JP2009132553A - 水素貯蔵材料の製造方法及び水素発生方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易かつ短時間で、水素化マグネシウムを製造する方法を提供する。
【解決手段】金属マグネシウム粉末を水素雰囲気中で機械的粉砕処理することにより、金属マグネシウム粉末を水素化して水素化マグネシウム粉末を製造することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法を提案する。本発明では、金属マグネシウム粉末に、酸化チタン粉末及び酸化ニオブ粉末の少なくとも1種を添加することにより、水素化の促進に役立つ。
【選択図】図1

Description

本発明は、軽量で、常温、常圧下で多量の水素を貯蔵することができる新規な水素貯蔵材料の製造方法に関するものである。
地球環境保全や化石燃料の枯渇の問題から、化石燃料に代わる代替エネルギーとして燃料電池が電力の供給源として考えられている。燃料電池は原料に水素と酸素を用い、その排ガスもクリーンであることから注目されている。ところが、燃料を水素とする場合、メタノールや天然ガスの改質を利用する方法では、起動時に時間がかかることや急激な負荷変動に対応しにくいという欠点がある。そこで、水素を貯蔵する必要があるが、従来の方法では、自動車への搭載を想定すると1回の水素充填で400〜500km走行するためには水素5kg程度が必要となり、この水素量を圧縮した高圧ボンベや低温にした液体水素にしなければならない。しかし、圧縮水素を使用する場合、35〜70MPaに圧縮された水素を高圧ボンベに貯蔵しても水素の圧縮率低下のためそれほど体積が小さくならず、それを充填する高圧ボンベが重くなるという欠点がある。また、液体水素の場合、水素を常時−252℃に冷却して貯蔵しなければならず、冷却機構を含む貯蔵容器が大きくなる欠点がある。
したがって、これらの問題を解決できる貯蔵容積が小さくて軽量な水素貯蔵材料が求められている。現在、最も実用化に近いものは水素吸蔵合金であり、これは水素を金属水素化物として貯蔵するものである。しかし、水素吸蔵合金の単位重量当たりの水素貯蔵量が小さいために、多量の水素を必要とする車載用には合金重量が400kgを超えるという問題があり、未だ実用化に至っていない。また、水素吸蔵合金の場合、水素の吸着及び放出時には、合金を高圧、高温条件に曝す必要があるために、その繰り返しによる水素吸蔵合金の劣化及び性能低下、また構成元素が希少金属の場合には、資源枯渇等の問題がある。
アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいはその水素化物は、加水分解反応により水素を発生することが知られており、これを水素貯蔵材料として利用する試みが注目を集めている。加水分解反応により水素を発生するアルカリ金属やアルカリ土類金属としては、表1のようなものがある。表1に、材料と、水との反応式、水素発生量の理論値を示す。
Figure 2009132553
表1の中で、(1)、(2)、(3)、(5)のLi、Na、Caなどの水素化物を用いた加水分解反応は激しく、多量の熱を発生し、あるいは爆発的な反応が起こりうる危険がある。たとえば、(5)LiAlHでは、加水分解の発熱で、水素化物の熱分解まで瞬時に進行するため、保護膜が必要であるなど水との接触を工夫する必要がある。
(6)NaBH、(4)MgH、(7)Mgを用いた場合は、加水分解反応の速度が遅く実用に適していない。また、MgH、Mgは、加水分解反応の進行と同時に不活性なMg(OH)膜が形成されるため、反応が完了まで進まずに、実質的な水素発生量は理論値よりも少ないという問題もある。
しかしながら、金属Mgあるいはその水素化物(MgH)は、比較的取り扱いが容易なことと、工業用途が幅広いためにコストが安価であるという特長があり、加水分解反応の改善の試みがなされてきた。加水分解反応の改善の試みとしては、反応活性物質の利用及び反応効率の向上などが行われ、実用化に近づいている。
このように、水素化マグネシウム(MgH)が加水分解反応を利用した水素貯蔵材料として適しているが、一方で、工業的に量産化するためには水素化マグネシウムをより安価に製造する必要がある。特許文献1は、この要請に応える水素化マグネシウムの製法を提案している。すなわち特許文献1は、水素化物形成下での水素吸収のための触媒を添加しながら水素化マグネシウムを製造する方法において、水素化すべき微粒状マグネシウムに触媒として高い反応性を有する微粒状マグネシウムを添加し、かつ水素化を温度≧250℃及び圧力0.5〜5MPaで実施することを特徴とする、水素化マグネシウムの製法を開示している。また、特許文献1は、水素化すべき微粒状マグネシウムに触媒として粒度≦400μmを有する水素化マグネシウムが、水素化すべきマグネシウムに対して少なくとも1.2重量%の量で添加され、かつ水素化を、温度≧250℃及び圧力0.5〜5MPaで実施される水素化マグネシウムの製造方法も開示している。
特開平7−330305号公報
しかし、特許文献1の方法によると、水素化時の温度が250℃以上、典型的には350℃と高く、かつ水素化が進行するために平均粒度が75μm以下と微細な金属マグネシウム粉末を原料としている。また、水素化マグネシウムを得るために6時間程度の処理を行っている。さらに、高い反応性を有する微粒状マグネシウムとして、発火性マグネシウム粉末を用いており、その取扱いを慎重にしなければならない。
本発明は、このような従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より簡易かつ短時間で、水素化マグネシウムを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の水素貯蔵材料の製造方法は、金属マグネシウム粉末を水素雰囲気中で機械的粉砕処理することにより、金属マグネシウム粉末を水素化して水素化マグネシウム粉末を製造することを特徴としている。
本発明において、金属マグネシウム粉末に加えて水素化マグネシウム粉末を添加した混合物を、水素雰囲気中で機械的粉砕処理することにより、水素化マグネシウムを得ることもできる。
また本発明において、金属マグネシウム粉末に、酸化チタン粉末及び酸化ニオブ粉末の少なくとも1種を添加した混合物を、水素雰囲気中で機械的粉砕処理することが、水素化の促進にとって有効である。
本発明で得られる水素貯蔵材料と、金属水酸化物懸濁液を混合し、加水分解により水素を発生させることができる。
本発明によれば、金属マグネシウム粉末を原料とし、高温に加熱することなく水素化マグネシウム粉末を製造することができる。また、3時間程度の機械的粉砕処理により、水素化マグネシウム粉末を製造することができる。さらに、本発明は、機械的粉砕処理を行いながら水素化を行うため、比較的粒度の大きい金属マグネシウム粉末を出発原料とすることができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、水素化される金属マグネシウム粉末を、水素雰囲気下で機械的な粉砕処理を施す。以下、水素化される金属マグネシウム粉末を被水素化金属粉末と称する。
被水素化金属粉末は、機械的粉砕処理される過程で、その表面に活性な面が露出され、反応性が増大する。機械的粉砕処理が水素雰囲気下で行われるため、被水素化金属粉末は水素化される。機械的粉砕処理を継続することにより、新たな活性面が次々に生成される結果、被水素化金属粉末の水素化が容易に進む。後述する実施例から明らかなように、機械的粉砕処理による水素化は、常温で行うことができる。
本発明における被水素化金属としては、典型的にはMgであるが、加水分解により水素を放出する金属水素化物の金属種を加えることもできる。たとえば、Li、Na、Ca及びAlを加えることができる。
また、本発明に用いる被水素化金属粉末は、機械的な粉砕処理が施されるものであるため、当初より微細である必要はない。後述する実施例に示すように、本発明では、10mesh(目開き:1.7mm)の粉末を出発原料として用いても、85%程度の高い水素化率を得ることができる。粉砕処理条件を調整することにより、本発明は、粒度が4mesh(目開き:4.75mm)の出発原料を用いることも可能である。
本発明は、機械的な粉砕処理を水素雰囲気下で行う。この雰囲気の水素圧力を本発明は特に限定するものではないが、水素圧力が高いほど水素化を容易に進行させることができる。ただし、後述する実施例から、水素圧力が必要以上に高くてもそれに見合うだけの水素化の効果が得られないため、水素圧力は7MPa以下、好ましくは5MPa以下とする。一方で、水素圧力が低すぎると水素化に時間が掛かるため、水素圧力を好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以下とする。
本発明では、被水素化金属粉末(金属マグネシウム粉末)に、水素化マグネシウム粉末を添加した混合物を、水素雰囲気中で機械的粉砕処理することもできる。添加される水素化マグネシウム粉末(以下、助剤水素化マグネシウム粉末)が、被水素化金属粉末の水素化の促進に役立つ。助剤水素化マグネシウム粉末の添加量は、被水素化金属粉末に対して、30wt%以下の範囲で添加することが好ましい。30wt%を超えて添加すると、最終的に得たい水素化マグネシウム粉末の収率の低下や製造コストが高くなるからである。また、助剤水素化マグネシウム粉末は、被水素化金属粉末と同等の粒径あるいはそれ以下の粒径を有しているものを用いることが好ましい。
本発明は、水素吸蔵、放出を促進する物質である触媒を添加して機械的粉砕を行うことができる。触媒としては、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)を用いることができる。この中では、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)が好ましい。これら触媒は、被水素化金属粉末よりも粒度の小さい粉末として添加することが好ましい。
図1は、触媒を添加して機械的粉砕を行って水素化金属粉末を製造する過程を模式的に示す図である。図1に示すように、被水素化金属粒子11aを水素雰囲気中で機械的に粉砕する。機械的粉砕により生じた水素化金属粒子11bの構造欠陥12に触媒粒子10が入り込む。構造欠陥12に触媒粒子10が入り込むことにより、触媒粒子10が水素化金属粒子11bの表面に付着しているにすぎない場合よりも、水素化の進行が促進される。
次に、本発明の機械的粉砕には、ロッキングミルを用いることができる。ロッキングミルは、ミル容器を回転しつつ三次元に振動させることのできる粉砕機であり、ボールミルの数十倍の機械的なエネルギーを非処理物に付与することができる。
図2にロッキングミル1の外観の正面図を示す。後述する実施例では機械的粉砕(ミリング)にロッキングミル1を使用した。図2において、ミル容器2はロッキングミル1の上面に備え付けられた振動テーブル3に固定する。ミル容器2には内部を水素ガスが充填できるように枝管を取り付け、圧力センサーで水素ガスの圧力を常時計測できるようにしてある。ロッキングミル1は振動テーブル3の中心を振動中心としてミリングを行う。
図3にミル容器2の内部構造の断面図を示す。図3に示すように、ミル容器2の内部に処理対象物(被水素化金属粒子)4を充填する。もちろん、水素ガスも充填する。ミリングのために鋼鉄製のボール5をミル容器2の内部に入れ、ロッキングミル1の運動(矢印で示す)によって粉砕処理する。
なおここでは、ロッキングミル1について説明したが、本発明の機械的粉砕は、他の粉砕装置を使用できることは言うまでもない。
以上のような、機械的な粉砕処理を行う時間は0.01〜20時間の範囲から選択することが好ましい。0.01時間未満では、水素化が十分に進行しない。また、20時間程度粉砕処理を行えば水素化が十分進行させることができる。
金属マグネシウム粉末(−100mesh,目開き:150μm)1gを高純度雰囲気(酸素1ppm以下)のグローブボックス内でミル容器2に充填した。ミル容器2をロッキングミル1に固定し、ミル容器2側面に取り付けた枝管(図示せず)からミル容器2内部を真空引きした後、水素ガス5MPaを充填した。その後、振動数400Hzで2時間の条件の粉砕処理を行った。なお、金属マグネシウムの水素化に伴う水素不足を避けるために、ミル容器2内の圧力を常時モニターしながら、水素を補充した。また、機械的粉砕は、常温で行った。
粉砕処理後に得られた水素化マグネシウム(MgH)の水素化率を求めた。水素化率は、熱重量分析装置を使用し、昇温速度5℃/minで250℃まで昇温する過程の水素放出による重量変化を測定し、減少重量から得られた水素放出量/理論水素放出量×100により求めた。その結果、水素化率が85%であることを確認した。また、ミル容器2に充填する水素ガスの圧力を1、3MPaとして上記と同様に水素化率の測定を行った。
次に、金属マグネシウム粉末に酸化チタン(TiO,粒径:0.02〜0.1μm)又は酸化ニオブ(Nb,粒径:0.1〜50μm)を添加して、上記と同様の処理を行った後に水素化率を測定した。なお、酸化チタン(TiO)又は酸化ニオブ(Nb)は、金属マグネシウム粉末1gに対してそれぞれ0.1g添加した。また、ミル容器2に充填する水素ガスの圧力は5MPaとし、機械的粉砕処理を1時間とした。
また、金属マグネシウム粉末の粒度を−40mesh(目開き:375μm)、−10mesh(目開き:1.7mm)として、上記と同様の処理を行った後に水素化率を測定した。なお、酸化チタン(TiO)を上記と同様に添加し、また、水素ガスの圧力は5MPaとし、機械的粉砕処理を1時間とした。
以上の結果を表2に示す。
Figure 2009132553
表2に示すように、金属マグネシウム粉末を水素雰囲気で機械的粉砕処理をすることにより水素化マグネシウムが得られることが確認された。このとき、ミル容器2内の水素圧力が高いほど水素化の反応速度が速くなる。
また、酸化チタン、酸化ニオブを添加すると水素化率が向上しており、酸化チタン、酸化ニオブは水素化に対する触媒効果があることが認められた。これは機械的な粉砕処理で発生した活性な面、欠陥などの隙間に、機械的粉砕で微粉化された酸化チタン粒子、酸化ニオブ粒子が入り込んだので、触媒機能が増進されたためと解される。すなわち、このような触媒粒子が金属マグネシウム粒子内部への水素化を促進するための導入口としての役割を果たす。したがって、このような効果は、酸化チタン、酸化ニオブに限らず、酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)などの粒子を添加しても同様に期待できる。
また、金属マグネシウム粉末の粒径を大きくしても、水素化率はそれほど低下しないことがわかる。
水素化マグネシウム(MgH)粉末0.1g,0.2g及び金属マグネシウム粉末1gを混合した以外は、実施例1と同様にして水素化率を求めた。結果を表3に示す。
表3に示されるように、金属マグネシウム粉末に水素化マグネシウム(助剤水素化マグネシウム)を添加することにより、金属マグネシウムの水素化を促進できることがわかる。また、添加する水素化マグネシウムの添加比率が大きくなると水素化率は向上する傾向を示す。
Figure 2009132553
金属マグネシウム及び水素化マグネシウムの加水分解反応を検討した。表1に示すように、金属マグネシウム及び水素化マグネシウムの加水分解反応の進行と同時に粒子表面に不活性な水酸化マグネシウム(Mg(OH))膜が形成され、加水分解反応が進行しにくくなる。表4に示すように水酸化マグネシウムの溶解度積が小さいために、pHが上がれば反応が停止する傾向がある。この段階で溶解度積が小さい水酸化カルシウムを共存させることによって反応によって生成する水酸イオンをCaが取り込むことによってpHの増加を抑制あるいは遅らせることができる。
Figure 2009132553
水酸化カルシウム(Mg(OH))粉末1gを予め水20mlと混合してスラリー化した後、温度70℃に保持する。この70℃のスラリーに対して水素化マグネシウム(MgH)粉末1gを添加した状態での水素放出率の測定結果を表5に示す。
また、同様の試験をAl+Mg(OH)及びAl+Ca(OH)の組合せについて実施し、表5に示す結果を得た。
Figure 2009132553
表5からわかるように、金属水酸化物の添加によりほぼ全量に近い水素量を放出させることができた。
これらの試験結果から、反応温度を維持した金属水酸化物をpH緩衝剤として使用することにより加水分解が進行可能なpH範囲で水素を安定に連続放出できることを確認した。
触媒を添加して機械的粉砕を行って水素化金属粉末を製造する過程を模式的に示す図である。 ロッキングミルの構成を示す図である。 ロッキングミルによる粉砕を模式的に示した図である。
符号の説明
1…ロッキングミル、2…ミル容器、3…振動テーブル、4…処理対象物、5…ボール、10…触媒粒子、11a…被水素化金属粒子、11b…水素化金属粒子、12…構造欠陥

Claims (4)

  1. 金属マグネシウム粉末を水素雰囲気中で機械的粉砕処理することにより、前記金属マグネシウム粉末を水素化して水素化マグネシウム粉末を製造することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
  2. 前記金属マグネシウム粉末に、水素化マグネシウム粉末を添加した混合物を、水素雰囲気中で機械的粉砕処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
  3. 前記金属マグネシウム粉末に、酸化チタン粉末及び酸化ニオブ粉末の少なくとも1種を添加した混合物を、水素雰囲気中で機械的粉砕処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法で得られた水素貯蔵材料と、金属水酸化物懸濁液を混合し、加水分解により水素を発生させることを特徴とする水素発生方法。
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