JP2009126716A - ガラス微粒子堆積体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】出発基材5に向けてガラス微粒子を発生させるバーナー11a〜11hと、出発基材5に堆積しなかったガラス微粒子を排気する排気機構13a,13b,13cとを有する装置内で、ガラス微粒子堆積体17を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法において、出発基材5に堆積しないガラス微粒子の内の排気機構13a,13b,13cにより排気される割合を算出し、排気割合が高いほど、装置内に付着したススを除去する清掃処理の頻度を低く設定する。
【選択図】図2
Description
このガラス微粒子堆積体の製造方法としては、例えば、MMD法(多バーナー多層付け法)若しくはOVD法(外付け法)を利用する方法がある。
これらの製造方法では、バーナーから噴射するガラス原料を酸水素火炎中で火炎加水分解させ、生成したガラス微粒子(スス)を出発基材(ターゲット棒)上に多層に堆積させていく。
通常、装置のチャンバーには、内部の雰囲気を吸引して回収する排気機構が装備されているため、通常、チャンバー内を浮遊する未付着ススの大半は排気機構によりチャンバー外へ排出されるが、排出されなかった未付着ススはチャンバー内を浮遊している間にチャンバー壁面に付着し、ススとなって堆積する。
即ち、バッチ間の作業は、出発基材に対して規定量のガラス微粒子の堆積が終了すると(ステップS101)、堆積が終了したガラス微粒子堆積体を装置から取り出し(ステップS102)、その後、掃除機等を用いてチャンバー壁面に付着したススを除去する清掃処理を実施し(ステップS103)、その後、次バッチの出発基材をチャンバー内にセットし(ステップS104)、次いで、バーナーを点火して次バッチの処理(ステップS105,S106)を開始する手順となる。
そこで、ガラス微粒子を出発基材に堆積させる装置のチャンバー内の最小内圧Pminを、装置内外の差圧で−80Pa≦Pmin≦−40Paの範囲にあるように調整することで、未付着ススの排気機構による排気効率を高めて、チャンバー壁面へのススの堆積自体を抑止することにより清掃処理の頻度を下げる製造方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。
しかし、チャンバー壁面へのススの堆積自体をなくすことはできない。そして、チャンバー内の最小内圧Pminを管理しても、バーナーへの原料ガスの供給量等が変動すると未付着ススの排気効率が変動してしまうため、チャンバー壁面への実際のススの堆積量を正確に把握することができない。
そのため、清掃処理の適正な実施タイミングを逃してしまって、チャンバー壁面から剥離したススが堆積処理中のガラス微粒子堆積体に付着するといった不都合を招き、結果的に、後の透明ガラス化工程で気泡の発生を招くことのない高品位なガラス微粒子堆積体を安定生産することが難しいという問題が生じた。
出発基材に堆積しないガラス微粒子の内の前記排気機構により排気される割合を算出し、前記排気割合が高いほど、装置内に付着したススを除去する清掃処理の頻度を低く設定することを特徴とする。
そして、排気割合が高いときは、逆に実際に装置のチャンバー壁に堆積する未付着スス量が低減しているときなので、そのときに清掃処理頻度を低く設定することは、極めて合理的である。
即ち、本発明によるガラス微粒子堆積体の製造方法は、実際に装置のチャンバー壁に堆積する未付着スス量が低減するときには、清掃処理の実施を間引くことになるため、清掃処理の頻度を低減させて、装置の稼働率の向上によりガラス微粒子堆積体の生産性を向上させることができる。
また、チャンバー壁に堆積する未付着スス量が所定量に達するときを推定して、清掃処理を実施するため、清掃処理の適正な実施タイミングを逃すことがなく、清掃処理の適正な実施タイミングを逃したためにチャンバー壁面から剥離したススが堆積中のガラス微粒子堆積体に付着するという不都合を回避して、高品位なガラス微粒子堆積体を安定生産することができる。
図1は本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法を実施する装置の一実施の形態の概略構成図、図2は本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法において清掃処理の頻度を設定する処理のフローチャートである。
そして、出発基材5の長手方向に一定間隔で並ぶように、チャンバー3の一側には多数のバーナー11a〜11hが配置され、また、チャンバー3の他側にはチャンバー3内雰囲気を負圧吸引して排気することによりチャンバー3内に浮遊する未付着ススを外部に排気する排気機構(排気管)13a,13b,13cが配置されている。
各バーナー11a〜11hは、ガス供給路15から供給されるガラス原料ガスを出発基材5に向けて噴射し、そのガラス原料ガスの火炎加水分解により生成されるガラス微粒子(スス)を出発基材5の外周に多層に堆積させて、ガラス微粒子堆積体17を形成する。
エア導入部19は、各バーナー11a〜11hの周辺部からチャンバー3内に所定流速のクリーンエアを導入することにより、未付着ススを排気機構13a,13b,13cに到着し易くする気流をチャンバー3内に形成する。
これらの圧力検出位置25にて、不図示の圧力検出手段により圧力が測定され、各圧力検出位置25が所定の負圧に維持されるように、各排気機構13a,13b,13cによる吸引圧が調整される。
まず、各バーナー11a〜11hからの原材料投入量からガラス微粒子生成量の総重量w1を計算する。また、ガラス微粒子堆積体17の総重量w2から出発基材5の重量w3を差し引いて、ガラス微粒子堆積体17のガラス微粒子部のみの重量w4を測定する。次に、チャンバー3のスス付着重量w5を測定する。
そして、以上の各測定重量から、
排気割合A=(w1−(w4+w5))/(w1−w4) ……(1)
排気割合Aが50%以上70%未満の場合は、図2のステップS210,ステップS211に示すように、清掃処理の頻度を1/2〜1/4(回/バッチ)に設定する。これは、清掃処理が、2バッチ〜4バッチに1回に間引かれることを意味している。
また、排気割合Aが70%以上の場合は、図2のステップS220,S221に示すように、清掃処理の頻度を1/5〜1/10(回/バッチ)に設定する。
また、上記の各ステップS210,S220のいずれにも該当しないとき(即ち、排気割合Aが50%未満)のときは、図2にステップS231で示すように、清掃処理の頻度を1バッチに1回に設定する。
本願発明者等は、マッフル内面に付着したガラス微粒子の剥がれ易さと、マッフル内面の表面粗さRaを変えて、透明ガラス化したガラス母材中に発生する気泡数と、マッフル内面の表面粗さRaとの関係を調べた。すると、マッフル内面の表面粗さRaが0.4μm以上のときには、母材中に気泡の発生が検出されなかった。マッフル内面の表面粗さRaが0.4μm未満の場合は、表面が滑らかになるに応じて、母材中に気泡の発生が急激に増大する。これは、マッフル内面が滑らかなほど、マッフル内面へのススの付着強度が低く、母材の堆積処理中にマッフル内面から剥離したススが母材に付着したと考えられ、上記のように、マッフル内面の表面粗さRaが0.4μm以上の粗さに粗面化されている装置を使用することで、剥離したススのガラス母材への付着による気泡の発生を防止でき、信頼性の高い堆積処理が実施可能になる。
即ち、本実施の形態によるガラス微粒子堆積体の製造方法は、実際に装置のチャンバー壁に堆積する未付着スス量w5が低減するときには、清掃処理の実施を間引くことになるため、清掃処理の頻度を低減させて、装置の稼働率の向上によりガラス微粒子堆積体の生産性を向上させることができる。
以下の各実施例1〜18および比較例1〜8は、上記製造装置1において、出発基材5としては直径40mm、長さ2100mmの光ファイバ用コアガラスを使用する。8本のバーナー11a〜11hへ投入するガラス原料(SiCl4)の平均投入量は5SLM/本とする。そして、出発基材5へのガラス微粒子の堆積量が100kgになったとき、ガラス微粒子堆積体17の製造完了として、ガラス微粒子堆積体17の取出しを行う。
各実施例1〜18及び比較例1〜8では、それぞれ60本のガラス微粒子堆積体17を製造し、60本目のガラス微粒子堆積体17を、透明ガラス化して、気泡数を測定する。
以下の表1〜表3は、各実施例及び比較例の測定結果を示したものである。
以下、各表の測定結果について、説明する。
これらの各実施例1〜3は、測定した母材中の気泡数Fが、いずれも0又は1(個/母材)となり、発生する気泡数の少ない良好な母材が得られた。
即ち、実施例1〜3では、1バッチ毎に清掃処理を実施する比較例1と比較して、清掃頻度の低減によって、平均設備停止時間G(分)が短縮されていて、装置の稼働率が向上していることが確認できた。
これらの各実施例4〜6の場合も、測定した母材中の気泡数Fが、いずれも0又は1(個/母材)となり、発生する気泡数の少ない良好な母材が得られた。
比較例2の場合と同様に、図2に示したフローの有効性が確認できた。
これらの各実施例7〜12は、測定した母材中の気泡数Fが、いずれも0又は1(個/母材)となり、発生する気泡数の少ない良好な母材が得られた。
また、比較例1と比べると、清掃処理の頻度が大幅に低減されているため、平均設備停止時間Gの短縮が顕著に表れている。
比較例4は、排気割合Aが実施例7〜12と同一の90%の場合であるが、清掃処理の頻度を、図2に示したフローに従わずに、11バッチに1回に低減させたもので、その他の製造条件は、実施例7〜12と同様にしている。この場合は、清掃処理の頻度を過度に下げたことが影響して、測定した母材中の気泡数Fが10(個/母材)となり、図2に示したフローの有効性が確認できた。
また、排気効率90%の場合は、バッチ回数Bが10を超えると、気泡数Fが急激に増加する傾向が見られ、図2にも示したように、出発基材に堆積しないガラス微粒子の内の70〜90%が前記排気機構により排気される場合には、清掃処理の頻度を1/5〜1/10(回/バッチ)に設定することが気泡数Fの低減に有効であることが確認できた。
これらの実施例13〜16及び比較例5,6は、排気割合Aが50%の場合で、清掃処理の頻度を図2に示したフローに従って2バッチに1回に設定している。
また、クリーンエアの流速Cは1m/s、エア導入部19の圧力Dは0.60Paとして、実施の形態の条件設定に準じている。
これらの実施例17,18は、排気割合Aが50%の場合で、清掃処理の頻度を図2に示したフローに従って2バッチに1回に設定している。
また、クリーンエアの流速Cは1m/s、エア導入部19の圧力Dは0.60Paの陽圧として、実施の形態の条件設定に準じている。
これに対して、比較例7は、流速Cを0.96m/sに減少させることで排気割合Aが48%と低くなった場合で、清掃処理の頻度を図2に示したフローに従うと、1バッチに1回にしなければならないところを、2バッチに1回に設定している。
また、比較例8は、排気割合Aが50%の場合で、エア導入部19の圧力Dを実施の形態の規定外となる負圧(−0.50Pa)に設定した以外は、実施例17,18と同様の製造条件にしているが、エア導入部19の圧力Dを負圧にしたことの影響で、測定した母材中の気泡数Fが10(個/母材)となり、エア導入部19の圧力Dを陽圧に設定することの有用性が確認された。
5 出発基材
11a〜11h バーナー
13a,13b,13c 排気機構
15 ガス供給路
17 ガラス微粒子堆積体
19 エア導入部
21 エア供給管
23 圧力検出位置
25 圧力検出位置
Claims (5)
- 出発基材に向けてガラス微粒子を発生させるバーナーと、前記出発基材に堆積しなかったガラス微粒子を排気する排気機構とを有する装置内で、MMD法若しくはOVD法によりガラス微粒子堆積体を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法において、
出発基材に堆積しないガラス微粒子の内の前記排気機構により排気される割合を算出し、前記排気割合が高いほど、装置内に付着したススを除去する清掃処理の頻度を低く設定することを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。 - 出発基材に堆積しないガラス微粒子の内の50%以上70%未満が前記排気機構により排気される場合には、清掃処理の頻度を1/2〜1/4(回/バッチ)に設定し、出発基材に堆積しないガラス微粒子の内の70%以上が前記排気機構により排気される場合には、清掃処理の頻度を1/5〜1/10(回/バッチ)に設定することを特徴とする請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
- 前記バーナーの周辺に設けたエア導入部から前記装置内にクリーンエアを導入し、前記装置内におけるクリーンエアの流速を1m/s以上に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
- 前記エア導入部を陽圧とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
- マッフル内面の表面粗さ(Ra)を、0.4μm以上の粗面にすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
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