JP2009126281A - 4輪駆動車の動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】4輪駆動車の動力伝達装置において、前後輪の間の伝達機構を制御して伝達される動力を調整する動力伝達制御手段と、操舵輪が操舵されることにより生じる路面反力状態が飽和しているかどうかを判定する路面反力状態判定手段とを備え、上記路面反力状態判定手段によって路面反力状態が飽和していると判定された時は、上記動力伝達制御手段により上記前後輪の他方に伝達される動力を上記伝達機構により伝達可能な上限動力まで増大するように構成した。
【選択図】図1
Description
回転速度差対応クラッチトルクTΔNは、前輪回転数Nfと後輪回転数Nrの偏差に対して、横加速度に応じて設定される定数K1を乗じることよって算出されるため、例えば旋回中に路面状況が変化することにより路面摩擦係数μが減少し、前輪タイヤのグリップが飽和したとしても、前輪に発生している駆動力が比較的小さい(スロットル開度が比較的小さい)場合には、前輪タイヤの空転は小さくなり、前輪回転数Nfと後輪回転数Nrの偏差は小さくなるので、図2に示すように、これにほぼ比例関係にある回転速度差対応クラッチトルクTΔNも小さくなり、動力伝達クラッチの係合トルクを最大化(動力伝達クラッチ直結)することができない。
また上記と同じ条件の時、ヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyは、目標ヨーレートと実ヨーレートの偏差がゼロになるように後輪への分配トルクを決定しているため、上記のような運転状態で前輪タイヤのグリップ力が飽和した場合には、アンダーステアが発生し、目標ヨーレートに対して実ヨーレートが小さくなり、ヨーレート偏差が大きくなるので、実ヨーレートを大きくするべく、ヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyが増大することとなる。
すなわち、図6に示すように、滑りにくい路面から滑りやすい路面に変化し、前輪タイヤのグリップが飽和した直後は、実ヨーレートの変化には一点鎖線に示すように応答遅れが発生しており、目標ヨーレートと実際のヨーレートの偏差が直ちには大きくならないため、ヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyの増大には応答遅れが発生する。
次に、本発明の実施例について以下図面を参照しながら説明する。図1乃至図9はこの発明の実施の形態1について説明するものである。
図1は本発明が適用される車両制御の全体構成図を示している。図において、前輪側の左右輪4間にはフロントディファレンシャル1(以下フロントデフと称する)が設けられ、フロントデフ1に固定されたリングギア2には図示しないエンジンの動力が変速機を介して入力される。フロントデフ1はドライブシャフト3を介して左右の前輪4に接続され、上記リングギア2に入力されたエンジンの動力をトランスミッションを介して、差動を許容しながら左右の前輪4に伝達するものである。
一方、上記動力伝達制御手段14には、前輪のタイヤグリップが飽和しているかどうかを判定する路面反力状態判定手段21が接続されており、上記路面反力状態判定手段21により路面反力状態が飽和していると判断された場合は、上記電子制御カップリング係合トルクTeccの前回演算値Tecc(前回値)に対して臨時増分トルクTupを加算することにより、上記電子制御カップリング係合トルクTeccを増大する。
更に、路面反力状態判定部29は、上記路面反力トルク偏差ΔTと、車両および車速Vに応じて設定される所定偏差量αとを比較して、路面反力トルク偏差ΔTが所定偏差量α以上を示す場合には、路面反力状態が飽和し、車両挙動が不安定(タイヤのグリップが飽和状態)であると判断すると、飽和判定フラグを1にセットし出力するものである。
電動パワーステアリング機構の運動方程式は、下記の式で表される。
J・dωs/dt=Thdl+Tmtr-Tfric-Ta
上式において、dωs/dtは、上記電動パワーステアリング機構を駆動するモータ31に取り付けられた上記モータ加速度センサ23によって検出されるステアリング軸回転加速度、Jは、上記パワーステアリング機構に応じて予め設定されるステアリング慣性モーメントである。
車両が受ける路面反力トルクTaは、車両が安定状態(タイヤがグリップ状態)にある場合は、操舵角θに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合(タイヤのグリップが飽和状態に近づいた場合)には、路面反力トルクTaは低下して、操舵角θに対する比例関係を保持できなくなる。したがって、この特性を利用して路面反力状態を検出することができる。
また、上記所定偏差量αは車両の実走試験において車速Vを変化させた場合の車両挙動と上記所定偏差量αの相関関係から実験的に決定することができる。
33は時刻により変化する操舵角θを表し、34は上記操舵角と路面状態によって決定される路面反力トルクTaを表す。35は路面反力トルクが飽和状態にあることを示す飽和判定フラグを表し、36は電子制御カップリングの係合トルクを表す。
操舵中における路面反力トルク34は、領域Aのような滑らない路面であれば破線で示すような路面反力となるべきところだが、地点Cにおいて前輪タイヤのグリップが飽和する、滑りやすい路面である領域Bに入るので、線形性が保持されずに実線で示すように飽和してしまう。そして、路面反力状態判定手段21によって路面反力が飽和状態(前輪タイヤのグリップが飽和)にあると判定されると、飽和判定フラグ35が1にセットされる。
しかし、実ヨーレートは、前輪タイヤのグリップが飽和し、それに伴う車両の挙動をヨーレートセンサが検出することにより、情報として得ることができるので、車両挙動の変化に対して実ヨーレートの変化には応答遅れが発生するので、ヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyの増大にも応答遅れが発生することは前述したとおりである。
なお、飽和判定フラグ35が1にセットされている場合には、電子制御カップリングの係合トルクTeccを、最大伝達トルクTeccmax(Tecc=Teccmax)に設定してもよい。
TΔN = K1・(Nf-Nr)
但し、K1=A/Yg (A:定数)
γ’=θ・V/(1+A・V2)/L
ここで、V:車速、 θ:操舵角、 A:車両のスタビリティファクタ、
L:車両のホイールベースである。
従って、臨時増量時電子制御カップリング係合トルクTeccupは、臨時増分トルクTupの大きさに応じて増大する。
次にS109では、S108で演算した臨時増量時電子制御カップリング係合トルクTeccupと最大伝達トルクTeccmaxのうち、小さい方の値を電子制御カップリング係合トルクTeccとして設定することにより、電子制御カップリング係合トルクTeccは最大伝達トルクTeccmaxとなるまで増大する。
4 前輪、 5 フロントプロペラシャフト、 6 フロントピ二オンギア、
7 電子制御カップリング、 8 リアドライブシャフト、
9 リアピ二オンギア、 10 リアデフ、 11 リアリングギア、
12 リアドライブシャフト、 13 リアタイヤ、 14 動力伝達制御手段、
19 前後差回転拘束トルク演算部、 20ヨーレートフィードバック対応クラッチトルク演算部、 21 路面反力状態判定手段、 30電動パワーステアリング装置、
31 電動パワーステアリングモータ、 32 ハンドル。
Claims (7)
- 前後輪の一方に常時動力が伝達され、動力伝達機構を介して上記動力を前後輪の他方に伝達する4輪駆動車の動力伝達装置において、上記伝達機構を制御して上記前後輪の他方に伝達される動力を調整する動力伝達制御手段と、操舵輪が操舵されることにより生じる路面反力状態が飽和しているかどうかを判定する路面反力状態判定手段とを備え、上記路面反力状態判定手段によって路面反力状態が飽和していると判定された時は、上記動力伝達制御手段により上記前後輪の他方に伝達される動力を上記伝達機構により伝達可能な上限動力まで増大するようにしたことを特徴とする4輪駆動車の動力伝達装置。
- 上記路面反力状態判定手段によって路面反力状態が飽和していると判定された時は、上記前後輪の他方に伝達される動力を、上記上限動力と前回演算時に上記前後輪の他方に伝達されていた動力との偏差に応じて増大させることを特徴とする請求項1に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
- 上記伝達機構は電子制御カップリングによって構成されると共に、上記動力伝達制御手段は、回転速度差対応クラッチトルク演算手段とヨーレートフィードバック対応クラッチトルク演算手段とにより構成され、上記回転速度差対応クラッチトルク演算手段では、前輪回転数Nfと後輪回転数Nrの偏差に応じて回転速度差対応クラッチトルクTΔNが演算され、上記ヨーレートフィードバック対応クラッチトルク演算手段では、目標ヨーレートと実ヨーレートとのヨーレート偏差に応じてヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyが演算され、上記回転速度差対応クラッチトルクTΔNとヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyとにより上記電子制御カップリングの係合トルクTeccが演算されることを特徴とする請求項1に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
- 上記路面反力状態判定手段により路面反力状態が飽和していると判断された場合は、上記カップリング係合トルクTeccの前回演算値Tecc(前回値)に対して臨時増分トルクTupを加算することにより、前記カップリング係合トルクTeccを増大するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
- 上記路面反力状態判定手段は、モータ加速度とモータ電流と操舵トルクとにより路面反力トルクTaを演算する路面反力トルク演算手段と、操舵角θと車速Vから規範路面反力トルクTo(=ka・θ)を演算する規範路面反力トルク演算手段と、上記路面反力トルクTaと規範路面反力トルクToとから路面反力トルク偏差ΔTを演算する路面反力トルク偏差演算部と、上記路面反力トルク偏差ΔTと、車両および車速Vに応じて設定される所定偏差量αとを比較して、路面反力トルク偏差ΔTが所定偏差量α以上を示す場合には、路面反力状態が飽和していると判断する路面反力状態判定部とからなることを特徴とする請求項1に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
- 回転速差対応クラッチトルクTΔNは、車輪速センサにより検出された前輪回転数Nfと後輪回転数Nrとの偏差に対して、横加速度センサより検出された横加速度Ygに応じて設定される定数K1を乗じることよって、下式に従って演算することを特徴とする請求項3に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
TΔN = K1・(Nf−Nr)
但し、K1=A/Yg(A:定数) - ヨーレートフィードバック対応クラッチトルク演算手段は、操舵角θと車速Vによって定められた車体の目標ヨーレートγ’とヨーレートセンサによって検出された実際のヨーレートγとからヨーレート偏差を算出し、このヨーレート偏差が0付近では不感帯としてヨーレートフィードバックトルクTyが0に設定され、ヨーレート偏差の絶対値が所定値以上の領域では、ヨーレート偏差の絶対値の増加に比例してヨーレートフィードバック対応クラッチトルクTyを増加方向に設定したことを特徴とする請求項3に記載の4輪駆動車の動力伝達装置。
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