JP2009108729A - 形状記憶合金アクチュエータの制御方法及び制御装置 - Google Patents

形状記憶合金アクチュエータの制御方法及び制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】過剰電力供給による形状記憶合金の劣化を防止した形状記憶合金アクチュエータの制御方法及び制御装置を提供する。
【解決手段】移動体107を動かすために目標設定抵抗値R1を初期目標抵抗値R0にセットし(S2)、投入電力最適化工程により設定された電力を投入し、形状記憶合金ワイヤ102を収縮させて移動体107の位置を変化させる(S3)。経過時間の変数Taが第1の所定時間T1に達したときにTaをリセットした後(S7)、判定演算回路126において、S3にて測定された抵抗値Rmと目標抵抗値R1との差が所定の許容範囲ΔR内にあるか判定し(S8)、その差が許容範囲ΔRより大きい場合は、移動体107が第2ストッパー110にあたって抵抗値がR1に達することができないとして、目標抵抗値R1をその時点での測定された抵抗値Rmに置き換える(S9)。
【選択図】図6

Description

本発明は、形状記憶合金により駆動するアクチュエータに関する。
形状記憶素子は温度の変化により相転移し形状変化する。この形状記憶素子の形状変化を利用したアクチュエータは、アクチュエータの小型化、軽量性などにおいて優れた特性を持っている。
例えば、特許文献1では、形状記憶素子を通電させることによって形状記憶素子の形状を変化させ、その形状変化に伴って変化する抵抗値を検出し、形状記憶素子の伸縮を制御することにより、アクチュエータ自体がセンサとしての機能も果たす技術が開示されている。
また、形状記憶素子を用いたアクチュエータの構成例として、例えば特許文献2のように、形状記憶合金の線材を絶縁性の可撓管に挿入し、一端を可撓管とともに固定し固定部とし、もう一端を可動部とする例が紹介されている。上記の構成は、形状記憶合金の線材を可撓管ごと湾曲しても可動部は機能を果たすので、各種装置へ組み込むスペースを縮小することができる。
特開昭57−141704号公報 特公平5−87677号
ここにおいて、形状記憶合金の線材を用いたアクチュエータにおいて、駆動ストロークを大きく取りつつ、形状記憶合金の伸縮を制御することで移動体の駆動を制御する場合、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術を基礎として、形状記憶合金の抵抗値を検出して制御し、形状記憶合金を可撓性のチューブに内挿した構成をとることが想定される。
上述したような構成をとったアクチュエータにおいて、位置精度を高めるため、あるいは可動範囲を制限するためには、移動体に機械的な拘束を設け可動範囲を制限して使用することが考えられる。
しかしながら、かかる場合において、可動範囲の限界まで形状記憶合金を変位させて移動体を移動し、目標とする抵抗値に形状記憶合金の抵抗値が達していない場合は、抵抗値フィードバック制御では目標抵抗値に抵抗値を合わせた制御を行うため、形状記憶合金に過剰な電力を供給することとなるおそれを生じ得る。そのため形状記憶合金に過剰な加熱をしてしまい形状記憶合金の性能劣化を早める可能性がある。
本発明は、かかる実情に着目し、過剰電力供給による形状記憶合金の劣化を防止した形状記憶合金を用いたアクチュエータの制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、
中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
チューブ部材の一端と形状記憶合金の一端が固定され、
形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
形状記憶合金の加熱による被駆動体の移動方向側の所定の位置に支持部材に対する被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
形状記憶合金に電流を流し、形状記憶合金の温度を変化させることにより、形状記憶合金の形状を変化させ、被駆動体とチューブ部材の形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御方法であって、
被駆動体を移動させるために形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段を用い、
抵抗フィードバック制御回路により形状記憶合金へ投入する電力設定を、第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化工程と、
第1の投入電力最適化工程中に、所定の第1の時間間隔内に抵抗値が第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、第1の時間間隔経過後の抵抗値を第2の目標抵抗値として目標抵抗値を第1の目標抵抗値から第2の目標抵抗値に置き換える目標抵抗値置換工程と、
目標抵抗値置換工程により置き換えた目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第2の投入電力最適化工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、第2の投入電力最適化工程中に所定の第2の時間間隔経過後、目標抵抗値を第1の目標抵抗値に置き換えて、第1の投入電力最適化工程を行う目標抵抗値戻し工程を有することを特徴とすることができる。
また、本発明は、
中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
チューブ部材の一端と形状記憶合金の一端が固定され、
形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
形状記憶合金の加熱による被駆動体の移動方向側の所定の位置に支持部材に対する被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
形状記憶合金に電流を流し、形状記憶合金の温度を変化させることにより、形状記憶合金の形状を変化させ、被駆動体とチューブ部材の形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御方法であって、
被駆動体を移動させるために形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段を用い、
抵抗フィードバック制御回路より形状記憶合金へ投入する電力設定を第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化工程と、
第1の投入電力最適化工程中に、所定の第3の時間間隔内に抵抗値が第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、目標抵抗値が抵抗値に近づくように、目標抵抗値を所定の抵抗変化幅だけ変化させる一定幅目標抵抗値変化工程と、
一定幅目標抵抗値変化工程で変化した目標抵抗値に対して抵抗値が許容範囲内になるように投入電力を最適化する第3の投入電力最適化工程と、
第3の投入電力最適化工程で、所定の第3の時間間隔経過後、抵抗値が目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、一定幅目標抵抗値変化工程に戻す一定幅目標抵抗値変化ループ工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明は、一定幅目標抵抗値変化ループ工程中に所定の第4の時間間隔経過後、
目標抵抗値を第1の目標抵抗値に置き換えて、第1の投入電力最適化工程を行う第2の目標抵抗値戻し工程を有することを特徴とすることができる。
また、本発明は、
中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
チューブ部材の一端と形状記憶合金の一端が固定され、
形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
形状記憶合金の加熱による被駆動体の移動方向側の所定の位置に支持部材に対する被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
形状記憶合金に電流を流し、形状記憶合金の温度を変化させることにより、形状記憶合金の形状を変化させ、被駆動体とチューブ部材の形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御装置であって、
被駆動体をストッパーへ移動させるために形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段を備え、
抵抗フィードバック制御回路により形状記憶合金へ投入する電力設定を、第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化手段と、
第1の投入電力最適化手段による最適化中に、所定の第1の時間間隔内に抵抗値が第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、第1の時間間隔経過後の抵抗値を第2の目標抵抗値として目標抵抗値を第1の目標抵抗値から第2の目標抵抗値に変更する目標抵抗値変更手段と、
目標抵抗値変更手段により変更された目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第2の投入電力最適化手段と、を有することを特徴とする。
本発明は、過剰電力供給による形状記憶合金の劣化を防止した形状記憶合金を用いたアクチュエータの制御方法及び制御装置を提供することができる。
以下に、本発明に係る形状記憶合金を用いたアクチュエータの制御装置及び制御方法の実施例を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本実施例に用いた形状記憶合金ワイヤ102の温度−抵抗特性を示した概略図である。
横軸は温度を示し、縦軸は形状記憶合金ワイヤ102の抵抗値を示す。図1中に記載した温度1は形状記憶合金ワイヤが温度によって相転移しはじめ、長さが収縮することにより加熱によって抵抗が下がりはじめる点を示している。図1中に記載した温度2は形状記憶合金ワイヤ102が機械的な拘束により長さが変化することが出来ない状態になり、加熱しても抵抗が変化しなくなる点を示している。厳密には分子の熱運動等の影響から温度2以上に加熱したときに抵抗が高くなる傾向がある。しかしながら、形状記憶合金ワイヤ102の長さ変化による抵抗値の変化と比較して十分小さいため、ここでは、変化しなくなる点と表現した。
図2は、本実施例に係る形状記憶合金を用いたアクチュエータの構成例を示し、図3は、図2における形状記憶合金を用いたアクチュエータを駆動制御する抵抗値フィードバック制御回路120の内部構成を示している。
本実施例に係る形状記憶合金を用いたアクチュエータは次のように構成されている。図2に示したように、チューブ101内に形状記憶合金ワイヤ102を挿通している。形状記憶合金ワイヤ102の一端に圧着部材103を圧着固定し、圧着部材103とチューブ101の一端を接着剤104により接合してある。
そして、チューブ101の他端を支持部材105に固定する。支持部材105には形状記憶合金ワイヤ102が通る穴(図示せず)を設けている。支持部材105のチューブ101を固定した側の反対側にバイアスばね106の一端を固定する。バイアスばね106の他端は移動体107に固定している。また、形状記憶合金ワイヤ102の他端は、チューブ101内、支持部材105内、バイアスばね106内を通って移動体107に固定されている。
支持部材105は土台108上に設置されている。土台108には第1ストッパー109、第2ストッパー110を設けている。尚、図2は、形状記憶合金ワイヤ102の長さが室温の場合を示しており、バイアスばね102の付勢力により、移動体107が第1ストッパー109で規制され制止された状態を示している。
圧着部材103は導電性である。形状記憶合金ワイヤ102の一端は抵抗値フィードバック制御回路120の信号発生回路121に電気的に接続されている。形状記憶合金ワイヤ102の他端は抵抗値検出回路122に電気的に接続されている。
ここで、図3に示すように、抵抗値フィードバック制御回路120は、本発明に係る制御手段として機能し、判定演算回路126と、演算された通電量を形状記憶合金ワイヤ102に出力する信号発生回路121と、を備えている。ここで、判定演算回路126は、抵抗値指令回路123と、カウンタ124と、所定時間経過後に抵抗検出回路122から得られた抵抗値とメモリ125に記録され抵抗値指令回路123より設定された目標抵抗値とを比較し形状記憶合金ワイヤ102への最適な通電量を演算する。
図4の(a)、図4の(b)は、図2に示した形状記憶合金ワイヤ102の状態の違いによる移動体の位置変化を示した図である。この図4の(a)、(b)では、移動体の位置変化を理解しやすくするため、図2で図示した抵抗値フィードバック制御回路120についての図示を省略している。
図4の(a)は、形状記憶合金ワイヤ102が抵抗値フィードバック制御回路120からの通電により加熱され相転移し、形状記憶合金ワイヤ102の収縮力がバイアスばね106の付勢力に抗してその長さが変化し、形状記憶合金ワイヤ102の収縮方向に移動体107が位置変化した状態を示している。
図4の(b)は、図4の(a)の場合よりも通電電力を上げて移動体107を形状記憶合金ワイヤ102の収縮方向により大きく移動させて、第2ストッパー110により規制され制止された状態を示している。このとき、形状記憶合金ワイヤ102は加熱により、さらに収縮しようとしても第2ストッパー110によって移動体107は動くことが出来ない。その結果、形状記憶合金ワイヤ102も収縮出来ない。移動体107は制止しているが、形状記憶合金ワイヤ102には過剰な加熱がされやすい状況となっている。
図5の(a)、(b)は、時間経過に伴う移動体107の変位及び形状記憶合金ワイヤ102の抵抗値変化を模式的に示したものである。(a)において、横軸に時間、縦軸に抵抗値としていている。また、(b)では、横軸を時間、縦軸を変位としている。
図6は、本実施例における図3で示したフィードバック制御回路120が行う第1の制御方法の手順を説明するフローチャートである。ここで、図6、図7のフローチャートにより実行される制御が、本発明に係る第1の投入電力最適化工程(或いは手段)、目標抵抗値置換工程(或いは手段)、第2の投入電力最適化工程(或いは手段)、目標抵抗値戻し工程(或いは手段)としての機能を奏することとなる。
図6に示したように、図2で示した構成のアクチュエータの移動体107を動かすために、初期目標抵抗値R0が設定され、経過時間としての2つの変数Ta, Tbをリセットしカウントを開始する(ステップS1)。ここで、初期目標抵抗値R0は、チューブ101の湾曲状態に依らず十分に移動体107が第2ストッパー110に到達し得るような値である。
次に、目標抵抗値R1として、目標設定抵抗値R1を初期目標抵抗値R0とする(ステップS2)。
初期目標抵抗値R0が設定されたことにより、抵抗値フィードバック制御回路120の信号発生回路121からの出力によって投入電力最適化工程により設定された電力が投入され、形状記憶合金ワイヤ102が収縮し移動体107の位置を変化させる(ステップS3)。この投入電力最適化工程については後述する。
経過時間の変数Tbが第2の所定時間T2に達しているか判定する(ステップS4)。
所定の時間が経過していれば、Ta,TbをリセットしステップS2に戻る(ステップS5)。
ステップS4にて、経過時間の変数TbがT2に達していなければ、次に経過時間の変数Taが所定の第1の経過時間に達しているか判定を行う(ステップS6)。
ここで、経過時間Taが第1の所定時間T1に達したとき、Taをリセットした後(ステップS7)、判定演算回路126において、ステップS3にて測定された抵抗値Rmと目標抵抗値R1との差が所定の許容範囲ΔR内にあるか判定する(ステップS8)。
測定された抵抗値RmとR1の差が許容範囲ΔRより大きい場合は、移動体107が第2ストッパー110にあたって、抵抗値がR1に達することができないと判断して、目標抵抗値R1をその時点での測定された抵抗値Rmに置き換えステップS3に戻る(ステップS9)。
ここで第1の所定時間T1とは、形状記憶合金ワイヤ102が初期目標抵抗値R1に到達するまでに収縮可能である場合、T1投入電力最適化工程によって抵抗値RmがR1に近づくのに十分な時間である。すなわち、確実に第2ストッパー110の位置まで、移動体107が到達し得るとされる時間である。
図6のフローにおいては、この抵抗値R1がその値に到達し得ない場合の置き換えを第1の所定時間T1毎に行うことができるので、移動体107が第2ストッパー110に当たったことによる過加熱を抑制することができ、結果として形状記憶合金ワイヤ102の劣化を防止することができる。
また、ステップS4において、経過時間の変数Tbが第2の所定時間T2に達したと判定したとき、ステップS5にてTa,TbをリセットしステップS2に戻る。そこで、目標抵抗値R1を初期目標設定値R0と設定することにより、第2の所定時間T2が経過する毎に抵抗値R1は抵抗値R0にリセットされる。例えば、外的要因等により図5に示すようT1経過後(T2未満)に、チューブ101の湾曲状態が変化し、移動体107が第2ストッパー110から第1ストッパー109側に移動してしまったとしても、所定時間T2経過後に抵抗値R1を初期目標値R0とし、再度抵抗値R0に近づけるよう形状記憶合金ワイヤ102に通電することにより、測定抵抗値Rmが変化せずに移動体107の位置が変化したとしても、移動体107を第2ストッパー110の位置まで再度戻すことができ、また、移動体107が第2ストッパー110近傍まで変位しない状態でフィードバック制御され続ける状況を防ぐことができる。ここで第2の所定時間T2とは、通常T1よりもかなり大きな値となる。
なお、投入電力最適化工程については図7にフローを示す。形状記憶合金ワイヤ102に所定の電圧Vaを印加する(ステップS11)。この状態でその抵抗値Rmを測定する(ステップS12)。そして、抵抗値Rmと抵抗値R1の差に応じて電圧Vaを変化させることで投入電力を制御する(ステップS13)。ここで、図7に示した所定のアルゴリズムとは、抵抗値Rmと抵抗値R1の差、およびフィードバックループにおける抵抗値Rmの時間微分値などを用いた関係式に基づいて電圧Vaの値を随時更新することである。
このように本実施例の方法では、チューブ101の湾曲状態の変化による過加熱を防止しながら、確実に第2ストッパー110近傍まで移動体107を変位させることが可能になる。
本実施例の作用効果を説明する。例えば、抵抗フィードバック制御により、移動体をストッパー位置まで移動させる場合、目標抵抗値はストッパーに移動体が当たる位置まで形状記憶合金の長さを変形させたときの抵抗値付近に設定する。その場合、形状記憶合金の残留歪により抵抗値が変化していた場合は抵抗値が目標抵抗値に達することが出来ないため、抵抗フィードバック制御では過剰な電力を供給することとなる。また、チューブ部位が湾曲可能なアクチュエータでは、移動体を駆動している際に、チューブ部位の湾曲角を変化させると、チューブ内径と形状記憶合金の外形とのクリアランスより、ストッパー位置での形状記憶合金の抵抗値が変化する。そのため、抵抗フィードバック制御では過剰な電力を供給することとなる。
しかしながら、本発明では、上記の過剰電力が供給される状況下のときに、一定時間内に目標抵抗値を、検出した抵抗値に変更して抵抗フィードバック制御を続けるようにしたので、移動体の位置が変化することなく、形状記憶合金の過剰な電力が投入されることを防止でき、以って形状記憶合金の性能の劣化を防ぎ、長期間安定した駆動を提供することができる、といった作用効果を奏することができることとなる。
かかる構成とすれば、上述した作用効果、すなわち、チューブ部位の湾曲角の変化で生じる過剰な電力供給について、目標抵抗値を、検出した抵抗値に設定しなおすことにより防止することができることに加え、一定時間後に、目標設定値を、目標抵抗値決定手段により決定した第1の目標抵抗値に再び戻すことにより、上記一定時間内に湾曲角の変化などで移動体がストッパー位置から移動していた場合、再び、移動体をストッパー位置に戻して制御することが可能となる。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例におけるアクチュエータの構成は実施例1と同様で、制御フローのみが異なる。そのフローを図8に示す。ここにおいて、図8のフローチャートにおいて実行される制御が、本発明に係る一定幅目標抵抗値変化工程(或いは手段)、第3の投入電力最適化工程(或いは手段)、一定幅目標抵抗値変化ループ工程(或いは手段)、第2の目標抵抗値戻し工程(或いは手段)としての機能を奏することになる。
図8に示したように、本実施例では、実施例1と異なり、第1の所定時間(T1)経過時に抵抗値R1と抵抗値Rmの差の絶対値が大きい場合に抵抗値R1を抵抗値Rmに置き換えるのではなく、所定の抵抗値差δRを加えた値に置き換える。この方法でも実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、δRは定数であっても、抵抗値Rm若しくは抵抗値R1の関数であっても良い。尚、本実施例では第3の所定時間T3を第1の所定時間T1と同等にしている。さらに、第4の所定時間T4を第2の所定時間T2と同等にしている。
また、本実施例においては、実施例1のように所定時間経過後その時点で測定された抵抗値Rmに抵抗値R1を置き換えるようにした例に対して、抵抗値R1は所定時間T1毎に、所定の抵抗値差δRずつ目標抵抗値R1を抵抗値Rmに近づけながら投入電力最適化を行うようになっている。この方法では、R1を即座に抵抗値Rmに変更せずに、電力の最適化を試みながらR1を抵抗値Rmに近づけていく。すなわち、湾曲状態が頻繁に変化する状況で第2ストッパー110に移動体107が制止される位置での抵抗値が変化していても、移動体107が第2ストッパー110から離れる時間を短くすることが可能となる。以上説明したように、本実施例においても実施例1と同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施例では、チューブ部位の湾曲角の変化などで生じる過剰な電力供給の状況のとき、一定時間内で抵抗値が目標抵抗値の許容範囲内に収まらなければ、一定の幅で、随時、目標抵抗値の値を抵抗値側に変化させることにより、短時間で抵抗値が目標抵抗値の許容範囲に収まり、最適な電力供給で抵抗フィードバック制御を行うことができる。よって、過剰な電力供給時間を短縮し形状記憶合金の過剰な加熱による性能劣化を減少させることができる。また、目標抵抗値を抵抗値側に変化させているときに、チューブ部位の湾曲角が変化しても、随時目標抵抗値を変化させながらも抵抗値に近づけているため、移動体をストッパー位置に制止したまま過剰な電力供給時間を短縮することが出来る。
また、かかる構成とすれば、上述した作用効果、すなわち、チューブ部位の湾曲角の変化で生じる過剰な電力供給について、目標抵抗値を、抵抗値側に一定の幅で随時近づけていくことにより防止することができることに加え、一定時間後に、目標設定値を、目標抵抗値決定手段により決定した第1の目標抵抗値に再び戻すことにより、上記一定時間内に湾曲角の変化などで著しく移動体がストッパー位置から移動していた場合、再び、移動体をストッパー位置に戻して制御することが可能となる。
以上のように、本発明に係る形状記憶合金アクチュエータの制御方法及び制御装置は、形状記憶合金により駆動するアクチュエータの制御方法及び制御装置として有用であり、特に、形状記憶合金の劣化を防止するのに適している。
本発明に係る実施例1で用いた形状記憶合金ワイヤの温度−抵抗特性を示した概略図である。 同上実施例に係る形状記憶合金を用いたアクチュエータの構成例を示す図である。 図2における形状記憶合金を用いたアクチュエータを駆動制御する抵抗値フィードバック制御回路の内部構成を示す図である。 図2に示した形状記憶合金ワイヤの状態の違いによる移動体の位置変化を示した図である。 時間経過に伴う移動体の変位及び形状記憶合金ワイヤの抵抗値変化を模式的に示した図である。 同上実施例におけるフィードバック制御回路が行う制御方法の手順を説明するフローチャートである。 同上実施例において実行される投入電力最適化工程について説明するフローチャートである。 本発明の実施例2におけるフィードバック制御回路が行う制御方法の手順を説明するフローチャートである。
符号の説明
101 チューブ
102 形状記憶合金ワイヤ
103 圧着部材
104 接着剤
105 支持部材
106 バイアスばね
107 移動体
108 土台
109 第1ストッパー
110 第2ストッパー
120 抵抗値フィードバック制御回路
121 信号発生回路
122 抵抗値検出回路
123 抵抗値指令回路
126 判定演算回路

Claims (5)

  1. 中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
    前記チューブ部材の一端と前記形状記憶合金の一端が固定され、
    前記形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
    前記チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
    前記形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
    前記形状記憶合金の加熱による前記被駆動体の移動方向側の所定の位置に前記支持部材に対する前記被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
    前記形状記憶合金に電流を流し、前記形状記憶合金の温度を変化させることにより、前記形状記憶合金の形状を変化させ、前記被駆動体と前記チューブ部材の前記形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御方法であって、
    前記被駆動体を移動させるために前記形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、前記形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段を用い、
    前記抵抗フィードバック制御回路により前記形状記憶合金へ投入する電力設定を、前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化工程と、
    前記第1の投入電力最適化工程中に、所定の第1の時間間隔内に抵抗値が前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して前記許容範囲内にならなかった場合、前記第1の時間間隔経過後の抵抗値を第2の目標抵抗値として目標抵抗値を前記第1の目標抵抗値から前記第2の目標抵抗値に置き換える目標抵抗値置換工程と、
    前記目標抵抗値置換工程により置き換えた目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第2の投入電力最適化工程と、を有することを特徴とする形状記憶合金アクチュエータの制御方法。
  2. 前記第2の投入電力最適化工程中に所定の第2の時間間隔経過後、目標抵抗値を第1の目標抵抗値に置き換えて、第1の投入電力最適化工程を行う目標抵抗値戻し工程を有することを特徴とする請求項1に記載の形状記憶合金アクチュエータの制御方法。
  3. 中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
    前記チューブ部材の一端と前記形状記憶合金の一端が固定され、
    前記形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
    前記チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
    前記形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
    前記形状記憶合金の加熱による前記被駆動体の移動方向側の所定の位置に前記支持部材に対する前記被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
    前記形状記憶合金に電流を流し、前記形状記憶合金の温度を変化させることにより、前記形状記憶合金の形状を変化させ、前記被駆動体と前記チューブ部材の前記形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御方法であって、
    前記被駆動体を移動させるために前記形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、前記形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段を用い、
    前記抵抗フィードバック制御回路より前記形状記憶合金へ投入する電力設定を前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化工程と、
    前記第1の投入電力最適化工程中に、所定の第3の時間間隔内に抵抗値が前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、目標抵抗値が抵抗値に近づくように、目標抵抗値を所定の抵抗変化幅だけ変化させる一定幅目標抵抗値変化工程と、
    一定幅目標抵抗値変化工程で変化した目標抵抗値に対して抵抗値が許容範囲内になるように投入電力を最適化する第3の投入電力最適化工程と、
    前記第3の投入電力最適化工程で、所定の第3の時間間隔経過後、抵抗値が目標抵抗値に対して許容範囲内にならなかった場合、前記一定幅目標抵抗値変化工程に戻す一定幅目標抵抗値変化ループ工程と、を有することを特徴とする形状記憶合金アクチュエータの制御方法。
  4. 前記一定幅目標抵抗値変化ループ工程中に所定の第4の時間間隔経過後、
    目標抵抗値を第1の目標抵抗値に置き換えて、第1の投入電力最適化工程を行う第2の目標抵抗値戻し工程を有することを特徴とする請求項3に記載の形状記憶合金アクチュエータの制御方法。
  5. 中空形状のチューブ部材内に形状記憶合金が挿通され、
    前記チューブ部材の一端と前記形状記憶合金の一端が固定され、
    前記形状記憶合金の他端が被駆動体に機械的に連結され、
    前記チューブ部材の他端が支持部材に固定され、
    前記形状記憶合金の加熱による形状変化方向に対して反対方向に外力を負荷する付勢部材を備え、
    前記形状記憶合金の加熱による前記被駆動体の移動方向側の所定の位置に前記支持部材に対する前記被駆動体の移動を制限するストッパーを備え、
    前記形状記憶合金に電流を流し、前記形状記憶合金の温度を変化させることにより、前記形状記憶合金の形状を変化させ、前記被駆動体と前記チューブ部材の前記形状記憶合金と固定していない側の一端との相対位置を変化させて制御する形状記憶合金アクチュエータの制御装置であって、
    前記被駆動体を前記ストッパーへ移動させるために前記形状記憶合金の目標抵抗値の値を第1の目標抵抗値に設定する目標抵抗値決定手段と、前記形状記憶合金の抵抗値を検出する抵抗値検出手段と、目標抵抗値と抵抗値の情報をもとにフィードバック制御を行う抵抗フィードバック制御回路と、を備えた制御手段と、
    前記抵抗フィードバック制御回路により前記形状記憶合金へ投入する電力設定を、前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第1の投入電力最適化手段と、
    前記第1の投入電力最適化手段による最適化中に、所定の第1の時間間隔内に抵抗値が前記第1の目標抵抗値に設定されている目標抵抗値に対して前記許容範囲内にならなかった場合、前記第1の時間間隔経過後の抵抗値を第2の目標抵抗値として目標抵抗値を前記第1の目標抵抗値から前記第2の目標抵抗値に変更する目標抵抗値変更手段と、
    前記目標抵抗値変更手段により変更された目標抵抗値に対して抵抗値が所定の許容範囲内になるように最適化する第2の投入電力最適化手段と、を有することを特徴とする形状記憶合金アクチュエータの制御装置。
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JP2011157923A (ja) * 2010-02-03 2011-08-18 Olympus Corp 形状記憶合金アクチュエータシステム
JP2019138284A (ja) * 2018-02-15 2019-08-22 国立大学法人 大分大学 形状記憶合金アクチュエータ制御装置、物理量推定プログラム及びその方法

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