JP4684754B2 - 車両の前後駆動力配分制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、必要なヨーモーメントを演算して前後輪間の駆動力配分を適切に行う車両の前後駆動力配分制御装置に関する。
近年、車両の前後輪間の駆動力配分を制御する前後駆動力配分制御装置として、制御に必要なヨーモーメントを演算し、この演算したヨーモーメントの値に応じて制御量を設定するものがある。このような、ヨーモーメントの値に応じて制御する前後駆動力配分制御装置、例えば、舵角フィードフォワード+ヨーレートフィードバック制御を採用した装置では、高μ路での運動性能の向上に対しては有効であるが、低μ路走行時には、過度の回頭モーメントが付加され、車両のスピン傾向を助長してしまう虞がある。
また、上述のヨーモーメントの値に応じて制御する前後駆動力配分制御装置とは異なり、路面μに応じて制御量を設定し、前後駆動力配分を行う装置も様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−59216号公報
上述の特許文献1に開示される技術では、高μ路のみならず、低μ路においても最適な駆動力配分制御を実現することができる。しかしながら、路面μを推定するための応答性の遅れがあり、路面の急変時等にレスポンス良く対応できないという問題がある。そこで、前述の舵角フィードフォワード+ヨーレートフィードバック制御に横加速度等の他のパラメータを制御要因に加え、低μ路での定常的な回頭モーメントを防止することが考えられる。しかしながら、この場合、横加速度が小さい操舵初期や車両がスピン傾向を示している時に過渡的な回頭モーメントが付加され、低μ路高速走行時等で、安定感が不足する虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高μ路のみならず低μ路や路面の急変時等においてもレスポンス良く安定して最適に対応することができ、また、車両の不安定な状況や過渡的な状況において回頭モーメントが不必要に付加されることを確実に防止して精度の良い安定した前後駆動力配分が行える車両の前後駆動力配分制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、前後輪間の駆動力配分を可変するクラッチ手段と、エンジンからの入力トルクに応じて上記クラッチ手段の締結トルクを第1の締結トルクとして演算する第1のトルク演算手段と、車両に付加するヨーモーメントを推定し、該ヨーモーメントに応じて上記クラッチ手段の締結トルクを第2の締結トルクとして演算する第2のトルク演算手段と、少なくとも上記第1の締結トルクと上記第2の締結トルクを基に上記クラッチ手段を制御する制御手段とを備えた車両の前後駆動力配分制御装置において、上記第2のトルク演算手段は、車体すべり角速度に応じて上記ヨーモーメントを補正するものであって、上記ヨーモーメントの絶対値を大きくする方向への補正には、前回の補正の結果に基づいて予め制限を設けることを特徴としている。
本発明による車両の前後駆動力配分制御装置によれば、高μ路のみならず低μ路や路面の急変時等においてもレスポンス良く安定して最適に対応することができ、また、車両の不安定な状況や過渡的な状況において回頭モーメントが不必要に付加されることを確実に防止して精度の良い安定した前後駆動力配分を可能とする。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図22は本発明の実施の一形態を示し、図1は車両全体の駆動系の概略構成を示す説明図、図2は駆動力配分制御部の機能ブロック図、図3は第1のトランスファトルク演算部の機能ブロック図、図4は第2のトランスファトルク演算部の機能ブロック図、図5は基本付加ヨーモーメント設定部の機能ブロック図、図6は駆動力配分制御プログラムのフローチャート、図7は第1のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート、図8はエンジントルク演算ルーチンのフローチャート、図9は第1の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンのフローチャート、図10は第2の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンのフローチャート、図11は第2のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート、図12は基本付加ヨーモーメント設定ルーチンのフローチャート、図13は車体すべり角速度感応ゲイン設定ルーチンのフローチャート、図14は第3のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート、図15は入力トルク感応トランスファトルクの特性図、図16は実横加速度に対する基準横加速度を飽和させる疑似横加速度の特性説明図、図17は横加速度/ハンドル角ゲインとハンドル角を乗算した値に対する基準横加速度の特性説明図、図18は車速に対する低速時車速感応ゲインの特性説明図、図19は車体すべり角速度に対する基本車体すべり角速度感応ゲインの特性説明図、図20は復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインによる制限の説明図、図21は設定される車体すべり角速度感応ゲインの一例を示すタイムチャート、図22は車速と実横加速度に対する高速時車速感応ゲインの特性説明図である。
図1において、符号1は車両前部に配置されたエンジンを示し、このエンジン1による駆動力は、エンジン1後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)2からトランスミッション出力軸2aを経てトランスファ3に伝達される。
更に、このトランスファ3に伝達された駆動力は、リアドライブ軸4、プロペラシャフト5、ドライブピニオン軸部6を介して後輪終減速装置7に入力される一方、リダクションドライブギヤ8、リダクションドリブンギヤ9、ドライブピニオン軸部となっているフロントドライブ軸10を介して前輪終減速装置11に入力される。ここで、自動変速装置2、トランスファ3および前輪終減速装置11等は、一体にケース12内に設けられている。
また、後輪終減速装置7に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸13rlを経て左後輪14rlに、後輪右ドライブ軸13rrを経て右後輪14rrに伝達される。
一方、前輪終減速装置11に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸13flを経て左前輪14flに、前輪右ドライブ軸13frを経て右前輪14frに伝達される。
トランスファ3は、リダクションドライブギヤ8側に設けたドライブプレート15aとリアドライブ軸4側に設けたドリブンプレート15bとを交互に重ねて構成したトルク伝達容量可変型クラッチ(クラッチ手段)としての湿式多板クラッチ(トランスファクラッチ)15と、このトランスファクラッチ15の締結力(トランスファトルク:締結トルク)を可変自在に付与するトランスファピストン16を有して構成されている。
従って、本車両は、トランスファピストン16による押圧力を制御し、トランスファクラッチ15のトランスファトルクを制御することで、トルク配分比が前輪と後輪で、例えば100:0から50:50の間で可変できるフロントエンジン・フロントドライブ車ベース(FFベース)の4輪駆動車となっている。
また、トランスファピストン16の押圧力は、複数のソレノイドバルブ等を擁した油圧回路で構成するトランスファクラッチ駆動部31で与えられる。このトランスファクラッチ駆動部31を駆動させる制御信号(ソレノイドバルブに対するトランスファトルクに応じた出力信号)は、後述の駆動力配分制御部30から出力される。
車両には、駆動力配分制御部30で後述の如く実行する駆動力配分制御に必要なパラメータを検出するための、センサ類が設けられている。すなわち、各車輪14fl,14fr,14rl,14rrの車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが車輪速度センサ21fl,21fr,21rl,21rrにより検出され、ハンドル角θHがハンドル角センサ22により検出され、実際に車両に生じている横加速度(以下、実横加速度と略称)(dy/dt)が横加速度センサ23により検出され、実際に車両に生じているヨーレート(以下、実ヨーレートと略称)γがヨーレートセンサ24により検出され、アクセル開度θACCがアクセル開度センサ25により検出され、エンジン回転数NEがエンジン回転数センサ26により検出されて、駆動力配分制御部30に入力される。
そして、駆動力配分制御部30は、上述の各入力信号に基づいて、トランスファクラッチ15による前後駆動力配分をトランスファトルクTLSDとして演算し、トランスファクラッチ駆動部31に出力するように構成されている。
すなわち、駆動力配分制御部30は、図2に示すように、車速演算部32、第1のトランスファトルク演算部33、第2のトランスファトルク演算部34、第3のトランスファトルク演算部35、トランスファトルク演算部36から主要に構成されている。
車速演算部32は、4輪の車輪速度センサ、すなわち、各車輪速度センサ21fl,21fr,21rl,21rrから各車輪14fl,14fr,14rl,14rrの車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力される。そして、例えば、これらの平均を演算することにより車速V(=(ωfl+ωfr+ωrl+ωrr)/4)を演算し、第1のトランスファトルク演算部33、第2のトランスファトルク演算部34、第3のトランスファトルク演算部35に出力する。
第1のトランスファトルク演算部33は、第1のトルク演算手段として設けられているもので、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が、アクセル開度センサ25からアクセル開度θACCが、エンジン回転数センサ26からエンジン回転数NEが、車速演算部32から車速Vが入力される。そして、第1のトランスファトルク演算部33は、これら入力信号により、エンジンからの入力トルクに応じた第1の締結トルクとしての入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを演算し、トランスファトルク演算部36に出力する。
すなわち、第1のトランスファトルク演算部33は、図3に示すように、エンジントルク基準値演算部41、エンジントルク演算部42、トランスミッションギヤ比演算部43、入力トルク演算部44、第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45、第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46、入力トルク感応トランスファトルク演算部47から主要に構成されている。
エンジントルク基準値演算部41は、アクセル開度センサ25からアクセル開度θACCが、エンジン回転数センサ26からエンジン回転数NEが入力される。そして、これらアクセル開度θACCとエンジン回転数NEを基に、予め設定しておいたエンジン特性のマップを参照してエンジントルクを求め、このエンジントルクをエンジントルク基準値TEG0として、エンジントルク演算部42に出力する。
エンジントルク演算部42は、エンジントルク基準値演算部41からエンジントルク基準値TEG0が入力される。そして、以下の(1)式、或いは、(2)式によりエンジントルクTEGを演算し、入力トルク演算部44に出力する。
・TEG0(k)>TEG(k-1)の場合(エンジントルクが増加しつつある時)
TEG=(1/(1+TEGTu・s))・TEG0 …(1)
・TEG0(k)≦TEG(k-1)の場合(エンジントルクが減少しつつある時)
TEG=(1/(1+TEGTd・s))・TEG0 …(2)
ここで、TEG0(k)は今回のエンジントルク基準値、TEG(k-1)は前回のエンジントルク、sは微分演算子、TEGTuはエンジントルク増加側の遅れ時定数(例えば、0.5)、TEGTdはエンジントルク減少側の遅れ時定数(例えば、0.2)である。
すなわち、アクセルを操作してからエンジントルクに現れるまでには一定の時間がかかり、特に過給エンジンにおいては、アクセルを踏む際はアクセルを離す場合と比べてエンジン回転数に変化が現れるのに時間がかかる。このことを考慮して、エンジントルクが増加される場合と減少される場合とで遅れ時定数を変え、エンジントルクが増加しつつある時には遅れ時定数を大きく設定して遅れを大きくとり、エンジントルクが減少しつつある時には遅れ時定数を小さく設定して遅れが小さくなるように遅れ特性を持たせ、エンジントルクTEGを精度良く求められるようにしている。
こうして、エンジントルクTEGの推定において、エンジントルクの増加減に対して別々の時定数を用いることにより、後述するトランスファクラッチ15への入力トルクTCDをよりエンジンの過渡特性に合わせて適切に推定でき、アクセルON時の入力トルクTCDの立ち上がりを若干遅らせて、回頭性を向上させることができるようになっている。
トランスミッションギヤ比演算部43は、エンジン回転数センサ26からエンジン回転数NEが入力され、車速演算部32から車速Vが入力される。そして、以下の(3)式によりトランスミッションギヤ比GTMを演算して入力トルク演算部44に出力する。
GTM=(NE・Rt)/((V/3.6)・Gfin) …(3)
ここで、Rtはタイヤ径、Gfinはファイナルギヤ比である。
入力トルク演算部44は、エンジントルク演算部42からエンジントルクTEGが入力され、トランスミッションギヤ比演算部43からトランスミッションギヤ比GTMが入力されて、以下の(4)式により入力トルクTCDを演算し、第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45、及び、第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46に出力する。
TCD=TEG・GTM …(4)
第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が、入力トルク演算部44から入力トルクTCDが入力され、実横加速度(dy/dt)に応じて以下の(5)〜(8)式の何れかにより第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。
・(dy/dt)≦(dyL/dt)の場合
TLSDI1=TBRL1・|TCD| …(5)
・(dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt)の場合
TLSDI1=TBRL1・|TCD|・((dyM/dt)−(dy/dt))
/((dyM/dt)−(dyL/dt))
+TBRM1・|TCD|・((dy/dt)−(dyL/dt))
/((dyM/dt)−(dyL/dt)) …(6)
・(dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt)の場合
TLSDI1=TBRM1・|TCD|・((dyH/dt)−(dy/dt))
/((dyH/dt)−(dyM/dt))
+TBRH1・|TCD|・((dy/dt)−(dyM/dt))
/((dyH/dt)−(dyM/dt)) …(7)
・(dy/dt)>(dyH/dt)の場合
TLSDI1=TBRH1・|TCD| …(8)
ここで、(dyL/dt)、(dyM/dt)、(dyH/dt)はそれぞれ実験等により予め設定した定数で、(dyL/dt)<(dyM/dt)<(dyH/dt)であって、例えば、(dyL/dt)=1、(dyM/dt)=3、(dyH/dt)=9である。また、TBRL1、TBRM1、TBRH1は入力トルク感応比例定数であり、それぞれ実験等により予め設定した定数で、TBRL1>TBRM1>TBRH1であって、例えば、TBRL1=0.4、TBRM1=0.3、TBRH1=0.2である。
すなわち、(dy/dt)≦(dyL/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRL1を用いて第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。
また、(dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRL1とTBRM1を用い、(dyL/dt)と(dyM/dt)との間に補間して第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。
更に、(dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRM1とTBRH1を用い、(dyM/dt)と(dyH/dt)との間に補間して第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。
また、(dy/dt)>(dyH/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRH1を用いて第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。
第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が、入力トルク演算部44から入力トルクTCDが入力され、実横加速度(dy/dt)に応じて以下の(9)〜(13)式の何れかにより第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。
・TCD≦TCD0の場合
TLSDI2=0 …(9)
・(dy/dt)≦(dyL/dt)の場合
TLSDI2=TBRL2・(TCD−TCD0) …(10)
・(dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt)の場合
TLSDI2=TBRL2・(TCD−TCD0)
・((dyM/dt)−(dy/dt))
/((dyM/dt)−(dyL/dt))
+TBRM2・(TCD−TCD0)
・((dy/dt)−(dyL/dt))
/((dyM/dt)−(dyL/dt)) …(11)
・(dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt)の場合
TLSDI2=TBRM2・(TCD−TCD0)
・((dyH/dt)−(dy/dt))
/((dyH/dt)−(dyM/dt))
+TBRH2・(TCD−TCD0)
・((dy/dt)−(dyM/dt))
/((dyH/dt)−(dyM/dt)) …(12)
・(dy/dt)>(dyH/dt)の場合
TLSDI2=TBRH2・(TCD−TCD0) …(13)
ここで、TCD0は、予め設定しておいた定数であり、この入力トルク値以下の場合にはグリップがし易いと判断できる入力トルクの分岐点を示すものである。また、TBRL2、TBRM2、TBRH2は入力トルク感応比例定数であり、それぞれ実験等により予め設定した定数で、TBRL2>TBRM2>TBRH2であって、例えば、TBRL2=0.2、TBRM2=0.1、TBRH2=0である。
すなわち、第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2は、TCD0よりも大きく、トランスファ3の役割が、より要求される入力トルクTCDの領域で設定されるものであり、(dy/dt)≦(dyL/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRL2を用いて第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。
また、(dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRL2とTBRM2を用い、(dyL/dt)と(dyM/dt)との間に補間して第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。
更に、(dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRM2とTBRH2を用い、(dyM/dt)と(dyH/dt)との間に補間して第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。
また、(dy/dt)>(dyH/dt)の場合には、入力トルク感応比例定数TBRH2を用いて第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。
入力トルク感応トランスファトルク演算部47は、第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45から第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1が入力され、第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46から第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2が入力される。そして、以下の(14)式により、入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを演算し、トランスファトルク演算部36に出力する。
TLSDI=TLSDI1+TLSDI2 …(14)
このように、第1のトランスファトルク演算部33で演算される入力トルク感応トランスファトルクTLSDIの特性を図15に示す。本実施形態による入力トルク感応トランスファトルクTLSDIでは、トランスファクラッチ15に対するトランスファトルクTLSDを求める際に、入力トルクTCDが大きい領域では、第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を加えることにより変化量を変え、低μ路限界走行時に差動制限力が不足しないように、より大きなトランスファトルクを付加するようになっている。また、実横加速度(dy/dt)に対して、基準とする3本のトルク線を用意することにより、低μ路走行、高μ路走行での適合を簡潔に行えるようになっている。尚、本実施の形態では、分岐点TCD0を設定し、これより大きな入力トルクTCDの領域を入力トルク感応トランスファトルクTLSDIが大きく変化する領域として設定しているが、例えば、二次曲線等を用いて、入力トルクTCDが大きいほど、入力トルク感応トランスファトルクTLSDIの変化量が大きくなるように設定するようにしても良い。
第2のトランスファトルク演算部34は、第2のトルク演算手段として設けられているもので、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が、ヨーレートセンサ24から実ヨーレートγが、車速演算部32から車速Vが入力される。そして、第2のトランスファトルク演算部34は、これら入力信号により、車両に付加するヨーモーメントを推定し、このヨーモーメントに応じた第2の締結トルクとして舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPを演算し、トランスファトルク演算部36に出力する。
すなわち、第2のトランスファトルク演算部34は、図4に示すように、基本付加ヨーモーメント設定部51、低速時車速感応ゲイン設定部52、車体すべり角速度演算部53、車体すべり角速度感応ゲイン設定部54、高速時車速感応ゲイン設定部55、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56から主要に構成されている。
基本付加ヨーモーメント設定部51は、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力され、横加速度センサ23から(dy/dt)が入力され、ヨーレートセンサ24から実ヨーレートγが入力される。そして、これら入力信号を基に、基本付加ヨーモーメントMzθを演算し、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56に出力する。
以下、図5を基に、基本付加ヨーモーメント設定部51の構成を説明する。この基本付加ヨーモーメント設定部51は、横加速度/ハンドル角ゲイン演算部61、横加速度偏差感応ゲイン演算部62、ヨーレート/ハンドル角ゲイン演算部63、ヨーレート感応ゲイン演算部64、基準横加速度演算部65、横加速度偏差演算部66、基本付加ヨーモーメント演算部67から主要に構成されている。
横加速度/ハンドル角ゲイン演算部61は、車速演算部32から車速Vが入力され、以下の(15)式により、横加速度/ハンドル角ゲインGyを演算し、横加速度偏差感応ゲイン演算部62、基準横加速度演算部65に出力する。
Gy=(1/(1+A・V))・(V/L)・(1/n) …(15)
ここで、Aはスタビリティファクタ、Lはホイールベース、nはステアリングギヤ比である。
横加速度偏差感応ゲイン演算部62は、横加速度/ハンドル角ゲイン演算部61から横加速度/ハンドル角ゲインGyが入力される。そして、極低μ路にて舵が全く効かない状態(γ=0、(dy/dt)=0)でMzθ(定常値)=0となる値を最大値の目安として横加速度偏差感応ゲインKyを以下の(16)式で演算し、基本付加ヨーモーメント演算部67に出力する。
Ky=Kθ/Gy …(16)
ヨーレート/ハンドル角ゲイン演算部63は、車速演算部32から車速Vが入力される。そして、以下の(17)式によりヨーレート/ハンドル角ゲインGγを演算し、ヨーレート感応ゲイン演算部64に出力する。
Gγ=(1/(1+A・V))・(V/L)・(1/n) …(17)
ヨーレート感応ゲイン演算部64は、ヨーレート/ハンドル角ゲイン演算部63からヨーレート/ハンドル角ゲインGγが入力される。そして、グリップ走行(横加速度偏差(dye/dt)=0)時にMzθ(定常値)=0となるヨーレート感応ゲインKγを考えて、以下の(18)式により設定し、基本付加ヨーモーメント演算部67に出力する。
Kγ=Kθ/Gγ …(18)
ここで、Kθは舵角感応ゲインであり、以下(19)式で求められる。
Kθ=(Lf・Kf)/n …(19)
ここで、Lfは前軸−重心間距離、Kfは前軸の等価コーナリングパワである。
基準横加速度演算部65は、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力され、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が入力され、横加速度/ハンドル角ゲイン演算部61から横加速度/ハンドル角ゲインGyが入力される。そして、以下の(20)式により、車両の運転状態から線形な車両運動モデルに基づき推定される横加速度と実横加速度の関係を示す基準横加速度(dyr/dt)を演算し、横加速度偏差演算部66に出力する。
(dyr/dt)=(1/(1+Ty・s))・(dyss/dt) …(20)
ここで、sは微分演算子、Tyは横加速度の1次遅れ時定数、(dyss/dt)は遅れを考慮しない符号付基準横加速度であり、この遅れを考慮しない符号付基準横加速度(dyss/dt)は、以下のように設定される。
・θH≧0の場合…(dyss/dt)=(dysm/dt) …(21)
・θH<0の場合…(dyss/dt)=−(dysm/dt) …(22)
ここで、(dysm/dt)は、後述の(dyx/dt)によって飽和する符号無し基準横加速度である。
すなわち、(dyx/dt)は、基準横加速度を飽和させる疑似横加速度であり、以下の(23)式、或いは、(24)式により演算する。
・(dy/dt)<0の場合…
(dyx/dt)=Gy・θHMax・((10−(dy/dt))/10)
+(dy/dt) …(23)
・(dy/dt)≧0の場合…
(dyx/dt)=10 …(24)
ここで、θHMaxは、最大ハンドル角である。この(23)式、(24)式で設定される基準横加速度を飽和させる疑似横加速度(dyx/dt)は、特性図で示すと、図16のようになり、例えば本実施形態では、10m/sで飽和させるようになっている。
また、ハンドル角に対して線形計算した符号無し基準横加速度を(dysl/dt)として、以下の(25)式により演算する。
(dysl/dt)=Gy・|θH| …(25)
そして、(dysl/dt)からの(dyx/dt)の差を(dyd/dt)(=(dysl/dt)−(dyx/dt))とすると、(dyx/dt)によって飽和する符号無し基準横加速度(dysm/dt)は、以下の(26)式、或いは、(27)式により演算される。
・(dyd/dt)>0の場合…
(dysm/dt)=(dysl/dt)−(dyd/dt) …(26)
・(dyd/dt)≦0の場合…
(dysm/dt)=(dysl/dt) …(27)
こうして、設定される車両の運転状態から線形な車両運動モデルに基づき推定される横加速度と実横加速度の関係を示す基準横加速度(dyr/dt)の特性は、図17に示すようになり、基準横加速度(dyr/dt)は、(Gy・θH)との関係において、路面μが高く実横加速度(dy/dt)が大きい場合は小さい値に抑制され、逆に路面μが低く実横加速度(dy/dt)が小さい場合は大きい値がとれるように設定される。そして、このように基準横加速度(dyr/dt)を設定することにより、後述する基本付加ヨーモーメント演算部67で基準横加速度(dyr/dt)を含んで基本付加ヨーモーメントMzθを演算する際、低μ路における大転舵時の過剰な回頭モーメントが防止されるようになっている。
横加速度偏差演算部66は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が入力され、基準横加速度演算部65から基準横加速度(dyr/dt)が入力される。そして、以下の(28)式により、横加速度偏差(dye/dt)を演算し、基本付加ヨーモーメント演算部67に出力する。
(dye/dt)=(dy/dt)−(dyr/dt) …(28)
基本付加ヨーモーメント演算部67は、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力され、ヨーレートセンサ24から実ヨーレートγが入力され、横加速度偏差感応ゲイン演算部62から横加速度偏差感応ゲインKyが入力され、ヨーレート感応ゲイン演算部64cからヨーレート感応ゲインKγが入力され、横加速度偏差演算部66から横加速度偏差(dye/dt)が入力される。
そして、以下の(29)式により、基本付加ヨーモーメントMzθを演算し、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56に出力する。
Mzθ=−Kγ・γ+Ky・(dye/dt)+Kθ・θH …(29)
すなわち、この(29)式に示すように、−Kγ・γの項がヨーレートγに感応したヨーモーメント、Kθ・θHの項がハンドル角θHに感応したヨーモーメント、Ky・(dye/dt)の項がヨーモーメントの修正値となっている。このため、高μ路で横加速度(dy/dt)が大きな運転をした場合には、付加ヨーモーメントMzθも大きな値となり、運動性能が向上する。一方、低μ路での走行では、付加ヨーモーメントMzθは、上述の修正値が作用して付加ヨーモーメントMzθを低減するため回頭性が大きくなることがなく、安定した走行性能が得られるようになっている。
図4に戻り、低速時車速感応ゲイン設定部52は、車速演算部32から車速Vが入力される。そして、例えば、図18に示すマップを参照して、低速時車速感応ゲインKVvlを設定し、車体すべり角速度演算部53、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56に出力する。
この低速時車速感応ゲインKVvlは、図18からも明らかなように、極低速での不要な付加ヨーモーメントMVzθを避けるため、低く設定される。特に、20km/h以下では、低速時車速感応ゲインKVvlは0に設定され、制御による付加ヨーモーメントMVzθが作用しないように設定される。
車体すべり角速度演算部53は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が入力され、ヨーレートセンサ24から実ヨーレートγが入力され、車速演算部32から車速Vが入力され、低速時車速感応ゲイン設定部52から低速時車速感応ゲインKVvlが入力される。
そして、以下の(30)式により、車体すべり角速度(dβ/dt)を演算し、車体すべり角速度感応ゲイン設定部54に出力する。
(dβ/dt)=KVvl・|((dy/dt)/V)−γ| …(30)
車体すべり角速度感応ゲイン設定部54は、車体すべり角速度演算部53から車体すべり角速度(dβ/dt)が入力される。
そして、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0と復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lとを演算し、1.0を超えない範囲で、小さい方を車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定し、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56に出力する。
具体的には、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0は、例えば、図19に示すマップを参照して設定される。この基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0は、図19からも明らかなように、車体すべり角速度(dβ/dt)が大きな限界域での過剰な回頭性を抑制するため設定されるものであり、特に、車体すべり角速度(dβ/dt)がm2以上では0に設定されて、制御による付加ヨーモーメントMVzθが作用しないように設定される。
また、復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lは、以下の(31)式により演算される。
KV(dβ/dt)L(k)=KV(dβ/dt)L(k-1)+ΔKV(dβ/dt)・Δt
…(31)
ここで、KV(dβ/dt)L(k)は今回の復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲイン、KV(dβ/dt)(k-1)は前回の車体すべり角速度感応ゲイン、ΔKV(dβ/dt)は車体すべり角速度感応ゲイン復帰勾配(定数、例えば、0.3)、Δtは演算周期である。
上述の(31)式で表現される復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lは、図20の意味であり、前回の車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)(k-1)がA点だとすると、今回の復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)L(k)はB点となる。そして、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0と比較して小さい方を車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定することから、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0がC点にあるような場合は、今回の復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)L(k)が車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定される。逆に、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0がD点にあるような場合は、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0が車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定されることとなる。すなわち、今回の復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)L(k)は制限値として設けられている。
例えば、図21に示すように、ドライバがステアリングを左に切り、続いて、右に切り、その後、カウンタステアを行う場合を考える。
その時、車体すべり角速度(dβ/dt)は、図21(c)に示すように、負→正→負といった値をとることになるが、このような符号が切り替わる過渡的な状況で車体すべり角速度(dβ/dt)が一時的に0又は小さな値をとる瞬間が生じる。このような状況の際に、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0のみで付加ヨーモーメントMVzθを設定してしまうと、車両が不安定な状況であるにも関わらず、トランスファトルクTLSDが0又は小さな値となって好ましくない(図21(d)中の破線部分)。従って、こうした過渡的な状況を考慮して復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lで制限することで、車両の不安定な状況や過渡的な状況において回頭モーメントが不必要に付加されることを確実に防止して精度の良い安定した前後駆動力配分が行えるようにするのである。
高速時車速感応ゲイン設定部55は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が入力され、車速演算部32から車速Vが入力される。
そして、まず、高速時車速感応ゲインKVvhの車速感応項KVvhvを以下の(32)式、或いは、(33)式、或いは、(34)式により設定する。
・(3.6・V)≦60の場合 …KVvhv=1 …(32)
・60<(3.6・V)<120の場合 …
KVvhv=1−(((3.6・V)−60)/(120−60)) …(33)
・(3.6・V)≧120の場合 …KVvhv=0 …(34)
上述の高速時車速感応ゲインKVvhの車速感応項KVvhvを基に、高速時車速感応ゲインKVvhを以下の(35)式、或いは、(36)式、或いは、(37)式により設定する。
・|dy/dt|≦3の場合…KVvh=KVvhv …(35)
・3<|dy/dt|<9の場合…
KVvh=1・((|dy/dt|−3)/(9−3))
+KVvhv・((9−|dy/dt|)/(9−3)) …(36)
・|dy/dt|≧9の場合…KVvh=1 …(37)
上述の(35)式〜(37)式により得られる高速時車速感応ゲインKVvhの特性を図22に示す。すなわち、高速走行において実横加速度の絶対値|dy/dt|が低く(|dy/dt|≦3)、低μ路走行の可能性がある場合には、過剰な回頭性を抑えるため、高速時車速感応ゲインKVvhが小さく設定されるようになっているのである。
舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56は、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力され、基本付加ヨーモーメント設定部51から基本付加ヨーモーメントMzθが入力され、低速時車速感応ゲイン設定部52から低速時車速感応ゲインKVvlが入力され、車体すべり角速度感応ゲイン設定部54から車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)が入力され、高速時車速感応ゲイン設定部55から高速時車速感応ゲインKVvhが入力される。
そして、以下の(38)式により付加ヨーモーメントMVzθを演算し、(39)式、或いは、(40)式により舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPを演算して、トランスファトルク演算部36に出力する。
MVzθ=KVzθ・KVvl・KVvh・KV(dβ/dt)・Mzθ …(38)
ここで、KVzθはアシスト量を決めるゲインであり、定数(例えば1)である。
・θH≧0の場合
TLSDP=−KLSDP・MVzθ …(39)
・θH<0の場合
TLSDP=KLSDP・MVzθ …(40)
ここで、KLSDPは換算係数である。
一方、図2に戻り、第3のトランスファトルク演算部35は、横加速度センサ23から実横加速度(dy/dt)が入力され、アクセル開度センサ25からアクセル開度θACCが入力され、車速演算部32から車速Vが入力される。
そして、以下の条件を満足した時に、以下の(41)式により付加するタックイン防止トランスファトルクTLSDDを演算し、以下の解除条件が成立するまで出力する。
ここで、タックイン防止トランスファトルクTLSDDを演算し出力する実行条件は、今回のアクセル開度が0で、且つ、前回のアクセル開度が0より大きく、且つ、高速旋回状態(例えば、(dy/dt)>3、且つ、V>40km/h)の場合である。
また、解除条件は、今回のアクセル開度が0より大きいか、或いは、V≦40km/hの場合である。
TLSDD=TLSDD0・((V−VDoff)/(Vc−VDoff))
・(((dy/dt)−(dy/dt)Doff)
/((dy/dt)c−(dy/dt)Doff)) …(41)
ここで、TLSDD0は予め実験等により求めた基準値であり、車速がVcで、実横加速度が(dy/dt)cになるように走行した際にタックインを抑制できる基準値である。また、VDoff、(dy/dt)Doffは、それぞれタックイン制御を解除する車速、横加速度となっている。尚、(41)式は、あくまでもタックイン防止トランスファトルクTLSDDを求めるための式の一例に過ぎず、他の式であっても良い。
このように、本実施の形態においては、第3のトランスファトルク演算部35からのタックイン防止トランスファトルクTLSDDにより、車速Vと実横加速度(dy/dt)に応じてフィードフォワード制御によりタックイン現象を有効に防止できるようになっている。
そして、この第3のトランスファトルク演算部35で演算されたタックイン防止トランスファトルクTLSDDは、トランスファトルク演算部36に出力される。
トランスファトルク演算部36は、制御手段として設けられており、第1のトランスファトルク演算部33から入力トルク感応トランスファトルクTLSDIが入力され、第2のトランスファトルク演算部34から舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPが入力され、第3のトランスファトルク演算部35からタックイン防止トランスファトルクTLSDDが入力される。そして、以下の(42)式によりトランスファトルクTLSDを演算し、トランスファクラッチ駆動部31に出力する。
TLSD=TLSDI+TLSDP+TLSDD …(42)
次に、上記構成による駆動力配分制御部30における駆動力配分制御について、図6〜図14のフローチャートで説明する。
図6のフローチャートは、駆動力配分制御プログラムを示すもので、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で必要なパラメータ、すなわち、車輪速度センサ21fl,21fr,21rl,21rrからの車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrr、ハンドル角センサ22からのハンドル角θH、横加速度センサ23からの実横加速度(dy/dt)、ヨーレートセンサ24からの実ヨーレートγ、アクセル開度センサ25からのアクセル開度θACC、エンジン回転数センサ26からのエンジン回転数NEを読み込む。
次いで、S102に進み、必要パラメータ、すなわち、車速演算部32による車速V等を演算する。
次に、S103に進み、第1のトランスファトルクを演算し、第1のトランスファトルク演算部33により入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを演算する。この入力トルク感応トランスファトルクTLSDIの演算は、後述の図7のフローチャートで説明する。
次いで、S104に進み、第2のトランスファトルクを演算し、第2のトランスファトルク演算部34により舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPを演算する。この舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPの演算は、後述の図11のフローチャートで説明する。
次に、S105に進み、第3のトランスファトルクを演算し、第3のトランスファトルク演算部34によりタックイン防止トランスファトルクTLSDDを演算する。このタックイン防止トランスファトルクTLSDDの演算は、後述の図14のフローチャートで説明する。
次いで、S106に進み、トランスファトルク演算部36で、前述の(42)式によりトランスファトルクTLSDを演算し、トランスファクラッチ駆動部31に出力してプログラムを抜ける。
図7は、上述のS103による、第1のトランスファトルク演算部33で実行される第1のトランスファトルク演算ルーチンを示し、まず、S201で、エンジントルク基準値演算部41は、予め設定しておいたエンジン特性のマップを参照してエンジントルクを求め、このエンジントルクをエンジントルク基準値TEG0として演算する。
次に、S202に進み、エンジントルク演算部42は、前述の(1)式、或いは、(2)式によりエンジントルクTEGを演算する。尚、このエンジントルクTEGの演算については、後述の図8のフローチャートで説明する。
次いで、S203に進み、トランスミッションギヤ比演算部43は、前述の(3)式によりトランスミッションギヤ比GTMを演算する。
次に、S204に進み、入力トルク演算部44は、前述の(4)式により入力トルクTCDを演算する。
次いで、S205に進み、第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45は、前述の(5)〜(8)式の何れかにより第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算する。尚、この第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1については、後述の図9のフローチャートで説明する。
次に、S206に進み、第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46は、前述の(9)〜(13)式の何れかにより第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算する。尚、この第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2については、後述の図10のフローチャートで説明する。
次いで、S207に進み、入力トルク感応トランスファトルク演算部47は、前述の(14)式により入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを演算し、ルーチンを抜ける。
図8は、上述のS202による、エンジントルク演算部42で実行されるエンジントルク演算ルーチンを示し、まず、S301では今回のエンジントルク基準値TEG0(k)と前回のエンジントルクTEG(k-1)との比較が行われる。
そして、S301の比較の結果、TEG0(k)>TEG(k-1)であって、エンジントルクが増加しつつある時と判断した場合はS302に進み、遅れ時定数TEGTをエンジントルク増加側の遅れ時定数TEGTu(例えば、0.5)に設定し、S304に進んで、このエンジントルク増加側の遅れ時定数TEGTuを用いて、前述の(1)式によりエンジントルクTEGを演算し、ルーチンを抜ける。
S301の比較の結果、TEG0(k)≦TEG(k-1)の場合であって、エンジントルクが減少しつつある時と判断した場合はS303に進み、遅れ時定数TEGTをエンジントルク減少側の遅れ時定数TEGTd(例えば、0.2)に設定し、S304に進んで、このエンジントルク減少側の遅れ時定数TEGTdを用いて、前述の(2)式によりエンジントルクTEGを演算し、ルーチンを抜ける。
図9は、上述のS205による、第1の入力トルク感応トランスファトルク演算部45で実行される第1の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンを示し、まず、S401で、実横加速度(dy/dt)と定数(dyL/dt)との比較が行われる。
このS401の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyL/dt)以下((dy/dt)≦(dyL/dt))の場合は、S402に進み、入力トルク感応比例定数TBRL1を用いて、前述の(5)式により、第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S401の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyL/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyL/dt))の場合は、S403に進み、実横加速度(dy/dt)と定数(dyM/dt)(>(dyL/dt))との比較を行う。
このS403の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyM/dt)以下((dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt))の場合は、S404に進み、入力トルク感応比例定数TBRL1とTBRM1を用い、前述の(6)式により、(dyL/dt)と(dyM/dt)との間に補間して第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S403の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyM/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyM/dt))の場合は、S405に進み、実横加速度(dy/dt)と定数(dyH/dt)(>(dyM/dt))との比較を行う。
このS405の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyH/dt)以下((dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt))の場合は、S406に進み、入力トルク感応比例定数TBRM1とTBRH1を用い、前述の(7)式により、(dyM/dt)と(dyH/dt)との間に補間して第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S405の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyH/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyH/dt))の場合は、S407に進み、入力トルク感応比例定数TBRH1を用いて、前述の(8)式により、第1の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI1を演算し、ルーチンを抜ける。
図10は、上述のS206による、第2の入力トルク感応トランスファトルク演算部46で実行される第2の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンを示し、まず、S501で、入力トルクTCDと予め設定しておいた定数TCD0とを比較する。
このS501の比較の結果、入力トルクTCDが定数TCD0以下(TCD≦TCD0)の場合は、S502に進み、前述の(9)式、すなわち、TLSDI2=0としてルーチンを抜ける。
また、S501の比較の結果、入力トルクTCDが定数TCD0より大きい(TCD>TCD0)場合は、S503以降に進む。
S503では、実横加速度(dy/dt)と定数(dyL/dt)との比較が行われる。
このS503の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyL/dt)以下((dy/dt)≦(dyL/dt))の場合は、S504に進み、入力トルク感応比例定数TBRL2を用いて、前述の(10)式により、第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S503の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyL/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyL/dt))の場合は、S505に進み、実横加速度(dy/dt)と定数(dyM/dt)(>(dyL/dt))との比較を行う。
このS505の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyM/dt)以下((dyL/dt)<(dy/dt)≦(dyM/dt))の場合は、S506に進み、入力トルク感応比例定数TBRL2とTBRM2を用い、前述の(11)式により、(dyL/dt)と(dyM/dt)との間に補間して第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S505の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyM/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyM/dt))の場合は、S507に進み、実横加速度(dy/dt)と定数(dyH/dt)(>(dyM/dt))との比較を行う。
このS507の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyH/dt)以下((dyM/dt)<(dy/dt)≦(dyH/dt))の場合は、S508に進み、入力トルク感応比例定数TBRM2とTBRH2を用い、前述の(12)式により、(dyM/dt)と(dyH/dt)との間に補間して第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算し、ルーチンを抜ける。
また、S507の比較の結果、実横加速度(dy/dt)が定数(dyH/dt)よりも大きな値((dy/dt)>(dyH/dt))の場合は、S509に進み、入力トルク感応比例定数TBRH2を用いて、前述の(13)式により、第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を演算し、ルーチンを抜ける。
図11は、前述のS104による、第2のトランスファトルク演算部34で実行される第2のトランスファトルク演算ルーチンを示し、まず、S601で、基本付加ヨーモーメント設定部51は、基本付加ヨーモーメントMzθを設定する。尚、この基本付加ヨーモーメントMzθの設定については、後述の図12のフローチャートで説明する。
次に、S602に進み、低速時車速感応ゲイン設定部52は、低速時車速感応ゲインKVvlを設定する。
次いで、S603に進み、車体すべり角速度演算部53は、前述の(30)式により、車体すべり角速度(dβ/dt)を演算する。
次に、S604に進み、車体すべり角速度感応ゲイン設定部54は、車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)を設定する。尚、この車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)の設定については、後述の図13のフローチャートで説明する。
次いで、S605に進み、高速時車速感応ゲイン設定部55は、高速時車速感応ゲインKVvhを設定する。
次に、S606に進み、舵角/ヨーレート感応トランスファトルク演算部56は、前述の(38)式により、付加ヨーモーメントMVzθを演算し、S607に進んで、前述の(39)式、或いは、(40)式により舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPを演算してルーチンを抜ける。
図12は、前述のS601による、基本付加ヨーモーメント設定部51で実行される基本付加ヨーモーメント設定ルーチンを示し、まず、S701で、ヨーレート/ハンドル角ゲイン演算部63は、前述の(17)式によりヨーレート/ハンドル角ゲインGγを演算する。
次に、S702に進み、ヨーレート感応ゲイン演算部64は、前述の(18)式によりヨーレート感応ゲインKγを演算する。
次いで、S703に進み、横加速度/ハンドル角ゲイン演算部61は、前述の(15)式により、横加速度/ハンドル角ゲインGyを演算する。
次に、S704に進み、横加速度偏差感応ゲイン演算部62は、前述の(16)式により、横加速度偏差感応ゲインKyを演算する。
次いで、S705に進み、基準横加速度演算部65は、前述の(20)式により、基準横加速度(dyr/dt)を演算する。
次に、S706に進み、横加速度偏差演算部66は、前述の(28)式により、横加速度偏差(dye/dt)を演算する。
そして、S707に進んで、基本付加ヨーモーメント演算部67は、前述の(29)式により、基本付加ヨーモーメントMzθを演算して、ルーチンを抜ける。
図13は、前述のS604による、車体すべり角速度感応ゲイン設定部54で実行される車体すべり角速度感応ゲイン設定ルーチンを示し、まず、S801で、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0を、例えば、図19に示すマップを参照して設定する。
次に、S802に進み、前述の(31)式により、復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lを演算する。
次いで、S803に進んで、S802で設定した復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lが1以下か否か判定し、1以下であれば、そのままS805に進み、1を超えているのであればS804に進んで、復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lを1としてからS805に進む。
S805では、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0と復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lとを比較して、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0が復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lより小さいのであれば、S806に進んで基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0を車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定して、ルーチンを抜ける。
逆に、基本車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)0が復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)L以上である場合は、復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lを車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)として設定して、ルーチンを抜ける。
図14は、前述のS105による、第3のトランスファトルク演算部35で実行される第3のトランスファトルク演算ルーチンを示し、まず、S901で、現在、タックイン防止制御が実行中か否か判定する。
S901の判定の結果、タックイン防止制御が実行中ではないと判定された場合は、S902に進み、アクセル開度θACCが0か否か判定し、アクセル開度θACCが0の場合は、S903に進み、前回のアクセル開度θACCが0より大きかったか否か判定し、0より大きかった場合は、S904に進み、実横加速度(dy/dt)が設定値(dy/dt)Doffより大きいか否か判定し、設定値(dy/dt)Doffより大きい場合はS905に進んで、車速Vが設定値VDoffより大きいか否か判定して、車速Vが設定値VDoffより大きい場合はS906に進んで、タックイン防止制御を実行させ、ルーチンを抜ける。この際のタックイン防止トランスファトルクTLSDDは、前述の(41)式により演算される。
また、上述のS902〜S905の何れか一つでも成立しない場合は、そのままルーチンを抜ける。
一方、上述のS901でタックイン防止制御実行中と判定した場合は、S907に進み、今回のアクセル開度が0より大きいか否か判定する。この判定の結果、今回のアクセル開度が0より大きいのであれば、S909に進んで、タックイン防止制御を解除とし、タックイン防止トランスファトルクTLSDDを0としてルーチンを抜ける。
また、S907の判定の結果、今回のアクセル開度が0以下の場合は、S908に進み、車速Vが設定値VDoffより小さいか否か判定する。
このS909の判定の結果、車速Vが設定値VDoffより小さいのであれば、S909に進んで、タックイン防止制御を解除とし、タックイン防止トランスファトルクTLSDDを0としてルーチンを抜ける。
逆に、車速Vが設定値VDoff以上であればS906に進んで、タックイン防止制御を続行させる。
このように本発明の実施の形態によれば、入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを求める際のエンジントルクTEGの推定において、エンジントルクの増加減に対して別々の時定数を用いることにより、トランスファクラッチ15への入力トルクTCDをよりエンジンの過渡特性に合わせて適切に推定でき、アクセルON時の入力トルクTCDの立ち上がりを若干遅らせて、回頭性を向上させることが可能となる。
また、入力トルク感応トランスファトルクTLSDIでは、トランスファクラッチ15に対するトランスファトルクTLSDを求める際に、入力トルクTCDが大きい領域では、第2の入力トルク感応トランスファトルクTLSDI2を加えることにより変化量を変えているので、低μ路限界走行時に差動制限力が不足しないように、より大きなトランスファトルクを付加するようになっており、安定したグリップ力を得ることが可能である。
また、入力トルク感応トランスファトルクTLSDIを求める際においても、実横加速度(dy/dt)に対して、基準とする3本のトルク線を用意することにより、低μ路走行、高μ路走行での適合を簡潔に行うことが可能となる。
更に、横加速度を加味した舵角フィードフォワード+ヨーレートフィードバック制御で演算する舵角/ヨーレート感応トランスファトルクTLSDPには、復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)Lで制限する車体すべり角速度感応ゲインKV(dβ/dt)を用いるようにしているので、車両の不安定な状況や過渡的な状況において回頭モーメントが不必要に付加されることを確実に防止して精度の良い安定した前後駆動力配分が行える。
また、ドライバのアクセル操作によるタックイン現象を検出して、フィードフォワード制御によりタックイン現象を有効に防止することが可能となっている。
車両全体の駆動系の概略構成を示す説明図 駆動力配分制御部の機能ブロック図 第1のトランスファトルク演算部の機能ブロック図 第2のトランスファトルク演算部の機能ブロック図 基本付加ヨーモーメント設定部の機能ブロック図 駆動力配分制御プログラムのフローチャート 第1のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート エンジントルク演算ルーチンのフローチャート 第1の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンのフローチャート 第2の入力トルク感応トランスファトルク演算ルーチンのフローチャート 第2のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート 基本付加ヨーモーメント設定ルーチンのフローチャート 車体すべり角速度感応ゲイン設定ルーチンのフローチャート 第3のトランスファトルク演算ルーチンのフローチャート 入力トルク感応トランスファトルクの特性図 実横加速度に対する基準横加速度を飽和させる疑似横加速度の特性説明図 横加速度/ハンドル角ゲインとハンドル角を乗算した値に対する基準横加速度の特性説明図 車速に対する低速時車速感応ゲインの特性説明図 車体すべり角速度に対する基本車体すべり角速度感応ゲインの特性説明図 復帰勾配制限付き車体すべり角速度感応ゲインによる制限の説明図 設定される車体すべり角速度感応ゲインの一例を示すタイムチャート 車速と実横加速度に対する高速時車速感応ゲインの特性説明図
符号の説明
3 トランスファ
14fl,14fr,14rl,14rr 車輪
15 トランスファクラッチ(クラッチ手段)
30 駆動力配分制御部
31 トランスファクラッチ駆動部
33 第1のトランスファトルク演算部(第1のトルク演算手段)
34 第2のトランスファトルク演算部(第2のトルク演算手段)
35 第3のトランスファトルク演算部
36 トランスファトルク演算部(制御手段)

Claims (3)

  1. 前後輪間の駆動力配分を可変するクラッチ手段と、
    エンジンからの入力トルクに応じて上記クラッチ手段の締結トルクを第1の締結トルクとして演算する第1のトルク演算手段と、
    車両に付加するヨーモーメントを推定し、該ヨーモーメントに応じて上記クラッチ手段の締結トルクを第2の締結トルクとして演算する第2のトルク演算手段と、
    少なくとも上記第1の締結トルクと上記第2の締結トルクを基に上記クラッチ手段を制御する制御手段とを備えた車両の前後駆動力配分制御装置において、
    上記第2のトルク演算手段は、車体すべり角速度に応じて上記ヨーモーメントを補正するものであって、上記ヨーモーメントの絶対値を大きくする方向への補正には、前回の補正の結果に基づいて予め制限を設けることを特徴とする車両の前後駆動力配分制御装置。
  2. 上記第2のトルク演算手段は、車速が予め設定した第1の速度値より小さい極低速走行と判断できる場合は、上記ヨーモーメントの絶対値を小さく補正することを特徴とする請求項1記載の車両の前後駆動力配分制御装置。
  3. 上記第2のトルク演算手段は、車速が予め設定した第2の速度値より大きい高速走行であって、且つ、実際に車両に生じている横加速の絶対値が予め設定した値より小さい場合には、上記ヨーモーメントの絶対値を小さく補正することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の前後駆動力配分制御装置。
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