JP2009104949A - アドレス電極形成用導体ペースト及びプラズマディスプレイパネル - Google Patents

アドレス電極形成用導体ペースト及びプラズマディスプレイパネル Download PDF

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穣 沼口
Kenichi Ichikawa
賢一 市川
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慎 大野
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剛広 山下
Kazuya Makio
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Abstract

【課題】 化学エッチングに対する保護層との密着性に優れたアドレス電極を有するプラズマディスプレイパネル(PDP)および該電極を形成するための導体ペーストを提供する。
【解決手段】 本発明によると、PDPのアドレス電極を形成するためのAg系導体ペーストであって、平均粒径0.5μm〜2μmのAg細粉末と、本導体ペーストを焼成して形成される導体膜の表面粗さを上昇させる粗化材とをビヒクルに添加混合してなる導体ペーストが提供される。前記粗化材は、前記導体膜の表面粗さが0.55μm〜0.65μmとなる分量で添加されている。かかる導体ペーストは、アドレス電極を保護層(例えばドライフィルムレジストにより形成されたレジスト層)で覆った状態で行われる化学エッチングによって所定パターンの隔壁を形成する態様で製造されるPDPのアドレス電極を形成する用途に好適である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、所定のアドレス電極を備えたプラズマディスプレイパネル、該アドレス電極を形成するために使用される導体ペーストおよび該ペーストを使用したプラズマディスプレイパネルの製造に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)は、前面パネルと背面パネルとの間に隔壁で仕切られた多数のセルが形成された構造を有し、該セルに封入された希ガスに電圧を印加することによりプラズマ放電が起こって紫外線が発生し、セル壁面に配置された蛍光体が発光して画像を表示し得るように構成されている。一般に上記背面パネルは、ガラス基板上に少なくともアドレス電極と隔壁とが設けられた構造を有する。アドレス電極と隔壁との間に誘電体層または絶縁体層がさらに設けられる場合もある。
上記アドレス電極を形成する代表的な方法として、焼成により導体膜(アドレス電極を構成する導体膜)を形成する粉末材料(導体形成用粉末材料)が適当な有機媒質(ビヒクル)に分散されたペーストまたはインク状の組成物(導体ペースト)を用いる方法が挙げられる。なかでも、電極形成が容易であり且つ抵抗値の低い導体膜が得られやすいことから、上記導体形成用粉末材料の主成分が銀(Ag)粉末である導体ペースト(すなわち、Ag系導体ペースト)が好ましく用いられている。
PDPのアドレス電極形成に用いられる導体ペーストに関する従来技術文献として特許文献1および2が挙げられる。また、異なる用途に使用される導体ペースト(セラミックコンデンサー電極形成用のペースト)に関する従来技術文献として特許文献3が挙げられる。
特開2007−012371号公報 特開2000−228113号公報 特開2001−184942号公報
PDPの背面パネルに具備される隔壁を形成する代表的な方法として化学エッチング法がある。この化学エッチング法では、アドレス電極の形成されたガラス基板上に面状に広がる隔壁材料層を形成し、その隔壁材料層の表面に所定パターンのレジスト層を形成し、該レジスト層を保護層として利用しつつ、上記隔壁材料層のうちレジスト層が表面に配置されていない部位を構成する隔壁材料を化学エッチングにより除去する。その後、レジスト層を除去する。このようにして所定パターンの隔壁を形成する。
このような化学エッチング法による隔壁形成過程において、通常、上記隔壁材料層はアドレス電極の一部分(典型的には大部分)を覆う領域に形成される。該アドレス電極の他の一部は隔壁材料層(または誘電体層、絶縁層等)に覆われることなく外部に露出しているため、この露出部分(典型的には、アドレス電極に電圧を印加するために外部回路との接続に利用される端子部分)が上記化学エッチングによって損傷を受けることがある。特許文献1に記載の技術は、かかる損傷の防止を目的とするものであって、エッチング剤に対する耐久性の高い(換言すれば、エッチング剤に曝されても損傷を受けにくい)アドレス電極を形成可能な導電組成物に関する。
化学エッチングによるアドレス電極の損傷を防止する他の手法として、アドレス電極の露出部分を一時的に保護層で覆い、これによりアドレス電極にエッチング剤が接触することを阻止する方法が知られている。上記保護層としては、例えば、ドライフィルムレジスト(以下「DFR」ともいう。)により形成されたレジスト層が好ましく用いられる。しかし、この方法においてアドレス電極と保護層との密着性が不足すると、保護層で覆われた部分にエッチング剤が入り込み、そのためアドレス電極(導体膜)が基板から剥離する、亀裂が入る等の損傷が生じる不具合があった。
本発明は、上述したような従来の導体ペーストにおける問題点を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、PDPのアドレス電極であって、該アドレス電極を上記化学エッチングから保護する保護層(例えば上記レジスト層)との密着性に優れたアドレス電極を備えたPDPを提供することにある。本発明の他の目的は、PDPのアドレス電極を形成するための導体ペーストであって、該アドレス電極を覆う保護層(例えば上記レジスト層)との密着性に優れたアドレス電極を形成可能な導体ペーストを提供することにある。本発明の他の目的は、かかる導体ペーストを用いて形成されたアドレス電極を備えるPDPおよび該PDPの製造方法を提供することである。
本発明者は、アドレス電極を構成する導体膜の表面状態と、該導体膜と保護層との密着性(エッチング剤の進入を防止する性能)との関係を詳細に検討した。その結果、上記導体膜の表面状態を的確に制御することにより、該導体膜と保護層との間に十分な密着性(すなわち、エッチング剤による導体膜の損傷を十分に防止するに足る密着性)を確保し得ることを見出した。さらに、かかる表面状態を有する導体膜を形成可能な導体ペースト組成を見出して本発明を完成した。
本発明によると、Agを主成分とするアドレス電極を備えたPDPが提供される。そのアドレス電極は、平均粒径0.5μm〜2μm(好ましくは0.5μm〜1μm)のAg細粉末と、該アドレス電極の表面粗さを上昇させる粗化材とを含むアドレス電極形成用導体ペーストを用いて形成されたものである。該アドレス電極の表面粗さは0.55μm〜0.65μmである。
なお、本発明の特定に関して「平均粒径」というときは、粉末(粉体)を構成する一次粒子の粒子径に基づいて導き出された概算値をいう。典型的には、走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡観察に基づいて概算された平均粒径をいう。
また、本明細書において「粒度分布が異なる」とは、比較する二つの粉末(二成分)の粒度分布曲線(一般に横軸が粒子径を示し縦軸が粒子存在割合を示す座標平面上に表される)が、形状および横軸方向の位置の少なくとも一方において相違することをいう(非相似形状であり且つ横軸方向の位置が異なっていてもよい。)。本明細書において定義される相互に粒度分布が異なる二つの粉末(Ag細粉末とAg粗粉末)を混合すると、典型的には、該混合粉末の粒度分布曲線において二つのピークが相互に離隔した所定の部位(典型的には混合前の各粉末の平均粒径に対応する部位)にみられる。
また、本明細書において「表面粗さ」とは、JIS B0601−2001に基づいて求められる算術平均粗さRa(以下、「表面粗さRa」ということもある。)をいう。この表面粗さRa[μm]は、例えば測定対象物の表面を顕微鏡で観察することにより、あるいは従来公知の触針式等の表面粗さ測定装置によって容易に測定することができる。
また、本明細書において「粗化材」とは、その添加により、導体ペーストを焼成して得られる導体膜(アドレス電極用導体膜)の表面粗さRaを上昇させる成分をいう。すなわち、当該粗化材を含まない組成の導体ペーストを焼成して得られる導体膜の表面粗さRaの値に対して、該粗化材が添加された組成の導体ペーストを焼成して得られる導体膜の表面粗さRaの値をより大きくする機能を果たす成分をいう。
ここに開示されるPDP(典型的には、該PDPを構成する背面パネル)に具備されるアドレス電極は、所定の表面粗さを有することにより、保護層(典型的には、DFRにより形成されるレジスト層)との高い密着性を示す。このように保護層との密着性の高いアドレス電極を保護層で覆って化学エッチングを行うことにより、該アドレス電極のエッチング剤による損傷を高度に防止することができる。
前記アドレス電極の体積抵抗率は、好ましくは4μΩ・cm以下(典型的には2〜4μΩ・cm)である。かかる特性を示すアドレス電極は、保護膜に対する密着性に優れ且つ導電性がよい(体積抵抗率が低い)ことから、該アドレス電極を保護層で覆って化学エッチングを行うことにより隔壁を形成する過程を含む方法で製造されるPDP(特に背面パネル)のアドレス電極として好適である。したがって本発明は、他の側面として、上記表面粗さおよび体積抵抗率を満足するPDPアドレス電極を提供する。該アドレス電極の抵抗値は135Ω/m以下(典型的には80〜135Ω/m)であることが好ましい。
ここに開示されるPDPの好ましい一態様では、前記粗化材が、前記Ag細粉末とは粒度分布が異なるAg粗粉末である。該Ag粗粉末の平均粒径は2μm以上であり、且つ、該Ag粗粉末の平均粒径が前記Ag細粉末の平均粒径の1.5〜5倍(好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは3〜5倍)である。かかる導体ペーストによると、上記粗化材の使用が導体膜の電気的特性(導電性等)に及ぼす提供を抑えつつ、表面粗さRaが上記範囲に調整された(したがって保護層との密着性に優れた)導体膜を形成することができる。
ここに開示されるPDPの他の好ましい一態様では、前記粗化材が無機フィラーである。上記無機フィラーとしては、例えば、略球状のシリカ粉末、アルミナ粉末等を好ましく採用することができる。かかる導体ペーストを用いて形成されたアドレス電極は、該アドレス電極の電気的特性(導電性等)への影響を抑えつつ、表面粗さRaが上記範囲に調整された(したがって保護層との密着性に優れた)ものであり得る。
また、本発明によると、PDPのアドレス電極を形成するためのAg系導体ペーストが提供される。その導体ペーストは、平均粒径0.5μm〜2μm(好ましくは0.5μm〜1μm)のAg細粉末と、本導体ペーストを焼成して形成される導体膜の表面粗さを上昇させる粗化材とをビヒクルに添加混合してなる。ここで、前記粗化材は、前記導体膜の表面粗さが0.55μm〜0.65μmとなる分量で添加されている。
ここに開示される導体ペーストは、所定の平均粒径を有するAg細粉末に粗化材を配合することにより、該ペーストを焼成して得られる導体膜の表面粗さRaが上記所定の範囲となるように調整されている。かかる構成の導体ペーストによると、所定の表面粗さRaを有することにより保護層(典型的には、DFRにより形成されるレジスト層)との高い密着性を実現するPDPアドレス電極用導体膜を形成することができる。このように保護層との密着性の高い導体膜を保護層で覆って化学エッチングを行うことにより、該導体膜のエッチング剤による損傷を高度に防止することができる。かかる導体膜は、該導体膜を保護層で覆って化学エッチングを行うことにより隔壁を形成する過程を含む方法で製造されるPDP(特にPDPを構成する背面パネル)の、アドレス電極用の導体膜として好適である。
前記粗化材は、上記表面粗さRaを実現する分量であって、且つ前記導体膜の体積抵抗率が4μΩ・cm以下(典型的には2〜4μΩ・cm)となる分量で添加されていることが好ましい。かかる分量で上記粗化材が添加された導体ペーストによると、保護膜に対する密着性に優れ且つ導電性のよい(体積抵抗率の低い)導体膜を形成することができる。かかる導体膜は、該導体膜を保護層で覆って化学エッチングを行うことにより隔壁を形成する過程を含む方法で製造されるPDP(特に背面パネル)の、アドレス電極用の導体膜として好適である。
また、前記粗化材は、上記表面粗さRaを実現する分量であって、且つ前記導体膜の抵抗値が135Ω/m以下(典型的には80〜135Ω/m)となる分量で添加されていることが好ましい。
ここに開示される導体ペーストの好ましい一態様では、前記粗化材が、前記Ag細粉末とは粒度分布が異なるAg粗粉末である。該Ag粗粉末の平均粒径は2μm以上であり、且つ、該Ag粗粉末の平均粒径が前記Ag細粉末の平均粒径の1.5〜5倍(好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは3〜5倍)である。かかる導体ペーストによると、上記粗化材の使用が導体膜の電気的特性(導電性等)に及ぼす提供を抑えつつ、表面粗さRaが上記範囲に調整された(したがって保護層との密着性に優れた)導体膜を形成することができる。
ここに開示される導体ペーストの他の好ましい一態様では、前記粗化材が無機フィラーである。上記無機フィラーとしては、例えば、略球状のシリカ粉末、アルミナ粉末等を好ましく採用することができる。かかる導体ペーストによると、少量の粗化材の添加によって(例えば、導体形成用粉末材料の0.1wt%〜0.8wt%に相当する分量の粗化材により)、導体膜の電気的特性(導電性等)への影響を抑えつつ、表面粗さRaが上記範囲に調整された(したがって保護層との密着性に優れた)導体膜を形成することができる。
本発明の他の側面として、PDPのアドレス電極を製造するための導体ペーストを製造する方法が提供される。その製造方法は、平均粒径0.5μm〜2μmのAg細粉末を用意(製造、購入等)することを含む。また、本導体ペーストを焼成して形成される導体膜の表面粗さRaを向上させる粗化材を用意することを含む。また、上記Ag細粉末と上記粗化材とを、上記導体膜の表面粗さRaが0.55μm〜0.65μmとなる分量で秤量することを含む。そして、それら秤量した粉末をビヒクルに添加混合して導体ペーストを調製することを含む。かかる製造方法によると、保護層(典型的には、ドライフィルムレジストにより形成されるレジスト層)との高い密着性を実現するPDPアドレス電極用導体膜を形成するのに適した導体ペーストを得ることができる。
本発明のさらに他の側面として、ここに開示されるいずれかの導体ペーストを用いて形成されたアドレス電極を備えるPDPが提供される。また、かかるPDPを構成するためのPDP用背面パネルが提供される。
本発明によると、また、前面パネルと背面パネルとを備えるPDPを製造する方法が提供される。その製造方法は、ここに開示されるいずれかの導体ペーストを用いて背面パネル用の透明基板(典型的にはガラス基板)上にアドレス電極を形成する工程を含む。上記製造方法は、また、前記アドレス電極を覆う隔壁材料層を前記透明基板上に形成する工程を含む。ここで、前記隔壁材料層は、前記アドレス電極の一部は該隔壁材料層に覆われず、前記隔壁材料層から外部に引き出された端子部を構成するように形成される。上記製造方法は、また、前記アドレス電極が引き出された部分(端子部)を覆うレジスト層をDFRによって前記透明基板上に形成する工程を含む。上記製造方法は、さらに、前記端子部が前記レジスト層で覆われた状態で前記隔壁材料層を化学エッチングして所定パターンの隔壁を形成する工程を含む。かかる製造方法におけるアドレス電極は、上記導体ペーストを用いて形成されることからレジスト層に対する密着性に優れる。したがって、上記隔壁材料層を化学エッチングする際に、上記レジスト層で覆われたアドレス電極端子部がエッチング剤により損傷する事象を高度に防止することができる。このため、上記方法によると、より高品質のPDP用背面パネルおよび該背面パネルを備えるPDPを製造することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の導体ペーストは、焼成によりPDPアドレス電極用の導体膜を形成する粉末材料(導体形成用粉末材料)がビヒクルに分散した態様の導体ペーストであって、上記粉末状態の主成分が銀(Ag)粉末であり、所定の平均粒径(典型的には0.5μm〜2μm、好ましくは0.5μm〜1μm)を有するAg細粉末と上記導体膜の表面粗さRaが所定範囲となる分量の粗化材(Ra上昇成分)とを上記ビヒクルに分散させてなるものであればよく、上記粗化材の種類や使用量に特に制限を設けるものではない。
例えば、上記粗化材として、上記Ag細粉末とは粒度分布が異なる導電性金属粉末であって、平均粒径が2μm以上であり且つ該平均粒径が上記Ag細粉末の平均粒径の1.5〜5倍(好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは3〜5倍)である導電性金属粉末(例えばAg粉末、すなわちAg粗粉末)を好ましく使用することができる。該導電性金属粉末の平均粒径の上限は、導体ペーストを用いて形成しようとするアドレス電極(導体膜)の膜厚と同等以下であることが好ましく、該膜厚の90%以下の平均粒径を有する粗化材が好ましい。例えば、膜厚3μm〜4μmのアドレス電極を形成しようとする場合には、平均粒径が2μm〜2.7μmの粗化材を好ましく使用することができる。なお、本発明に係る導体ペーストは、例えば、膜厚2μm〜10μm(好ましくは2μm〜5μm、例えば2.5μm〜4μm)のアドレス電極を形成する用途、ひいては該アドレス電極を備えるPDP背面パネルおよび該背面パネルを備えるPDPを製造する用途に好ましく使用され得る。
本発明において使用されるAg細粉末および導電性金属粉末(粗化材)は、いずれも略球状の粉末であることが好ましい。ここで、本明細書において「略球状の粉末」とは、当該粉末を構成する粒子(一次粒子)の70wt%以上が球又はそれに類似する形状を有していることをいう。典型的には当該粉末を構成する粒子の70wt%以上がアスペクト比(すなわち粒子の長径に対する短径の比率)80%以上であることをいう。かかる略球状の粉末を用いてなる導体ペーストは、所定の表面粗さRaを有し且つ電気的特性のよい(例えば、所定以下の低抵抗値を実現する)導体膜を形成する上で有利である。
上記導電性金属粉末(粗化材)は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属または該貴金属のいずれかを主成分とする合金から成る導電性貴金属粉末であってもよく、あるいはニッケル(Ni)、銅(Cu)等の卑金属または該卑金属を主成分とする合金から成る導電性卑金属粉末であってもよい。本発明にとり特に好ましい粗化材は、AgまたはAgを主成分とする合金から成る導電性金属粉末、すなわちAg粗粉末である。ここで、本明細書においてAg細粉末およびAg粗粉末における「細」および「粗」の語は、これらのAg粉末の平均粒径の相対的な関係を示す目的で用いられるものであって、該平均粒径の絶対値を限定する意図で用いられるものではない。
上記粗化材として好ましく使用し得る他の材料として、各種の無機フィラーが挙げられる。例えば、シリカ(結晶性シリカおよび溶融シリカを包含する意味である。)粉末、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、酸化ビスマス粉末、チタニア粉末、炭化ケイ素粉末、炭化チタン粉末、窒素ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末、チタン酸バリウム粉末、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボンブラック、タルク、クレー、カオリン、ケイソウ土、雲母粉、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等のような粒子状の無機フィラー;カーボンファイバー、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のような繊維状の無機フィラー;その他、ジルコン、ムライト、フォルステライト、コーディエライト、ユークリプタイト、スポジュメン、ウレマイト、リューサイト、リン酸ジルコニル、リン酸タングステンジルコニル等のような、ガラス組成物用のフィラーとして知られているフィラー;等を用いることができる。これらのうち一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。導体ペーストの焼成条件(焼成温度)以上の融点を有し、当該焼成温度において安定な(熱分解等を起こさない)材料からなる無機フィラーを採用することが好ましい。例えば、平均粒径が3μm以下(好ましくは1μm以下)の無機フィラーを好ましく用いることができる。無機フィラーの平均粒径の下限に制限はなく、例えばナノサイズのアエロジルも使用可能である。特に限定するものではないが、例えば略球状の無機フィラーをを好ましく用いることができる。
ここに開示される導体ペーストの好ましい一態様は、焼成後に導体膜を形成する成分(導体形成用粉末材料)として、上記Ag細粉末および粗化材の他に無機バインダを含む組成の導体ペーストである。上記無機バインダとして、例えば、従来公知の一般的なガラスフリット(低融点ガラス)を好ましく用いることができる。得られる導体膜の耐久性および電気的特性等の観点から、通常、使用する無機バインダの分量を導体形成用粉末材料全体の10wt%以下(典型的には1〜10wt%)とすることが適当であり、5wt%以下(典型的には1〜5wt%)とすることが好ましい。
上記粗化材は、次の条件:当該導体ペーストを焼成(例えば、最高温度500〜600℃の条件で焼成)して得られる導体膜の表面粗さRaが0.55μm〜0.65μmとなる;を満たすように添加される。好ましくは、さらに、次の条件:上記導体膜の抵抗値が135Ω/m以下(典型的には80〜135Ω/m)となる;を満たすように添加される。かかる条件を満たす限り粗化材の使用量は特に限定されないが、粗化材の使用量を設定する際の一つの目安として(例えば、該使用量の設定をより能率よく行うために)以下の組成を参考にすることができる。
すなわち、粗化材として上述したAg粗粉末を含む導体ペースト(典型的には、粗化材としてAg粗粉末のみを用いる導体ペースト)としては、Ag細粉末とAg粗粉末とを例えば10/90〜90/10(より好ましくは20/80〜80/20、例えば25/75〜75/25)の質量比で含むものが好ましい。Ag細粉末とAg粗粉末との質量比が上記範囲にあり且つ上記表面粗さRa(好ましくはさらに上記抵抗値)を満たす導体ペーストは、より好ましい導体膜(該導体膜を保護層で覆って化学エッチングを行う場合における化学エッチングに対する耐久性がよい、該導体膜の抵抗値が低い等)を形成するものであり得る。また、粗化材として無機フィラー(例えば、シリカ粉末、アルミナ粉末等の略球状のセラミック粉末)を含む導体ペースト(典型的には、粗化材として無機フィラーのみを用いる導体ペースト)としては、該無機フィラーの分量が導体形成用粉末材料の0.1wt%〜0.8wt%であるものが好ましい。上記分量の無機フィラーを含み且つ上記表面粗さRa(好ましくはさらに上記抵抗値)を満たす導体ペーストは、より好ましい導体膜を形成するものであり得る。該導体ペースト全体の質量に対する無機フィラーの質量は例えば0.05wt%〜0.5wt%とすることができる。
なお、上記表面粗さRaを満たす導体膜(好ましくは、さらに上記抵抗値を満たす導体膜)が形成される限りにおいて、ここに開示される導体ペーストは、Ag粗粉末および無機フィラーの両方を含むものであり得る。
次に、本発明の導体ペーストを構成する副成分について説明する。本発明の導体ペーストは、上記導体膜形成用粉末材料(好ましい典型例では、該導体形成用粉末材料が実質的にAg細粉末、粗化材およびガラスフリットからなる。)の他に、従来の導体ペーストと同様の物質を副成分として含有し得る。例えば、本発明の導体ペーストの必須的副成分として、上記導体形成用粉末材料を分散させておく有機媒質(ビヒクル)が挙げられる。本発明の実施にあたっては、かかる有機ビヒクルは導体形成用粉末材料を適切に分散させ得るものであればよく、従来の導体ペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ブチルカルビトール、ターピネオール等の高沸点有機溶媒又はこれらの二種以上の組み合わせを構成成分として含む有機ビヒクルを用いることができる。特に限定するものではないが、有機ビヒクルの含有率は、ペースト全体のほぼ10〜60wt%となる量が適当である。
また、本発明の導体ペーストには、従来の導体ペーストと同様の種々の有機添加剤を必要に応じて含ませることができる。かかる有機添加剤の例としては、各種の有機バインダ(上記ビヒクルと重複してもよく、別途異なるバインダを添加してもよい。)や、セラミック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系およびアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。上記有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール等をベースとするものが挙げられる。本発明の導体ペーストに良好な粘性および塗膜(基材に対する付着膜)形成能を付与し得るものが好適である。また、本発明の導体ペーストに光硬化性(感光性)を付与したい場合には、種々の光重合性化合物および光重合開始剤を適宜添加してもよい。
なお、上記の他にも本発明の導体ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これら添加剤は、従来の導体ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
本発明のPDPアドレス電極形成用導体ペーストは、従来の導体ペーストと同様、典型的には上記導体形成用粉末材料と有機媒質(ビヒクル)を混和することによって容易に調製することができる。Ag細粉末と粗化材とは、別々にビヒクルに添加してもよいし、予めこれらを混合して得たものをビヒクルに添加してもよい。このとき、必要に応じて上述したような添加剤を添加・混合するとよい。例えば、三本ロールミルその他の混練機を用いて、Ag細粉末、粗化材、ガラスフリットおよび各種添加剤を有機ビヒクルとともに所定の配合比で直接混合し、相互に練り合わせる(混練する)ことにより、本発明の導体ペーストが調製され得る。
本発明の導体ペーストを用いてアドレス電極を形成する操作自体は、従来のPDPアドレス電極形成用導体ペーストを用いたアドレス電極の形成と同様にして行うことができる。例えば、感光性を有する導体ペーストを使用する場合には、スクリーン印刷法、スピンコート法等の従来公知の方法によって、該ペーストを典型的には背面パネル用の透明基板(典型的にはガラス基板)の全面に付与(塗布)する。そして、上記で付与された導体ペースト(塗膜)に対して例えば公知のフォトリソグラフィ技術を適用してパタニングを行い、所定パターンの未焼成導体膜を形成する。この未焼成膜を所定の条件で焼成することにより、所定パターンのアドレス電極を形成することができる。あるいは、上記のように広範囲に塗布した導体ペーストをパタニングする代わりに、形成しようとするアドレス電極に対応する所定のパターンに導体ペーストを、例えばスクリーン印刷法等により塗布してもよい。上記未焼成膜の焼成はPDPアドレス電極形成用導体ペーストと同様にして行うことができる。例えば、焼成温度(最高焼成温度)としては300℃〜1000℃(好ましくは300℃〜800℃、例えば400℃〜600℃)程度の温度を採用することができる。焼成雰囲気は特に限定されないが、通常は酸素含有雰囲気中(例えば大気中)、常圧で焼成することが好ましい。
本発明の導体ペーストを用いて形成されたアドレス電極を備えるPDP用背面パネルおよび該背面パネルを備えるPDPを製造する一態様につき、図面を参照しつつ説明する。
図1は、一実施形態に係るPDP1のうちの一つのセル2を示す断面図である。このPDP1は、対向配置された背面パネル10と前面パネル30とから主として構成される。背面パネル10および前面パネル30は、それぞれ透明性の高い材料からなる基板(透明基板)11,31を備える。本実施形態に係るPDP1の透明基板11,31はいずれもガラス基板である。
背面パネル10の概略構成は以下のとおりである。背面パネル10のガラス基板11には、前面パネル30に対向する面(上面)に、本発明に係るアドレス電極形成用導体ペースト(Ag系導体ペースト)を用いて形成されたアドレス電極(Ag電極)12が形成されている。アドレス電極12は、図5に示されるように、その一端を残して該アドレス電極12の上から(すなわちアドレス電極12を覆って)ガラス基板11上に形成された誘電体層14に覆われている。誘電体層14の表面上には隔壁16が所定の間隔で形成されている。これにより、背面パネル10と前面パネル30との間に、隔壁16で仕切られた多数のセル2が形成されている。セル2を区画する背面パネル10の壁面には蛍光体層18が設けられている。蛍光体層18としては、従来公知の赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等がそれぞれのセル2に所定の順序で配置されている。
前面パネル30の概略構成は以下のとおりである。前面パネル30のガラス基板31には、背面パネル10に対向する面に、表示電極32(典型的には、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極と金属製のバス電極とを含む。)が設けられている。表示電極32は誘電体層34で覆われており、さらにその表面上にはMgO等からなる保護層36が形成されている。
隔壁16によって形成されたセル2内には、それぞれ放電ガスが充填されている。放電ガスとしては従来公知のガスを適用可能であり、例えば、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)、ヘリウム−キセノン(He−Xe)混合ガス、ネオン−キセノン(Ne−Xe)混合ガス等を用いることができる。
なお、ガラス基板11,31、隔壁16、蛍光体層18、表示電極32、誘電体層14,34、保護層36および放電ガスとしては、一般的なPDPに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、PDPに適用可能なこれら以外の他の構成を備えていてもよい。
かかる構成を有するPDP1の製造に関する好ましい一態様を説明する。
PDP1を構成する背面パネル10は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず所定サイズの背面パネル用ガラス基板11を用意する。そのガラス基板11の一方の表面(前面パネル30に対向する面)に、本発明に係るアドレス電極形成用導体ペーストを付与し、形成しようとするアドレス電極12のパターンに対応する所定パターンの未焼成導体膜を形成する。かかる未焼成膜は、例えば、上記アドレス電極形成用導体ペーストとして感光性を有するペーストを用い、該ペーストを例えばスクリーン印刷法によりガラス基板11の表面全体に塗布し、所定のマスクパターンを有するフォトマスクを用いて露光した後に現像することによって形成される。この未焼成膜を適当な焼成条件、例えば常圧の大気雰囲気中において400℃〜600℃の最高焼成温度で焼成することにより、図2に示すように、ガラス基板11上に所定パターンのアドレス電極12を形成する。
このようにしてアドレス電極12を形成した後、図3,4に示すように、アドレス電極12を覆う誘電体層14を形成する。この誘電体層14の形成方法としては、従来公知のPDPの誘電体層形成方法を適宜採用することができる。例えば、誘電体ガラスペーストを用いたダイコート法やスクリーン印刷法等が挙げられる。誘電体ガラスペーストとしては、誘電体材料として従来公知の無機酸化物またはその複合酸化物を有機バインダに混合したものを用いることができる。後述する隔壁をパタニングする際の化学エッチングに使用されるエッチング剤に対して耐性を有する誘電体層を形成し得る組成の誘電体ガラスペーストの使用が好ましい。かかる誘電体ペーストをアドレス電極12の上からガラス基板11に塗布して未焼成の誘電体層を形成し、これを焼成して誘電体層14を形成する。この焼成温度は、通常300℃〜1000℃、好ましくは300℃〜800℃、特に400℃〜600℃とすることができる。焼成雰囲気は特に限定されないが、通常は酸素含有雰囲気下(例えば大気中)、好ましくは常圧で行われる。
誘電体層14を形成した後、該誘電体層14の上に所定パターンの隔壁16(図5参照)を形成する。この隔壁16の形成は化学エッチング法により行われる。
すなわち、図3,4に示すように、まず誘電体層14の上全体に隔壁形成用材料を付与し、乾燥および焼成を行って、誘電体層14を介してアドレス電極12を覆う隔壁材料層22を形成する。ここで使用する隔壁形成用材料としては従来と同様のものを使用することができる。典型的には、誘電体ガラス(好適には無鉛ガラス)を主成分とし、他の成分、例えば、骨材、有機バインダ、添加剤、及び溶剤等を含む組成の隔壁形成用材料を好ましく使用することができる。この焼成温度は、通常300℃〜1000℃、好ましくは300℃〜800℃、特に400℃〜600℃とすることができる。焼成雰囲気は特に限定されないが、通常は酸素含有雰囲気下(例えば大気中)、好ましくは常圧で行われる。上述した誘電体層14と隔壁材料層22とを同時焼成により形成してもよい。
得られた隔壁材料層22の表面に、形成しようとする隔壁16のパターンに対応するパターンでレジスト層24を形成する。このレジスト層24の形成は、化学エッチングにより隔壁をパタニングする従来の技術と同様にして行うことができる。例えば、隔壁材料層22の表面にDFR用ドライフィルムを配置し、所定パターンのフォトマスクを介して露光し、現像することによって、隔壁材料層22の表面に所定パターンのレジスト層24を形成することができる。
ここで、図3に示されるように、誘電体層14および隔壁材料層16は、ガラス基板11のうちアドレス電極12の一端を外部に残して(露出させて)該アドレス電極12を覆うように形成されている。このアドレス電極12の露出部、すなわち端子部12aが形成された部分のガラス基板11上に、該端子部12aを覆うレジスト層26を形成する。レジスト層26の形成は、化学エッチングにより隔壁をパタニングする従来の技術と同様にして行うことができる。例えば、端子部12aを覆う範囲にDFR用ドライフィルムを配置して露光して現像することにより、該端子部12aを覆うレジスト層26を形成することができる。なお、隔壁パタニング用のレジスト層24およびアドレス電極12(端子部12a)保護用のレジスト層26としては、いずれも隔壁16の化学エッチングに使用するエッチング剤に対する耐性を有する材料(レジスト層24,26が同一材料であっても異なる材料であってもよい。)が使用される。また、レジスト層24および26の形成は同時に行ってもよく別々に行ってもよい。
このように端子部12aをレジスト層26で保護した状態で隔壁材料層22を化学エッチングすることにより、該隔壁材料層22のうちレジスト層24が表面に配置されていない部位を構成する隔壁形成用材料を除去する。これにより、図5に示すように、レジスト層24のパターンに対応した所定パターンの隔壁16が形成される。端子部12a(アドレス電極12)は、本発明に係るアドレス電極形成用導体ペーストを用いて形成されたものであることから、レジスト層26との密着性に優れる。このことによって、上記化学エッチングの際に、レジスト層26で覆われた部分にエッチング剤(典型的には液状のエッチング液)が入り込む事象を高度に防止することができる。したがって端子部12aを損傷することなく所定パターンの隔壁16を形成することができる。
その後、レジスト層24,26を常法により除去し、さらに、隔壁16に囲まれたセル2内に蛍光体を配設して蛍光体層18を形成する(図1,5参照)。この蛍光体としては従来公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、赤色蛍光体としては(Y,Gd)BO:Eu等、緑色蛍光体としてはZnSiO:Mn等、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu2+等を用いることができる。各蛍光体としては、前記に限定されず従来公知のいずれの蛍光体を用いることができる。蛍光体層18は、例えば、蛍光体成分を有機バインダ等に分散したペーストを各セル2内に所定の配列で付与し、その後焼成することによって形成することができる。この焼成温度は、通常300℃〜1000℃、好ましくは300℃〜800℃、特に400℃〜600℃とすることができる。焼成雰囲気は特に限定されないが、通常は酸素含有雰囲気下(例えば大気中)、好ましくは常圧で行われる。
一方、前面パネル30は、所定サイズの前面パネル用ガラス基板31を用意し、その一方の表面(背面パネル10に対向する面)に表示電極32を形成し、次いで該表示電極32の上から誘電体層34および保護層36を形成することにより得ることができる。表示電極32の組成、配置および形成は従来公知のPDPにおける前面パネルの製造と同様にして行うことができる。誘電体層34および保護層36についても同様である。
その後、得られた背面パネル10および前面パネル30を例えば封着用ガラスや接着剤等によって張り合わせつつ、セル2内を高真空に排気して、所定の組成およびガス圧(例えば50〜150kPa)の放電ガスを封入することにより、本実施形態に係るPDP1を得ることができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
平均粒径0.8μmのAg粉末(Ag細粉末)と、平均粒径2.5μmのAg粉末(Ag粗粉末)と、ガラスフリットと、感光性ビヒクル(以下、単に「ビヒクル」と表記することもある。)とを、最終的なペースト組成(質量比)が表1に示す組成となるように秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより例1〜例5に係る導体ペーストを調製した。ここで、ガラスフリットとしてはBi−B−SiO系ガラス粉末(軟化点(Ts)550℃、比表面積1〜2m/gのガラスフリット)を使用した。また、上記ビヒクルとしては、光重合性化合物としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(20wt%)と、光重合開始剤としての2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(2−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(0.05wt%)と、有機バインダとしてのカルボキシメチルセルロース(20wt%)と、溶剤としての3−メチル−3−メトキシブタノール(残部)とを混合して調製したものを使用した。
Figure 2009104949
これら例1〜例5に係る導体ペーストを用いて、ガラス基板(旭硝子株式会社から入手可能なカラーPDP用硝子基板、商品名「PD200」)上に所定パターンの導体膜を形成した。すなわち、各導体ペーストを上記ガラス基板上に、焼成後に得られる導体膜の厚さが3μm〜4μmとなるようにスクリーン印刷(塗布)した。該スクリーン印刷はSUS#325メッシュのスクリーンを使用して行った。これを100℃にて10分間乾燥させ、露光および現像を行って未焼成導体膜を形成し、該未焼成膜を常圧の大気雰囲気中において以下の焼成スケジュール:常温から580℃(最高焼成温度)まで30℃/分の速度で昇温する;580℃に10分間保持する;580℃から常温まで20℃/分の速度で降温する;により焼成して導体膜を形成した。このようにして、ガラス基板上に所定パターンの導体膜を形成した。なお、上記露光は所定形状のフォトマスクを介して300mJ/cmの紫外光を照射することにより行った。すなわち、抵抗値測定用の導体膜にはライン幅80μm×長さ10cmのマスクパターン、表面粗さ測定用および化学エッチングに対する耐久性(耐薬品性)評価用の導体膜にはライン/スペース=130μm、ライン幅=100μm、80μm、65μm、50μm、40μm、30μm(各ライン幅につき100本)のマスクパターンのフォトマスクを使用した。現像には0.4wt%のNaCO水溶液を使用した。
例1〜例5に係る導体ペーストを用いて作製された導体膜(以下、該導体膜の作製に使用した導体ペーストに対応して、それぞれ例1〜例5に係る導体膜という。)の特性を以下のようにして評価した。
<表面粗さRa>
上記で作製した表面粗さ測定用導体膜を、株式会社キーエンスから入手可能な超深度カラー3D形状測定顕微鏡、商品名「VK−9500」を用いて観察し、JIS B0601−2001に基づいて算術平均粗さ(表面粗さ)Ra[μm]を求めた。
さらに、上記顕微鏡観察により導体膜の幅[μm]および膜厚[μm]を測定した。
<化学エッチングに対する耐久性>
市販のDFR用ドライフィルム(ニチゴー・モートン株式会社から入手可能な回路形成用ドライフィルムレジスト、商品名「ALPHO NIT240」)を幅15mmの帯状にカットした。上記で作製した評価用導体膜に、上述した種々のライン幅で形成された導体膜の幅方向に跨がるように上記帯状のドライフィルムを被せ、ラミネータローラ温度80℃にて密着させた。該ドライフィルムを150mJ/cmの条件で露光して感光層を硬化させた後、ベースフィルムを剥がした。このようにして、上記種々のライン幅で形成された導体膜を共通的に覆うレジスト層を形成した。これを6wt%のHNO水溶液に30分間浸漬した後、いったん水で洗浄し、次いで1wt%のNaOH水溶液に10分間浸漬した後、水で洗浄し、乾燥させた。かかる薬品処理の後、レジスト層の上から市販の粘着テープを貼り付け、該テープを引っ張ってレジスト層を剥がした。このとき、ガラス基板および導体膜からレジスト層のみが剥がれ、該レジスト層で覆われていた導体膜が完全にガラス基板上に残ったものを優良(E)とした。また、レジスト層を剥がした後に、当該レジスト層で覆われていた導体膜が少しでも欠けていたもの(レジスト層を剥がす際に導体膜の一部または全部が該レジスト層とともに剥がれた場合、および上記薬品処理によりレジスト層で覆われた部分の導体膜の一部または全部が失われた場合を含む。)および該導体膜に亀裂等の損傷が生じていたものについては不良(NG)とした。
<抵抗値および体積抵抗率>
幅80μm、長さ10cmの導体膜の両端間の抵抗を、日置電機株式会社から入手可能なデジタルマルチメータ、商品名「ディジタルハイテスタ 3237」を用いて測定した。該測定は10箇所(10本の導体膜)につき行い、それらの測定値を平均し、該平均値を10倍することにより例1〜5に係る導体膜の抵抗値[Ω/m]を算出した。
上記で得られた抵抗値と、上記顕微鏡観察により得られた幅および膜厚とから、該導体膜の体積抵抗率[μΩ・cm]を算出した。
以上により得られた評価結果を表2に示す。
Figure 2009104949
表1,2に示されるように、平均粒径0.5μm〜2μm(ここでは0.8μm)のAg細粉末と該Ag細粉末の3倍以上の平均粒径(ここでは2.5μm)を有するAg粗粉末(粗化材)とを25/75〜75/25の質量比で含む組成の例1〜例3に係る導体ペーストを焼成してなる導体膜であって表面粗さRaが0.55μm〜0.65μmの範囲にある例1〜例3に係る導体膜は、いずれも化学エッチングに対する良好な耐久性を示した。この結果は、これら例1〜例3に係る導体膜はレジスト層に対する密着性に優れ、これにより上記薬品処理においてレジスト層で覆われた部分に薬液が侵入することを十分に阻止し得たことを示している。また、これら例1〜例3に係る導体膜はいずれも抵抗値が135Ω/m以下、体積抵抗率が4μΩ・cm以下(典型的には3〜4μΩ・cm)という良好な導電性を示すものであった。
これに対して、Ag粗粉末(粗化材)を使用しない例4に係る導体ペーストを用いて得られた導体膜であって表面粗さRaが低すぎる例4に係る導体膜は、例1〜例3の導体膜に比べてレジスト層に対する密着性が不足し、化学エッチングに対する耐久性が不良であった。また、Ag細粉末の全量をAg粗粉末に置き換えた組成の例5に係る導体ペーストを用いて得られた導体膜では導電性が低下(体積抵抗率が上昇)した。
例1〜例5で用いたものと同じAg粉末(Ag細粉末)、ガラスフリットおよび感光性ビヒクルと、粗化材としての無機フィラー(日本アエロジル株式会社から入手可能なアエロジルアルミナ(フュームドアルミナ)、商品名「AEROXIDE(商標) Alu C」を使用した。)とを、最終的なペースト組成(質量比)が表3に示す組成となるように秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより例6〜例9に係る導体ペーストを調製した。
Figure 2009104949
これら例6〜例9に係る導体ペーストを用いて、上記と同様にしてガラス基板上に所定パターンの導体膜を形成し、該導体膜の特性を同様に評価した。得られた評価結果を表4に示す。
Figure 2009104949
表3,4に示されるように、無機フィラーとしてのアルミナ粉末をペースト全体の0.1wt%〜0.5wt%(導体形成用粉末材料の0.15wt%〜0.8wt%)、より詳しくは0.1wt%〜0.3wt%(導体形成用粉末材料の0.15wt%〜0.5wt%)に相当する分量で含む導体ペーストを用いて形成された例6,7に係る導体膜であって表面粗さRaが0.55μm〜0.65μm(より詳しくは0.55μm〜0.60μm)の範囲にある例6,7に係る導体膜は、いずれも化学エッチングに対して良好な耐久性を示した。この結果は、これら例6,7に係る導体膜はレジスト層に対する密着性に優れ、これにより上記薬品処理においてレジスト層で覆われた部分に薬液が侵入することを十分に阻止し得たことを示している。また、これら例6,7に係る導体膜はいずれも抵抗値が135Ω/m以下、より詳しくは抵抗値が120Ω/m以下、体積抵抗率が4μΩ・cm以下(典型的には3〜4μΩ・cm)という良好な導電性を示すものであった。
これに対して、無機フィラー(粗化材)を使用しない例8に係る導体ペーストを用いて得られた導体膜であって表面粗さRaが低すぎる例8に係る導体膜は、例6,7の導体膜に比べてレジスト層に対する密着性が不足し、化学エッチングに対する耐久性が不良であった。また、無機フィラーの分量が多すぎる例9に係る導体ペーストを用いて得られた導体膜では導電性が低下(体積抵抗率が上昇)した。
以上の実施例からも明らかなように、本発明のPDPアドレス電極形成用導体ペーストによると、保護層(典型的には、DFRにより形成されたレジスト層)との密着性に優れ、したがって該導体膜を保護層で覆って化学エッチングを行う場合において化学エッチングによる損傷からよりよく保護され得る(換言すれば、かかる態様で行われる化学エッチングに対する耐久性のよい)導体膜を形成することができる。
一実施形態に係るPDPの一つのセルを模式的に示す断面図である。 一実施形態に係るPDPの製造工程を模式的に示す説明図である。 一実施形態に係るPDPの製造工程を模式的に示す説明図である。 図3のIV−IV線断面図である。 一実施形態に係るPDPの製造工程を模式的に示す説明図である。
符号の説明
1 プラズマディスプレイパネル(PDP)
2 セル
10 背面パネル
11 ガラス基板(透明基板)
12 アドレス電極
12a 端子部
16 隔壁
18 蛍光体層
22 隔壁材料層
24 レジスト層
26 レジスト層
30 前面パネル
31 ガラス基板(透明基板)
32 表示電極
34 誘電体層
36 保護層

Claims (11)

  1. Agを主成分とするアドレス電極を備えたプラズマディスプレイパネルであって、
    前記アドレス電極は、平均粒径0.5μm〜2μmのAg細粉末と、該アドレス電極の表面粗さを上昇させる粗化材とを含むアドレス電極形成用導体ペーストを用いて形成されたものであり、且つ
    前記アドレス電極の表面粗さが0.55μm〜0.65μmである、プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記アドレス電極の体積抵抗率が4μΩ・cm以下である、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記粗化材は、前記Ag細粉末とは粒度分布が異なるAg粗粉末であり、該Ag粗粉末の平均粒径は2μm以上であって且つ前記Ag細粉末の平均粒径の3〜5倍である、請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記粗化材は無機フィラーである、請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記無機フィラーは略球状のシリカ粉末またはアルミナ粉末である、請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. プラズマディスプレイパネルのアドレス電極を形成するためのAg系導体ペーストであって、
    平均粒径0.5μm〜2μmのAg細粉末と、本導体ペーストを焼成して形成される導体膜の表面粗さを上昇させる粗化材とをビヒクルに添加混合してなり、
    ここで、前記粗化材は、前記導体膜の表面粗さが0.55μm〜0.65μmとなる分量で添加されている、アドレス電極形成用導体ペースト。
  7. 前記粗化材は、前記導体膜の体積抵抗率が4μΩ・cm以下となる分量で添加されている、請求項6に記載の導体ペースト。
  8. 前記粗化材は、前記Ag細粉末とは粒度分布が異なるAg粗粉末であり、該Ag粗粉末の平均粒径は2μm以上であって且つ前記Ag細粉末の平均粒径の3〜5倍である、請求項6または7に記載の導体ペースト。
  9. 前記粗化材は無機フィラーである、請求項6または7に記載の導体ペースト。
  10. 前記無機フィラーは略球状のシリカ粉末またはアルミナ粉末である、請求項9に記載の導体ペースト。
  11. 前面パネルと背面パネルとを備えるプラズマディスプレイパネルを製造する方法であって、以下の工程:
    請求項6〜10のいずれか一項に記載の導体ペーストを用いて前記背面パネル用の透明基板上にアドレス電極を形成する工程;
    前記アドレス電極を覆う隔壁材料層を前記透明基板上に形成する工程、ここで、前記アドレス電極の一部は前記隔壁材料層から外部に引き出された端子部を構成している;
    前記アドレス電極の端子部を覆うレジスト層を前記透明基板上に形成する工程、ここで前記レジスト層はドライフィルムレジストにより形成される;および、
    前記端子部が前記レジスト層で覆われた状態で前記隔壁材料層を化学エッチングして所定パターンの隔壁を形成する工程;
    を包含する、プラズマディスプレイパネル製造方法。
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