JP2009103291A - 遊星ローラねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】長寿命な遊星ローラねじを提供する。
【解決手段】遊星ローラねじは、ねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、を備えている。そして、両ねじ溝1a,2aのうち少なくとも一方とローラ列とが交差噛み合いとなっている。両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとには、浸炭処理又は浸炭窒化処理が施され、硬化された表面層が形成されている。この表面層中の残留オーステナイト量γR は15体積%以上30体積%以下となっており、また、表面層のビッカース硬さHvは、780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足している。
【選択図】図1
【解決手段】遊星ローラねじは、ねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、を備えている。そして、両ねじ溝1a,2aのうち少なくとも一方とローラ列とが交差噛み合いとなっている。両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとには、浸炭処理又は浸炭窒化処理が施され、硬化された表面層が形成されている。この表面層中の残留オーステナイト量γR は15体積%以上30体積%以下となっており、また、表面層のビッカース硬さHvは、780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足している。
【選択図】図1
Description
本発明は遊星ローラねじに関する。
従来の遊星ローラねじとしては、螺旋状のねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成されたナットと、両ねじ溝間に転動自在に介装された複数のローラからなるローラ列と、を備え、ローラ列のうち両端のローラを回転自在に支持する保持器がねじ軸とナットとの間に介装されたものが知られている。
この遊星ローラねじにおいては、ローラ列のうち両端のローラに形成された歯と噛み合う歯車がねじ軸又はナットに固定されていて、これによりローラのねじ軸周りの公転が案内されている(例えば特許文献1を参照)。
この遊星ローラねじにおいては、ローラ列のうち両端のローラに形成された歯と噛み合う歯車がねじ軸又はナットに固定されていて、これによりローラのねじ軸周りの公転が案内されている(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1には、ねじ軸のねじ溝とローラとが交差噛み合いとなっている遊星ローラねじと、ナットのねじ溝とローラとが交差噛み合いとなっている遊星ローラねじとが開示されている。交差噛み合いとなっていると、公転及び自転を含む転がり運動をするローラには軸方向の滑り運動が生じるため、この滑り運動の作用によってねじ軸とナットとが軸方向へ相対直線移動することができる。
米国特許第2683379号明細書
特開2004−76754号公報
特開2005−155714号公報
ところが、滑り運動が生じる場合は、ボールねじのボールように単純な転がり運動をする場合とは異なり、ローラの転動面や両ねじ溝の表面に剥離が生じやすいので、寿命が短くなる傾向がある。特に、ローラとねじ溝との間に異物が噛み込んで圧痕が生じると、表面起点の剥離がさらに促進されるので、さらに短寿命となるおそれがある。例えば、ねじ軸のねじ溝とローラとが交差噛み合いとなっている遊星ローラねじであれば、ローラの転動面のうちねじ軸のねじ溝と摺動する部分は、ローラの転動面のうちナットのねじ溝と摺動する部分に比べて早く剥離が生じ、寿命が極端に短い。
そこで、本発明は、上記のような従来の遊星ローラねじが有する問題点を解決し、長寿命な遊星ローラねじを提供することを課題とする。
そこで、本発明は、上記のような従来の遊星ローラねじが有する問題点を解決し、長寿命な遊星ローラねじを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の遊星ローラねじは、螺旋状に連続するねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成されたナットと、前記両ねじ溝間に転動自在に介装された複数のローラと、を備え、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転運動により、前記ローラの転動を介して、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向へ相対直線移動するようになっている遊星ローラねじにおいて、前記両ねじ溝のうち少なくとも一方と前記ローラとが交差噛み合いとなっており、前記ローラに対して交差噛み合いとなっている前記ねじ溝の溝面と、前記ローラの転動面とには、浸炭処理又は浸炭窒化処理により硬化された表面層が形成されていて、この表面層の残留オーステナイト量γR が15体積%以上30体積%以下で且つビッカース硬さHvが780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足することを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2の遊星ローラねじは、螺旋状に連続するねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成されたナットと、前記両ねじ溝間に転動自在に介装された複数のローラと、を備え、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転運動により、前記ローラの転動を介して、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向へ相対直線移動するようになっている遊星ローラねじにおいて、前記ねじ軸よりも前記ローラの方が小径で、前記ねじ軸のねじ溝と前記ローラとが交差噛み合いとなっており、前記ねじ軸のねじ溝と前記ローラの転動面とには、浸炭処理又は浸炭窒化処理により硬化された表面層が形成されていて、両表面層のうち前記ローラの転動面に形成された表面層のみについて、残留オーステナイト量γR が15体積%以上30体積%以下で且つビッカース硬さHvが780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足することを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の遊星ローラねじは、請求項2に記載の遊星ローラねじにおいて、前記ローラはサブゼロ処理が施されていないことを特徴とする。
なお、遊星ローラねじにおいては、複数のローラが並んでなるローラ列がねじ軸及びナットと噛み合っているが、前述の交差噛み合いとは、螺旋状に連続するねじ軸やナットのねじ溝を軸方向に直角をなす方向から見たときに該ねじ溝の各溝筋が平行をなしていない場合を意味し、リード角の絶対値が異なる場合は全て交差噛み合いである。また、リード角の絶対値が同一であっても、雄ねじ同士の噛み合いで且つねじのねじれ方向が同一方向である場合は交差噛み合いで、雄ねじと雌ねじとの噛み合いで且つねじのねじれ方向が逆方向である場合は交差噛み合いである。
なお、遊星ローラねじにおいては、複数のローラが並んでなるローラ列がねじ軸及びナットと噛み合っているが、前述の交差噛み合いとは、螺旋状に連続するねじ軸やナットのねじ溝を軸方向に直角をなす方向から見たときに該ねじ溝の各溝筋が平行をなしていない場合を意味し、リード角の絶対値が異なる場合は全て交差噛み合いである。また、リード角の絶対値が同一であっても、雄ねじ同士の噛み合いで且つねじのねじれ方向が同一方向である場合は交差噛み合いで、雄ねじと雌ねじとの噛み合いで且つねじのねじれ方向が逆方向である場合は交差噛み合いである。
本発明の遊星ローラねじは長寿命である。
本発明に係る遊星ローラねじの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である遊星ローラねじを軸方向に平行な平面で破断した要部断面図である。
図1に示すように、本実施形態の遊星ローラねじは、螺旋状に連続する断面略V字状のねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ軸1のねじ溝1aに対向する断面略V字状のねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、ナット2の内周面に嵌合された2つの歯車4,4と、を備えている。
図1に示すように、本実施形態の遊星ローラねじは、螺旋状に連続する断面略V字状のねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ軸1のねじ溝1aに対向する断面略V字状のねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、ナット2の内周面に嵌合された2つの歯車4,4と、を備えている。
前記ローラ列の外周面は、両ねじ溝1a,2aに噛み合うようなねじ状に形成されており、両ねじ溝1a,2a及びローラ3のねじれ方向は、全て同じ方向である。そして、両ねじ溝1a,2aのうち少なくとも一方とローラ列とが交差噛み合いとなっている(図1においては、ねじ軸1のねじ溝1aとローラ列とが交差噛み合いとなっている)。ねじ軸1,ナット2,及びローラ3の材質は特に限定されるものではないが、SCM415H等のような鋼が好ましい。
歯車4,4は、軸方向に離れて配されており、前記ローラ列のうち両端のローラ3’,3’に形成された歯6とそれぞれ噛み合っている。そして、ねじ軸1とナット2との相対回転運動により、ローラ3の転動を介して、ねじ軸1とナット2とが軸方向へ相対直線移動するようになっている。
この遊星ローラねじには2つの環状保持器5,5が備えられており、ねじ軸1とナット2との間で且つ両端のローラ3’,3’の軸方向外側に介装されている。環状保持器5,5には周方向に沿って複数のローラ支持孔5aが設けられており、両端のローラ3’,3’に設けられた軸方向外側に突出する突起7をローラ支持孔5aに挿通することにより、環状保持器5,5はローラ3’,3’を回転自在に支持している。なお、ローラ支持孔5aは、貫通孔であってもよいし、有底孔であってもよい。
この遊星ローラねじには2つの環状保持器5,5が備えられており、ねじ軸1とナット2との間で且つ両端のローラ3’,3’の軸方向外側に介装されている。環状保持器5,5には周方向に沿って複数のローラ支持孔5aが設けられており、両端のローラ3’,3’に設けられた軸方向外側に突出する突起7をローラ支持孔5aに挿通することにより、環状保持器5,5はローラ3’,3’を回転自在に支持している。なお、ローラ支持孔5aは、貫通孔であってもよいし、有底孔であってもよい。
さらに、ナット2における環状保持器5,5の軸方向外側には、環状保持器5,5と接触するように抜け止めリング9が取り付けられていて、ローラ3’の突起7が環状保持器5のローラ支持孔5aから抜けることが防止されている。また、抜け止めリング9は、環状保持器5がナット2に対して軸方向に位置ズレしたり、環状保持器5が遊星ローラねじから脱落することを防ぐ機能も有している。この抜け止めリング9は、ナット2と一体のものでもよいし、別体の部材でもよい。
さらに、この遊星ローラねじの内部には、両ねじ溝1a,2aとローラ3との間の潤滑を行う潤滑剤(図示せず)が配されている。
この遊星ローラねじにおいては、両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとに浸炭処理又は浸炭窒化処理が施され、硬化された表面層(図示せず)が形成されている。この表面層中の残留オーステナイト量γR は15体積%以上30体積%以下となっており、また、表面層のビッカース硬さHvは、780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足している。
この遊星ローラねじにおいては、両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとに浸炭処理又は浸炭窒化処理が施され、硬化された表面層(図示せず)が形成されている。この表面層中の残留オーステナイト量γR は15体積%以上30体積%以下となっており、また、表面層のビッカース硬さHvは、780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足している。
このように、両ねじ溝1a,2aの表面やローラ3の転動面3aが表面層により強化されているため、遊星ローラねじの駆動時に高い負荷が作用しても前記各面に剥離が生じにくいので、遊星ローラねじは長寿命である。また、ねじ溝1a,2aとローラ3との間に異物が噛み込まれて圧痕が生じると、圧痕のエッジ部における応力集中により表面起点の剥離がさらに促進されるが、前述のような表面層により前記応力集中が緩和されるので、遊星ローラねじ特有の滑り運動を受けても剥離が生じにくい。よって、異物が混入するような環境下で使用されても著しい短寿命とはなりにくい。
このような遊星ローラねじは、射出成形機,プレス機等の機械装置における送り機構のような高負荷用途に好適である。例えば、射出成形機においては、モータからナットに入力された回転駆動力が軸方向の直線駆動力に変換され、ねじ軸を介してスクリューに出力される。
ボールねじにおいても、ねじ軸及びナットのねじ溝の表面やボールの転動面に、前述のような表面層を形成し、残留オーステナイト量を規定して剥離を抑制する技術が開示されているが(特許文献2,3を参照)、ボールねじは転動体であるボールがほぼ転がり運動をしており、遊星ローラねじのような滑り運動はほとんど発生しないので、ボールねじは遊星ローラねじと比べると剥離が生じにくい。
ボールねじにおいても、ねじ軸及びナットのねじ溝の表面やボールの転動面に、前述のような表面層を形成し、残留オーステナイト量を規定して剥離を抑制する技術が開示されているが(特許文献2,3を参照)、ボールねじは転動体であるボールがほぼ転がり運動をしており、遊星ローラねじのような滑り運動はほとんど発生しないので、ボールねじは遊星ローラねじと比べると剥離が生じにくい。
また、ボールねじは、ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝とは研削加工により仕上げられているが、ボールは超仕上げにより仕上げられているので、ローラも研削加工により仕上げられている遊星ローラねじと比べると、ねじ溝と転動体との間の摩擦が少ない。よって、このことからも、ボールねじは遊星ローラねじと比べると剥離が生じにくい。
このように、ボールねじの場合は、剥離の抑制が比較的容易で、剥離を抑制して長寿命とする技術が知られていたが、より剥離が生じやすい遊星ローラねじについては、剥離を抑制して十分に長寿命とする技術は知られていなかった。
このように、ボールねじの場合は、剥離の抑制が比較的容易で、剥離を抑制して長寿命とする技術が知られていたが、より剥離が生じやすい遊星ローラねじについては、剥離を抑制して十分に長寿命とする技術は知られていなかった。
なお、表面層中の残留オーステナイト量γR や表面層のビッカース硬さHvが前記範囲を外れると、滑り運動により前記各面に剥離が生じて、遊星ローラねじの寿命が不十分となるおそれがある。
また、表面層は、両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとの全てに形成することが好ましいが、ローラ3の転動面3aと、ローラ列に対して交差噛み合いとなっている方のねじ溝の溝面とは、滑り運動による剥離がより生じやすいので、これらローラ3の転動面3aと、ローラ列に対して交差噛み合いとなっている方のねじ溝の溝面とには、少なくとも表面層を形成することが好ましい。
また、表面層は、両ねじ溝1a,2aの表面とローラ3の転動面3aとの全てに形成することが好ましいが、ローラ3の転動面3aと、ローラ列に対して交差噛み合いとなっている方のねじ溝の溝面とは、滑り運動による剥離がより生じやすいので、これらローラ3の転動面3aと、ローラ列に対して交差噛み合いとなっている方のねじ溝の溝面とには、少なくとも表面層を形成することが好ましい。
さらに、ねじ軸1よりもローラ3の方が小径で、ねじ軸1のねじ溝1aとローラ列とが交差噛み合いとなっている場合には、ねじ軸1のねじ溝1aに形成された表面層とローラ3の転動面3aに形成された表面層とのうち、後者の表面層のみが、前述した残留オーステナイト量γR 及びビッカース硬さHvの条件を満たしていることが好ましい。すなわち、ローラ3の転動面3aに形成された表面層中の残留オーステナイト量γR は15体積%以上30体積%以下となっており、また、この表面層のビッカース硬さHvは、780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足していることが好ましい。
相対的に小径なローラ3の方が大径なねじ軸1よりも繰り返し応力を受ける回数が多いので、ローラ3は十分な強化を行う必要がある。そこで、ローラ3の転動面3aには上記のような条件を満たす表面層を形成し、ねじ軸1のねじ溝1aには従来の一般的な表面層(硬化層)を形成することとすれば、表面層を形成して強化する処理のコストダウンを図ることができる。
さらに、遊星ローラねじは長期間にわたってリード精度を維持しなければならないので、ねじ溝の表面やローラの転動面の残留オーステナイトの分解による時効変形を抑制するために、従来はねじ軸,ナット,及びローラにサブゼロ処理を施して、残留オーステナイト量を低くしていた。しかし、本実施形態の遊星ローラねじは、残留オーステナイトにより剥離を抑制しているので、サブゼロ処理は施されない。したがって、上記のようなねじ軸1よりもローラ3の方が小径で、ねじ軸1のねじ溝1aとローラ列とが交差噛み合いとなっている遊星ローラねじの場合には、ローラ3にはサブゼロ処理は施されない。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の遊星ローラねじは、ローラ3の軸方向位置がナット2によって拘束されていたが(ナット2に嵌合された2つの歯車4,4とローラ列のうち両端のローラ3’,3’に形成された歯6とが噛み合っているため、ローラ3の軸方向位置がナット2によって拘束されている)、図2に示す遊星ローラねじのように、ローラ3の軸方向位置がねじ軸1によって拘束されていてもよい(ねじ軸1に嵌合された2つの歯車4,4とローラ列のうち両端のローラ3’,3’に形成された歯とが噛み合っているため、ローラ3の軸方向位置がねじ軸1によって拘束されている)。
以下に、図2の遊星ローラねじの構造を詳細に説明する。なお、図2の遊星ローラねじの構成及び作用は、図1の遊星ローラねじの場合とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図2においては、図1と同一又は相当する部分には図1と同一の符号を付してある。
図2の遊星ローラねじは、螺旋状に連続する断面略V字状のねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ軸1のねじ溝1aに対向する断面略V字状のねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、ねじ軸1に嵌合された2つの歯車4,4と、を備えている。
図2の遊星ローラねじは、螺旋状に連続する断面略V字状のねじ溝1aが外周面に形成されたねじ軸1と、ねじ軸1のねじ溝1aに対向する断面略V字状のねじ溝2aが内周面に形成されたナット2と、両ねじ溝1a,2a間に転動自在に介装された複数のローラ3からなるローラ列と、ねじ軸1に嵌合された2つの歯車4,4と、を備えている。
前記ローラ列の外周面は、両ねじ溝1a,2aに噛み合うようなねじ状に形成されており、両ねじ溝1a,2aのねじれ方向は同じ方向であるが、ローラ3のねじれ方向は両ねじ溝1a,2aのねじれ方向とは逆方向である。そして、ナット2のねじ溝2aとローラ列とが交差噛み合いとなっている。
歯車4,4は、軸方向に離れて配されており、前記ローラ列のうち両端のローラ3’,3’に形成された歯とそれぞれ噛み合っている。また、ねじ軸1における環状保持器5,5の軸方向外側には、環状保持器5,5と接触するように抜け止めリング9が取り付けられていて、ローラ3’の突起7が環状保持器5のローラ支持孔5aから抜けることが防止されている。さらに、抜け止めリング9は、環状保持器5がねじ軸1に対して軸方向に位置ズレしたり、環状保持器5が遊星ローラねじから脱落することを防ぐ機能も有している。この抜け止めリング9は、ねじ軸1と一体のものでもよいし、別体の部材でもよい。
歯車4,4は、軸方向に離れて配されており、前記ローラ列のうち両端のローラ3’,3’に形成された歯とそれぞれ噛み合っている。また、ねじ軸1における環状保持器5,5の軸方向外側には、環状保持器5,5と接触するように抜け止めリング9が取り付けられていて、ローラ3’の突起7が環状保持器5のローラ支持孔5aから抜けることが防止されている。さらに、抜け止めリング9は、環状保持器5がねじ軸1に対して軸方向に位置ズレしたり、環状保持器5が遊星ローラねじから脱落することを防ぐ機能も有している。この抜け止めリング9は、ねじ軸1と一体のものでもよいし、別体の部材でもよい。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。図1の遊星ローラねじとほぼ同様の構成を有する遊星ローラねじを用意して、内部にグリース組成物を配し、その寿命を評価した。使用した遊星ローラねじの仕様は以下の通りである。
ねじ溝有効径 :ねじ軸29.840mm、ナット50mm、ローラ10mm
リード :ねじ軸10mm、ナット10mm、ローラ2mm
条数 :ねじ軸5条、ナット5条、ローラ1条
有効噛み合い長さ:25mm
ローラの数 :6個
基本動定格荷重:3530N
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。図1の遊星ローラねじとほぼ同様の構成を有する遊星ローラねじを用意して、内部にグリース組成物を配し、その寿命を評価した。使用した遊星ローラねじの仕様は以下の通りである。
ねじ溝有効径 :ねじ軸29.840mm、ナット50mm、ローラ10mm
リード :ねじ軸10mm、ナット10mm、ローラ2mm
条数 :ねじ軸5条、ナット5条、ローラ1条
有効噛み合い長さ:25mm
ローラの数 :6個
基本動定格荷重:3530N
この遊星ローラねじは、ねじ軸,ナット,及びローラに、下記のような熱処理A,B,Cのいずれかが施されている(表1を参照)。その結果、ねじ軸のねじ溝の表面,ナットのねじ溝の表面,ローラの転動面には硬化された表面層が形成され、この表面層中の残留オーステナイト量γR 及び表面層のビッカース硬さHvは、表1に示すような数値となっている。
熱処理A,B,Cの条件は下記の通りである。
熱処理A:930〜960℃で8〜15時間浸炭処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
熱処理B:900〜940℃で8〜15時間浸炭窒化処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
熱処理C:930〜960℃で8〜15時間浸炭処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。次に、−40〜−80℃で10分間以上保持してサブゼロ処理を行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
熱処理A:930〜960℃で8〜15時間浸炭処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
熱処理B:900〜940℃で8〜15時間浸炭窒化処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
熱処理C:930〜960℃で8〜15時間浸炭処理を施し、冷却した後に、830〜900℃で2時間焼き入れを行う。次に、−40〜−80℃で10分間以上保持してサブゼロ処理を行う。そして、160〜200℃で1.5〜2.5時間焼戻しを行う。
表1から分かるように、従来例1,2は、サブゼロ処理によって残留オーステナイト量が低く抑えられており、おおよそ10体積%以下、熱処理のばらつきにより大きくなったとしても13体積%以下となっている。
これに対して、実施例1,2は、ねじ軸のねじ溝とローラとが交差噛み合いとなっているので、ねじ軸とローラについては残留オーステナイト量を従来例よりも高い値に設定し、ナットについては従来例とほぼ同等に設定してある。また、実施例3〜5は、ねじ軸,ナット,ローラの全てついて、残留オーステナイト量を従来例よりも高い値に設定してある。
これに対して、実施例1,2は、ねじ軸のねじ溝とローラとが交差噛み合いとなっているので、ねじ軸とローラについては残留オーステナイト量を従来例よりも高い値に設定し、ナットについては従来例とほぼ同等に設定してある。また、実施例3〜5は、ねじ軸,ナット,ローラの全てついて、残留オーステナイト量を従来例よりも高い値に設定してある。
これらの遊星ローラねじを、基本動定格荷重の40%の荷重を負荷しながら回転速度1500min-1で駆動した。そして、ねじ軸のねじ溝,ナットのねじ溝,又はローラの転動面に剥離が生じたら寿命とした。結果を表1に示す。なお、1Lhが計算寿命である。表1から分かるように、表面層中の残留オーステナイト量γR 及び表面層のビッカース硬さHvが本発明の条件を満たしているので、実施例は従来例に比べて長寿命であった。
1 ねじ軸
1a ねじ溝
2 ナット
2a ねじ溝
3 ローラ
3’ 端のローラ
3a 転動面
4 歯車
1a ねじ溝
2 ナット
2a ねじ溝
3 ローラ
3’ 端のローラ
3a 転動面
4 歯車
Claims (3)
- 螺旋状に連続するねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成されたナットと、前記両ねじ溝間に転動自在に介装された複数のローラと、を備え、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転運動により、前記ローラの転動を介して、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向へ相対直線移動するようになっている遊星ローラねじにおいて、
前記両ねじ溝のうち少なくとも一方と前記ローラとが交差噛み合いとなっており、前記ローラに対して交差噛み合いとなっている前記ねじ溝の溝面と、前記ローラの転動面とには、浸炭処理又は浸炭窒化処理により硬化された表面層が形成されていて、この表面層の残留オーステナイト量γR が15体積%以上30体積%以下で且つビッカース硬さHvが780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足することを特徴とする遊星ローラねじ。 - 螺旋状に連続するねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成されたナットと、前記両ねじ溝間に転動自在に介装された複数のローラと、を備え、前記ねじ軸と前記ナットとの相対回転運動により、前記ローラの転動を介して、前記ねじ軸と前記ナットとが軸方向へ相対直線移動するようになっている遊星ローラねじにおいて、
前記ねじ軸よりも前記ローラの方が小径で、前記ねじ軸のねじ溝と前記ローラとが交差噛み合いとなっており、前記ねじ軸のねじ溝と前記ローラの転動面とには、浸炭処理又は浸炭窒化処理により硬化された表面層が形成されていて、両表面層のうち前記ローラの転動面に形成された表面層のみについて、残留オーステナイト量γR が15体積%以上30体積%以下で且つビッカース硬さHvが780−4.7×γR ≦Hv≦920−4.7×γR なる式を満足することを特徴とする遊星ローラねじ。 - 前記ローラはサブゼロ処理が施されていないことを特徴とする請求項2に記載の遊星ローラねじ。
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-
2007
- 2007-10-25 JP JP2007277966A patent/JP2009103291A/ja active Pending
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