JP2009130274A - 超電導ソレノイドコイルおよび超電導コイル構造 - Google Patents

超電導ソレノイドコイルおよび超電導コイル構造 Download PDF

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Abstract

【課題】臨界電流が低下することがないような超電導ソレノイドコイルの構成、およびこうした超電導ソレノイドコイルを用いて、外部磁場を発生するコイルと組み合わせて超電導コイルを構成した場合、テープ線材の面に垂直な方向の磁場成分による臨界電流の低下を発生させることがないような超電導コイル構造を提供する。
【解決手段】本発明の超電導ソレノイドコイルは、円筒状の巻胴部を備えた超電導コイル製造用巻枠における前記巻胴部の外周に、超電導線材を含むテープ線材が螺旋状に多層巻きされて構成される超電導ソレノイドコイルであって、前記多層巻きされたテープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度をα(rad:0<α<π/2)とするとき、この角度αは、前記巻胴部の軸方向端部近傍において、巻胴部端部に近くなるにつれて大きくなるように構成されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導線材を含むテープ線材を螺旋状に多層巻きされて構成される超電導ソレノイドコイル、およびこうした超電導ソレノイドコイルを構成要素の一部とする超電導コイル構造に関するものであり、特に外部磁場を発生させる超電導コイルの空隙部内に挿入されるインサートコイルとして用いられる超電導ソレノイドコイル、およびこうした超電導ソレノイドコイルと前記外部磁場を発生させる超電導コイルとを組み合わせて構成される超電導コイル構造に関するものである。
超電導線材には、NbTiやNb3Sn等の金属系超電導線材と、Bi系酸化物やY系酸化物等の酸化物系超電導線材が知られている。前者の金属系超電導線材は、丸型や平角形(長方形)の横断面形状を有し、ある程度の厚みを有する線状のものである。後者の酸化物系超電導線材は、酸化物結晶の配向性を高くして高い臨界電流密度を得るために、薄いテープ状(断面が高アスペクト比)の線材として用いられることが多い。また酸化物系超電導線材の場合には、その表面が樹脂製の絶縁皮膜で被覆されるのが一般的であるが、以下ではこうした超電導線材を含めて「テープ線材」と呼ぶ。
上記のようなテープ線材から超電導コイルを構成するには、テープ線材をパンケーキコイル状に巻回する方法が従来から知られている。こうしたパンケーキコイルを構成する場合には、発生磁場を高くしたり、コイル全体の長さを確保するために、複数のパンケーキコイルを積層することが行われる。しかしながら、複数のパンケーキコイルを積層する場合には、パンケーキコイル間を電気的に接続する必要があり、核磁気共鳴(NMR)分析装置用マグネットのように永久電流モードで運転するためには、それに必要不可欠である超電導接続が困難であるという問題がある。
また、パンケーキコイル間は、接続部を除いて電気的に絶縁される必要があるため、パンケーキコイル間には、絶縁板等を挿入することが行われるが、この絶縁板の作製精度やパンケーキコイルの巻線精度がコイルの発生磁場均一性に及ぼす影響が大きく、良好な値が得られないのが実情である。こうしたことから、高精度な磁場均一性が要求されるNMR用マグネット等にはパンケーキコイルは適用されていない。
こうした問題を解決するために、テープ線材を超電導コイル製造用巻枠の巻胴部(後記図1、2参照)に螺旋状(ソレノイド状)に多層巻きしてソレノイドコイルとする方法(ソレノイド法)も提案されている。こうした超電導ソレノイドコイルでは、優れた磁場均一性が得られ易いものとなる。しかしながら、特に酸化物系超電導線材からなるテープ線材(酸化物系超電導線材を含むテープ線材)をソレノイド状に巻回する場合、一般には巻き返し部分(即ち、巻回の第1層から第2層、第2層から第3層と順次巻き返して次の層に移る際の巻き返し部分)で大きな歪みがかかり、超電導コイルの臨界電流密度等の特性を劣化させるという問題が生じることになる。
こうした問題を解決するために、テープ線材を複数枚積層して、断面が低いアスペクト比の丸状や矩形状の線材とし、それをソレノイド状に巻回することも提案されている(例えば、特許文献1)。この技術では、酸化物系超電導層の結晶体のab平面が、その位置での磁場方向と平行となるように、丸線材や矩形線材を捻りながら巻回するという方法が開示されている。
しかしながら、この技術で対象としているのは、複数のテープ線材を積層した集合体であり、素線である一枚のテープ線材を巻回したものではない。複数のテープ線材を積層して集合導体化する場合には、それらを囲んで固定するための部材が別途必要となり、こうした部材は非超電導材であるため、導体の全断面積で臨界電流を割ることで求められるオーバオールの臨界電流密度は、素線の超電導線材に比べて低くなるという問題が生じる。
素線である一枚のテープ線材をソレノイド状に巻回する方法として、巻枠の両端側に巻胴端縁から延長方向に任意の角度で傾斜する縮径テーパ部を設けることも提案されている(例えば、特許文献2)。この技術では、上記のような構成を採用することによって、テープ線材に与える歪みを最小限に抑えて超電導コイルの特性向上に有効なものである。
しかしながら、こうした技術では、テープ線材を容易に巻回できる反面、超電導ソレノイドコイルの特性面で若干の問題が生じていた。
こうした技術によって超電導ソレノイドコイルを構成した場合には、縮径テーパ部に巻回されるテープ線材部分において、該超電導ソレノイドコイルが発生する磁場、或は外部磁場を発生する超電導コイルの空隙(この部分を「ボア」と呼んでいる)内に該ソレノイドコイルが挿入される場合には、外部磁場と該ソレノイドコイルが発生する合成磁場のうち、テープ線材平面に垂直な方向の磁場が、縮径テーパ部がないときに比べて大きくなる。そのために、この部分において臨界電流が低下する傾向がある。また、縮径テーパ部では、テープ線材にはフラットワイズ歪みの他に、エッジワイズ歪みが加わることになる。テープ線材として酸化物系超電導線材を用いた場合には、臨界電流はこのエッジワイズ歪みに特に敏感であり、小さなエッジワイズ歪みでも臨界電流密度が低下する恐れがある。
特開平4−343404号公報 特開2007−73623号公報
これまで提案されている技術では、テープ線材素線、特に酸化物系超電導線材を含むテープ線材素線における臨界電流密度を低下させることなく、超電導ソレノイドコイルを構成することは困難であり、臨界電流密度をある程度犠牲にした条件で超電導ソレノイドコイルが構成されているのが実情である。また、こうした超電導ソレノイドコイルと、外部磁場を発生するコイルと組み合わせて超電導コイルを構成した場合には、テープ線材の面に垂直な方向の磁場成分による臨界電流の低下が生じることになる。
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、臨界電流が低下することがないような超電導ソレノイドコイルの構成、およびこうした超電導ソレノイドコイルを用いて、外部磁場を発生するコイルと組み合わせて超電導コイルを構成した場合、テープ線材の面に垂直な方向の磁場成分による臨界電流の低下を発生させることがないような超電導コイル構造を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る超電導ソレノイドコイルとは、円筒状の巻胴部を備えた超電導コイル製造用巻枠における前記巻胴部の外周に、超電導線材を含むテープ線材が螺旋状に多層巻きされて構成される超電導ソレノイドコイルであって、前記多層巻きされたテープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度をα(rad:0<α<π/2)とするとき、この角度αは、巻胴部の軸方向端部近傍において、巻胴部端部になるにつれて大きくなるように構成されたものである点に要旨を有するものである。
本発明の超電導ソレノイドコイルにおけるより具体的な構成としては、(a)前記巻胴部の軸方向端部近傍においては、同一層内で隣接するテープ線材間に隙間を形成しつつテープ線材が多層巻きされたものや、(b)前記巻胴部の軸方向端部近傍においては、同一層内で隣接するテープ線材間に隙間を形成しつつ、且つ前記テープ線材は、上下の層でその幅方向端部が揃えて多層巻きされたもの、等が挙げられる。
また本発明の超電導ソレノイドコイルでは、前記テープ線材の幅をW(mm)、巻胴部の外径をD(mm)とし、テープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度αのうち、最も軸方向端部側の角度をα1としたとき、これらが下記(1)式の関係を満足するようにテープ線材が多層巻きされたものであるものが好ましい。尚、上記テープ線材の幅W(mm)は、テープ線材の表面が樹脂製の絶縁皮膜で被覆される場合には、その被覆量も含めた値である。
5.67π(W/D)<α1<π/2 …(1)
一方、上記課題を解決することのできた本発明の超電導コイル構造とは、外部磁場を発生する超電導コイルの空隙部に、上記のような超電導ソレノイドコイルを挿入して構成される超電導コイル構造であって、前記ソレノイドコイル単独でそのボアの中央部(長手方向中心且つ断面中心)に発生する磁束密度をB1(T)、ソレノイドコイルのボア端部で前記外部磁場によって発生する磁束密度をB2(T)としたとき、B1/B2が10以上となるようにして構成されたものである点に要旨を有するものである。
本発明においては、テープ線材の巻回状態を適切に規定することによって、臨界電流が低下することがないような超電導ソレノイドコイルの構成が実現でき、こうした超電導ソレノイドコイルを用いて、外部磁場を発生するコイルと組み合わせて超電導コイルを構成した場合には、テープ線材の面に垂直な磁場成分による臨界電流の低下を発生させることがないような超電導コイル構造が実現できた。
酸化物系超電導線材の具体例としては、Bi−2212(即ち、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox:xは8以上、9未満)やBi−2223(即ち、Bi2Sr2Ca2Cu3Oy:yは10以上、11未満)等のBi(ビスマス)系酸化物超電導線材、YBCO(即ち、YBa2Cu3Oz:zは6.5以上、7未満)等のY(イットリウム)系酸化物超電導線材等が知られているが、これらの酸化物系超電導線材をテープ線材として(或は酸化物超電導線材を含むテープ線材として)、ソレノイド状に巻回する場合には、巻胴部の軸方向端部近傍の巻回部分や巻返し部分には、フラットワイズの歪みの他にエッジワイズの歪みが加わり易い状態になる。酸化物系超電導線材からなるテープ線材にフラットワイズの歪みやエッジワイズの歪みを個別に印加した臨界電流の低下を調査した例はあるが、このように両方の歪みが同時に印加された場合の臨界電流密度の低下はこれまで検討されていない。
巻線部内のテープ線材の巻回方法としては、通電密度を高くして線材の固定を行うために、同一層内での隣接テープ線材間(以下、「ターン間」と呼ぶことがある)に隙間が生じないように、且つターン間でテープ線材が重ならないように巻回されるのが通常である。
本発明者らは、こうした巻回状態に着目し、テープ線材の巻回状態を工夫することによって、上記不都合が解消されるのではないかとの観点から検討を進めてきた。その結果、巻胴部の軸方向端部近傍では、多層巻きされたテープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度をα(rad:0<α<π/2)とするとき、この角度αが、巻胴部端部に近づくにつれて1巻ごとに大きくなるようにして(即ち、折り返し時には巻胴部端部から遠くなる1巻ごとに角度αを減少するようにして)巻回すれば、エッジワイズの歪みを緩和して、臨界電流密度がほとんど低下しない超電導ソレノイドコイルが実現できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の超電導ソレノイドコイルの構成を、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明に係る超電導ソレノイドコイルの構成例を示す概略説明図であり、1は巻枠(超電導コイル製造用巻枠)、2は円筒状の巻胴部、3は巻胴部の両端部に設けられたフランジ、4はテープ線材、5はターン間のテープ線材の重なり部分、Wはテープ線材の幅、Dは巻胴部の外径、を夫々示す。
本発明の超電導ソレノイドコイルでは、巻胴部2の軸方向端部近傍(即ち、両フランジ3の近傍)では、多層巻きされるテープ線材4の長手方向と巻胴部の軸方向(図中Gで示す)とのなす角度α(図中α1,α2で示す:0<α<π/2)とするとき、この角度αが、巻胴部端部になるにつれて大きくなるようにしたものである(即ち、α1>α2)。
こうした構成の超電導ソレノイドコイルを形成するときのテープ線材4の巻回(巻線)に際しては、特別の治具は必要でないが、軸方向端部近傍の多くても3巻き程度以下で、1巻きごとの角度αの増大幅(即ち、α1−α2)は、0.01(rad)以下を目安とし、且つその増大幅が等しくなるように巻回するのが良い。また、巻き返しでは、その前の層(下層)における角度αに揃えて巻回されることになる。
角度αを変化させて巻回する方法としては、ターン間で一部重ねて巻く方法と、ターン間に空隙を設けて巻く方法があるが、図1はターン間で一部重ねて巻く場合(テープ線材の重なり部分5)を示したものである。本発明では、どちらの巻回方法も採用できる。
図1に示したように、ターン間で一部重ねて巻く方法では、同一層内でテープ線材4が重なることによって、層数が多くなるので、巻回終了時には巻胴部端部近傍の巻回部分が巻胴部中央部の巻回部分に比べて大きくなるような、いわゆる「アレイ型」のコイルとなる。こうした場合には、磁場均一度を補正するためのシムコイルを巻胴部端部近傍に設置することによって、ソレノイドコイルが発生する磁場の均一度を所定の値に設定することができる。
図2は、本発明に係る超電導ソレノイドコイルの他の構成例を示す概略説明図であり、その基本的な構成は図1に示した構成と類似し、対応する部分に同一の参照符号が付してある。この図2に示したソレノイドコイルでは、角度αを変化させて巻回する方法としては、ターン間に空隙を設けて巻回する場合を示したものであり、図2中5aは前記重なり部分5の変わりに形成される隙間である。
図2に示したような、ターン間に隙間5aを設ける方法では、同一層内でテープ線材が重なることがないので、上記のような「アレイ型」のコイルとはならない。こうした構成であると、図1に示した構成に比べ、テープ線材の歪みが小さくなるという利点がある。こうした隙間5aを形成することによって生じる磁場均一度の乱れは、上記図1に示した構成の場合と同様に、磁場均一度を補正するためのシムコイルを巻胴部端部近傍に設置することによって除去できる。
図2に示したように、ターン間に隙間を設けて巻回した場合には、前記テープ線材4は、上下の層でその幅方向端部が揃えて多層巻きされることが好ましい。こうした巻回を行うことによって、ターン間(即ち、テープ線材4間)に形成された隙間5aにテープ線材4の一部が落ち込むことが防止できるため、磁場均一度をより高く維持することができる。
本発明者らは、フラットワイズの歪みとエッジワイズの歪みの両方が酸化物系超電導線材からなるテープ線材に同時に加わったときに、臨界電流密度がどのように低下するかを定量的に詳細に検討した。その結果、テープ線材4の幅(絶縁皮膜で被覆する場合、或は絶縁材と共巻きする場合は、それらを含む)をW(mm)、巻胴部2の外径をD(mm)としたとき(前記図1、2参照)、これらの比(W/D)の値によって、最適な角度αの範囲が異なることを見出した。
即ち、本発明者らが、上記幅W、外径Dおよび角度αの関係について、様々な実験によって検討したところによれば、テープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度αのうち、最も軸方向端部側の角度をα1としたとき、これらが下記(1)式の関係を満足するようにテープ線材が多層巻きすれば、軸方向端部側の巻回部分や巻き返し部分では、エッジワイズの歪みが小さくなり、臨界電流密度の低下が無視できる程度に低減され、巻回部内の臨界電流がその位置においても、ほぼ等しくなることが判明した。
5.67π(W/D)<α1<π/2 …(1)
尚、上記(W/D)の値は、0.001よりも小さくなることはないが、原理的には小さい方が特性劣化に至らないという点で有利である。こうした観点から、(W/D)は0.0880以下であることが好ましい。
上記のような構成を有する超電導ソレノイドコイルを、外部磁場を発生する超電導コイルのボア内に挿入し、前記超電導ソレノイドコイル単独でその中央部(長手方向中心で且つ断面中心)で発生する磁束密度をB1(T)、該超電導ソレノイドコイルの端部中心で前記外部磁場によって発生する磁束密度をB2(T)としたとき、B1/B2が10以上となるようにして構成されたもの(即ち、こうした条件で用いるもの)では、巻胴部の軸方向端部近傍の巻回部分や巻き返し部分における磁場方向が、実効的にはテープ線材に平行になり、各巻回部分の臨界電流の磁場方向による低下を抑制できるものとなる。
図3は、超電導コイル構造を示した概略説明図であり、図中7a,7bは、外部磁場を発生する超電導コイル、8a,8bは超電導コイル7a,7bのボア内に挿入される上述した超電導ソレノイドコイル、A部は巻胴部の軸方向端部相当位置、B部は超電導ソレノイドコイルの長手方向中心相当位置、を夫々示している。
本発明の超電導ソレノイドコイルでテープ線材として用いる超電導線材は、基本的にBi系酸化物超電導線材やY系酸化物超電導線材等の酸化物系超電導線材を想定したものであるが、その他MgB等の金属系超電導線材への技術的応用は可能である。尚、外部磁場を発生する超電導コイルを構成する超電導線材は、通常Nb3Sn,NbTi,NbAl等の各種の金属系超電導線材が用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[比較例1]
焼成済みの裸断面サイズが厚さ:0.20mm×幅:4.00mmのBi−2223テープ線材(4.2Kにおける自己磁場での臨界電流が550Aのもの)に、厚さ:0.01mmの絶縁用ポリイミドテープを巻き付け、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:42mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状にターン間の重なりが生じないように、角度α=5.12π(W/D)=1.540(rad)で巻回(巻線)し、角度αを変化させずに一定にして10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。しかしながら、巻胴部端部(フランジが存在する場合は、フランジ近傍)の巻回部で臨界電流が低下するために、500Aを連続して通電する途中でコイル両端部の電圧が上昇し、コイル電圧が100mVを超えたため、通電を停止した。このように、このソレノイドコイルでは、安定して連続通電することが困難であった。
[比較例2]
比較例1と同様にして、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:46mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状にターン間に隙間が生じないように、角度α=5.62π(W/D)=1.543(rad)で巻回(巻線)し、角度αを変化させずに一定にして10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。このときの(W/D)は、0.08739(<0.0880)である。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。しかしながら、巻胴部端部の巻回部で臨界電流が低下するために、500Aを連続して通電する途中でコイル両端部の電圧が上昇し、コイル電圧が15mVになると電圧の上昇が停止した。しかしながら、電圧が発生した状態での通電であるので、この条件で永久電流モードでの運転はすることはできない。
[実施例1]
比較例2と同様にして、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:46mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状に、巻胴部の軸方向端部近傍(巻枠フランジ近傍)では前記図1に示したように、ターン間にテープ線材が一部重なる部分を設けて、角度α1=5.656π(W/D)=1.553(rad)>α2=1.548で巻回(巻線)し、10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。このとき、フランジから2巻き分のみ角度αを変化させた。また巻胴部中央における角度αは1.543とした。このときの(W/D)は、0.08739(<0.0880)である。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。また、コイル端部の発生電圧はナノボルトメータの分解能の60nV以下に抑えることができた。これは、巻回部のどの部分でも電圧が発生していないことを示しており、永久電流モードでの運転が可能である。
[実施例2]
比較例2と同様にして、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:46mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状に、巻胴部の軸方向端部近傍(巻枠フランジ近傍)では前記図2に示したように、ターン間に隙間を設けて、角度α1=5.656π(W/D)=1.553(rad)>α2=1.548で巻き線し、10層巻回(巻線)してソレノイドコイルを作製した。このとき、フランジから2巻き分のみ角度αを変化させた。また巻胴部中央における角度αは1.543とした。このときの(W/D)は、0.08739(<0.0880)である。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。また、コイル端部の発生電圧はナノボルトメータの分解能の40nV以下に抑えることができた。これは、巻回部のどの部分でも電圧が発生していないことを示しており、永久電流モードでの運転が可能である(実施例1に比べて発生磁場の時間変化が更に小さい)。
[実施例3]
比較例2と同様にして、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:46mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状に、巻胴部の軸方向端部近傍(巻枠フランジ近傍)では前記図2に示したように、ターン間に隙間を設けて、角度α1=5.656π(W/D)=1.553(rad)>α2=1.548(rad)で巻き線し、10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。このとき、フランジから2巻き分のみ角度αを変化させた。また巻胴部中央における角度αは1.543(rad)とした。このとき、巻枠フランジに近い巻き線部のターン間で隙間を設けた部分で、各上側の層におけるテープ線材の両サイドのエッジが、そのすぐ下のテープ線材の両サイドのエッジとずれないように巻線した。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。また、コイル端部の発生電圧はナノボルトメータの分解能の20nV以下に抑えることができた。これは、巻き線部のどの部分でも電圧が発生していないことを示しており、永久電流モードでの運転が可能である(実施例2に比べて発生磁場の時間変化が更に小さい)。
[実施例4]
比較例2と同様にして、厚さ:0.22mm、幅W:4.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:46mm、長さ:200mmの巻胴部に螺旋状に、巻胴部の軸方向端部近傍(巻枠フランジ近傍)では前記図2に示したように、ターン間に隙間を設けて、角度α1=5.690π(W/D)=1.562(rad)>5.67π(W/D)、α2=1.552(rad)<α1で巻き線し、10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。このとき、フランジから2巻き分のみ角度αを変化させた。また、巻枠フランジ端部から2巻き分のみαを変化させた。巻胴部中央部におけるαは1.543(rad)とした。このときの(W/D)は、0.08739(<0.0880)である。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、500Aでボア中央部(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。フランジ近傍の巻き線部でも臨界電流が低下しないため、500Aを連続して通電し、且つコイルの両端の発生電圧はナノボルトメータの分解能の10nV以下に抑えることができた。これは、巻回部のどの部分でも電圧が発生していないことを示しており、永久電流モードでの運転が可能である(実施例3に比べて発生磁場の時間変化が更に小さい)。
図3に示したように、このBi−2223ソレノイドコイルの巻き線部の最外層でフランジ最近接ターン部(A部)と、最内層のコイル長手方向中心部(B部)に電圧端子を取り付け、ソレノイドコイルを金属系超電導コイル(NbTiとNb3Snからなる超電導コイル)の直径110mmのボア部に挿入した。金属系超電導コイルによって、挿入したソレノイドコイルのボア端部位置に、外部磁束密度B2=5.00T(テスラ)を発生させ、Bi−2223ソレノイドコイルに430Aの通電をしたところ、B1=1.23Tの磁束密度を、ソレノイドコイルのボアの長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=4.07であり、B部には電圧が発生しなかったが、A部には18μVの電圧が発生した。これはB部に比べて、A部の臨界電流が低下したためである。
金属系超電導コイルにより、挿入したソレノイドコイルのボア端部位置に、外部磁束密度B2=12.0T(テスラ)を発生させ、Bi−2223ノレノイドコイルに380Aを通電したところ、B1=1.09Tの磁束密度を長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=11.0(≧10)であり、B部およびA部ともに1.6μVの電圧が発生した。これはA部とB部の臨界電流がほぼ等しくなっているために生じたものであり、通電電流を377Aとしたところ、B1=1.08Tの磁束密度を、ソレノイドコイルのボアの長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=11.1(≧10)であり、A部およびB部共に電圧は発生しなかった。
[実施例5]
焼成済みの裸断面サイズが厚さ:0.20mm×幅:6.00mmのBi−2223テープ線材(4.2Kにおける自己磁場での臨界電流が820Aのもの)に、厚さ:0.01mmの絶縁用ポリイミドテープを巻き付け、厚さ:0.22mm、幅W:6.02mmのポリイミド被覆絶縁Bi−2223テープ線材とし、これを直径D:70mm、長さ:300mmの巻胴部に螺旋状にターン間の隙間が生じるように、角度α1=5.730π(W/D)=1.548(rad)>5.67π(W/D)、α2=1.546(rad)<α1で巻回(巻線)し、10層巻き線してソレノイドコイルを作製した。巻胴部中央部におけるαは1.543(rad)とした。このときの(W/D)は、0.0860(<0.0880)である。
得られたソレノイドコイルを用い、液体ヘリウム温度において通電したところ、750Aでボア中心(長手方向中心で且つ断面中心)には、当初は1.43T(テスラ)の磁束密度が発生した。フランジ近傍の巻き線部でも臨界電流が低下しないため、750Aを連続して通電し、且つコイルの両端の発生電圧はナノボルトメータの分解能の10nV以下に抑えることができた。これは、巻き線部のどの部分でも電圧が発生していないことを示しており、永久電流モードでの運転が可能である。
図3に示したように、このBi−2223ソレノイドコイルの巻き線部の最外層でフランジ最近接ターン部(A部)と、最内層のコイル長手方向中心部(B部)に電圧端子を取り付け、ソレノイドコイルを金属系超電導コイル(NbTiとNb3Snからなる超電導コイル)の直径110mmのボア部に挿入した。金属系超電導コイルによって、挿入したソレノイドコイルのボア端部位置に、外部磁束密度B2=5.00T(テスラ)を発生させ、Bi−2223ソレノイドコイルに645Aの通電をしたところ、B1=1.23Tの磁束密度をソレノイドコイルのボアの長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=4.07であり、B部には電圧が発生しなかったが、A部には17μVの電圧が発生した。これはB部に比べて、A部の臨界電流が低下したためである。
金属系超電導コイルにより、挿入したソレノイドコイルのボア端部位置に、外部磁束密度B2=12.0T(テスラ)を発生させ、Bi−2223ノレノイドコイルに570Aを通電したところ、B1=1.09Tの磁束密度をソレノイドコイルのボアの長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=11.0(≧10)であり、B部およびA部ともに1.4μVの電圧が発生した。これはA部とB部の臨界電流がほぼ等しくなっているために生じたものであり、通電電流を567Aとしたところ、B1=1.08Tの磁束密度を、ソレノイドコイルのボアの長手方向中心且つ断面中心に発生した。このとき、(B2/B1)=11.1(≧10)であり、A部およびB部共に電圧は発生しなかった。
上記比較例1、2および実施例1〜5で作製したソレノイドコイルの形状と特性、および用いた酸化物テープ線材の形状を、一括して下記表1に示すが、本発明で規定する要件を満足する実施例1〜5のものでは、良好な超電導特性が得られていることが分かる。
Figure 2009130274
本発明に係る超電導ソレノイドコイルの構成例を示す概略説明図である。 本発明に係る超電導ソレノイドコイルの他の構成例を示す概略説明図である。 本発明の超電導コイル構造を示す概略説明図である。
符号の説明
1 巻枠(超電導コイル製造用巻枠)
2 巻胴部
3 フランジ
4 テープ線材
5 テープ線材の重なり部分
5a テープ線材間の隙間
7a,7b 外部磁場を発生する超電導コイル
8a,8b 超電導ソレノイドコイル
W テープ線材の幅
D 巻胴部の外径

Claims (5)

  1. 円筒状の巻胴部を備えた超電導コイル製造用巻枠における前記巻胴部の外周に、超電導線材を含むテープ線材が螺旋状に多層巻きされて構成される超電導ソレノイドコイルであって、前記多層巻きされたテープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度をα(rad:0<α<π/2)とするとき、この角度αは、前記巻胴部の軸方向端部近傍において、巻胴部端部に近くなるにつれて大きくなるように構成されたものであることを特徴とする超電導ソレノイドコイル。
  2. 前記巻胴部の軸方向端部近傍においては、同一層内で隣接するテープ線材間に隙間を形成しつつテープ線材が多層巻きされたものである請求項1に記載の超電導ソレノイドコイル。
  3. 前記巻胴部の軸方向端部近傍においては、同一層内で隣接するテープ線材間に隙間を形成しつつ、且つ前記テープ線材は、上下の層でその幅方向端部が揃えて多層巻きされたものである請求項2に記載の超電導ソレノイドコイル。
  4. 前記テープ線材の幅をW(mm)、巻胴部の外径をD(mm)とし、テープ線材の長手方向と巻胴部の軸方向とのなす角度αのうち、最も軸方向端部側の角度をα1としたとき、これらが下記(1)式の関係を満足するようにテープ線材が多層巻きされたものである請求項1〜3のいずれかに記載の超電導ソレノイドコイル。
    5.67π(W/D)<α1<π/2 …(1)
  5. 外部磁場を発生する超電導コイルの空隙部に、請求項1〜4のいずれかに記載の超電導ソレノイドコイルを挿入して構成される超電導コイル構造であって、前記超電導ソレノイドコイル単独でそのボアの中央部(長手方向中心且つ断面中心)に発生する磁束密度をB1(T)、ソレノイドコイルのボア端部で前記外部磁場によって発生する磁束密度をB2(T)としたとき、B1/B2が10以上となるようにして構成されたものであることを特徴とする超電導コイル構造。
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