JP2009119998A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置

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Abstract

【課題】ステアリングの操作をアシストするモータの駆動電流の向き(極性)をモータの駆動アームの向きから決定する簡単かつ安価で実用的な駆動電流検出により、前記駆動電流をフィードバック制御してアシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置において、前記駆動電圧の向きが切り替わるときの前記駆動電流の向きの検出誤りに起因する誤ったフィードバック制御を防止し、不快なトルク変動の発生を防止する。
【解決手段】フードバック制御によりモータ1の駆動電圧の向きを切り替える駆動電圧の操作が発生したときに、電圧出力器7Bにより前記駆動電圧量によって駆動電流の向きが逆転するか否かを予測し、この予測の結果に基づき、電圧出力器7Bによりモータ駆動回路9を制御して前記駆動電流の向きを制御し、駆動電流の向きの検出の誤りに起因する誤ったフィードバック制御を防止する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に関する。
従来、この種の電動パワーステアリング装置(以下、EPSという)の制御系は、概略図3に示すように構成され、ドライバのステアリングの操作をモータ(直流モータ)1の回転駆動によってアシストする。
すなわち、ドライバのステアリングの操作トルクをトルクセンサ2により検出し、その検出トルクをA/D変換してマイクロコンピュータ構成の制御ECU3Aの電流目標値設定器4に入力する。なお、前記検出トルクはその力の方向(正、逆)の情報を含む。
電流目標値設定器4は、例えばトルクセンサ2の検出トルクに対するモータ1の駆動電流の目標値の特性マップ又は演算式を保持し、入力された検出トルクに応じたモータ1の駆動電流の目標値Irのデータを減算器5に出力する。
減算器5は目標値Irと後述する駆動電流の検出値Ixとの誤差ΔI(=Ir−Ix)を演算し、誤差ΔIのデータを制御器6に出力する。
制御器6はモータ1の駆動電流制御器を形成し、誤差ΔIに周知のPI制御又はPID制御)を施し(Pは比例、Iは積分、Dは微分)、フィードバック制御の操作量として、検出値Ixを目標値Irに制御するモータ1の駆動電圧値を求め、そのデータを電圧出力器7Aに出力する。
電圧出力器7Aは入力された駆動電圧値に対応する電圧制御出力として、例えばPWM制御出力を形成し、この制御出力を駆動ECU8のモータ駆動回路9に出力する。
モータ駆動回路9は例えば図4に示すように、電源端aとアース端bとの間に、一方の2アーム(ブリッジ辺)9a、9bの直列回路と、他方の2アーム9c、9dの直列回路とを並列接続し、各アーム9a〜9dに半導体スイッチQ1〜Q4を設けて、いわゆるフルブリッジに形成される。
なお、各半導体スイッチQ1〜Q4は電力用FET、IGBT、電力用トランジスタ等からなり、それぞれ放電路用のダイオードD1〜D4が逆並列に接続される。
また、モータ1の一端はアーム9a、9bの接続点αに接続され、モータ1の他端はアーム9c、9dの接続点βに接続される。
そして、前記PWM制御出力は各アーム9a〜9dの半導体スイッチQ1〜Q4の制御端子(ゲート端子)にパルス入力されるPWMの4相出力G1〜G4であり、それらのハイレベル(H)、ローレベル(L)に基づく半導体スイッチQ1〜Q4のオン、オフの組み合わせにより、モータ1に印加される駆動電圧が操作されて可変制御される。
前記4相出力G1〜G4は、モータ1に印加する駆動電圧に応じて、毎制御周期τの各単位周期Δτに例えば図5に示すようにパルス幅(ハイレベルの幅)が変化する。なお、図5は右回転駆動時に選択される2アーム9a、9dの半導体スイッチQ1、Q4の2相出力G1、G4の一例であり、左回転駆動時に選択される2アーム9b、9cの半導体スイッチQ2、Q3の2相出力G2、G3も同様にパルス幅が変化する。
すなわち、右回転駆動時(正回転駆動時)は対向する2アーム9a、9dが駆動アームに選択され、設定された毎制御周期τの2相出力G1、G4のハイレベルにより半導体スイッチQ1、Q4がオンして右回転の向き(極性)の駆動電圧がモータ1に印加され、図4の矢印線iaに示す向きの駆動電流がモータ1を通流してモータ1が右回転駆動される。
また、左回転時(正回転時)は対向する2アーム9b、9cが駆動アームに選択され、毎制御周期τの2相出力G2、G3のハイレベルにより半導体スイッチQ2、Q3がオンして左回転の向きの駆動電圧がモータ1に印加され、図4の矢印線ibに示す向きの駆動電流がモータ1を通流してモータ1が左回転駆動される。
制御周期τは、制御ECU3Aにプログラム設定された制御器6の制御出力の更新周期である。この制御周期τは、電圧出力器7Aの50μs程度のPWM制御の微小な単位周期Δτと同じであってもよいが、制御系全体の追従性等を考慮して、実用的には、例えば10単位周期10×Δτ(500μs)に設定される。そして、毎制御周期τの切り替えのときに、最新の目標値Ir、検出値Ixに基づく誤差ΔIにより、制御器6の制御出力が更新される。
つぎに、モータ1を通流する駆動電流(モータ電流)は、例えば図4の抵抗R1が形成する図3のモータ電流検出器10により検出され、その検出値Ixのアナログ出力が制御ECU3AのA/D変換器11によりサンプリングされてデジタルのデータに変換され、検出値IxのデータがA/D変換器11から減算器5に供給される。
上記構成のEPSは、減算器5から、制御器6、電圧出力器7A、モータ駆動回路9、モータ1、モータ電流検出器10、A/D変換器11を介して減算器5に戻る閉ループのデジタルのフィードバック制御により、ステアリングの操作トルクに応じたモータ1の駆動電流の目標値Irと、モータ1の駆動電流(制御量)の検出値Ixとの誤差ΔIに基づいて、モータ1の駆動電圧(操作量)を制御し、前記駆動電流を目標値Irに引き込み、必要なアシストトルクを発生しようとするものである。
しかしながら、モータ電流検出器10は、図6に示すように、右回転駆動時及び左回転駆動時に抵抗R1を同じ向きに駆動電流が通流し、モータ1の駆動方向に関連する駆動電流の向き(極性)を検出できない。そのため、モータ電流検出器10が出力する検出値Ixは、駆動電流の大きさ(量)を表わす絶対値であり、前記向きの符号情報を含まない。
したがって、モータ電流検出器10の検出値Ixによってはモータ1の現在の駆動方向が分からず、図3のEPSは、実線の構成だけでは誤差ΔIのデータに基づいてモータ1の駆動方向を切り替えられない。
ところで、この種のEPSにおいて、ステアリングのすばやい操作にも対応するため、トルクセンサ2の操作トルクの極性の変化からモータ1の回転方向を切り替える代わりに、概略、図3の制御器6の出力(制御信号)のレベルからモータ1の駆動方向を判別する駆動方向判別手段を設け、この駆動方向判別手段の判別結果と、制御器6の出力とに基づき、電圧出力器7Aに相当するPWMの電圧出力器により、前記判別結果にしたがってモータ1の駆動方向を切り替えることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−175414号公報(特許請求の範囲、段落[0049]−[0053]、[0064]、図2等)
前記特許文献1に記載の駆動方向判別手段は、モータ1の駆動電流の検出信号が、駆動電流の向きに応じて極性が変わる信号であることを前提として、モータ1の駆動方向を判別していると考えられる。
この場合、図4のモータ電流検出器10のようにモータ駆動回路9のアース端bと車両ボディーのアース点との間に抵抗R1を挿入してモータ1の駆動電流を検出するのではなく、図7に示すように、接続点α、β間に、モータ1に直列に抵抗R2を設け、この抵抗R2の端子間電圧によってモータ1の駆動電流を検出する必要がある。
しかしながら、図7の抵抗R2は両端がいわゆる浮動電位になるので、抵抗R2の端子間電圧は、モータ1の駆動電流によって変動するだけでなく、モータ1の駆動電圧によっても変動する。
したがって、実際には、図7の抵抗R2の端子間電圧からモータ1の駆動方向及び駆動電流の大きさを確実に検出することは困難であり、しかも、複雑で高価な検出回路等を要し、前記特許文献1に記載のEPSは実用的でない。
一方、図3のEPSにおいて、A/D変換器11の後段に同図に破線で示す符号付加器12を設け、この符号付加器12により電圧出力器7Aの制御出力からモータ1の駆動アームの向き(極性)を検出し、検出した極性の符号情報を検出値Ixに付加して減算器5に送る。そして、減算器5により目標値Irと検出値Ixの符号情報の異同を考慮して誤差ΔIを算出する。さらに、この誤差ΔIに基づき、毎制御周期τの切り替えのときに、制御器6により、向き(極性)を含む駆動電圧の制御指令の駆動電圧値をこれから印加する更新後の駆動電圧V(t2)として求める。そして、電圧出力器7Aにより、制御出力中の更新前の駆動電圧V(t1)と、求められた更新後の駆動電圧V(t2)の正、負の向きから、つぎの表1に示すようにしてモータ駆動回路9の通電する駆動アームを選択し、モータ1の駆動を制御することが考えられる。
Figure 2009119998
なお、表1において、V(t1)>0、V(t2)>0はアーム9a、9dを選択する右回転駆動であり、V(t1)<0、V(t2)<0はアーム9b、9cを選択する左回転駆動である。また、V(t2)=0はアーム9a〜9dのいずれも選択しない状態(半導体スイッチQ1〜Q4が全てオフする駆動電圧が0Vの状態)である。
また、表1の条件の「V(t2)≦0」は駆動電圧V(t2)が負又は0Vであることを示し、「V(t2)≧0」は駆動電圧V(t2)が正又は0Vであることを示す。
そして、表1のように制御すると、駆動電圧V(t1)、V(t2)の符号が異なる(反転する)ことを条件として、駆動アームが、アーム9a、9dからアーム9b、9c又はその逆に直ちに切り替えられ、モータ電流検出器10を用いた簡単、安価で実用的な駆動電流の検出構成でモータ1の駆動方向の切り替えが行なえる。
しかしながら、上述のように符号付加器12を設けて駆動電流の検出値Ixに符号を付加し、駆動電圧V(t1)、V(t2)の符号の異同からモータ1の駆動電圧の向きを切り替えると、モータ1の駆動電圧に対してその駆動電流が遅れ位相で変化するため、つぎに説明するように誤ったフィードバック制御が生じる問題がある。
すなわち、制御器6の制御出力が示すモータ1の駆動電圧が図8(a)に示すように変化する場合、例えばtk−1時の駆動電圧の更新において、更新前の駆動電圧V(t1)である駆動電圧Vtk−2と、更新後の駆動電圧V(t2)である駆動電圧Vtk−1との符号の異同に基づき、図8(b)の●印に示すようにモータ1の駆動方向の切り替え(駆動アームの切り替え)が発生する。
この駆動方向の切り替えに基づき、電圧出力器7Aの更新されたPWM制御出力にしたがってモータ駆動回路9の駆動アームを切り替え、モータ1の駆動電圧の向きを実際に切り替えて反転したとしても、tk時のモータ1の駆動電流は、図8(c)に示すように、tk−1時の向きと同じ向きに流れ続けることがある。
このとき、符号付加器12は、更新後の駆動電圧V(t2)である駆動電圧Vtk−1の符号に基づき、検出値Ixに誤って反転した向きの符号を付けてしまう(●印)。
その結果、モータ1の駆動電流と実電流に大きな変化(変動)が生じ、フードバック制御に不都合が生じるため、ステアリングを操作するドライバに不快なトルク変動を感じさせる。
本発明は、ステアリングの操作をアシストするモータの駆動電流の向き(極性)をモータの駆動アーム方向から決定する簡単かつ安価で実用的な駆動電流検出により、前記駆動電流をフィードバック制御してアシストトルクを発生するEPSにおいて、前記駆動電圧の向きが切り替わるときの前記駆動電流の向きの検出誤りに起因する誤ったフィードバック制御を防止し、不快なトルク変動の発生を防止することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明のEPSは、ステアリングの操作をアシストするモータと、該モータを通電駆動する半導体ブリッジ構成の駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、前記ステアリングの操作トルクに応じた前記モータの駆動電流の目標値と、前記モータの駆動電流の検出値との誤差に基づき、前記駆動部を通して前記モータに印加する駆動電圧を周期的に操作し、前記駆動電流をフィードバック制御するEPSにおいて、前記制御部に、前記駆動電圧の操作毎に、操作前の前記駆動電流の電流値及び操作後の前記駆動電圧の電圧値に基づき、前記駆動電圧の操作によって前記モータを通流する電流の向きが逆転するか否かを予測する電流逆転予測手段と、前記電流逆転予測手段の予測結果に基づいて前記駆動部を制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
そして、前記駆動制御手段は、前記電流逆転予測手段が逆転を予測するまで前記駆動部の通電する駆動アームの切り替えを禁止し、前記電流逆転予測手段が逆転を予測したときに前記駆動部の駆動アームを切り替えて前記駆動電流の向きを逆転する構成であることが、実用的で好ましい(請求項2)。
請求項1の本発明のEPSの場合、ステアリングの操作をアシストするモータの駆動電流のフードバック制御中に前記駆動電圧の向きを切り替える駆動電圧の操作が発生すると、電流逆転予測手段により、前記駆動電圧を切り替えることによってモータの駆動電流の向きが逆転するか否かが予測され、この予測の結果に基づき、駆動制御手段により駆動部が制御されて前記モータの駆動電流の向きが制御される。
そのため、駆動電圧の極性を切り替えても前記モータの駆動電流の向きが逆転しないときには、駆動アーム極性(向き)を切り替えないように駆動部を制御し、駆動電流の向きの検出誤りに起因する誤ったフィードバック制御を防止し、上述の符合付加器を設けた簡単かつ安価で実用的な駆動電流の検出によっても駆動電流値の大きな変化が生じないようにして、不快なトルク変動の発生を防止することができる。
そして、駆動制御手段を請求項2の構成に形成し、電流逆転予測手段が駆動電流の逆転を予測するまでは駆動制御手段による駆動部の通電アームの切り替えを禁止し、電流逆転予測手段が駆動電流の逆転を予測したときに駆動制御手段による駆動部の通電アームの切り替えを行うことが、実用的で好ましい。
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その一実施形態について、図1及び図2にしたがって詳述する。
図1は車両に搭載されたEPSのモータ駆動電流制御のブロック図、図2は図1の電圧出力器7Bによるモータ駆動回路9の駆動アームの切り替え制御のフローチャートである。
図1において、図3と同一符号は同一のものを示す。図1のEPSが図3の従来のEPSと異なる点は、図3の制御ECU3Aに代えて、本発明の制御部を形成するマイクロコンピュータ構成の制御ECU3Bを備えた点である。
この制御ECU3Bが図3の制御ECU3Aと異なる点は、A/D変換器10と減算器5との間に符号付加器12を設け、図3の電圧出力器7Aに代えて以下に説明する構成の電圧出力器7Bを設けた点である。
なお、図1の制御ECU3Bのその他の構成及び、駆動ECU8のモータ駆動回路9、モータ電流検出器10の構成は、図3と同じであり、モータ駆動回路9が本発明の駆動部を形成する。
また、モータ電流検出器10から出力される検出値Ixはモータ1の駆動電流の大きさ(量)を示し、A/D変換器11によってデジタルデータに変換される。
そして、A/D変換器11から出力された検出値Ixが入力される符合付加器12は、例えば電圧出力器7BのPWM制御の上述した4相出力G1〜G4の構成の制御出力から駆動アームの選択を認識してモータ1の駆動アーム極性(向き)を検出し、この検出結果に基づき、A/D変換器11から入力されたデジタルデータの検出値Ixに、その正、負の向きの符号を付加して出力する。
電圧出力器7Bは、制御器6の制御出力及び、符号付加器12から出力された符号付きの検出値Ixが入力され、ソフトウエア処理によって本発明の電流逆転予測手段及び駆動制御手段を形成し、通常は、制御器6の制御出力の更新に伴い、図3の電圧出力器7Aと同様、制御周期τ毎にその制御周期τにおける各単位周期Δτのディユーティー値等を決めるPWM制御出力が更新される。
電流逆転予測手段は、毎制御周期τに、符合付加器12から出力された更新前の駆動電流I(t2)及び、制御器6の制御出力に基づく更新後の駆動電圧V(t2)により、モータ1の駆動電圧を操作して更新後の駆動電圧V(t2)に更新した場合に、更新後の駆動電流I(t3)の向きが更新前の向きから逆転するか否かを予測する。
そのため、前記電流逆転予測手段は、毎制御周期τの始めに、符合付加器12から出力された符号付きの検出値Ixをモータ1の更新前の駆動電流(t2)として検出する。また、この符号付きの検出値Ixに基づく制御器6の制御出力にしたがって電圧出力器7Bがモータ駆動回路9に更新出力しようとするPWM制御出力により、モータ1の更新後の駆動電圧V(t2)を、その向きを含めて検出する。
ところで、電圧出力器7BのPWM制御出力に基づくモータ駆動回路9の上述した駆動アームの選択等により、モータ1に印加される駆動電圧は制御周期τの間隔で更新されて変化する。このとき、モータ1をコイル(インダクタンス)Lmと抵抗Rmの直列接続の等価回路とすると、コイルLmはエネルギを蓄積するが、抵抗Rmはエネルギを蓄積できないため、駆動電圧の変化に対して、モータ1のコイルLmの蓄積エネルギのみが過渡応答に関与する。
そして、駆動電圧を切り替えた更新直後のモータ1のコイルの電圧Vmは、更新後の駆動電圧V(t2)と更新前の駆動電流I(t2)により、つぎの数1の(1)式で示される。
Figure 2009119998
また、モータ1の駆動電圧を更新前の駆動電圧V(t1)から更新後の駆動電圧V(t2)に切り替えた場合、それから1制御周期τ後の駆動電流、すなわち、更新後の駆動電圧V(t2)の印加に基づく更新後の駆動電流I(t3)は、更新前の駆動電流I(t2)及び更新後の駆動電圧V(t2)に基づき、つぎの数2の(2)式の演算から求めて予測することができる。
Figure 2009119998
さらに、(2)式の左辺を展開すると、つぎの数3の(3)式が得られる。
Figure 2009119998
そこで、電流逆転予測手段は、毎制御周期τにおいて、モータ1に印加する駆動電圧を駆動電圧V(t1)から駆動電圧V(t2)に切り替えて更新する前に、(2)式又は(3)式の演算により、駆動電圧V(t1)から駆動電圧V(t2)に切り替えたとして、それから1制御周期τ後の更新後の駆動電流I(t3)を求め、更新前の駆動電流I(t2)と更新後の駆動電流I(t3)との正、負の符号が異なるか否かによって、モータ1を通流する駆動電流の向きが逆転するか否かを予測する。すなわち、駆動電流I(t2)、I(t3)が、「I(t2)>0かつI(t3)<0」又は「I(t2)<0かつI(t3)>0」の関係になり、駆動電流I(t2)、I(t3)の符合が異なれば逆転すると予測し、駆動電流I(t2)、I(t3)の符合が同じであれば逆転しないと予測する。なお、駆動電流I(t2)、I(t3)のいずれか一方が0になるときにも、駆動電流I(t2)、I(t3)の符合が異なって逆転すると予測しても問題はない。
つぎに、図8(a)〜(c)を参照してtk−1時における電流逆転予測手段の上記逆転の具体的な予測の処理を説明する。
tk−1時において、まず、A/D変換器11のサンプリングによって駆動電流の最新の検出値Ixが得られると、この検出値Ixが符合付加器12に取り込まれる。
つぎに、1制御周期τ前のtk−2時に更新された電圧出力器7Bの現在のPWM制御出力に基づき、符合付加器12は、モータ1に印加中の更新前の駆動アーム極性の符号を、取り込んだ検出値Ixに付加し、符号を付加した検出値Ixをフィードバック電流値Ix(tk−1)として形成し、このtk−1時の符号付きのフィードバック電流値Ix(tk−1)を、更新前の駆動電流I(t2)として減算器5に出力する。
つぎに、減算器5は目標値Irとフィードバック電流値Ix(tk−1)の符号情報の異同を考慮して誤差(偏差)ΔIを算出する。
そして、電圧出力器7Bの電流逆転予測手段は、誤差ΔIに基づく制御器6の制御出力により、これからモータ1に印加しようとする更新後の駆動電圧V(t2)を符号付きで求め、駆動電流Itk−1(更新前の駆動電流I(t2))と、駆動電圧Vtk−1(更新後の駆動電圧V(t3))とに基づく(2)式又は(3)式の演算により、駆動電圧Vtk−1を印加することによって、1制御周期τ後のtk時に、モータ1の駆動電流の向きが反転し、A/D変換器11によってサンプリングされるモータ1の駆動電流Itk(更新後の駆動電流I(t3))が、駆動電流Itk−1(更新前の駆動電流I(t2))から逆転するか否かを予測する。
駆動制御手段は、電流逆転予測手段の予測結果に基づいてモータ駆動回路9を制御する。具体的には、電流逆転予測手段が更新後の駆動電流I(t3)の符号の逆転を予測するまでモータ駆動回路9の駆動アームの切り替えを禁止し、電流逆転予測手段が駆動電流の逆転を予測したときにモータ駆動回路9の駆動アームを切り替えてモータ1を実際に通流する駆動電流の向きを逆転する。
このように制御すると、毎制御周期τの始めにおいて、駆動電圧V(t2)に更新しても更新後の駆動電流I(t3)の向きが変わらない場合は、駆動アームの切り替えが禁止されて符号付加器12により検出値Ixに付加される符号が更新後の駆動電流I(t3)の実際の向きに一致する。
そして、駆動電流の向きの誤検出のおそれがある制御周期τにモータ駆動回路9の駆動アームを更新前の駆動アームに保持することにより、ステアリングのアシストの向きを反転するときに、モータ1の駆動電流は、図8(a)の各○印を結ぶ実線に沿って次第に低下し、電流逆転予測手段が逆転を予測する制御周期τが到来したときにモータ駆動回路9の駆動アームを切り替えることにより、モータ1の駆動電流は、図8(c)の各○印を結ぶ実線のように変化し、同図(c)の黒丸印の駆動電流Itkのような誤った向き(極性)の検出が防止され、誤ったフィードバック制御を防止してモータ1の駆動電流の大きな変化が生じないようにして不快なトルク変動の発生を防止することができる。
そこで、前記駆動制御手段は、更新後の駆動電圧V(t2)の向き、更新前のモータ1の駆動方向(駆動電圧V(t1)の向き)及び、前記電流逆転予測手段の予測結果を条件として、電圧出力器7BのPWM制御出力の駆動アームの選択を、例えばつぎの表2に示すように制御する。
Figure 2009119998
具体的には、図2のステップS1〜S8に示すように動作し、制御周期τの切り替わりのタイミング(tk−1時等)になる毎に、ステップS1からステップS2に移行し、駆動電圧V(t1)からモータ1の更新前の駆動方向(現在の駆動方向)が右方向か否かを判別する。
そして、前回の駆動方向が右であれば、ステップS2からステップS3に移行して差ΔIから決定される更新後の駆動電圧V(t2)が左駆動(V(t2)≦0)か否かを判別し、この判別結果がV(t2)≦0であれば、ステップS4に移行して電流逆転予測手段の予測結果が「逆転する」になっているか否かを判別し、予想結果が「逆転する」になっているときにのみステップS5に移行し、モータ駆動回路9の「駆動オフ」(V(t2)=0)又は「駆動アーム切り替え」(V(t2)<0)の駆動アーム切り替えの制御を行ない、「逆転する」になっていなければステップS4からステップS6に移行してモータ駆動回路9の駆動アームを更新前と同じアームに保持する。なお、「駆動オフ」は図4の半導体スイッチQ1〜Q4を全てオフに保持する制御である。
一方、ステップS2において更新前の駆動方向が右でなければ、ステップS2からステップS7に移行し、駆動電圧V(t1)からモータ1の更新前の駆動方向が左方向か否かを判別する。
そして、更新前の駆動方向が左であれば、ステップS7からステップS8に移行し、差ΔIから決定される更新後の駆動電圧V(t2)が右回転のV(t2)≧0か否かを判別し、この判別結果がV(t2)≧0であれば、ステップS4に移行して電流逆転予測手段の予測結果が「逆転する」になっているか否かを判別し、予想結果が「逆転する」になっているときにのみステップS5に移行してモータ駆動回路9の駆動アーム切り替えの制御を行ない、「逆転する」になっていなければステップS4からステップS6に移行してモータ駆動回路9の駆動アームを前回と同じアームに保持する。
以上のように構成された本実施形態のEPSは、毎制御周期τに、電圧出力器7Bの電流逆転予測手段が、更新後の駆動電圧V(t2)の印加によって1制御周期τ後のモータ1の更新後の駆動電流I(t3)の向きが逆転すると予測することを、条件の1つとしたため、モータ電流検出器10によりモータ1の駆動電流の大きさ(量)を検出し、符号付加器12によりモータ電流検出器10の更新前の駆動電流I(t2)の検出値Ixに更新前の駆動方向(極性)と同じ向き(極性)の符号を付ける、簡単かつ安価で実用的な駆動電流の検出構成でモータ1の駆動電流をフィードバック制御する際に、検出値Ixの符号からのモータ1の駆動電流の向き(極性)の誤検出に起因する誤ったフィードバック制御が防止され、モータ1の駆動電流の大きな変化が生じないようにして不快なトルク変動の発生を防止することができる。
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
例えば、前記実施形態においては、電流逆転予測手段により、(2)式又は(3)式の演算によってモータ1を通流する駆動電流の向きが逆転するか否かを予測したが、(2)式又は(3)式の演算をする代わりに、駆動電流I(t2)、駆動電圧V(t2)の閾値のマップデータを記憶しておき、駆動電流I(t2)、駆動電圧V(t2)の2変数が閾値以下か否かによってモータ1を通流する駆動電流の向きが逆転するか否かを予測するようにしてもよい。
すなわち、(3)式は定数A、Bを用いると、駆動電流I(t2)、駆動電圧V(t2)を変数とするつぎの数4の(4)式で表すことができる。
Figure 2009119998
この(4)式において、I(t2)≧0であれば、I(t3)<0が切り替えの条件の1つであり、このとき、(4)式の左辺「0>」とすることで、V(t2)<−(A/B)×I(t2)となり、I(t3)<0、かつ、V(t2)<−(A/B)×I(t2)の条件から、駆動電流I(t2)、駆動電圧V(t2)の2変数の閾値が求まり、この閾値の2次元のデータマップを記憶しておき、実際に得られた駆動電流I(t2)、駆動電圧V(t2)の座標が前記データマップの閾値以下の領域に属するか否かによってモータ1を通流する駆動電流の向きが逆転するか否かを予測するようにしてもよい。
つぎに、モータ駆動回路9やモータ電流検出器10の構成や制御方式等はどのようであってもよく、例えば、モータ電流検出器10は、図4の電源端aとバッテリーの端子との間に抵抗R1と同様の抵抗を設けて形成してもよい。また、モータ電流検出器10は抵抗で形成されるものに限られるものではない。さらに、モータ駆動回路9はフルブリッジの構成でなくてもよく、その制御がPWM方式でなくてもよい。
つぎに、モータ1の制御周期τのような定数は実施形態に限られるものではなく、実験等に基づいて適当に設定してよいのは勿論である。また、制御ECU3Bの各部はハードウエアで形成してもよいのは勿論である。
つぎに、前記実施形態においてはデジタルのフィードバック制御を行なうEPSに適用したが、本発明はアナログのフィードバック制御を行なうEPSに適用することも可能でる。また、本発明は、符合付加器12を設けない駆動電流検出構成、例えば、図7の駆動電流検出構成の場合にも同様に適用することができる。
そして、本発明は、種々の車両のEPSに適用することができる。
この発明の一実施形態のブロック図である。 図1の動作説明用のフローチャートである。 従来例のブロック図である。 図3のモータ駆動回路の結線図である。 図4の4相出力の波形例の説明図である。 図3のモータ駆動回路の駆動電流の説明図である。 他のモータ駆動回路の駆動電流の説明図である。 モータ駆動回路の制御の説明図である。
符号の説明
1 モータ
3B 制御ECU
7B 電圧出力器
9 モータ駆動回路
Ir 目標値
Ix 検出値

Claims (2)

  1. ステアリングの操作をアシストするモータと、該モータを通電駆動する半導体ブリッジ構成の駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、前記ステアリングの操作トルクに応じた前記モータの駆動電流の目標値と、前記モータの駆動電流の検出値との誤差に基づき、前記駆動部を通して前記モータに印加する駆動電圧を周期的に操作し、前記駆動電流をフィードバック制御する電動パワーステアリング装置において、
    前記制御部に、
    前記駆動電圧の操作毎に、操作前の前記駆動電流の電流値及び操作後の前記駆動電圧の電圧値に基づき、前記駆動電圧の操作によって前記モータを通流する電流の向きが逆転するか否かを予測する電流逆転予測手段と、
    前記電流逆転予測手段の予測結果に基づいて前記駆動部を制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記駆動制御手段は、前記電流逆転予測手段が逆転を予測するまで前記駆動部の通電する駆動アームの切り替えを禁止し、前記電流逆転予測手段が逆転を予測したときに前記駆動部の通電アームを切り替えて前記駆動電流の向きを逆転する構成であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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