JP2009133225A - 筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置 - Google Patents

筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置 Download PDF

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泰三 堀込
Yasuji Ishizuka
靖二 石塚
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Abstract

【課題】超リタード燃焼への切り替え時の遅れを低減することを目的とする。
【解決手段】本発明は、筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置であって、燃料を吸気行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第1燃焼モードと、燃料を圧縮行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第2燃焼モードとを有する超リタード燃焼手段(S53,S54)と、所定の運転状態のときに超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替える燃焼方式切り替え手段(S51)と、超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替えるときに、吸気行程噴射が間に合う気筒については第1燃焼モードに設定し、吸気行程噴射が間に合わない気筒については第2燃焼モードに設定してその後第1燃焼モードへ切り替える燃焼モード設定手段(S52)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置に関する。
従来の筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置は、暖気運転時などに燃料を吸気行程及び圧縮行程の2回に分けて噴射し、かつ点火時期を圧縮上死点以降まで遅角した超リタード燃焼によって排気性能を向上させていた(特許文献1参照)。
特開2007−32377号公報
しかしながら、前述した従来の筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンは、超リタード燃焼への切り替え指示がでたときに、燃料噴射タイミングに応じた超リタード燃焼への切り替えをしていなかった。そのため、既に吸気行程に移行した気筒や吸気行程が終了した気筒については、すぐには超リタード燃焼へ切り替えることができず、切り替えるまでに数サイクルの遅れが生じるという問題点があった。
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、超リタード燃焼への切り替え時の数サイクルの遅れを低減することを目的とする。
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
本発明は、筒内直接燃料噴射式火花点火エンジン(1)の燃焼制御装置であって、燃料を吸気行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第1燃焼モードと、燃料を圧縮行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第2燃焼モードとを有する超リタード燃焼手段(S53,S54)と、所定の運転状態のときに超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替える燃焼方式切り替え手段(S51)と、超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替えるときに、吸気行程噴射が間に合う気筒については第1燃焼モードに設定し、吸気行程噴射が間に合わない気筒については第2燃焼モードに設定してその後第1燃焼モードへ切り替える燃焼モード設定手段(S52)と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、燃焼方式を超リタード燃焼に切り替えるとき、吸気行程噴射が間に合わない気筒に対しては、圧縮行程と膨張行程に燃料を噴射する第2超リタード燃焼を実施する。そして、吸気行程噴射が間に合う気筒からは、吸気行程と膨張行程に燃料を噴射する第1超リタード燃焼を実施する。
これにより、吸気行程噴射が間に合わない気筒についても、圧縮行程噴射による超リタード燃焼を行うことができる。つまり、より早い点火順序の気筒から超リタード燃焼を行うことができるので、超リタード燃焼への切り替え時の数サイクルの遅れを低減することができる。
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による筒内直接燃料噴射式火花点火エンジン(以下「エンジン」という)1の燃焼制御装置の全体システム図である。
エンジン1は、V型8気筒エンジンである。以下では、図面の煩雑を防止するため、左右のバンクで同一の機能を果たす部分には、いずれか一方にのみ符号を付する。エンジン1は、シリンダブロック20と、シリンダブロック20の頂部を覆うシリンダヘッド10とを備える。
シリンダブロック20には、クランクシャフト24が回転可能に支持される。シリンダブロック20には、シリンダ21が左右のバンクに4つずつ形成される。シリンダ21には、ピストン22が摺動自在に嵌合する。ピストン22は、コンロッド23によってクランクシャフト24に連結される。
シリンダヘッド10には、吸気通路12に接続され燃焼室11の頂壁に開口する吸気ポート12aと、排気通路13に接続され燃焼室11の頂壁に開口する排気ポート13aとが形成され、燃焼室11の頂壁中心に点火栓14が設けられる。また、シリンダヘッド10には、燃焼室11に直接燃料を噴射する燃料噴射弁15が設けられる。
燃料噴射弁15には、高圧燃料ポンプ16及びプレッシャレギュレータ17によって所定圧力に調圧された燃料が、高圧燃料通路18を介して供給される。高圧燃料通路18には、燃料圧力を検出する燃圧センサ31が備えられる。
吸気通路12には、上流から順にエアクリーナ121と、エアフローメータ122と、電子制御式のスロットル弁123とが設けられる。
エアクリーナ121は、エンジン1に吸入される空気中のゴミなどを取り除く。
エアフローメータ122は、エンジン1に吸入される空気の流量(吸気量)を検出する。
スロットル弁123は、吸気コレクタ124に流入する空気量を調整する。スロットル弁123は、エンジン運転状態に基づいて、スロットルアクチュエータ125によって開閉駆動される。なお、吸気コレクタ124には、吸入負圧を検出する負圧センサ32が設けられる。
排気通路13には、排気中の炭化水素や窒素酸化物等の有害物質を取り除く触媒コンバータ131が設けられるとともに、その触媒コンバータ131の上流側及び下流側に空燃比センサ33が設けられる。
コントローラ3は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ3には、前述した燃圧センサ31、負圧センサ32及び空燃比センサ33の他に、水温センサ34、クランク角センサ35、アイドルスイッチ36、加速度センサ37、大気圧センサ38などの信号が入力される。
水温34センサは、エンジン1の水温を検出する。
クランク角センサ35は、エンジン回転速度や各気筒の基準位置を検出する。クランク角センサ35は、クランクシャフト24の単位回転角度ごとにポジション信号(以下「POS信号」という)を出力する。クランク角センサ35は、クランクシャフト24の基準位置でリファレンス信号(以下「REF信号」という)を出力する。コントローラ3は、POS信号やREF信号などに基づいて、点火時期や燃料噴射時期を算出する。
アイドルスイッチ36は、アクセルペダルが踏み込まれていないときに出力されてアイドル運転中か否かを検出する。
加速度センサ37は、車両の前後加速度や車両の前後傾斜角(路面勾配)などを検出する。
大気圧センサ38は、外気の圧力を検出する。
ところで、エンジン冷機時における触媒の早期活性化及びハイドロカーボンの排出濃度低減のためには、点火時期の遅角が有効である。そして、より大きな効果を得るためには、圧縮上死点以降の点火(以下「ATDC点火」という)が有効である。
そこで、本発明では、エンジン冷機時のアイドル運転中に、点火時期を圧縮上死点以降に設定するとともに、この点火時期より前でかつ圧縮上死点以降に燃料を噴射する超リタード燃焼を行う。以下では、この超リタード燃焼の点火時期及び燃料噴射時期について、図2を参照して説明する。
図2は、超リタード燃焼の2つの実施例を示した図である。
実施例1の超リタード燃焼(以下「第1超リタード燃焼」という)の点火時期は、10°ATDCから50°ATDCの間の期間に設定される。燃料噴射時期は、吸気行程及び膨張行程に設定され、2回に分けて燃料が噴射される。
実施例2の超リタード燃焼(以下「第2超リタード燃焼」という)の点火時期は、第1超リタード燃焼と同様に10°ATDCから50°ATDCの間の期間に設定される。燃料噴射時期は、圧縮行程及び膨張行程に設定され、2回に分けて燃料が噴射される。
このように、点火時期を10°ATDCから50°ATDCまでの間に設定し、点火時期を大幅に遅角することで、触媒の早期活性化及びハイドロカーボンの排出濃度低減のための十分な後燃え効果を得ることができる。
また、ATDC点火で燃焼を安定させるには、燃焼期間を短縮させる必要がある。そのためには、筒内乱れを強化して燃焼速度(火炎伝播速度)を上昇させる必要がある。筒内乱れは、筒内に高圧で噴射される燃料噴霧のエネルギによって生成・強化することができる。
第1超リタード燃焼の場合は、膨張行程中に行われた2回目の燃料噴射によって点火時期の直前に筒内乱れが生成・強化される。一方、吸気行程中に行われた1回目の燃料噴射によって生じた筒内乱れは、圧縮行程後半で減衰してしまい、圧縮上死点後における筒内乱れの強化にほとんど影響を与えない。しかし、1回目の燃料噴射から点火時期までの期間が比較的長いので、噴射燃料を比較的燃焼室全体に拡散させることができる。
このように、第1リタード燃焼によれば、点火時期を大幅に遅角しても、その直前に燃料を噴射して筒内乱れを強化して、燃焼速度を上昇させるので、燃焼を安定させることができる。また、吸気行程中に1回目の燃料噴射を行っているので、比較的燃焼室全体に噴射燃料を拡散させることができる。したがって後述する第2超リタード燃焼と比較して、より燃焼を安定させることができる。
第2超リタード燃焼の場合は、圧縮行程中に行われた1回目の燃料噴射によって生じた筒内乱れは、圧縮上死点以降に徐々に減衰していく。しかし、第2超リタード燃焼の場合は、この1回目の燃料噴射によって生じた筒内乱れが残っている圧縮上死点後の膨張行程中に2回目の燃料噴射が行われる。そのため、1回目の燃料噴射で生成した筒内乱れを強化することができる。
このように、第2リタード燃焼によれば、点火時期を大幅に遅角しても、その直前に燃料を噴射して筒内乱れを強化して、燃焼速度を上昇させるので、燃焼を安定させることができる。
図3は、超リタード燃焼時に燃焼室内に形成される混合気の状態を示す図である。
図3に示すように、吸気行程又は圧縮行程中に行われる1回目の燃料噴射によって、点火栓14の近傍に理論空燃比よりもリッチな第1混合気塊101が形成される。そして、膨張行程中に行われる2回目の燃料噴射によって、1回目の燃料噴射によって形成された第1混合気塊101の内部に、さらにリッチな第2混合気塊102が形成される。第1混合気塊101の外側には、燃料が拡散していない新気の層103が形成される。燃焼室11の全体の空燃比は、理論空燃比よりも若干リーン(16〜17程度)となるように設定される。これにより、ハイドロカーボンの後燃えに必要な酸素を確保している。
このように成層化された状態で点火栓によって第2混合気塊102が点火され、超リタード燃焼が行われる。
ところで、燃焼方式を通常の成層燃焼から超リタード燃焼に切り替える場合、圧縮行程に1回目の燃料を噴射する第2超リタード燃焼に切り替えるほうが、吸気行程に1回目の燃料を噴射する第1超リタード燃焼に切り替えるよりも、早い段階から超リタード燃焼を行うことができる。以下、この点について説明する。なお、ここでいう通常の成層燃焼とは、圧縮行程中に1度だけ燃料を噴射し、点火栓14の近傍に燃料を偏在させた状態で混合気を圧縮上死点前に点火することによって行われる希薄燃焼のことをいう。
第1超リタード燃焼の場合は、吸気行程中に1回目の燃料噴射が行われる。したがって、燃料噴射気筒が吸気行程噴射のタイミングを過ぎていれば、超リタード燃焼を行うことができない。
一方で、第2超リタード燃焼の場合は、圧縮行程に1回目の燃料が噴射されるので、燃料噴射気筒が吸気行程を過ぎていても、圧縮行程噴射のタイミングを過ぎていなければ、超リタード燃焼を行うことができる。
したがって、通常の成層燃焼から超リタード燃焼に切り替える場合は、第2超リタード燃焼に切り換えたほうが、より早い段階から超リタード燃焼を行うことができる。そのため、第1超リタード燃焼に切り替えた場合と比較して、より早い段階から触媒を活性化できる。しかしながら、第2超リタード燃焼は、第1超リタード燃焼に比べて燃焼安定性に劣る。
そこで、本実施形態では、超リタード燃焼への移行要求があったときは、まず第2超リタード燃焼へ移行する。そして、吸気行程噴射が間に合わない気筒に対して、圧縮行程に1回目の燃料を噴射する第2超リタード燃焼を行う。その後、吸気行程噴射が間に合う気筒からは、吸気行程に燃料を噴射する第1超リタード燃焼を行う。これにより、触媒の早期活性が図れ、かつ安定した燃焼が可能となる。以下では、この超リタード燃焼への移行制御について説明する。
図4は、本実施形態による超リタード燃焼への移行制御を示すフローチャートである。コントローラ3は、このルーチンをREF信号ごとに繰り返し実行する。
ステップS1において、コントローラ3は、各種センサからの信号を読み込む。具体的には、エンジン水温や燃料圧力、大気圧、吸入負圧などを読み込む。
ステップS2において、コントローラ3は、成層燃焼が可能か否かを判定する。具体的には、エンジン水温が所定温度より大きいかを判定する。また、燃料圧力が所定圧力より大きいかを判定する。コントローラ3は、エンジン水温及び燃料圧力がそれぞれ所定値より大きければステップS4に処理を移行し、小さければステップS3に処理を移行する。
ステップS3において、コントローラ3は、均質燃焼でエンジンを運転する。ここでいう均質燃焼とは、吸気行程中に燃料を噴射し、空燃比が均一の混合気を燃焼室全体に形成してから点火することによって行われる燃焼のことをいう。
ステップS4において、コントローラ3は、通常の成層燃焼でエンジンを運転する。
ステップS5において、コントローラ3は、超リタード燃焼移行判定処理を実行する。具体的な内容は図5を参照して後述する。
図5は、超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。
ステップS51において、コントローラ3は、超リタード燃焼要求の有無を判定する。すなわち、エンジン回転速度が所定回転速度に達したあとのアイドル運転中であって、触媒コンバータ131の早期昇温要求があるか否かを判定する。具体的には、エンジン回転速度が所定回転速に達したか、エンジン水温が所定温度より小さいか、アイドルスイッチ36の出力があるかを判定する。コントローラ3は、エンジン回転速度が所定回転速度より大きく、エンジン水温が所定温度より小さく、アイドルスイッチ36の出力があればステップS52に処理を移行する。それ以外の場合は今回の処理を終了する。
ステップS52において、コントローラ3は、燃料噴射気筒に対して吸気行程噴射が可能か否かを判定する。具体的には、REF信号等に基づいて燃料噴射気筒の位置を判定し、吸気行程噴射が間に合うかを判定する。コントローラ3は、吸気行程噴射が可能なときは、ステップS53に処理を移行する。一方で、吸気行程噴射が間に合わないときは、ステップS54に処理を移行する。
ステップS53において、コントローラ3は、燃焼方式を第1超リタード燃焼に移行する。具体的には、点火時期を10°〜50°ATDCに設定するとともに、この点火時期より前の吸気行程及び膨張行程の2回に分けて燃料を噴射する。
ステップS54において、コントローラ3は、燃焼方式を第2超リタード燃焼に移行する。具体的には、点火時期を10°〜50°ATDCに設定するとともに、この点火時期より前の圧縮行程及び膨張行程の2回に分けて燃料を噴射する。
以下では、図6を用いて、通常の成層燃焼から第2超リタード燃焼、そして第1超リタード燃焼への切り替えの様子について説明する。
図6は、超リタード燃焼への移行制御の動作を示すタイムチャートである。なお、図6に示すように、エンジン1の点火順序は#1−#8−#7−#3−#6−#5−#4−#2となっている。
エンジン水温が所定温度よりも高く、また燃料圧力が所定圧力より高い状態でのエンジン始動時には(時刻t1)、始動クランキング開始後の気筒判定時に圧縮行程となる気筒に燃料を噴射して、通常の成層燃焼でエンジンを始動する(図6(A)#1気筒;S2でYes,S4)。
その後、超リタード燃焼への移行要求が出される時刻t3までは、通常の成層燃焼が継続される(図6(A)#8,#7気筒、図6(B);S4)。
時刻t2でエンジン回転速度が所定回転速度に達した後(図6(C))、時刻t3で超リタード燃焼への移行要求が出されると(図6(B);S51でYes)、燃料を噴射する気筒に対して吸気行程中に燃料を噴射できるか否かが判定される(S52)。
吸気行程中に燃料を噴射できない気筒に対しては(S52でNo)、第2超リタード燃焼を行う(図6(A)#3,#6気筒;S54)。すなわち、点火時期を圧縮上死点後に設定して大幅に遅角させ、燃料を圧縮行程と膨張行程の2回に分けて噴射する。
これに対して、吸気行程中に燃料を噴射できる気筒に対しては(S52でYes)、第1超リタード燃焼を行う(図6(A)#5,#4,#2気筒;S53)。すなわち、点火時期を圧縮上死点後に設定して大幅に遅角させ、燃料を吸気行程と膨張行程の2回に分けて噴射する。
以上説明した本実施形態によれば、燃焼方式を超リタード燃焼に切り替えるとき、吸気行程噴射が間に合わない気筒に対しては、圧縮行程と膨張行程に燃料を噴射する第2超リタード燃焼を実施する。そして、吸気行程噴射が間に合う気筒からは、吸気行程と膨張行程に燃料を噴射する第1超リタード燃焼を実施する。
これにより、吸気行程噴射が間に合わない気筒についても、圧縮行程噴射による超リタード燃焼を行うことができる。つまり、より早い点火順序の気筒から超リタード燃焼を行うことができる。したがって、触媒の早期活性化及びハイドロカーボンの排出濃度低減のための十分な後燃え効果をより早い段階から得ることができる。
また、吸気行程噴射が間に合う気筒からは第1超リタード燃焼を行うので安定した燃焼を行うことができる。
(第2実施形態)
次に、図7〜図9を参照して本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、ブレーキブースタの負圧が小さい(大気圧に近い)ときは、超リタード燃焼への移行を禁止する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
図7は、本発明の第2実施形態によるエンジン1の燃焼制御装置の全体システム図である。
車両の制動装置2は、ブレーキブースタ40と、マスターシリンダ50とを備える。
ブレーキブースタ40は、内部にダイアフラム43で仕切られた第1室41及び第2室42と、プッシュロッド44と備える。
第1室41は、大気弁45を介して大気と連通している。第2室42は吸気コレクタ124と連通しており、負圧状態となっている。第1室41と第2室42とは、真空弁46を介して連通している。
プッシュロッド44は、ブレーキブースタ40の内部を貫通する。プッシュロッド44の一端はマスターシリンダ50の第2ピストン52に接続され、他端はブレーキペダル47に接続される。プッシュロッド44は、ブレーキペダル47が踏み込まれると図中左側に移動する。これにより、大気弁45及び真空弁46が開閉するとともに、マスターシリンダ50の第1ピストン51及び第2ピストン52がリターンスプリング53a,53bに抗して押し込まれ、油圧が発生する。
マスターシリンダ50は、内部に第1ピストン51と第2ピストン52とを備える。
第1ピストン51は、両側からリターンスプリング53a,53bによって支持される。リターンスプリング53a,53bの収まっている部分は、それぞれ第1圧力室54及び第2圧力室55を形成する。
第1圧力室54及び第2圧力室55は、それぞれブレーキオイルの補給口と圧送口と備える。補給口は、ブレーキオイルが補給されるリザーバタンク56と連通している。圧送口は、図示しないフロントホイールシリンダ又はリヤホイールシリンダと連通している。
続いて制動装置2の作用について説明する。
ブレーキブースタ40の大気弁45は、ブレーキペダル47が踏み込まれていないときは閉じられている。一方で、真空弁46は開かれている。したがって、ブレーキペダル47が踏み込まれていないときは、第1室41と第2室42とは連通状態となっており、双方の圧力は同じ負圧となっている。
この状態からブレーキペダル47を踏み込むと、プッシュロッド44が図中左側に移動して、まず真空弁46が閉じられる。これにより、第1室41と第2室42とは非連通状態となる。
さらにブレーキペダル47を踏み込むと、大気弁45が開き第1室41に大気が導入される。これにより、第1室41の圧力は大気圧となる。一方で、第2室42の圧力は、ブレーキペダル47を踏み込む前の負圧のままである。そのため、第1室41と第2室42との間に圧力差が生じ、この差圧がダイアフラム43に作用してプッシュロッド44を移動させるときのアシスト力となる。
このようにして、ブレーキブースタ40は、エンジン1の吸入負圧を倍力源として、ブレーキペダル47を操作するために必要な力を軽減する。
ところで、アイドル運転中は、燃焼方式が通常の成層燃焼や均質燃焼であるか超リタード燃焼であるかにかかわらず、エンジン回転速度が目標アイドル回転速度となるようにスロットル弁123の開度がフィードバック制御される。
超リタード燃焼を行うと、点火時期の遅角によってエンジントルクが低下するので、エンジン回転速度も低下する。したがって、アイドル運転中に超リタード燃焼が行われると、吸入空気量を増加させてエンジントルクの低下を防止するため、スロットル弁123が開かれる。
そのため、超リタード燃焼時には、吸気コレクタ124の負圧が低下する。つまり、吸気コレクタ124の圧力が大気圧に近づく。ブレーキブースタ40は、吸気コレクタ124の負圧を倍力源として、運転者がブレーキペダル47を操作するために必要な力を軽減している。したがって、吸気コレクタ124の負圧が低下すると、運転者がブレーキペダル47を操作するために必要な力が増加してしまい、運転者の負担が増加する。
そこで、本実施形態では、車両の前後傾斜角(路面勾配)αに基づいて、車両停車に必要なブースタ負圧の要求値(以下「要求負圧」という)Pαを算出する。そして、ブースタ負圧Pbが要求負圧Pαより小さいときは、超リタード燃焼への移行を禁止する。これにより、吸気コレクタ内の負圧の低下を防止できるので、運転者の制動操作の負担を軽減できる。
図8は、本発明の第2実施形態による超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。
ステップS255において、コントローラ3は、加速度センサ37によって検出した車両の前後傾斜角αに基づいて、あらかじめROMに格納された図9に示す特性のテーブルから要求負圧Pαを決定する。図9は、車両の前後傾斜角αから要求負圧Pαを設定するテーブルである。図9に示すように、車両の前後傾斜角αが大きくなるほど要求負圧Pαは大きくなる。
ステップS256において、コントローラ3は、負圧センサ32よって検出したブースタ負圧Pbが要求負圧Pαより大きいか否かを判定する。コントローラ3は、ブースタ負圧Pbが要求負圧Pαより大きければ、ステップS52に処理を移行する。一方で、ブースタ負圧Pbが要求負圧Pαより小さければ、燃焼方式を超リタード燃焼に移行せずに今回の処理を終了する。
以上説明した本実施形態によれば、ブースタ負圧Pbが要求負圧Pαより小さいときは、超リタード燃焼への移行を禁止した。したがって、吸気コレクタ内の負圧の低下を防止できるので、第1実施形態の効果に加えて、運転者の制動操作の負担を軽減できる。
(第3実施形態)
次に、図10を参照して本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、大気圧が高地判定値より小さいときは、超リタード燃焼への移行を禁止する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
気圧の低い高地では、空気の密度が平地より小さくなるので、エンジンに供給される酸素量が低下してエンジントルクが低下する。
そこで本実施形態では、高地にいるときは、超リタード燃焼への移行を禁止して、さらなるエンジントルクの低下を防止する。
図10は、本発明の第3実施形態による超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。
ステップS355において、コントローラ3は、車両が高地にいるか否かを判定する。具体的には、大気圧センサ38によって検出した大気圧が所定の高地判定値より小さいか否かを判定する。コントローラ3は、大気圧が高知判定値より小さければ、燃焼方式を超リタード燃焼に移行せずに今回の処理を終了する。一方、大気圧が高地判定値より大きければ、ステップS52に処理を移行する。
以上説明した本実施形態によれば、高地にいるときは超リタード燃焼への移行を禁止したので、高地において超リタード燃焼によってエンジントルクが低下することを防止できる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、前述した各実施形態では、第2超リタード燃焼を行う場合、1回目の燃料を圧縮行程後半に噴射していたが、圧縮行程の前半であっても良い。これによれば、燃料が拡散する時間が増えるので、燃焼の安定性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態による筒内直接燃料噴射式エンジンの制御装置の全体システム図である。 超リタード燃焼の2つの実施例を示した図である。 超リタード燃焼時に燃焼室内に形成される混合気の状態を示す図である。 本発明の第1実施形態による超リタード燃焼への移行制御を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態による超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。 超リタード燃焼への移行制御の動作を示すタイムチャートである。 本発明の第2実施形態による筒内直接燃料噴射式エンジンの制御装置の全体システム図である。 本発明の第2実施形態による超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。 車両の前後傾斜角から要求負圧を設定するテーブルである。 本発明の第3実施形態による超リタード燃焼移行判定処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 筒内直接燃料噴射式火花点火エンジン
32 負圧センサ(ブースタ負圧検出手段)
37 加速度センサ(前後傾斜角検出手段)
38 大気圧センサ(大気圧検出手段)
40 ブレーキブースタ
131 触媒コンバータ
S51 燃焼方式切り替え手段
S52 燃焼モード設定手段
S53 超リタード燃焼手段
S54 超リタード燃焼手段
S255 要求負圧算出手段
S256 超リタード燃焼への切り替え禁止手段
S355 高地判定手段、超リタード燃焼への切り替え禁止手段

Claims (4)

  1. 筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置であって、
    燃料を吸気行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第1燃焼モードと、燃料を圧縮行程及び膨張行程の2回に分けて噴射し、その膨張行程噴射後に点火して超リタード燃焼を行う第2燃焼モードとを有する超リタード燃焼手段と、
    所定の運転状態のときに超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替える燃焼方式切り替え手段と、
    超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替えるときに、吸気行程噴射が間に合う気筒については第1燃焼モードに設定し、吸気行程噴射が間に合わない気筒については第2燃焼モードに設定してその後第1燃焼モードへ切り替える燃焼モード設定手段と、
    を備えることを特徴とする筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置。
  2. 吸入負圧を蓄えるブレーキブースタを備え、
    前記ブレーキブースタ内の負圧を検出するブースタ負圧検出手段と、
    車両の前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、
    前記前後傾斜角に基づいて、傾斜車両の制動に必要な前記ブレーキブースタ内の負圧を算出する要求負圧算出手段と、
    前記ブースタ負圧が前記要求負圧よりも小さいときは、前記超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替えることを禁止する手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置。
  3. 大気圧を検出する手段と、
    前記大気圧に基づいて、高地判定を行う高地判定手段と、
    前記高地判定手段によって、車両が高地にいると判定されたときは、前記超リタード燃焼へ燃焼方式を切り替えることを禁止する手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置。
  4. 前記所定の運転状態は、アイドル時のエンジン回転速度が目標アイドル回転速度となるようにスロットル開度が制御されるアイドル運転中であって、触媒コンバータの早期昇温の要求がある運転状態である
    ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1つに記載の筒内直接燃料噴射式火花点火エンジンの燃焼制御装置。
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