JP2009092054A - 内燃機関制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料噴射能力の向上を要することなく、目標噴射量が燃料噴射能力を超えてしまうことによるエミッション悪化の抑制を図った内燃機関制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンに対する要求出力が増大変化した場合に、スロットルバルブの開度が目標開度に至るまでの吸気量変化を推定する吸気量変化推定手段S16と、推定された吸気量変化に対して理論空燃比を維持させるに必要な燃料の噴射量となるよう、アルコール濃度に基づき目標噴射量の推移を算出する目標噴射量推移算出手段S18とを備える。そして、目標噴射量の推移に燃料噴射可能量を超える部分があると判定(S20:YES)された場合に、要求出力を、その増大変化速度が遅くなるよう補正することで、目標開度に対応した目標吸気量となるまでの期間における総吸気量を減少させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、点火式内燃機関に適用された内燃機関制御装置に関する。
近年では、点火式内燃機関(以下、単にエンジンと呼ぶ)に用いられるガソリン(以下、正規燃料と呼ぶ)の代替燃料として、エタノール等のアルコールが注目されている。そして、燃料タンクに正規燃料が残っている状態でアルコールを補給してアルコール混合燃料とした場合を想定すると、アルコール混合燃料による燃焼エネルギは同じ量の正規燃料による燃焼エネルギに比べて小さいため、同じ出力トルクを得ようとすると、アルコール混合燃料の場合には正規燃料の場合に比べて燃料噴射量を増量させる必要がある(特許文献1参照)。
特開平1−216040号公報
ところで、図5に示すように、燃料噴射弁33を吸気ポート34に取り付けたポート噴射式エンジンにおいては、噴射した燃料は液体の状態で吸気ポート壁面34aに一旦付着し、その後気化して吸気とともに混合気として燃焼室30aに流入する。そして、吸気量及び燃料噴射量を増大させてエンジン出力を増大変化させる時には、燃料噴射量の増大によりウェット燃料の付着面積は符号S1の状態からS2の状態へ拡大し、この付着面積増大に伴いウェット燃料の気化量が増大するといった過程を経る。
そして、付着面積がS1からS2まで拡大するまでの期間、噴射量に対して燃焼室30aに流入する気化燃料の割合が少なくなり混合気がリーンの状態になってしまうことを抑制すべく、前記拡大期間(出力増大過渡期間)中はウェット燃料の増量補正を行うことが従来より知られている。つまり、エンジン要求出力が増大変化した場合、吸気量については単調増加させるのに対し、噴射量については単純に単調増加させるのではなく、図6(d)中の実線L2に示すように出力増大過渡期間Tにはウェット燃料増大分Sだけ一時的に多量の燃料を噴射させる。
しかしながら、先述した通りアルコール混合燃料の場合には正規燃料の場合に比べて燃料噴射量を増量させる必要があるため、上述の如く出力増大過渡期間Tに多量の燃料を噴射させようとすると、目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えてしまう場合がある(図6(e)参照)。すると、吸気量に対して噴射量が不足したリーン状態となるため、NOx増大等のエミッション悪化を招いてしまう。
ちなみに、燃料噴射弁33等から構成される噴射システム全体の仕様を変更して燃料噴射可能量Qlim(燃料噴射能力)を向上させれば、上記エミッション悪化の問題を解決できるものの、噴射システムの大幅なコストアップを招いてしまう。なお、上記問題は、代替燃料がアルコールである場合に限らず、正規燃料に比べて燃焼エネルギ発生率が低い性状の他の代替燃料についても同様に生じる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料噴射能力の向上を要することなく、目標噴射量が燃料噴射能力を超えてしまうことによるエミッション悪化の抑制を図った内燃機関制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
本発明に係る内燃機関制御装置は、アクチュエータにより駆動されて吸気量を調整する吸気量制御バルブと、吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える点火式内燃機関に適用されたものである。
そして請求項1記載の発明では、
・前記内燃機関に対する要求出力に基づき前記吸気量制御バルブの目標開度を算出する目標開度算出手段と、
・前記要求出力が増大するよう変化した場合に、前記吸気量制御バルブの開度が前記目標開度に至るまでの吸気量変化を推定する吸気量変化推定手段と、
・燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値を検出する燃料性状値検出手段と、
・前記吸気量変化推定手段により推定された吸気量変化に対して理論空燃比を維持させるに必要な燃料の噴射量となるよう、前記燃料性状値に基づき目標噴射量の推移を算出する目標噴射量推移算出手段と、
・前記目標噴射量の推移に燃料噴射可能量を超える部分があると判定された場合に、前記目標開度に対応した目標吸気量となるまでの期間における総吸気量を減少させるよう、前記目標開度に至るまでの前記吸気量制御バルブの開度挙動を制御する開度挙動制御手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、例えば図3(a)に示すようにt1の時点で要求出力が増大するよう変化した場合、吸気量変化推定手段は、吸気量制御バルブの開度が目標開度THtrgに至るまでの吸気量変化(図3(c)中の点線L5に示す変化)を推定する。そして目標噴射量推移算出手段は、推定された吸気量変化L5に対して理論空燃比を維持させるに必要な燃料の噴射量となるよう、燃料性状値に基づき目標噴射量の推移(図3(d)中の点線L20に示す推移)を算出する。
そして、このように算出された目標噴射量の推移L20に燃料噴射可能量Qlimを超える部分があると判定された場合には、目標開度に対応した目標吸気量となるまでの期間(出力増大過渡期間T)における総吸気量が減少される。つまり図3(c)の例では、吸気量変化が点線L5から実線L6となるよう吸気量制御バルブの開度挙動を制御することで、出力増大過渡期間Tにおける総吸気量を減少させる。
以上により上記請求項1記載の発明によれば、要求出力が増大することに起因して目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えると判定された場合には、出力増大過渡期間Tにおける総吸気量も少なくなる。よって、出力増大過渡期間Tに混合気がリーン状態となることを抑制でき、ひいては、NOx増大等のエミッション悪化を抑制できる。
なお、図5を用いて先に説明した通り、ポート噴射式エンジンにおいては、ウェット燃料の付着面積がS1からS2まで拡大するまでの期間(出力増大過渡期間T)、気化燃料不足によるリーン状態を回避すべくウェット燃料の増量補正を行う必要がある。よって、目標噴射量算出手段は、目標開度に対して理論空燃比にさせるに必要な燃料の噴射量となるよう目標噴射量を算出するにあたり、出力増大過渡期間Tにおいては上記ウェット燃料増量補正を行うこととなる。
請求項2記載の発明では、前記要求出力の増大変化に伴い、前記目標噴射量の推移に燃料噴射可能量を超える部分があると判定された場合には、前記要求出力の増大変化速度を遅くするよう補正する要求出力補正手段を備えることを特徴とする。
これによれば、例えば、要求出力が図3(a)中の点線L7に示すようにステップ状に増加するよう変化した場合であっても、目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えた場合には、図3(a)中の実線L8又は一点鎖線L9に例示されるように要求出力の増大変化速度が遅くなる(図3の例では要求出力を徐々に増加する)よう要求出力は補正される。すると、吸気量制御バルブの開度変化速度も遅くなるので、吸気量の増大変化速度も遅くなり、ひいては出力増大過渡期間Tにおける総吸気量も少なくなる。よって、目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えると判定された場合には、出力増大過渡期間Tにおける総吸気量を減少させるよう開度挙動を制御することを、容易に実現できる。
請求項3記載の発明では、前記開度挙動制御手段は、前記目標噴射量が前記燃料噴射可能量を超えた度合いに応じて、前記総吸気量の減少量を可変設定することを特徴とする。これによれば、図3(d)中の実線L21に示すように、目標噴射量L21が燃料噴射可能量Qlimで推移することとなるよう総吸気量の減少量を可変設定することができる。よって、総吸気量を過剰に減少させてしまうことにより出力増大過渡期間Tにおける目標噴射量が燃料噴射可能量Qlimを下回ってしまうことを抑制でき、ひいては要求出力の増大変化に対する出力応答性低下を抑制できる。
請求項4記載の発明では、
・前記内燃機関に対する要求出力に基づき前記吸気量制御バルブの目標開度を算出する目標開度算出手段と、
・燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値を検出する燃料性状値検出手段と、
・前記目標開度に対して理論空燃比にさせるに必要な燃料の噴射量となるよう、前記燃料性状値に基づき目標噴射量を算出する目標噴射量算出手段と、
・前記要求出力が増大するよう変化した場合に、前記目標開度に至るまでの前記吸気量制御バルブの開度変化速度が上限値を超えないよう制限する開度変化速度制限手段と、
・前記燃料性状値が燃焼エネルギ発生率の低い値であるほど、前記上限値を低い値に設定する上限値設定手段と、
を備えることを特徴とする。
これによれば、燃料性状値が燃焼エネルギ発生率の低い値であるほど(例えば燃料のアルコール濃度が高いほど)開度変化速度の上限値を低い値に設定するので、吸気量制御バルブの開度が急激に上昇することが抑制される。その結果、例えばアルコール濃度が高く、要求出力の増大変化時において目標噴射量が燃料噴射可能量Qlimを超える可能性が高い状態であるほど、点線L3に示す開度変化が実線L4に示すように低下することとなる。よって、出力増大過渡期間Tに目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えてしまうことが抑制されるので、吸気量に対して噴射量が不足したリーン状態となることを抑制でき、ひいては、NOx増大等のエミッション悪化を抑制できる。
請求項5記載の発明では、前記開度変化速度制限手段は、前記要求出力の変化速度が上限値を超えないよう補正することで、前記開度変化速度が上限値を超えないよう制限することを特徴とする。
これによれば、例えば、内燃機関の運転者が要求出力を急激に増大させるよう操作しても、要求出力は、図3(a)中の点線L7に示すようにステップ状に増加することを制限され、実線L8に示すように徐々に増加することとなる。すると、吸気量制御バルブの開度変化速度も遅くなるので、吸気量の増大変化速度も遅くなり、ひいては出力増大過渡期間Tにおける吸気量も少なくなる。よって、開度変化速度が上限値を超えないよう制限することを、容易に実現できる。
ここで、先述した通り目標噴射量算出手段は、目標開度に対して理論空燃比にさせるに必要な燃料の噴射量となるよう目標噴射量を算出するにあたり、出力増大過渡期間Tにおいては上記ウェット燃料増量補正を行うこととなる。しかしながら、要求出力の値が小さい状態である場合には、その要求出力の増大を開始した時に要求される付着面積S1,S2の拡大量は大きくなるので、ウェット燃料の増量分(図6中の斜線Sに例示される面積)も多くなる。
これに対し、請求項6記載の発明によれば、前記上限値設定手段は、前記要求出力の増大変化開始時点における要求出力値が低いほど、前記開度変化速度の上限値を低い値に設定することを特徴とするので、ウェット燃料の増量分が多くなるほど吸気量制御バルブの開度が上昇しにくくなるので、出力増大過渡期間Tに目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えてしまうことを好適に抑制できる。
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本実施形態に係る内燃機関制御装置は、4輪自動車用のレシプロ式エンジン(内燃機関)を対象にしており、当該エンジンは、正規燃料をガソリンとした点火式エンジンであり、このガソリンにアルコールを混合したアルコール混合燃料を用いても対応できるように図られている。なお、本実施形態では混合するアルコールとしてエタノールを想定している。
図1は、エンジン制御システムの概要を示す構成図であり、エンジンECU10には、クランク角センサ21、アクセル操作量センサ22、冷却水温度センサ23及びアルコールセンサ24(燃料性状値検出手段)からの検出信号が入力される。クランク角センサ21はエンジン30のクランク軸31(出力軸)の回転速度NEを検出する。アクセル操作量センサ22は運転者によるアクセルペダルの操作量AC(要求出力)を検出する。冷却水温度センサ23はエンジン冷却水の温度TWを検出する。
アルコールセンサ24は、図示しない燃料タンク内に設けられており、燃料中のアルコール濃度Cを検出する。このアルコールセンサ24は、燃料中に浸漬された1対の白金電極を有し、アルコール濃度に応じた電極間の抵抗値の変化により、出力電圧Vが変化するものである。この他、静電容量型のアルコールセンサを用いてもよい。
エンジンECU10はマイクロコンピュータを有しており、各種検出信号NE,AC,TW,C等に基づき燃料噴射弁33の作動を制御することで、燃焼室30aに流入する燃料の噴射量及び噴射時期を制御する。なお、燃料噴射弁33は吸気ポート34に取り付けられており、燃料を吸気ポート34に噴射するポート噴射方式である。
また、エンジンECU10は、各種検出信号NE,AC,TW,C等に基づきスロットルバルブ35(吸気量制御バルブ)の作動を制御することで、燃焼室30aに流入する吸気の量を制御する。なお、スロットルバルブ35は、電動モータ36(アクチュエータ)により駆動されて吸気ポート34(吸気管)の開度を調整する。
図2は、スロットルバルブ35(電動モータ36)の作動をエンジンECU10が制御するにあたり、ECU10のマイコンにより実行される処理の内容を示すフローチャートである。当該処理は所定周期(例えばマイコンの演算周期、又は所定のクランク角周期)毎に実行される。
先ずステップS10において、アクセルペダルの操作量AC、エンジン回転速度NE及びエンジン冷却水温度TWに基づき、エンジンに要求される出力(エンジン要求出力)を算出する。続くステップS12では、ステップS10にて算出されたエンジン要求出力の値が前回の算出値に比べて増加したか否か、つまり、運転者がアクセルペダルを踏み込むよう操作したか否かを判定する。
アクセルペダルが踏込操作されておらず要求出力の値が増加していないと判定された場合(S12:NO)にはステップS24に進み、ステップS10にて算出されたエンジン要求出力の値及びエンジン回転速度NEに基づき、目標スロットル開度THtrgを算出する。なお、エンジン要求出力及び回転速度NEが大きいほど目標スロットル開度THtrgは大きい値に算出される。当該算出にあたり、要求出力及び回転速度NE毎に目標スロットル開度THtrgの最適値が記憶されたマップを用いて算出してもよいし、演算式にエンジン要求出力及び回転速度NEを代入して算出してもよい。
続くステップS26(開度挙動制御手段)では、ステップS24にて算出された目標スロットル開度THtrgとなるよう電動モータ36の駆動を制御する。なお、スロットルバルブ35の開度は図示しない開度センサにより検出されており、開度センサの検出値が目標スロットル開度となるよう、電動モータ36の駆動をフィードバック制御している。
一方、アクセルペダルが踏込操作されて要求出力の値が増加していると判定された場合(S12:YES)にはステップS14(目標開度算出手段)に進み、先述したステップS24と同様の処理により目標スロットル開度THtrgを算出するとともに、目標スロットル開度THtrgに至るまでの開度の挙動を推定する。図3(b)に示す点線L3は、t1の時点でステップS14により推定された開度の挙動を示す。当該推定では、スロットルバルブ35の開度を最も速く目標スロットル開度THtrgに到達させるよう電動モータ36を駆動させることを前提条件として、開度の挙動を推定している。当該推定では、目標スロットル開度THtrg等を変数とした伝達関数又は物理モデルを用いて推定してもよいし、マップを用いて推定してもよい。
続くステップS16(吸気量変化推定手段)では、ステップS14にて推定された開度挙動に基づき、燃焼室30aに吸入される吸気量の変化を算出する。ここで、燃焼室30aへ流入する吸気量の変化には、スロットルバルブ35の開度変化に対して応答遅れが生じるが、当該ステップS16ではこの応答遅れを加味して吸気量変化を算出している。当該算出では、開度挙動等を変数とした伝達関数又は物理モデルを用いて算出してもよいし、マップを用いて算出してもよい。
続くステップS18(目標噴射量推移算出手段)では、以下に説明する如く目標噴射量(1燃焼サイクルあたりに噴射される燃料の量)、及びその噴射量の推移を算出する。具体的には先ず、ステップS14にて算出された目標スロットル開度THtrg、エンジン回転速度NE、及び燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値(本実施形態ではアルコールセンサ24により検出されたアルコール濃度C)に基づき、基本噴射量を算出する。
次に、始動後増量、暖気増量、加速時のウェット燃料増量(加速増量)等の補正量を算出し、基本噴射量に各種補正量を加算して最終的な目標噴射量を算出する。前記ウェット燃料増量は、図5を用いて先に説明した通りであり、ウェット燃料の付着面積がS1からS2まで拡大するまでの期間(出力増大過渡期間T)、気化燃料不足によるリーン状態を回避するための増量補正である。したがって、エンジン要求出力が増大変化して目標スロットル開度が開側に変化する出力増大過渡期間Tには、図6(d)中の実線L2に示すようにウェット燃料増大分Sだけ基本噴射量L1に対して一時的に目標噴射量が多くなる。
さらにステップS18では、上述の如く算出される目標噴射量がどのように推移するかを、ステップS16にて算出された吸気量変化等に基づき算出する。そして、続くステップS20では、ステップS18にて算出された目標噴射量の推移に燃料噴射可能量Qlimを超える部分が存在するか否かを判定する。この比較判定に用いられる目標噴射量の値として、目標噴射量の推移中に現れるピーク値を用いて好適である。
なお、燃料噴射可能量Qlimとは燃料噴射システム全体の仕様により決定される噴射能力のことであり、当該噴射システムは、燃料噴射弁33、複数の燃料噴射弁33に燃料を分配するデリバリパイプ33a、デリバリパイプ33aに燃料を供給する燃料ポンプ(図示せず)等から構成されている。すなわち、これらの構成部品33,33aの能力により前記噴射能力は決定される。
目標噴射量>燃料噴射可能量Qlimでないと判定された場合(S20:NO)には処理は先述のステップS24に進む。一方、目標噴射量>燃料噴射可能量Qlimであると判定された場合(S20:YES)にはステップS22に進み、ステップS18にて算出された目標噴射量の推移中に現れるピーク値と燃料噴射可能量Qlimとの差分を超過値として算出する。或いは、目標噴射量の推移波形のうち燃料噴射可能量Qlimを超えた部分の面積(図3(d)中の符号S1に示す面積)を超過値として算出する。
さらにステップS22(要求出力補正手段)では、ステップS10にて算出されたエンジン要求出力の値が、増大変化する際に、その増大変化速度が遅くなるよう補正する。例えば、図3(a)中の点線L7に示すようにステップ状に増加するよう変化した要求出力は、図3(a)中の実線L8に示すよう徐々に増加するよう補正される。また、t1時点における要求出力のステップ上昇量ΔPは、予め設定された量以内となるよう制限される。
このように、要求出力を補正すれば、点線L3に示す開度変化が実線L4に示すように低下することとなり、点線L5に示す吸気量変化が実線L6に示すように低下することとなる。そこで、実線L6に示す吸気量が目標噴射量(図3の場合には燃料噴射可能量Qlim)に対して理論空燃比となるよう、要求出力は補正される。
したがって、例えばt1時点におけるステップ上昇量ΔP、及びt1からt3にかけての傾き(増大変化速度)の少なくとも一方は、前記超過値に基づき設定される。つまり、超過値が大きいほど要求出力の急激な増大が抑制されるよう補正され、具体的には、超過値が大きいほど、ステップ上昇量ΔP又は増大変化速度は小さい値となるよう設定される。
そして、ステップS22の処理の後にステップS24を実行する場合には、ステップS22にて上述の如く補正された要求出力の値及びエンジン回転速度NEに基づき、目標スロットル開度THtrgを算出する。その後、先述したステップS26にて、目標スロットル開度THtrgとなるようスロットルバルブ35の作動を制御する。
次に、図3(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)を用いて、図2の処理により変化する各種算出値等の推移、挙動の一態様を説明する。なお、図3及び図6は、t1の時点において、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれてエンジン要求出力が増加した場合(S12:YES)の態様を示すものである。また、図6は、ガソリンにアルコールが混合していない場合であり、ステップS20にて否定判定(S20:NO)される場合の一態様を示す。一方図3は、ガソリンにアルコールが混合されている場合であり、ステップS20にて肯定判定(S20:YES)される場合の一態様を示す。
図6の態様においては先ずt1の時点において、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれるとエンジン要求出力がステップ状に増加する(図6(a)参照)。次に、ステップ状に増加したエンジン要求出力に基づき目標開度THtrgが算出されるとともに、目標開度THtrgに至るまでの開度の挙動(図6(b)参照)が推定される。次に、推定された開度挙動から吸気量の変化(図6(c)参照)が推定される。
次に、吸気量変化及びアルコール濃度に応じて理論空燃比を維持させるよう基本噴射量の推移(図6(d)中の点線L1参照)、及びウェット燃料増量Sの推移が算出される。図6(d)中の実線L2は、基本噴射量L1にウェット燃料増量Sを加算して得られた目標噴射量の推移を示す。そして、目標噴射量L2のピーク値は燃料噴射可能量Qlimを超えていないため、t1時点にてステップ状に変化した要求出力は補正されることなく処理される。
これに対し、図3の態様においては、上述の如く算出した目標噴射量L20のピーク値が燃料噴射可能量Qlimを超えるため、ステップ状に増加するようアクセル操作された要求出力L7は、実線L8に示すように徐々に増加するよう補正される。その結果、点線L3に示す開度変化が実線L4に示すように低下することとなり、点線L5に示す吸気量変化が実線L6に示すように低下することとなる。そして、燃料噴射可能量Qlimに対して理論空燃比となる吸気量L6となるよう、エンジン要求出力は補正されるので、出力増大過渡期間Tは理論空燃比が維持されることとなる。
したがって、アルコールが混合されているとの条件下で急激にアクセルペダルを踏み込むよう操作した場合であっても、目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えると判定された場合には、出力増大過渡期間Tにおける吸気量も少なくなる。よって、出力増大過渡期間Tに混合気がリーン状態となることを抑制でき、ひいては、NOx増大等のエミッション悪化を抑制できる。
なお、ピーク値が燃料噴射可能量Qlimを超えなくなったt2時点以降における目標噴射量L21が、燃料噴射可能量Qlimに維持されて目標噴射量L20よりも多くなっていることにより、目標噴射量L20のうち燃料噴射可能量Qlimを超えて噴射できなかった分の噴射量Q1は斜線部分Q2により補われている。
(第2実施形態)
本実施形態では、スロットルバルブ35(電動モータ36)の作動をエンジンECU10が制御するにあたり、図2の処理に替えて図4に示す処理を実行する。なお、図4の処理は所定周期(例えばマイコンの演算周期、又は所定のクランク角周期)毎に実行される。
先ず、ステップS30において、アクセルペダルの操作量AC、エンジン回転速度NE及びエンジン冷却水温度TWに基づき、エンジンに要求される出力(エンジン要求出力)を算出する。続くステップS32では、燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値(本実施形態ではアルコールセンサ24により検出されたアルコール濃度C)に基づき、エンジン要求出力が増大するよう変化した場合における変化量の制限値(上限値)を算出する。具体的には、アルコール濃度Cが高いほど前記制限値を低い値に設定する。
さらに本実施形態では、要求出力の増大変化開始時点t1における要求出力値が低いほど、前記制限値を低い値に設定している。つまり、エンジン30を低出力(例えばアイドル回転速度での出力)で運転している状態でアクセルペダルを踏み込むと、高出力で運転している状態で踏み込んだ場合に比べて制限値が低く設定されるため、エンジン要求出力は急激に増大しにくくなる。
続くステップS34では、ステップS30にて算出されたエンジン要求出力が、ステップS32にて算出された制限値を超えないよう補正することで、エンジン要求出力が急激に増大しないようガードする。つまり、急激にアクセルペダルを踏み込むよう操作した場合であっても、アルコール濃度Cが高いほどエンジン要求出力は急激に増大しないように制限される。なお、アルコール濃度Cが所定量以下である場合には、制限値を設定せず、ガードをかけないようにしている。
続くステップS36では、補正によりガードされた状態のエンジン要求出力及びエンジン回転速度NEに基づき、目標スロットル開度THtrgを算出する。なお、エンジン要求出力及び回転速度NEが大きいほど目標スロットル開度THtrgは大きい値に算出される。
続くステップS38では、ステップS36にて算出された目標スロットル開度THtrgとなるよう電動モータ36の駆動を制御する。なお、スロットルバルブ35の開度は図示しない開度センサにより検出されており、開度センサの検出値が目標スロットル開度となるよう、電動モータ36の駆動をフィードバック制御している。
図4の処理により変化する各種算出値等の推移、挙動は、図3(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)にて例示される態様で変化することとなる。すなわち、アルコールが混合されているとの条件下において、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれてエンジン要求出力が増加した場合に、その増加量が制限値を超えていればステップS34にてガードされる。図3(a)の例では制限値はΔPに設定されているため、制限値ΔPを超えた増加量で増加するようアクセル操作された要求出力L7は、一点鎖線L9に示すように制限(補正)されることとなる。
なお、エンジン要求出力がガードされた場合には、t1時点でガードされた後、実線L8に示すように徐々に要求出力を上昇させるようにしてもよい。この場合、t1からt3にかけて徐々に上昇させるその傾き(増大変化速度)を、アルコール濃度Cが高いほど小さく設定して、吸気量の減少度合いを大きくすることが望ましい。
以上により、本実施形態によれば、アルコールが混合されているとの条件下で急激にアクセルペダルを踏み込むよう操作した場合であっても、エンジン要求出力の増加は制限されるので、点線L3に示す開度変化が実線L4に示すように低下することとなり、点線L5に示す吸気量変化が実線L6に示すように低下することとなる。よって、目標噴射量L20のピーク値が燃料噴射可能量Qlimを超える状況になったとしても、その時の吸気量は減少することとなるので、出力増大過渡期間Tに混合気がリーン状態となることを抑制でき、ひいては、NOx増大等のエミッション悪化を抑制できる。
また、本実施形態によれば、要求出力の増大変化開始時点t1における要求出力値が低いほど制限値を低い値に設定しているので、ウェット燃料の増量分Q1が多くなるほどエンジン要求出力が急激に上昇しにくくなり、スロットルバルブ35の開度が上昇しにくくなる。よって、出力増大過渡期間Tに目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えてしまうことを好適に抑制できる。
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。また、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、各実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
・上記第1実施形態では、目標噴射量L20が燃料噴射可能量Qlimを超えると推定された場合に、エンジン要求出力を減補正することでスロットルバルブ35の開度を小さくして吸気量を低下させているが、要求出力を補正することなく、目標スロットル開度THtrgを減補正することで吸気量を低下させるようにしてもよい。
・上記第2実施形態では、アルコール濃度Cに応じてエンジン要求出力の増大変化量に対して制限値を設定することにより、目標スロットル開度THtrgの増大変化量を制限して吸気量を低下させているが、アルコール濃度Cに応じて目標スロットル開度THtrgの増大変化量に対して制限値を設定することにより吸気量を低下させるようにしてもよい。
・目標噴射量となるよう燃料噴射弁33の駆動を制御するにあたり、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(A/Fセンサ又はO2センサ)を設け、検出した酸素濃度に基づき算出される空燃比が理論空燃比となるよう、目標噴射量をフィードバック補正することが望ましい。
・上記各実施形態では、アルコールセンサ24を用いてアルコール濃度を検出しているが、当該センサ24を廃止して、空燃比フィードバック補正係数の値等に基づきアルコール濃度を推定するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、本発明に係る吸気量制御バルブとしてスロットルバルブ35を採用しているが、吸気弁のリフト量により吸気量を制御する方式の内燃機関においては、吸気量制御バルブとして吸気弁を採用してもよい。
本発明の第1実施形態に係るエンジン制御システムの概要を示す構成図。 図1のECUにより実行される吸気量制御の処理内容を示すフローチャート。 アルコールが混合している場合のタイムチャートであり、図2の処理により変化する各種算出値等の推移、挙動の一態様を示すタイムチャート。 本発明の第2実施形態に係るスロットルバルブ制御の処理内容を示すフローチャート。 図1の拡大図。 アルコールが混合していない場合のタイムチャートであり、従来の吸気量制御により変化する各種算出値等の推移、挙動の一態様を示すタイムチャート。
符号の説明
24…アルコールセンサ(燃料性状値検出手段)、30…エンジン(点火式内燃機関)、33…燃料噴射弁(燃料噴射弁)、34…吸気ポート、34a…吸気ポート壁面、35…スロットルバルブ(吸気量制御バルブ)、36…電動モータ(アクチュエータ)、S14…目標開度算出手段、S16…吸気量変化推定手段、S18…目標噴射量推移算出手段、S22…要求出力補正手段、S26…開度挙動制御手段。

Claims (6)

  1. アクチュエータにより駆動されて吸気量を調整する吸気量制御バルブと、吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える点火式内燃機関に適用された内燃機関制御装置において、
    前記内燃機関に対する要求出力に基づき前記吸気量制御バルブの目標開度を算出する目標開度算出手段と、
    前記要求出力が増大するよう変化した場合に、前記吸気量制御バルブの開度が前記目標開度に至るまでの吸気量変化を推定する吸気量変化推定手段と、
    燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値を検出する燃料性状値検出手段と、
    前記吸気量変化推定手段により推定された吸気量変化に対して理論空燃比を維持させるに必要な燃料の噴射量となるよう、前記燃料性状値に基づき目標噴射量の推移を算出する目標噴射量推移算出手段と、
    前記目標噴射量の推移に燃料噴射可能量を超える部分があると判定された場合に、前記目標開度に対応した目標吸気量となるまでの期間における総吸気量を減少させるよう、前記目標開度に至るまでの前記吸気量制御バルブの開度挙動を制御する開度挙動制御手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関制御装置。
  2. 前記要求出力の増大変化に伴い、前記目標噴射量の推移に燃料噴射可能量を超える部分があると判定された場合には、前記要求出力の増大変化速度を遅くするよう補正する要求出力補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
  3. 前記開度挙動制御手段は、前記目標噴射量が前記燃料噴射可能量を超えた度合いに応じて、前記総吸気量の減少量を可変設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関制御装置。
  4. アクチュエータにより駆動されて吸気量を調整する吸気量制御バルブと、吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える点火式内燃機関に適用された内燃機関制御装置において、
    前記内燃機関に対する要求出力に基づき前記吸気量制御バルブの目標開度を算出する目標開度算出手段と、
    燃焼エネルギ発生率に関連する燃料性状値を検出する燃料性状値検出手段と、
    前記目標開度に対して理論空燃比にさせるに必要な燃料の噴射量となるよう、前記燃料性状値に基づき目標噴射量を算出する目標噴射量算出手段と、
    前記要求出力が増大するよう変化した場合に、前記目標開度に至るまでの前記吸気量制御バルブの開度変化速度が上限値を超えないよう制限する開度変化速度制限手段と、
    前記燃料性状値が燃焼エネルギ発生率の低い値であるほど、前記上限値を低い値に設定する上限値設定手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関制御装置。
  5. 前記開度変化速度制限手段は、前記要求出力の変化速度が上限値を超えないよう補正することで、前記開度変化速度が上限値を超えないよう制限することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関制御装置。
  6. 前記上限値設定手段は、前記要求出力の増大変化開始時点における要求出力値が低いほど、前記開度変化速度の上限値を低い値に設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の内燃機関制御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015158171A (ja) * 2014-02-24 2015-09-03 富士重工業株式会社 筒内噴射エンジンの制御装置
JP2015193336A (ja) * 2014-03-31 2015-11-05 日立建機株式会社 ハイブリッド建設機械
JP2017110582A (ja) * 2015-12-17 2017-06-22 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置

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