ところで、近年、例えば車載動力発生装置として用いる電動機等において、小型化の要求と高トルク化の要求とがますます高まってきている。こうした状況下、電動機を小型化していきつつトルクを更に増大させる場合、一層顕著な磁気飽和現象が生じる。そしてこの場合、上記磁気飽和度合いに応じた補正をする処理を行ったとしても、回転角度の算出誤差が増大していくことが発明者らによって見出されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インバータのスイッチング素子を操作することで突極性を有する回転機を駆動するに際し、回転機の駆動状態にかかわらず、回転機の電気的な状態量に基づき回転機の回転角度についてのより高精度な情報を取得することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、インバータのスイッチング素子を操作することで突極性を有する回転機を駆動するに際し、前記回転機の電気的な状態量に基づき前記回転機の回転角度についての情報を取得する回転機の制御装置において、前記回転角度に基づき、前記回転機の電気角の回転周期とは異なる周期を有して且つ任意の位相角方向に振動する周波数信号を前記インバータの出力信号に重畳する重畳手段と、前記重畳によって前記回転機を実際に伝播する周波数信号の振動方向に基づき、前記回転機の回転角度を算出する第1角度算出手段と、前記重畳によって前記回転機を実際に伝播する周波数信号の振幅に基づき、前記回転機の回転角度を算出する第2角度算出手段と、前記回転機を駆動するための操作量の算出に際して用いる前記回転機の回転角度に対する前記第1角度算出手段の算出値及び前記第2角度算出手段の算出値の寄与度を可変設定する可変手段とを備えることを特徴とする。
上記発明では、回転機が突極性を有する場合、位相角によってインダクタンスが異なり、ひいては電流の流れやすさが異なる。このため、実際に伝播する周波数信号は、重畳した周波数信号の位相角にかかわらず電流の流れやすい方向に偏向したものとなる。上記第1の角度算出手段は、この偏向態様に基づき、回転角度を算出する。
ただし、回転機の磁気飽和が生じて且つ磁気飽和度合いが大きくなるにつれて上記偏向態様に基づく回転角度の算出精度が低下し、更に磁気飽和度合いが大きくなると、上記偏向態様に基づく回転角度の算出自体が不可能となるおそれがあることが発明者らによって見出されている。
一方、インバータの出力信号に重畳された周波数信号によって回転機を実際に伝播する周波数信号の振幅は、回転角度に基づく回転機の駆動態様に応じて変化し得る。このため、実際に伝播する周波数信号の振幅が想定される振幅と相違するときには、駆動に際して回転角度として用いられた情報が実際の回転角度と相違すると考えられる。このため、上記実際に伝播する周波数信号の振幅と想定される振幅との相違は、駆動に用いている回転角度の誤差と相関を有するパラメータとなる。そして、特にこの相関関係は、磁気飽和度合いが大きい領域において顕著となることが発明者らによって見出されている。上記発明では、この点に着目し、磁気飽和度合いに応じて2つの角度算出手段の算出値の寄与度を可変とすることで、回転機の駆動状態にかかわらず、回転角度についてのより高精度の情報を取得することができる。
なお、回転機とは、電動機や発電機のことである。また、回転機を実際に伝播する周波数信号とは、重畳手段が電圧信号を重畳する場合には、回転機の電流の検出値に基づく電流信号のこととし、重畳手段が電流信号を重畳する場合には、回転機の電流の検出値に基づく電圧信号のこととすることが望ましい。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記可変手段は、前記回転機の磁気飽和度合いが大きくなるほど前記第2角度算出手段の算出値の寄与度を増大させることを特徴とする。
第1角度算出手段の算出精度は磁気飽和度合いが大きくなるほど低下する。一方、第2角度算出手段の算出精度は磁気飽和度合いが大きい領域において高くなる。上記発明ではこの点に鑑み、磁気飽和度合いが大きくなるほど第2角度算出手段の算出値の寄与度を増大させることで、回転角度についてのより高精度の情報を取得することができる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記可変手段は、前記磁気飽和度合いが所定以上となる場合、前記第2角度算出手段のみによって前記操作量の算出に際して用いる前記回転機の回転角度を算出することを特徴とする。
磁気飽和度合いが過度に大きくなる場合、第1角度算出手段によっては回転角度を算出することができなくなるおそれがある。このため、こうした状況下にあって第1角度算出手段の寄与度がゼロでないなら、上記操作量の算出に際して用いる回転角度が実際の回転角度から過度に離間するおそれがある。この点、上記発明では、磁気飽和度合いが所定以上となる場合、第2角度算出手段のみによって回転角度を算出することで、回転角度についてのより高精度の情報を取得することができる。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記第2角度算出手段は、前記実際に伝播する周波数信号の振幅と想定される振幅との差を縮めるように前記回転機の回転角度を算出することを特徴とする。
インバータの出力信号に重畳された周波数信号によって回転機を実際に伝播する周波数信号の振幅は、回転角度に基づく回転機の駆動態様に応じて変化し得る。このため、実際に伝播する周波数信号の振幅が想定される振幅と相違するときには、駆動に際して回転角度として用いられた情報が実際の回転角度と相違すると考えられる。このため、上記実際に伝播する周波数信号の振幅と想定される振幅との相違は、駆動に用いている回転角度の誤差と相関を有するパラメータとなる。上記発明では、この点に着目し、上記差を縮めるように回転機の回転角度を算出することで、回転機の回転角度を高精度に算出することができる。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記第2角度算出手段は、前記重畳手段による単一の位相角方向への周波数信号の重畳によって前記実際に伝播する周波数信号の振幅、dq座標軸上において互いに直交する2つの位相角方向への前記重畳手段による周波数信号の重畳によって前記実際に伝播する周波数信号の振幅の乗算値、及び前記振幅の除算値のいずれかと、前記回転機の磁気飽和度合いに応じて設定される前記いずれかについての目標値との乖離度合いに基づき前記操作量の算出に際して用いる回転角度についての誤差相関量を算出する誤差相関量算出手段と、前記誤差相関量に基づき前記回転機の回転角度を算出する最終角度算出手段とを備えることを特徴とする。
上記発明では、実際に伝播する周波数信号の振幅と想定される振幅との差を縮めるように回転機の回転角度を算出することができる。特に、上記乗算値は、単一の位相角方向への重畳によって実際に伝播する周波数信号の振幅よりも、回転角度に基づく回転機の駆動の態様の変化に応じた変化が顕著となることが発明者らによって見出されている。このため、回転角度に誤差がある場合、単一の位相角方向への周波数信号の重畳によって実際に伝播する周波数信号の振幅が想定される振幅からずれるずれ度合いよりも、実際の乗算値がその目標値からずれるずれ度合いの方が大きくなる。このため、実際の乗算値と目標値との乖離度合いを用いるなら、角度誤差を高精度に検出することができる。
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記第1角度算出手段は、前記重畳手段によって重畳される周波数信号と前記実際に伝播する周波数信号との2つの周波数信号の外積及び前記実際に伝播する周波数信号についての前記操作量の算出に際して用いる回転角度に基づく推定q軸方向の電流成分のいずれかに基づき、前記回転機の回転角度を算出することを特徴とする。
上記発明では、上記外積値は、上記実際に伝播する周波数信号と重畳した信号との位相差と相関を有するため、これにより、上記位相差に基づく回転角度の算出が可能となる。特に、外積を用いることで、逆三角関数の演算等を行なうことなく、上記回転角度を容易に算出することができる。また、上記推定d軸方向の電流成分は、操作量の算出に際して用いる回転角度の誤差量と相関を有するパラメータであるため、これによっても回転角度を算出することができる。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第1角度算出手段は、前記重畳手段によって重畳される周波数信号と前記実際に伝播する周波数信号との2つの周波数信号の外積及び前記実際に伝播する周波数信号についての前記操作量の算出に際して用いる回転角度に基づく推定q軸方向の電流成分のいずれかと前記回転機の磁気飽和度合いに応じて設定される目標値との乖離度合いに基づき前記操作量の算出に際して用いる回転角度についての誤差相関量を算出する誤差相関量算出手段と、前記誤差相関量に基づき前記回転機の回転角度を算出する最終角度算出手段とを備えることを特徴とする。
外積値は、上記実際に伝播する周波数信号と重畳した信号との位相差と相関を有する。一方、回転機のインダクタンスが最小となる位相角は、回転機の磁気飽和度合いに応じて変化する。このため、上記実際に伝播する周波数信号と重畳した信号との位相差も、磁気飽和度合いに応じて変化し得る。この点、上記発明では、磁気飽和度合いに応じた目標値と上記外積との乖離度合いに基づき誤差相関量を適切に算出することができる。同様に、上記q軸方向の電流成分を上記回転角度の誤差と相関を有するパラメータとして用いる場合においても、このパラメータと誤差との間の関係は磁気飽和度合いに応じて変化する。このため、磁気飽和度合いに応じた目標値を用いることで、誤差相関量を適切に算出することができる。
請求項8記載の発明は、請求項5又は7記載の発明において、前記誤差相関量算出手段は、前記回転機の磁気飽和度合いに応じた前記目標値の設定を、前記回転機に対するトルク指令値、前記回転機の実トルク、前記回転機に対する電流の指令値、前記回転機の駆動電流、前記回転機の回転速度の少なくとも1つに基づき行うことを特徴とする。
回転機の磁気飽和度合いは、回転機のトルクや、回転機を駆動するための電流に依存する。そして、実際のトルクはトルクの指令値に近似し、駆動電流は電流の指令値に近似すると考えられる。このため、これらのパラメータを用いることで、上記設定を適切に行うことができる。また、回転速度が大きくなる場合、周波数信号を重畳する際に用いる回転角度が、回転機の実際の回転角度に対して遅れる傾向にある。このため、回転速度に基づき上記目標値の設定を行うなら、この遅れを補償することができる。
請求項9記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記第1角度算出手段は、前記重畳手段によって重畳される周波数信号と前記実際に伝播する周波数信号との2つのベクトル信号の外積及び前記実際に伝播する周波数信号についての前記操作量の算出に際して用いる回転角度に基づく推定q軸方向の電流成分のいずれかをゼロとするように算出される回転角度を前記回転機の磁気飽和度合いに応じて補正することで前記回転機の回転角度を算出するものであり、前記重畳手段は、前記外積及び前記推定q軸方向の電流成分のいずれかをゼロとする方向に前記周波数信号を重畳することを特徴とする。
磁気飽和が生じているときには、電流の流れやすい方向が変化する。このため、例えば外積値をゼロとする方向に周波数信号を重畳しつつ外積値がゼロとなるように回転角度を算出するなど、インダクタンスが最小となる方向に周波数信号を重畳しつつ回転角度を算出する場合、算出される回転角度は磁気飽和度合いに応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、磁気飽和度合いに応じた補正を行うことで、回転角度を高精度に算出することができる。
請求項10記載の発明は、請求項5、7及び8のいずれか1項に記載の発明において、前記最終角度算出手段によって算出される回転角度を出力として前記誤差相関量を入力とする伝達関数が3次以上の伝達系であることを特徴とする。
上記発明では、3次以上の伝達系を用いることで、回転速度がランプ状に変化する場合等においても、回転角度に定常的な誤差が生じることを回避することができる。
請求項11記載の発明は、請求項5、7、8及び10のいずれか1項に記載の発明において、前記最終角度算出手段は、前記誤差相関量を多重積分演算することで前記回転機の回転速度を算出する手段、及び前記回転速度の積分演算に基づき前記回転機の回転角度を算出する手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、3次以上の伝達系を適切に構成することができる。
なお、この請求項11記載の発明において、後述する請求項13記載の耐ノイズ角度算出手段を併用する場合には、上記多重積分演算に基づき回転角度を算出する手段(高応答角度算出手段)のノイズ除去の度合いは、耐ノイズ角度算出手段のノイズ除去の度合いよりも小さいものとする。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記最終角度算出手段は、前記積分演算に基づき算出される回転角度を前記誤差相関量に基づき補正する手段を更に備えることを特徴とする。
上記補正手段を備えることで、安定性と応答性とを個別に設計することが可能となるなど、制御設計の自由度を向上させることができる。
請求項13記載の発明は、請求項5、7、8及び10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記最終角度算出手段は、当該最終角度算出手段の出力する回転角度の微分演算及びフィルタ処理によって前記回転機の回転速度及びその相当値のいずれかを算出する速度算出手段、前記誤差相関量に基づき前記速度算出手段の出力を補正する補正手段、及び該補正された出力の積分演算に基づき当該最終角度算出手段の出力する回転角度を算出する手段を備えて構成される耐ノイズ角度算出手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、回転角度にノイズが混入していても、その微分演算により回転速度を算出するに際し、フィルタ処理を施すことでノイズ成分が除去される。そして、これに基づき回転角度が算出されるために、回転角度のノイズ成分も好適に除去されるようになる。
請求項14記載の発明は、請求項5、7、8及び10〜13のいずれか1項に記載の発明において、前記最終角度算出手段は、前記回転機の回転角度を出力するに先立ち、出力対象とする回転角度を前記誤差相関量の高周波成分に基づき補正する補正手段を備えることを特徴とする。
上記誤差相関量には、高周波成分(高次の誤差量)が混入するおそれがある。このため、請求項5、7、8及び10〜13のいずれか1項に記載の発明の最終角度算出手段の出力する回転角度にも、高次の誤差が重畳するおそれがある。この点、上記発明では、誤差相関量の高周波成分に基づき回転角度を補正することで、最終角度算出手段の出力から高次の誤差量を好適に除去することができる。
請求項15記載の発明は、請求項1〜8及び請求項10〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記第1角度算出手段及び前記第2角度算出手段は、前記実際に伝播する周波数信号に基づき前記回転機の回転角度についての誤差相関量を算出する誤差相関量算出手段と、該誤差相関量に基づき前記回転機の回転角度を算出する最終角度算出手段とを備えて且つ、前記最終角度算出手段が前記第1角度算出手段及び前記第2角度算出手段間で共有されることを特徴とする。
上記発明では、最終角度算出手段を共有することで、構成の簡素化を図ることや、上記寄与度合いの変更時において算出される回転角度の断続的変化を抑制することなどができる。
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記最終角度算出手段は、そのゲインを、前記回転機の磁気飽和の度合いに応じて可変設定することを特徴とする。
第1角度算出手段と第2角度算出手段とでは、同一の回転角度誤差に対する誤差相関量の大きさに相違がある。このため、回転角度を適切に算出するうえでのゲインも互いに相違する。この点、上記発明では、上記寄与度に応じて適切なゲインを設定することができ、ひいては回転角度を高精度に算出することができる。
請求項17記載の発明は、請求項1〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記可変手段は、前記磁気飽和度合いが所定以上となる場合、前記操作量の算出に際して用いる前記回転機の回転角度を、前記第1角度算出手段の算出値から前記第2角度算出手段の算出値に切り替えることを特徴とする。
第1角度算出手段は、磁気飽和度合いが小さい場合に回転角度を高精度に算出することができる。一方、第2角度算出手段は、磁気飽和度合いが大きい場合に回転角度を高精度に算出することができる。上記発明では、この点に鑑み、磁気飽和度合いに応じていずれの算出値を用いるかを切り替えることで、常時高精度に回転角度を算出することができる。
請求項18記載の発明は、請求項15又は16記載の発明において、前記可変手段は、前記第1角度算出手段及び前記第2角度算出手段のそれぞれの誤差相関量算出手段の算出する誤差相関量のそれぞれに重み付けしてこれらを加算したものを、前記最終角度算出手段に出力することを特徴とする。
第1角度算出手段は、磁気飽和度合いが小さい場合に回転角度を高精度に算出することができる。一方、第2角度算出手段は、磁気飽和度合いが大きい場合に回転角度を高精度に算出することができる。上記発明では、重み付け処理によって最適な寄与度を設定することが可能となり、ひいては常時高精度に回転角度を算出することができる。
請求項19記載の発明は、請求項1〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記可変手段は、前記磁気飽和度合いに応じた前記可変設定を、前記回転機に対するトルク指令値、前記回転機の実トルク、前記回転機に対する電流の指令値、前記回転機の駆動電流、前記回転機の回転速度の少なくとも1つに基づき行うことを特徴とする。
回転機の磁気飽和度合いは、回転機のトルクや、回転機を駆動するための電流に依存する。そして、実際のトルクはトルクの指令値に近似し、駆動電流は電流の指令値に近似すると考えられる。このため、これらのパラメータを用いることで、上記可変設定を適切に行うことができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車に搭載される3相電動機の制御装置に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。
図示される電動機10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。すなわち、図2に示すように、電動機10のロータ10aは、鉄のボディに永久磁石が埋め込まれて構成されている。
先の図1に示すdq変換部20は、電動機10を実際に流れる電流のうちのU相の実電流iu及びW相の実電流iwに基づき、電動機10を流れる電流を、回転2相座標系の電流、すなわちd軸及びq軸の電流ベクトル成分に変換する部分である。この変換に際しては、電動機10の出力軸の回転角度θを用いる。より正確には、回転角度θは、電気角であり、α軸を基準としたd軸正方向の回転角度である。この際、ローパスフィルタにより、実電流iu,iwから後述する高周波成分を除去する処理をも行なう。このため、dq変換部20は、電動機10を実際に流れる電流のうち、電動機10を駆動する際に使用されるd軸成分及びq軸成分の電流を抽出することとなる。
指令電流設定部22は、電動機10に対する要求トルクTdに基づき、d軸上での指令電流idc及びq軸上での指令電流iqcを設定する部分である。
指令電圧設定部24は、指令電流idc及び指令電流iqc並びに実電流id及び実電流iqに基づき、d軸上での指令電圧vdc及びq軸上での指令電圧vqcを算出する部分である。この変換は、基本的には、d軸上での実電流idの指令電流idcへのフィードバック制御、及びq軸上での実電流iqの指令電流iqcへのフィードバック制御によって行われる。このフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
αβ変換部26では、d軸上での指令電圧vdc及びq軸上での指令電圧vqcを、α軸上での指令電圧vαcとβ軸上での指令電圧vβcとに変換する。この変換に際しては、回転角度θが用いられる。
3相変換部30は、α軸上の指令電圧vαcに応じた加算器28aの出力と、β軸上の指令電圧vβcに応じた加算器28bの出力とを、u相の指令電圧vuc、v相の指令電圧vvc、及びw相の指令電圧vwcに変換する部分である。
PWM信号生成部32では、指令電圧vuc、vvc,vwcを電動機10に印加するためのインバータ34の操作信号を生成する部分である。これにより、インバータ34のスイッチング素子SWが操作され、高圧バッテリ36の電圧が電動機10に印加されるようになる。
次に、本実施形態にかかる電動機10の回転角度θの取得にかかる処理について説明する。
本実施形態では、電動機10を駆動をする際、電動機10の電気角の回転周期よりも短い周期の高周波信号をインバータ34の出力に重畳する。換言すれば、上記指令電流idc,iqcに応じて実際に電動機10を流れる電流の周期よりも短い周期の高周波信号を重畳する。そして、これにより電動機10を実際に伝播する高周波信号に基づき、電動機10の回転角度θを算出する。これは、電動機10が突極性を有することに鑑みてなされるものである。
すなわち、電動機10が突極性を有する場合、d軸方向のインダクタンスが最小であり、q軸方向のインダクタンスが最大となっている。したがって、q軸方向よりもd軸方向の方が電流が流れやすいために、上記高周波信号を重畳する際、電動機10を実際に伝播する高周波信号は、d軸方向に偏向する。具体的には、図3(a)に示すように、推定されるd軸(推定d軸)が実際のd軸(実d軸)に対して進角している場合には、推定d軸方向に高周波信号(図中、1点鎖線)を重畳する際、実際に伝播する高周波信号の方向(図中、実線)は、実d軸側に偏向するために、推定d軸に対して遅角側にずれる。また、図3(b)に示すように、推定d軸と実d軸とが一致する場合には、推定d軸方向に高周波信号(図中、1点鎖線)を重畳する際、実際に伝播する高周波信号の方向(図中、実線)は、推定d軸と一致する。更に、図3(c)に示すように、推定d軸が実d軸に対して遅角している場合には、推定d軸方向に高周波信号(図中、1点鎖線)を重畳する際、実際に伝播する高周波信号の方向(図中、実線)は、実d軸側に偏向するために、推定d軸に対して進角側にずれる。
上記性質を利用すれば、d軸を推定算出することができ、ひいては回転角度θを算出することができる。すなわち、実際に高周波信号が伝播する方向を推定d軸方向としつつ高周波信号の重畳を繰り返すことで、重畳する高周波信号の位相角を実際に伝播する高周波信号の位相角に一致させることができ、ひいては、推定d軸を実d軸と一致させることができる。
具体的には、先の図1に示すように、高周波電圧設定部40では、d軸方向の高周波信号としての高周波信号vhdcを、αβ変換部42に出力する。αβ変換部42では、高周波信号vhdcを、α軸上の電圧信号vhαcとβ軸上の高周波信号vhβcとに変換し、上記加算器28a,28bに出力する。このため、3相変換部30には、指令電圧vdc,vqcに高周波信号vhdcが重畳された信号が入力されることとなる。
一方、高周波電流抽出部44は、実電流iu,iwの高周波成分のみを抽出する。すなわち、電動機10に実際に伝播する高周波信号としてのU相上の電流信号ihuとW相上の電流信号ihwとを生成し出力する。そして、αβ変換部46では、電流信号ihu,ihwを、α軸上の電流信号ihαとβ軸上の電流信号ihβとに変換する。外積値算出部48では、上記αβ変換部42の出力するベクトル信号(高周波信号vhαc,vhβc)とαβ変換部46の出力するベクトル信号(電流信号ihα,ihβ)とに基づき、これらの外積値opを算出する。この外積値opは、高周波信号vhdcの重畳方向と電流信号ihα,ihβとの位相角の差と相関を有するパラメータである。このため、外積値opをゼロとすれば、高周波電圧設定部40の出力する高周波信号vhdcを、インダクタンスが最小の方向に重畳することができる。
ところで、電動機10のトルクが増大すると、電動機10における電流の流通態様によっては部分的に磁気飽和が生じることがある。以下、図4に基づきこれについて説明する。図4(b)は、図4(a)に示すように振幅を一定としつつあらゆる方向に高周波信号を重畳したときに実際に伝播する高周波信号を示している。すなわち、図4(b)は、電動機10の駆動用の電流ベクトル(指令電流idc,iqc)がq軸上の電流ベクトルとなったとき、インダクタンスが最小となる方向がd軸方向から上記駆動用電流ベクトル方向側にずれる現象が生じる例を示している。この場合、高周波信号の重畳によって電動機10を実際に伝播するベクトル信号が駆動用の電流ベクトル側に偏向する。図4(b)に示す現象が生じると、外積値opをゼロとする回転角度がd軸方向からずれる。更に、磁気飽和が顕著となる場合には、図4(b)に示すようにインダクタンスが最小となる方向がd軸方向からずれるのみならず、外積値opによる回転角度の算出自体が困難となる。このため、外積値opをゼロとする方向をd軸方向と推定したのでは、回転角度θを高精度に推定算出することができない。
そこで本実施形態では、電動機10の全トルク領域において回転角度θを高精度に推定算出すべく、以下の処理を行う。すなわち、高周波電圧設定部40では、回転角度θに基づき、d軸方向のみならず、q軸方向にも高周波信号vhqcを重畳する。詳しくは、d軸方向の高周波信号vhdcとq軸方向の高周波信号vhqcとを交互に重畳する。dq乗算値算出部50では、αβ変換部46の出力に基づき、d軸方向の高周波信号vhdcの重畳によって電動機10を実際に伝播する電流信号の振幅と、q軸方向の高周波信号vhqcの重畳によって電動機10を実際に伝播する電流信号の振幅との乗算値mdqを算出する。一方、位置/速度算出部60では、上記外積値opと、上記乗算値mdqとを取り込み、これらに基づき回転角度θを算出する。
図5に、位置/速度算出部60の処理を示す。誤差相関量算出部62は、外積値opと目標値算出部64の出力とに基づき、回転角度θの角度誤差を示すパラメータである誤差相関量Δθ1を算出する。ここで、目標値算出部64は、磁気飽和度算出部72によって算出される電動機10の磁気飽和度合いに応じて、回転角度θが正しい場合の外積値opのとるべき値(目標値)を算出する。この目標値は、磁気飽和が生じない低トルク領域にあっては、ゼロに設定される。そして磁気飽和度合いが大きくなるにつれて、d軸方向に重畳される高周波信号vhdcに対して電動機10を実際に伝播する信号が進角側にずれることに対応してゼロから徐々に離間する値とされる。なお、図5には、駆動電流の振幅と目標値との関係を例示している。
一方、誤差相関量算出部66は、乗算値mdqと、目標値算出部68の出力とに基づき、回転角度θの角度誤差を示すパラメータである誤差相関量Δθ2を算出する。ここで、目標値算出部68は、磁気飽和度算出部72によって算出される電動機10の磁気飽和度合いに応じて、回転角度θが正しい場合の乗算値mdqのとるべき値(目標値)を算出する。なお、図5には、駆動電流の振幅と目標値との関係を例示している。
磁気飽和度算出部72は、電動機10の磁気飽和度合いを示すパラメータを算出する部分である。本実施形態では、実電流id,iqを入力として、磁気飽和度合いを算出する。この磁気飽和度合いを示すパラメータとしては、電動機10を駆動するための電流の振幅及び位相角としたり、電動機10のトルクとしたりすればよい。すなわち、磁気飽和度算出部72に、位相角算出部72a及び振幅算出部72bを備えるなら、実電流id,iqから位相角と駆動電流の振幅とを算出することができる。また、磁気飽和度算出部72がトルク算出部72cを備えるなら、実電流id,iqに基づき電動機10のトルクを算出することもできる。
なお、目標値算出部64,68では、実際には、上記磁気飽和度算出部72の出力に加えて、更に回転速度ωに基づき目標値を算出する。これは、回転速度ωが大きくなる場合、高周波信号を重畳する際に用いる回転角度θが、電動機10の実際の回転角度に対して遅れる傾向にあることに鑑みてなされるものである。すなわち、回転速度ωを加味することで、高周波信号vhdc等を重畳する際に用いる回転角度θに含まれると想定される遅れ分を除いた回転角度(実際の回転角度)にとって適切な外積値opや乗算値mdqを目標値として設定することができる。これにより、回転角度θの算出に際して、上記遅れを補償することができる。
セレクタ70では、誤差相関量Δθ1、Δθ2のうちのいずれを回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθとするかを切り替える。これは、図6に示すように、誤差相関量Δθ1、Δθ2と、回転角度θの実際の角度誤差(実位置誤差)との相関関係が、電動機10の運転領域に応じて変化することに鑑みてなされる処理である。
すなわち、図6(a)に示すように、外積値opに基づき算出される誤差相関量Δθ1は、低トルク領域(磁気飽和度合いがないかあっても小さい領域)において、実位置誤差と一対一の対応関係があるものの、高トルク領域(磁気飽和度合いが大きい領域)においては、一対一の対応関係がなくなる。このことは、誤差相関量Δθ1は、高トルク領域においては、回転角度θの誤差を示すパラメータとして利用することが適切でないことを意味する。
一方、図6(b)に示すように、乗算値mdqに基づき算出される誤差相関量Δθ2は、高トルク領域(磁気飽和度合いが大きい領域)において、実位置誤差と一対一の対応関係があるものの、低トルク領域(磁気飽和度合いがないかあっても小さい領域)においては、一対一の対応関係がなくなる。このことは、誤差相関量Δθ2は、低トルク領域においては、回転角度θの誤差を示すパラメータとして利用することが適切でないことを意味する。
こうした観点に鑑み、本実施形態では、先の図5に示したセレクタ70において、磁気飽和度算出部72の算出する磁気飽和度合いに基づき、誤差相関量Δθ1、Δθ2のいずれか一方を、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθとする。この際、本実施形態では、回転速度ωを加味する。
セレクタ70の出力する誤差相関量Δθは、速度算出部74に取り込まれる。速度算出部74では、誤差相関量Δθについての2重積分演算及び積分演算、比例演算の和として回転速度ωを算出する。そして、積分演算部76では、回転速度ωを積分演算することで、回転角度θを算出する。こうした処理によれば、誤差相関量Δθ及び回転角度θを入出力とする伝達関数が3次の伝達関数となる。このため、回転速度ωが急激に変化する場合であっても、定常偏差を好適に抑制又は解消することができる。以下、これについて詳述する。
速度算出部74の比例ゲインKp及び積分ゲインKi、2重積分ゲインKiiを用いると、誤差相当量Δθと実際の回転角度θrとは、以下の伝達関数にて関係づけられる。
Δθ=−θr×s×s×s/(s×s×s+Kp×s×s+Ki×s+Kii)
ここで、回転速度ωの変化としてランプ状の変化を仮定すると、回転速度の変化は、定数ωincを用いて、「ωinc/s×s」と表現でき、回転角度θrは、「ωinc/s×s×s」と表現できる。このため、誤差相当量Δθの定常偏差Δθ(∞)は、ラプラスの最終値定理により、以下のようにゼロとなる。
Δθ(∞)
=lim −s×(ωinc/s×s×s)×s×s×s/(s×s×s+Kp×s×s+Ki×s+Kii)
=0
このため、回転速度がランプ状に変化したとしても、定常偏差をゼロとすることができる。ここで、位置/速度算出部60の処理の手順を説明する。図7は、上記処理手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、磁気飽和度合いを算出する。この処理は、上記磁気飽和度算出部72の行う処理である。続くステップS12においては、磁気飽和度合いが閾値α以上であるか否かを判断する。この処理は、誤差相関量Δθとして、誤差相関量Δ θ1を用いるか誤差相関量Δθ2を用いるかを判断するものである。上記閾値αは、誤差相関量Δθ2を用いた方が回転角度θを高精度に算出できる磁気飽和度合いの下限値を定める。なお、磁気飽和度合いが、駆動電流の振幅及び位相角によって表現される場合には、この処理は、駆動電流の振幅及び位相角のそれぞれと各別の値とを比較する処理となる。また、本実施形態では、この処理を、回転速度を加味して行う。
上記ステップS12において閾値α以上でないと判断される場合には、ステップS14において、先の図5の速度算出部74のゲイン(比例ゲインKp、積分ゲインKi、2重積分ゲインKii)を、誤差相関量Δθ1用の値に設定する。続くステップS16においては、上記セレクタ70を切り替えることで、誤差相関量Δθ1を用いて回転速度ω及び回転角度θを算出する。一方、ステップS12において閾値α以上であると判断される場合には、ステップS18において、先の図5の速度算出部74のゲイン(比例ゲインKp、積分ゲインKi、2重積分ゲインKii)を、誤差相関量Δθ2用の値に設定する。なお、このゲインの値は、上記ステップS14にて設定される値よりも小さくすることが望ましい。続くステップS20においては、上記セレクタ70を切り替えることで、誤差相関量Δθ2を用いて回転速度ω及び回転角度θを算出する。
なお、上記ステップS16,S20の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図8(a)に、要求トルクTdの推移と、回転角度の誤差(実位置誤差)の推移とを示す。図示されるように、要求トルクTdの上昇にかかわらず、回転角度の誤差を抑制することができ、回転角度を好適に推定することができる。ちなみに、図中、「制御切り替え」とは、誤差相関量Δθ1から誤差相関量Δθ2へと切り替えたタイミングを示している。これに対し、図8(b)は、誤差相関量Δθ1に基づき速度算出部74及び積分演算部76によって算出される回転角度を、誤差相関量Δθ2に基づき補正する処理によって回転角度θ等を算出する場合を例示する。この場合、高トルク領域にあっては誤差相関量Δθ1が回転角度θの誤差を示すパラメータとして適切でないため、回転角度θを推定することができない。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)誤差相関量Δθ1と誤差相関量Δθ2とのいずれを用いて回転角度θを算出するかを、電動機10の磁気飽和度合いに基づき切り替えた。これにより、電動機10の駆動状態にかかわらず、回転角度についてのより高精度の情報を取得することができる。
(2)磁気飽和度合いが閾値α以上となる場合、誤差相関量Δθ2のみによって回転角度θを算出した。これにより、誤差相関量Δθ1が回転角度θの誤差を示すパラメータとして適切でなくなる状況下にあっても、回転角度についての高精度の情報を取得することができる。
(3)回転角度θに基づき、d軸方向及びq軸方向に交互に高周波信号vhdc、vhqcを重畳する際に電動機10を実際に伝播する信号の振幅の乗算値mdqと目標値との差に基づき誤差相関量Δθ2を算出した。これにより、実際に伝播する高周波信号の振幅と想定される振幅との差を縮めるように電動機10の回転角度を算出することができ、ひいては回転角度θを高精度に算出することができる。特に、上記乗算値は、単一の位相角方向への重畳によって実際に伝播する信号の振幅自体よりも、実位置誤差の変化に対する変化が大きくなる傾向にあることが発明者らによって見出されている。このため、角度誤差を特に高精度に検出することができる。
(4)誤差相関量Δθ1を、重畳される高周波信号vhdcと実際に伝播する高周波信号との2つの周波数信号の外積値opに基づき算出した。これにより、逆三角関数の演算等を行なうことなく、上記回転角度の誤差量を容易に算出することができる。
(5)外積値opと目標値との差に基づき誤差相関量Δθ1を算出した。これにより、電動機10に磁気飽和が生じた場合であっても、外積値opに基づき回転角度θの誤差と相関を有するパラメータを算出することができる。
(6)目標値算出部64や目標値算出部68において、電動機10を駆動する電流の振幅及び位相角、又はトルクに基づき目標値を算出した。これにより、目標値を適切に算出することができる。更に、この際回転速度ωを加味することで、高周波信号を重畳する際に用いる回転角度θが実際の回転角度に対して遅れる場合であっても、これを補償することができる。
(7)回転角度θを出力として誤差相関量Δθを入力とする伝達関数を、3次以上の伝達系とした。これにより、回転速度がランプ状に変化する場合等においても、回転角度に定常的な誤差が生じることを回避することができる。
(8)誤差相関量Δθを多重積分演算することで電動機10の回転速度ωを算出する速度算出部74、及び回転速度ωの積分演算に基づき回転角度θを算出する積分演算部76を備えた。これにより、3次以上の伝達系を適切に構成することができる。
(9)速度算出部74のゲインを、誤差相関量Δθ1を用いるか誤差相関量Δθ2を用いるかに応じて可変設定した。これにより、誤差相関量Δθ1と誤差相関量Δθ2とで同一の回転角度誤差に対する誤差相関量の大きさに相違があるにもかからず、回転角度を常時高精度に算出することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施形態にかかる位置/速度算出部60の処理を示す。なお、図9において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態では、ハイパスフィルタ75を備え、セレクタ70の出力する誤差相関量Δθ、すなわち回転角度θの算出に用いる最終的な誤差相関量Δθから高周波成分のみを抽出する。特にここでは、回転角度θの周波数の6倍の高周波である6次の誤差成分を抽出する。そして、ハイパスフィルタ75の出力によって、積分演算部76の出力を減算することで、最終的な回転角度θを算出する。
すなわち、先の第1の実施形態によって算出される回転角度θには、その周波数の6倍の高次の角度誤差が重畳する。この高次の誤差は、誤差相関量Δθが含んでいるものである。このため、積分演算部76の出力する回転角度を、ハイパスフィルタ75の出力で減算することで、積分演算部76の出力から6次の誤差を除去することができると考えられる。なお、6次の高周波は、回転速度ωに応じて変化するため、ハイパスフィルタ75は、回転速度ωに応じてその遮断周波数が可変設定される。
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記各効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(10)電動機10の回転角度θを出力するに先立ち、出力対象とする回転角度を誤差相関量Δθの高周波成分に基づき補正した。これにより、積分演算部76の出力から高次の誤差量を好適に除去することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかる位置/速度算出部60の処理のうち、特に、誤差相関量Δθから回転角度θを算出する処理を示す。なお、図10において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、位置/速度算出部60は、高応答角度算出部80と、耐ノイズ角度算出部90とを備えている。以下、これらについて詳述する。
<高応答角度算出部80>
高応答角度算出部80では、速度算出部74において、誤差相関量Δθについての2重積分演算及び積分演算、比例演算の和として回転速度ωを算出する。そして、積分演算部76では、セレクタ78の出力としての回転速度ωを積分演算することで、仮の回転角度θ1を算出する。一方、角度補正量算出部82では、誤差相関量Δθに基づき、回転角度θ1の補正量を算出する。詳しくは、角度補正量算出部82では、誤差相関量Δθの比例積分演算に基づき角度補正量を算出する。そして、角度補正部84では、回転角度θ1を、角度補正量算出部82の出力で補正することで、回転角度θを算出する。このように、高応答角度算出部80は、上記第1の実施形態における処理に、角度補正量算出部82による処理が加わっている。このため、角度補正量算出部82のゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン)を、制御設計のためのパラメータとして新たに用いることができる。このため、速度算出部74のゲインと併せて、安定性と応答性とを個別に設計することが可能となる等、制御の設計の自由度を向上させることができる。
なお、上記構成によれば、高応答角度算出部80は、誤差相当量Δθ及び回転角度θ1を入出力とする3次の伝達関数となる。このため、上記第1の実施形態に示したように、回転速度ωが急激に変化する場合であっても、定常偏差を好適に抑制又は解消することができる。
<耐ノイズ角度算出部90>
耐ノイズ角度算出部90では、その出力である回転角度θを微分演算部92にて微分演算した後、これを1次遅れの伝達関数であるローパスフィルタ94にてフィルタ処理することで、仮の回転速度ω1を算出する。一方、速度補正量算出部98では、誤差相関量Δθの比例積分演算により速度補正量Δωを算出する。そして、速度補正部96では、仮の回転速度ω1に速度補正量Δωを加算することで、回転速度ωを算出する。積分演算部76では、セレクタ78の出力としての回転速度ωを積分演算することで仮の回転角度θ1を算出する。一方、角度補正量算出部82では、誤差相関量Δθの比例積分演算により角度補正量を算出する。そして、角度補正部84では、仮の回転角度θ1に角度補正量算出部82の補正量を加算することで回転角度θを算出する。
耐ノイズ角度算出部90は、誤差相関量Δθ及び回転角度θを入出力とする3次の伝達関数となっている。このため、回転速度ωが急激に変化する場合であっても、回転角度の定常偏差を好適に抑制又は解消することができる。以下、これについて詳述する。
速度補正量算出部98の比例ゲインKp2及び積分ゲインKi2と、角度補正量算出部63の比例ゲインKp3及び積分ゲインKi3とを用いると、誤差相当量Δθと実際の回転角度θrとは、以下の伝達関数にて関係づけられる。
Δθ
=θr×Ts×s×s/{(T(Kp2+Ki3)+Kp3)×s×s+(TKi2+Kp2+Ki3)×s+Ki2+T(Kp3-1)×s×s×s}
ここで、回転速度ωの変化としてランプ状の変化を仮定すると、回転速度の変化は、定数ωincを用いて、「ωinc/s×s」と表現でき、回転角度θrは、「ωinc/s×s×s」と表現できる。このため、誤差相関量Δθの定常偏差Δθ(∞)は、ラプラスの最終値定理により、以下のようにゼロとなる。
Δθ(∞)
=lim s×(ωinc/s×s×s)×Ts×s×s/{(T(Kp2+Ki3)+Kp3)×s×s+(TKi2+Kp2+Ki3)×s+Ki2+T(Kp3-1)×s×s×s}
=0
このため、回転速度がランプ状に変化したとしても、定常偏差をゼロとすることができる。なお、上記角度補正量算出部82の比例ゲインKp3及び積分ゲインKi3は、速度補正量算出部98の比例ゲインKp2及び積分ゲインKi2よりも小さい値に設定するこが望ましい。
上記ローパスフィルタ94は、回転速度が定常であるときに回転角度θに生じ得る高次の振動成分を除去するように設計されている。すなわち、ローパスフィルタ94のゲインは、特定の周波数fc(遮断周波数)以上となることで「1」未満となって漸減する。このため、先の第2の実施形態において述べた高次の振動成分の周波数よりも上記特定の周波数fcの方が小さくなるように設計することで、上記振動成分を好適に除去することができる。詳しくは、本実施形態では、上記遮断周波数fcを、回転速度ωに応じて可変設定する。
ところで、耐ノイズ角度算出部90は、ローパスフィルタ94を備えるために、応答性が低い。このため、回転速度ωが変化するときには、回転速度ωや回転角度θの推定に遅れが生じる。一方、高応答角度算出部80は、フィルタ手段を備えないため、応答性が高い。このため、回転速度が変化するときであっても、回転速度ωや回転角度θの推定遅れが少ない。ただし、高応答角度算出部80は、フィルタ手段を備えないため、ノイズの影響を顕著に受ける。このように、耐ノイズ角度算出部90は、フィルタ効果が強い反面応答性が低く、また、高応答角度算出部80は、応答性が高い反面フィルタ効果が弱いというように、互いにメリット及びデメリットを有している。そこで本実施形態では、回転速度に応じて耐ノイズ角度算出部90及び高応答角度算出部80のいずれを採用するかを切り替える切替部77と、セレクタ78とを備える。すなわち、切替部77では、回転速度ωに基づきセレクタ78を操作することで、位置/速度算出部60の出力する回転角度θを、耐ノイズ角度算出部90の出力とするか、高応答角度算出部80の出力とするかを切り替える。
詳しくは、切替部77では、回転速度ωが所定速度以下である場合に、耐ノイズ角度算出部90を用い、それ以外である場合に高応答角度算出部80を用いる。これは、回転速度が低い低回転速度領域においては、6次の高周波成分の影響を受けやすいと考えられるためである。
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記各効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(11)高応答角度算出部80と耐ノイズ角度算出部90とを備え、これらを選択的に利用することで、ノイズに対する耐性の向上と応答性の向上との好適な両立を図ることができる。
(12)耐ノイズ角度算出部90と高応答角度算出部80とで、積分演算部76を共有化した。これにより、耐ノイズ角度算出部90と高応答角度算出部80とのいずれか一方から他方への切り替えに際しても、算出される回転角度θの連続性を簡易に確保することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11に、本実施形態にかかる位置/速度算出部60の処理を示す。なお、図11において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態では、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθを、誤差相関量Δθ1と誤差相関量Δθ2とのいずれにするかを選択するのではなく、これら誤差相関量Δθ1、Δθ2の寄与率を磁気飽和度合いに応じて連続的に又は3段階以上に段階的に可変とする。
すなわち、重み係数算出部100では、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθに対する外積値opに基づく誤差相関量Δθ1の寄与度合いを定量化する重み係数αを、磁気飽和度合いに応じて算出する。詳しくは、この際、回転速度ωを加味する。一方、重み係数算出部102では、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθに対する乗算値mdqに基づく誤差相関量Δθ2の寄与度合いを定量化する重み係数βを、磁気飽和度合いに応じて算出する。
図12に、本実施形態にかかる位置/速度算出部60の行う処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、先の図7と同様、ステップS10の処理を行った後、ステップS22において、磁気飽和度合いに応じて速度算出部74のゲインを算出する。これは、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθに対する誤差相関量Δθ1、Δθ2の寄与度合いに応じて、速度算出部74のゲイン(比例ゲインKp、積分ゲインKi、2重積分ゲインKii)を可変設定するための処理である。換言すれば、重み係数α、βの変更に同期してゲインを可変設定するための処理である。ちなみに、この処理においては、回転速度ωを加味する。
続くステップS24においては、磁気飽和度合いに応じて、重み係数α、βを算出する。これら重み係数α、βは、磁気飽和度合いが大きくなるほど、誤差相関量Δθに対する誤差相関量Δθ2の寄与度合いが大きくなるように設定される。換言すれば、磁気飽和度合いが大きくなるほど、重み係数αは減少し、重み係数βは増加する。なお、磁気飽和度合いが所定以下である場合には、重み係数βはゼロとなり、磁気飽和度合いが規定以上となる場合には、重み係数αはゼロとなる。ちなみに、これら重み係数α、βの算出に際しては、回転速度ωを加味する。
そして、ステップS26においては、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθを算出する。すなわち、外積値opに基づく誤差相関量Δθ1に重み係数αを乗算した値と、乗算値mdqに基づく誤差相関量Δθ2に重み係数βを乗算した値との和を、回転角度θの算出に用いる誤差相関量Δθとする。なお、ステップS26の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果に準じた効果が得られる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図13に、本実施形態にかかる位置/速度算出部60の処理を示す。なお、図13において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態では、外積値opに基づき回転角度θを算出する処理と、乗算値mdqに基づき回転角度θを算出する処理とで、速度算出部や積分演算部を共有化せず、各別の速度算出部74L,74Hや積分演算部76L,76Hを備える。更に、本実施形態では、外積値opに基づき回転角度θを算出する際には、高周波信号vhdcをインダクタンスが最小となる方向に重畳するようにする。
すなわち、外積値opを速度算出部74L及び速度算出部74Lによって処理することで、仮の回転角度を算出し、これに基づき先の図1に示したαβ変換部42にて高周波信号vhdcをαβ変換する。ここで、積分演算部76Lの出力である仮の回転角度は、インダクタンスが最小となる方向をd軸方向とする回転角度であるため、磁気飽和が生じる場合には、正しい角度とはならない。このため、補正量算出部110にて、磁気飽和度合いと回転速度ωとに基づき仮の回転角度の補正量を算出し、補正部112にて、仮の回転角度を補正することで最終的な回転角度θを算出する。
なお、セレクタ70の切替時には、回転角度θの連続性を担保すべく、積分演算部76L,76Hのうち切替前に用いていた方の値を切替によって新たに用いる方の初期値とすることが望ましい。
以上詳述した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果に準じた効果が得られる。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図14に、本実施形態にかかるシステムの構成を示す。なお、図14において、先の図1に示した処理と対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態では、除算値算出部50aにおいて、αβ変換部46の出力に基づき、d軸方向の高周波信号vhdcの重畳によって電動機10を実際に伝播する電流信号の振幅と、q軸方向の高周波信号vhqcの重畳によって電動機10を実際に伝播する電流信号の振幅との除算値dvを算出する。一方、位置/速度算出部60では、上記外積値opと、上記除算値dvとを取り込み、これらに基づき回転角度θを算出する。ここで、除算値dvを用いた回転角度θの算出は、先の図5に示した処理の要領で行うことができる。ただし、目標値算出部68に代えて、回転角度θに誤差がない場合に想定される除算値を目標値として用いて誤差相関量Δθ2を算出する。
以上詳述した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果に準じた効果が得られる。
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図15に、本実施形態にかかるシステムの構成を示す。なお、図15において、先の図1に示した処理と対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態では、高周波電圧設定部40において、d軸方向の高周波信号vhdcのみを重畳する。一方、振幅算出部50bでは、αβ変換部46の出力に基づき、d軸方向の高周波信号vhdcの重畳によって電動機10を実際に伝播する電流信号の振幅ihnを算出する。一方、位置/速度算出部60では、上記外積値opと、上記振幅ihnとを取り込み、これらに基づき回転角度θを算出する。ここで、振幅ihnを用いた回転角度θの算出は、先の図5に示した処理の要領で行うことができる。ただし、目標値算出部68に代えて、回転角度θに誤差がない場合に想定される上記振幅値を目標値として用いて誤差相関量Δθ2を算出する。
以上詳述した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果に準じた効果が得られる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施形態に対する上記第2の実施形態の変更点にて、上記第3〜第7の実施形態を変更してもよい。
・上記第1の実施形態に対する上記第3の実施形態の変更点にて、上記第4、第6〜7の実施形態を変更してもよい。
・上記第1の実施形態に対する上記第4の実施形態の変更点にて、上記第6〜7の実施形態を変更してもよい。
・上記第5の実施形態において、誤差相関量ΔθLに基づき算出される回転角度と、誤差相関量Δθ2に基づき算出される回転角度との加重平均処理によって、回転角度θを算出してもよい。
・上記第1〜7の実施形態において、誤差相関量に基づき回転角度θを算出する処理として、先の第3の実施形態における耐ノイズ角度算出部90のみを用いてもよい。
・磁気飽和度合いに基づき目標値を設定する際や、誤差相関量Δθ1に基づく回転角度θの算出と誤差相関量Δθ2に基づく回転角度θの算出との切り替えを行う際、更には重み係数α、βを設定する際に実際に用いるパラメータとしては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、指令電流idc,iqcのベクトルの長さや、指令電流idc,iqc位相角を用いてもよい。また、指令電流idc,iqcによって推定される電動機10のトルクや、要求トルクを用いてもよい。この際、駆動電流の振幅及び位相角並びにトルクのいずれか一方を上記パラメータとして用い、回転速度についてはこれを加味しないことも可能である。更に、駆動電流の振幅又は位相角のいずれか一方のみを上記パラメータとしたり、これとトルクとを上記パラメータとしてもよい。
また、上記第1〜3、5〜8の実施形態において、上記切り替えと、上記目標値の設定とを互いに相違するパラメータに基づき行ってもよい。更に、上記第4の実施形態において、上記重み係数α、βの設定と、上記目標値の設定とを互いに相違するパラメータに基づき行ってもよい。
なお、磁気飽和度合いに基づき目標値を設定する際と、誤差相関量Δθ1に基づく回転角度θの算出と誤差相関量Δθ2に基づく回転角度θの算出との切り替えを行う際と、重み係数α、βを設定する際とに実際に用いるパラメータを、それぞれ互いに相違させてもよい。ただし、回転速度ωや回転角度θを算出する際に用いるゲインについては、上記切り替えや重み係数α、βの変更に連動させて変更することが望ましいことから、ゲインの設定に用いるパラメータは、上記切り替えや重み係数α、βの算出に用いるパラメータとすることが望ましい。
・上記第1〜第7の実施形態では、外積値を、固定座標成分にて算出したがこれに限らず、回転座標成分にて算出してもよい。
・磁気飽和度合いが低い領域(低トルク領域)において回転角度θの算出に大きく寄与する誤差相関量Δθ1としては、外積値に基づき算出されるものに限らない。例えば上記外積値の算出に用いる2つのベクトル信号に基づき逆三角関数を用いることで、これらのベクトル信号間の角度差を算出してもよい。
また、例えば図16に示されるように、電動機10を実際に伝播する周波数信号のうちの回転角度θに基づく推定q軸方向の電流成分に基づき、誤差相関量Δθ1を算出してもよい。なお、図16においては、先の図1に示した部材と対応する部材には便宜上同一のステップ番号を付している。ここでは、q軸成分量算出部48aにおいて、電動機10を実際に伝播する周波数信号のうちのq軸の電流成分(例えばq軸の電流の変化量diq)を算出し、これを上記位置/速度算出部60に出力している。この出力に基づく回転角度θの算出手法は、上記特許文献1に記載されている要領で行うことができる。
ちなみに、図16の処理は、先の第1の実施形態の変形例であるが、第1の実施形態をベースとするものに限らず、例えば先の第7の実施形態をベースとするものであってもよい。
・電動機10を実際に伝播する高周波信号の振幅に基づき回転角度を算出する手段としては、上記各実施形態で例示したものに限らず、要は、任意の位相角方向に高周波信号を重畳した際に実際に伝播する高周波信号の振幅に基づき誤差相関量Δθを算出すればよい。
・上記第3の実施形態において、耐ノイズ角度算出部90のローパスフィルタ94としては、1次遅れフィルタに限らず、例えば2次遅れフィルタであってもよい。この際、電気角の回転周期の6次の高調波ノイズ等の高次の振動成分を除去可能な設計とすることが望ましい。ここでも、上記実施形態のように、遮断周波数を回転速度に応じて可変設定することが望ましい。ただし、フィルタ手段としては、遮断周波数を回転速度に応じて可変設定するものにも限られない。
・上記第3の実施形態において、高応答角度算出部80としては、フィルタ手段を備えないものに限らない。この場合であっても、耐ノイズ角度算出部90の方が高応答角度算出部80よりもノイズ除去の度合いの強い処理がなされるようにするなら、耐ノイズ角度算出部90の応答性が低下するため、上述した態様での切り替えは有効である。
・上記第3の実施形態において、速度補正量算出部98としては、誤差相関量Δθの比例演算及び積分演算の和を出力するものに限らず、例えば比例演算及び積分演算及び微分演算の和を出力する構成であってもよい。また、誤差相関量Δθの積分演算結果を出力するものであってもよい。
・上記第3の実施形態において、角度補正量算出部82としては、誤差相関量Δθの比例演算及び積分演算の和を出力するものに限らない。例えば誤差相関量Δθの比例演算及び積分演算及び微分演算の和を出力する構成であってもよい。また、誤差相関量Δθの積分演算結果を出力するものであってもよい。更に、誤差相関量Δθの比例演算結果を出力するものであってもよい。
・速度算出部74の構成としては、誤差相関量Δθの2重積分演算及び比例演算及び積分演算の和を算出するものに限らない。例えば誤差相関量Δθの2重積分演算及び比例演算及び積分演算及び微分演算の和を出力するものであってもよい。また、誤差相関量Δθの2重積分演算及び積分演算の和を出力するものであってもよい。更に、誤差相関量Δθの2重積分演算及び比例演算の和を出力するものであってもよい。また、誤差相関量Δθの3重積分演算結果を出力するものであってもよい。
・構造上、突極性を有する電動機としては、上記電動機10に限らない。例えば同期リラクタンスモータ(SynRM)でもよい。また、構造上突極性を有するものに限らず、例えば表面磁石同期モータ等のいわゆる構造上の非突極機であっても、駆動電流によって磁気的に突極性を有することとなるものについては本発明の適用は有効である。
・回転機としては、電動機に限らず、発電機であってもよい。
・上記各実施形態では、ハイブリッド車に本発明にかかる制御装置を適用したが、これに限らず、例えば電気自動車に適用してもよい。更には内燃機関を動力源とする車両におけるパワーステアリング等の動力伝達手段としての電動機に本発明の制御装置を適用してもよい。
10…電動機、40…高周波電圧設定部(重畳手段の構成手段の一実施形態)、62,66…誤差相関量算出部、70…セレクタ(可変手段の構成手段の一実施形態)、74…速度算出部(最終角度算出手段の構成手段の一実施形態)、76…積分演算部(最終角度算出手段の構成手段の一実施形態)。