JP2009091641A - 溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Alを0.08質量%以上含有する440℃〜480℃の溶融亜鉛めっき浴を用い、Ni、Cr、およびMnからなる群から選ばれる1種または2種以上をAlに対する質量比で0.01以上、および/または、SiをAlに対する質量比で0.001以上含有するトップドロスを、該めっき浴の浴面の20%以上を被覆するように浮遊させながらめっきを行う。このめっき浴によりめっきされた鋼材を加熱して合金化処理を行ってもよい。
【選択図】図1
Description
しかし、めっき浴のAl濃度を増加させてめっきすると、合金化溶融亜鉛めっき鋼材の製造時に、めっき層をFe-Zn合金化する際の反応性が著しく阻害される場合がある。この場合には、生産性が損なわれる上、合金化反応が不均一になるため鋼板の表面性状が悪くなってしまう。これらの理由から、合金化溶融亜鉛めっき鋼材を製造するに当たって、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度を必要以上に増加させるべきではない。
まず、浮遊ドロスは、めっき浴中に浮遊するため、めっき浴中に送給されるめっき鋼板などに容易に付着しうる。したがって、浮遊ドロスはできる限り少なくすることが好ましい。
ここで、「溶融亜鉛めっき」とは、Zn,Alのほか、浴中にPb、Sb、Cd、Sn、Bi、Mg、Ti等を含有しているめっきをも含むものとする。
めっき母材の種類は特に限定するものではなく、極低炭素鋼、低炭素鋼、Si、Mn、Pなどを含有する鋼が対象となる。鋼の強度で言えば、軟鋼や各種の高張力鋼等である。鋼の形態は鋼板に限定する必要はなく、鋼管、条鋼、形鋼等でもよいが、鋼板において特に有用である。鋼板の品種としては冷間圧延鋼板でも熱間圧延鋼板でも構わない。
以下では、鋼板を母材とし、連続溶融めっきライン(CGL)での実施形態を例として説明する。
母材はめっき浴温度近傍に調整された後溶融亜鉛めっき槽に送給される。母材は、めっき前の処理として還元雰囲気内での高温加熱または焼鈍され、めっき浴温度近傍まで冷却されるのが好ましいが、この方法に限定されることはなく、例えば高温加熱や焼鈍を経ないでめっき浴温度近傍まで直接加熱してめっきする方法でも構わない。
本発明では、製品品質や操業に害を与えない範囲で、トップドロスを完全に除去するのではなくめっき浴面に浮遊させながら操業する。以下にその詳細について説明する。
a)必須成分
本発明の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法におけるめっき浴には、ZnおよびAlがめっき成分として含まれ、鋼板に由来するFeも操業中に不可避的に含まれる。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法は、通常の溶融亜鉛めっきおよび合金化溶融亜鉛めっき製造時に用いられる亜鉛めっき浴に対して適用可能である。したがって、めっき浴中にPb、Sb、Cd、Sn、Bi、Mg、Ti等が少量含まれていても構わない。
また、めっき槽やめっき設備を構成する部材から若干の元素混入が発生していてもよい。
a)成分
本発明におけるトップドロスは、通常と同様Fe2Al5を主体とするものであるが、さらに、Ni、Cr、およびMn、ならびにSiからなる群から選ばれる少なくとも一種(以下「添加成分」という。)を含有する。
このようなトップドロスを形成するには、めっき浴に添加成分のみを単体で、またはめっき成分(Zn、Alなど)との合金としてめっき浴に投入すればよく、例えばめっき浴を補給・成分調整するためのインゴットに含ませてもよい。連続的に操業する際には、トップドロス成分の変動を見ながらこのような方法で適宜添加する。この方法によれば、めっき作業を行うことによって必然的に形成されるFe2Al5に添加成分が優先的に取り込まれることとなる。この他、めっき浴を新たに調製した場合等には、調製直後にはトップドロスが浴面に生成されていないため、必要に応じて、別のめっき浴で生成したトップドロスを採取し、この新たなめっき浴面に浮遊させてもよい。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法では、溶融亜鉛めっき浴の浴面を、製品品質や操業に影響を与えない程度にトップドロスで被覆しつつ、めっきを行う。この被覆の程度の好適な範囲は、添加成分の含有量、鋼材の組成や送給量、めっき浴量と浴面との比率などによって変動する可能性があるが、被覆率として20%以上にすれば本発明のボトムドロス低減効果を安定的に享受することが実現される。ここで、「被覆率」とは、めっき浴面のトップドロスで覆われている部分の面積を目視で評価したものである。例えば、図1(b)のような状態の場合、トップドロスの被覆率は40%である。実際のCGL(図1(b)も同様)では、スナウト内部のトップドロスの状況を必ずしも視認できないことが多いので、その場合は一応目視可能な部分と同様と推定する。なお、図1の被覆部を拡大すれば図2のようにトップドロスが点在している状態ではあるが、本発明ではこの状態で被覆率として規定する。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法を行うに当たって、めっき浴温度は、440〜480℃、好ましくは450〜470℃とする。浴温が480℃を超えると、前記反応式(1)の逆反応がトップドロスにおいて発生しやすくなり、トップドロスからFe−Zn系合金を含むボトムドロスや浮遊ドロスが生成する可能性が高まる。このため、浴温設定は480℃以下とする。好ましくは470℃以下である。一方、めっき浴温度が過度に低くなると溶融亜鉛の粘性が増し、めっき浴から引き上げられた後に施される高圧ガスなどによるめっき付着量の調整が困難になる。このため、例えば鋼板を対象とする場合には通板速度を遅くする必要が生じ、生産性を損なう。さらにめっき浴温度が低くすぎる場合には、めっきたれ(溶融亜鉛の凝固部分が垂れて凸状になったもの)などの表面欠陥が発生しやすくなるので好ましくない。このため、設定温度は440℃以上とする。好ましくは450℃以上である。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法においては、上記のめっき工程で得られた溶融亜鉛めっき鋼材に対して合金化処理を行って合金化溶融めっき鋼材を得てもよい。このときの合金化処理は公知の方法で行えばよい。すなわち、鋼材温度が450〜650℃程度の範囲で目的とする性能が得られるように加熱すればよい。加熱手段についても、輻射加熱、直火加熱、高周波誘導加熱、通電加熱の何れの手段によってもよい。
1.亜鉛めっき浴の作成、分析
(1)亜鉛めっき浴の作成
Al濃度が0.05〜0.32%の範囲にある溶融亜鉛めっき浴を作成した。めっき浴の浴槽には、黒鉛製のルツボを用いた。このめっき浴中にはNi,Cr,MnおよびSiからなる群から選ばれる一種以上が所定濃度となるように、Ni,CrおよびMnについてはそれぞれの金属粉を、SiについてはZn−5%Al−0.6%Si合金インゴットの形で添加した。さらに浴温を435〜485℃の範囲に調整してから、めっき浴の0.1%に相当するFe粉を添加した。最初に添加した固形物が溶解しないまま残存しないように、めっき浴を十分に攪拌した後、24時間静置した。
24時間静置後のめっき浴面に浮遊するトップドロスを、めっき浴面近傍のめっき浴ごとくみ出して、一旦完全に除去した。
上記のようにして採取したトップドロスの組成およびトップドロスを除いた後のめっき浴の組成を、次の方法で分析した。Si以外の元素については、20%のHCl水溶液に所定量のめっき浴(トップドロスの分析の場合は、これを含むめっき浴)を溶解し、ICP発光分析法にて分析した。Siについては、めっき浴(トップドロスの場合は、これを含むめっき浴)をまず15%NaOH水溶液で溶解し、ろ過した残渣を次いで過酸化水素を4%含有する王水中で加熱して溶解させた後、水を加えて所定の容積にしてからICP発光分析法にて分析した。得られた分析値から、Ni,Si等とAlとの質量比を算出した。
(1)ボトムドロス堆積厚み
上記のように一旦除去したトップドロスを、浴面の所定の面積を被覆するように、460℃のめっき浴に再び浮遊させた(比較のため、浮遊させなかった場合もある)。その状態でめっき浴を1週間静置した後、めっき浴中に磁製の丸棒を垂直に挿入して、固形物と接触する深さを求めた。そのときのめっき浴槽底面からめっき浴面までの高さからその深さを差し引いて、ボトムドロス堆積厚みを求めた。
一週間静置した後めっき浴面のトップドロスを除去し、浴の中央部分から採取用のひしゃく(図3参照)でめっき浴をくみ出した。なお浮遊ドロスの個数は、壁面、底面、浴面のごく近傍でなければさほど変わらないことはあらかじめ確認済みである。この浴サンプル凝固させた後、ひしゃく底面を鏡面研磨し、研磨面について0.01%ナイタール液でエッチングし、その表面を光学顕微鏡により観察して、1cm2当たりの平均粒径50μm以上の浮遊ドロス個数(個/cm2)を計測した。
化学組成が、重量%で、C:0.002%、Si:0.01%、Mn:0.25%、P:0.01%、solAl:0.025%、Ti:0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、厚さ0.7mm、幅60mmの冷間圧延鋼帯を母材とし、この母材を前処理として70℃の3%NaOH水溶液中に浸漬し、水洗し、乾燥した。
◎:めっきたれが認められない
○:めっきたれが少量発生しているが外観不良とは判定されない
×:めっきたれが多量に発生し外観不良と判定される
表1に状況を示す。
No.28および29は、No.16と同じトップドロス組成を有しているが、めっき浴面のドロス被覆率をNo.16とは変更した場合の結果である。
Claims (4)
- Alを0.08質量%以上含有する440℃〜480℃の溶融亜鉛めっき浴を用いる溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法であって、
Ni、Cr、およびMnからなる群から選ばれる1種または2種以上をAlに対する質量比で0.01以上含有するトップドロスを、該めっき浴の浴面の20%以上を被覆するように浮遊させながらめっきを行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。 - Alを0.08質量%以上含有する440℃〜480℃の溶融亜鉛めっき浴を用いる溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法であって、
SiをAlに対する質量比で0.001以上含有するトップドロスを、該めっき浴の浴面の20%以上を被覆するように浮遊させながらめっきを行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。 - Alを0.08質量%以上含有する440℃〜480℃の溶融亜鉛めっき浴を用いる溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法であって、
Ni、Cr、およびMnからなる群から選ばれる1種または2種以上をAlに対する質量比で0.01以上かつSiをAlに対する質量比で0.001以上含有するトップドロスを、該めっき浴の浴面の20%以上を被覆するように浮遊させながらめっきを行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載される溶融亜鉛めっき浴でめっきされた鋼材を加熱して合金化処理を行う合金化溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
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