本明細書において、「積層」または「重なる」の表現は、もの同士が直接接触している状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方を他方に投影した際に空間的に重なる状態をも指す場合がある。また、「〜の上(〜の下)」の表現も、もの同士が直接接触して一方が他方の上(下)に配置されている状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方が他方の上(下)に配置されている状態にも使用する場合がある。さらに、「〜の後(前、先)」との表現は、ある事象が別の事象の直後(前)に発生する場合にも、ある事象が別の事象との間に第三の事象を挟んだ後(前)発生する場合にも、どちらにも使用する。また、「接する」の表現は、「物と物が直接的に接触している場合」に加えて、本発明の趣旨に適合する限りにおいて、「物と物が直接的には接触していなくても、第三の部材を介して間接的に接している場合」、「物と物が直接的に接触している部分と、第三の部材を介して間接的に接している部分が混在している場合」などを指す場合もある。
さらに、本発明において、「薄膜結晶成長」とは、いわゆる、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマアシストMBE、PLD(Pulsed Laser Deposition)、PED(Pulsed Electron Deposition)、VPE(Vapor Phase Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法等の結晶成長装置内における薄膜層、アモルファス層、微結晶、多結晶、単結晶、あるいはそれらの積層構造の形成に加えて、その後の薄膜層の熱処理、プラズマ処理等によるキャリアの活性化処理等も含めて薄膜結晶成長と記載する。また、本発明において、「薄膜結晶層」とは、「薄膜結晶成長」によって形成された膜をいう。
また、本発明において、集積型発光装置(集積型化合物半導体発光装置)は、あらゆる方向へ光を取り出すことができ、後述する光取り出し材料や絶縁層の構造を適宜変更することで、配光分布も任意に調整することができる。本発明では、集積型発光装置における方向を説明するのに、「第1の光取り出し方向」という用語を用いることがあるが、この用語は、配光分布とは無関係に、単に種々の光取り出し方向のうち1つの方向という意味で、方向を特定することのみに用いる。具体的には、「第1の光取り出し方向」は、集積型発光装置の第一導電型側電極および第二導電型側電極が設けられた側と反対側を意味する。
また、本発明の「集積型発光装置」は、複数の「発光ユニット」を有する「発光装置」を意味するが、単に「発光装置」と記載する場合もある。また、「集積型発光源」を単に「発光源」と記載する場合もある。
<<1. 本発明の全体の構造>>
本発明の集積型発光源は、集積型発光装置に、光取り出し材料が密着して付着している。集積型発光装置は、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを単位とする発光ユニットを複数個有している。
集積型発光装置中の複数の発光ユニットにおいて、薄膜結晶層は、同一工程により形成されたものである。これは、薄膜結晶層が同一の成長工程により同一の基板上に成長され、その後の加工(エッチングによる分離等)も実質的に同一工程により行われたことを意味する。従って、化合物半導体薄膜結晶層(以下、単に薄膜結晶層ということもある)を成長する際に使用した成長基板が存在しているときは、集積型発光装置内の発光ユニットは共通の成長基板上に形成されている。また、成長基板が存在しない場合であっても、化合物半導体薄膜結晶層の少なくとも一部の層が、発光ユニット間で共通して連続して存在しているときは、同一の成長基板上に、薄膜結晶成長により形成されたことを意味している。また、成長基板が存在せず、また薄膜結晶層が分断されて共通する薄膜結晶層も存在しない場合であっても、隣接する発光ユニットの薄膜結晶層が、連続する結晶層を分断して形成され、互いの距離に変化がないものは、一般に、集積化を目的として実質的に同一の工程により形成されたとみなすことができる。
本発明に使用される集積型発光装置は、後述するような新規な構成を有する発光装置である。また、集積型発光装置および/またはそれを構成する発光ユニットは、必要により絶縁膜、配線、その他必要な構成要素を有することができる。
本発明の集積型発光源は、光取り出し材料が集積型発光装置に直接接して付着している。
光取り出し材料は、主として、集積型発光源から空気に向けて出射される光の取り出し効率を高める目的で使用される。また、密着性に優れていることから、通常は放熱効率を高め、発光装置の温度上昇を低下させる効果も有している。
光取り出し材料の付着の態様の例として、
(i)前記集積型発光装置の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
(ii)前記集積型発光装置の第1の光取り出し方向側の面の下部に存在する空隙を充填および/または発光ユニットの側面を被覆している形態;
(iii)前記集積型発光装置の全体を覆っている形態;および
を挙げることができる。本発明では、これら(i)〜(iii)の少なくとも1つの形態を満たすように、光取り出し材料を集積型発光装置に付着させることが好ましい。
以下に、本発明において使用される集積型発光装置および光取り出し材料について説明する。
<<2. 集積型発光装置>>
本発明の集積型発光源に組み込まれる集積型発光装置には、好ましくは次のA、B、CおよびDの4タイプがある。
タイプA:
発光波長に対して透明な基板と、この基板上に形成された複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、前記基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、
第1の光取り出し方向が前記基板側であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離され、
さらに、前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層を有する
ことを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
タイプB:
発光波長に対して透明な基板と、この基板上に形成された複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、前記基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、
第1の光取り出し方向が前記基板側であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離されており、
1つの発光ユニット内には、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の前記第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は前記第一導電型半導体層で電気的に導通しており、
さらに、前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層を有する
ことを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
つまり、タイプBの集積型発光装置は、タイプAの集積型発光装置において、1つの発光ユニット内に、活性層構造、第二導電型半導体層および第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は第一導電型半導体層で電気的に導通していることを特徴とする集積型発光装置である。
タイプC:
複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを少なくとも有し、
第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見て前記第一導電型半導体層側方向であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離され、
さらに、前記第一導電型半導体層より前記第1の光取り出し方向側に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層と、前記光学結合層の前記第1の光取り出し方向側にバッファ層を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
つまり、タイプCの集積型発光装置は、タイプAの集積型発光装置において、必須の構成要素として基板を含んでいない。逆の見方をすれば、タイプAの集積型発光装置は、タイプCの集積型発光装置において、発光波長に対して透明な基板をさらに有し、この基板上に、第1の光取り出し方向が基板側となるように化合物半導体薄膜結晶層を有し、かつバッファ層が基板と第一導電型半導体層の間に設けられていることを特徴とする集積型発光装置である。
タイプD:
複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを少なくとも有し、
第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見て前記第一導電型半導体層側方向であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離されており、
1つの発光ユニット内には、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の前記第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は前記第一導電型半導体層で電気的に導通しており、
さらに、前記第一導電型半導体層より前記第1の光取り出し方向側に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層と、前記光学結合層の前記第1の光取り出し方向側にバッファ層を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
つまり、タイプDの集積型発光装置は、タイプCの集積型発光装置において、1つの発光ユニット内に、活性層構造、第二導電型半導体層および第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は第一導電型半導体層で電気的に導通していることを特徴とする集積型発光装置である。別の見方をすれば、タイプBの集積型発光装置は、タイプDの集積型発光装置おいて、発光波長に対して透明な基板をさらに有し、この基板上に、第1の光取り出し方向が基板側となるように化合物半導体薄膜結晶層を有し、かつバッファ層が基板と第一導電型半導体層の間に設けられていることを特徴とする集積型発光装置である。
上記タイプA、B、CおよびDの集積型発光装置を使用する利点は次の点にある。従来の集積型の発光装置は、2つのタイプがあり、1つめのタイプは、1対のpn接合部分を含む発光ユニットが、互いに電気的に分離されている装置(特許文献1に記載の装置、および特許文献2の請求項4、図10(b)に記載の装置等)であり、2つめのタイプは1対のpn接合部分を含む発光ユニットが、互いに電気的に結合されている装置である(特許文献2の請求項5、図10(a)等)。1つめのタイプでは、発光ユニット間の分離溝部分で発光強度が大きく低下するために、面光源全体での均一性に問題があり、また、発光ユニットの1つが劣化した場合に、その近傍のみが極端に発光強度が落ちてしまうという問題も同様にある。2つ目のタイプでは、n型半導体層が発光装置全体で共通となっているために、n側電極から最も近接するp側電極に電流が流れ込むだけでなく、1つのn側電極からあらゆるp側電極に電流が流れ込むことになり、発光装置全体としてみたときの電流注入効率は高くない。また、すべてのp側電極とすべてのn側電極が電気的に結合しているため、1箇所の劣化が、装置全体の劣化となってしまう問題がある。
これに対して、上記タイプA、B、CおよびDの集積型発光装置は、このような問題がなく、発光強度の均一性が高いため、本発明の集積型発光源に使用する集積型発光装置として特に適している。
以下にタイプA〜Dを順に説明する。
<<2−1. タイプAの形態の特徴>>
タイプAの集積型発光装置、およびその製造方法の特徴は次の事項で特定される。
1. 発光波長に対して透明な基板と、この基板上に形成された複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、前記基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、
第1の光取り出し方向が前記基板側であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離され、
さらに、前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層を有する
ことを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
2. 前記光学結合層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられている層であることを特徴とする上記1記載の発光装置。
3. 発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
nsb<noc および n1<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1または2記載の発光装置。
4. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、前記光学結合層と前記基板の比屈折率差Δ(oc−sb)を
Δ(oc−sb)≡((noc)2−(nsb)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光装置。
5. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の発光装置。
6. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の発光装置。
7. 前記光学結合層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光装置。
8. 前記複数の発光ユニットは、前記発光ユニット間分離溝が、隣接する発光ユニット間で、前記薄膜結晶層の表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去して形成されていることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光装置。
9. 前記発光ユニット間分離溝の幅が、2〜300μmの範囲である上記1〜8のいずれかに記載の発光装置。
10. 前記基板に接して、バッファ層をさらに有すること特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光装置。
11. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記光学結合層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
12. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層の途中まで形成されたことを特徴とする上記10記載の発光装置。
13. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記基板まで達して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
14. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記基板の一部を除去して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
15. 前記発光ユニット間分離溝内の底面および側面の全面を被覆し、前記発光装置の側面に露出した層のうち、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層の側面を被覆し、前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っている絶縁層を有することを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光装置。
16. 前記絶縁層が、前記装置間分離溝の側面に露出した層のすべてを被覆していることを特徴とする上記15記載の発光装置。
17. 前記スクライブ領域として、前記装置間分離溝内の溝底面に、前記絶縁層で覆われていない領域が設けられている上記16記載の発光装置。
18. 前記絶縁層が、前記装置間分離溝内の溝底面には形成されておらず、かつ前記装置間分離溝の側面に露出した層のうち、前記溝底面側から導電性を有さない層の少なくとも一部までには形成されていないことを特徴とする上記15記載の発光装置。
19. 前記薄膜結晶層が、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光装置。
20. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光装置。
21. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光装置。
22. 前記絶縁層が、複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記15〜18のいずれかに記載の発光装置。
23. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜22のいずれかに記載の発光装置。
24. 前記光学結合層から基板側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜を有することを特徴とする上記1〜23のいずれかに記載の発光装置。
25. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の発光装置。
26. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属面を有するサブマウントに接合されていることを特徴とする上記1〜25のいずれかに記載の発光装置。
27. 複数の発光ユニットを同一基板上に有する集積型化合物半導体発光装置の製造方法であって、
発光波長に対して透明な基板上に、光学結合層を成膜する工程と、
少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を成膜する工程と、
前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程と、
前記第一導電型半導体層の一部を表面に露出させる第一エッチング工程と、
前記第一エッチング工程により露出した第一導電型半導体層の面に、第一導電型側電極を形成する工程と、
前記発光ユニットを互いに電気的に分離するための発光ユニット間分離溝を形成するために、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部までを除去する第二エッチング工程と、
複数の発光装置に分離するための装置間分離溝を形成するために、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層を除去する第三エッチング工程と
を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置の製造方法。
28. 前記光学結合層の成膜工程を、前記薄膜結晶層の成膜工程の一部として、かつ前記第一導電型半導体層の形成に先立って行うことを特徴とする上記27記載の方法。
29. 前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnocで表したとき、
nsb<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記27または28記載の方法。
30. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と基板の比屈折率差Δ(oc−sb)を
Δ(oc−sb)≡((noc)2−(nsb)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
も満たすようにtocを選択することを特徴とする上記27〜29のいずれかに記載の方法。
31. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、前記光学結合層の発光波長における平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の発光波長における平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したとき、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記27〜30のいずれかに記載の方法。
32. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記27〜31のいずれかに記載の方法。
33. 前記光学結合層を、複数の層の積層構造として成膜することを特徴とする上記27〜32のいずれかに記載の方法。
34. 前記光学結合層を成膜する工程の前に、前記基板上にバッファ層を形成する工程を有する上記27〜33のいずれかに記載の方法。
35. 前記第三エッチング工程を、前記第二エッチング工程と同時にまたは別に行い、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
36. 前記第三エッチング工程を、前記薄膜結晶層表面からバッファ層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記34記載の方法。
37. 前記第三エッチング工程において、前記基板表面に達するまでエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
38. 前記第三エッチング工程において、前記基板の一部も除去するようにエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
39. 前記第二および第三エッチング工程が、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれるガス種を用いたドライエッチング法で行われることを特徴とする上記27〜38のいずれかに記載の方法。
40. エッチングマスクとして、パターニングされた金属フッ化物層を用いることを特徴とする上記39記載の方法。
41. 前記金属フッ化物層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記40記載の方法。
42. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする上記27〜41のいずれかに記載の方法。
43. 前記絶縁層を形成する工程が、第一〜第三エッチング工程の後に行われることを特徴とする上記42記載の方法。
44. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで(但し、バッファ層が存在する場合に限る。)、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去し、スクライブ領域を形成する工程
を有することを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
45. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで(但し、バッファ層が存在する場合に限る。)、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝の側壁に形成された絶縁層のうち、前記溝底面側の一部を除去する工程と
を有することを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
46. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記44記載の方法。
47. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記45記載の方法。
48. さらに、複数の発光装置に分離する工程と、前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、サブマウント上の金属層に接合する工程とを有することを特徴とする上記27〜47記載の方法。
49. 前記接合をハンダで行うことを特徴とする上記48記載の方法。
タイプAの形態によれば、大面積の面光源的発光が可能な集積型の化合物半導体発光装置であって、発光強度の面内均一性がすぐれた装置を提供することができる。また、発光ユニット毎に、発光強度が多少ともばらついた劣化を示したとしても、高い面内均一性が確保され、かつ高い面内均一性を確保し続けることができる装置を提供することができる。
特に、発光装置の面積が数cm2を越える場合であっても、発光強度の均一性の比較的高い、面的な青色または紫外発光が実現可能である。また、タイプAの形態の集積型発光装置は、光を基板側から取り出し、p側、n側いずれの電極も第1の光取り出し方向側とは反対側に配置されるフリップチップ型発光素子に関するものであって、電流導入に金属ワイヤー等を用いることなく、金属配線のある放熱性に富むサブマウントなどにp側、n側電極をハンダ等で融着し、素子を搭載できるために、十分な放熱性と高い光取出し効率を確保することができる。
タイプAの形態では、発光ユニット同士は、電気的には分離されていながら、光学的には光学結合層により結合しているため、ある発光ユニットの量子井戸層にて発光した光が、他の発光ユニット部分にも分布する。そのため、従来の構成では輝度が低下する発光ユニット間からも、本形態の発光装置では光が放射されてくるため、比較的均一性の高い面発光が得られる。また、発光ユニット間で発光強度のばらつきがある場合でも、あるいは多少ともばらつきのある劣化を示したとしても、光学結合層の存在により、面内発光強度の均一性が高い。さらに、仮に1つの発光ユニットに不良が生じて点灯しなくなった場合でも、不良発光ユニットの直上において、ある程度の発光強度が確保されるため、面均一性が良好である。
以下、タイプAの形態による集積型発光装置およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
図1−1に、タイプAの形態の集積型化合物半導体発光装置(以下、単に発光装置という)の1例を示す。また、図1−1の発光装置の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図1−2も参照しながら説明する。ここでは、図1−1、図1−2に示すように、3つの発光ユニット11によって1つの発光装置10を構成する例を示しているが、発光ユニット11の集積の個数は特に限定はなく、提供される一つの基板内で適宜個数を設定可能である。例えば発光ユニット11の数は2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。発光装置10における発光ユニット11の好ましい数は25〜10000個であり、また発光ユニット11が2次元的に配列されていることも好ましい。
タイプAの形態において、1つの発光ユニットは、図に示すように基板21上に、少なくとも、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。図のように発光ユニット間分離溝12は、集積型化合物半導体発光装置10内の発光ユニット11を区画しているが、基板21および光学結合層23は、発光ユニット間に共通して設けられている。さらに、基板に最初に成膜されるバッファ層22も発光ユニット間に共通している。
この例では、第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層、活性層構造の一部、第一導電型クラッド層の一部が除去された構成となっており、除去した箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板に対して同じ側に配置されるように構成されている。
タイプAの形態では、発光ユニット11は、互いに発光ユニット間分離溝12により電気的には分離されている。即ち、発光ユニット間分離溝12は、薄膜結晶層中の導電性の高い層を分断しており、発光ユニット間で実質的な電気的結合はない。尚、タイプAの形態において、1つの発光ユニット内の発光ポイント(独立した発光部)は1つである。
一方、本形態では、光学結合層23が、発光ユニット間に共通して存在し、発光ユニットが光学的には結合した状況をつくっている。即ち、ある一つの発光ユニットから放射された光は、光学結合層での適度な伝播と放射(リーク)によって、他のユニット部分にも到達し、一つの発光ユニット部分のみに局在することなく、他の発光ユニット部分にも到達する。このためには、発光ユニット間分離溝12は、光学結合層の界面まで達しているか、または図1−1に示すように光学結合層が分断されない状態でその中まで達していることが必要である。そして、詳細は後述するが、光学結合層は実質的に絶縁性であり、また層内での適度な導波機能を実現するために、相対的に屈折率が高い材料で構成される。
また、本形態では、発光ユニット間分離溝の幅が、好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜50μm、最も好ましくは8〜15μmである。発光ユニット間分離溝の幅が短いと、光学結合層と共に、面発光の均一性が向上する。
図1−2には、同一基板上に、中央の発光装置10に隣接する別の発光装置も一部図示されており、それぞれの発光装置10は、装置間分離溝13によって分離されている。装置間分離溝13の中のスクライブ領域14で、スクライブしブレーキングして、各発光装置を分離して、サブマウント40上の金属面41に、金属ハンダ42を介して第二導電型側電極27および第一導電型側電極28をそれぞれ接続して、図1−1に示すような発光装置が得られる。
装置間分離溝は、この例では、基板に達するまで薄膜結晶層を除去して形成されており、好ましい形態の1つである。一方、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている形態も好ましく、また、基板の一部を除去して形成されている形態も可能である。これらの場合のいずれも、光学結合層よりも活性層構造側にある導電性の高い層の側壁に絶縁層を容易に形成できる。いずれの場合も、装置分離溝内のスクライブ領域にて分割して、1つ1つの発光装置に分離される。
タイプAの形態の発光装置では、絶縁層30は、薄膜結晶層22〜26の表面、側壁等を含んだ露出部分の大部分を覆っているが、図1−1の発光装置の側壁部分、即ち発光装置が分離されていない図1−2の状態における装置間分離溝13中の絶縁層形状は、いくつかの形態が可能である。いずれの形態においても、発光装置を分離する前に、発光装置を区画する装置間分離溝13中に、絶縁層が存在しない部分が存在することが好ましい。そして、絶縁膜が存在しない部分から、発光装置間を分離することが好ましい。その結果、本形態の発光装置の好ましい形状では、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない。絶縁層の好ましい形態の具体例を次に示す。
タイプAの1形態においては、図1−2に示すように、絶縁層30が装置間分離溝13の溝内の表面の全てを覆うのではなく、基板面(即ち、溝底面)と接している部分に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。このため装置間分離の際に薄膜結晶層にダメージを与えることがなく、また絶縁層の剥がれ等が生じないので好ましい。その結果得られる発光装置では、図1−1のA部分に示すように、絶縁層30が基板末端まで達していない。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証される結果、仮に発光ユニットの側壁ハンダの回り込みがあっても、発光装置の機能が損なわれることがなく信頼性の高い装置となる。
また、タイプAの異なる形態においては、図1−4に示すように、絶縁層30が基板面(即ち、溝底面)と基板に近接する溝側壁部分で形成されていない絶縁層非形成部分15が存在する。この構造も、装置間分離の際に絶縁層の剥がれ等が生じないので好ましい。得られる発光装置では、図1−3のB部分に示すように、絶縁層30が基板面まで達していない絶縁層非形成部分15が存在する。この図では、バッファ層22の壁面の全部と光学結合層23の壁面の一部までが露出しているが、光学結合層の側壁が覆われ、バッファ層の側壁の一部が露出していてもよい。露出している部分は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。好ましくは、光学結合層も絶縁層で覆われているものである。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出しているのが絶縁性の高い材料であれば、図1−1の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。また、基板の一部までエッチングして装置間分離溝を形成した場合には、溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層が絶縁層で被覆されている場合がある。
また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合には、次のような形状の発光装置が得られる。まず、装置間分離溝が、光学結合層23の途中まで形成される場合には、例えば図1−17および図1−18に示すように、発光装置端まで光学結合層23とバッファ層22が存在し、バッファ層の壁面はすべて露出し、光学結合層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、光学結合層の側壁は、バッファ層の側壁と一致して絶縁層で覆われていない部分と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。ここで、光学結合層23とバッファ層22の端は、図1−17および図1−18では、基板端面と一致しているが、分離方法によっては、基板21より内側に入ることも、基板21より外側に出ることもある。絶縁層30は、図1−17の例では、図1−17中にC部分で示すように、光学結合層23の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆している。これは、図1−1および図1−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中でとめた形態に対応する。また、図1−18の例は、図1−3および図1−4において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止めた形態に対応し、図1−18のD部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
次に、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成される場合には、例えば図1−19および図1−20に示すように、発光装置端までバッファ層22が存在し、バッファ層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、バッファ層の側壁は、絶縁層で覆われていない部分(装置端部分)と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。この場合も、バッファ層22の端は、図1−19および図1−20では、基板端面と一致しているが、分離方法によっては、基板21より内側に入ることも、基板21より外側に出ることもある。絶縁層30は、図1−19の例では、図1−19中にE部分で示すように、バッファ層22の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆し、さらに光学結合層23の側壁(装置間分離溝の側壁)を覆っている。これは、図1−1および図1−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中でとめた形態に対応する。また、図1−20の例は、図1−3および図1−4において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止めた形態に対応し、図1−20のF部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
これらの例のように、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図1−1、図1−3の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。
さらに、タイプAの形態の発光装置では、絶縁層30が図1−1のように、第一導電型側電極28の第1の光取り出し方向側の一部に接していること、即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)とのコンタクト部分の周囲に絶縁層が介在している部分があること、および第二導電型側電極27の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っていること、即ち、第二導電型側電極27と第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の間には絶縁層が存在せずに第二導電型側電極27の周囲に被覆している部分があることが好ましい。この形態は、第二導電型側電極27が形成された後に絶縁層30が形成され、絶縁層30が形成された後に第一導電型側電極28が形成されたことを意味する。このような順序による製造方法は、後述するが、第二導電型クラッド層26等の第二導電型半導体層にダメージが少なく、また第一導電型側電極のダメージが少ないために、高効率の発光装置が得られる。即ち、このような構造を有する発光装置は、高効率を示すことを意味する。
さらに、第二導電型側電極27の大きさは、第二電流注入領域35と同じであるが、第二導電型側電極の露出面37(第二導電型側電極露出部分)は、第二電流注入領域35の大きさよりも小さいことが好ましい。さらに、第一導電型クラッド層24の表面を覆う絶縁層30の一部に、第一導電型側電極28が第一導電型クラッド層24と接触するための開口が設けられ、それが、第一電流注入領域36となる。第一導電型側電極28の面積を、第一電流注入領域よりも大きくすることが好ましい。
また、第二導電型側電極と第一導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことも望ましい。
以下に、装置を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
基板21は、光学的に素子の発光波長に対しておおよそ透明であれば、材料等は特に限定されない。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が無いか、あるいは、吸収が存在しても、その基板の吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。
基板は、電気的には絶縁性基板であることが好ましい。これは、フリップチップマウントをした際に、たとえハンダ材などが基板周辺に付着しても、発光装置への電流注入には影響を与えないからである。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。
タイプAの形態で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板をInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
基板は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して集積型化合物半導体発光装置を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層との関係で、意図的に凹凸をつけた基板にしておき、これによって、薄膜結晶層と基板との界面で発生する貫通転移を発光素子あるいは、後述する発光ユニットの活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
タイプAの形態においては、後述する光学結合層に光を閉じ込めて一部導波するために、基板は、集積型化合物半導体発光装置の発光波長における屈折率が、光学結合層の平均屈折率よりも相対的に小さいことが望ましい。
基板の厚みとしては、タイプAの1形態においては、装置作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、半導体発光装置の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。これを用いて薄膜結晶層を成長した後に、各々の素子に分離しやすくするために、適宜、研磨工程によってプロセス途中で薄くし、最終的に発光装置としては100μm厚程度以下となっていることが望ましい。また、通常30μm以上の厚みである。
さらにタイプAの異なる形態では、基板の厚さは、従来とは異なり厚いものでもよく、350μm程度、さらには400μm、または500μm程度の厚みがあってもよい。
また、後述する光学結合層に光を閉じ込めて導波するために、導波路に対する相対的に低屈折率層となるように基板を選んだ場合には、基板の物理厚みは、発光装置の発光波長をλ(nm)、基板の平均屈折率をnsbとした際に、4λ/nsbよりも厚いことが望ましい。
さらに、基板の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されていることが望ましい。基板−空気界面の屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで光学結合層から基板側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、基板の第1の光取り出し方向側に、素子の発光波長に対する反射率R4がR4<R3を満たすような低反射光学膜を有することが望ましい。たとえば基板がサファイアである場合には、低反射コーティング膜としてMgF2等を用いることが望ましい。発光波長における基板の屈折率nsに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nsに近いことが望ましいので、サファイアの屈折率の平方根に対して、MgF2の屈折率が近いからである。
タイプAの形態においては、基板の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面または粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。また、素子の発光波長をλ(nm)とすると、その粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
<バッファ層>
バッファ層22は、基板上に薄膜結晶成長する上では、転移の抑制、基板結晶の不完全性の緩和、基板結晶と所望の薄膜結晶成長層との各種の相互不整合の軽減など、主に薄膜結晶成長のための目的のために形成される。
タイプAの形態で望ましい形態であるInAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、GaN系材料などを異種基板上に薄膜結晶成長する際には、必ずしも基板との格子定数のマッチングが確保されないので、バッファ層は特に重要である。たとえば、後述する光学結合層以降の薄膜結晶成長層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長する際には、600℃近傍の低温成長AlN層をバッファ層に用いたり、あるいは500℃近傍で形成した低温成長GaN層を用いたりすることも出来る。また、800℃から1000℃程度の高温で成長したAlN、GaN、AlGaN、InAlGaN、InAlBGaNなども使用可能である。これらの層は一般に薄く5〜40nm程度である。
バッファ層22は必ずしも単一の層である必要はなく、低温で成長したGaNバッファ層の上に、結晶性をより改善するために、ドーピングを施さない1000℃程度の温度で成長したGaN層を数μm程度有するようにしてもかまわない。実際には、このような厚膜バッファ層を有することが普通であって、その厚みは0.5〜7μm程度である。タイプAの形態においては、バッファ層は、化合物半導体発光装置内の発光ユニット間に共通して存在することから、ドーピングされた層を有さないことが望ましい。しかし、バッファ層内に結晶性等の観点でドーピングされた層を有するようにする際には、ドーピング層を成長した後に、さらにアンドープ層を形成し、発光ユニット間の電気的絶縁が完全に確保できるようにすることが必須である。また、バッファ層内にドーピング層とアンドープ層を積層して形成することも可能である。
また、バッファ層の形成に関しては、いわゆるマイクロチャネルエピタキシーの一種である横方向成長技術(ELO)も使用可能であり、これによってサファイア等の基板とInAlGaN系材料の間で発生する貫通転移の密度を大幅に低減することも可能である。さらに基板の表面に凹凸の加工を施したような加工基板を使用する際にも、横方向成長をさせる際に転位の一部を消滅させることが可能であって、このような基板とバッファ層の組み合わせをタイプAの形態に適応する事は好ましい。さらに、この際には基板上に形成された凹凸によって光取り出し効率が向上する効果もあって、好ましい。
タイプAの形態においては、バッファ層は各発光ユニット間に共通の層となることから後述する光学結合層と一体となって、発光ユニット間の光学的結合を実現するようにしてもかまわない。また、この際には、各発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しないようにしなければならない。また、バッファ層の一部または全部が光学結合層を兼ねていてもよい。
また、バッファ層は装置間分離溝の露出部分になってもよい。特にアンドープ部分が露出することは、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができるので好ましい。
<光学結合層>
タイプAの形態の光学結合層は、発光装置を構成する発光ユニット間の光学的結合を実現するための層であって、かつ、集積型半導体発光装置内に内在する発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しない層である。
光学結合層23は、化合物半導体層で形成されることが好ましく、図1−1、2に示すように、バッファ層と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層)の間に存在することが望ましい。また、成膜方法は特に制限はないが、集積型半導体発光装置を簡便に作製するために、他の薄膜結晶層と同時に、薄膜結晶成長技術を用いて作製することが望ましい。
タイプAの形態において、光学結合層は、少なくとも層内にある程度の光の閉じ込めが生じるように、即ち光の分布密度がある程度高くなるようにその屈折率が選ばれる事が望ましい。従って、光学結合層の平均屈折率(noc)は、基板の平均屈折率(nsb)および第一導電型クラッド層の平均屈折率より大きい事が望ましい。特に光学結合層と活性層構造の間に存在する第一導電型半導体層の平均屈折率(n1)より大きくすることが好ましい。またバッファ層の平均屈折率(nbf)以上であり、特にバッファ層の平均屈折率より大きいことが好ましい。また、光学結合層を構成する材料は、量子井戸層から発せられる光に対して透明であることが特に好ましい。InAlGaN系等のIII―V族窒化物に基づく発光装置である場合には、活性層構造から発せられる光が吸収されない程度にInやAlを含有することも望ましく、特に屈折率を高める観点ではInを含むことが好ましい。
また、光学結合層は、単層である必要はなく、複数の層で構成されてもよい。複数の層で構成されるとき、例えば、AlGaN、InGaN、InAlGaNおよびGaN等の層が複数存在してもよいし、超格子構造であってもよい。
ここで、各層の平均屈折率(nav)は、その層を構成するn種類の材料それぞれの屈折率(nx)に対して、その材料の物理的な厚み(tx)との積をとり、これを全体の厚みで除した値であり、
nav=(n1×t1+n2×t2+・・・+nn×tn)/(t1+t2+・・・tn)で計算される。
さらに、光学結合層には、構造によって光を散乱、多重反射、薄膜干渉を引き起こすなどの効果を発現する場合もあり、これらの効果によっても、発光装置全体の第1の光取り出し方向側の面での均一性の向上も可能である。
光学結合層の例としては、たとえば、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaN、バッファ層がアンドープGaN、基板がサファイアであった場合には、光学結合層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がサファイアであった場合には、光学結合層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がSiドープGaNであった場合には、光学結合層として厚膜のアンドープGaN中に発光波長に透明な組成のInbGa1−bNを所望の厚みで所望の数有する多層構造などが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
これらのような構造において、さらに光学結合層としては、InbGa1−bNおよびIncAldGa1−c−dN等の材料を含む場合も望ましく、その組成b、c、dと厚み等を適宜選択することにより、460nmで透明で、かつ第一導電型半導体層に含まれることがあるn−GaN、バッファ層に含まれることのあるアンドープGaN、基板として含まれることのあるサファイアよりも屈折率を大きくできるので、光学結合層として使用可能であり、それらを単層で、またはそれらとアンドープGaN層とから選ばれる複数の積層構造として使用してもよい。
また、光学結合層が化合物半導体発光素子の発光波長を吸収しないようにIn組成、InGaN層の厚みを設定したInGaN層とGaN層からなる超格子・量子井戸構造を有することも好ましい。
また、光学結合層は、各発光ユニットから発せられた光の一部を受けて発光ユニット相互に光を伝播するマルチモード光導波路として機能するように、その厚みが選ばれることも重要である。
光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)で表し、発光装置の発光波長をλ(nm)、光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、基板の平均屈折率をnsbで表したとき、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義する。また、光学結合層と基板の比屈折率差Δ(oc−sb)を
Δ(oc−sb)≡((noc)2−(nsb)2)/(2×(noc)2)
と定義する。そして、光学結合層を第一導電型半導体層の平均屈折率ではさまれた対称スラブ導波路とみなすと、その導波路がマルチモードとなる条件は規格化周波数がπ/2以上であればよいから
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されることが望ましい。また、同時に、仮に光学結合層が基板の平均屈折率ではさまれた対称スラブ導波路とみなした際に、その導波路がマルチモードとなる条件は、規格化周波数がπ/2以上であればよいから
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
も満たすようにtocが選択されることが望ましい。
具体的には、たとえば波長460nmにおいて光学結合層の平均屈折率が2.50であって、基板の平均屈折率が1.70であったとすると、光学結合層の厚みとしては、約0.13μm以上であれば、上式を満たすこととなる。また、たとえば波長460nmにおいて光学結合層の平均屈折率が2.50であって、第一導電型半導体層の平均屈折率が2.499であったとすると、光学結合層の厚みとしては、約3.3μm以上であれば、上式を満たすこととなる。
このようにして、光の閉じ込めを実現することによって、発光ユニット間の光学的結合は強くなり、集積型化合物半導体発光装置は均一な発光を実現しやすくなる。そして、発光ユニットの間の発光ユニット間分離溝部分においても光学結合層が存在することから発光ユニット間分離溝近傍からも比較的均一な発光が得られる。
なお、光学結合層に極端に光を閉じ込めると、集積型化合物半導体発光装置は、発光の均一性は向上するものの、光取り出しがしにくくなることから、光学結合層の厚み、材料、構造、構成、屈折率等を適宜選択し、ある程度リーキーでありながら導波が生じるようにすることが好ましい。特にその厚みに関しては、光学結合層の厚みを極端に厚くしてしまい、導波路の光閉じ込めを過剰にすることも望ましくなく、例えば、その上限は30μm以下であることが望ましく、10μm以下であることがより望ましく、5μm以下であることが最も望ましい。
さらに、光学結合層は、各発光ユニットに共通して存在するが、各発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しないように材料選択をすることが必須である。もし、例えば発光装置内のすべての発光ユニットが電気的に結合しているとすると、発光ユニット(一対のpn接合)の1つが劣化した際に、その影響は劣化した発光ユニットの光度低下にとどまらずに、集積型化合物半導体発光装置内全体の電流注入経路の変化として現れる。そのため、1発光ユニットの劣化が発光装置の特性変動として大きく現れてしまう。本形態においては、光学結合層は、各発光ユニット間の電気的絶縁を確保できるように材料選択をすることが極めて好ましい。電気的に絶縁されていることで、駆動中にある発光ユニットが劣化したとしても、その劣化は、発光ユニット1つの問題で済む。さらに、隣接する発光ユニットが光学的に結合していることで、劣化してしまった発光ユニット部分の近傍からも光学結合層が導波した光の出力がある程度期待され、発光強度も極端に低下することを免れる。このため、劣化した部分を含めた発光強度の面内均一性が比較的や保持されやすい。
ここで、光学結合層は、1つの発光ユニットにおける劣化等の変化が他のユニットに影響を及ぼさない程度に実質的に絶縁性を有していればよく、例えば層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が0.5(Ω・cm)以上であることが好ましい。さらに好ましくは、1.0(Ω・cm)以上であり、さらに好ましくは1.5(Ω・cm)以上、最も好ましくは5(Ω・cm)以上である。比抵抗が高いためには、光学結合層はアンドープであることが望ましいが、光学結合層が複数の層からなる場合などにおいては、一部ドーピングされている層があっても、これがアンドープ層の間にあり、発光ユニット間が電気的に結合していないのであれば問題はない。この場合、第一導電型半導体層(例えば第一導電型クラッド層)に隣接する層が上記の比抵抗を有していればよい。また、一般的に半導体においては、その材料に対して透明な波長領域では、同一の材料であっても、アンドープ層の屈折率が意図的にドーピングされ多数のキャリアを有する層よりも屈折率が高くなるので、光学的な特性から考えても、また、電気的特性から考えても、アンドープ層は好ましい。
タイプAの形態においては、光学結合層は、発光ユニット同士を光学的に結合し、光を分布・遍在させるのに対し、前述のバッファ層は基板上に結晶成長するときに各種の不整合の軽減を図るものであるので、その機能は異なる。しかし、同一の層が2つの機能を同時に有することがある。また、光学結合層またはバッファ層が複数の層で構成されているとき、一部の層が2つの機能を有する場合もある。さらに組成が同一でも成長方法・条件が異なる場合には、一方の機能しか有さない場合もある。
前述のとおり、タイプAの形態の発光ユニット間には、発光ユニット間分離溝が存在し、この分離溝が、少なくとも第一導電型クラッド層を分断するように形成されている。一般にクラッド層などは発光ユニット内のpn接合にキャリアを注入するために、ドーピングされており、電気的に絶縁を確保するためには、タイプAの形態では、クラッド層を各発光ユニットで分離することが必要であるからである。従って、発光ユニット間分離溝は、光学結合層の界面まで達していれば十分である。しかし容易に分離溝を作製するために、通常は光学結合層の途中まで形成されている。
また、発光ユニット間分離溝の中に露出した薄膜結晶層の側面は、絶縁層で覆われていることが望ましい。これは、発光装置をサブマウント等にフリップチップマウントした際に、薄膜結晶層の側壁などでのハンダによる短絡等の発生を防止できるからである。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプAの代表的形態では、図1−1に示すように光学結合層23に接して、発光ユニット間で分断された第一導電型クラッド層24が存在する。第一導電型クラッド層24は、後述する活性層構造25に対して、後述する第二導電型クラッド層26と共に機能して、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第一導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように装置の機能向上のため、または製造上の理由により、第一導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第一導電型半導体層の全体を第一導電型クラッド層と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第一導電型クラッド層の一部と見ることもできる。
一般的に第一導電型クラッド層は、後述する活性層構造の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、後述する活性層構造の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成されることが望ましい。さらに、第一導電型クラッド層は、活性層構造内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第一導電型クラッド層材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板、バッファ層、活性層構造等に鑑みて、適宜選択することができる。
例えば、基板としてC+面サファイアを使用し、バッファ層として低温成長したGaN、光学結合層として高温成長したアンドープGaNを使用する場合には、第一導電型クラッド層としてGaN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、InAlBGaN系材料、もしくはその多層構造を用いることができる。ここで、タイプAの形態においては、光学結合層の平均屈折率(noc)は、基板の平均屈折率(nsb)および第一導電型クラッド層の平均屈折率より大きいことが望ましい。特に光学結合層と活性層構造の間に存在する第一導電型半導体層の平均屈折率(n1)より大きくすることが好ましい。またバッファ層の平均屈折率(nbf)以上であり、特にバッファ層の平均屈折率より大きいことが好ましい。
第一導電型クラッド層のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm−3以上が好ましく、5×1017cm−3以上がより好ましく、1×1018cm−3以上が最も好ましい。上限としては5×1019cm−3以下が好ましく、1×1019cm−3以下がより好ましく、7×1018cm−3以下が最も好ましい。また、ここでは、第一導電型がn型の場合、ドーパントとしては、Siが最も望ましい。
第一導電型クラッド層の構造は、図1−1の一例では単一の層からなる第一導電型クラッド層を示すが、第一導電型クラッド層は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料、InAlGaN系材料、InAlBGaN系材料を使用することも可能である。また第一導電型クラッド層の全体を異種材料の積層構造として超格子構造とすることもできる。さらに、第一導電型クラッド層内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
第一導電型クラッド層の第一導電型側電極と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗率を低減することも可能である。
第一導電型クラッド層の一部はエッチングされており、かつ、第一導電型クラッド層の露出した側壁、エッチングされた部分などは、後述する第一導電型側電極との接触を実現する第一電流注入領域を除いて、すべて絶縁層で覆われている構造が望ましい。
第一導電型クラッド層に加えて、必要により、第一導電型半導体層としてさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極との接続部にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
<活性層構造>
第一導電型クラッド層24の上には、活性層構造25が形成されている。活性層構造とは、前述の第一導電型クラッド層と、後述する第二導電型クラッド層から注入される、電子と正孔(あるいは正孔と電子)が再結合して発光する層である量子井戸層を含み、かつ、量子井戸層に隣接して配置される、あるいは、量子井戸層とクラッド層間に配置されるバリア層をも含む構造を指す。ここで、タイプAの形態のひとつの目的である高出力化、高効率化を実現するためには、活性層構造中の量子井戸層の層数をW、バリア層の層数をBとすると、B=W+1を満たすことが望ましい。すなわち、クラッド層と活性層構造の全体の層の関係は、「第一導電型クラッド層、活性層構造、第二導電型クラッド層」と形成され、活性層構造は、「バリア層、量子井戸層、バリア層」、あるいは、「バリア層、量子井戸層、バリア層、量子井戸層、バリア層」のように形成されることが、高出力化のために望ましい。図1−5に、5層の量子井戸層と、6層のバリア層が積層された構造を模式的に示す。
ここで、量子井戸層においては量子サイズ効果を発現させて、発光効率を高めるために、その層厚はド・ブロイ波長と同程度にうすい層である。このため、高出力化を実現するためには、単層の量子井戸層のみではなく、複数の量子井戸層を設けてこれを分離して活性層構造とすることが望ましい。この際に各量子井戸層間の結合を制御しつつ分離する層がバリア層である。また、バリア層は、クラッド層と量子井戸層の分離のためにも存在することが望ましい。たとえば、クラッド層がAlGaNからなり、量子井戸層がInGaNからなる場合には、この間にGaNからなるバリア層が存在する形態が望ましい。これは結晶成長の最適温度が異なる場合の変更も容易にできるので、薄膜結晶成長の観点からも望ましい。また、クラッド層が、最もバンドギャップの広いInAlGaNからなり、量子井戸層が最もバンドギャップの狭いInAlGaNからなる場合は、バリア層にその中間のバンドギャップを有するInAlGaNを用いることも可能である。さらに、一般にクラッド層と量子井戸層との間のバンドギャップの差は、バリア層と量子井戸層の間のバンドギャップの差よりも大きく、量子井戸層へのキャリアの注入効率を考えても、量子井戸層はクラッド層に直接隣接しないことが望ましい。
量子井戸層は意図的なドーピングは実施しないほうが望ましい。一方、バリア層には、ドーピングを施して、系全体の抵抗を下げるなどのことを実施するのが望ましい。特に、バリア層にはn型のドーパント、特にSiをドーピングするのが望ましい。これは、p型のドーパントであるMgはデバイス内では拡散しやすく、高出力動作時においては、Mgの拡散を抑制することが重要となる。このために、Siは有効であって、バリア層にはSiがドーピングされていることが望ましい。但し量子井戸層とバリア層との界面においては、ド−ピングを実施しないほうが望ましい。
1つの素子の活性層構造側壁は、図1−1に示される通り、絶縁層30で覆われていることが望ましい。このようにすると、作製された素子をフリップボンドする際には、活性層構造の側壁におけるハンダ等による短絡が発生しない利点がある。
タイプAの形態においては、各発光ユニット内の量子井戸層から発せされる光は、ほぼ同じ発光スペクトルを有することが望ましい。これは、化合物半導体発光装置として、面光源的で、かつ、均一な発光を実現するためである。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
第二導電型クラッド層26は、前述の活性層構造25に対して、前述の第一導電型クラッド層24と共に、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第二導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように装置の機能向上のため、または製造上の理由により、第二導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第二導電型半導体層の全体を第二導電型クラッド層と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第二導電型クラッド層の一部と見ることもできる。
一般的に第二導電型クラッド層は、前述の活性層構造の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、前述の活性層構造の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成される事が好ましい。さらに、第二導電型クラッド層は、活性層構造内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第二導電型クラッド層材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板、バッファ層、活性層構造等に鑑みて、適宜選択することができる。例えば、基板としてC+面サファイアを使用し、バッファ層としてGaNを使用する場合には、第二導電型クラッド層としてGaN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、AlGaBInN系材料等を用いることができる。また、上記材料の積層構造であってもかまわない。また、第一導電型クラッド層と第二導電型クラッド層は同じ材料で構成することも可能である。
第二導電型クラッド層のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm−3以上が好ましく、4×1017cm−3以上がより好ましく、5×1017cm−3以上がさらに好ましく7×1017cm−3以上が最も好ましい。上限としては7×1018cm−3以下が好ましく、3×1018cm−3以下がより好ましく、2×1018cm−3以下が最も好ましい。また、ここでは、第二導電型がp型の場合ドーパントとしては、Mgが最も望ましい。
第二導電型クラッド層の構造は、図1−1の一例では単一の層で形成された例を示しているが、第二導電型クラッド層は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料を使用することも可能である。また第二導電型クラッド層の全体を異種材料の積層構造からなる超格子構造とすることもできる。さらに、第二導電型クラッド層内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
一般に、GaN系材料においてはn型ドーパントがSiであって、かつ、p型ドーパントがMgである場合には、p型GaN、p型AlGaN、p型AlInGaNの結晶性は、n型GaN、n型AlGaN、n型AlInGaNにはそれぞれ及ばない。このため、素子作製においては、結晶性の劣るp型クラッド層を活性層構造の結晶成長後に実施することが望ましく、この観点で、第一導電型がn型で、第二導電型がp型である場合が望ましい。
また、結晶性の劣るp型クラッド層(これは、望ましい形態をとった場合の第二導電型クラッド層に相当する)の厚みは、ある程度薄いほうが望ましい。これは、フリップチップボンディングを実施するタイプAの形態においては、基板側が第1の光の取り出し方向となるため、後述する第二導電型側電極側からの光の取り出しを考慮する必要がなく、大面積の厚膜電極を形成することが可能である。このため、フェイスアップマウントを実施する際のように、第二導電型クラッド層における横方向への電流拡散を期待する必要がなく、第二導電型クラッド層は、ある程度薄くすることが素子構造からも有利である。但し、極端に薄い場合には、キャリアの注入効率が低下してしまうため、最適値が存在する。第二導電型クラッド層の厚みは、適宜選択可能であるが、0.05μmから0.3μmが望ましく、0.1μmから0.2μmが最も望ましい。
第二導電型クラッド層の第二導電型側電極と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗を低減することも可能である。
第二導電型クラッド層の露出した側壁は、後述する第二導電型側電極との接触を実現した第二電流注入領域を除いて、すべて絶縁層で覆われている構造であることが望ましい。
さらに、第二導電型クラッド層に加えて、第二導電型半導体層として、必要によりさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極と接する部分にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
尚、タイプAの形態の要旨に反しない限り、薄膜結晶層として、必要により上述のカテゴリに入らない層を形成してもよい。
<第二導電型側電極>
第二導電型側電極は、第二導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントをした際には、良好な発光波長帯域における反射ミラーとなり、また、フリップチップマウントした際に、ハンダ材などによるサブマウントなどとの良好な接着を実現するものである。本目的のためには、適宜材料選択が可能であり、第二導電型側電極は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
また、第二導電型がp型で第二導電型クラッド層の第二導電型側電極側がGaNである場合には、第二導電型側電極の構成元素として、Ni、Pt、Pd、Mo、Auのいずれかを含むことが望ましい。特に、第二導電型側電極のp側クラッド層側の第一層目はNiであることが望ましく、第二導電型側電極のp側クラッド層側と反対側の表面はAuであることが望ましい。これは、Niの仕事関数の絶対値が大きく、p型材料にとって都合がよく、また、Auは、後述するプロセスダメージに対する耐性、マウントの都合などを考えると最表面の材料として好ましい。
第二導電型側電極は、第二導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第二導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<第一導電型側電極>
第一導電型側電極は第一導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントをした際には、良好な発光波長帯域における反射ミラーとなり、また、フリップチップマウントした際に、ハンダ材等によるサブマウントなどとの良好な接着を実現するものであって、本目的のためには、適宜材料選択が可能である。第一導電型側電極は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
第一導電型がn型であるとすると、n側電極は、Ti、Al、Moのいずれかから選択される材料、もしくはすべてを構成元素として含むことが望ましい。これは、これらの金属の仕事関数の絶対値が小さいためである。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
タイプAの形態においては、第一導電型側電極は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極と第二導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことが望ましい。これは、発光装置をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウントなどとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極と第一導電型側電極との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。
ここで、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅は15μm以上であることが望ましい。これはフォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によって形成することが好ましい第一導電型側電極の形成プロセスにおけるマージンが必要であるからである。
第一導電型側電極は、第一導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第一導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<絶縁層>
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」、「異なる発光ユニット間のあらゆる場所」に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、材料は適宜選択することができる。例えば、単層の酸化物、窒化物、フッ化物等が好ましく、具体的には、SiOx、AlOx、TiOx、TaOx、HfOx、ZrOx、SiNx、AlNx、AlFx、BaFx、CaFx、SrFx、MgFx等から選ばれることが好ましい。これらは、長期に渡って安定に絶縁性を確保できる。
一方、絶縁層30を絶縁物の多層膜とすることも可能である。これは、誘電体多層膜となるので、絶縁層内の誘電体の屈折率を適宜調整することによって、発光装置内で発生した光に対して光学的機能を発現させられるからである。
また、その材料の安定性、屈折率の範囲から考えて、誘電体膜中に、フッ化物が含まれることは望ましく、かつ、具体的にはAlFx、BaFx、CaFx、SrFx、MgFxのいずれかが含まれることが望ましい。
<サブマウント>
サブマウント40は、金属層を有し、フリップチップマウントをした素子への電流注入と放熱の機能を併せ持つものである。サブマウントの母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BN、CuWのいずれかであることが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できて望ましい。またAl2O3、Si、ガラス等も安価であってサブマウントの母材として利用範囲が広く好ましい。尚、サブマウントの母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆う事が望ましい。金属の母材としては、発光素子の発光波長における反射率の高い材料が望ましく、Al、Ag等が望ましい。また、誘電体等で覆う際には、各種CVD法で形成したSiNx、SiO2等が望ましい。
発光装置は各種ハンダ材、ペースト材によってサブマウント上の金属面に接合される。素子の高出力動作と高効率な発光のために放熱性を十分に確保するためには、特に金属ハンダによって接合されることが望ましい。金属ハンダとしては、In、InAg,PbSn、SnAg、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。これらハンダは安定であって、使用温度環境等に照らして適宜選択可能である。
また、タイプAの形態の集積型化合物半導体発光装置は、サブマウント上の金属配線を自在に変化させることで、1つの発光装置内の各発光ユニットを並列接続にも、直列接続にも、またはこれらを混在させることも可能である。
〔タイプAの形態の発光装置の製造方法〕
次に、タイプAの形態の集積型化合物半導体発光装置の製造方法について説明する。
タイプAの形態の発光装置の製造方法の1例では、図1−6に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光学結合層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図1−1、図1−2に示された形状を実現するためには、図1−6に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、タイプAの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、タイプAの形態においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からもタイプAの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、タイプAの形態では、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図1−7に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNxのような窒化物やSiOx等の酸化物をエッチングマスクとしてCl2等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程、第三エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に好ましくは、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl2、SiCl4、BCl3、SiCl4等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNxマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNxマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図1−8に示すように、発光ユニット間分離溝12を、第二エッチング工程により形成する。第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光学結合層23の一部までをエッチングすることが必要なことから、1μm以上となることが多く、例えば1〜5μmの範囲、または3μ以上の範囲、例えば3〜7μmの範囲となることがある。場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiNx等の窒化物マスク、SiOx等の酸化物マスク等は、Cl2系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiNx膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で4μmのGaN系材料をエッチングする最には、0.8μmを越えるSiNxマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNxマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNxマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において発光ユニット間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、AlF3が好ましく、この中でもSrF2が最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二、第三エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiNx,SiO2などと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrF2マスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiNx、SiO2などとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiNx、SiO2等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図1−21に示すように、SiNx、SiO2等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図1−8に示すように、発光ユニット間分離溝が形成される。
次に、図1−9に示すように、装置間分離溝13を、第三エッチング工程により形成する。第三エッチング工程では、エッチングすべきGaN系材料の厚みは、バッファ層、光学結合層をすべてエッチングすることが必要なことから、第二エッチング工程と比較しても、極めて深く、5〜10μmとなることがあり、また10μmを超えることもある。そのため、第二エッチング工程で説明したと同様に、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。その好ましい条件等(積層マスク等も含む)は、第二エッチング工程について説明したとおりである。
装置間分離溝は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要である。タイプAの1つの好ましい形態では、図1−9に示すように、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、装置を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同様)の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光装置完成後の形態は、図1−17〜図1−20を参照。)。この場合、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。装置間分離溝を、光学結合層の途中まで形成する形態では、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時実施することも可能になるので、工程を簡略化できる利点がある。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程、第三エッチング工程は、いずれの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチングおよび/または第三エッチング工程を実施することも好ましい。図1−21に示すように、まずSiNx、SiO2等の酸に強い材料(好ましくはSiNx)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二および/または第三エッチングマスク52を形成する。そして、第二および/または第三エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。第一エッチングマスク51は、第二エッチング工程と第三エッチング工程が別々に実施される場合にも、両方のエッチングが終了するまで存在させることもできる。
形成される装置分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
第三エッチング工程の後には、図1−10に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図1−11に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で絶縁層が除去されたスクライブ領域14を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極の周辺部分が絶縁層によって覆われているように実施することが望ましい。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さいことが望ましい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極の周辺から絶縁層で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層によって第二導電型側電極の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
絶縁層の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層がSiNx単層である場合には、SF6等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層がSiOxとTiOxからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、およびスクライブ領域14の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。スクライブ領域14(図1−2)の幅を2Lwsとすると、2Lwsは30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2Lwsは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
尚、タイプAの異なる形態(図1−3、図1−4に対応する)では、図1−12に示すように、装置間分離溝内の基板近傍の側壁部分の絶縁層をも除去し、絶縁層非形成部分15を設ける。この溝側壁の絶縁層の一部の同時除去は、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層がウエットエッチャントで除去され、図1−12に示したように装置間分離溝の基板側に絶縁層が存在しない形状が得られる。このように絶縁層を除去する場合においては、絶縁層が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、サブマウントとの接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。
タイプAの形態では、図1−11および図1−12のどちらの形態でも、マウント時の意図しない電気的短絡等を防止できる。通常は、図1−11のように、基板上で絶縁層が存在しないスクライブ領域14を形成する形態で十分である。尚、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成される場合にも、上記のプロセスで絶縁膜を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。
次に、図1−13、図1−14に示すように、第一導電型側電極28を形成する。図1−13および図1−14は、それぞれ図1−11および図1−12の構造に対して、第一導電型側電極28を形成した構造を示す。電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、AlおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。ここで、形成プロセスにおけるマージンをある程度見込むために、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
第一導電型側電極は、この例では、第一導電型クラッド層にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
タイプAの形態の発光装置の製造方法では、第一導電型側電極が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、n側電極が第二導電型側電極のように絶縁層の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、タイプAの形態においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図1−13(図1−2)および図1−14(図1−4)の構造が形成された後には、各集積型化合物半導体発光装置を1つ1つ分離するために、装置間分離溝を使用して、基板対してダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
装置間分離工程の際に、装置間分離溝に一切の薄膜結晶層がない場合(図1−13および図1−14の構造がこれに相当する)には、薄膜結晶層へのプロセスダメージの導入がない。また、図1−13および図1−14のように、スクライブ領域に絶縁層も存在しない場合には、スクライブ時に、絶縁層の剥離等が生じる可能性もない。
また、装置間分離溝は、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合(例えば、発光ユニット間分離溝と同等の深さで、光学結合層の途中まで溝が形成されている場合)もあるが、この場合にも、装置間分離溝を使用して、基板に対してのダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
傷入れ(スクライブ)が終了した後には、集積型化合物半導体発光装置はブレーキング工程において、1装置ずつに分割され、好ましくはハンダ材料等によってサブマウントに搭載する。
以上のようにして、図1−1および図1−3に示した集積型化合物半導体発光装置が完成する。
タイプAの形態の発光装置の製造方法では、光学結合層を有する有利な構造を効果的に製造できることに加えて、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極の形成、エッチング工程(第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程)、絶縁層の形成、絶縁層の除去(第二導電型側電極露出部分および第一電流注入領域の形成や装置間分離溝近傍の絶縁層の除去)、第一導電型側電極の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極にもダメージのない発光装置を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光装置は、第二導電型側電極、絶縁層、第一導電型側電極がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極は、第二導電型クラッド層(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層を介在しないで接しており、第二導電型側電極の上部周辺には絶縁層で覆われた部分があり、第一導電型側電極と第一導電型クラッド層(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層が介在している部分が存在している。
<<2−2.タイプBの形態の特徴>>
タイプBの集積型発光装置、およびその製造方法の特徴は次の事項で特定される。
1. 発光波長に対して透明な基板と、この基板上に形成された複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、前記基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、
第1の光取り出し方向が前記基板側であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離されており、
1つの発光ユニット内には、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の前記第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は前記第一導電型半導体層で電気的に導通しており、
さらに、前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層を有する
ことを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
2. 前記光学結合層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられている層であることを特徴とする上記1記載の発光装置。
3. 発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
nsb<noc および n1<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1または2記載の発光装置。
4. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、前記光学結合層と前記基板の比屈折率差Δ(oc−sb)を
Δ(oc−sb)≡((noc)2−(nsb)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光装置。
5. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の発光装置。
6. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の発光装置。
7. 前記光学結合層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光装置。
8. 前記複数の発光ユニットは、前記発光ユニット間分離溝が、隣接する発光ユニット間で、前記薄膜結晶層の表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去して形成されていることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光装置。
9. 前記発光ユニット間分離溝の幅が、2〜300μmの範囲である上記1〜8のいずれかに記載の発光装置。
10. 前記基板に接して、バッファ層をさらに有すること特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光装置。
11. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記光学結合層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
12. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層の途中まで形成されたことを特徴とする上記10記載の発光装置。
13. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記基板まで達して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
14. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内のスクライブ領域から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記基板の一部を除去して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
15. 前記発光ユニット間分離溝内の底面および側面の全面を被覆し、前記発光装置の側面に露出した層のうち、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層の側面を被覆し、前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っている絶縁層を有することを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光装置。
16. 前記絶縁層が、前記装置間分離溝の側面に露出した層のすべてを被覆していることを特徴とする上記15記載の発光装置。
17. 前記スクライブ領域として、前記装置間分離溝内の溝底面に、前記絶縁層で覆われていない領域が設けられている上記16記載の発光装置。
18. 前記絶縁層が、前記装置間分離溝内の溝底面には形成されておらず、かつ前記装置間分離溝の側面に露出した層のうち、前記溝底面側から導電性を有さない層の少なくとも一部までには形成されていないことを特徴とする上記15記載の発光装置。
19. 前記薄膜結晶層が、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光装置。
20. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光装置。
21. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光装置。
22. 前記絶縁層が、複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記15〜18のいずれかに記載の発光装置。
23. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜22のいずれかに記載の発光装置。
24. 前記光学結合層から基板側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜を有することを特徴とする上記1〜23のいずれかに記載の発光装置。
25. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の発光装置。
26. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属面を有するサブマウントに接合されていることを特徴とする上記1〜25のいずれかに記載の発光装置。
27. 複数の発光ユニットを同一基板上に有する集積型化合物半導体発光装置の製造方法であって、
発光波長に対して透明な基板上に、光学結合層を成膜する工程と、
少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を成膜する工程と、
前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程と、
前記第一導電型半導体層の一部を表面に露出させるとともに、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む発光ポイントを複数個形成するために、前記第二導電型半導体層および前記活性層構造を複数の領域に分断する第一エッチング工程と、
前記第一エッチング工程により露出した第一導電型半導体層の面に、少なくとも1個の第一導電型側電極を形成する工程と、
前記発光ユニットを互いに電気的に分離するための発光ユニット間分離溝を形成するために、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部までを除去する第二エッチング工程と、
複数の発光装置に分離するための装置間分離溝を形成するために、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層を除去する第三エッチング工程と
を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置の製造方法。
28. 前記光学結合層の成膜工程を、前記薄膜結晶層の成膜工程の一部として、かつ前記第一導電型半導体層の形成に先立って行うことを特徴とする上記27記載の方法。
29. 前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnocで表したとき、
nsb<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記27または28記載の方法。
30. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と基板の比屈折率差Δ(oc−sb)を
Δ(oc−sb)≡((noc)2−(nsb)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
も満たすようにtocを選択することを特徴とする上記27〜29のいずれかに記載の方法。
31. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、前記光学結合層の発光波長における平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の発光波長における平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したとき、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記27〜30のいずれかに記載の方法。
32. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記27〜31のいずれかに記載の方法。
33. 前記光学結合層を、複数の層の積層構造として成膜することを特徴とする上記27〜32のいずれかに記載の方法。
34. 前記光学結合層を成膜する工程の前に、前記基板上にバッファ層を形成する工程を有する上記27〜33のいずれかに記載の方法。
35. 前記第三エッチング工程を、前記第二エッチング工程と同時にまたは別に行い、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
36. 前記第三エッチング工程を、前記薄膜結晶層表面からバッファ層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記34記載の方法。
37. 前記第三エッチング工程において、前記基板表面に達するまでエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
38. 前記第三エッチング工程において、前記基板の一部も除去するようにエッチングを行うことを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
39. 前記第二および第三エッチング工程が、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれるガス種を用いたドライエッチング法で行われることを特徴とする上記27〜38のいずれかに記載の方法。
40. エッチングマスクとして、パターニングされた金属フッ化物層を用いることを特徴とする上記39記載の方法。
41. 前記金属フッ化物層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記40記載の方法。
42. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする上記27〜41のいずれかに記載の方法。
43. 前記絶縁層を形成する工程が、第一〜第三エッチング工程の後に行われることを特徴とする上記42記載の方法。
44. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで(但し、バッファ層が存在する場合に限る。)、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去し、スクライブ領域を形成する工程
を有することを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
45. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで(但し、バッファ層が存在する場合に限る。)、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝の側壁に形成された絶縁層のうち、前記溝底面側の一部を除去する工程と
を有することを特徴とする上記27〜34のいずれかに記載の方法。
46. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記44記載の方法。
47. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記45記載の方法。
48. さらに、複数の発光装置に分離する工程と、前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、サブマウント上の金属層に接合する工程とを有することを特徴とする上記27〜47記載の方法。
49. 前記接合をハンダで行うことを特徴とする上記48記載の方法。
タイプBの形態によれば、大面積の面光源的発光が可能な集積型の化合物半導体発光装置であって、発光強度の面内均一性がすぐれた装置を提供することができる。また、発光ユニット毎に、発光強度が多少ともばらついた劣化を示したとしても、高い面内均一性が確保され、かつ高い面内均一性を確保し続けることができる装置を提供することができる。
特に、発光装置の面積が数cm2を越える場合であっても、発光強度の均一性の比較的高い、面的な青色または紫外発光が実現可能である。また、本形態は、光を基板側から取り出し、p側、n側いずれの電極も第1の光取り出し方向側とは反対側に配置されるフリップチップ型発光素子に関するものであって、電流導入に金属ワイヤー等を用いることなく、金属配線のある放熱性に富むサブマウントなどにp側、n側電極をハンダ等で融着し、素子を搭載できるために、十分な放熱性と高い光取出し効率を確保することができる。
発光ユニット同士は、電気的には分離されていながら、光学的には光学結合層により結合しているため、ある発光ユニットの量子井戸層にて発光した光が、他の発光ユニット部分にも分布する。そのため、従来の構成では輝度が低下する発光ユニット間からも、本発明の発光装置では光が放射されてくるため、比較的均一性の高い面的な発光が得られる。また、発光ユニット間で発光強度のばらつきがある場合でも、あるいは多少ともばらつきのある劣化を示したとしても、光学結合層の存在により、面内発光強度の均一性が高い。さらに、仮に1つの発光ユニットに不良が生じて点灯しなくなった場合でも、不良発光ユニットの直上において、ある程度の発光強度が確保されるため、面均一性が良好である。
また、タイプBの形態における発光装置は、電気的に結合している発光ポイントのみの集積ではなく、電気的には分離された発光ユニットの中に適切な数の発光ポイントを有する点に特徴がある。すなわち、発光装置全体が電気的に結合している発光ポイントのみによって形成されている場合には、1つの発光ポイントの劣化は、装置全体の電流注入経路を変化させ、発光装置全体の発光強度の均一性などにその影響が出てしまう。しかし、1つの発光ユニット内に適切な数の複数の発光ポイントを有する際には、その劣化の電気的影響は、当該発光ユニット内に限定される。さらに発光ユニット間は前述のとおり光学的に結合しているため、1つの発光ポイントの劣化、すなわちその発光ポイントを含むある発光ユニットの劣化は、電気的な影響をうけない周辺の発光ユニットによって光学的に補償されやすいため、望ましい。
以下、タイプBの形態による集積型発光装置およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
図2−1に、タイプBの形態の集積型化合物半導体発光装置(以下、単に発光装置という)の1例を示す。また、図2−1の発光装置の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図2−2も参照しながら説明する。ここでは、図2−1、図2−2に示すように、1つの発光ユニット11の中に3つの発光ポイント17が存在し、4つの発光ユニット11によって1つの発光装置10を構成する例を示している。しかし、1つの発光ユニット11の中に存在する発光ポイントの個数および発光ユニットの集積の個数は特に限定はなく、提供される一つの基板内で適宜個数を設定可能である。発光ユニット11の集積の個数は、例えば2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。発光装置10における発光ユニット11の好ましい数は、トータルの発光ポイント17の数で25〜10000個であり、また発光ユニット11が2次元的に配列されていることも好ましい。また、一つの発光ユニット内に存在する発光ポイントの数にも特に限定はなく、例えば2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。ここで、好ましくは5〜100個であり、さらに好ましくは10個〜50個であり、2次元的に配列されていることも好ましい。
タイプBの形態において、1つの発光ユニットは、図に示すように基板21上に、少なくとも、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。図のように発光ユニット間分離溝12は、集積型化合物半導体発光装置10内の発光ユニット11を区画しているが、基板21および光学結合層23は、発光ユニット間に共通して設けられている。さらに、基板に最初に成膜されるバッファ層22も発光ユニット間に共通している。
この例では、第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層、活性層構造の一部、第一導電型クラッド層の一部が除去された構成となっており、除去した箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板に対して同じ側に配置されるように構成されている。その際、タイプBの形態では、1つの発光ユニットの中で、活性層構造25および第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26を含む)は分断されて、それぞれ独立して発光できる発光ポイント17を構成しており、第一導電型半導体層は発光ユニット中で共通して存在する。第二導電型側電極27は、発光ポイント17に1個ずつ設けられている。また、第一導電型側電極28は、1つの発光ユニットの中に少なくとも1つが存在すればよいが、発光ポイントの数に対応して設けてもよい。また、第一導電型側電極28の数は、1つの発光ユニット内の発光ポイントよりも多く存在してもかまわない。しかし、本形態においては、特にこのましく実施される第二導電型側電極がp型電極である場合に、第二導電型側電極の数または面積が、第一導電型側電極の数または面積よりも、多いかまたは広いことが望ましい。これは、1つの発光ユニットの中で、実質的な発光に寄与する部分が第二導電型側電極の下(あるいは見方によっては上)に存在する活性層構造内の量子井戸層だからである。従って、1つの発光ユニット内における第二導電型側電極の数または面積が、第一導電型側電極の数または面積よりも、相対的に多いかまたは広いほうが好ましい。また、後述する電流注入領域での関係では、第二電流注入領域の数または面積が、第一電流注入領域の数または面積よりも多いかまたは広いことが望ましい。また、電極の関係、電流注入領域の関係のいずれも上記を満たすことが最も望ましい。
本形態では、発光ポイント17は、発光ユニット11内で第一導電型半導体層で電気的に導通しており、発光ユニット11は、互いに発光ユニット間分離溝12により電気的には分離されている。即ち、発光ユニット間分離溝12は、薄膜結晶層中の導電性の高い層を分断しており、発光ユニット間で実質的な電気的結合はない。
一方、本形態では、光学結合層23が、発光ユニット間に共通して存在し、発光ユニットが光学的には結合した状況をつくっている。即ち、ある一つの発光ユニットから放射された光は、光学結合層での適度な伝播と放射(リーク)によって、他のユニット部分にも到達し、一つの発光ユニット部分のみに局在することなく、他の発光ユニット部分にも到達する。このためには、発光ユニット間分離溝12は、光学結合層の界面まで達しているか、または図2−1に示すように光学結合層が分断されない状態でその中まで達していることが必要である。そして、詳細は後述するが、光学結合層は実質的に絶縁性であり、また層内での適度な導波機能を実現するために、相対的に屈折率が高い材料で構成される。
また、タイプBの形態では、発光ユニット間分離溝の幅が、好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜50μm、最も好ましくは8〜15μmである。発光ユニット間分離溝の幅が短いと、光学結合層と共に、面発光の均一性が向上する。
図2−2には、同一基板上に、中央の発光装置10に隣接する別の発光装置も一部図示されており、それぞれの発光装置10は、装置間分離溝13によって分離されている。装置間分離溝13の中のスクライブ領域14で、スクライブしブレーキングして、各発光装置を分離して、サブマウント40上の金属面41に、金属ハンダ42を介して第二導電型側電極27および第一導電型側電極28をそれぞれ接続して、図2−1に示すような発光装置が得られる。
装置間分離溝は、この例では、基板に達するまで薄膜結晶層を除去して形成されており、好ましい形態の1つである。一方、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている形態も好ましく、また、基板の一部を除去して形成されている形態も可能である。これらの場合のいずれも、光学結合層よりも活性層構造側にある導電性の高い層の側壁に絶縁層を容易に形成できる。いずれの場合も、装置分離溝内のスクライブ領域にて分割して、1つ1つの発光装置に分離される。
タイプBの形態の発光装置では、絶縁層30は、薄膜結晶層22〜26の表面、側壁等を含んだ露出部分の大部分を覆っているが、図2−1の発光装置の側壁部分、即ち発光装置が分離されていない図2−2の状態における装置間分離溝13中の絶縁層形状は、いくつかの形態が可能である。いずれの形態においても、発光装置を分離する前に、発光装置を区画する装置間分離溝13中に、絶縁層が存在しない部分が存在することが好ましい。そして、絶縁膜が存在しない部分から、発光装置間を分離することが好ましい。その結果、タイプBの形態の発光装置の好ましい形状では、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない。絶縁層の好ましい形態の具体例を次に示す。
タイプBの1形態においては、図2−2に示すように、絶縁層30が装置間分離溝13の溝内の表面の全てを覆うのではなく、基板面(即ち、溝底面)と接している部分に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。このため装置間分離の際に薄膜結晶層にダメージを与えることがなく、また絶縁層の剥がれ等が生じないので好ましい。その結果得られる発光装置では、図2−1のA部分に示すように、絶縁層30が基板末端まで達していない。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証される結果、仮に発光ユニットの側壁ハンダの回り込みがあっても、発光装置の機能が損なわれることがなく信頼性の高い装置となる。
また、タイプBの異なる形態においては、図2−4に示すように、絶縁層30が基板面(即ち、溝底面)と基板に近接する溝側壁部分で形成されていない絶縁層非形成部分15が存在する。この構造も、装置間分離の際に絶縁層の剥がれ等が生じないので好ましい。得られる発光装置では、図2−3のB部分に示すように、絶縁層30が基板面まで達していない絶縁層非形成部分15が存在する。この図では、バッファ層22の壁面の全部と光学結合層23の壁面の一部までが露出しているが、光学結合層の側壁が覆われ、バッファ層の側壁の一部が露出していてもよい。露出している部分は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。好ましくは、光学結合層も絶縁層で覆われているものである。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出しているのが絶縁性の高い材料であれば、図2−1の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。また、基板の一部までエッチングして装置間分離溝を形成した場合には、溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層が絶縁層で被覆されている場合がある。
また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合には、次のような形状の発光装置が得られる。まず、装置間分離溝が、光学結合層23の途中まで形成される場合には、例えば図2−17および図2−18に示すように、発光装置端まで光学結合層23とバッファ層22が存在し、バッファ層の壁面はすべて露出し、光学結合層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、光学結合層の側壁は、バッファ層の側壁と一致して絶縁層で覆われていない部分と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。ここで、光学結合層23とバッファ層22の端は、図2−17および図2−18では、基板端面と一致しているが、分離方法によっては、基板21より内側に入ることも、基板21より外側に出ることもある。絶縁層30は、図2−17の例では、図2−17中にC部分で示すように、光学結合層23の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆している。これは、図2−1および図2−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中でとめた形態に対応する。また、図2−18の例は、図2−3および図2−4において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止めた形態に対応し、図2−18のD部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
次に、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成される場合には、例えば図2−19および図2−20に示すように、発光装置端までバッファ層22が存在し、バッファ層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、バッファ層の側壁は、絶縁層で覆われていない部分(装置端部分)と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。この場合も、バッファ層22の端は、図2−19および図2−20では、基板端面と一致しているが、分離方法によっては、基板21より内側に入ることも、基板21より外側に出ることもある。絶縁層30は、図2−19の例では、図2−19中にE部分で示すように、バッファ層22の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆し、さらに光学結合層23の側壁(装置間分離溝の側壁)を覆っている。これは、図2−1および図2−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中でとめた形態に対応する。また、図2−20の例は、図2−3および図2−4において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止めた形態に対応し、図2−20のF部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
これらの例のように、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図2−1、図2−3の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。
さらに、タイプBの形態の発光装置では、絶縁層30が図2−1のように、第一導電型側電極28の第1の光取り出し方向側の一部に接していること、即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)とのコンタクト部分の周囲に絶縁層が介在している部分があること、および第二導電型側電極27の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っていること、即ち、第二導電型側電極27と第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の間には絶縁層が存在せずに第二導電型側電極27の周囲に被覆している部分があることが好ましい。この形態は、第二導電型側電極27が形成された後に絶縁層30が形成され、絶縁層30が形成された後に第一導電型側電極28が形成されたことを意味する。このような順序による製造方法は、後述するが、第二導電型クラッド層26等の第二導電型半導体層にダメージが少なく、また第一導電型側電極のダメージが少ないために、高効率の発光装置が得られる。即ち、このような構造を有する発光装置は、高効率を示すことを意味する。
さらに、第二導電型側電極27の大きさは、第二電流注入領域35と同じであるが、第二導電型側電極の露出面37(第二導電型側電極露出部分)は、第二電流注入領域35の大きさよりも小さいことが好ましい。さらに、第一導電型クラッド層24の表面を覆う絶縁層30の一部に、第一導電型側電極28が第一導電型クラッド層24と接触するための開口が設けられ、それが、第一電流注入領域36となる。第一導電型側電極28の面積を、第一電流注入領域よりも大きくすることが好ましい。
また、第二導電型側電極と第一導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことも望ましい。
以下に、装置を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
タイプBの形態における基板は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<バッファ層>
タイプBの形態におけるバッファ層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<光学結合層>
タイプBの形態における光学結合層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプBの形態における第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<活性層構造>
タイプBの形態における活性層構造は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプBの形態における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプBの形態における第二導電型側電極は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプBの形態における第一導電型側電極は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプBの形態における絶縁層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができ。
<サブマウント>
タイプBの形態におけるサブマウントは、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
〔タイプBの形態の発光装置の製造方法〕
次に、タイプBの形態の集積型化合物半導体発光装置の製造方法について説明する。
タイプBの形態の発光装置の製造方法の1例では、図2−6に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光学結合層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図2−1、図2−2に示された形状を実現するためには、図2−6に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、タイプBの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、タイプBの形態においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からもタイプBの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、タイプBの形態では、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図2−7に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。この工程で、第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26)および活性層構造25が分断されて、活性層構造25、第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26)および第二導電型側電極27を有する独立した発光ポイント17の形状が形成される。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することも目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNxのような窒化物やSiOx等の酸化物をエッチングマスクとしてCl2等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程、第三エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に好ましくは、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl2、SiCl4、BCl3、SiCl4等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNxマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNxマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図2−8に示すように、発光ユニット間分離溝12を、第二エッチング工程により形成する。第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光学結合層23の一部までをエッチングすることが必要なことから、1μm以上となることが多く、例えば1〜5μmの範囲、または3μ以上の範囲、例えば3〜7μmの範囲となることがある。場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiNx等の窒化物マスク、SiOx等の酸化物マスク等は、Cl2系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiNx膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で4μmのGaN系材料をエッチングする最には、0.8μmを越えるSiNxマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNxマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNxマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において発光ユニット間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、AlF3が好ましく、この中でもSrF2が最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二、第三エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiNx,SiO2などと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrF2マスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiNx、SiO2などとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiNx、SiO2等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図2−21に示すように、SiNx、SiO2等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図2−8に示すように、発光ユニット間分離溝が形成される。
次に、図2−9に示すように、装置間分離溝13を、第三エッチング工程により形成する。第三エッチング工程では、エッチングすべきGaN系材料の厚みは、バッファ層、光学結合層をすべてエッチングすることが必要なことから、第二エッチング工程と比較しても、極めて深く、5〜10μmとなることがあり、また10μmを超えることもある。そのため、第二エッチング工程で説明したと同様に、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。その好ましい条件等(積層マスク等も含む)は、第二エッチング工程について説明したとおりである。
装置間分離溝は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要である。タイプBの1つの好ましい形態では、図2−9に示すように、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、装置を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同じ)の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光装置完成後の形態は、図2−17〜図2−20を参照。)。この場合、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。装置間分離溝を、光学結合層の途中まで形成する形態では、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時実施すること可能になるので、工程を簡略化できる利点がある。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程、第三エッチング工程は、いずれの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチングおよび/または第三エッチング工程を実施することも好ましい。図2−21に示すように、まずSiNx、SiO2等の酸に強い材料(好ましくはSiNx)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二および/または第三エッチングマスク52を形成する。そして、第二および/または第三エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。第一エッチングマスク51は、第二エッチング工程と第三エッチング工程が別々に実施される場合にも、両方のエッチングが終了するまで存在させることもできる。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
第三エッチング工程の後には、図2−10に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図2−11に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で絶縁層が除去されたスクライブ領域14を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極の周辺部分が絶縁層によって覆われているように実施することが望ましい。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さいことが望ましい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極の周辺から絶縁層で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層によって第二導電型側電極の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
絶縁層の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層がSiNx単層である場合には、SF6等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層がSiOxとTiOxからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、およびスクライブ領域14の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。スクライブ領域14(図2−2)の幅を2Lwsとすると、2Lwsは30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2Lwsは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
尚、タイプBの異なる形態(図2−3、図2−4に対応する)では、図2−12に示すように、装置間分離溝内の基板近傍の側壁部分の絶縁層をも除去し、絶縁層非形成部分15を設ける。この溝側壁の絶縁層の一部の同時除去は、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層がウエットエッチャントで除去され、図2−12に示したように装置間分離溝の基板側に絶縁層が存在しない形状が得られる。このように絶縁層を除去する場合においては、絶縁層が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、サブマウントとの接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。
タイプBの形態では、図2−11および図2−12のどちらの形態でも、マウント時の意図しない電気的短絡等を防止できる。通常は、図2−11のように、基板上で絶縁層が存在しないスクライブ領域14を形成する形態で十分である。尚、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成される場合にも、上記のプロセスで絶縁膜を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。
次に、図2−13、図2−14に示すように、第一導電型側電極28を形成する。図2−13および図2−14は、それぞれ図2−11および図2−12の構造に対して、第一導電型側電極28を形成した構造を示す。電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、AlおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。ここで、形成プロセスにおけるマージンをある程度見込むために、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
第一導電型側電極は、この例では、第一導電型クラッド層にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
タイプBの形態の製造方法では、第一導電型側電極が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、n側電極が第二導電型側電極のように絶縁層の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、タイプBの形態においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図2−13(図2−2)および図2−14(図2−4)の構造が形成された後には、各集積型化合物半導体発光装置を1つ1つ分離するために、装置間分離溝を使用して、基板対してダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
装置間分離工程の際に、装置間分離溝に一切の薄膜結晶層がない場合(図2−13および図2−14の構造がこれに相当する)には、薄膜結晶層へのプロセスダメージの導入がない。また、図2−13および図2−14のように、スクライブ領域に絶縁層も存在しない場合には、スクライブ時に、絶縁層の剥離等が生じる可能性もない。
また、装置間分離溝は、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合(例えば、発光ユニット間分離溝と同等の深さで、光学結合層の途中まで溝が形成されている場合)もあるが、この場合にも、装置間分離溝を使用して、基板に対してのダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
傷入れ(スクライブ)が終了した後には、集積型化合物半導体発光装置はブレーキング工程において、1装置ずつに分割され、好ましくはハンダ材料等によってサブマウントに搭載する。
以上のようにして、図2−1および図2−3に示した集積型化合物半導体発光装置が完成する。
タイプBの形態の製造方法では、光学結合層を有する有利な構造を効果的に製造できることに加えて、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極の形成、エッチング工程(第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程)、絶縁層の形成、絶縁層の除去(第二導電型側電極露出部分および第一電流注入領域の形成や装置間分離溝近傍の絶縁層の除去)、第一導電型側電極の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極にもダメージのない発光装置を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光装置は、第二導電型側電極、絶縁層、第一導電型側電極がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極は、第二導電型クラッド層(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層を介在しないで接しており、第二導電型側電極の上部周辺には絶縁層で覆われた部分があり、第一導電型側電極と第一導電型クラッド層(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層が介在している部分が存在している。
<<2−3.タイプCの形態の特徴>>
タイプCの集積型発光装置、およびその製造方法の特徴は次の事項で特定される。
1. 複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを少なくとも有し、
第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見て前記第一導電型半導体層側方向であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離され、
さらに、前記第一導電型半導体層より前記第1の光取り出し方向側に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層と、前記光学結合層の前記第1の光取り出し方向側にバッファ層を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
2. 前記光学結合層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられている層であることを特徴とする上記1記載の発光装置。
3. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
n1<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1または2記載の発光装置。
4. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記バッファ層の平均屈折率をnbfで表したとき、
nbf≦noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光装置。
5. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の発光装置。
6. さらに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
の関係を満たすようにtocが選択されることを特徴とする上記5記載の発光装置。
7. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光装置。
8. 前記光学結合層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光装置。
9. 前記複数の発光ユニットは、前記発光ユニット間分離溝が、隣接する発光ユニット間で、前記薄膜結晶層の表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去して形成されていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の発光装置。
10. 前記発光ユニット間分離溝の幅が、2〜300μmの範囲である上記1〜9のいずれかに記載の発光装置。
11. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記光学結合層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
12. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
13. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層を除去して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
14. 前記発光ユニット間分離溝内の底面および側面の全面を被覆し、この発光装置の側面に露出した層のうち、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層の側面を被覆し、前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っている絶縁層を有することを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の発光装置。
15. この発光装置の側面に、前記絶縁層が形成されていない絶縁層非形成領域が存在し、かつ、前記絶縁層が少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造、および前記第二導電型半導体層の側壁を覆っていることを特徴とする上記14記載の発光装置。
16. 前記薄膜結晶層が、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光装置。
17. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の発光装置。
18. 前記絶縁層が、複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記14または15記載の発光装置。
19. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光装置。
20. 前記光学結合層からバッファ層側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすようにバッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜を有することを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光装置。
21. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光装置。
22. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、金属ハンダによって金属面を有する支持体に接合されていることを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の発光装置。
23. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記支持体の金属面との接合が、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによってなされていることを特徴とする上記22記載の発光装置。
24. 前記支持体の母材がAlN、Al2O3、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記22または23記載の発光装置。
25. 前記支持体の発光装置間の分離部分に、金属層が形成されていないことを特徴とする上記22〜24のいずれかに記載の発光装置。
26. 複数の発光ユニットを支持体上に有する集積型化合物半導体発光装置の製造方法であって、
基板上に、バッファ層および光学結合層をこの順に形成する工程と、
少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を成膜する工程と、
前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程と、
前記第一導電型半導体層の一部を表面に露出させる第一エッチング工程と、
前記第一エッチング工程により、露出した第一導電型半導体層の面に第一導電型側電極を形成する工程と、
前記発光ユニットを互いに電気的に分離するための発光ユニット間分離溝を形成するために、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部までを除去する第二エッチング工程と、
複数の発光装置に分離するための装置間分離溝を形成するために、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層を除去する第三エッチング工程と、
前記基板を除去する工程と
を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置の製造方法。
27. 前記の基板を除去する工程の前に、前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、支持体上の金属面に接合して前記支持体に搭載する工程を有することを特徴とする上記26記載の方法。
28. 前記の基板を除去する工程の後、複数の発光装置に分離する工程を有することを特徴とする上記27記載の方法。
29. 前記光学結合層の成膜工程を、前記薄膜結晶層の成膜工程の一部として、かつ前記第一導電型半導体層の形成に先立って行うことを特徴とする上記26〜28のいずれかに記載の方法。
30. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
n1<noc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜29のいずれかに記載の方法。
31. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記バッファ層の平均屈折率をnbfで表したとき、
nbf≦noc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜30のいずれかに記載の方法。
32. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記26〜31のいずれかに記載の方法。
33. さらに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
の関係を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記32記載の方法。
34. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜33のいずれかに記載の方法。
35. 前記光学結合層を、複数の層の積層構造として成膜することを特徴とする上記26〜34のいずれかに記載の方法。
36. 前記第三エッチング工程を、前記第二エッチング工程と同時にまたは別に行い、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
37. 前記第三エッチング工程を、前記薄膜結晶層表面からバッファ層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
38. 前記第三エッチング工程において、少なくとも前記基板表面に達するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
39. 前記第二および第三エッチング工程が、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれるガス種を用いたドライエッチング法で行われることを特徴とする上記26〜38のいずれかに記載の方法。
40. エッチングマスクとして、パターニングされた金属フッ化物層を用いることを特徴とする上記39記載の方法。
41. 前記金属フッ化物層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記40記載の方法。
42. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする上記26〜41のいずれかに記載の方法。
43. 前記絶縁層を形成する工程が、第一〜第三エッチング工程の後に行われることを特徴とする上記42記載の方法。
44. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、または前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去し、スクライブ領域を形成する工程と
を有することを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
45. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝の側壁に形成された絶縁層のうち、前記溝底面側の一部を除去する工程と
を有することを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
46. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記44記載の方法。
47. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記45記載の方法。
48. 前記の基板を除去する工程を、前記基板に対しては透明であって、前記バッファ層に対しては吸収される波長の光を前記基板側から照射して、前記バッファ層の一部を分解して、前記基板と前記バッファ層の界面での剥離を生じさせることで行うことを特徴とする上記26〜47のいずれかに記載の方法。
49. 前記第一導電型側電極および第二導電型側電極と前記支持体上の金属面との接合を、金属ハンダで行うことを特徴とする上記27記載の方法。
50. 前記支持体の母材が、金属、AlN、Al2O3、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記27または49記載の方法。
51. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記26〜50のいずれかに記載の方法。
タイプCの形態によれば、大面積の面光源的発光が可能な集積型の化合物半導体発光装置であって、発光強度の面内均一性がすぐれた装置を提供することができる。また、発光ユニット毎に、発光強度が多少ともばらついた劣化を示したとしても、高い面内均一性が確保され、かつ高い面内均一性を確保し続けることができる装置を提供することができる。
特に、発光装置の面積が数cm2を越える場合であっても、発光強度の均一性の比較的高い、面的な青色または紫外発光が実現可能である。また、本形態は、p側、n側いずれの電極も第1の光取り出し方向側とは反対側に配置されるフリップチップ型発光素子に関するものであって、電流導入に金属ワイヤー等を用いることなく、金属配線のある放熱性に富むサブマウントなどにp側、n側電極をハンダ等で融着し、素子を搭載できるために、十分な放熱性と高い光取出し効率を確保することができる。
本形態では、発光ユニット同士は、電気的には分離されていながら、光学的には光学結合層により結合しているため、ある発光ユニットの量子井戸層にて発光した光が、他の発光ユニット部分にも分布する。そのため、従来の構成では輝度が低下する発光ユニット間からも、本形態の発光装置では光が放射されてくるため、比較的均一性の高い面発光が得られる。また、発光ユニット間で発光強度のばらつきがある場合でも、あるいは多少ともばらつきのある劣化を示したとしても、光学結合層の存在により、面内発光強度の均一性が高い。さらに、仮に1つの発光ユニットに不良が生じて点灯しなくなった場合でも、不良発光ユニットの直上において、ある程度の発光強度が確保されるため、面均一性が良好である。
また、タイプCの形態では第1の光取り出し方向に基板が存在しないため、以下のような利点を併せ持つことが出来る。たとえばC+サファイア基板上に一般的なMOCVD法で形成された、GaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、InAlGaN系材料、InAlGaBN形材料などの材料いずれかの材料で構成された半導体発光素子であれば、これら材料のサファイア基板面側は窒素面となり、これら材料の成長方向はGa面となるのが普通である。ここで、一般的にGa面はケミカルエッチング等のしにくい面であって、光取り出し効率を向上させるための粗面化などは実施しにくいが、窒素面は比較的容易にケミカルエッチングが可能であって、これによって粗面化などが可能である。これに対して、基板が存在する場合、代表的なサファイア等の基板ではケミカルエッチングがほとんど不可能である。従って、タイプCの形態では、サファイア基板等を剥離し、その後に露出した窒素面をケミカルエッチングすることで、容易に粗面化が可能になり、その結果、発光装置の発光効率等を容易に向上することができる。
以下、タイプCの形態による発光装置およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
図3−1に、タイプCの形態の集積型化合物半導体発光装置(以下、単に発光装置という)の1例を示す。また、図3−1の発光装置の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図3−2も参照しながら説明する。ここでは、図3−1、図3−2に示すように、3つの発光ユニット11によって1つの発光装置10を構成する例を示しているが、発光ユニット11の集積の個数は特に限定はなく、提供される一つの基板内で適宜個数を設定可能である。例えば発光ユニット11の数は2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。発光装置10における発光ユニット11の好ましい数は25〜10000個であり、また発光ユニット11が2次元的に配列されていることも好ましい。
タイプCの形態において、1つの発光ユニットは、図に示すように、少なくとも、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。図のように発光ユニット間分離溝12は、集積型化合物半導体発光装置10内の発光ユニット11を区画しているが、光学結合層23は、発光ユニット間に共通して設けられている。さらに、製造過程において、基板21に最初に成膜されるバッファ層22も発光ユニット間に共通している。
この例では、第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層、活性層構造の一部、第一導電型クラッド層の一部が除去された構成となっており、除去した箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板に対して同じ側に配置されるように構成されている。
タイプCの形態では、発光ユニット11は、互いに発光ユニット間分離溝12により電気的には分離されている。即ち、発光ユニット間分離溝12は、薄膜結晶層中の導電性の高い層を分断しており、発光ユニット間で実質的な電気的結合はない。尚、タイプCの形態において、1つの発光ユニット内の発光ポイント(独立した発光部)は1つである。
一方、タイプCの形態では、光学結合層23が、発光ユニット間に共通して存在し、発光ユニットが光学的には結合した状況をつくっている。即ち、ある一つの発光ユニットから放射された光は、光学結合層での適度な伝播と放射(リーク)によって、他のユニット部分にも到達し、一つの発光ユニット部分のみに局在することなく、他の発光ユニット部分にも到達する。このためには、発光ユニット間分離溝12は、光学結合層の界面まで達しているか、または図3−1に示すように光学結合層が分断されない状態でその中まで達していることが必要である。そして、詳細は後述するが、光学結合層は実質的に絶縁性であり、また層内での適度な導波機能を実現するために、相対的に屈折率が高い材料で構成される。
また、タイプCの形態では、発光ユニット間分離溝の幅が、好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜50μm、最も好ましくは8〜15μmである。発光ユニット間分離溝の幅が短いと、光学結合層と共に、面発光の均一性が向上する。
図3−2には、中央の発光装置10に隣接する別の発光装置も一部図示されている。製造過程ではこのように、同一基板21上に、それぞれの発光装置10が、装置間分離溝13によって分離されて形成される。図3−1に示す完成した発光装置は、図3−2の中の1つの発光装置10を、支持体40上の金属面41に、金属ハンダ42を介して第二導電型側電極27および第一導電型側電極28をそれぞれ接続した構造に相当する。製造方法の1例は、後述する。
装置間分離溝13は、図3−2の例では、基板に達するまで薄膜結晶層を除去して形成されており、好ましい形態の1つである。一方、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている形態も好ましい。これらの場合のいずれも、光学結合層よりも活性層構造側にある導電性の高い層の側壁に絶縁層を容易に形成できる。
タイプCの形態の発光装置では、絶縁層30は、薄膜結晶層22〜26の表面、側壁等を含んだ露出部分の大部分を覆っているが、図3−1の発光装置の側壁部分、即ち発光装置が分離されていない図3−2の状態における装置間分離溝13中の絶縁層形状は、いくつかの形態が可能である。いずれの形態においても、絶縁層は基板に接触せず、発光装置を分離する前に、発光装置を区画する装置間分離溝13中に、絶縁層が存在しない部分が存在することが好ましい。そして、絶縁膜が存在しない部分から、発光装置間が分離されることが好ましい。その結果、タイプCの形態の発光装置の好ましい形状では、側壁を覆う絶縁層は、バッファ層の第1の光取り出し方向側の界面まで達していない。絶縁層の好ましい形態の具体例を次に示す。
タイプCの1形態においては、図3−2に示すように、絶縁層30が装置間分離溝13の溝内の表面の全てを覆うのではなく、絶縁層30が基板面(即ち、溝底面)と基板に近接する溝側壁部分で形成されていない絶縁層非形成部分15が存在する。この構造では、基板21に付着している絶縁層30がないので、基板21を例えば剥離により除去するときに、絶縁層の剥がれ等が生じる可能性がないので最も好ましい。得られる発光装置では、図3−1のB部分に示すように、絶縁層30が基板面まで達していない絶縁層非形成部分15が存在する。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証される結果、仮にハンダの回り込みがあっても、発光装置の機能が損なわれることがなく信頼性の高い装置となる。
この図3−1では、バッファ層22の壁面の全部と光学結合層23の壁面の一部までが露出しているが、光学結合層の側壁が覆われ、バッファ層の側壁の一部が露出していてもよい(図3−11参照)。露出している部分は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出しているのが絶縁性の高い材料であれば、信頼性の高い装置となる。
また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合には、次のような形状の発光装置が得られる。まず、装置間分離溝が、光学結合層23の途中まで形成される場合には、例えば図3−13および図3−14に示すように、発光装置端まで光学結合層23とバッファ層22が存在し、バッファ層の壁面はすべて露出し、光学結合層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、光学結合層の側壁は、バッファ層の側壁と一致して絶縁層で覆われていない部分と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。絶縁層30は、図3−13の例では、図3−13中にC部分で示すように、光学結合層23の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆している。この形態は、図3−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止め、光学結合層の溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成し、スクライブ領域から装置を分離した形状に対応する。また、図3−14の例は、図3−1および図3−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止めた形態に対応し、図3−14のD部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
次に、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成される場合には、例えば図3−15および図3−16に示すように、発光装置端までバッファ層22が存在し、バッファ層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、バッファ層の側壁は、絶縁層で覆われていない部分(装置端部分)と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。絶縁層30は、図3−15の例では、図3−15中にE部分で示すように、バッファ層22の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆し、さらに光学結合層23の側壁(装置間分離溝の側壁)を覆っている。この形態は、図3−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止め、バッファ層の溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成し、スクライブ領域から装置を分離した形状に対応する。また、図3−16の例は、図3−1および図3−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止めた形態に対応し、図3−16のF部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
これらの例のように、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図3−1の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。
さらに、本発明の発光装置では、絶縁層30が図3−1のように、第一導電型側電極28の第1の光取り出し方向側の一部に接していること、即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)とのコンタクト部分の周囲に絶縁層が介在している部分があること、および第二導電型側電極27の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っていること、即ち、第二導電型側電極27と第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の間には絶縁層が存在せずに第二導電型側電極27の周囲に被覆している部分があることが好ましい。この形態は、第二導電型側電極27が形成された後に絶縁層30が形成され、絶縁層30が形成された後に第一導電型側電極28が形成されたことを意味する。このような順序による製造方法は、後述するが、第二導電型クラッド層26等の第二導電型半導体層にダメージが少なく、また第一導電型側電極のダメージが少ないために、高効率の発光装置が得られる。即ち、このような構造を有する発光装置は、高効率を示すことを意味する。
さらに、第二導電型側電極27の大きさは、第二電流注入領域35と同じであるが、第二導電型側電極の露出面37(第二導電型側電極露出部分)は、第二電流注入領域35の大きさよりも小さいことが好ましい。さらに、第一導電型クラッド層24の表面を覆う絶縁層30の一部に、第一導電型側電極28が第一導電型クラッド層24と接触するための開口が設けられ、それが、第一電流注入領域36となる。第一導電型側電極28の面積を、第一電流注入領域よりも大きくすることが好ましい。
また、第二導電型側電極と第一導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことも望ましい。
以下に、装置を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
タイプCの形態では、基板はその上に半導体層を成長させることが可能なものが選ばれ、また最終的に除去できるものが用いられる。基板は、透明である必要はないが、製造工程で、基板を後述するレーザディボンディングにより剥離するときには、その特定の波長のレーザ光を透過することが好ましい。また、電気的には絶縁性基板である事が好ましい。これは、製造工程で、同様にレーザディボンディング法によって基板を剥離する際に、導電性基板ではその自由電子による吸収等によって、このような基板剥離方法を採用しにくくなるからである。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。また、基板を除去する際にケミカルエッチングを前提とする際には、塩酸等で容易に除去可能なZnOが望ましい。
タイプCの形態で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板をInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
基板は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して集積型化合物半導体発光装置を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層との関係で、意図的に凹凸をつけた基板にしておき、これによって、薄膜結晶層と基板との界面で発生する貫通転移を発光素子あるいは、後述する発光ユニットの活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
基板の厚みとしては、タイプCの1形態においては、装置作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、半導体発光装置の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。基板を用いて必要な半導体層を成長した後に、基板は、例えば研磨、エッチング、またはレーザディボンディング等により除去される。
<バッファ層>
バッファ層22は、基板上に薄膜結晶成長する上では、転移の抑制、基板結晶の不完全性の緩和、基板結晶と所望の薄膜結晶成長層との各種の相互不整合の軽減など、主に薄膜結晶成長のための目的のために形成される。
タイプCの形態で望ましいInAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、GaN系材料などを異種基板上に結晶成長する際には、必ずしも基板との格子定数のマッチングが確保されないので、バッファ層は特に重要である。たとえば、後述する光学結合層以降の薄膜結晶成長層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長する際には、600℃近傍の低温成長AlN層をバッファ層に用いたり、あるいは500℃近傍で形成した低温成長GaN層を用いたりすることも出来る。また、800℃から1000℃程度の高温で成長したAlN、GaN、AlGaN、InAlGaN、InAlBGaNなども使用可能である。これらの層は一般に薄く5〜40nm程度である。
バッファ層22は必ずしも単一の層である必要はなく、低温で成長したGaNバッファ層の上に、結晶性をより改善するために、ドーピングを施さない1000℃程度の温度で成長したGaN層を数μm程度有するようにしてもかまわない。実際には、このような厚膜バッファ層を有することが普通であって、その厚みは0.5〜7μm程度である。タイプCの形態においては、バッファ層は、化合物半導体発光装置内の発光ユニット間に共通して存在することから、ドーピングされた層を有さないことが望ましい。しかし、バッファ層内に結晶性等の観点でドーピングされた層を有するようにする際には、ドーピング層を成長した後に、さらにアンドープ層を形成し、発光ユニット間の電気的絶縁が完全に確保できるようにすることが必須である。また、バッファ層内にドーピング層とアンドープ層を積層して形成することも可能である。
また、バッファ層の形成に関しては、いわゆるマイクロチャネルエピタキシーの一種である横方向成長技術(ELO)も使用可能であり、これによってサファイア等の基板とInAlGaN系材料の間で発生する貫通転移の密度を大幅に低減することも可能である。さらに基板の表面に凹凸の加工を施したような加工基板を使用する際にも、横方向成長をさせる際に転位の一部を消滅させることが可能であって、このような基板とバッファ層の組み合わせをこのパートで開示される発明に適応する事は好ましい。さらに、この際には基板上に形成された凹凸によって光取り出し効率が向上する効果もあって、好ましい。
タイプCの形態においては、バッファ層は各発光ユニット間に共通の層となることから後述する光学結合層と一体となって、発光ユニット間の光学的結合を実現するようにしてもかまわない。また、この際には、各発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しないようにしなければならない。また、バッファ層の一部または全部が光学結合層を兼ねていてもよい。
タイプCの形態においては、後述する光学結合層に光を閉じ込めて導波するために、発光装置の発光波長におけるバッファ層の屈折率は、光学結合層の平均屈折率以下であり、好ましくは光学結合層の平均屈折率未満である。バッファの物理厚みは、発光装置の発光波長をλ(nm)、バッファの平均屈折率をnbfで表したとき、4λ/nbfよりも厚いことが望ましい。
さらに、バッファ層は、基板を製造工程中に除去するので、タイプCの1形態においてはその表面が第1の光取り出し方向側の面になる。後述するように基板の剥離の1つ方法として、基板に対して透明で、バッファ層に対して吸収のある光を用いて、バッファ層の一部を光学的に分解して、基板を剥離する方法が挙げられる。そのような方法を採用する場合には、その方法に適合した材料が選択される。たとえば、基板がサファイアで、バッファ層がGaNである場合には、248nmの発振波長を有するエキシマレーザを薄膜結晶成長がされていない基板側から光を照射し、バッファ層のGaNを金属Gaと窒素に分解して、その結果、基板を剥離するレーザディボンディングを実施することも可能である。
タイプCの形態では、第1の光取り出し方向に基板が存在しないので、バッファ層の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されることが望ましい。バッファ層−空気界面での屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで、後述する光学結合層からバッファ層側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすようにバッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜を有する事は望ましい。たとえばバッファ層がGaNである場合には、低反射コーティング膜としてAl2O3等を用いることが望ましい。これは素子の発光波長におけるバッファ層の屈折率nbfに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nbfに近いことが望ましいので、GaNの屈折率の平方根に対して、Al2O3の屈折率が近いからである。
タイプCの形態においては、バッファ層の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面あるいは粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。ここで、素子の発光波長をλ(nm)とすると、バッファ層の粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
タイプCの形態では、バッファ層の少なくとも一部は、装置端で露出する。従って、少なくとも露出部分をアンドープ部分とすることが、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができるので好ましい。
<光学結合層>
タイプCの形態の光学結合層は、発光装置を構成する発光ユニット間の光学的結合を実現するための層であって、かつ、集積型半導体発光装置内に内在する発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しない層である。
光学結合層23は、化合物半導体層で形成されることが好ましく、図3−1、2に示すように、バッファ層と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層)の間に存在することが望ましい。また、成膜方法は特に制限はないが、集積型半導体発光装置を簡便に作製するために、他の薄膜結晶層と同時に、薄膜結晶成長技術を用いて作製することが望ましい。
タイプCの形態において、光学結合層は、少なくとも層内に光の閉じ込めが生じるように、即ち光の分布密度が高くなるようにその屈折率が選ばれる。従って、光学結合層の平均屈折率(noc)は、第一導電型クラッド層の平均屈折率より大きい。特に光学結合層と活性層構造の間に存在する第一導電型半導体層の平均屈折率より大きくすることが好ましい。またバッファ層の平均屈折率(nbf)以上、即ちnbf≦nocであり、特にバッファ層の平均屈折率より大きいこと、即ちnbf<nocが好ましい。また、光学結合層を構成する材料は、InAlGaN系等のIII―V族窒化物に基づく発光装置である場合には、活性層構造から発せられる光が吸収されない程度にInやAlを含有することも望ましく、特に屈折率を高める観点ではInを含むことが好ましい。
また、光学結合層は、単層である必要はなく、複数の層で構成されてもよい。複数の層で構成されるとき、例えば、AlGaN、InGaN、InAlGaNおよびGaN等の層が複数存在してもよいし、超格子構造であってもよい。
ここで、各層の平均屈折率(nav)は、その層を構成するn種類の材料それぞれの屈折率(nx)に対して、その材料の物理的な厚み(tx)との積をとり、これを全体の厚みで除した値であり、
nav=(n1×t1+n2×t2+・・・+nn×tn)/(t1+t2+・・・+tn)で計算される。
さらに、光学結合層には、構造によって光を散乱、多重反射、薄膜干渉を引き起こすなどの効果を発現する場合もあり、これらの効果によっても、発光装置全体の第1の光取り出し方向側の面での均一性の向上も可能である。
光学結合層の例としては、たとえば、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaN、バッファ層がアンドープGaN、基板がサファイアであった場合には、光学結合層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がサファイアであった場合には、光学結合層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInaGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がSiドープGaNであった場合には、光学結合層として厚膜のアンドープGaN中に発光波長に透明な組成のInbGa1−bNを所望の厚みで所望の数有する多層構造などが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
これらのような構造において、さらに光学結合層としては、InbGa1−bNおよびIncAldGa1−c−dN等の材料を含む場合も望ましく、その組成b、c、dと厚み等を適宜選択することにより、460nmで透明で、かつ第一導電型半導体層に含まれることがあるn−GaN、バッファ層に含まれることのあるアンドープGaN、基板として含まれることのあるサファイアよりも屈折率を大きくできるので、光学結合層として使用可能であり、それらを単層で、またはそれらとアンドープGaN層とから選ばれる複数の積層構造として使用してもよい。
また、光学結合層が化合物半導体発光素子の発光波長を吸収しないようにIn組成、InGaN層の厚みを設定したInGaN層とGaN層からなる超格子・量子井戸構造を有することも好ましい。
また、光学結合層は、各発光ユニットから発せられた光の一部を受けて発光ユニット相互に光を伝播するマルチモード光導波路として機能するように、その厚みが選ばれることも重要である。
ここで光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)、発光装置の発光波長をλ(nm)、光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表し、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2―(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義する。そして、光学結合層を第一導電型半導体層の平均屈折率ではさまれた対称スラブ導波路とみなすと、その導波路がマルチモードとなる条件は規格化周波数がπ/2以上であればよいから
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されることが望ましい。さらに望ましくは、より厚みのある導波路であればよく、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
の関係を満たすようにtocが選択されることが望ましい。
この条件は、屈折率の条件と共に、光学結合層に光を閉じ込めるために望ましい条件である。具体的には、たとえば波長460nmにおいて光学結合層の平均屈折率が2.50であって、第一導電型半導体層の平均屈折率が2.499であったとすると、光学結合層の厚みとしては、約3.3μm以上であれば、望ましいことになる。
このようにして、光の閉じ込めを実現することによって、発光ユニット間の光学的結合は強くなり、集積型化合物半導体発光装置は均一な発光を実現しやすくなる。そして、発光ユニットの間の発光ユニット間分離溝部分においても光学結合層が存在することから発光ユニット間分離溝近傍からも比較的均一な発光が得られる。
なお、光学結合層に極端に光を閉じ込めると、集積型化合物半導体発光装置は、発光の均一性は向上するものの、光取り出しがしにくくなることから、光学結合層の厚み、材料、構造、構成、屈折率等を適宜選択し、ある程度リーキーでありながら導波が生じるようにすることが好ましい。特にその厚みに関しては、光学結合層の厚みを極端に厚くしてしまい、導波路の光閉じ込めを過剰にすることも望ましくなく、例えば、その上限は30μm以下であることが望ましく、10μm以下であることがより望ましく、5μm以下であることが最も望ましい。
さらに、光学結合層は、各発光ユニットに共通して存在するが、各発光ユニット間の電気的絶縁を阻害しないように材料選択をすることが必須である。もし、例えば発光装置内のすべての発光ユニットが電気的に結合しているとすると、発光ユニット(一対のpn接合)の1つが劣化した際に、その影響は劣化した発光ユニットの光度低下にとどまらずに、集積型化合物半導体発光装置内全体の電流注入経路の変化として現れる。そのため、1発光ユニットの劣化が発光装置の特性変動として大きく現れてしまう。タイプCの形態においては、光学結合層は、各発光ユニット間の電気的絶縁を確保できるように材料選択をすることが極めて好ましい。電気的に絶縁されていることで、駆動中にある発光ユニットが劣化したとしても、その劣化は、発光ユニット1つの問題で済む。さらに、隣接する発光ユニットが光学的に結合していることで、劣化してしまった発光ユニット部分の近傍からも光学結合層が導波した光の出力がある程度期待され、発光強度も極端に低下することを免れる。このため、劣化した部分を含めた発光強度の面内均一性が比較的や保持されやすい。
ここで、光学結合層は、1つの発光ユニットにおける劣化等の変化が他のユニットに影響を及ぼさない程度に実質的に絶縁性を有していればよく、例えば層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が0.5(Ω・cm)以上であることが好ましい。さらに好ましくは、1.0(Ω・cm)以上であり、さらに好ましくは1.5(Ω・cm)以上、最も好ましくは5(Ω・cm)以上である。比抵抗が高いためには、光学結合層はアンドープであることが望ましいが、光学結合層が複数の層からなる場合などにおいては、一部ドーピングされている層があっても、これがアンドープ層の間にあり、発光ユニット間が電気的に結合していないのであれば問題はない。この場合、第一導電型半導体層(例えば第一導電型クラッド層)に隣接する層が上記の比抵抗を有していればよい。また、一般的に半導体においては、その材料に対して透明な波長領域では、同一の材料であっても、アンドープ層の屈折率が意図的にドーピングされ多数のキャリアを有する層よりも屈折率が高くなるので、光学的な特性から考えても、また、電気的特性から考えても、アンドープ層は好ましい。
タイプCの形態においては、光学結合層は、発光ユニット同士を光学的に結合し、光を分布・遍在させるのに対し、前述のバッファ層は基板上に結晶成長するときに各種の不整合の軽減を図るものであるので、その機能は異なる。しかし、同一の層が2つの機能を同時に有することがある。また、光学結合層またはバッファ層が複数の層で構成されているとき、一部の層が2つの機能を有する場合もある。さらに組成が同一でも成長方法・条件が異なる場合には、一方の機能しか有さない場合もある。
前述のとおり、タイプCの形態の発光ユニット間には、発光ユニット間分離溝が存在し、この分離溝が、少なくとも第一導電型クラッド層を分断するように形成されている。一般にクラッド層などは発光ユニット内のpn接合にキャリアを注入するために、ドーピングされており、電気的に絶縁を確保するためには、タイプCの形態では、クラッド層を各発光ユニットで分離することが必要であるからである。従って、発光ユニット間分離溝は、光学結合層の界面まで達していれば十分であるが、制御が困難であるため、通常は光学結合層の途中まで形成されている。
また、発光ユニット間分離溝の中に露出した薄膜結晶層の側面は、絶縁層で覆われていることが望ましい。これは、発光装置を支持体等にフリップチップマウントした際に、薄膜結晶層の側壁などでのハンダによる短絡等の発生を防止できるからである。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプCの形態における第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<活性層構造>
タイプCの形態における活性層構造は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプCの形態における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプCの形態における第二導電型側電極は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプCの形態における第一導電型側電極は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプCの形態における絶縁層は、タイプAの形態と同様の構成を採用することができる。
<支持体>
タイプCの形態の発光装置では、基板が存在しないために、支持体に要求される機能は、タイプAで説明したサブマウントと多少異なる点がある。
支持体40は、基板剥離の際の薄膜結晶層の支持体としての役割を果たせることが必須であるが、さらに、本支持体は、素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つことも非常に望ましい。この観点で、支持体の母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることがことが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できる点で好ましい。またAl2O3、Si、ガラス等も安価であって支持体として利用範囲が広く好ましい。また、後述する基板除去時にレーザ照射によって薄膜結晶層の一部を金属Gaと窒素に分解した際には、金属Gaを除去する際にウェットエッチングを実施する事が望ましいが、この際も、支持体はエッチングされない材質であることが望ましい。さらに、基板そのものをウェットエッチングすることも可能であって、この際にも支持体はエッチングされない材質であることが望ましい。尚、支持体の母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆う事が望ましい。金属の母材としては、発光素子の発光波長における反射率の高い材料が望ましく、Al、Ag等が望ましい。また、誘電体等で覆う際には、各種CVD法で形成したSiNx、SiO2等が望ましい。
支持体は、さらに素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つとの観点では、母材の上に、電流導入用の電極配線を有することが望ましく、また、この電極配線上で装置を搭載する部分には、適宜発光装置と支持体の接合用の接着層を有することが望ましい。ここで、接着層は、Agを含んだペースト、金属バンプ等を使用することも可能ではあるが、金属ハンダで構成されていることが、放熱性の観点で非常に望ましい。金属ハンダはAgを含んだペースト材、金属バンプなどと比較して圧倒的に放熱性に優れたフリップチップマウントが実現可能である。ここで、金属ハンダとしては、In、InAg、InSn、SnAg、PbSn、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。特に、AuSn、AuSi、AuGe等の高融点ハンダがより望ましい。これは、発光素子を超高出力動作させるために大電流を注入すると、素子近傍の温度が200℃程度に上昇するためであって、ハンダ材の融点として駆動時の素子温度よりも高い融点を有する金属ハンダがより好ましい。また、場合によっては、フリップチップマウント時の素子の段差を打ち消すために、バンプを用い、さらに、金属ハンダ材でその周りを埋めながら接合する事も望ましい。
また、タイプCの形態の集積型化合物半導体発光装置は、支持体上の金属配線を自在に変化させることで、1つの発光装置内の各発光ユニットを並列接続にも、直列接続にも、またはこれらを混在させることも可能である。
〔タイプCの形態の発光装置の製造方法〕
次に、タイプCの形態の集積型化合物半導体発光装置の製造方法について説明する。
タイプCの形態の発光装置の製造方法の1例では、図3−4に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光学結合層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図3−1、図3−2に示された形状を実現するためには、図3−4に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、本形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、本形態においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からも本発明では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、本形態では、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図3−5に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNxのような窒化物やSiOx等の酸化物をエッチングマスクとしてCl2等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程、第三エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に好ましくは、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl2、SiCl4、BCl3、SiCl4等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNxマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNxマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図3−6に示すように、発光ユニット間分離溝12を、第二エッチング工程により形成する。第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光学結合層23の一部までをエッチングすることが必要なことから、1μm以上となることが多く、例えば1〜5μmの範囲、または3μ以上の範囲、例えば3〜7μmの範囲となることがある。場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiNx等の窒化物マスク、SiOx等の酸化物マスク等は、Cl2系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiNx膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で4μmのGaN系材料をエッチングする最には、0.8μmを越えるSiNxマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNxマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNxマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において発光ユニット間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、AlF3が好ましく、この中でもSrF2が最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二、第三エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiNx,SiO2などと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrF2マスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiNx、SiO2などとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiNx、SiO2等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図3−17に示すように、SiNx、SiO2等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図3−6に示すように、発光ユニット間分離溝が形成される。
次に、図3−7に示すように、装置間分離溝13を、第三エッチング工程により形成する。第三エッチング工程では、エッチングすべきGaN系材料の厚みは、バッファ層、光学結合層をすべてエッチングすることが必要なことから、第二エッチング工程と比較しても、極めて深く、5〜10μmとなることがあり、また10μmを超えることもある。そのため、第二エッチング工程で説明したと同様に、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。その好ましい条件等(積層マスク等も含む)は、第二エッチング工程について説明したとおりである。
装置間分離溝は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要である。本発明の好ましい形態の1つでは、図3−7に示すように、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、装置の分離が容易である。また、基板の一部までをエッチングして装置間分離溝を形成してもよい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光装置完成後の形態は、図3−13〜図3−16を参照。)。この場合、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。装置間分離溝を、光学結合層の途中まで形成する形態では、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時実施することも可能になるので、工程を簡略化できる利点がある。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程、第三エッチング工程は、いずれの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチングおよび/または第三エッチング工程を実施することも好ましい。図3−17に示すように、まずSiNx、SiO2等の酸に強い材料(好ましくはSiNx)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二および/または第三エッチングマスク52を形成する。そして、第二および/または第三エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。第一エッチングマスク51は、第二エッチング工程と第三エッチング工程が別々に実施される場合にも、両方のエッチングが終了するまで存在させることもできる。
形成される装置分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
第三エッチング工程の後には、図3−8に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図3−9に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で基板面と側壁から絶縁層が除去された絶縁層非形成部分15を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極の周辺部分が絶縁層によって覆われているように実施することが望ましい。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さいことが望ましい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極の周辺から絶縁層で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層によって第二導電型側電極の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
絶縁層の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層がSiNx単層である場合には、SF6等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層がSiOxとTiOxからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
絶縁層非形成部分15を設ける際の溝側壁の絶縁層の一部の同時除去は、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層がウエットエッチャントで除去され、図3−9に示したように装置間分離溝の基板側に絶縁層が存在しない形状が得られる。このように絶縁層を除去する場合においては、絶縁層が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、支持体との接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。このような絶縁層の除去形状は、特に発光装置の製造工程中に、基板を除去する際には、これに付随して絶縁層の剥離など意図しない不具合が発生しないため、望ましい形状である。尚、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成される場合にも、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する形態(例えば図3−14、図3−16の構造を作製する場合)では、上記のプロセスで絶縁膜を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。また、絶縁層が、分離溝底面の一部と分離溝の側壁部分とを被覆する形態(例えば図3−13、図3−15の構造を作製する場合)には、上記のプロセスで、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わずに、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成すればよい。
次に、図3−10に示すように、第一導電型側電極28を形成する。電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、AlおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。ここで、形成プロセスにおけるマージンをある程度見込むために、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
第一導電型側電極は、この例では、第一導電型クラッド層にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
本発明の製造方法では、第一導電型側電極が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、n側電極が第二導電型側電極のように絶縁層の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、本発明においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図3−10(図3−2)の構造が形成された後には、基板除去するための前準備をする。通常、図3−10に示された構造を、ウエハー全体として、あるいはその一部を、先ず、支持体40に接合する。これは、薄膜結晶層全体としても高々15μm程度の厚みであるので、基板を剥離してしまうと、機械的強度が不十分になりそれだけで自立してその後のプロセスを受けることが困難になるからである。支持体の材料等については前述のとおりであり、支持体上の金属面41(電極配線等)に例えば金属ハンダ42で接続して搭載する。
このとき、本発明の発光装置では、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28は、お互いが空間的に重ならない配置となっており、かつ、第一導電型側電極が第一電流注入領域よりも大きく、十分な面積も有しているため、意図しない短絡の防止と高い放熱性の確保が両立しており望ましい。また、他の薄膜結晶層の側壁もバッファ層の一部、特にアンドープ部分を除いて絶縁層で保護されるため、ハンダの染み出し等があっても薄膜結晶層内、たとえば活性層構造側壁における短絡等も発生することがない。
次に、支持体に素子を接合した後に、基板を剥離する。基板の剥離には、研磨、エッチング、レーザディボンディング等のあらゆる方法を用いる事が可能である。サファイア基板を研磨する場合には、ダイヤモンド等の研磨材を使用して基板を除去することが可能である。また、ドライエッチングによって基板を除去することも可能である。さらには、たとえばサファイアが基板でInAlGaN系材料によって薄膜結晶成長部分が形成されている場合には、サファイア基板側から、サファイア基板は透過し、たとえばバッファ層に使用されるGaNには吸収される248nmの発振波長を有するエキシマレーザを用いて、バッファ層の一部のGaNを金属Gaと窒素に分解し、基板を剥離するレーザディボンディングを実施する事も可能である。
またZnOおよびScAlMgO4等を基板として使用する場合には、HCl等のエッチャントを用いて基板をウェットエッチングで除去することも可能である。
ここで、本発明の好ましい形態では、基板上には絶縁層が接している部分がないため、基板剥離を実施した際に副次的に絶縁層の剥離等が発生することがない。
その後、装置間分離溝が存在する箇所に対応する分離領域において、支持体と共に発光装置を分離して単体の発光装置を得る。ここで、支持体の分離領域には、金属配線が存在しないことが望ましい。ここに金属配線が存在すると装置間の分離が実施しにくいからである。タイプCの形態の集積型化合物半導体発光装置は、支持体上の金属配線を自在に変化させることで、1つの発光装置内の各発光ユニットを並列接続にも、直列接続にも、これらを混合した配線にする事も可能である。
支持体の分離領域部分の切断には、母材によって、ダイシング、スクライビングとブレーキングなど適宜プロセスを選択可能である。また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合(例えば、発光ユニット間分離溝と同等の深さで、光学結合層の途中まで溝が形成されている場合)には、装置間分離溝を使用して、ダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる光学結合層および/またはバッファ層の一部のアブレーション等を実施する事で、薄膜結晶成長層部分における発光装置間の分離は容易に実現可能である。その後、支持体はダイシングによって、各発光装置に分離することが可能である。場合によっては、発光装置間の分離は、薄膜結晶成長層と支持体をダイシングによって同時に分離することも可能である。
このようにして、図3−1に示された1発光装置が完成する。
タイプCの形態の発光装置の製造方法では、光学結合層を有する有利な構造を効果的に製造できることに加えて、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極の形成、エッチング工程(第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程)、絶縁層の形成、絶縁層の除去(第二導電型側電極露出部分および第一電流注入領域の形成や装置間分離溝近傍の絶縁層の除去)、第一導電型側電極の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極にもダメージのない発光装置を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光装置は、第二導電型側電極、絶縁層、第一導電型側電極がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極は、第二導電型クラッド層(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層を介在しないで接しており、第二導電型側電極の上部周辺には絶縁層で覆われた部分があり、第一導電型側電極と第一導電型クラッド層(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層が介在している部分が存在している。
<<2−4.タイプDの形態の特徴>>
タイプDの集積型発光装置、およびその製造方法の特徴は次の事項で特定される。
1. 複数の発光ユニットを有する集積型化合物半導体発光装置であって、
前記発光ユニットは、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを少なくとも有し、
第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見て前記第一導電型半導体層側方向であり、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、前記第1の光取り出し方向とは、反対側に形成されており、
前記発光ユニット同士は、隣接する発光ユニットの間に設けられた発光ユニット間分離溝により電気的に分離されており、
1つの発光ユニット内には、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む複数個の発光ポイントと、少なくとも1個の前記第一導電型側電極とが設けられ、1つの発光ユニット内は前記第一導電型半導体層で電気的に導通しており、
さらに、前記第一導電型半導体層より前記第1の光取り出し方向側に、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられ、前記複数の発光ユニットを光学的に結合し、1つの発光ユニットから発光された光を他の発光ユニットに分布させる光学結合層と、前記光学結合層の前記第1の光取り出し方向側にバッファ層を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置。
2. 前記光学結合層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記複数の発光ユニット間に共通して設けられている層であることを特徴とする上記1記載の発光装置。
3. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
n1<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1または2記載の発光装置。
4. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記バッファ層の平均屈折率をnbfで表したとき、
nbf≦noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光装置。
5. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の発光装置。
6. さらに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
の関係を満たすようにtocが選択されることを特徴とする上記5記載の発光装置。
7. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光装置。
8. 前記光学結合層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光装置。
9. 前記複数の発光ユニットは、前記発光ユニット間分離溝が、隣接する発光ユニット間で、前記薄膜結晶層の表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去して形成されていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の発光装置。
10. 前記発光ユニット間分離溝の幅が、2〜300μmの範囲である上記1〜9のいずれかに記載の発光装置。
11. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記光学結合層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
12. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝内から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層の途中まで形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
13. 前記発光装置は、複数の発光装置の間に設けられた装置間分離溝から分割されたものであって、この装置間分離溝が、前記バッファ層を除去して形成されたことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光装置。
14. 前記発光ユニット間分離溝内の底面および側面の全面を被覆し、この発光装置の側面に露出した層のうち、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層の側面を被覆し、前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っている絶縁層を有することを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の発光装置。
15. この発光装置の側面に、前記絶縁層が形成されていない絶縁層非形成領域が存在し、かつ、前記絶縁層が少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造、および前記第二導電型半導体層の側壁を覆っていることを特徴とする上記14記載の発光装置。
16. 前記薄膜結晶層が、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光装置。
17. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の発光装置。
18. 前記絶縁層が、複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記14または15記載の発光装置。
19. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光装置。
20. 前記光学結合層からバッファ層側に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光装置の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすようにバッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜を有することを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光装置。
21. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光装置。
22. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、金属ハンダによって金属面を有する支持体に接合されていることを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の発光装置。
23. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記支持体の金属面との接合が、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによってなされていることを特徴とする上記22記載の発光装置。
24. 前記支持体の母材がAlN、Al2O3、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記22または23記載の発光装置。
25. 前記支持体の発光装置間の分離部分に、金属層が形成されていないことを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の発光装置。
26. 複数の発光ユニットを支持体上に有する集積型化合物半導体発光装置の製造方法であって、
基板上に、バッファ層および光学結合層をこの順に形成する工程と、
少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を成膜する工程と、
前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程と、
前記第一導電型半導体層の一部を表面に露出させるとともに、前記活性層構造、前記第二導電型半導体層および前記第二導電型側電極を含む発光ポイントを複数個形成するために、前記第二導電型半導体層および前記活性層構造を複数の領域に分断する第一エッチング工程と、
前記第一エッチング工程により露出した第一導電型半導体層の面に、少なくとも1個の第一導電型側電極を形成する工程と、
前記発光ユニットを互いに電気的に分離するための発光ユニット間分離溝を形成するために、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の一部までを除去する第二エッチング工程と、
複数の発光装置に分離するための装置間分離溝を形成するために、少なくとも前記第一導電型半導体層、活性層構造および第二導電型半導体層を除去する第三エッチング工程と、
前記基板を除去する工程と
を有することを特徴とする集積型化合物半導体発光装置の製造方法。
27. 前記の基板を除去する工程の前に、前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、支持体上の金属面に接合して前記支持体に搭載する工程を有することを特徴とする上記26記載の方法。
28. 前記の基板を除去する工程の後、複数の発光装置に分離する工程を有することを特徴とする上記27記載の方法。
29. 前記光学結合層の成膜工程を、前記薄膜結晶層の成膜工程の一部として、かつ前記第一導電型半導体層の形成に先立って行うことを特徴とする上記26〜28のいずれかに記載の方法。
30. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn1で表したとき、
n1<noc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜30のいずれかに記載の方法。
31. 前記光学結合層の平均屈折率をnoc、前記バッファ層の平均屈折率をnbfで表したとき、
nbf≦noc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜30のいずれかに記載の方法。
32. 前記発光装置の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記光学結合層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn1、前記光学結合層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光学結合層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)を
Δ(oc−1)≡((noc)2−(n1)2)/(2×(noc)2)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記26〜31のいずれかに記載の方法。
33. さらに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
の関係を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記32記載の方法。
34. 前記光学結合層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすようにすることを特徴とする上記26〜33のいずれかに記載の方法。
35. 前記光学結合層を、複数の層の積層構造として成膜することを特徴とする上記26〜34のいずれかに記載の方法。
36. 前記第三エッチング工程を、前記第二エッチング工程と同時にまたは別に行い、前記薄膜結晶層表面から前記光学結合層の界面まで、または前記光学結合層の一部までを除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
37. 前記第三エッチング工程を、前記薄膜結晶層表面からバッファ層の一部を除去するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
38. 前記第三エッチング工程において、少なくとも前記基板表面に達するまでエッチングを行うことを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
39. 前記第二および第三エッチング工程が、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれるガス種を用いたドライエッチング法で行われることを特徴とする上記26〜38のいずれかに記載の方法。
40. エッチングマスクとして、パターニングされた金属フッ化物層を用いることを特徴とする上記39記載の方法。
41. 前記金属フッ化物層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記40記載の方法。
42. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする上記26〜41のいずれかに記載の方法。
43. 前記絶縁層を形成する工程が、第一〜第三エッチング工程の後に行われることを特徴とする上記42記載の方法。
44. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、または前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去し、スクライブ領域を形成する工程と
を有することを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
45. 前記第二導電型側電極を形成する工程、前記第一エッチング工程および前記第一導電型側電極を形成する工程をこの順番に行い、
前記第三エッチング工程では、表面から、前記光学結合層の少なくとも一部を除去するまで、前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで、または少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成し、
さらに、第一〜第三エッチング工程の後であって、前記第一導電型側電極を形成する工程の前に、さらに絶縁層を形成する工程と、
前記装置間分離溝内で、溝底面に堆積した絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝の側壁に形成された絶縁層のうち、前記溝底面側の一部を除去する工程と
を有することを特徴とする上記26〜35のいずれかに記載の方法。
46. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記44記載の方法。
47. 前記第二、第三エッチング工程を同時に実施し、前記光学結合層の界面まで、または、光学結合層の一部を除去するまでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成することを特徴とする上記45記載の方法。
48. 前記の基板を除去する工程を、前記基板に対しては透明であって、前記バッファ層に対しては吸収される波長の光を前記基板側から照射して、前記バッファ層の一部を分解して、前記基板と前記バッファ層の界面での剥離を生じさせることで行うことを特徴とする上記26〜47のいずれかに記載の方法。
49. 前記第一導電型側電極および第二導電型側電極と前記支持体上の金属面との接合を、金属ハンダで行うことを特徴とする上記27記載の方法。
50. 前記支持体の母材が、金属、AlN、Al2O3、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記27または49記載の方法。
51. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記26〜50のいずれかに記載の方法。
タイプDの形態によれば、大面積の面光源的発光が可能な集積型の化合物半導体発光装置であって、発光強度の面内均一性がすぐれた装置を提供することができる。また、発光ユニット毎に、発光強度が多少ともばらついた劣化を示したとしても、高い面内均一性が確保され、かつ高い面内均一性を確保し続けることができる装置を提供することができる。
特に、発光装置の面積が数cm2を越える場合であっても、発光強度の均一性の比較的高い、面的な青色または紫外発光が実現可能である。また、本形態は、p側、n側いずれの電極も第1の光取り出し方向側とは反対側に配置されるフリップチップ型発光素子に関するものであって、電流導入に金属ワイヤー等を用いることなく、金属配線のある放熱性に富むサブマウントなどにp側、n側電極をハンダ等で融着し、素子を搭載できるために、十分な放熱性と高い光取出し効率を確保することができる。
タイプDの形態では、発光ユニット同士は、電気的には分離されていながら、光学的には光学結合層により結合しているため、ある発光ユニットの量子井戸層にて発光した光が、他の発光ユニット部分にも分布する。そのため、従来の構成では輝度が低下する発光ユニット間からも、本形態の発光装置では光が放射されてくるため、比較的均一性の高い面発光が得られる。また、発光ユニット間で発光強度のばらつきがある場合でも、あるいは多少ともばらつきのある劣化を示したとしても、光学結合層の存在により、面内発光強度の均一性が高い。さらに、仮に1つの発光ユニットに不良が生じて点灯しなくなった場合でも、不良発光ユニットの直上において、ある程度の発光強度が確保されるため、面均一性が良好である。
また、タイプDの形態では第1の光取り出し方向側に基板が存在しないため、以下のような利点を併せ持つことが出来る。たとえばC+サファイア基板上に一般的なMOCVD法で形成された、GaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、InAlGaN系材料、InAlGaBN形材料などの材料で構成された半導体発光素子であれば、これら材料のサファイア基板面側は窒素面となり、これら材料の成長方向はGa面となるのが普通である。ここで、一般的にGa面はケミカルエッチング等のしにくい面であって、光取り出し効率を向上させるための粗面化などは実施しにくいが、窒素面は比較的容易にケミカルエッチングが可能であって、これによって粗面化などが可能である。これに対して、基板が存在する場合、代表的なサファイア等の基板ではケミカルエッチングがほとんど不可能である。従って、タイプDの形態では、サファイア基板等を剥離し、その後に露出した窒素面をケミカルエッチングすることで、容易に粗面化が可能になり、その結果、発光装置の発光効率等を容易に向上することができる。
また、タイプDの形態における発光装置は、電気的に結合している発光ポイントのみの集積ではなく、電気的には分離された発光ユニットの中に適切な数の発光ポイントを有する点に特徴がある。すなわち、発光装置全体が電気的に結合している発光ポイントのみによって形成されている場合には、1つの発光ポイントの劣化は、装置全体の電流注入経路を変化させ、発光装置全体の発光強度の均一性などにその影響が出てしまう。しかし、1つの発光ユニット内に適切な数の複数の発光ポイントを有する際には、その劣化の電気的影響は、当該発光ユニット内に限定される。さらに発光ユニット間は前述のとおり光学的に結合しているため、1つの発光ポイントの劣化、すなわちその発光ポイントを含むある発光ユニットの劣化は、電気的な影響をうけない周辺の発光ユニットによって光学的に補償されやすいため、望ましい。
以下、タイプDの形態による発光装置およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
図4−1に、タイプDの形態の集積型化合物半導体発光装置(以下、単に発光装置という)の1例を示す。また、図4−1の発光装置の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図4−2も参照しながら説明する。ここでは、図4−1、図4−2に示すように、1つの発光ユニット11の中に3つの発光ポイント17が存在し、4つの発光ユニット11によって1つの発光装置10を構成する例を示している。しかし、1つの発光ユニット11の中に存在する発光ポイントの個数および発光ユニット11の集積の個数は特に限定はなく、提供される一つの基板内で適宜個数を設定可能である。発光ユニットの集積の個数は、例えば2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。発光装置10における発光ユニット11の好ましい数は、トータルの発光ポイント17の数で25〜10000個であり、また発光ユニット11が2次元的に配列されていることも好ましい。また、一つの発光ユニット内に存在する発光ポイントの数にも特に限定はなく、例えば2個でもよく、また、500個を越える個数を集積してもかまわない。ここで、好ましくは5〜100個であり、さらに好ましくは10個〜50個であり、2次元的に配列されていることも好ましい。
タイプDの形態において、1つの発光ユニットは、図に示すように、少なくとも、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。図のように発光ユニット間分離溝12は、集積型化合物半導体発光装置10内の発光ユニット11を区画しているが、光学結合層23は、発光ユニット間に共通して設けられている。さらに、製造過程において、基板21に最初に成膜されるバッファ層22も発光ユニット間に共通している。
この例では、第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層、活性層構造の一部、第一導電型クラッド層の一部が除去された構成となっており、除去した箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板に対して同じ側に配置されるように構成されている。その際、タイプDの形態では、1つの発光ユニットの中で、活性層構造25および第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26を含む)は分断されて、それぞれ独立して発光できる発光ポイント17を構成しており、第一導電型半導体層は発光ユニット中で共通して存在する。第二導電型側電極27は、発光ポイント17に1個づつ設けられている。また、第一導電型側電極28は、1つの発光ユニットの中に少なくとも1つが存在すればよいが、発光ポイントの数に対応して設けてもよい。また、第一導電型側電極28の数は、1つの発光ユニット内の発光ポイントよりも多く存在してもかまわない。しかし、本発明においては、特にこのましく実施される第二導電型側電極がp型電極である場合に、第二導電型側電極の数または面積が、第一導電型側電極の数または面積よりも、多いかまたは広いことが望ましい。これは、1つの発光ユニットの中で、実質的な発光に寄与する部分が第二導電型側電極の下(あるいは見方によっては上)に存在する活性層構造内の量子井戸層だからである。従って、1つの発光ユニット内における第二導電型側電極の数または面積が、第一導電型側電極の数または面積よりも、相対的に多いかまたは広いほうが好ましい。また、後述する電流注入領域での関係では、第二電流注入領域の数または面積が、第一電流注入領域の数または面積よりも多いかまたは広いことが望ましい。また、電極の関係、電流注入領域の関係のいずれも上記を満たすことが最も望ましい。
タイプDの形態では、発光ポイント17は、発光ユニット11内で第一導電型半導体層で電気的に導通しており、発光ユニット11は、互いに発光ユニット間分離溝12により電気的には分離されている。即ち、発光ユニット間分離溝12は、薄膜結晶層中の導電性の高い層を分断しており、発光ユニット間で実質的な電気的結合はない。
一方、本形態では、光学結合層23が、発光ユニット間に共通して存在し、発光ユニットが光学的には結合した状況をつくっている。即ち、ある一つの発光ユニットから放射された光は、光学結合層での適度な伝播と放射(リーク)によって、他のユニット部分にも到達し、一つの発光ユニット部分のみに局在することなく、他の発光ユニット部分にも到達する。このためには、発光ユニット間分離溝12は、光学結合層の界面まで達しているか、または図4−1に示すように光学結合層が分断されない状態でその中まで達していることが必要である。そして、詳細は後述するが、光学結合層は実質的に絶縁性であり、また層内での適度な導波機能を実現するために、相対的に屈折率が高い材料で構成される。
また、タイプDの形態では、発光ユニット間分離溝の幅が、好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜50μm、最も好ましくは8〜15μmである。発光ユニット間分離溝の幅が短いと、光学結合層と共に、面発光の均一性が向上する。
図4−2には、中央の発光装置10に隣接する別の発光装置も一部図示されている。製造過程ではこのように、同一基板21上に、それぞれの発光装置10が、装置間分離溝13によって分離されて形成される。図4−1に示す完成した発光装置は、図4−2の中の1つの発光装置10を、支持体40上の金属面41に、金属ハンダ42を介して第二導電型側電極27および第一導電型側電極28をそれぞれ接続した構造に相当する。製造方法の1例は、後述する。
装置間分離溝13は、図4−2の例では、基板に達するまで薄膜結晶層を除去して形成されており、好ましい形態の1つである。一方、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている形態も好ましい。これらの場合のいずれも、光学結合層よりも活性層構造側にある導電性の高い層の側壁に絶縁層を容易に形成できる。
タイプDの形態の発光装置では、絶縁層30は、薄膜結晶層22〜26の表面、側壁等を含んだ露出部分の大部分を覆っているが、図4−1の発光装置の側壁部分、即ち発光装置が分離されていない図4−2の状態における装置間分離溝13中の絶縁層形状は、いくつかの形態が可能である。いずれの形態においても、絶縁層は基板に接触せず、発光装置を分離する前に、発光装置を区画する装置間分離溝13中に、絶縁層が存在しない部分が存在することが好ましい。そして、絶縁膜が存在しない部分から、発光装置間が分離されることが好ましい。その結果、タイプDの形態の発光装置の好ましい形状では、側壁を覆う絶縁層は、バッファ層の第1の光取り出し方向側の界面まで達していない。絶縁層の好ましい形態の具体例を次に示す。
タイプDの1形態においては、図4−2に示すように、絶縁層30が装置間分離溝13の溝内の表面の全てを覆うのではなく、絶縁層30が基板面(即ち、溝底面)と基板に近接する溝側壁部分で形成されていない絶縁層非形成部分15が存在する。この構造では、基板21に付着している絶縁層30がないので、基板21を例えば剥離により除去するときに、絶縁層の剥がれ等が生じる可能性がないので最も好ましい。得られる発光装置では、図4−1のB部分に示すように、絶縁層30が基板面まで達していない絶縁層非形成部分15が存在する。この形状ができている装置では、絶縁層の剥がれがないことが保証される結果、仮にハンダの回り込みがあっても、発光装置の機能が損なわれることがなく信頼性の高い装置となる。
この図4−1では、バッファ層22の壁面の全部と光学結合層23の壁面の一部までが露出しているが、光学結合層の側壁が覆われ、バッファ層の側壁の一部が露出していてもよい(図4−11参照)。露出している部分は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出しているのが絶縁性の高い材料であれば、信頼性の高い装置となる。
また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合には、次のような形状の発光装置が得られる。まず、装置間分離溝が、光学結合層23の途中まで形成される場合には、例えば図4−13および図4−14に示すように、発光装置端まで光学結合層23とバッファ層22が存在し、バッファ層の壁面はすべて露出し、光学結合層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、光学結合層の側壁は、バッファ層の側壁と一致して絶縁層で覆われていない部分と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。絶縁層30は、図4−13の例では、図4−13中にC部分で示すように、光学結合層23の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆している。この形態は、図4−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止め、光学結合層の溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成し、スクライブ領域から装置を分離した形状に対応する。また、図4−14の例は、図4−1および図4−2において、装置間分離溝を光学結合層23の途中で止めた形態に対応し、図4−14のD部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
次に、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成される場合には、例えば図4−15および図4−16に示すように、発光装置端までバッファ層22が存在し、バッファ層には、装置間分離溝の底面に基づく段差が存在しており、バッファ層の側壁は、絶縁層で覆われていない部分(装置端部分)と、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。絶縁層30は、図4−15の例では、図4−15中にE部分で示すように、バッファ層22の端から離れた溝底面の位置から、分離溝底面部分と、分離溝の側壁部分とを被覆し、さらに光学結合層23の側壁(装置間分離溝の側壁)を覆っている。この形態は、図4−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止め、バッファ層の溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成し、スクライブ領域から装置を分離した形状に対応する。また、図4−16の例は、図4−1および図4−2において、装置間分離溝をバッファ層22の途中で止めた形態に対応し、図4−16のF部分に示すように、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する。
これらの例のように、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層が、発光装置の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図4−1の形態の発光装置と同じく信頼性の高い装置となる。
さらに、本発明の発光装置では、絶縁層30が図4−1のように、第一導電型側電極28の第1の光取り出し方向側の一部に接していること、即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)とのコンタクト部分の周囲に絶縁層が介在している部分があること、および第二導電型側電極27の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆っていること、即ち、第二導電型側電極27と第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の間には絶縁層が存在せずに第二導電型側電極27の周囲に被覆している部分があることが好ましい。この形態は、第二導電型側電極27が形成された後に絶縁層30が形成され、絶縁層30が形成された後に第一導電型側電極28が形成されたことを意味する。このような順序による製造方法は、後述するが、第二導電型クラッド層26等の第二導電型半導体層にダメージが少なく、また第一導電型側電極のダメージが少ないために、高効率の発光装置が得られる。即ち、このような構造を有する発光装置は、高効率を示すことを意味する。
さらに、第二導電型側電極27の大きさは、第二電流注入領域35と同じであるが、第二導電型側電極の露出面37(第二導電型側電極露出部分)は、第二電流注入領域35の大きさよりも小さいことが好ましい。さらに、第一導電型クラッド層24の表面を覆う絶縁層30の一部に、第一導電型側電極28が第一導電型クラッド層24と接触するための開口が設けられ、それが、第一電流注入領域36となる。第一導電型側電極28の面積を、第一電流注入領域よりも大きくすることが好ましい。
また、第二導電型側電極と第一導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことも望ましい。
以下に、装置を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
タイプDの形態における基板は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<バッファ層>
タイプDの形態におけるバッファ層は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<光学結合層>
タイプDの形態における光学結合層は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプDの形態における第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<活性層構造>
タイプDの形態における活性層構造は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプDの形態における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプDの形態における第二導電型側電極は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプDの形態における第一導電型側電極は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプDの形態における絶縁層は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
<支持体>
タイプDの形態における支持体は、タイプCの形態と同様の構成を採用することができる。
〔タイプDの形態の発光装置の製造方法〕
次に、タイプDの形態の集積型化合物半導体発光装置の製造方法について説明する。
タイプDの形態の発光装置の製造方法の1例では、図4−4に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光学結合層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図4−1、図4−2に示された形状を実現するためには、図4−4に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、タイプDの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、タイプDの形態においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からもタイプDの形態では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、タイプDの形態では、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図4−5に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。この工程で、第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26)および活性層構造25が分断されて、活性層構造25、第二導電型半導体層(第二導電型クラッド層26)および第二導電型側電極27を有する独立した発光ポイント17の形状が形成される。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することも目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNxのような窒化物やSiOx等の酸化物をエッチングマスクとしてCl2等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程、第三エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に好ましくは、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl2、SiCl4、BCl3、SiCl4等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNxマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNxマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図4−6に示すように、発光ユニット間分離溝12を、第二エッチング工程により形成する。第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光学結合層23の一部までをエッチングすることが必要なことから、1μm以上となることが多く、例えば1〜5μmの範囲、または3μ以上の範囲、例えば3〜7μmの範囲となることがある。場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiNx等の窒化物マスク、SiOx等の酸化物マスク等は、Cl2系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiNx膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で4μmのGaN系材料をエッチングする最には、0.8μmを越えるSiNxマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNxマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNxマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において発光ユニット間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、AlF3が好ましく、この中でもSrF2が最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二、第三エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiNx,SiO2などと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrF2マスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiNx、SiO2などとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiNx、SiO2等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図4−17に示すように、SiNx、SiO2等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図4−6に示すように、発光ユニット間分離溝が形成される。
次に、図4−7に示すように、装置間分離溝13を、第三エッチング工程により形成する。第三エッチング工程では、エッチングすべきGaN系材料の厚みは、バッファ層、光学結合層をすべてエッチングすることが必要なことから、第二エッチング工程と比較しても、極めて深く、5〜10μmとなることがあり、また10μmを超えることもある。そのため、第二エッチング工程で説明したと同様に、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。その好ましい条件等(積層マスク等も含む)は、第二エッチング工程について説明したとおりである。
装置間分離溝は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要である。タイプDの好ましい形態の1つでは、図4−7に示すように、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、装置の分離が容易である。また、基板の一部までをエッチングして装置間分離溝を形成してもよい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光装置完成後の形態は、図4−13〜図4−16を参照。)。この場合、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。装置間分離溝を、光学結合層の途中まで形成する形態では、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時実施すること可能になるので、工程を簡略化できる利点がある。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程、第三エッチング工程は、いずれの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチングおよび/または第三エッチング工程を実施することも好ましい。図4−17(工程途中の表面のみを示した。)に示すように、まずSiNx、SiO2等の酸に強い材料(好ましくはSiNx)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二および/または第三エッチングマスク52を形成する。そして、第二および/または第三エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。第一エッチングマスク51は、第二エッチング工程と第三エッチング工程が別々に実施される場合にも、両方のエッチングが終了するまで存在させることもできる。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
第三エッチング工程の後には、図4−8に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図4−9に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で基板面と側壁から絶縁層が除去された絶縁層非形成部分15を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極の周辺部分が絶縁層によって覆われているように実施することが望ましい。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さいことが望ましい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極の周辺から絶縁層で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層によって第二導電型側電極の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
絶縁層の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層がSiNx単層である場合には、SF6等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層がSiOxとTiOxからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
尚、絶縁層非形成部分15を設ける。この溝側壁の絶縁層の一部の同時除去は、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層がウエットエッチャントで除去され、図4−9に示したように装置間分離溝の基板側に絶縁層が存在しない形状が得られる。このように絶縁層を除去する場合においては、絶縁層が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、支持体との接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。このような絶縁層の除去形状は、特に発光装置の製造工程中に、基板を除去する際には、これに付随して絶縁層の剥離など意図しない不具合が発生しないため、望ましい形状である。尚、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成される場合にも、発光装置端から内側に入った側壁部分(装置間分離溝の側壁)のうち、第1の光取り出し方向側に絶縁層で覆われていない部分が存在する形態(例えば図4−14、図4−16の構造を作製する場合)では、上記のプロセスで絶縁膜を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。また、絶縁層が、分離溝底面の一部と分離溝の側壁部分とを被覆する形態(例えば図4−13、図4−15の構造を作製する場合)には、上記のプロセスで、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わずに、溝底面に堆積した絶縁層の一部を除去してスクライブ領域を形成すればよい。
次に、図4−10に示すように、第一導電型側電極28を形成する。電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、AlおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。ここで、形成プロセスにおけるマージンをある程度見込むために、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
第一導電型側電極は、この例では、第一導電型クラッド層にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
本形態の製造方法では、第一導電型側電極が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、n側電極が第二導電型側電極のように絶縁層の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、本形態においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図4−10(図4−2)の構造が形成された後には、基板除去するための前準備をする。通常、図4−10に示された構造を、ウエハー全体として、あるいはその一部を、先ず、支持体40に接合する。これは、薄膜結晶層全体としても高々15μm程度の厚みであるので、基板を剥離してしまうと、機械的強度が不十分になりそれだけで自立してその後のプロセスを受けることが困難になるからである。支持体の材料等については前述のとおりであり、支持体上の金属面41(電極配線等)に例えば金属ハンダ42で接続して搭載する。
このとき、本形態の発光装置では、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28は、お互いが空間的に重ならない配置となっており、かつ、第一導電型側電極が第一電流注入領域よりも大きく、十分な面積も有しているため、意図しない短絡の防止と高い放熱性の確保が両立しており望ましい。また、他の薄膜結晶層の側壁もバッファ層の一部、特にアンドープ部分を除いて絶縁層で保護されるため、ハンダの染み出し等があっても薄膜結晶層内、たとえば活性層構造側壁における短絡等も発生することがない。
次に、支持体に素子を接合した後に、基板を剥離する。基板の剥離には、研磨、エッチング、レーザディボンディング等のあらゆる方法を用いる事が可能である。サファイア基板を研磨する場合には、ダイヤモンド等の研磨材を使用して基板を除去することが可能である。また、ドライエッチングによって基板を除去することも可能である。さらには、たとえばサファイアが基板でInAlGaN系材料によって薄膜結晶成長部分が形成されている場合には、サファイア基板側から、サファイア基板は透過し、たとえばバッファ層に使用されるGaNには吸収される248nmの発振波長を有するエキシマレーザを用いて、バッファ層の一部のGaNを金属Gaと窒素に分解し、基板を剥離するレーザディボンディングを実施する事も可能である。
またZnOおよびScAlMgO4等を基板として使用する場合には、HCl等のエッチャントを用いて基板をウェットエッチングで除去することも可能である。
ここで、タイプDの好ましい形態では、基板上には絶縁層が接している部分がないため、基板剥離を実施した際に副次的に絶縁層の剥離等が発生することがない。
その後、装置間分離溝が存在する箇所に対応する分離領域において、支持体と共に発光装置を分離して単体の発光装置を得る。ここで、支持体の分離領域には、金属配線が存在しないことが望ましい。ここに金属配線が存在すると装置間の分離が実施しにくいからである。タイプDの形態の集積型化合物半導体発光装置は、支持体上の金属配線を自在に変化させることで、1つの発光装置内の各発光ユニットを並列接続にも、直列接続にも、これらを混合した配線にする事も可能である。
支持体の分離領域部分の切断には、母材によって、ダイシング、スクライビングとブレーキングなど適宜プロセスを選択可能である。また、装置間分離溝が、光学結合層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合(例えば、発光ユニット間分離溝と同等の深さで、光学結合層の途中まで溝が形成されている場合)には、装置間分離溝を使用して、ダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる光学結合層および/またはバッファ層の一部のアブレーション等を実施する事で、発光装置間の分離は容易に実現可能である。その後、支持体はダイシングによって、各発光装置毎に分離することが可能である。場合によっては、発光装置間の分離は、結晶成長層と支持体をダイシングによって同時に各発光装置毎に分離することも可能である。
このようにして、図4−1に示された発光装置が完成する。
タイプDの形態の発光装置の製造方法では、光学結合層を有する有利な構造を効果的に製造できることに加えて、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極の形成、エッチング工程(第一エッチング工程、第二エッチング工程、第三エッチング工程)、絶縁層の形成、絶縁層の除去(第二導電型側電極露出部分および第一電流注入領域の形成や装置間分離溝近傍の絶縁層の除去)、第一導電型側電極の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極にもダメージのない発光装置を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光装置は、第二導電型側電極、絶縁層、第一導電型側電極がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極は、第二導電型クラッド層(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層を介在しないで接しており、第二導電型側電極の上部周辺には絶縁層で覆われた部分があり、第一導電型側電極と第一導電型クラッド層(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層が介在している部分が存在している。
<<3. 光取り出し材料>>
本発明に使用される光取り出し材料は、透明性、適切な屈折率、および密着性を有する材料であれば特に限定されない。さらに好ましくは、耐熱性およびこれらの各特性の長期安定性を有する材料である。
<<3−1. 光取り出し材料の付着の形態>>
前述したように、本発明において集積型発光装置への光取り出し材料の付着の形態の例として、
(i)前記集積型発光装置の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
(ii)前記集積型発光装置の第1の光取り出し方向側の面の下部に存在する空隙を充填および/または発光ユニットの側面を被覆している形態;
(iii)前記集積型発光装置の全体を覆っている形態;
を挙げることができる。
以下、これら(i)〜(iii)の形態について、集積型発光装置として前述したタイプAの形態の発光装置を用いた場合を例に挙げて説明する。
図5−1および図5−2に(i)の形態の例を示す。集積型発光源200中の集積型発光装置10として、タイプAの形態の集積型発光装置がサブマウント上にフリップチップマウントされている。光取り出し材料110が、発光装置の第1の光取り出し方向側の面(タイプAの発光装置では基板面)に付着している。(i)の形態では、光取り出し材料は、図5−1に示すように、島状およびストライプ状等の不連続の形状で付着されていても、図5−2に示すように、第1の光取り出し方向側の面を連続して覆っていてもよい。例えば図5−2のように、光取り出し材料110が複数の発光ユニットに渡る場合には、光強度の均一化を図ることもできる。
図6に、(ii)の形態の例を示す。フリップチップ型の集積型発光装置10では、発光ユニット11の間に空隙90が存在する場合が多い。この間を光取り出し材料110で充填することで、光の取り出し効率が向上し、またサブマウント40(または支持体40)との熱結合により放熱効果も向上する。また発光装置の側面も被覆することにより、側面から光の取り出し効率が向上する。特に、空隙90を充填することにより、空隙90部分にも光が分布すると共に、発光ユニット同士の光学的結合が強まり、発光装置の面光源的としての均一性がより向上する。
図7に(iii)の形態の例を示す。この形態は、光取り出し材料110が、集積型発光装置10の第1の光取り出し方向側の面および発光ユニットの側面に密着し、発光ユニット11の間の空隙を充填している。そのため、第1の光取り出し方向側の面からの光取り出し、発光ユニット側面からの光取り出し効率が向上する。従って、一般には、図7に示すような(iii)の形態が最も好ましい。
図7Aに(iii)の他の例を示す。図7Aに示す例では、外周部を壁状に取り囲む反射板を有するマウント部品115を用い、このマウント部品115上の反射板で囲まれた部分に、サブマウント40付きの発光装置10が搭載され、さらに、反射板の内側の空間に光取り出し材料110が充填された構造を有している。この構造では、発光装置10の側方に反射板が存在し、発光装置10の側面からの光は反射板で第1の光取り出し方向に反射されるので、第1の光取り出し方向への光取り出し効率が向上する。なお、図7Aに示した例では、光取り出し材料110が発光装置10の上面をも覆っているが、発光装置10の上面が覆われないように光取り出し材料110を付着させれば、光取り出し材料110の付着の形態は上記(ii)の形態となる。
また、光取り出し材料は、いずれの形態においても、光取り出し効率の向上のために外側に凸の曲面となるように形成されることが好ましい。
以上、集積型発光装置としてタイプAの形態を用いた集積型発光源を例に挙げて説明したが、タイプB、タイプCおよびタイプDの形態の集積型発光装置にも同様に適用することができる。
<<3−2. 光取り出し材料の具体的材料>>
光取り出し材料としては、発光装置には液状で付着(塗布)され、その後、何らかの硬化処理を施すことにより硬化されて固体状になる硬化性材料を用いることができる。ここで、「液状」とは、一般的な意味で用いられる液体状だけでなくゲル状も含む。本出願において、「光取り出し材料」の用語は、一般に硬化後の材料を意味し、液状の材料は、「硬化前」等の用語により区別される。尚、「硬化」の用語は、液状から固体状に変化するすべて変化を含み、重合および/または架橋による硬化に加えて、溶融状態から冷却による固体化、および溶媒蒸発による乾燥等を含む。
硬化性材料は、発光装置から発せられた光の取り出し効率を高めるという光取り出し材料の役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これら硬化性材料の中では、特に、発光装置からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱適応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
<<3−3. シリコーン系材料>>
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、下記の一般組成式(1)で表わされる化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
(R1R2R3SiO1/2)M(R4R5SiO2/2)D(R6SiO3/2)T(SiO4/2)Q・・・式(1)
一般組成式(1)において、R1からR6は、有機官能基、水酸基及び水素原子よりなる群から選択されるものを表わす。なお、R1からR6は、同じであってもよく、異なってもよい。
また、一般組成式(1)において、M、D、T及びQは、0以上1未満の数を表わす。ただし、M+D+T+Q=1を満足する数である。
なお、シリコーン系材料を硬化性材料として用いる場合、その塗設に際しては、液状のシリコーン系材料を発光装置に付着させた後、熱や光によって硬化させればよい。
シリコーン系材料の種類:
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
付加型シリコーン系材料:
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られる、Si−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
縮合型シリコーン系材料:
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(2)及び/又は(3)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
Mm+XnY1 m-n (2)
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
(Ms+XtY1 s-t-1)uY2 (3)
(式(3)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させておいても良い。硬化触媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、例えば、金属キレート化合物などを好適に用いることができる。金属キレート化合物は、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、チタン及びタンタルからなる群より選ばれるいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や当該素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが多い。そこで、本発明に用いる硬化性材料としては密着性が高いシリコーン系材料を用いることが好ましく、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料を用いることがより好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
本発明で用いる硬化性材料としては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
〔特徴〈1〉(ケイ素含有率)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であり、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
ケイ素含有率の測定:
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
〔特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料において、前記(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に前記(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、前記(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなることがある。
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば、以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
[固体Si−NMRスペクトル測定]
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。
[装置条件]
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:シリコーンゴム
[データ処理例]
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
[波形分離解析法]
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
〔特徴〈3〉(シラノール含有率)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば、前記の[固体Si−NMRスペクトル測定]の項で説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
また、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
さらに、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適切な触媒の存在下で加熱することにより、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
その他の成分:
硬化性材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
無機粒子:
硬化性材料には、光学的特性や作業性を向上させるため、また、以下の〔1〕〜〔5〕の何れかの効果を得ることを目的として、更に無機粒子を含有させても良い。なお、無機粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔1〕硬化性材料に無機粒子を光散乱剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層を散乱層とする。これにより、光源から伝送された光を散乱層において散乱させることができ、導光部材から外部に放射される光の指向角を広げることが可能となる。また、蛍光体と組み合わせて無機粒子を光散乱剤として含有させれば、蛍光体に当たる光量を増加させ、波長変換効率を向上させることが可能となる。
〔2〕硬化性材料に無機粒子を結合剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層においてクラックの発生を防止することができる。
〔3〕硬化性材料に無機粒子を粘度調整剤として含有させることにより、当該硬化性材料の粘度を高くすることができる。
〔4〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の収縮を低減することができる。
〔5〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の屈折率を調整して、光取り出し効率を向上させることができる。
ただし、硬化性材料に無機粒子を含有させる場合、その無機粒子の種類及び量によって得られる効果が異なる。
例えば、無機粒子が粒径約10nmの超微粒子状シリカ、ヒュームドシリカ(乾式シリカ。例えば、「日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#200」、「トクヤマ社製、商品名:レオロシール」等)の場合、硬化性材料のチクソトロピック性が増大するため、上記〔3〕の効果が大きい。
また、例えば、無機粒子が粒径約数μmの破砕シリカ若しくは真球状シリカの場合、チクソトロピック性の増加はほとんど無く、当該無機粒子を含む層の骨材としての働きが中心となるので、上記〔2〕及び〔4〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物(前記の無機系材料及び/又は有機系材料など)とは屈折率が異なる粒径約1μmの無機粒子を用いると、前記化合物と無機粒子との界面における光散乱が大きくなるので、上記〔1〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物より屈折率の大きな、中央粒径が通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常10nm以下、好ましくは5nm以下、具体的には発光波長以下の粒径をもつ無機粒子を用いると、当該無機粒子を含む層の透明性を保ったまま屈折率を向上させることができるので、上記〔5〕の効果が大きい。
従って、混合する無機粒子の種類は目的に応じて選択すれば良い。また、その種類は単一でも良く、複数種を組み合わせてもよい。また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていても良い。
無機粒子の種類:
使用する無機粒子の種類としては、例えば、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が挙げられるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。
無機粒子の形態は粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、当該無機粒子を含有させる層に含有されるその他の材料と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして硬化性材料に加えたりすることが好ましい。
無機粒子の中央粒径:
これらの無機粒子(一次粒子)の中央粒径は特に限定されないが、通常、蛍光体粒子の1/10以下程度である。具体的には、目的に応じて以下の中央粒径のものが用いられる。例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その中央粒径は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは20μm以下である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いるのであれば、その中央粒径は1μm〜10μmが好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いるのであれば、その中央粒子は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その中央粒径は1〜10nmが好適である。
無機粒子の混合方法:
無機粒子を混合する方法は特に制限されない。通常は、蛍光体と同様に遊星攪拌ミキサー等を用いて脱泡しつつ混合することが推奨される。例えばアエロジルのような凝集しやすい小粒子を混合する場合には、粒子混合後必要に応じビーズミルや三本ロールなどを用いて凝集粒子の解砕を行なってから蛍光体等の混合容易な大粒子成分を混合しても良い。
無機粒子の含有率:
硬化性材料中における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、当該無機粒子を含有する層における無機粒子の含有率は、その適用形態により選定することが好ましい。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その層内における含有率は0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その層内における含有率は1〜50重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いる場合は、その層内における含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その層内における含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、流体状の硬化性材料における無機粒子の含有率は、各層における無機粒子の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が乾燥工程において重量変化しない場合は硬化性材料における無機粒子の含有率は形成される各層における無機粒子の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、当該硬化性材料が乾燥工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における無機粒子の含有率が、形成される各層における無機粒子の含有率と同様になるようにすればよい。
さらに、硬化性材料として前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を用いる場合には、当該加水分解・重縮合物はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの他の硬化性材料と比較して低粘度であり、かつ蛍光体や無機粒子とのなじみが良く、高濃度の無機粒子を分散しても十分に塗布性能を維持することが出来る利点を有する。また、必要に応じて重合度の調整やアエロジル等のチキソ材を含有させることにより高粘度にすることも可能であり、目的の無機粒子含有量に応じた粘度の調整幅が大きく、塗布対象物の種類や形状さらにはポッティング、スピンコート、印刷などの各種塗布方法に柔軟に対応できる塗布液を提供することが出来る。
<<3−4. その他>>
光取り出し材料には、必要に応じて各種の後処理を施しても良い。後処理の種類としては、表面処理、反射防止膜の作製、光取り出し効率向上のための微細凹凸面の作製等が挙げられる。
また、光取り出し材料は、熱膨張係数が、集積型発光源に用いられる材料と同程度に小さいことが好ましいが、好ましいシリコーン材料を用いた場合には、前述のようにエラストマーの性質を有することも好ましく、付着する装置部位等も考慮して適宜設定することができる。硬化物に分岐構造、架橋構造が多くなるほど、熱膨張係数が小さくなるが、一般に硬くなり、エラストマー性が低下する。従って、好ましいシリコーン材料では、2官能ケイ素のみを有するモノマーおよび/またはオリゴマーに加えて、3官能以上のケイ素を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを原料として使用することで、架橋密度を適宜調節することが好ましい。
また、光取り出し材料は、蛍光体を含有させることもできる。また複数の層とすることもできる。
<<4. 光取り出し材料を付着した集積型発光源の製造>>
本発明では、集積型発光装置を作製した後に、光取り出し材料を集積型発光装置に付着させることが好ましい。光取り出し材料を付着させる方法としては、液状材料(硬化前の光取り出し材料)の粘度を適宜調節して、所望の形状が得られるようにすることが好ましい。例えば(i)の付着の形態の場合、比較的粘度の高い材料をディスペンサ等により順次付着していくことで形成できる。付着の形態(ii)または(iii)の形態では、粘度が低く流動性の高い材料を使用してもよい。図8に示すように、流動性が非常に大きいときは、発光装置の周囲に液止め120を設けてもよい。また、図7Aに示すようなマウント部品115を用いた場合は、マウント部品115の外周部の反射板を液止めとして利用することができる。あるいは、図9に示すように、ポッティング容器121中の液状材料113に、集積型発光源200を逆さまにして浸し、液状材料を硬化させ、その後ポッティング容器121をはずして、光取り出し材料を形成してもよい。
以上のようにして製造された集積型発光源は、集積型発光装置に光取り出し材料が密着して付着しているため、光取り出し効率が向上し、照明用としての使用に適した発光源とすることができる。さらに、集積型発光装置への光取り出し材料の付着の形態によっては、光取り出しの均一性も向上し、面光源としての利用も可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下の実施例において参照している図面は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
<<集積型発光装置タイプAの製造例>>
(製造例A−1)
図1−15に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図1−6〜10、12および14を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaN層と厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度3×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−6に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNxマスクをパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−7に対応する。
次いで、各発光装置内にある発光ユニット間分離溝12を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝を形成する領域のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の発光ユニット間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、発光ユニット間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPドライエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により幅10μmの発光ユニット間分離溝を形成できた。
第二エッチング工程によって発光ユニット間分離溝12を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−8に対応する。
次いで、各々の化合物半導体発光装置間の装置間分離溝13を形成する第三エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域部分のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第三エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第三エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23、バッファ層22(22a、22b)と薄膜結晶層のすべてを、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングした。当該第三エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、幅50μmの装置間分離溝を形成した。
第三エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極27表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−9に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOxとSiNxをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−10に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の一部に残存する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、バッファ層の中のアンドープ部分の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOxとSiNxからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−12に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi20nm/Al300nmを真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1−14に対応する。
次いで、サファイア基板の裏面側に、MgF2からなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgF2は素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光装置を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF2低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの集積型化合物半導体発光装置を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属面41と接合し、図1−15に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例A−2)
製造例A−1において、光学結合層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例A−1を繰り返した。即ち、製造例A−1で、光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例A−1と同様にして、図1−15に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例A−1、2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNxマスクを除去したが、SiNxマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよいし、さらには第三エッチング工程後に除去することも好ましい。
さらに、第三エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図1−20に示す発光装置を製作することができる(但し、絶縁膜は多層誘電体膜)。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図1−19に示す発光装置が得られる。また、第三エッチング工程でのエッチングを、光学結合層の途中で止めることで、図1−18に示す発光装置を製作することができる。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図1−17に示す発光装置が得られる。
(製造例A−3)
図1−16に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み20nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、発光ユニット間分離溝を形成する第二エッチング工程と、装置間分離溝を形成する第三エッチング工程を同時に実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝の形成領域と装置間分離溝の形成領域にあるSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時に実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、同時に実施する第二、第三エッチング工程として、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPドライエッチングした。第二・第三同時エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、発光ユニット間分離溝は、幅6μmで形成できた。
第二・第三エッチング工程を同時に実施し、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNx層をパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをSF6ガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によって絶縁層30としてSiNxを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上にp側電極露出部分を形成し、n側コンタクト層上にはn側電流注入領域を形成し、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSF6ガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクを形成しなかった部分、すなわち、p側電極露出部分の形成と、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域の形成と、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を実施した。ここでは、p側電極の周辺はSiNx絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。また、例えば製造例A−1、2で説明したように、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めることで図1−18の形状(図1−16は、この形状を示した。)の形成も、あるいは、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めないことで図1−17の形状も可能である。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、pまったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属面41と接合し、発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例A−4)
製造例A−3において、基板および薄膜結晶層の構成を次のように変更した以外は、製造例A−3と同様にして発光装置を作製した。
まず、厚みが300μmのc+面GaN基板21(Si濃度1×1017cm−3))を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いてバッファ層22として厚み2μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。
ついで光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各20層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN4μmを形成した。ここで、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で、これに隣接するアンドープGaN層は850℃、その他のGaN層は1035℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度7×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
この後は、製造例A−3と同様にして発光装置を完成した、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例A−3、4では、第二および第三エッチング工程を同時に行い、その後第一エッチング工程を実施したが、第一エッチング工程を先に実施し、その後第二・第三エッチング工程を同時に実施してもよい。その場合に、第一エッチング工程で使用したSiNxマスクを除去することなく、第二・第三エッチング工程を実施することも好ましい。
<<集積型発光装置タイプBの製造例>>
(製造例B−1)
図2−15に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図2−6〜10、12および14を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaN層と厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度3×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−6に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNxマスクをパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させ、同時に複数の発光ポイントの形状を形成した。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−7に対応する。
次いで、各発光装置内にある発光ユニット間分離溝12を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝を形成する領域のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の発光ユニット間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、発光ユニット間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPドライエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により幅10μmの発光ユニット間分離溝を形成できた。
第二エッチング工程によって発光ユニット間分離溝12を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−8に対応する。
次いで、各々の化合物半導体発光装置間の装置間分離溝13を形成する第三エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域部分のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第三エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第三エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23、バッファ層22(22a、22b)と薄膜結晶層のすべてを、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングした。当該第三エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、幅50μmの装置間分離溝を形成した。
第三エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極27表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−9に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOxとSiNxをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−10に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の一部に残存する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、バッファ層の中のアンドープ部分の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOxとSiNxからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−12に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi20nm/Al300nmを真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2−14に対応する。
次いで、サファイア基板の裏面側に、MgF2からなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgF2は素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光装置を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF2低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの集積型化合物半導体発光装置を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属面41と接合し、図2−15に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例B−2)
製造例B−1において、光学結合層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例B−1を繰り返した。即ち、製造例B−1で、光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例B−1と同様にして、図2−15に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例B−1、2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNxマスクを除去したが、SiNxマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよいし、さらには第三エッチング工程後に除去することも好ましい。
さらに、第三エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図2−20に示す発光装置を製作することができる(但し、絶縁膜は多層誘電体膜)。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図2−19に示す発光装置が得られる。また、第三エッチング工程でのエッチングを、光学結合層の途中で止めることで、図2−18に示す発光装置を製作することができる。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図2−17に示す発光装置が得られる。
(製造例B−3)
図2−16に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み20nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、発光ユニット間分離溝を形成する第二エッチング工程と、装置間分離溝を形成する第三エッチング工程を同時に実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝の形成領域と装置間分離溝の形成領域にあるSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時に実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、同時に実施する第二、第三エッチング工程として、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPドライエッチングした。第二・第三同時エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、発光ユニット間分離溝は、幅6μmで形成できた。
第二・第三エッチング工程を同時に実施し、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNx層をパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させ、同時に複数の発光ポイントの形状を形成した。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをSF6ガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によって絶縁層30としてSiNxを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上にp側電極露出部分を形成し、n側コンタクト層上にはn側電流注入領域を形成し、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSF6ガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクを形成しなかった部分、すなわち、p側電極露出部分の形成と、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域の形成と、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を実施した。ここでは、p側電極の周辺はSiNx絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。また、例えば製造例B−1、2で説明したように、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めることで図2−18の形状(図2−16は、この形状を示した。)の形成も、あるいは、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めないことで図2−17の形状も可能である。さらに1つの発光ユニット内においては、n側電流注入領域の数と面積とを、p側電流注入領域の数と面積よりも少なく、かつ小さくなるように絶縁層の除去を実施した。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、pまったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでは、発光ユニット内のn側電極の数と面積とをp側電極の数と面積よりも少なく、かつ小さくなるようにパターニングした。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属面41と接合し、発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例B−4)
製造例B−3において、基板および薄膜結晶層の構成を次のように変更した以外は、製造例B−3と同様にして発光装置を作製した。
まず、厚みが300μmのc+面GaN基板21(Si濃度1×1017cm−3))を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いてバッファ層22として厚み2μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。
ついで光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各20層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN4μmを形成した。ここで、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で、これに隣接するアンドープGaN層は850℃、その他のGaN層は1035℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度7×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
この後は、製造例B−3と同様にして発光装置を完成した、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例B−3、4では、第二および第三エッチング工程を同時に行い、その後第一エッチング工程を実施したが、第一エッチング工程を先に実施し、その後第二・第三エッチング工程を同時に実施してもよい。その場合に、第一エッチング工程で使用したSiNxマスクを除去することなく、第二・第三エッチング工程を実施することも好ましい。
<<集積型発光装置タイプCの製造例>>
(製造例C−1)
図3−11に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図3−4〜10を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaN層と厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度3×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−4に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNxマスクをパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−5に対応する。
次いで、各発光装置内にある発光ユニット間分離溝12を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝を形成する領域のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の発光ユニット間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、発光ユニット間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により幅10μmの発光ユニット間分離溝を形成できた。
第二エッチング工程によって発光ユニット間分離溝12を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−6に対応する。
次いで、各々の化合物半導体発光装置間の装置間分離溝13を形成する第三エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域部分のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第三エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第三エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23、バッファ層22(22a、22b)と薄膜結晶層のすべてを、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。当該第三エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、幅50μmの装置間分離溝を形成した。
第三エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極27表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−7に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOxとSiNxをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−8に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の一部に残存する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、バッファ層のアンドープ部分の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOxとSiNxからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−9に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi20nm/Al300nmを真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図3−10に対応する。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にNi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたSi基板を用意した。この支持体に、発光装置が作りこまれたウエハー(基板21上の薄膜結晶成長層、電極、絶縁層等)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光装置が形成されたウエハーを300℃に加熱ししてp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、エキシマレーザ(248nm)を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
次いで、支持体40に金属ハンダ42で融着されている極薄膜の発光素子のバッファ層側に、アルミナからなる低反射光学膜45をスパッタ法によって形成した。この際には、アルミナは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚として発光波長の1/4を成膜した。
最後に、1つ1つの発光装置を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の素子分離領域部分をカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図3−11に示す集積型の化合物半導体発光素子を完成させた。
(製造例C−2)
製造例C−1において、光学結合層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例C−1を繰り返した。即ち、製造例C−1で、光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例C−1と同様にして、図3−11に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例C−1、2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNxマスクを除去したが、SiNxマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよいし、さらには第三エッチング工程後に除去することも好ましい。
さらに、第三エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図3−16に示す発光装置を製作することができる(但し、絶縁膜は多層誘電体膜)。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図3−15に示す発光装置が得られる。また、第三エッチング工程でのエッチングを、光学結合層の途中で止めることで、図3−14に示す発光装置を製作することができる。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図3−13に示す発光装置が得られる。
(製造例C−3)
図3−12に示す半導体発光装置を以下の手順で作製した。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、発光ユニット間分離溝を形成する第二エッチング工程と、装置間分離溝を形成する第三エッチング工程を同時に実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝の形成領域と装置間分離溝の形成領域にあるSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時に実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、同時に実施する第二、第三エッチング工程として、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。第二・第三同時エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、発光ユニット間分離溝は、幅6μmで形成できた。
第二・第三エッチング工程を同時に実施し、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次に、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、真空蒸着法を用いてSrF2をウエハー全面に製膜した。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSrF2マスクをパターニングし、第一エッチング用のマスクを作製した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SrF2マスクをすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、これらのプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によって絶縁層30としてSiNxを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上にp側電極露出部分を形成し、n側コンタクト層上にはn側電流注入領域を形成し、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSF6ガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクを形成しなかった部分、すなわち、p側電極露出部分の形成と、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域の形成と、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を実施した。ここでは、p側電極の周辺はSiNx絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。また、例えば製造例C−1、2で説明したように、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めることで図3−14の形状(図3−12は、この形状を示した。)の形成も、あるいは、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めないことで図3−13の形状も可能である。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、pまったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光装置が作りこまれたウエハー(基板21上の薄膜結晶成長層、電極、絶縁層等)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光装置が形成されたウエハーを300℃に加熱ししてp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、エキシマレーザ(248nm)を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光装置を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の素子分離領域部分を、装置間分離溝底部の光学結合層およびバッファ層と共にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図3−12に示す集積型の化合物半導体発光素子を完成させた。
<<集積型発光装置タイプDの製造例>>
(製造例D−1)
図4−11に示した半導体発光装置を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図4−4〜10を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaN層と厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度3×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−4に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNxを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNxマスクをパターニングし、SiNxエッチングマスクを作製した。この際には、SiNx膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSF6プラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiNx膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させ、同時に複数の発光ポイントの形状を形成した。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNxマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−5に対応する。
次いで、各発光装置内にある発光ユニット間分離溝12を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝を形成する領域のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の発光ユニット間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、発光ユニット間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により幅10μmの発光ユニット間分離溝を形成できた。
第二エッチング工程によって発光ユニット間分離溝12を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−6に対応する。
次いで、各々の化合物半導体発光装置間の装置間分離溝13を形成する第三エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域部分のSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第三エッチング工程用SrF2マスクを形成した。
次いで、第三エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光学結合層23、バッファ層22(22a、22b)と薄膜結晶層のすべてを、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。当該第三エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、幅50μmの装置間分離溝を形成した。
第三エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極27表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−7に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOxとSiNxをこの順に形成し、誘電体多層膜を絶縁層としてウエハー全面に形成した。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−8に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の一部に残存する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、バッファ層のアンドープ部分の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOxとSiNxからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiNx成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−9に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi20nm/Al300nmを真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4−10に対応する。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にNi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたSi基板を用意した。この支持体に、発光装置が作りこまれたウエハー(基板21上の薄膜結晶成長層、電極、絶縁層等)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光装置が形成されたウエハーを300℃に加熱ししてp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、エキシマレーザ(248nm)を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
次いで、支持体40に金属ハンダ42で融着されている極薄膜の発光素子のバッファ層側に、アルミナからなる低反射光学膜45をスパッタ法によって形成した。この際には、アルミナは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚として発光波長の1/4を成膜した。
最後に、1つ1つの発光装置を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の素子分離領域部分をカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図4−11に示す集積型の化合物半導体発光素子を完成させた。
(製造例D−2)
製造例D−1において、光学結合層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例D−1を繰り返した。即ち、製造例D−1で、光学結合層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例D−1と同様にして、図4−11に示す発光装置を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例D−1、2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNxマスクを除去したが、SiNxマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよいし、さらには第三エッチング工程後に除去することも好ましい。
さらに、第三エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図4−16に示す発光装置を製作することができる(但し、絶縁膜は多層誘電体膜)。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図4−15に示す発光装置が得られる。また、第三エッチング工程でのエッチングを、光学結合層の途中で止めることで、図4−14に示す発光装置を製作することができる。また、その際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを行わなければ、図4−13に示す発光装置が得られる。
(製造例D−3)
図4−12に示す半導体発光装置を以下の手順で作製した。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光学結合層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、発光ユニット間分離溝を形成する第二エッチング工程と、装置間分離溝を形成する第三エッチング工程を同時に実施するために、真空蒸着法を用いて、SrF2マスクをウエハー全面に形成した。次いで、発光ユニット間分離溝の形成領域と装置間分離溝の形成領域にあるSrF2膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程と第三エッチング工程を同時に実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、同時に実施する第二、第三エッチング工程として、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光学結合層23の一部までの薄膜結晶層を、Cl2ガスを用いたICPエッチングした。第二・第三同時エッチング工程中には、SrF2マスクはほとんどエッチングされなかった。この工程により、発光ユニット間分離溝は、幅6μmで形成できた。
第二・第三エッチング工程を同時に実施し、発光ユニット間分離溝と装置間分離溝を形成後は、不要となったSrF2マスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次に、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、真空蒸着法を用いてSrF2をウエハー全面に製膜した。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSrF2マスクをパターニングし、第一エッチング用のマスクを作製した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Cl2ガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させ、同時に複数の発光ポイントの形状を形成した。
ICPプラズマエッチング終了後は、SrF2マスクをすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、これらのプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によって絶縁層30としてSiNxを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上にp側電極露出部分を形成し、n側コンタクト層上にはn側電流注入領域を形成し、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSF6ガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクを形成しなかった部分、すなわち、p側電極露出部分の形成と、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域の形成と、さらに、装置間分離溝に存在する絶縁層の一部の除去を実施した。ここでは、p側電極の周辺はSiNx絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。また、例えば製造例D−1、2で説明したように、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めることで図4−14の形状(図4−12は、この形状を示した。)の形成も、あるいは、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めないことで図4−13の形状も可能である。さらに1つの発光ユニット内においては、n側電流注入領域の数と面積とを、p側電流注入領域の数と面積よりも少なく、かつ小さくなるように絶縁層の除去を実施した。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、pまったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでは、発光ユニット内のn側電極の数と面積とをp側電極の数と面積よりも少なく、かつ小さくなるようにパターニングした。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光装置が作りこまれたウエハー(基板21上の薄膜結晶成長層、電極、絶縁層等)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光装置が形成されたウエハーを300℃に加熱ししてp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、エキシマレーザ(248nm)を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光装置を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の素子分離領域部分を、装置間分離溝底部の光学結合層およびバッファ層と共にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図4−12に示す集積型の化合物半導体発光素子を完成させた。
<<光取り出し材料の製造例>>
<製造例5−1>
WO2006/303328の実施例1−1に記載の合成方法により、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製の両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723(オリゴマー)698.3gと、フェニルトリメトキシシラン69.8gと、触媒として5重量%アルミニウムアセチルアセトン塩メタノール溶液153.4gと、水18.3gとを、撹拌翼及びコンデンサを取り付けた三つロコルベン中に計量し、室温にて大気圧下15分撹拝し、初期加水分解を行なった後に、約75℃にて4時間撹拌しつつ還流させた。
この後、内温が100℃になるまでメタノール及び低沸ケイ素成分を留去し、さらに100℃で4時間撹拌しつつ還流させた。反応液を室温まで冷却し、加水分解・重縮合液を調液した。この液の加水分解率はフェニルトリメトキシシランに対し192%である。なお原料XC96−723は200%加水分解品に相当する。
光取り出し材料の物性確認のため、このようにして得られた加水分解・重縮合液3gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、50℃で30分間保持して第1の乾燥を行い、次いで120℃で1時間、続いて150℃で3時間保持し第2の乾燥を行ったところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これをサンプルとして用いて、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率の算出、硬度測定、紫外耐光性試験、耐熱性試験(透過率)、およびケイ素含有率の測定を行った。さらに、上記の加水分解・重縮合液を用いて、耐リフロー試験および屈折率の測定を行った。
これらの試験条件を以下に示す。
(固体Si−NRスペクトル測定)
前述したとおりである。
(シラノール含有率の算出)
前述したとおりである。
(硬度)
古里精機製作所製A型(デュロメータタイプA)ゴム硬度計を使用し、JIS K6253に準拠して硬度(ショアA)を測定した。
(耐紫外光性試験)
耐紫外光性試験は、上記サンプルに以下の条件で紫外光を照射し、照射前後のサンプルの様子を比較することによって行なった。
紫外光照射条件:松下電工製水銀キセノンランプUV照射装置Aicure(登録商標) SPOT TYPE ANUP5203(光ファイバ出光面における出力:28000W/m2)を波長385nm以下のUVカットフィルタと組み合わせて使用した。照射ファイバ先とUVカットフィルタとの間、およびUVカットフィルタとサンプルとの間に隙間が無い状態で紫外光を24時間照射した。照射面に照射された光の照度をウシオ電機社製436nm受光素子照度計UVD−436PD(感度波長域:360nm〜500nm)にて測定したところ、4500W/m2であった。
(耐熱性試験)
上記サンプルを、温度200℃とした通風乾燥機中で500時間保持し、保持前後の、波長400nmの光の透過率を比較した。
(ケイ素含有率)
前述したとおりである。
(耐リフロー試験)
耐リフロー試験は、以下の手順で行なった。
(1)上記の加水分解・重縮合液を、直径9mm、深さ1mmの、表面にAgメッキを施した銅製カップに滴下し、所定の硬化条件で硬化させて耐リフロー試験用のサンプルを10個作製した。
(2)縦長さ×横長さ×厚さ=25mm×70mm×1mmのアルミ板に放熱用シリコーングリスを薄く塗り、その上にサンプルを並べて温度85℃、湿度85%の雰囲気(以下、「吸湿環境」という)下で1時間吸湿させた。
(3)吸湿させたサンプルを吸湿環境下から取り出し、室温(20℃〜25℃)まで冷却した。冷却したサンプルを、260℃に設定したホッとプレート上にアルミ板ごと載置し、1分間保持した。この条件においてサンプルの温度は約50秒で260℃に達し、その後、この温度を10秒間保持した。
(4)加熱後のサンプルをアルミ板ごと、室温とされたステンレス製の冷却板の上に置き、室温まで冷却した。目視および顕微鏡観察により、銅製のカップからのサンプルの剥離の有無を観察した。わずかでも剥離が観察されたものは「剥離有」とする。
(5)全てのサンプルについて剥離の観察を行ない、剥離率を求めた。剥離率は、「剥離したサンプルの個数/全サンプル数」により算出する。
(屈折率の測定)
光取り出し材料の屈折率は、液浸法(固体対象)の他、Pulflich屈折計、Abbe屈折計、プリズムカプラー法、干渉法、最小偏角法などの公知の方法を用いて測定することができる。この製造例および以下に述べる製造例による光取り出し材料は、硬化前後で屈折率が変化しないため、光構えの液体状態においてAbbe屈折計(ナトリウムD線(589nm))により屈折率を測定した。
以下に、測定結果および試験結果を示す。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.30
硬度(ショアA):27
紫外線耐光試験(72時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):38
屈折率:1.42
<製造例5−2>
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を140g、フェニルトリメトキシシランを14g、および触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120度まで昇温し、120度全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の加水分解・重縮合液を得た。
光取り出し材料の物性確認のため、このようにして得られた上述の加水分解・重縮合液2gを、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、110℃で1時間保持し、次いで150℃で3時間保持したところ、厚さ約1mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、製造例5−1と同様の条件で、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率の算出、硬度測定、紫外耐光性試験、耐熱試験、およびケイ素含有率の測定を行った。さらに、上記の加水分解・重縮合液を用いて、製造例5−1と同様の条件で耐リフロー試験および屈折率の測定を行った。その結果は次のとおりである。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.10
硬度(ショアA):33
紫外線耐光試験(24時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):38
屈折率:1.42
<製造例5−3>
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を70g、両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を70g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120度まで昇温し、120度全還流下で2時間攪拌しつつ初期加水分解を行った。それ以降は、製造例5−2と同じ条件で重合反応および低沸ケイ素成分の留去を行い、無溶剤の加水分解・重縮合液を得た。
光取り出し材料の物性確認のため、製造例5−2と同じ条件で、得られた加水分解・重縮合液からエラストマー状膜を作製し、このエラストマー状膜および加水分解・重縮合膜を用いて、製造例5−1と同様に、各種物性の測定および試験を行なった。その結果は次のとおりである。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.6
硬度(ショアA):20
紫外線耐光試験(24時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):31
屈折率:1.47
<実施例1>
製造例A−1で作製した集積型発光装置を、図7Aに示したマウント部品115上に搭載した。集積型発光装置は、平面サイズが10mm×10mmであり、1mm×1mmの平面サイズの100個の発光ユニットが10×10の2次元マトリックス状に配列されるように作製した。集積型発光装置のサブマウント上での発光ユニット同士の電気的接続は、1列上に並ぶ10個の発光ユニットを直列接続し、その列同士を並列に接続するように行なった。
この段階で得られた集積型発光源に200mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は29.6Vであった。集積型発光源からの発光の全放射束は1294mWであった。
さらに、ここまでの段階で得られた集積型発光源に対して、マウント部品上からマイクロピペットで73マイクロリットルの硬化前光取り出し材料を滴下し、集積型発光装置を覆った。硬化前光取り出し材料としては、製造例5−1で得た加水分解・重縮合液を用いた。加水分解・重縮合液は、集積型発光装置内および発光装置間の隙間を充填し、さらに第1の光取り出し方向側の面もぬれた状態で覆った。これを乾燥させることにより、加水分解・重縮合液が硬化し、クラックの無い透明なエラストマー上の光取り出し材料が集積型発光装置に付着した、図7Aに示すような集積型発光源が得られた。
得られた集積型発光源に200mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は29.9Vであった。集積型発光源から発光の全放射束は1825mWとなり、光取り出し材料を発光素子に付着させる前と比較して全放射束が約41%向上した。このことから、発光素子に光取り出し材料を付着させることにより光取り出し効率が向上することがわかる。また、集積型発光源からの発光は均一であった。
<実施例2>
製造例5−3で得た加水分解・重縮合液を硬化前光取り出し材料として使用した以外は実施例1と同様にして集積型発光源を作製した。加水分解・重縮合液の乾燥により、加水分解・重縮合液が硬化し、クラックの無い透明なエラストマー状の光取り出し材料が集積型発光装置に付着した集積型発光源が得られた。
得られた集積型発光源に200mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は29.9Vであった。集積型発光源からの発光の全放射束は1928mWとなり、実施例1において光取り出し材料を発光素子に付着させる前と比較して全放射束が約49%向上した。このことから、屈折率の高い光取り出し材料を用いることにより、光取り出し効率がさらに向上することがわかる。また、集積型発光源からの発光は均一であった。