JP2009091687A - 多層抄き板紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】高価な漂白パルプを節減させながらも、所定の表面強度を維持し、また美粧性のある白い外観を有しながらも、加工時や使用時に付着する埃などの汚れが目立つことがない多層抄き板紙を提供する。
【解決手段】少なくとも表層部と下層部とにより基紙が構成され、表層部は表層白色層及び下層白色層の少なくとも2層の白色層を有する多層抄き板紙であって、白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)として、表層部表面の白色度を40%以上60%以下とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、印刷適性、美粧性に優れ、さらに表面強度に優れる多層抄き板紙に関する。
近年、段ボールケースにもディスプレイ機能が求められてきているため、美粧印刷に対応した段ボール用多層抄き板紙が求められている。特に、フレキソ印刷は経済性に優れ、また環境に優しい水性インキが主に用いられることから、美粧印刷としてフレキソ印刷が施されることが多く、今後もさらに普及すると考えられる。
これまで、このような美粧印刷に対応する段ボール用多層抄き板紙として、例えば特許文献1に示されるように、印刷を施す面に顔料及びバインダーを含む塗被層を設ける方法などが用いられている。しかし、塗被層を設けることにより、紙の美粧化や印刷効果の向上を図ることはできるものの、製造コストが高くなるという問題があった。また、塗被層を設けることにより、塗被層の表面は高い白色度を有するので、外観・見映えには優れるものの、例えばこのような板紙が段ボールケースに用いられた場合、輸送時や倉庫で付着した埃などの汚れが非常に目立ってしまい、消費者等に商品が汚れている、古いといった印象を与えてしまうという問題がある。
また、美粧印刷に対応する段ボール用多層抄き板紙として、未晒多層抄き板紙の全面に白インキを印刷し、その上に赤や藍などの他色を印刷するなどして美粧性を付与する方法もある。しかし、白インキは高価であるので製造コストが高くなるという問題が生じるとともに、美粧性を得るための多色印刷において一色は白インキを印刷する必要が生じ、色数にも制約が生じてしまうという問題もある。
また、表層の原料パルプに漂白パルプを用いて形成した多層抄き板紙(以下、白ライナーという)は、印刷適性、印刷の映えに優れ、商品価値を高めることができる。しかし、白ライナーも前記塗被層を設けた多層抄き板紙と同様に、高い白色度を持ち外観・見映えに優れる効果があるものの、輸送時や倉庫で付着した埃などの汚れが非常に目立ち、消費者等に対し商品が汚れている、古いといった印象を与えるという問題があった。
特開2007−182656号公報
本発明は、上述したよな実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高価な漂白パルプを節減させながらも、所定の表面強度を維持し、また美粧性のある白い外観を有しながらも、加工時や使用時に付着する埃などの汚れが目立つことがない多層抄き板紙を提供することにある。
本発明の上記目的は、少なくとも表層部と下層部とにより基紙が構成され、前記表層部は表層白色層及び下層白色層の少なくとも2層の白色層を有する多層抄き板紙であって、前記白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、前記白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)として、前記表層部表面の白色度を40%以上60%以下としたことを特徴とする多層抄き板紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記表層白色層を構成する原料パルプは針葉樹晒クラフトパルプを主原料とし、前記下層白色層を構成する原料パルプは広葉樹晒クラフトパルプを主原料とし、また、前記表層白色層の坪量を29〜1g/m(dry)とし、前記下層白色層の坪量を1〜29g/m(dry)としたことを特徴とする多層抄き板紙を提供することによって、効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、前記表層部表面の表面強度が10A以上であり、且つパーカープリントサーフ平滑度が6.0〜8.0μmであることを特徴とする多層抄き板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
本発明に係る多層抄き板紙によれば、少なくとも表層部と下層部とにより基紙を構成し、また表層部は表層白色層及び下層白色層の少なくとも2層の白色層を有する多層抄き板紙であって、白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)として、表層部表面の白色度を40%以上60%以下としたので、印刷適性を向上させることができるとともに、従来のように未晒多層抄き板紙の全面に白インキを多量に印刷した上に、他色を印刷するなどして美粧印刷を行わなくても、従来にない白さ感(製品色目)のある美粧性を発現することができる。また、従来の白ライナーよりも、輸送時の汚れ等がより目立ち難く、見映えがより良好となる。
以下では、本発明に係る多層抄き板紙(以下、「本板紙」という。)の詳細を、基紙が表層部と下層部とにより構成され、また表層部が、表層側に配置される白色層(以下、「表層白色層」という)と、下層側に配置される白色層(以下、「下層白色層」という)との2層の白色層により構成され、また下層部が1層で構成されている場合を例に説明する。なお、本発明に係る多層抄き板紙は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
このように本板紙を多層抄きにより形成するのは、板紙の坪量は、洋紙と比較すると一般的に重いので、単層で抄造するよりも、一層当りの坪量を少なくして多層で抄造した方が、板紙の地合が良くなり、品質がより良好なものとなるからである。
また、本板紙は白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)としながらも、表層部表面の白色度が40%以上60%以下となるように形成されている。なお、この坪量(dry)とは、JIS−P8124に準じて測定した値である(以下、同様)。
これにより、本板紙は、従来に無い製品色目、美粧性を発現し、また森林資源の節減が可能となる。また、本板紙が段ボールケースに加工された際、段ボールの輸送時や倉庫で付着した紙埃などの汚れが目立ち難くなり、商品が汚れている、古いといった印象を和らげる効果を得ることができる。すなわち、本板紙の白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、白色層の合計坪量を10〜45g/m(dry)とすることにより、下層部の色目が表層部に透けて見える構成となる。これにより、従来にない白さ感のある美粧性を有すると共に、輸送時の汚れも従来の白ライナーより目立ち難い等の効果を得ることができるのである。
なお、白色層を構成する原料パルプの白色度が65%未満であると、本板紙の表層部表面の白色度を40%以上とすることが難しくなる。一方、白色度が85%を超えると、白さ感を得ることはできるが、原料パルプの製造コストが高くなる。
また、白色層の合計坪量が10g/m(dry)未満では、クッション性がなく、印刷適性に劣る。一方、白色層の合計坪量が45g/m(dry)を超えると、本板紙の外観の風合いが従来の白ライナーと変わらない多層抄き板紙となる。
さらに、本板紙の表層部表面の白色度が40%未満では、本願の所望とする美粧性を有する多層抄き板紙とならず、また、表層部表面の白色度が60%を超えると、従来の白ライナーと同様の風合いに近づき、輸送時や倉庫で付着した埃などの汚れが目立ち易くなる。
表層白色層及び下層白色層の原料パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプを漂白したパルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造された漂白パルプ等の公知の種々の漂白パルプを使用することができる。
これらの原料パルプの中でも、本板紙の表層部としての役割、及び本板紙としての各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、LBKP、NBKP、あるいは上白古紙、ケント古紙から製造された古紙パルプを用いることが好ましい。
さらに、表層白色層の原料パルプはNBKPを主原料とし、下層白色層の原料パルプはLBKPを主原料とすることがより好ましい。これにより、本板紙の表面強度を低下させることなく、印刷適性に優れるものとすることができる。
すなわち、表層白色層を構成する原料パルプは、繊維間強度の強いNBKPを主原料とすることで、表層の表面強度を維持しながら、下層白色層にて表層白色層のクッション性を持たせることにより良好な印刷適性が得られる。そのため、下層白色層を構成する原料パルプはLBKPを主原料とすることで、表層白色層のクッション性、及び表層白色層の緻密性に効果的に作用する。これにより、後述するように表層白色層の坪量を29〜1g/mと少なくしても、良好な表面強度、印刷適性が得られる。
具体的には、表層白色層に用いられる原料パルプに、NBKPを55〜100質量%、好適には65〜90質量%配合する。これにより、本板紙の表面強度の低下を効果的に防止することができるとともに、段ボール用原紙として要求される破裂強度を向上させることができる。なお、表層白色層の原料パルプのNBKPの含有量が55質量%未満であると、繊維長が長く、繊維が太いNBKPの含有割合が少なくなるため、表面強度が低下したり、本板紙の製函加工時に罫線割れが発生しやすくなる。一方、NBKPの含有量は100質量%とすることも可能ではあるが、地合いむらによる強度のばらつきや見映えの低下、高コストを招くおそれがあるため、NBKPの含有量は90質量%以下とすることが好ましい。
また、下層白色層に用いられる原料パルプに、LBKPを55〜100質量%、好適には65〜90質量%配合する。これにより、繊維地合が良く、紙層のクッション性が向上し、印刷適性に優れるようになる。なお、下層白色層の原料パルプのLBKPの含有量が55質量%未満であると、繊維長が短く、繊維が細いLBKPの含有割合が少なく、紙層のクッション性が低下してしまう。一方、LBKPの含有量は100質量%とすることも可能ではあるが、抄紙時の脱水性が悪く、生産性が悪くなる恐れがあるため、LBKPの含有量は90質量%以下とすることが好ましい。
また、本板紙の白色層以外の層(本実施形態では下層部)に用いられる原料パルプは、特に限定されず、公知の構成とすることができる。しかしながら、本板紙の表層部の表面の白色度を40%以上60%以下にし、本板紙を白さ感のある美粧性のあるものにするために、白色層以外の層には、段ボール古紙を主原料として製造された古紙パルプが好適に使用される。さらに、古紙パルプを可能な限り多く配合することが、エネルギー原単位や環境に与える負荷の軽減から好ましい。また、例えば、本板紙が段ボールケースに使用された時に要求される強度をもたせるため、破裂強度や圧縮強度などの高い原料パルプを使用し、表層部と下層部の機能を分化させることがより好ましい。
なお、本板紙を構成する原料パルプに用いられる内添サイズ剤としては、多層抄き板紙を製造するために従来より用いられている、例えばロジン系サイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等の公知のものを制限なく用いることができる。また、上記内添サイズ剤は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。しかしながら、本板紙の内添サイズ剤としてはロジン系サイズを使用することが好ましい。ロジン系サイズ剤を用いると、他のサイズ剤を用いた場合と比較して、段ボールケースに加工した際に要求される防滑性に対して優れた効果が得られる。なお、このロジン系サイズ剤としては、例えば近代化学(株)製の「R−50」などが使用できる。
また、本板紙の抄造に際しては、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性、アニオン性の歩留まり剤、濾水度向上剤、紙力向上剤等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用できる。
さらに、例えば硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物又はシリカゾル等が内添されてもよい。その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド又は親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物を添加、塗工、塗布、あるいは含浸してもよい。
さらにまた、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤又はスライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。
本板紙は、上述した原料パルプを用い、表層白色層の坪量を29〜1g/m(dry)とし、下層白色層の坪量を1〜29g/m(dry)とすることが好ましい。なお、表層白色層の坪量が29g/m(dry)を超えると、繊維間結合強度のある原料パルプで表面強度は高くなるが、表層部表面の白色度が高くなってしまうため、本板紙が所望とする風合いにならない。一方、表層白色層の坪量が1g/m(dry)未満では、多層抄き板紙の表層の表面強度が低下してしまう。また、下層白色層の坪量が1g/m(dry)未満であると、表層部のクッション性がなくなり印刷適性が劣る。一方、下層白色層の坪量が29g/m(dry)を超えると、紙層の強度は上がるが、表層部表面の白色度が高くなってしまうため、本板紙が所望とする風合いとならない。
さらにまた、本板紙の全体の坪量は特に限定されるものではないが、100〜500g/mが好ましく、140〜300g/mであるとより好ましい。本板紙全体の坪量が100g/m未満であると、本板紙製造時の塗工適性の不良や、それに伴う印刷適性の不良が発生する懸念がある。一方、坪量が500g/mを超えると、多層抄き板紙の厚みが厚すぎるため巻取りし難くなるので好ましくない。
なお、本板紙の基紙の抄紙方法については、特に限定されるものではなく、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法のいずれであってもよい。また、抄紙機も特に限定されるものではなく、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の種々の抄紙機を使用することができる。
本板紙は、上述のように所定の原料配合等に調整するが、繊維間結合の向上、表面強度の向上を図るため、白色層を構成する原料パルプに湿潤紙力剤をパルプ固形分に対して0.1〜1.0質量%添加することがより好ましい。湿潤紙力剤の具体例としては、抄紙工程の汚れが少なく印刷適性に優れる両性ポリアクリルアミド系紙力剤を用いることが好適であるが、勿論これに限定されるものではない。この両性ポリアクリルアミドはポリアクリルアミドにカチオン性の基を導入したポリマーであって、例えばアクリルアミド−ビニルモノマー共重合体、アクリルアミド−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体等のカチオン性モノマーとアクリルアミドとの共重合体や、マンニッヒ変成ポリアクリルアミド、ホフマン分解ポリアクリルアミド等を挙げることができる。
また、本板紙は、表層白色層に塗工剤を塗工あるいは含浸せることが望ましい。この塗工剤としては、例えばスチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SBR)、酢酸ビニル、アクリル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアマイド(PAM)、耐水化剤、撥水剤等の公知の種々のものを用いることができ、必要に応じて単独でも二種以上混合使用しても良い。また、この塗工剤の塗工量は、特に制限されるものではないが、固形分で0.2〜2.5g/m塗工されるのが好ましい。すなわち、塗工量を2.5g/mより多くしても、塗工量に見合うだけの表面強度の向上を得ることはできず、一方、塗工量が0.2g/m未満であると、摩擦等によって表層白色層表面に毛羽立ちが生じ印刷時の白ヌケが発生する傾向があるからである。
塗工液を塗工する方法としては、バーコーター、ロッドコーター、エアナイフなどの公知の塗工手段により塗工することができる。また、グラビア印刷機、フレキソ印刷機等の公知の印刷手段により印刷することもできる。これらの中でも本板紙には、バーコーター塗工機を使用することで表面性が良くなり印刷適性に優れるので、好適である
また、塗工液を塗工する前工程で、カレンダー処理を施すことが好ましい。これにより基紙表面(表層部の表面)が緻密になり、塗工液を基紙表面に効率よくとどめることができ、本板紙をより印刷適性に優れたものとすることができる。
さらに、表層白色層と下層白色層への内添サイズ剤の添加量を調整することにより、塗工剤を効率良く表層白色層に塗工または含浸させることができる。特に、内添サイズ剤の添加量を、表層白色層は固形分で0.1質量%、下層白色層は固形分で0.3質量%とすると、塗工液が必要以上に吸液又は含浸されることがなくなるので、より好ましい。
以上のように形成された本板紙は、JIS−P8129に規定するワックスピック測定方法を用いて測定した数値で、表面強度が10A以上であり、且つパーカープリントサーフ平滑度計の測定値が6.0〜8.0μm、好適には6.5〜7.6μmであることが好ましい。
表面強度が10A未満であると、実用上、多層抄き板紙の表面強度が不足することがある。また、印刷時の表層ムケが発生し、紙粉等により印刷適性に劣る。
また、パーカープリントサーフ平滑度計の測定値は、測定圧がフレキソ印刷時の印圧に近似しているため、その測定値は印刷時の平滑性をかなり正確に表していると考えられる。すなわち、パーカープリントサーフ平滑度計による測定値が低いと、測定面は平滑性に優れ、インキの染み込みは少なくなる反面、インキの乾燥性に劣り、インキの擦れや汚れが発生する。一方、パーカープリントサーフ平滑度計による測定値が高いと、測定面は粗く、多層抄き板紙の表層部表面へのインキの定着性に劣り、印刷カスレ等の問題が生じやすい。
従って、本多層抄き板紙においてはパーカープリントサーフ平滑度計による測定値が8.0μmを超えると、インキの定着性に劣り印刷カスレ等の問題が生じやすく、一方、6.0μm未満ではインキの定着性、再現性には優れるものの、インキの乾燥性に劣りインキの擦れ汚れが発生しやすい。
上述したように形成された本板紙は、白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)として、表層部表面の白色度が40%以上60%以下としたので、従来のように、未晒多層抄き板紙に白インキを多量に印刷した上に、他色を印刷するなどして美粧印刷を行う必要がなくなる。
以上、本発明に係る多層抄き板紙について、基紙が表層白色層及び下層白色層の2層の白色層から成る表層部と、1層の下層部との3層で抄造された場合について詳述したが、本多層抄き板紙は3層以上であれば、特に制限はなく何層でも良い。すなわち、白色層を3層以上で構成しても良く、あるいは下層部を2層以上で構成する、例えば中間層及び下層で構成したり、2層以上の下層で構成する等、その構成を適宜変更しても良い。
本発明に係る多層抄き板紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の重量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ、薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る16種類の板紙(これを「実施例1」ないし「実施例16」とする)と、これらに実施例1ないし実施例16と比較検討するために、5種類の板紙(これを「比較例1」ないし「比較例5」とする)を表1に示すような構成で作製した。
Figure 2009091687
(実施例1)
表層白色層用の原料スラリーを、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と上白古紙とを55:45の質量比で配合した原料パルプに、内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤(商品名:R−50 近代化学(株)製)を固形分で0.1質量%添加して作製した。また、下層白色層用の原料スラリーを、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)と上白古紙とを55:45の質量比で配合した原料パルプに、内添サイズ剤として、ロジン系サイズ剤(商品名:R−50 近代化学(株)製)を0.3質量%添加して作製した。さらにまた、下層部用の原料スラリー(本実施例では中層、及び裏層)を、段ボール古紙(WP)100質量%に、湿潤紙力剤(両性ポリアクリルアミド)を固形分で0.5質量%添加して作製した。
これらの原料スラリーを用い、抄紙機にて表層白色層及び下層白色層から成る表層部と、中層及び裏層から成る下層部との紙層を、表層白色層の坪量を10g/m、下層白色層の坪量を15g/m、下層部の合計坪量を195g/mとて抄き合わせて基紙を作製した。なお、坪量はJIS−P8124に準拠して測定した。
この基紙の表面上、すなわち表層白色層の表面上に、塗工液としてポリアクリルアミド(PAM)(商品名:「ハリコートG」/ハリマ化成(株)製)をバーコーターにて固形分で1.5g/mの塗工量で表層白色層の表面に塗工し、その後マシンカレンダーにて線圧30kgf/cmの条件でカレンダー処理して4層構造の多層抄き板紙(実施例1)を得た。
(実施例2〜16)
表層白色層の原料パルプの配合、表層白色層の坪量、下層白色層の原料パルプの配合、下層白色層の坪量、白色層を構成する原料パルプの白色度、下層部の坪量、塗工液の塗工量をそれぞれ表1に示すとおりに構成したこと以外は、実施例1と同様にして得た多層抄き板紙。
(比較例1〜5)
表層白色層の原料パルプの配合、表層白色層の坪量、下層白色層の原料パルプの配合、下層白色層の坪量、白色層を構成する原料パルプの白色度、下層部の坪量、塗工液の構成をそれぞれ表1に示すとおりに構成したこと以外は、実施例1と同様にして得た多層抄き板紙。
これらの全実施例及び比較例についての品質評価、すなわち製品白色度、表面強度、平滑度、印刷適性、及び製造コストについて評価試験を行った結果は、表2に示すとおりであった。
なお、表2中の「製品白色度(%)」とは表層部の表面の白色度で、JIS−P8123の紙及びパルプのハンター白色度試験方法に準拠して測定した値である。
また「表面強度(A)」とは、JIS−P8129の1994「紙及び板紙の表面強さ試験方法」に記載の「2.1 ワックスを用いる方法」に基づいて、測定した値である。
「平滑度(μm)」とは、パーカープリントサーフ平滑度計(Lorentzen&Wettre社製 SE―115)を用い、1.0MPaの加圧下でISO 8791−4に準拠して測定した値である。
「印刷適性」とは、JIS−P8129で定めるIGT印刷適性試験機に用いる、標準タックグレードインク(品番404.380.000)を用いて、熊谷理機工業(株)製のKRK万能印刷適性試験機を用いて印刷し、評価したものである。なお、評価基準は以下のとおりである。
◎:インクの剥がれがなく、印刷面に影響なし。
○:インクの剥がれは僅かにあるが、印刷面に影響はない。
△:インクの剥がれがあり、印刷面に下地の現れるところがある。
×:インクの剥がれ、印刷面の下地の現れともはなはだしいとした。
さらにまた、「製造コスト」とは、各実施例及び比較例を製造するのにかかったコストを相対評価し、「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階で評価した。
Figure 2009091687
表2に示すように、本発明に係る多層抄き板紙、すなわち実施例1〜16に係る多層抄き板紙であると、品質評価に優れる、すなわち高価な漂白パルプの使用量を節減させながらも、所定の表面強度を維持し、美粧性のある白い外観を有しながらも、加工時や使用時に付着する埃などの汚れが目立つことがないということが分かる。

Claims (3)

  1. 少なくとも表層部と下層部とにより基紙が構成され、前記表層部は表層白色層及び下層白色層の少なくとも2層の白色層を有する多層抄き板紙であって、
    前記白色層を構成する原料パルプの白色度を65%以上85%以下とし、
    前記白色層全体の坪量を10〜45g/m(dry)として、
    前記表層部表面の白色度を40%以上60%以下としたことを特徴とする多層抄き板紙。
  2. 前記表層白色層を構成する原料パルプは針葉樹晒クラフトパルプを主原料とし、
    前記下層白色層を構成する原料パルプは広葉樹晒クラフトパルプを主原料とし、
    また、前記表層白色層の坪量を29〜1g/m(dry)とし、
    前記下層白色層の坪量を1〜29g/m(dry)としたことを特徴とする請求項1に記載の多層抄き板紙。
  3. 前記表層部表面の表面強度が10A以上であり、且つパーカープリントサーフ平滑度が6.0〜8.0μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層抄き板紙。
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