように、マスク層6に、第1の凹部31と溝部35と第3の凹部36との平面視形状に対応した平面視形状をなす開口61を形成する。
より具体的には、まず、例えばフォトリソグラフィ法を用い、マスク層6上に、フォトレジストを塗布し、露光、現像を行って、開口61に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。次に、このレジストマスクを介してマスク層6をエッチングして、マスク層6の一部を除去した後、レジストマスクを除去する。このようにして、マスク層6に開口61が形成される。このエッチングとしては、例えば、CFガス、塩素系ガス等によるドライエッチング、フッ酸+硝酸水溶液、アルカリ水溶液等によるウェットエッチングを用いることができる。
次に、マスク層6を介して基板5の一方の面をエッチングした後、マスク層6を除去して、図6(d)に示すように、第1の凹部31と溝部35と第3の凹部36とを形成する。
このエッチングとしては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法を用いることができるが、ウェットエッチング法を用いるのが好ましい。これにより、形成される第1の凹部31をより理想的な円柱状とすることができる。この場合、ウェットエッチングのエッチング液としては、例えばフッ酸系エッチング液などが好適に用いられる。また、エッチング液にグリセリン等のアルコール(特に多価アルコール)を添加すると、形成される第1の凹部31の底面を極めて滑らかなものとすることができる。
特に、マスク層6の除去方法としてウェットエッチングを用いると、簡易な操作で、効率よく、マスク層6を除去することができる。
次に、前述した工程A2およびA3と同様の方法を用いて、図7(a)に示すように、第2の凹部32の平面視形状に対応した平面視形状の開口を有するマスク層7を形成する。
このマスク層7は、金属を主材料として構成されており、後述する工程A6においてエッチングマスクとして用いた後に、工程A7にて加工されて、第2の駆動電極33および引出し電極331となるものである。
次に、前述した工程A4と同様の方法を用いて、マスク層7を介して基板5をエッチングして、図7(b)に示すように、第2の凹部32を形成する。これにより、第2の基体3が形成される。
−A7−
次に、図7(c)に示すように、フォトリソ・エッチングによりマスク層7の不要部分を除去して、第2の駆動電極33および引出し電極331を形成する。また、第2の駆動電極33上には、絶縁膜(図示せず)を形成する。
マスク層7の不要部分を除去する方法としては、前述した工程A3と同様の方法を用いることができる。
次に、図7(d)に示すように、第2の凹部32の底面上に、第2の反射膜34を形成する。
より具体的には、第2の凹部32の底面上に、前述したような高屈折率層と低屈折層とを交互に積層することにより、第2の反射膜34を形成する。
高屈折率層および低屈折率層の形成方法としては、例えば、化学的気相成長法(CVD)、物理的化学気相成長法(PVD)が好適に用いられる。
−B1−
まず、図8(a)に示すように、可動板21および支持部(支持部材)22を用意する。
可動板21および支持部(支持部材)22は、それぞれ、基板を加工して形成することができる。
かかる基板としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。かかる基板の構成材料としては、可動板21および支持部(支持部材)22の説明で述べたものを用いることができる。
次に、図8(b)に示すように、可動板21および支持部(支持部材)22の接合面(各弾性部23に対向する面)上に接合膜41を形成する。
本工程では、可動板21および支持部(支持部材)22は、これらを所望の位置関係に保持するのが好ましい。これにより、一括して、接合膜41を形成することができる。また、後述する工程A3やA4においても同時処理の実現や各部材の取り扱い性の向上を可能とする。かかる保持の方法としては、特に限定されないが、アライメント用のマークや係合部が形成された基板に仮接合する方法や、各種冶具を用いて固定する方法などが挙げられる。
接合膜41(エネルギー付与前の接合膜41)の形成方法としては、例えばプラズマ重合法を用いることができる。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を可動板21上に堆積させ、膜を得る方法である。
かかるプラズマ重合法には、例えば、図9に示すようなプラズマ重合装置100を用いる。
図9に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、可動板21を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
図9に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図9に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
この静電チャック139により、図9に示すように、可動板21を鉛直方向に沿って支持することができる。また、可動板21に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で可動板21をプラズマ処理に供することができる。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による可動板21の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
以上説明したように構成されたプラズマ重合装置100を用いて、可動板21上に接合膜41を形成するに際しては、まず、可動板21をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が可動板21上に付着・堆積する。これにより、図8(b)に示すように、可動板21上にプラズマ重合膜で構成された接合膜41が形成される。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜41は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm2程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜41を得ることができる。
なお、可動板21の表面のうち、各弾性部23を接合する領域のみに部分的に接合膜41を形成する場合、例えば、この領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜41を成膜するようにすればよい。
次に、図8(c)に示すように、可動板21および支持部22上に形成した接合膜41に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜41では、図5に示すように、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜41の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜41の表面に、各弾性部23との接着性が発現する。
このうち、接合膜41にエネルギーを付与する方法として、特に、上記(I)、(II)、(III)の各方法のうち、少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜41に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
(I)接合膜41にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図8(c)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜41中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜41の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜41に接着性を発現させることができる。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜41の面積に応じて異なるが、1mW/cm2〜1W/cm2程度であるのが好ましく、5mW/cm2〜50mW/cm2程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜41との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、CO2レーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜41に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による可動板21の変質・劣化を防止することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜41の表面および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜41に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜41の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜41に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
また、加熱時間は、接合膜41の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、可動板21と各弾性部23との互いの熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜41を加熱すればよいが、可動板21と各弾性部23の熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
この場合、可動板21と各弾性部23とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜41に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜41に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、可動板21と各弾性部23の各構成材料によっては、可動板21や各弾性部23に損傷等が生じるおそれがある。
なお、仮接合体の状態では、可動板21と各弾性部23との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、可動板21と各弾性部23との相対位置を微調整することにより、最終的に得られる光学デバイス1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
なお、接合膜41の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜41の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、可動板21と各弾性部23の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜41に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
次に、図8(d)に示すように、接着性が発現してなる接合膜41と各弾性部23とが密着するように、可動板21および支持部22と各弾性部23とを貼り合わせる。これにより、可動板21および支持部22と各弾性部23とが、接合膜41を介して接合(接着)される。
すなわち、可動板21と各弾性部23の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
また、可動板21と各弾性部23は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、可動板21と各弾性部23とをより強固に接合することができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、可動板21のうちの接合膜41を成膜する領域を清浄化するとともに、当該領域を活性化させることができる。
なお、表面処理を施す可動板21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、可動板21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜41の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる可動板21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された可動板21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された可動板21を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、可動板21と接合膜41とを強固に密着させることができる。
さらに、可動板21のうちの接合膜41を成膜する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、可動板21と接合膜41との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
また、表面処理に代えて、可動板21の少なくとも接合膜41を成膜する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜41との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して可動板21上に接合膜41を成膜することにより、可動板21と接合膜41との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわち光学デバイス1を得ることができる。
一方、各弾性部23のうちの接合膜41と接触する領域にも、あらかじめ、接合膜41との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、各弾性部23と接合膜41との間の接合強度をより高めることができる。
また、表面処理に代えて、各弾性部23のうちの接合膜41と接触する領域に、あらかじめ、接合膜41との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、各弾性部23と接合膜41との間の接合強度をより高めることができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の可動板21に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
例えば、各弾性部23のうちの可動板21との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜41と各弾性部23とが接触するように、可動板21と各弾性部23とを貼り合わせたとき、接合膜41の各弾性部23側の面41aに存在する水酸基と、各弾性部23の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜41を備える可動板21と各弾性部23とが接合されると推察される。
なお、前述した工程B3(エネルギー付与工程)で活性化された接合膜41の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、工程B3の終了後、できるだけ早く本工程B4(貼り合わせ工程)に移行するのが好ましい。具体的には、工程B3の終了後、60分以内に本工程B4を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜41の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程B4で可動板21(接合膜41の面41a)と各弾性部23とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された可動板21と各弾性部23との間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm2)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm2)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高い光学デバイス1が得られる。
次に、図8(e)に示すように、可動板21の一方の面上に、第1の反射膜25と第1の駆動電極28と接合膜41とを形成し、また、可動板21の他方の面上に、第1の反射防止膜26を形成する。
また、第1の反射膜25の形成方法および第1の反射防止膜26としては、それぞれ、前述した第2の反射膜34の形成方法と同様のものを用いることができる。
また、第1の駆動電極28の形成方法としては、前述した第2の駆動電極33の形成方法と同様のものを用いることができる。
なお、第1の反射膜25、第1の駆動電極28、および第1の反射防止膜26の形成は、それぞれ、接合膜41の形成に対し前であってもよい。
−C1−
前述した工程で得られた第1の基体2と第2の基体3とを接合膜42を介して接合する。
接合膜42は、前述した接合膜41と同様の方法により形成することができる。すなわち、接合膜42は、前述した工程A2と同様、プラズマ重合により成膜し、その後、前述した工程A3と同様、エネルギー付与する。
その後、図8(f)に示すように、第2の基体3の第1の基体2とは反対側の面上に、第2の反射防止膜37と形成する。これにより、光学デバイス1を得る。
第2の反射防止膜37の形成方法としては、それぞれ、前述した第2の反射膜34の形成方法と同様のものを用いることができる。
以上説明したような工程[A]〜[C]により光学デバイス1を製造することができる。
また、接合膜41は、可動板21と各弾性部23の双方に成膜されていてもよい。この場合、各部の界面をさらに強固に接合することができる。また、この場合、被着体(具体的には、可動板21、各弾性部23)の材質が接合強度に影響を及ぼし難いため、被着体の材質によらず、各部が強固に接合された信頼性の高い光学デバイス1が得られる。
また、前述した工程C2の後、光学デバイス1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程C3およびC4のうちの少なくとも1つの工程(光学デバイス1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、可動板21と各弾性部23との接合強度のさらなる向上を図ることができる。
光学デバイス1をその厚さ方向に圧縮するように、すなわち各弾性部23と可動板21とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、可動板21と各弾性部23との接合強度をより高めることができる。
また、光学デバイス1を加圧することにより、光学デバイス1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、光学デバイス1における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、光学デバイス1を加圧する際の圧力は、光学デバイス1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して光学デバイス1における接合強度を高めることができる。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、光学デバイス1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
得られた光学デバイス1を加熱する。
これにより、光学デバイス1における接合強度をより高めることができる。
このとき、光学デバイス1を加熱する際の温度は、室温より高く、光学デバイス1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、光学デバイス1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
なお、以上説明したような工程C6、C7の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、光学デバイス1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、光学デバイス1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、光学デバイス1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図10は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図11は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図10および図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜41がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである。換言すれば、エネルギー付与前の接合膜41は、それぞれ、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入した膜である。
第2実施形態において、接合膜41は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜41自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる光学デバイス1においても、寸法精度が高いものが得られる。
また、接合膜41が導電性を有する場合、接合膜41の抵抗率は、接合膜41の構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜41を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜41は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
また、接合膜41中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜41の安定性が高くなり、可動板21と各弾性部23とをより強固に接合することができるようになる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜41は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
かかる構成の接合膜41は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜41は、可動板21に対して特に強固に接着するとともに、各弾性部23に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、可動板21と各弾性部23とを強固に接合することができる。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜41の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜41の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以下、AおよびBの方法を用いて、可動板21上に接合膜41を成膜する場合について、詳述する。
まず、接合膜41の成膜方法を説明するのに先立って、可動板21上にイオンビームスパッタリング法により接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図12に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜41の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、可動板21上に接合膜41を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、イオン発生室256には、図12に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜41の成膜速度をより速くすることができる。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、可動板21および接合膜41が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
ここでは、可動板212上に接合膜41を成膜する方法について説明する。
まず、可動板21を用意し、この可動板21を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜41に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜41の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜41を成膜することができる。
なお、Bの方法を用いて接合膜41の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜41に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜41の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、可動板21および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜41が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、各弾性部23側の面41a付近に脱離基303が偏在する接合膜41を成膜することができる。
以上のような第2実施形態にかかる光学デバイス1においても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
このような接合膜41は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜41から脱離し、接合膜41の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜41の表面に、前述した第2実施形態と同様の接着性が発現する。
このような接合膜41は、エネルギーが付与されると、脱離基303の結合手が切れて接合膜41の少なくとも各弾性部23側の面41a付近から脱離し、図11に示すように、接合膜41の少なくとも各弾性部23側の面41a付近に、活性手304が生じるものである。これにより、接合膜41の各弾性部23側の面41aに接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜41が設けられた可動板21は、各弾性部23に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
このような接合膜41は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜41)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜41を用いて得られた光学デバイス1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
また、かかる構成の接合膜41において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜41の安定性が高くなり、可動板21と各弾性部23とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜41を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜41の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜41の厚さをできるだけ厚くすればよい。
まず、接合膜41の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図14に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜41の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、可動板21および接合膜41が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜41に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜41を成膜することができる。その結果、この接合膜41は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
[i] まず、可動板21を用意する。そして、この可動板21を成膜装置400のチャンバー411内に搬入し、基板ホルダー412に装着(セット)する。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜41を可動板21上に形成することができる。
以上のように、接合膜41を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜41を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜41に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のような第3実施形態にかかる光学デバイス1においても、前述した第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
以上説明したような光学デバイス1(波長可変フィルタ)は、例えば、図15や図16に示すような形態で用いられる。
(波長可変フィルタモジュール)
図15に示す波長可変フィルタモジュール1100は、例えば波長分割多重(WDM)光伝送方式のような光ネットワークの光伝送経路に設置されるものである。このような波長可変フィルタモジュール1100は、前述した波長可変フィルタである光学デバイス1と、この光学デバイス1に光を導く光ファイバ1101およびレンズ1102と、光学デバイス1から射出された光を外部へ導くレンズ1103および光ファイバ1104とを備えている。
このような波長可変フィルタモジュール1100は、低コスト化を図りつつ、広い波長範囲での波長分離を行うことができる。
また、図16に示す光スペクトラムアナライザ1200は、被測定光のスペクトラム特性(波長と強度との関係)を測定する装置である。このような光スペクトラムアナライザ1200は、被測定光が入射される光入射部1201と、前述した光学デバイス1と、光入射部1201に入射された被測定光を光学デバイス1へ導く光学系1202と、光学デバイス1から出射された光を受光する受光素子1203と、光学デバイス1から出射された光を受光素子1203へ導く光学系1204と、光学デバイス1の駆動を制御するとともに受光素子1203の出力に基づきスペクトラム特性を求める制御部1205と、制御部1205の演算結果を表示する表示部1206とを備えている。
このような光スペクトラムアナライザ1200は、低コスト化を図りつつ、広い波長範囲での波長分析を行うことができる。
また、前述した光学デバイス1を用いることで、波長可変光源や波長可変レーザを実現することができる。
また、前述した実施形態では各弾性部23はその側面で可動板21や支持部22に接合されていたが、各弾性部23はその端面で可動板21や支持部22に接合されていてもよい。
また、各弾性部23の数、形状、大きさ、配置等は、前述した実施形態のものに限定されない。例えば、前述した実施形態では、各弾性部23の横断面形状が4角形をなしていたが、各弾性部23の横断面形状が円形、楕円形、3角形、5角形等をなしていてもよい。また、各弾性部23の横断面の厚さと幅の比も任意である。
また、前述した実施形態では静電駆動方式を採用する光学デバイスを説明したが、本発明の光学デバイスの駆動方法は、電磁駆動方式であってもよいし、圧電駆動方式であってもよい。
Claims (30)
- 第1の光反射部を備える可動板と、該可動板をその厚さ方向に変位可能に支持する弾性部とが設けられた第1の基体と、
前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする光学デバイス。 - 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載の光学デバイス。
- 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載の光学デバイス。
- 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載の光学デバイス。
- 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載の光学デバイス。
- 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載の光学デバイス。
- 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし10のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記可動板の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし11のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記弾性部の前記接合膜と接している面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし12のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記表面処理は、プラズマ処理である請求項12または13に記載の光学デバイス。
- 前記可動板と前記接合膜との間に、中間層を有する請求項1ないし14のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記弾性部と前記接合膜との間に、中間層を有する請求項1ないし15のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されている請求項15または16に記載の光学デバイス。
- 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし17のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外線である請求項18に記載の光学デバイス。
- 前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項18または19に記載の光学デバイス。
- 前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項18ないし20のいずれかに記載の光学デバイス。
- 第1の光反射部を備える可動板と、該可動板をその厚さ方向に変位可能に支持する弾性部とが設けられた第1の基体と、
前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする光学デバイス。 - 第1の光反射部を備える可動板と、該可動板をその厚さ方向に変位可能に支持する弾性部とが設けられた第1の基体と、
凹部を有し、該凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板をその厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成され、
前記可動板および前記弾性部は、互いに異なる特性を有する材料で構成され、前記可動板と前記弾性部とが接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記可動板と前記弾性部とを接合していることを特徴とする光学デバイス。 - 前記可動板は、シリコンまたはガラスを主材料として構成されている請求項1ないし23のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記弾性部は、樹脂を主材料として構成されている請求項1ないし24のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記弾性部は、前記可動板よりも軟質な材料で構成されている請求項1ないし25のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記第2の基体には、凹部が形成され、該凹部の底面に前記第2の光反射部が設けられている請求項1ないし26のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記第2の基体には、前記可動板に静電ギャップを隔てて対向する電極が設けられており、前記駆動手段は、前記可動板と前記電極との間に電圧を印加することにより、前記可動板と前記電極との間に静電引力を生じさせて、前記可動板を変位させるように構成されている請求項1ないし27のいずれかに記載の光学デバイス。
- 請求項1ないし28のいずれかに記載の光学デバイスを備えることを特徴とする波長可変フィルタモジュール。
- 請求項1ないし28のいずれかに記載の光学デバイスを備えることを特徴とする光スペクトラムアナライザ。
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