JP2009131853A - ハロゲン化ガスの処理剤及びその製造方法並びにこれを用いた無害化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物及びアルカリ金属フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し、窒素雰囲気下で焼成することによって調製した酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムからなる、ハロゲン化ガス処理剤。
【選択図】 なし
Description
エッチングプロセスやCVDプロセスからの排ガス中のPFCs及びHFCsなどは、洗浄剤や冷媒に比較して使用量が僅かであることや、NF3を除いて人体に対して害が少ないことから、かつては大気に放出されて、地球温暖化に影響を及ぼしてきたが、現在では種々の対策がとられている。一方、CFCsやHCFCsなども、オゾン破壊係数が大きいため、オゾン層を保護するべく様々な対策がとられていることは周知のとおりである。
しかし、このような処理剤でハロゲン化ガスを熱分解する場合、900〜1200℃という高温を必須とするなどの問題がある。特に、CF4 などは非常に安定であり、熱分解が困難である。また、熱分解により、有害な酸性ガスや酸化性ガスが発生するなどの問題も生じている。
このように、ハロゲン化ガスを完全に無害化し、処理し得る方法はいまだなく、また、ガス中のハロゲン化合物の濃度に関係無く処理し得る方法も見当たらず、上記のような問題点を解決できる技術が期待されている。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記のハロゲン化ガス処理剤、該処理剤の製造方法及び該処理剤を用いたハロゲン化ガスの無害化方法を提供するものである。
本発明のハロゲン化ガス処理剤を構成する酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムは、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物及びアルカリ金属フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有するものであるが、この「アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物及びアルカリ金属フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する酸化カルシウムまたは酸化マグネシウム」とは、炭酸カルシウム若しくは水酸化カルシウムや、炭酸マグネシウム若しくは水酸化マグネシウムなどの原料を用いて酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムを製造する際、上記原料に上記塩化物またはフッ化物を添加した後、焼成して得られる酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムであり、上記原料を焼成して得た酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムに上記塩化物またはフッ化物を後添加したものは含まない。
(1)アルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物の少なくとも1種を含有する酸化カルシウムであって、窒素雰囲気下で焼成することによって調製したハロゲン化ガス処理剤。
(2)アルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物の少なくとも1種を含有する酸化マグネシウムであって、窒素雰囲気下で焼成することによって調製したハロゲン化ガス処理剤。
(3)アルカリ金属フッ化物の少なくとも1種を含有する酸化カルシウムであって、窒素雰囲気下で焼成することによって調製したハロゲン化ガス処理剤。
(4)アルカリ金属フッ化物の少なくとも1種を含有する酸化マグネシウムであって、窒素雰囲気下で焼成することによって調製したハロゲン化ガス処理剤。
本発明のハロゲン化ガス処理剤を上記(1)〜(4)の好ましい実施形態についてその製造方法とともに以下に説明する。
酸化カルシウムは、市販されており簡単に入手できるが、これらの市販品は空隙率が小さく、比表面積も大きくないこともあって、反応性に乏しい。これは、酸化カルシウムの一般的な工業上の製法によるところと思われる。即ち、石灰石(主成分は炭酸カルシウム)を、空気中1000℃以上の温度で塊状のまま長時間焼成しているため、結晶が焼結して、充分な空隙や表面活性を得られなくなっているからである。
本実施形態(1)のハロゲン化ガス処理剤は、上述のように、原料の焼成時前に原料にアルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物を添加し、窒素雰囲気下で焼成することにより、焼成時の結晶の焼結を抑制し、ハロゲン化ガスに対して高反応性で、ハロゲン化ガスを高い分解率で処理し得るようになしたものである。
また、上記塩化物が添加される原料としては、炭酸カルシウムの他、水酸化カルシウムなどが用いられる。
例えば、粒状の炭酸カルシウム1kgに塩化ナトリウム5g(0.9重量%/CaO)を添加した混合物を、電気炉に入れ(昇温速度200℃/hr)、窒素雰囲気下900℃で焼成することによって調製したハロゲン化ガス処理剤は、比表面積7〜8m2/g(BET法)、空隙率55〜65%(水銀圧入法)となり、塩化物を添加せずに調製した酸化カルシウムに比べて比表面積が3〜4倍に増加している。
また、塩化ナトリウムの代わりに塩化マグネシウムを0.9重量%添加して、上記と同様の条件下で焼成したものも、ほぼ同じ位の比表面積と空隙率とが得られ、ハロゲン化ガスに対して高反応性である。
また、本実施形態(1)のハロゲン化ガス処理剤は、市販の酸化カルシウムに上記塩化物を後添加して調製したものに比べても高反応性である。
本実施形態(2)のハロゲン化ガス処理剤は、原料として炭酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムを用いた以外は、上記実施形態(1)のハロゲン化ガス処理剤と同様な工程で調製されたものである。
また、窒素雰囲気下での焼成は、通常、600〜900℃で1〜5時間程度行えば良い。
本実施形態(3)のハロゲン化ガス処理剤は、上記塩化物の代わりにアルカリ金属フッ化物を用いた以外は、上記実施形態(1)のハロゲン化ガス処理剤と同様な工程で調製されたものである。
上記アルカリ金属フッ化物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウムが好ましい。
また、窒素雰囲気下での焼成は、通常、900〜1100℃で1〜5時間程度行えば良い。
本実施形態(4)のハロゲン化ガス処理剤は、原料として炭酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムを用いた以外は、上記実施形態(3)のハロゲン化ガス処理剤と同様な工程で調製されたものである。
また、窒素雰囲気下での焼成は、通常、600以上で1〜5時間程度行えば良い。
本発明のハロゲン化ガス処理剤により処理されるハロゲン化ガスとしては、CF4,C2F6,C3F8,CHF3,CCl2F2,CHClF2,SF6及びNF3のうちの少なくとも1種を含むガスが挙げられる。
本発明のハロゲン化ガス処理剤と上記ハロゲン化ガスとを接触させる温度は、200〜900℃が好ましく、特に好ましくは300〜800℃である。最も安定なCF4も、800℃でほぼ完全に分解できる。本発明のハロゲン化ガス処理剤と上記ハロゲン化ガスとの反応は、200℃以上で速やかに進む。
上記除害装置としては、例えば、本発明のハロゲン化ガス処理剤の1種以上を充填し得るガス反応部を有し、この反応部内の温度を測定・制御するための計器と、外部加熱するための電気炉を設置したものが挙げられ、さらに、反応部通過後のガスについて、未反応のハロゲン化合物を検知するための赤外線吸収式検知器を設置したものが好ましい。これにより、排出ガス中の未反応のハロゲン化合物を上記検知器が感知するため、処理剤の劣化状況がわかり、処理剤の交換又は供給時期を外部からモニタリングすることができる。
このようにして、長期間にわたり運転が可能となり、供給ガス中のハロゲン化合物の濃度に関係無く、ハロゲン化ガスを連続的に処理できる。
粒状に粉砕して粒径3〜6mmに櫛別したCaCO3 2kgに、NaClを0.09重量%添加、混合したものを、N2雰囲気下、毎時200℃で昇温後、900℃にて5時間焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
1100℃にて焼成した以外は、実施例1と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
CaCO3の代わりにCa(OH)2を用いて、600℃にて焼成した以外は、実施例1と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
NaClの代わりにKClを添加した以外は、実施例1と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
NaClの代わりにCaCl2を添加した以外は、実施例1と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕したCaCO3を、空気中で600℃にて焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
900℃にて焼成した以外は、比較例1と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕したCaOを、N2雰囲気下900℃にて焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕したCa(OH)2にNaClを0.09重量%添加、混合したものを、空気中で600℃にて焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕したCaCO3にNaClを0.09重量%添加、混合したものを、空気中で900℃にて焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕して粒径3〜6mmに櫛別したMgCO3 2kgに、CaCl2を5.0重量%添加、混合したものを、N2雰囲気下600℃にて5時間焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
MgCO3の代わりにMg(OH)2を用いた以外は、実施例6と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕したMgOを、N2雰囲気下600℃にて焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
粒状に粉砕して粒径3〜6mmに櫛別したCaCO3 2kgに、NaFを0.05重量%添加、混合したものを、N2雰囲気下、毎時200℃で昇温後、1000℃にて5時間焼成し、ハロゲン化ガス処理剤を調製した。
CaCO3の代わりにCa(OH)2を用いて、900℃にて焼成した以外は、実施例8同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
NaFの代わりにLiFを添加した以外は、実施例8と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
NaFの代わりにKFを添加した以外は、実施例8と同様にしてハロゲン化ガス処理剤を調製した。
<試験例及び比較試験例の基本操作>
反応器として、内径42mm、長さ1000mmのSUS製のパイプを垂直にセットし、各種処理剤を充填した反応器の底部から上部へ、種々のハロゲン化ガスを希釈用窒素ガスを混合して導入した。反応器は、電気炉で外部加熱し、内部温度200℃〜800℃になるように温度を調節した。
反応器の入口側には、ハロゲン化ガスと窒素ガスの充填ボンベを取り付け、圧力調整器で減圧し、混合ガスの流量を500ml/minとして、10分間導入した。また、反応器の出口には排出ガスを分析するために主幹ラインを分岐してサンプリングポートを設置した。サンプリングポートより採取した排出ガスは、ガスクロマトグラフィーで分析した。導入ガスまたは排出ガスの流量は、乾式ガスメーターで測定した。
また、反応器への処理剤の充填方法は、反応器の底部にSUSメッシュ及び金網を詰めた後、粒径3.5〜5.5mmの処理剤700gを充填した。
ハロゲン化ガスの分解効率(%)は、次の式により求めた。
〔1−(排出ガス中の未分解ハロゲン化合物の量/導入したハロゲン化合物の量)〕×100
下記〔表3〕に示すハロゲン化ガス処理剤、ハロゲン化ガス種、ハロゲン化ガス導入量、窒素導入量及び反応温度により、上記基本操作をそれぞれ実施し、サンプリングポートより採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析して、ハロゲン化ガスの分解率を求めた。その結果を下記〔表3〕に示した。
下記〔表3〕に示す結果から明らかなように、本発明のハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、ハロゲン化合物はガスクロマトグラフィーの分析で検出されず(検出下限:0.01%)、排ガスの主成分はCO2,N2又はSO2及びNO2などであった。
下記〔表4〕に示すハロゲン化ガス処理剤、ハロゲン化ガス種、ハロゲン化ガス導入量、窒素導入量及び反応温度により、上記基本操作をそれぞれ実施し、サンプリングポートより採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析して、ハロゲン化ガスの分解率を求めた。その結果を下記〔表4〕に示した。
下記〔表4〕に示す結果から明らかなように、本発明のハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、ハロゲン化合物はガスクロマトグラフィーの分析で検出されず(検出下限:0.01%)、排ガスの主成分はCO2及びN2などであった。
下記〔表5〕に示すハロゲン化ガス処理剤、ハロゲン化ガス種、ハロゲン化ガス導入量、窒素導入量及び反応温度により、上記基本操作をそれぞれ実施し、サンプリングポートより採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析して、ハロゲン化ガスの分解率を求めた。その結果を下記〔表5〕に示した。
下記〔表5〕に示す結果から明らかなように、上記比較例1〜5で得られたハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、未分解のCF4がガスクロマトグラフィーの分析で検出された。
下記〔表6〕に示すハロゲン化ガス処理剤、ハロゲン化ガス種、ハロゲン化ガス導入量、窒素導入量及び反応温度により、上記基本操作をそれぞれ実施し、サンプリングポートより採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析して、ハロゲン化ガスの分解率を求めた。その結果を下記〔表6〕に示した。
下記〔表6〕に示す結果から明らかなように、本発明のハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、ハロゲン化合物はガスクロマトグラフィーの分析で検出されず(検出下限:0.01%)、排ガスの主成分はCO2及びN2などであった。これに対し、上記比較例6で得られたハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、未分解のCF4がガスクロマトグラフィーの分析で検出された。
下記〔表7〕に示すハロゲン化ガス処理剤、ハロゲン化ガス種、ハロゲン化ガス導入量、窒素導入量及び反応温度により、上記基本操作をそれぞれ実施し、サンプリングポートより採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析して、ハロゲン化ガスの分解率を求めた。その結果を下記〔表7〕に示した。
下記〔表7〕に示す結果から明らかなように、本発明のハロゲン化ガス処理剤により処理された排ガスには、ハロゲン化合物はガスクロマトグラフィーの分析で検出されず(検出下限:0.01%)、排ガスの主成分はCO2及びN2又はSO2及びNO2などであった。
Claims (4)
- アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物及びアルカリ金属フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有し、窒素雰囲気下で焼成することによって調製した酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムからなる、ハロゲン化ガス処理剤。
- 請求項1記載の処理剤により処理されるハロゲン化ガスが、CF4,C2F6,C3F8,CHF3,CCl2F2,CHClF2,SF6及びNF3のうちの少なくとも1種を含むものである請求項1記載の処理剤。
- 炭酸カルシウム若しくは水酸化カルシウム、または、炭酸マグネシウム若しくは水酸化マグネシウムを原料とし、該原料に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、0.01〜10重量%の範囲で添加して、窒素雰囲気下で焼成することを特徴とする請求項1記載の処理剤の製造方法。
- 請求項1記載の処理剤の少なくとも1種を、除害装置に充填し、200〜900℃にてハロゲン化ガスと接触させることを特徴とするハロゲン化ガスの無害化方法。
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