JP6089895B2 - 耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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本発明は、P添加極低炭素鋼板を原板とする、耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
近年、自動車用鋼板として、亜鉛系表面処理鋼板、特に溶融亜鉛めっきした後、加熱してめっき層をFe−Zn合金とする合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されている。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は耐食性に優れ、溶接性や塗装性も良好であるが、寒冷地などで自動車が走行中に、塗装された合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して飛び石などによる衝撃が塗装面に加えられると、めっき被膜が塗膜と共に剥離し、素地鋼板を露出させることがある。この剥離はチッピングと呼ばれ、低温であるほど塗膜の力がめっき皮膜に大きく及ぶため、剥離径が大きくなる傾向がある。チッピングが生じた部分は、局部腐食を生じやすくなるため、耐チッピング性に優れた鋼板が望まれている。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の原板として、従来から低炭素Alキルド鋼板、極低炭素鋼板等が用いられてきたが、近年の自動車用材料の高強度化の要求にともない、安価で強化能の高いPを少量添加したP添加鋼が用いられるようになってきた。特にP添加の極低炭素鋼板において、チッピング性の悪化が顕著であるため、この改善技術が種々提案されている。
特許文献1には、母材のSiが0.05〜0.20%、Pが0.01〜0.1%であり、めっき層と母材との界面に、Fe−Al合金層がAlとして20mg/m2以上富化した耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。しかしながら、この方法では母材鋼板に所定量のSiを含有させる必要があるが、鋼板に必要な性能などの関係からSiを含有させることができない場合などでは、上記の技術は適用できない。またSiを含有させることはめっき外観やパウダリング性の点からも好ましくない。
特許文献2では、浴Al濃度を高めに設定するとともに、浴への侵入板温度を低めにすることで、P添加鋼であってもSi等母材成分の影響を受けず、合金化処理性を低下させることもなく耐チッピング性を向上させることが可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。しかしながらこの方法でも厳格化の一途をたどる耐チッピング性の要求に対して十分ではない。
一方で、パウダリング性等のめっき密着性の優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板として、Niプレめっき法を適用した技術が知られている。
例えば、特許文献3では、0.2〜0.5%のSi、0.03〜0.2%のPの1種又は2種を含有する高張力鋼板にNiプレめっき層を0.2〜2g/m2めっきし、直ちに非酸化性雰囲気中で板温430〜500℃に30℃/s以上の昇温速度で急速加熱を行ったのちAl0.05〜0.25%含有するZnめっき浴中で溶融めっきし、ワイピング後直ちに20℃/s以上の昇温速度で470℃〜550℃に急速昇温し、同温度範囲で10〜40秒合金化加熱処理を行うことを特徴とする加工部のめっき密着性に優れた高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献4では、極低炭素鋼板の少なくとも片面に、質量%で、Fe:8〜13%、Ni:0.05〜1.0%、Al:0.15〜1.5%、残部Znおよび不可避的不純物からなるメッキ層を有し、Al/Niの比率が0.5〜5.0であり、地鉄界面のΓ層の平均厚みが1μm以下、またそのバラツキが±0.3μm以内である耐食性、加工性、塗装性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献5では、Tiを含有する極低炭素鋼の少なくとも片面に、Znを主成分とし、Fe含有率が8〜13質量%であって、さらにAl,Niおよび不可避的不純物を含有するめっき層を有し、該めっき層におけるAl,Niの付着量を所定の範囲に制御することで、耐パウダリング性、耐食性に優れ、圧延方向に伸びた線状の合金化ムラが発生せず、自動車外板に適用可能な優れた特性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。
上記特許文献3,4,5の技術ではパウダリング性等のめっき密着性は良好であるが、耐チッピング性については十分ではなく、特にP添加の極低炭素鋼板、更には特にSi添加量の少ないP添加極低炭素鋼板を原板とする場合の耐チッピング性は十分ではない。
特開平9−78214号公報 特開2000−104151号公報 特開平4−333552号公報 特開2007−84913号公報 特開2009−280859号公報
極低炭素鋼板を原板とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、外観品位やパウダリング性が問題となりやすく、これら特性に対しては特許文献4,5の技術が有効である。しかしながら、本発明が対象とするP添加極低炭素鋼板を原板とする場合、耐チッピング性の観点において特許文献4,5の技術は十分ではない。特にP添加極低炭素鋼板のSi添加量が少ない場合にその問題がより顕在化する。そこで本発明では特許文献4,5の技術を改良することで、P添加極低炭素鋼板を原板とし、外観品位やパウダリング性等の基本品位を悪化させることなく、耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることを目的とする。
本発明者らは、特許文献4,5に開示された、焼鈍済みの極低炭素鋼板にNiプレめっきを施したのち、Alを微量添加した溶融亜鉛めっき浴でめっきし、加熱合金化させる技術に着目して、鋭意、改善検討を重ねた。アウトバーストと言われる急激で局部的な合金化反応を抑制することが、パウダリング性や外観の改善に重要であるが、P添加極低炭素鋼板を原板とした場合には、パウダリング性が良好でも耐チッピング性が良好とは限らないことを知見し、この改善を検討した。その結果、アウトバーストに代表される不均一な合金化を適度に起こさせることで耐チッピング性は向上することを知見した。
そして、Al、Niを含有する合金化溶融亜鉛めっき層におけるAl量を最適化することで、パウダリング性や外観等を悪化させることなく耐チッピング性を向上可能であることを知見した。めっき層中のAl量を規定することで、亜鉛めっき浴内反応における初期合金層中のAl量を最適化できる。めっき層中のNi量を最適化するとより好ましい結果を得ることができる。更には、めっき層中のAl量、Ni量の最適範囲は、原板のP含有量に強く影響されることを知見した。
本発明は以上の新規な知見に基づくものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%でSiが0.1%以下であり、Pを0.02%〜0.1%含有する極低炭素鋼板の少なくとも片面に、Fe含有率が8〜13質量%であって、さらにAl,Niおよび不可避的不純物を含有するZn合金めっき層を有し、該めっき層におけるNiの付着量が35mg/m 2 以上、かつめっき層におけるAlの付着量(mg/m2)が、鋼板のP含有量(質量%)と下記関係を満たすことを特徴とする耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
−862.5×P+216.25≦Al≦−1850×P+438 ・・・(I)
(2)めっき層におけるNiの付着量(mg/m2)が、鋼板のP含有量(質量%)と下記関係を満たすことを特徴とする(1)に記載の耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
625×P+37.5≦Ni≦1275×P+174.5 ・・・(II)
(3)鋼板のSi含有量が0.05質量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明によって、P添加極低炭素鋼板を原板とする、耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明では原板にSi等特殊元素を多量に添加することなく良好な特性を得ることができる。
鋼板のP含有量とめっき層Al付着量の好ましい関係を示した図である(めっき層Ni付着量は35〜400mg/m2のもののみを記載) 鋼板のP含有量とめっき層Ni付着量の好ましい関係を示した図である(めっき層Al付着量は(I)式の関係を満たすもののみを記載)
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明において、%は質量%を、付着量は片面あたりの付着量を表すものとする。
本発明のP添加極低炭素鋼板については、C:0.01%以下、より好ましくは0.005%以下であり、更に、Ti、Nbを単独または複合で0.01〜0.1%添加したものが用いられる。Pは0.02%〜0.1%とする。0.02%未満では強度が不足しやすく、また0.1%超では強度が上昇しすぎることがあるからである。Siについては、0.1%以下、より好ましくは0.05%以下とする。下限は特に限定されないが、現在の製鋼技術においては0.001%未満とするのは困難である。このように少ないSi添加量であっても良好な耐チッピング性が得られるのが本発明の特徴でもある。Siの0.1%を超えての添加は性能悪化やコスト増加の要因となり、特にTi,P添加の極低炭素鋼板においてはパウダリング性の悪化や外観の悪化を引き起こすことがある。
上記した以外の元素については特に限定されず、現在の製鉄技術における不可避的不純物レベルであっても、また積極的に添加したものでも構わない。以下にその一例を述べる。
Mnは鋼の強度を高める元素であって、過剰に含有すると強度が上昇しすぎて加工性が低下するので、上限は3%とするのが好ましい。一方0.01%未満とするためには精練コストが多大となるので下限は0.01%とするのが好ましい。より高い加工性を確保する上で、Mnは0.01〜1%とするのが好ましい。
Sは鋼の熱間加工性や耐食性を低下させる元素であるから少ないほど好ましく、上限は0.02%程度とするのがよい。一方0.0001%未満とするためには精練コストが多大となるので下限は0.0001%とする。より高い加工性を確保する上で、またコストの点で、Sは0.001〜0.015%とするのが好ましく、0.001〜0.01%とするのが更に好ましい。
Alは鋼の脱酸元素として0.0005%以上を含有させることが望ましいが、過剰に含有すると加工性を損なうので、上限は0.1%程度とするのがよい。より高い加工性を確保する上で、Alは0.001〜0.05%とするのが好ましい。
Nは鋼の熱間加工性や加工性を低下させる元素であるから少ないほど好ましく、上限は0.004%程度とするのがよい。一方0.0001%未満とするためにはコストが多大となるので下限は0.0001%程度とするのがよい。より高い加工性を確保する上で、またコストの点で、Nは0.0005〜0.003%とするのが好ましい。
本発明においては、2次加工性等の改善を目的として、鋼中にさらに付加成分として、Bを添加することもできる。ただしBは極微量でも加工性を低下させやすいため、その上限は0.002%、より好ましくは0.0015%とするのがよい。
本発明においては、鋼中に更にCu、Ni、Cr、Sn等のいわゆるトランプ元素が不可避的不純物として含まれてもよい。その際、加工性の点で、Cuは0.2%以下、好ましくは0.1%以下、Ni、Cr、Snは0.1%以下、好ましくは0.05%以下とするのがよい。
本発明の合金化溶融亜鉛めっきのめっき層は、Fe含有率が8〜13質量%であって、さらにAl,Niおよび不可避的不純物を含有したZn合金めっき層である。Fe含有率が8質量%未満では、未合金のため塗装後耐食性が不良となり、またζ相が多いために摺動性が不良となって加工時にフレーキングを起こす。Fe含有率が13質量%を越えると、パウダリング性が劣化する。自動車用鋼板として用いる場合には、めっき層の付着量が30g/m2以上、60g/m2以下であることが好適である。30g/m2未満では耐食性が不足する。60g/m2超ではスポット溶接時の連続打点性が低下する。
めっき層の付着量は、公知の方法にて(例えばインヒビターを添加した5%HCl水溶液への浸漬処理)めっき層のみを溶解し、溶解前後の重量測定から付着量を求めることができる。また、前述の方法での溶解液をICP発光分析することにより、めっき層に含まれるFe、Al、Niを測定し、Fe含有率やAl、Ni付着量を測定することができる。
良好な耐チッピング性を得るためのめっき層中のAl量は、鋼板のP含有量に応じて最適範囲が変化する。この関係を明らかにするため、C:0.002%、Mn:0.3%、Si:0.01%、S:0.01%、Ti:0.04の成分に0.02〜0.1%の範囲でPを添加した鋼板を用い、焼鈍の後Niプレめっきを施し、溶融亜鉛めっき、合金化処理を施し、サンプルを作製して耐チッピング性の評価を、後述の実施例に記載した方法で行った。
図1に良好な耐チッピング性の得られるAl量の範囲を示す。P含有量の増加によって、適正なAl量が低下するという特徴がある。本系におけるめっき層中のAl量の多寡は、亜鉛めっき浴内反応における初期合金層中のAl量の多寡に大きく影響されるが、初期合金層中のAl量が多いということは、合金化に対するバリア作用が強く、アウトバースト等の不均一合金化反応の抑制効果が強いことを意味する。一方鋼中のPは、主にその粒界に存在し、粒界の活性度を下げることで、アウトバースト等の不均一合金化反応を抑制するとされており、Alのバリア作用とPの不均一合金化抑制作用が複合すると、合金化の進行が極めて均一となり、鋼板−めっき界面の凹凸が小さくアンカー効果が不足して耐チッピング性が低下するものと推定される。そのため、鋼板中のP含有量が高くなるほど、めっき層中のAl含有量許容上限が低くなる。そして、Al量の適正範囲上限は鋼中のP含有量と以下関係式右辺の不等式で表せることが判明した。ここでAl量の単位はmg/m2、P添加量は質量%である。即ち、下記(I)式上限を超えると、界面のアンカー効果が低下し、チッピング性が低下する。
一方、Al量が(I)式下限未満では、バリア作用が弱く、不均一合金化に伴うΓ層等のもろい層が増加し、結果としてチッピング性が悪化する。
−862.5×P+216.25≦Al≦−1850×P+438 ・・・(I)
前述した、鋼板−めっき界面に適度な凹凸を形成してアンカー効果を発揮し、かつ不均一合金化に伴うΓ層等のもろい層を抑制することで、チッピング性が改善されるという効果は、めっき層にNiも含有させたうえで、(I)式を満足することによって得られるものである。Niを含有しないと良好な特性のめっき層を得ることができない。Ni付着量が35〜400mg/m2の範囲内であればこのような効果を享受することができる。
めっき層中のNi量の耐チッピング性への影響は顕著ではなかったが、100〜200mg/m2の範囲は特に良好であった。
めっき層中のNi量は、外観均一性およびチッピング後の耐食性に影響した。この関係を図2に示す。ここでは、先のデータでAl量が本発明の範囲を満たすもののみを抽出し、外観均一性およびチッピング後の耐食性を、後述の実施例に記載した方法で評価したものである。後述の実施例における評価基準において、外観均一性とチッピング後の耐食性が両方とも「◎」のものを◎と表示し、少なくとも一方が「○」のものを○と表示した。一方又は両方が「×」と評価されたものはなかった。図2において、Ni量が低い側に出現した「○」はチッピング後の耐食性が「○」と評価されたものであり、Ni量が高い側に出現した「○」は外観均一性が「○」と評価されたものである。図2から明らかなように、P含有量の増加によって、適正なNi量が増加するという特徴がある。Ni量が低すぎる場合、チッピング後の耐食性が低下する傾向がある。前述のように鋼中P含有量増加に伴い適正Al量が低下するため、Al低下による耐食性低下をNi増加により補うことができる。一方Ni量が高すぎる場合、Alのバリア作用を弱め目視レベルでの不均一合金化が進行しやすくなる結果として外観の不均一が顕在化する。P含有量が高い場合には、不均一合金化が進行しにくいためNi量をより多くすることができる。Ni量の適正範囲は鋼中のP含有量と以下関係式で表せることが判明した。ここでNi量の単位はmg/m2、P含有量は質量%である。
625×P+37.5≦Ni≦1275×P+174.5 ・・・(II)
上記のAl、Ni量を満たすプレNiめっき法における製造条件を以下に述べる。本発明のP添加極低炭素鋼板を原板として、前述の様なAl,Ni付着量条件を満たすための最適条件は、従来の製造条件とはやや異なっている。また、本発明においては、原板のP含有量に応じて、プレNiめっき付着量、溶融亜鉛めっき浴中Al濃度、浴への侵入板温等の最適範囲が変化するため、これらを最適化する必要がある。
プレNiめっき付着量については、0.2〜0.7g/m2の範囲が好適であり、原板P含有量、および後述する亜鉛めっき浴中Al濃度、浴への侵入板温に応じて調整する必要がある。基本的には、P含有量が高いほど、浴Al濃度が高いほど、侵入板温が高いほど、プレNiめっき付着量は高く設定するのがよい。プレNiめっきの条件は特に限定されず、公知の方法が適用できる。
溶融亜鉛めっき浴中Al濃度については、0.18〜0.25%が好適であり、更に好ましくは0.2〜0.22%である。浴Al濃度についても、原板P含有量、およびプレNiめっき付着量、浴への侵入板温に応じて最適範囲は変化するが、実際の操業において、浴Al濃度を原板に応じて調整するのは現実的ではないことから、前述の範囲に設定したうえで、他の操業パラメーターによって調整するのがよい。溶融亜鉛めっき浴中には、Ni,Feを含有させても良いが、ドロス抑制の観点から、Niは0.06%程度以下、Feは0.02%程度以下とするのがよい。
溶融亜鉛めっき浴温は特に限定されず、融点近傍(420℃程度)〜500℃程度の通常の条件が用いられる。
プレNiめっきを行った鋼板を無酸化または還元雰囲気にて加熱したのち前述の溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する。この際の侵入板温は460〜550℃、好ましくは470℃〜520℃とする。このように高めの侵入板温とすることがP添加極低炭素鋼板を原板とした場合に適正なめっき層を得るために重要である。侵入板温についても、原板P含有量、およびプレNiめっき付着量、浴中Al濃度に応じて最適範囲は変化する。侵入板温が高いほど、めっき層中のAl付着量、Ni付着量とも低下する傾向がある。また侵入板温を浴温より高くすることも、Al,Niの付着量調整をしやすく好適である。特に侵入板温−浴温度を20℃以上とするのがよい。
以上のように、P添加極低炭素鋼板を原板とする本発明においては、浴Al濃度を比較的高く設定したうえで、侵入板温を従来よりも高め、この条件でAl,Ni付着量が所定条件に入るようにプレNiめっき付着量を調整するのがよい。
めっき後には、ワイピングにより目付け調整を行い、更に加熱合金化処理によって合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。これら条件は特に限定されず公知の方法が適用できる。さらにその後、調質圧延で粗度調整を行ったり、潤滑後処理を行うなど、公知の方法が適用できる。
表1に、供試した冷延、焼鈍済みの極低炭素鋼板の成分を示す。供試材をNaOH 50g/l、65℃のアルカリ水溶液中に10s浸漬して脱脂したのち、H2SO4 100g/l、30℃の水溶液中に5s浸漬して酸洗した。そして、Niめっき浴(浴温60℃、硫酸Ni六水和物:300g/l、ほう酸:40g/l、硫酸Na:100g/l)を用いて電流密度30A/dm2にて、各種付着量のNiプレめっきを行った。これを4%H2−N2雰囲気中で50℃/sの昇温速度で所定の侵入板温まで加熱し、ただちに所定の浴組成、浴温の溶融亜鉛めっき浴に浸漬した。亜鉛めっき浴は所定の濃度のAlを含み、更に不純物として、0.01〜0.02%のFeと、0.005〜0.04%のNiを含んでいた。浸漬時間は2.5〜3.5sであった。浴から出したあと、ワイピングで目付けを制御し、ただちに合金化した。昇温速度は50℃/s、合金化温度は、530〜580℃の間で調整し、均熱時間無しで、5℃/sで15〜20s徐冷ののち、25℃/sで5〜7s冷却した。このようにして、目付量50g/m2、Fe%が11%の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。その後、0.3%の調質圧延を行った。
(評価)
・めっき層のAl,Niは、インヒビターを添加した5%HCl水溶液でめっき層のみを溶解し、溶解液をICP発光分析することにより測定した。
・前記で定量したAl、Ni付着量が、(I)式、(II)式を満足するかどうか確認し、(I)式、(II)式ともに満たすものを「◎」、(I)式のみ満たすものを「○」、(I)式を満たさないものを「×」と評価した。
・耐チッピング性:70mm×150mmに切出し、自動車用の脱脂、化成、3コート塗装を行った。−20℃に冷却保持した状態で、砕石(0.3〜0.5g)をエアー圧2kgf/cm2で垂直に照射した。1サンプルにつき10個の石を照射した。各水準N5実施し、合計50個のチッピング痕を観察し、その剥離界面の位置によって評価した。剥離界面がめっき層より上(めっき−化成皮膜の界面、または電着塗装−中塗塗装の界面)のものを「○」、めっき−地鉄での界面剥離が1つでもあるものを「×」と評価した。
・耐パウダリング性:供試材を50mm×200mmに切り出し、防錆油を塗油したのち、荷重400kgf(約3922.66N)でドロービード試験を行った。ビード通過による曲げ−曲げ戻しの加工を受けた部位をテープ剥離して、テープの黒化度を測定した。黒化度が4未満のものを「○」、4以上のものを「×」と評価した。
・チッピング後耐食性:前記の方法で試験したチッピング後サンプルを用い、JASO M609−91法により腐食促進試験を行った。赤錆発生のサイクル数で評価した。15サイクルで赤錆発生ないものを「◎」、10サイクルで赤錆発生ないものを「○」、10サイクル未満で赤錆発生したものを「×」と評価した。
・外観均一性:目視観察を行い、均一でムラの全くないものを「◎」、目視では軽微に見えるが塗装すると完全に見えなくなるものを「○」、塗装後もムラの見えるものを「×」と評価した。
Figure 0006089895
Figure 0006089895
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表2に本発明の実施例を、また表3に比較例を示す。鋼中のP含有量とめっき層中のAl付着量が(I)式の関係を満たすものは、チッピング試験において、めっき−地鉄界面からの剥離がなく、耐チッピング性が良好であり、また耐パウダリング性も良好であった。一方(I)式の関係を満たさない比較例においては、めっき−地鉄界面からの剥離が発生し、耐チッピング性が劣っていた。更に(I)式、(II)式ともに満たすものは、チッピング後の耐食性や外観均一性がよりいっそう優れていた。
本発明によって、P添加極低炭素鋼板を原板とする、耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明では原板にSi等特殊元素を多量に添加することなく良好な特性を得ることができるものであり、自動車用の防錆鋼板として有用である。

Claims (3)

  1. 質量%でSiが0.1%以下であり、Pを0.02%〜0.1%含有する極低炭素鋼板の少なくとも片面に、Fe含有率が8〜13質量%であって、さらにAl,Niおよび不可避的不純物を含有するZn合金めっき層を有し、該めっき層におけるNiの付着量が35mg/m 2 以上、かつめっき層におけるAlの付着量(mg/m2)が、鋼板のP含有量(質量%)と下記関係を満たすことを特徴とする耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
    −862.5×P+216.25≦Al≦−1850×P+438
  2. めっき層におけるNiの付着量(mg/m2)が、鋼板のP含有量(質量%)と下記関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
    625×P+37.5≦Ni≦1275×P+174.5
  3. 鋼板のSi含有量が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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