JP2009108324A - 偽造防止用インク及び偽造防止印刷物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 コピー等では複製が不可能であり、目視判定によらず機械的に確実に真贋の判定ができ、しかも耐侯性に優れていて安価な偽造防止インク並びに偽造防止印刷物を提供する。
【解決手段】 近赤外線吸収材料を溶媒中に分散させた偽造防止インクであって、近赤外線吸収材料がY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caのいずれかの6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子から選ばれた少なくとも1種からなり、且つその粒子径が200nm以下であって、上記微粒子と共に粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有する。
【選択図】 図2
【解決手段】 近赤外線吸収材料を溶媒中に分散させた偽造防止インクであって、近赤外線吸収材料がY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caのいずれかの6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子から選ばれた少なくとも1種からなり、且つその粒子径が200nm以下であって、上記微粒子と共に粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、近赤外線領域の吸収を利用した偽造防止インクインク、並びにこれを用いた偽造防止印刷物に関するものである。
従来から、預貯金の通帳や身分証明書、クレジットカード、キャッシュカード、小切手、航空券、道路通行券、乗車券、プリペードカード、商品券、証券等の有価印刷物については、偽造を防止するための方法として、その基材や印刷方法に特殊な工夫を施すことが行われてきた。
例えば、基材に透かしを入れた特殊印刷(特許文献1)、微細な絵柄の印刷(特許文献2)、バーコードに代表される幾何学形状印刷を用いたデジタル処理化等が行われている。しかし、透かしを入れた特殊印刷の用紙はコストが高く、バーコード印刷はコピー等で簡単に偽造が可能である。また、微細な絵柄の印刷は、現在のカラーコピー機やコンピュータの画像処理技術の向上と、更に人の目による確認という曖昧な要素が加わるため、偽造防止効果が低く汎用的ではない。
上記以外の偽造防止方法として、300〜780nmの可視光領域の吸収が少なく且つ600〜1800nmの近赤外線を吸収する印刷インクを利用して、印刷物の真贋情報を検出する方法が提案されている。例えば、可視光領域に吸収の少ない近赤外線吸収材料と樹脂を混合したインクで印刷したものは、その印刷面に赤外線レーザーを照射すると特定波長のみ吸収されるため、反射若しくは透過光を読み取ることで真贋の判定が可能となる。
このような近赤外線を吸収する印刷インクとして、フタロシアニン化合物を用いた偽造防止インクが提案されている(特許文献3)。しかしながら、近赤外線吸収材料であるフタロシアニン化合物は、その吸収特性が温度や紫外線等の影響によって低減するため、耐候性に劣るという欠点があった。
一方、YやLa等の6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子等を含む分散膜が、太陽光線の近赤外線を断熱する日射遮蔽膜として提案されている(特許文献4、特許文献5)。しかし、この日射遮蔽膜は窓等からの日射を遮って、室内の温度上昇を防ぐためのものであり、6ホウ化物微粒子や酸化ルテニウム微粒子等の無機微粒子を偽造防止インクに応用することについては全く検討されていなかった。
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、近赤外線領域に吸収をもつ近赤外線吸収材料を利用して、印刷物の真贋を判定でき、しかも耐候性に優れた偽造防止インクを提供することを目的とする。
また、本発明は、この偽造防止インクを用いることによって、コピー等では複製が不可能であり、目視判定によらず機械的に確実に真贋の判定ができ、しかも耐侯性に優れていて安価な偽造防止印刷物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明が提供する偽造防止インクは、近赤外線吸収材料を溶媒中に分散させた偽造防止インクであって、該近赤外線吸収材料がY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caのいずれかの6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子から選ばれた少なくとも1種からなり、且つその粒子径が200nm以下であって、該微粒子と共に、粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有することを特徴とする。
上記本発明による偽造防止インクは、前記溶媒中に有機バインダーを含むことができる。また、上記偽造防止インクにおいては、前記近赤外線吸収材料の微粒子の表面が、Si、Ti、Al、Zrから選ばれた少なくとも1種の化合物で被覆されていても良い。
本発明は、また、上記した偽造防止インクを用い、被印刷基材の片面又は両面に印刷したことを特徴とする偽造防止印刷物を提供する。更に、上記した偽造防止インクを用い、被印刷基材の片面又は両面に印刷し偽造防止インクの印刷膜上に、更に粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有した着色インクが印刷塗布されていることを特徴とする偽造防止印刷物を提供することができる。
上記本発明による偽造防止インク及び偽造防止印刷物において、前記着色顔料は、Cu−Fe−Mn、Cu−Cr、Cu−Cr−Mn、Cu−Cr−Mn−Ni、Cu−Cr−Fe、Co−Cr−Feのいずれかの複合酸化物、チタンブラック、窒化チタン、酸窒化チタン、暗色アゾ顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、カーボンブラックから選ばれた少なくとも1種の近赤外線を透過する黒色顔料であることが好ましい。
本発明によれば、近赤外線領域に吸収をもち、耐候性に優れ、黒色等に着色した偽造防止インクを提供することができる。また、この着色した偽造防止インクを用いることによって、コピー等では複製が不可能であり、目視判定によらず機械的に簡単且つ確実に真贋の判定ができ、しかも耐侯性に優れた安価な偽造防止印刷物を提供することができる。更に、この着色した偽造防止インクは、着色顔料のみのインクと組み合わせて印刷することにより、一層複雑で、偽造防止効果の高い偽造防止印刷物を得ることができる。
本発明において、偽造防止インクに用いる近赤外線吸収材料は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caの6ホウ化物微粒子、あるいは酸化ルテニウム微粒子又は酸化レニウム微粒子である。これらの無機微粒子は、暗色系の材料であるが、微細な微粒子状では、可視光領域(380〜780nm)に透過率のピークを持ち、近赤外線領域(600〜1800nm)に透過率のボトムを持つ透過特性を示す。
これらの無機微粒子を含む偽造防止インクは、可視光領域の吸収が少なく且つ近赤外線領域に吸収をもつため、その印刷面に赤外線レーザーを照射したとき特定の波長を吸収する。従って、この偽造防止インクを被印刷基材の片面又は両面に印刷した印刷物は、特定波長の近赤外線を照射してその反射若しくは透過を読み取ることによって、反射量又は透過量の違いから、印刷物の真贋を判定することができる。
例えば、LaB6微粒子を含有する偽造防止インクは、図1に示すような透過プロファイルを有している。図1から分るように、この偽造防止インクは、可視光領域に透過率のピークを持つため着色が少なく、同時に近赤外線領域に透過率のボトム(吸収ピーク)があるため、その情報を赤外線センサーで読み取ることにより、その情報を用いて印刷物の真贋を判定することが可能である。
本発明で近赤外線吸収材料として用いる上記6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子又は酸化レニウム微粒子は、いずれも無機微粒子であるため、耐侯性に優れている。耐候性を更に向上させるために、その微粒子表面をSi、Ti、Al、Zrの1種又は2種以上の化合物で被覆することができる。これらの化合物は基本的に透明であり、添加したことによって可視光透過率を低下させることはない。
また、上記近赤外線吸収材料の透過特性は、6ホウ化物微粒子等の無機微粒子の大きさによっても変化する。即ち、無機微粒子の粒子径が小さいほど、可視光領域の透過率のピークと近赤外線領域の吸収のボトムとの透過率差は大きくなる。逆に粒子径が大きいと、その透過率差が小さくなり、可視光透過率のピークに対する近赤外線の吸収が低下する。そのため、近赤外線吸収材料である6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子の大きさは、目的とする使用方法等に応じて適宜設定することが望ましい。
本発明による偽造防止インクの場合、その近赤外線吸収材料として用いる無機微粒子、即ち6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子の粒子径は2μm以下が好ましい。粒子径が2μmを超えると、上記透過率のピークと近赤外線領域の吸収とのボトムの差が小さくなり、可視光領域の透明性を有する近赤外線吸収材料としての効果が低減するからである。
また、被印刷基材として用いる透明基材の透明性を維持したい場合、又は下地印刷の透視可能な透明性を維持したい場合など、実質的に透明な偽造防止コードやバーコードを印刷するためには、無機微粒子の粒子径は更に小さい方が好ましい。即ち、実質的に透明性を保持したまま近赤外線を効率良く吸収する印刷膜を必要とする場合には、偽造防止インク中の無機微粒子の粒子径は800nm以下とすることが好ましい。800nmを超える粒子径の無機微粒子は光を大きく散乱するため、優れた透明性を保持した偽造防止印刷が難しいからである。
特に、可視光領域の透明性を重視する偽造防止印刷の場合には、無機粒子による光の散乱をより考慮する必要がある。無機微粒子の粒子径が200nmよりも大きいと、幾何学散乱若しくはミー散乱によって400〜780nmの可視光線領域の光を散乱し、半曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られないからである。
従って、偽造防止印刷に澄んだ透明性を必要とする場合は、無機微粒子の粒子径は200nm以下が好ましく、100nm以下が更に好ましい。粒子径が200nm以下になると、光散乱が低減してレイリー散乱領域になり、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴って透明性が向上する。また、粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり更に好ましい。また、近赤外光線においても、粒子径を小さくすることで散乱が減少し、吸収効率が上昇するため好ましい。
本発明の偽造防止インクは、上記した6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、又は酸化レニウム微粒子を含むが、これらの無機微粒子と共に、近赤外線を透過する着色顔料を含んでいる。このような着色顔料を含むことによって、人の目に感じる可視光領域では着色顔料と同等の色を呈するが、近赤外線領域では特徴的な吸収を持つ着色した偽造防止印刷物を得ることができる。尚、この着色した偽造防止インク及び偽造防止印刷物は、可視光領域における吸収が少ないため、着色顔料の色調は保持される。
例えば、近赤外線を透過する着色顔料として黒色顔料を混合した偽造防止インクは、黒色顔料のみを含む黒色インクと比較すると、人の目には同等の黒色として認識されるが、赤外線を照射して比較すると異なる透過プロファイルを有することが読み取れる。従って、この黒色の偽造防止インクを被印刷基材の片面又は両面に印刷した印刷物、例えばバーコード印刷した印刷物は、近赤外線吸収材料を含まない通常の黒色インクをダミーとして印刷することで、更に複雑で高度な偽造防止が可能となる。
また、本発明の偽造防止インクを被印刷基材の片面又は両面に印刷した印刷物の印刷膜上に、黒色顔料その他の近赤外線を透過する着色顔料を用いた着色インクを塗布又は印刷して偽造防止印刷物とすることもできる。この偽造防止印刷物は、人の目には黒又はその他に着色されて認識されるが、その同じ領域に赤外線でのみ読み取れる文字や記号等が隠れて印刷されているため、赤外線を照射することによって印刷物の真贋を判定することができる。
このような着色顔料としては、近赤外線を透過する黒色顔料が好ましい。黒色顔料の好ましい具体例としては、Cu−Fe−Mn、Cu−Cr、Cu−Cr−Mn、Cu−Cr−Mn−Ni、Cu−Cr−Fe、Co−Cr−Fe等の複合酸化物、あるいはチタンブラック、窒化チタン、酸窒化チタン、暗色アゾ顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、カーボンブラックを挙げることができる。
偽造防止インク中における黒色顔料の粒子径は、近赤外線吸収材料である上記6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子及び酸化レニウム微粒子と同様に、2μm以下が好ましい。また、黒色顔料の粒子径を小さくすることで色調に深みが現れ、意匠的に好まれやすい。更にまた、微細な印刷を必要とする場合は、粒子径を小さくすることで光の散乱が少なくなるため、印刷パターンの輪郭が明瞭になり好ましい。
また、透明な被印刷基材の透明性を維持し、又は下地印刷の透視可能な透明性を維持したい場合には、黒色顔料の粒子径も小さい方が好ましい。この場合、黒色の偽造防止インクや、偽造防止印刷膜上に印刷する黒色インクについて、そのインク中の黒色顔料の粒子径は800nm以下が好ましい。特に可視光領域の透明性を重視する場合には、黒色粒子の粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。その理由は、上述した近赤外線吸収材料である6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子及び酸化レニウム微粒子の場合と同様である。
本発明の偽造防止インクは、近赤外線吸収材料である上記6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、又は酸化レニウム微粒子、及び着色顔料を溶媒中に分散させることで作製する。溶媒としては、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等、使用目的に応じて選択することが可能である。その際、上記微粒子や着色顔料を分散させる方法としては、特に限定されないが、超音波や媒体撹拌ミル等を使用すれば、粒子をほぐして微細化することができるので好ましい。
また、上記偽造防止インクは、溶媒中に有機バインダーを含むことができる。有機樹脂バインダーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フッ素系、ビニル系、ロジン系等何れでも良く、用途に適したものが選択可能である。
また、上記偽造防止インクは、必要に応じて、グラビヤインク、スクリーンインク、オフセットインク、溶融熱転写インクなど、印刷方法に応じた一般的な配合が可能であり、また、可塑剤、酸化剤防止剤、増粘剤、ワックス等の添加剤を含むことができる。
上記偽造防止インクを被印刷基材の表面に通常の方法により塗布又は印刷することにより、偽造防止印刷物を得ることができる。その場合、一般的には有機バインダーを含むため、溶媒を蒸発させて有機バインダーを硬化させることで、被印刷基材との結着性が優れ、良好な表面強度を有する印刷膜を得ることができる。尚、有機バインダーの硬化方法としては、紫外線硬化、熱硬化、常温硬化等が挙げられる。
また、偽造防止インクが有機バインダーを含まない場合には、被印刷基材に塗布又は印刷し、溶媒を蒸発させることで印刷膜が得られる。ただし、この場合には、印刷膜の剥離や微粒子の脱落を防止するため、その上に透明樹脂からなるカバー層を設けることが好ましい。
偽造防止印刷物中における近赤外線吸収材料の含有量は、目的とする用途に応じて変更可能であるが、通常は0.01g/m2以上が好ましい。0.01g/m2未満の使用量では、近赤外線領域の吸収が顕著に表れないため、偽造防止インクとして機能させることが難しい。また、含有量の上限は特に限定されないが、5g/m2以上になると可視光領域の光を大幅に吸収してしまうため、透明性を維持する必要がある場合には5g/m2より少ない含有量が好ましい。尚、上記含有量は、全てのフィラーが印刷面に入射する光線に対して同等に作用するため、1m2当たりの量で評価することができる。
偽造防止インクを印刷するための被印刷基材は、目的とする用途にあったものを使用すればよく、紙の他に、樹脂とパルプの混合物、樹脂フィルム等を用いることができる。また、シール上に偽造防止インクで印刷し、このシールを被印刷基材に貼付してもかまわない。
このようにして作製した本発明の偽造防止印刷物は、コピー等では複製が不可能であって、目視判定によらず、赤外線を照射し且つその反射又は透過を検出することによって機械的に確実に、真贋の判定を行うことができる。しかも、赤外線吸収材料としてホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子又は酸化レニウム微粒子の無機微粒子を用い、これを印刷法により被印刷基材に適用するため、耐候性に優れ、安価な偽造防止印刷物を提供することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。尚、膜の光学特性は、分光光度計U−4000(日立製作所(株)製)を用いて測定した。実施例中の可視光透過率は、JIS
R3106に従って測定を行った。また、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置ELS−8000(大塚電子(株)製)により測定した平均値をもって示した。
R3106に従って測定を行った。また、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置ELS−8000(大塚電子(株)製)により測定した平均値をもって示した。
参考例
20gのLaB6微粒子をシランカップリング剤と共にエタノール78gに撹拌混合し、これを分散処理して、平均分散粒子径が100nmの分散液Aを作製した。この分散液Aの100gを、紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)20gと混合して、偽造防止インクとした。
20gのLaB6微粒子をシランカップリング剤と共にエタノール78gに撹拌混合し、これを分散処理して、平均分散粒子径が100nmの分散液Aを作製した。この分散液Aの100gを、紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)20gと混合して、偽造防止インクとした。
被印刷基材として厚さ50μmの透明PETフィルムを使用し、その表面に上記偽造防止インクをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。
得られた印刷膜の可視光透過率は76%であった。また、可視光領域の550nmの透過率は78%であり、近赤外線領域の800nmの透過率は44%、900nmの透過率は35%、1000nmの透過率は33%であった。この印刷膜の透過プロファイルを図1に示す。
このように、赤外線吸収材料としてLaB6微粒子を含む印刷膜は、可視光領域では高い透過率を示し、近赤外線領域では透過率が顕著に低くなっている。従って、その印刷膜は近赤外線領域の光線を用いてデータ処理することにより真贋を判定でき、偽造防止印刷物として有効であることが分る。
実施例1
近赤外線を透過する黒色顔料Paliotol Black L0080(BASF製)20gを、高分子系分散剤と共にエタノール78gに撹拌混合し、これを分散処理して、平均分散粒子径120nmの分散液Bを作製した。この分散液Bを、上記参考例における分散液A及び紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)と混合して、黒色の偽造防止インクを作製した。
近赤外線を透過する黒色顔料Paliotol Black L0080(BASF製)20gを、高分子系分散剤と共にエタノール78gに撹拌混合し、これを分散処理して、平均分散粒子径120nmの分散液Bを作製した。この分散液Bを、上記参考例における分散液A及び紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)と混合して、黒色の偽造防止インクを作製した。
被印刷基材として厚さ50μmの透明PETフィルムを使用し、その表面に上記黒色の偽造防止インクをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。
得られた印刷膜の可視光透過率は1%であった。また、可視光領域の550nmの透過率は1%であり、近赤外線領域の800nmの透過率は24%、900nmの透過率は20%、1000nmの透過率は19%であった。この印刷膜の透過プロファイルを図2に示す。
比較例1
上記実施例1における分散液Bを、紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)と混合し、近赤外線吸収材料を含まない黒色インクとした。この黒色インクを用い、上記実施例1と同様にして、厚さ50μmの透明PETフィルム上に印刷膜を形成した。
上記実施例1における分散液Bを、紫外線硬化樹脂UV3701(東亞合成(株)製)と混合し、近赤外線吸収材料を含まない黒色インクとした。この黒色インクを用い、上記実施例1と同様にして、厚さ50μmの透明PETフィルム上に印刷膜を形成した。
得られた印刷膜の可視光透過率は1%であった。また、可視光領域の550nmの透過率は1%であり、近赤外線領域の800nmの透過率は78%、900nmの透過率は82%、1000nmの透過率は85%であった。この印刷膜の透過プロファイルを図2に示す。
図2に示した実施例1と比較例1の各印刷膜の透過プロファイから、実施例1の印刷膜は可視光領域では比較例1と同様の黒色を示すが、近赤外線領域では透過率が大きく異なることが分る。従って、実施例1の黒色の印刷膜は、肉眼では同一の黒色印刷として認識されるが、近赤外線領域の光線を用いたデータ処理によって検出可能であり、偽造防止印刷物として有効であることが分る。
Claims (7)
- 近赤外線吸収材料を溶媒中に分散させた偽造防止インクであって、該近赤外線吸収材料がY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caのいずれかの6ホウ化物微粒子、酸化ルテニウム微粒子、及び酸化レニウム微粒子から選ばれた少なくとも1種からなり、且つその粒子径が200nm以下であって、該微粒子と共に、粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有することを特徴とする偽造防止インク。
- 前記溶媒中に有機バインダーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の偽造防止インク。
- 前記近赤外線吸収材料の微粒子の表面が、Si、Ti、Al、Zrから選ばれた少なくとも1種の化合物で被覆されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の偽造防止インク。
- 前記着色顔料が、Cu−Fe−Mn、Cu−Cr、Cu−Cr−Mn、Cu−Cr−Mn−Ni、Cu−Cr−Fe、Co−Cr−Feのいずれかの複合酸化物、チタンブラック、窒化チタン、酸窒化チタン、暗色アゾ顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、カーボンブラックから選ばれた少なくとも1種の近赤外線を透過する黒色顔料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の偽造防止インク。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の偽造防止インクを用い、被印刷基材の片面又は両面に印刷したことを特徴とする偽造防止印刷物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の偽造防止インクを用い、被印刷基材の片面又は両面に印刷した偽造防止インクの印刷膜上に、更に粒子径が200nm以下の近赤外線を透過する着色顔料を含有した着色インクが印刷塗布されていることを特徴とする偽造防止印刷物。
- 前記着色インクは、着色顔料として、Cu−Fe−Mn、Cu−Cr、Cu−Cr−Mn、Cu−Cr−Mn−Ni、Cu−Cr−Fe、Co−Cr−Feのいずれかの複合酸化物、チタンブラック、窒化チタン、酸窒化チタン、暗色アゾ顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、カーボンブラックから選ばれた少なくとも1種の近赤外線を透過する黒色顔料を含有することを特徴とする、請求項6に記載の偽造防止印刷物。
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