JP2009133825A - 赤外線撮像素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基準電圧となる参照画素の出力が画素に近くなる画素構造を有した赤外線撮像素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る赤外線撮像素子は、検出部とその検出部上に結合部を介して検出部から離間されて支持された赤外線吸収部と、検出部を支持する支持脚とを備えた画素を半導体基板上に二次元状に配列配置した熱型の赤外線撮像素子であって、その画素列に隣接して設けられた入射赤外線を遮蔽する構造を備えた画素の基準信号を発生する参照画素を有し、画素と参照画素の各検出部はそれぞれ支持脚を介して半導体基板と接続されたことを特徴とするものである。
かかる構成により、画素信号の読出し動作に伴う自己発熱のため、参照画素と画素との出力に著しい差が生じることはなく、参照画素の出力が理想的な基準電圧になる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、遠赤外域に感度を有する熱型の赤外線撮像素子に関するものである。
従来の赤外線撮像素子は、素子温度がドリフトすると信号出力がダイナミックレンジを外れて撮像できなくなるため、温度調節機構で素子温度を一定に保つ必要があった。そこで、温度調節機構を省略すべく、断熱構造を有する画素の他に断熱構造を有さない参照画素を形成し、参照画素の信号を画素の駆動制御回路に帰還させて素子の温度調節を行なわなくても素子出力が一定のレンジに入るようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
また、パッケージ上に入射赤外線を遮る遮光板を設け、遮光された部分を参照画素としていたものもあった(例えば、特許文献2参照。)。
特開2005−214639号公報(第12頁、図1) 特開2000−97767号公報(第3頁、図6)
赤外線撮像素子においては入射赤外光による検出部の状態変化を検出するために画素へ電圧が印加されていた。例えば、特許文献1の赤外線撮像素子においては駆動線を通じて画素へ電圧が印加されていた。このため、赤外線撮像素子の画像信号の読出し動作によって、画素は自己発熱していた。また、この自己発熱は外部から入射した赤外線による温度上昇分よりも圧倒的に大きいものであった。
このような特許文献1にみられるような赤外線撮像素子にあっては、参照画素は断熱構造が無い画素構造になっていた。そのため、外部から赤外線が入射しないようにして撮像したときにおいても、画素と参照画素とから読み出される出力に差が生じ、参照画素の出力が画素信号の基準電圧にならなかった。
この理由はつぎのとおりである。例えば、参照画素に断熱構造が無い場合は、画素の検出部から撮像素子本体への熱の逃げ(熱コンダクタンス)が著しく大きくなり参照画素が冷えやすい構造だった。したがって、画素信号の読出し動作に伴う自己発熱のため、参照画素と画素との出力に差が生じてしまっていた。そのため、この出力差を見込んだ信号処理を考慮しなければならない不都合があった。
また、上述のように参照画素に断熱構造が無い構造とせずに、参照画素に外部からの入射赤外線を吸収しないような構造、例えば、赤外線吸収部を省略した構造も考えられる。しかし、このような構造では検出部に入射赤外線が当ってしまい信号出力を発生させるので基準電圧として使うには不都合であった。
さらに、特許文献2にみられるパッケージ上に遮光板を設けて参照画素部とする方法では、画素と参照画素とをまったく同じ構造とすることができる。しかしながら、遮光板による入射光の回折の影響があり、これを避けるために完全に遮光される参照画素部と画素部との間に距離を設け、光が当る部分と完全に遮光される部分を分ける必要があった。そのため撮像素子の小型化には不利であった。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、基準電圧となる参照画素の出力が画素の出力に近くなる画素構造を有した赤外線撮像素子を提供することを目的とする。
本発明に係る赤外線撮像素子は、温度を検出する検出部と、検出部上に結合部を介して検出部から離間されて支持された入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部と、検出部を半導体基板より離して保持する支持脚とを備えた画素を半導体基板上に二次元状に配列配置した熱型の赤外線撮像素子であって、二次元配置された画素列に隣接して設けられた画素で発生する信号の基準となる基準信号を発生する参照画素を有し、参照画素は、検出部と、検出部を半導体基板より離して保持する支持脚と、入射赤外線から検出部を遮蔽する反射体とを備え、反射体は半導体基板の表面に堆積された層の一部であって検出部の上方に検出部から離間されて保持されたことを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、画素信号の読出し動作に伴う自己発熱に起因して参照画素と画素との出力に著しい差が生じることはなく、参照画素の出力が理想的な画素信号の基準電圧になる。したがって、素子温度が大きく変化した場合でも簡便な信号処理回路で素子出力の安定化を図ることができる。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る赤外線撮像素子の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1中のIIで示した部分を拡大した平面図であって、隣接する画素10と参照画素11をそれぞれ1画素ずつ抜出して拡大した平面図である。図3は、図2中に示すIII-III断面を矢印方向に見た断面図で、隣り合う画素10および参照画素11の断面図を示した模式図である。図4は、図3中に示すIV-IV断面を矢印方向に見た平面図であって、図1中のIIで示した部分面を拡大した部分を平面視した模式図である。同じく、図5は、図3中に示すV-V断面を矢印方向に見た平面図であって、図1中のIIで示した部分面を拡大した部分を平面視した模式図である。
まず、赤外線撮像素子の全体構成について説明する。
図1において、赤外線撮像素子は、画素10、参照画素11、水平走査回路2、垂直走査回路3、出力アンプ4、等により構成さている。また、画素10は、光学系(図示せず。)によって像が結像する基板上の領域(以下、撮像領域という)に2次元アレイ状に配列されている。さらに、配列配置された画素10の外側の列であって、垂直走査回路3寄りの最外周に参照画素11が配置されている。画素10及び参照画素11の出力信号は、それぞれ垂直選択線5及び信号線6を通じて水平走査回路2と垂直走査回路3とにより読み出され、出力アンプ4より素子外部へ出力される。
なお、ここでいう画素とは、赤外線撮像素子の画像信号を発生させるものであり、赤外線撮像素子上に配列された赤外線吸収部13や検出部16等の配列の最小の繰返し単位である。また、参照画素についても配列の最小の繰返し単位である。
また上述したように、参照画素11は2次元アレイ状に配置された画素10(すなわち、撮像領域)の外周を取り囲むように撮像領域の隣に配置されて画素群を構成している。なお、参照画素11の画素群は撮像領域の外周を取り囲むように配置するのが最も効果的であるが、参照画素11の画素群は撮像領域のいずれか一辺のみに配置しても後に説明する本願特有の効果を奏する。
さらに、赤外線撮像素子の構造について図3に従って説明する。
赤外線撮像素子は、SOI(Silicon On Insulator)基板の埋め込み酸化膜(図示せず。以下、BOX酸化膜という)の上に作製されたSOIダイオードを検出部16とした構成である。SOIダイオードは熱を電気信号へ変換する機能を有する。また、BOX酸化膜の下のSi基板12は、部分的にエッチングにより空洞部18が形成されており、支持脚17を介してSi基板12から検出部16が離間されて支持されている。そのため、検出部16からSi基板12への熱伝導を低減する構造となっている。したがって、画素10では素子へ入射する赤外線によって断熱構造体上の検知部分の温度が上昇し、その温度上昇を熱電気変換素子で検出し、電気信号として出力することが可能となる。なお、この構造はマイクロマシニング技術を用いて作製される。例えば支持脚17は窒化チタンからなる配線と酸化珪素からなる誘電体層を積層したものから構成されている。また、誘電体層は主に支持脚17の剛性を向上するために用いられている。
図3に従い画素10について更に説明する。上述したように、画素10は赤外線吸収部13と検出部16と支持脚17とを含む構成であって、赤外線吸収部13は画素の結合部14を介して検出部16から離間されて結合されている。なお、赤外線吸収部13は、例えばシート抵抗が概ね350オームである窒化チタンからなる薄膜金属層を酸化珪素からなる誘電膜で挟んだものである。また、赤外線吸収部13と後述する赤外反射体21からなる光学的共振構造により、入射されてきた赤外入射光を効率よく赤外線吸収部13で吸収できる構造である。
同じく図3を参照して、参照画素11について説明する。参照画素11は、赤外線吸収部13と検出部16と支持脚17とを含む構成であって、赤外線吸収部13は参照画素の結合部15を介して赤外反射体21と離間されて結合されている。また、検出部16は支持脚17のみによって支持され、Si基板から熱絶縁された構造であり、この点については画素10と同様の支持構造である。しかし、画素の赤外線吸収部13は検出部16と熱的に結合されていたが、参照画素11の場合は検出部16とは結合されていない。
さらに、図2、図4、図5を参照しつつ画素10と参照画素11との差異を説明する。図2は、図1の赤外線撮像素子を平面視したものであって、画素10と参照画素11とが隣り合って配置されている部分の拡大図である。各画素の最表面には同じ赤外線吸収部13があり、画素10と参照画素11とに差はない。なお、図2には垂直選択線5、信号線6が破線で示されているが、実際には最表面にこれらは無く、更に下層に存在するものを透視したものである。
つぎに、図2で示した赤外線吸収部13の更に下層を示したものが図4である。赤外線吸収部13の下層には入射赤外線を遮蔽する構造としての赤外反射体21が一面にあり、部分的に更に下層へ通ずる穴(スリット24、開口部25)が開いている。画素10の領域には、画素の結合部14が通るに十分な開口部25が開いている。また、参照画素11の領域には、細い開口であるスリット21が開いている。赤外反射体21は、例えばクロムからなる赤外反射膜を酸化珪素からなる誘電膜中に設けた構成であり、概ね9割以上の赤外反射率を有するものである。赤外反射体21は検知部16とは接触しないように形成され、画素の周辺部でSi酸化膜26を介してSi基板に固定されている。赤外反射体21は多重反射構造の構成要素として入射光の吸収には寄与しているものの、検出部16や赤外線吸収部13には接続されていない。なお、上述したスリット24及び開口部25は、この穴を通じてSi基板をエッチングし空洞部18を形成するための開口である。
さらに、赤外反射体21の下層を示した図5について説明する。検出部16は支持脚17のみによって支持され、Si基板から熱絶縁された構造である。支持脚17は蛇行した細長い断熱性の高い形状である。この支持構造は画素10と参照画素11とは同様の構造であるが、画素10の検出部16には画素の結合部が結合しているのに対し、参照画素11の検出部16には上層から接合するものは無い。なお、この層の上方には赤外反射体21からなる層がある。
上述した画素の構成によれば、画素10では入射されてきた赤外入射光は赤外線吸収部13で吸収され熱に変換される。さらに、赤外線吸収部13は画素の結合部14を介して検出部16結合されているため、この熱は検知部16に伝達され検知部16に設けているダイオードにより電気信号に変換される。
一方、参照画素11では、赤外入射光が赤外線吸収部13で吸収されて熱に変換されたとしても、赤外線吸収部13は参照画素の結合部15を介して赤外反射体21と結合されているが検知部16とは結合されていないので、検出部16は赤外入射光による電気信号を発生しない。
上述した画素構成によれば、画素10と参照画素11とは同じ支持構造である。すなわち、共に検出部16は支持脚17のみによって支持され、Si基板から熱絶縁された構造である。したがって、検出部から撮像素子本体への熱の逃げは、画素10と参照画素11とで著しく異なることは無い。そのため、画素信号の読出し動作に伴う自己発熱のため、参照画素と画素との出力に著しい差が生じることはなく、参照画素の出力が理想的な基準電圧になる。
さらに、画素10と参照画素11とは同じ赤外線吸収部13を有するので、入射赤外線は赤外線吸収部13とその下部の赤外反射体21に阻まれ検出部16に入射赤外線が当ることはないので、外来の入射赤外線による信号出力を発生させることもない。したがって、基準電圧に不要な信号出力が重なる不都合もない。
また、同じ構造の赤外線吸収部13を有する画素10と参照画素11とが隣り合って配置されているので、撮像領域の中心付近に位置する画素10と参照画素11と隣接する画素10とがほぼ同一形状になる。したがって、参照画素11と隣接した画素10の信号出力特性が中心側の画素列の画素10の信号出力特性とずれることが無くなる。
この理由を以下補足説明する。一般的に、連続してアレイ状に配列されている最外周のパターンは、製造プロセスに起因して内側のパターンに比べて若干の寸法ずれが生ずるという問題がある。例えば、エッチング時に周辺部分でエッチングレートが高くなる場合等により若干小さくなったりする現象がある。そのため、画素10と参照画素11とが隣り合って配置されている場合に、仮に、参照画素11には赤外線吸収部13が無かったとすると、画素の最外周の画素列は受光面積が少なくなるので、信号出力特性が若干小さくなる。そこで、上述のように参照画素11にも赤外線吸収部13があることによって、配列パターンの不連続性を解消できるので、係る不都合を無くすことができる。
したがって、撮像領域の中心付近に位置する画素10と参照画素11と隣接する画素10とがほぼ同一形状の赤外線吸収部13を有することになるので、入射赤外光に対する開口率はほぼ等しくなる。そのため、撮像領域の全般に渡り信号出力特性を均一にできる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、検出部16からSi基板12への熱の逃げ、即ち画素の断熱特性は画素10と参照画素11とで同じ特性となる。また、画素10と参照画素11とは同じ赤外線吸収部13を有することになるので、外来の入射赤外線により基準電圧が揺らぐこともない。したがって、素子温度が大きく変化した場合でも簡便な信号処理回路で素子出力の安定化を図ることができる。
また、素子の上方に別に設置した遮光体を形成していないため、素子の大型化や、素子作製のために煩雑な手法を用いる必要もない。
次に、赤外線撮像素子の製造方法を説明する。
まず、半導体素子の製造に常用される汎用の製造工程を経て水平走査回路2、垂直走査回路3、出力アンプ4、温度を検出する検出部16等の信号処理回路、および、支持脚17等を作製する。これらの工程までは画素10と参照画素11とでは作製パターンや工程など特に差異はない。上述の工程までの出来上がり状態は、基板を平面視して画素部分を拡大して見ると図5に示された状態になっている。
次の工程である二次元に配置された画素10および参照画素11の上部構造を作成する工程に関して説明する。
上述した信号処理回路等の上に有機材料からなる第1の犠牲層を形成する。支持脚17の周囲に配置された垂直選択線5と信号線6の一方か両者の少なくとも一部分の上には第1の犠牲層を形成しないようにパターニングする。こうすることにより、犠牲層の無い部分には次に積層する赤外反射体21が基板側と接合されることになり、後の工程で犠牲層が除去されても赤外反射体21を基板側から支持することができる。犠牲層のパターニングはフォトレジストを第1の犠牲層として用いたときのリソグラフィによる形成でも可能であり、エッチング加工や全面形成したのちにポリッシング加工で信号線6上に形成されているSi酸化膜26を露出させる方法でも可能である。次に、第1の犠牲層を硬化させる。
次に、赤外反射体21を形成する。赤外反射体21の材料としては、例えば、金、白金、アルミニウム、チタン、クロムなど赤外光に対する反射率が高い材料と、酸化珪素からなる誘電膜中とを用いる。また、赤外反射体21はSi基板12の表面にこれらの材料をそれぞれ堆積して積層した積層体である。例えば、赤外反射体21(すなわち、積層体)にアルミニウムを用いるならば膜厚50nmの厚みが適当であり、堆積させる各層の厚みを調整して膜厚50nmの厚みにする。この積層工程で、画素10には後に結合部14を貫通させる穴となる開口部25を形成する。また、参照画素11には、エッチングして空洞18を形成するためのスリット24を開口するが、開口部25は設けない。上述の工程までの出来上がり状態は、基板を平面視して画素部分を拡大して見ると図4に示された状態になっている。
更に、この上に第2の犠牲層を形成する。第2の犠牲層の材質としては例えば有機材料でよい。画素10においては、赤外吸収体13と検知部16とを接続するための結合部14を作製するための穴を開口する。参照画素11においては、赤外吸収体13と赤外反射体21を接続するための結合部15を作製するための開口を形成する。
開口の方法は、誘電体や金属膜を用いたハードマスクによるエッチング工程でも可能であるが、より簡便には、フォトレジストを第2の犠牲層として用い、リソグラフィによって形成してもよい。なお、リソグラフィによる形成方法では、第1の犠牲層の形成時にも画素10のみに結合部14に相当する箇所を開口しておく。
次に、この第2の犠牲層を硬化し、その後、赤外線吸収部13を形成する。赤外線吸収部13は、例えばシート抵抗が概ね350オームである窒化チタンからなる薄膜金属層を酸化珪素からなる誘電膜で積層したものである。また、赤外線吸収部13が犠牲層に開口した穴の側面にも誘電膜等が付着するため、結合部14、15が同時に形成される。また、必要に応じて結合部14,15に誘電体膜等を埋め込んでもよい。次に、リソグラフィとパターニングによって赤外線吸収部13を所望の形状に加工する。上述の工程までの出来上がり状態は、基板を平面視して画素部分を拡大して見ると図2に示された状態になっている。
最後に、第1の犠牲層、第2の犠牲層とSi基板12の一部を除去することで完成する。完成後の画素部分の断面は、図3に示された状態である。
上述した製造方法は、検出部16、支持脚17の上には第1の犠牲層を介して赤外反射体21となる材料をそれぞれ堆積して積層し、空洞部18が直下に形成されない垂直選択線5、信号線6の上には犠牲層を介さずに直接赤外反射体21を形成するので、画素を遮光する構造を簡便に作ることができる。また、画素10と参照画素11の作り分けは、リソグラフィのマスクパターンの差だけで作り分けることができるので非常に簡便であり、高精度のパターンが実現できる。したがって、基準電圧となる参照画素の出力が画素の出力に近くなる画素構造を簡便に実現できる。
実施の形態2.
上述の実施の形態1では画素の断熱特性がほぼ等しい形態を説明したが、更に検出部16の熱容量もほぼ等しくした形態を以下説明する。
画素10および参照画素11は、外来の入射赤外線に対する応答特性を除いて、共に同様の温度特性が要求される。すなわち、断熱特性及び熱容量は共に等しいことが望まれる。上述した実施の形態1では画素の断熱特性がほぼ等しい。しかし、参照画素の赤外線吸収部13は検出部16に接続されていないため、赤外線吸収部13と検出部16とを一体としてみた場合は、参照画素11の熱容量は画素10と比べて小さい。そこで、参照画素11の検出部16の構成を変更し、画素10と参照画素11と熱容量の均等化を図った形態を説明する。
図6は、本実施形態の画素部を拡大した断面図であり、隣り合う画素10および参照画素11の断面図を示した模式図である。また、検出部16の構成が実施の形態1と異なる他は形態1と同様の構成である。そのため、以下に説明する本実施形態に特有の構成に起因する効果の他は実施の形態1と同様の効果を奏する。
図6を参照して、参照画素11の検出部16の上部に熱容量調整体であるSi窒化膜31を形成している。また、Si窒化膜31の厚みは赤外線吸収部13の熱容量と等価となるように選定されている。なお、係る構成により酸化珪素からなる誘電体層を積層した微細な支持脚17にダメージ少なくSi窒化膜31の形成が可能である。
上述した構成により、画素10と参照画素11の熱容量は、ほぼ等しくすることができる。そのため、画素10と参照画素11の熱特性は同一になるので、外部から赤外光が入射しない状態の画素10の出力信号と参照画素11の出力信号とに有意差がなくなる。したがって、参照画素部の出力信号を画素部の出力信号処理にそのまま帰還させて信号処理をすることも可能となる。特に、検知部16への通電時間が画素の熱時定数より短い場合には画素の熱容量に起因する昇温の差が顕著となるが、本実施の形態の画素の構成によれば画素10と参照画素11の出力信号とに有意差がなくなるので、フレームレートの早い赤外線撮像素子においても温度調節を行なわなくても素子出力が一定のレンジに入るようにできる。
実施の形態3.
上述の実施の形態1では画素10と参照画素11の断熱特性と吸熱特性の両方が同一となる例を示したが、参照画素11については吸熱性が無くてもよい。しかし、参照画素11にも検知部16があるので、入射赤外線を遮蔽するなんらかの構造を検知部16の上部に設ける必要がある。本実施の形態では係る構造について以下説明する。
図7は、本実施形態の画素部を拡大した断面図であり、隣り合う画素10および参照画素11の断面図を示した模式図である。なお、赤外線吸収部13の構成が実施の形態1と異なる他は形態1と同様の構成である。そのため、以下に説明する本実施形態に特有の構成に起因する効果の他は実施の形態1と同様の効果を奏する。
図7を参照して、参照画素11の赤外線吸収部13の上部に赤外遮光体22を形成すれば赤外光を遮光することがより完全にできる。上述の実施の形態1で説明したように、赤外反射体21にはスリット24があり、この穴を通じて入射赤外光が検出部16に到達する可能性がある。そこで、赤外線吸収部13の上部に赤外遮光体22を形成し、漏れこむ光を少なくしたものである。遮光体としては例えばアルミニウムからなる膜が使用可能である。
また、図8に示す構成により上記と同様に参照画素11を遮光することができる。図8を参照して、参照画素11には赤外線吸収部13が無いが、赤外反射体21の上部に赤外遮光体22を配置している。
上述した本実施の形態では、赤外遮光体22を用いることにより確実に参照画素11を遮光することができ、素子温度が大きく変化した場合でも簡便な信号処理回路で素子出力の安定化を図ることができる。
なお、図8に示した例では、赤外遮光体22を用いて入射赤外光を遮断したが、赤外反射体21が100%近い反射率を有する場合は赤外遮光体22を省略した構造も可能である。
本発明の実施の形態1の熱型赤外検出素子の構成を示した斜視図である。 本発明の実施の形態1の熱型赤外検出素子の画素部の平面図である。 本発明の実施の形態1の熱型赤外検出素子の画素部の断面図である。 本発明の実施の形態1の熱型赤外検出素子の画素部の平面図である。 本発明の実施の形態1の熱型赤外検出素子の画素部の平面図である。 本発明の実施の形態2の熱型赤外検出素子の画素部の断面図である。 本発明の実施の形態3の熱型赤外検出素子の画素部の断面図である。 本発明の実施の形態3の熱型赤外検出素子の画素部の断面図である。
符号の説明
1 赤外線撮像素子、2 水平走査回路、3 垂直走査回路、4 出力アンプ、5 垂直選択線、6 信号線、10 画素、11 参照画素、12 Si基板、13 赤外線吸収部14 画素の結合部、15 参照画素の結合部、16 検出部、17 支持脚、18 空洞部、20 エッチング孔、21 赤外反射体、22 赤外遮光体、23 赤外吸収体、24 スリット、25 開口部、26 Si酸化膜、31 Si窒化膜

Claims (7)

  1. 温度を検出する検出部と、該検出部上に結合部を介して前記検出部から離間されて支持された入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部と、前記検出部を半導体基板より離して保持する支持脚とを備えた画素を前記半導体基板上に二次元状に配列配置した熱型の赤外線撮像素子であって、
    前記二次元配置された画素列に隣接して設けられた前記画素で発生する信号の基準となる基準信号を発生する参照画素を有し、
    前記参照画素は、前記検出部と、該検出部を前記半導体基板より離して保持する前記支持脚と、入射赤外線から前記検出部を遮蔽する反射体とを備え、該反射体は前記半導体基板の表面に堆積された層の一部であって検出部の上方に前記検出部から離間されて保持されたことを備えたことを特徴とする赤外線撮像素子。
  2. 熱型の赤外線撮像素子であって、
    温度に応じた信号を発生する検出部と、該検出部上に結合部を介して前記検出部から離間されて支持された入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部と、前記検出部を半導体基板より離して保持する支持脚とによって構成された画素が前記半導体基板上に2次元状に配列された撮像領域と、
    前記検出部と、該検出部を前記半導体基板より離して保持する前記支持脚と、前記半導体基板の表面に堆積された積層の一部であって前記検出部の上方に配置され入射赤外線から前記検出部を遮蔽する積層体とによって構成された参照画素が前記画素領域に隣接して配置された参照画素の画素群と、を備えた赤外線撮像素子。
  3. 参照画素は画素が備える赤外線吸収部と同一形状の赤外線吸収部を有し、
    該赤外線吸収部は結合部を介して反射体と結合された請求項1または2に記載の赤外線撮像素子。
  4. 参照画素は赤外線吸収部の上部に入射赤外線を遮光する遮光体を有した請求項3に記載の赤外線撮像素子。
  5. 参照画素の検知部は、検知部の熱容量を調整するための熱容量調整体を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線撮像素子。
  6. 二次元配置された画素列の配列と画素列に隣接して設けられた参照画素の配列とが等しい間隔で配列されていることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線撮像素子。
  7. 温度を検出する検出部と、該検出部上に結合部を介して前記検出部から離間されて支持された入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部と、前記検出部をシリコン基板より離して保持する支持脚とを備えた画素を前記シリコン基板上に二次元状に配列配置し、前記画素と同じ検出部と支持脚とを備えた参照画素であって前記画素で発生する信号の基準となる基準信号を発生する参照画素を前記配列配置した画素列の外側に隣接して配置した熱型の赤外線撮像素子の製造方法において、
    前記シリコン基板上に、前記検知部、前記支持脚と信号処理回路を形成する工程と、
    前記検知部と前記支持脚上に第1の犠牲層を形成する工程と、
    前記第1の犠牲層と前記シリコン基板とを覆う反射体となる層を形成する工程と、
    前記画素に対しては、前記反射体となる層のうち、のちに結合部を貫通させる穴となる領域であって前記検知部の上部にある前記反射体となる層に開口部を形成する工程と、
    前記反射体上に第2の犠牲層を形成する工程と、
    前記画素に対しては、前記第2の犠牲層のうち、のちに前記赤外線吸収部と前記検出部とを結合する結合部を形成する領域であって前記画素の前記検知部の一部分の領域の上部にある前記第1及び第2の犠牲層を除去したのち、除去した部分に前記結合部となる材料を埋め込む工程と、
    前記参照画素に対しては、前記第2の犠牲層のうち、のちに前記赤外線吸収部と前記反射体とを結合する参照画素の結合部を形成する領域であって前記参照画素の前記検知部の上部にある前記第2の犠牲層を除去したのち、除去した部分に参照画素の結合部となる材料を埋め込む工程と、
    前記第2の犠牲層およびそれぞれの前記結合部の上に赤外線吸収部となる薄膜を形成し、前記画素および前記参照画素ごとに赤外線吸収部が分離されるようにパターニングする工程と、
    前記検知部および前記支持脚の下部の前記シリコン基板をエッチングしてシリコン基板中に空洞部を形成する工程と、
    前記第1及び第2の犠牲層をエッチングして除去する工程とを含む、
    赤外線撮像素子の製造方法。
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