JP2009091627A - 銅合金線材の製造方法、銅合金線材および銅合金線材の製造装置 - Google Patents
銅合金線材の製造方法、銅合金線材および銅合金線材の製造装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】析出強化型の銅合金の溶銅中に銅合金の種線を浸漬させて鋳塊を得る鋳造工程と、該鋳造工程により得られた前記鋳塊を圧延する圧延工程とを連続的に行う連続鋳造圧延工程により銅合金線材を得る銅合金線材の製造方法であって、前記圧延工程の中間または前記圧延工程の直後における前記銅合金線材を焼入れ処理する銅合金線材の製造方法、銅合金線材およびその製造装置を提供する。
【選択図】図1
Description
一方、析出強化型銅合金、例えばコルソン合金は、中間温度脆性が顕著な合金であることは公知であり、このため鋳造での割れを回避する必要があることが指摘されている。そしてまた、熱間圧延する前の加熱条件にも十分な考慮が必要である。
そのために、コルソン系合金の線材製造に当たっては、低速鋳造や極めて精密な冷却制御によって鋳塊を半連続鋳造にて製造し、その鋳塊を昇温速度などの制御を行い、熱間加工を施しているのが現状である。
また、銅合金中に不可避的に含まれる硫黄(S)は中間温度脆性を助長する為に、銅合金中にMg、Mn、Znなどを微量に添加することによりSの安定化を行い、中間温度脆性を防いでいる。
また、移動鋳型を用いてコルソン系銅合金線材の製造を試みることが提案されているが、焼入れが低温化することで析出が進行し、銅合金線材での導電率が高くなっている。このことは、時効工程での強度向上に寄与する微細析出に必要なNiやSiが不足するために、本来の性能が出せないことを意味する。この現象を改善するためには、圧延後の銅合金線材について高温・長時間で溶体化処理を施すことが必要となってしまい、大幅なコスト・アップに繋がるという問題があった。
また、コルソン系合金の他の析出強化型銅合金を用いた銅合金線材の製造方法に関しても、上記課題はほぼ同様に発生することがわかってきている。
ところで、析出強化型銅合金を用いて銅合金線材を製造するに際し、前述の特許文献1〜3に記載された技術事項によっては上記課題を解決することができず、新たな解決手段が求められている。
そこで本発明は、析出強化型銅合金線材(例えばコルソン系合金線材)の製造速度を高くし、コストが大幅に低減できる製造方法を提供することを課題とする。また、合金中への硫黄(S)の混入を回避して、さらに製造速度の改善を図るものである。
なお、本明細書において、鋳造工程後圧延工程前の銅合金材料を「鋳塊」と定義し、鋳造工程、圧延工程および焼入れが終了した銅合金材料を「銅合金線材」と定義する。また、「鋳塊」から「銅合金線材」が得られるまでの銅合金材料を、便宜上「銅合金線材の中間材」ということがある。
(1)析出強化型の銅合金の溶銅中に銅合金の種線を浸漬させて鋳塊を得る鋳造工程と、該鋳造工程により得られた前記鋳塊を圧延する圧延工程とを連続的に行う連続鋳造圧延工程により銅合金線材を得る銅合金線材の製造方法であって、前記圧延工程の中間または前記圧延工程の直後における前記銅合金線材を焼入れ処理することを特徴とする銅合金線材の製造方法。
(2)前記銅合金の溶銅が、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(3)前記銅合金の溶銅が、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(4)前記銅合金の溶銅が、NiとCoとを合計で1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(5)前記銅合金の溶銅が、NiとCoとを合計で1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(6)前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜15.0質量%、Snを0.5〜4.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(7)前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜15.0質量%、Snを0.5〜4.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(8)前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜5.0質量%、Tiを0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(9)前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜5.0質量%、Tiを0.1〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)項記載の銅合金線材の製造方法。
(10)前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(11)前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、PおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)項記載の銅合金線材の製造方法。
(12)前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%、Zrを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(13)前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%、Zrを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、PおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(14)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Pを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(15)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Pを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(16)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Znを1.0〜10.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(17)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Znを1.0〜10.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、P、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(18)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Siを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(19)前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Siを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、P、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、前記(1)記載の銅合金線材の製造方法。
(20)前記銅合金の溶銅に種線を浸漬させた後300秒以内に前記鋳造工程および前記圧延工程を完了させ、かつ前記銅合金線材の中間材を400℃以上の温度で焼入れすることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
(21)前記銅合金の原料銅をシャフト炉、反射炉若しくは誘導炉で溶解し、脱酸・脱水素処理を行い、その後合金元素成分を添加し、前記銅合金の溶銅とすることを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
(22)前記焼入れ前の前記銅合金線材の中間材を前記圧延工程で加熱することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
(23)前記種線中の析出物を前記連続鋳造圧延工程で高温化して溶体化処理することを特徴とする、前記(1)〜(22)のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
(24)前記種線を構成する銅合金は、前記溶銅を構成する銅合金と実質的に同一の組成を有することを特徴とする、前記(1)〜(23)のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
(25)析出強化型の銅合金が連続鋳造圧延されて製造される銅合金線材であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で製造されることにより、前記銅合金線材の表面側に前記析出強化型の銅合金の溶銅に由来する成分を有し、前記銅合金線材の中心側に前記銅合金の種線に由来する成分を有することを特徴とする銅合金線材。
(26)析出強化型の銅合金の溶銅中に種線を浸漬させて鋳塊を得る鋳造装置と、前記鋳塊を圧延する圧延装置とを有する銅合金線材を得る銅合金線材の製造装置であって、前記圧延装置による圧延工程の中間工程又は圧延装置の後工程に、焼入れ処理装置を設けたことを特徴とする銅合金材の製造装置。
本発明によれば、ほぼ溶体化状態の銅合金線材が得られ、従来必須であった溶体化処理を省くことができ、かつ、時効工程で十分な金属間化合物の析出が可能となる。
本発明によれば、析出強化型合金で形成された線材に対して、溶体化のための熱処理を別途施すことなく、鋳造工程と圧延工程とを連続的に行う連続鋳造圧延機を用いて溶体化状態の銅合金線材を製造でき、その後析出硬化した析出強化型合金線材を短時間に大量かつ低コストで製造できる。
本発明によれば、断線・ブリスター・溶接不良などの不具合の発生を回避することができる。
本発明の製造方法により得られる線材はコルソン系銅合金等の析出強化型合金からなる。例えば、コルソン系銅合金は、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素を含有するものが一般的である。
Niの含有量を1.0〜5.0質量%に規定する理由は、強度を向上させるため、及び後述するように、連続鋳造圧延工程のうち圧延工程の中間または圧延工程の直後の銅合金線材の中間材について焼入れを行った場合に溶体化処理後の状態(溶体化状態)若しくはそれに近い状態の銅合金線材を得られるようにするためである。1.0質量%未満では十分な強度が得られず、5.0質量%を超えると、圧延工程の中間または圧延工程の直後に焼入れを行っても溶体化状態若しくはそれに近い状態にすることが困難となる。Niの含有量は、好ましくは1.5〜4.5質量%、より好ましくは1.8〜4.2質量%である。
また、Siを0.25〜1.5質量%に規定する理由は、Niと化合物を形成して強度を向上させること、及び上記Niと同様に、圧延工程の中間または圧延工程の直後の銅合金線材の中間材について焼入れを行った場合に溶体化状態若しくはそれに近い状態の銅合金線材を得られるようにするためである。0.25質量%未満では十分な強度が得られず、1.5質量%を超えると、圧延工程の中間または圧延工程の直後に焼入れを行っても溶体化状態若しくはそれに近い状態にすることが困難となる。Siの含有量は、好ましくは0.35〜1.25質量%、より好ましくは0.5〜1.0質量%である。
さらにまた、前記の銅合金は、上記Niの含有量の一部あるいは場合によっては全部をCoに代えてもよい。この場合、NiとCoは合計で1.0〜5.0質量%(好ましくは1.5〜4.5質量%、より好ましくは1.8〜4.2質量%)含有される。Coは、Siとの化合物形成の点でNiと同様の作用効果を示し、強度向上に寄与するものである。これらの元素を添加することで時効処理後の線材の特性改善が図れるが、基本的には圧延工程の中間または圧延工程の直後の焼入れ温度に着目することで、例えば、時効処理後の機械的特性(強度)等の性能を制御できることが判明した。
本発明の銅合金線材の製造方法について、図面を参照して、本発明に係る実施形態の種々の例について説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施形態および各実施例において、特に断りのない限り、種線を構成する銅合金の組成と、溶銅を構成する銅合金の組成とは実質的に同一であるものとする。
図1は本発明で採用するディップ・フォーミング・プロセスにおける連続鋳造圧延装置の一例の概略図である。
図1に示すように、電気炉(1)において原料銅を1090〜1150℃で溶解させ、溶銅を溶解炉(1)から樋(2)を通して保持炉(溝型誘導炉若しくは坩堝型誘導炉)(3)へ出湯させた後、保持炉(3)内において1100〜1200℃で滞留させながら、保持炉(3)内の溶銅を、樋(4)を通して誘導加熱炉(5)へ移送する。その後、保持炉(3)若しくは誘導加熱炉(5)にて、添加装置(6)から合金元素成分を固体若しくは液体で添加して、所定の合金組成となるように調整し、溶融させる。
この種線の周囲に凝固した鋳塊の温度をできるだけ低下させない状態(好ましくは900℃以上)で、連続熱間圧延機例えば圧延ロール(10)(2方ロール方式、好ましくは3方ロール方式)で所定の線径まで圧延を行い銅合金線材の中間材が得られる。連続鋳造圧延工程については、種線を溶銅内に浸漬した後300秒以内に鋳造工程および圧延工程を完了させるのが好ましい。このようにして得られた銅合金線材、典型的には、前記圧延工程の中間または前記圧延工程の直後における前記銅合金線材の中間材、例えば、圧延工程終了直後の銅合金線材(例えば線径φ8mm)を、600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上の温度から、好ましくは200℃以下に急冷して焼入れを施す。具体的には図示するように焼入れは、連続圧延機の後方に位置する冷却装置(11)(例えば水冷装置)で、金属間化合物が析出しない冷却速度で急冷することにより行う。なお、冷却装置は連続圧延機の中間に設置されていてもよい。本発明の製造方法によれば、ほぼ溶体化状態の銅合金線材を製造することができ、従来の製造方法で必須であった溶体化処理(例えば、900℃で30分保持などの熱処理工程)を省くことができ、かつ、時効工程で十分な金属間化合物の析出が可能となる。上記の冷却速度は、好ましくは100℃/sec以上である。
図2に示す装置は、図1の溶解炉が溝型電気炉ではなく、坩堝型誘導炉(12)であり、原料には電気銅以外の工程転回屑などを使用するものである。スクラップを使用する為により積極的に脱酸・脱水素を図る回転脱ガス装置ユニット(13)を設けることが好ましい。
脱酸処理は、次のようにして行うことができる。図1に示す保持炉(3)内に予めガスバーナーなどで加熱させた木炭を投入し、保持炉下部のインダクターからの吐出流で積極的に撹拌することで脱酸を図る。さらに、回転脱ガス装置を用いてより積極的に溶銅を撹拌することで、脱酸が促進する。ここで溶銅中の酸素は粒状木炭と反応して、炭酸ガスとなり、除去される。
脱水素処理は、溶銅を、図1に示した非酸化ガス雰囲気に保持された樋(2)中を上下あるいは左右に迂回させながら通すことで非酸化ガスと接触させる、脱ガス手段によって行うことができる。さらに、回転脱ガス装置から溶銅内に吹き込まれた不活性ガス若しくは還元性ガスによって除去することが出来る。脱水素は、脱酸処理後に行っても、脱酸処理と同時に行ってもよい。
また、酸素との親和力のたいへん大きいSiを添加する際に予め溶銅中の酸素濃度を100ppm以下、好ましくは10ppm以下までに低減させることが必要である。何故なら、溶銅中の酸素とSiが反応し、添加材表面にSiO2を形成し連続溶解が阻害されることを回避するためである。
また、生産性を向上させる上で長時間の連続鋳造圧延が必要となるが、この皮剥きダイスの磨耗による皮剥き不安定が発生する。不安定な状態では上述の欠陥(断線・ブリスター・溶接不良)が発生する。この現象を早期発見するために、真空チャンバー(16)内に渦流探傷器(20)を設置するのがよい。
種線は、好ましくは直径6〜18mmの銅合金線を用いるが、これに制限されるものではない。
また、本発明によれば、鋳塊の小断面化が図れ、圧延機の小型化が達成できる。
表1に示す合金組成を有する銅合金溶湯と銅合金種線とを用いて、図1で表わしたディップ・フォーミング・プロセスを実現するための連続鋳造圧延装置により銅合金線材を製造した。圧延機については、表1の圧延機の欄に示す圧延ロール10を設けたものを使用した。銅合金線材の線径については、表1の線径の欄に表示の線径とし、ここでは線径が6〜10mmの範囲とした。鋳塊の直径は種線の直径の163%となるようにした。また、鋳塊の直径は、線径が6mmの場合は16.5mm、線径が8mmの場合は22mm、線径が10mmの場合は27.5mmとした。本発明の方法により製造したものをNo.1〜16に示す。焼入れ時の銅合金線材の温度(焼入れ温度)を表1の焼入れ温度の欄に示した。急冷は水中急冷により行い、冷却速度は150℃/secとした。また、焼入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.17〜23に示す。なお、No.2、7と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果が比較例としてNo.17、20に示されている。
ここで、本発明の方法により得られた銅合金線材の評価指標として、以下に説明する溶体化度を用いた。溶体化度は、
[溶体化度=(溶体化状態の導電率÷銅合金線材の導電率)×100]
の式により求めた。この式により求められる溶体化度は、時効処理後の銅合金線材の強度に関連する指標となる。
溶体化状態の導電率は、表1に示す各銅合金線材を、(固相線温度−10℃)の温度で1時間保持し、その後水中急冷を施したものを測定対象として、四端子法により測定した。また、銅合金線材の導電率は、上述の方法により得られた各銅合金線材を四端子法により測定した。これらの値に基づき、上記の式により溶体化度を求めた。
溶体化度が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上)であれば銅合金線材の製造後(時効処理前)に別途溶体化を施す必要がなく、70%以上であれば銅合金線材の要求特性によってはその製造後に別途溶体化を施す必要がなくなる場合があり、70%未満であれば銅合金線材の製造後に別途溶体化を施す必要が生じる。
なお、表1中の圧延機の2方、3方はそれぞれ2方ロール方式圧延機、3方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.1〜16はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、コルソン系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
図2に表わしたディップ・フォーミング・プロセスにより表2に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表2の圧延機の欄に示す圧延ロールをもつ各種連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。種線として直径15mmの銅線を用いた。本発明の方法により製造したものをNo.24〜35に示す。また、No.24、29、30と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.36〜38に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表2中に表記する。表2中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.24〜35はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu(−Ni)−Co−Si系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
図2に表わしたディップ・フォーミング・プロセスにより表3に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表3の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。種線として直径6mmの銅線を用いた。本発明の方法により製造したものをNo.39〜48に示す。また、No.39、42、43と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.49〜51に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表3中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.39〜48はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Ni−Sn系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表4に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表4の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。本発明の方法により製造したものをNo.52〜62に示す。また、No.52、55、56と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.63〜65に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表4中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.52〜62はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Ni−Ti系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表5に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表5の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。本発明の方法により製造したものをNo.66〜75に示す。また、No.66、68、69と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.76〜78に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表5中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.66〜75はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Cr系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表6に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表6の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。本発明の方法により製造したものをNo.79〜88に示す。また、No.79、81、82と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.89〜91に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表6中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.79〜88はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Cr−Zr系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表7に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表7の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。本発明の方法により製造したものをNo.92〜99に示す。また、No.92、94、95と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.100〜102に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表7中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.92〜99はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Fe−P系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表8に示す合金組成を有する銅合金を用いた以外は実施例1と全く同様にして表8の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する銅合金線材の製造を行った。本発明の方法により製造したものをNo.103〜111に示す。また、No.103、105、106と同じ組成をもつものにおいて焼き入れ温度を変えた結果を比較例としてNo.112〜114に示す。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表8中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
これに対し、本発明の方法により得られた線材No.103〜111はいずれも、溶体化処理をしていないにもかかわらず溶体化度が80%以上と高かった。したがって、本発明によれば、製造工程を短縮でき、Cu−Fe−Zn系合金線材を短時間かつ低コストで製造することができる。
表9に示す合金組成を有する銅合金を、表9の圧延機の欄に示す連続鋳造圧延機を使用して表示の線径を有する従来例としての銅合金線材の製造を行った。ここで、従来例の銅合金線材の製造工程が、本発明の実施例および比較例の銅合金線材の製造工程と異なる点は、(1)銅合金線材の中間材に対して焼入れを行わなかった点、(2)圧延工程終了直後の銅合金線材の中間材の温度がすべて250〜400℃の範囲内にあった点、の2点である。表9の焼入れ温度の欄には、焼入れを行わなかったため「****」を記入している。
なお、溶体化度、鋳造機、圧延機については、実施例1と同様に表中に表記する。表9中の圧延機の2方は2方ロール方式圧延機を表す。
2 樋
3 保持炉(誘導加熱炉)
4 樋
5 誘導加熱炉
6 添加装置
7 ポーラスプラグ
8 樋
9 フィルター
10 圧延ロール
11 冷却(水冷)装置
12 坩堝型誘導炉
13 回転脱ガス装置(ユニット)
14 シャフト炉
15 脱酸脱水素装置
16 真空チャンバー
17 皮剥きダイス
18 ガス吹付
19 回収器
20 過流探傷器
Claims (26)
- 析出強化型の銅合金の溶銅中に銅合金の種線を浸漬させて鋳塊を得る鋳造工程と、該鋳造工程により得られた前記鋳塊を圧延する圧延工程とを連続的に行う連続鋳造圧延工程により銅合金線材を得る銅合金線材の製造方法であって、前記圧延工程の中間または前記圧延工程の直後における前記銅合金線材を焼入れ処理することを特徴とする銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、NiとCoとを合計で1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、NiとCoとを合計で1.0〜5.0質量%、Siを0.25〜1.5質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜15.0質量%、Snを0.5〜4.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜15.0質量%、Snを0.5〜4.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜5.0質量%、Tiを0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Niを0.5〜5.0質量%、Tiを0.1〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、FeおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、PおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%、Zrを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Crを0.5〜2.0質量%、Zrを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、PおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Pを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Pを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、Zn、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Znを1.0〜10.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Znを1.0〜10.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、P、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Siを0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の溶銅が、Feを0.5〜5.0質量%、Siを0.01〜1.0質量%含有し、Ag、Mg、Mn、P、SnおよびCrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.02〜1.0質量%含有し残部がCuおよび不可避的な不純物元素から構成されることを特徴とする、請求項1記載の銅合金線材の製造方法、
- 前記銅合金の溶銅を前記移動鋳型に注湯した後300秒以内に前記鋳造工程および前記圧延工程を完了させ、かつ前記銅合金線材の中間材を600℃以上の温度で焼入れすることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記銅合金の原料銅をシャフト炉、反射炉若しくは誘導炉で溶解し、脱酸・脱水素処理を行い、その後合金元素成分を添加し、前記銅合金の溶銅とすることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記焼入れ前の前記銅合金線材の中間材を前記圧延工程で加熱することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記種線中の析出物を前記連続鋳造圧延工程で高温化して溶体化処理することを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
- 前記種線を構成する銅合金は、前記溶銅を構成する銅合金と実質的に同一の組成を有することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載の銅合金線材の製造方法。
- 析出強化型の銅合金が連続鋳造圧延されて製造される銅合金線材であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で製造されることにより、前記銅合金線材の表面側に前記析出強化型の銅合金の溶銅に由来する成分を有し、前記銅合金線材の中心側に前記銅合金の種線に由来する成分を有することを特徴とする銅合金線材。
- 析出強化型の銅合金の溶銅中に種線を浸漬させて鋳塊を得る鋳造装置と、前記鋳塊を圧延する圧延装置とを有する銅合金線材を得る銅合金線材の製造装置であって、前記圧延装置による圧延工程の中間工程又は圧延装置の後工程に、焼入れ処理装置を設けたことを特徴とする銅合金線材の製造装置。
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