以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。なお、以下では本発明の位置決め装置を露光装置に適用した例を説明するが、本発明の位置決め装置は、露光装置の他、工作機械や事務機器等にも適用されうる。位置決め装置は、例えば"ウエハステージ"のように"ステージ"と呼ばれることがある。位置決め装置としての"ステージ"は、可動体及びそれを移動させる機構を含む装置として把握することができる。しかし、一方で、"ステージ"は、"台"或いは"天板"のように、駆動機構によって駆動される可動体を意味するものとして使われることもある。この明細書では、ウエハステージ、Xステージ、Yステージ、微動ステージというように当分野で一般に可動体及びそれを移動させる機構を含む装置として認識されている"ステージ"については、位置決め装置の意味として用いるが、単に"ステージ"と表現する場合には、"台"或いは"天板"のような可動体を意味するものとして用いる場合がある。
図9は、露光装置の構成要素として好適なウエハステージ(位置決め装置)の構成を示す斜視図である。図10は、図9に示すウエハ天板周辺の斜視図である。図11は、図9に示すXステージの分解図である。露光装置は、典型的には、図9に一例を示すようなウエハステージの他、マスク(原版)を保持するマスクステージ(原版ステージ)、マスクに形成されたパターンを投影する投影系、マスクを照明する照明系等を含んで構成されうる。なお、電子ビーム等の荷電粒子ビームを用いる露光装置においては、マスクを使用する代わりに、電子ビームのオン・オフ(照射・非照射)でパターンを描画する方式がある。
図9に示すウエハステージは、XYステージと微動ステージとを組み合わせた構成を有する。
ベース定盤502上にYヨーガイド550が固定されている。Yヨーガイド550の側面とベース定盤502の上面とによってYステージ551がガイドされる。Yステージ551は、Yステージ551に設けられた不図示のエアスライドによりY方向に沿って滑動することができる。Yステージ551は、主に、2個のXヨーガイド552と、第1Yスライダ553と、第2Yスライダ554とで構成される。第1Yスライダ553は、その側面及び下面に設けられた不図示のエアパッドを介してYヨーガイド550側面及びベース定盤502上面と対面している。また、第2Yスライダ554は、その下面に設けられた不図示のエアパッドを介してベース定盤502上面と対面している。この結果、Yステージ551は、前述のように、Yヨーガイド550の側面とベース定盤502の上面でY方向に滑動自在に支持されることになる。
一方、Xステージ561は、主に、2枚のXステージ側板562と、Xステージ上板563と、Xステージ下板564とで構成され、Yステージ551のXヨーガイド552をX軸まわりに囲んでいる。Xステージ561は、不図示のエアスライドによりX方向に滑動自在に支持されている。Xステージ561は、Yステージ551の構成部材である2個のXヨーガイド552の側面とベース定盤502の上面とでガイドされる。Xステージ下板564はその下面に設けられた不図示のエアパッドを介してベース定盤502上面と対面し、2枚のXステージ側板562はその側面に設けた不図示のエアパッドを介してYステージ551の構成部材である2個のXヨーガイド552の側面と対面している。
Xステージ上板563の下面とXヨーガイド552の上面、及び、Xステージ下板564の上面とXヨーガイド552の下面は、非接触になっている。この結果、Xステージ561は、前述のように、2個のXヨーガイド552の側面とベース定盤502の上面でX方向に滑動自在に支持されることになる。
結果的に、Xステージ561は、Yステージ551がY方向に移動するときは共にY方向に移動し、Yステージ551に対してはX方向に移動可能であるため、XYの2次元に滑動自在となる。
この実施の形態では、XYステージ装置において、X方向駆動用に1個、Y方向駆動用に2個の多相コイル切り替え方式の長距離リニアモータ510X、510Yが用いられている。X方向駆動用の長距離Xリニアモータ510Xの固定子512XはYステージ551に設けられ、長距離Xリニアモータ510Xの可動子はXステージ561に設けられており、Xステージ561とYステージ551との間でX方向に駆動力を発生する。長距離Yリニアモータ510Yの固定子512Yは、ベース定盤502と一体的に設けられても良いし、ベース定盤502と振動的に独立した部材に設けられても良い。長距離Yリニアモータ510Yの可動子511Yは、連結板555を介してYステージ551と一体的に設けられている。これにより、Y方向駆動用の長距離Yリニアモータ510Yは、Yステージ551をベース定盤502に対してY方向に駆動する。
長距離リニアモータ510Xの固定子512Xでは、ストローク方向に並べた複数個のコイル513Xがコイル固定枠514Xによって保持されている。長距離リニアモータ510Yの固定子512Yでは、ストローク方向に並べた複数個の513Yがコイル固定枠によって保持されている。長距離リニアモータ510X、510Yの可動子511X、511Yは、磁極ピッチがコイル513X、513Yのコイルスパンに等しい4極の磁石をヨーク板の上に並べた構造体をコイル513X、513Yを挟むように対向させた箱形状を有する。長距離リニアモータ510X、510Yは、可動子の位置によって固定子のコイルに選択的に電流を流すことにより推力を発生する。
ウエハ天板501は、処理対象物であるウエハをチャックするウエハチャック571を有し、ウエハを並進X、Y、Z方向及び回転ωx、ωy、ωz方向の6自由度方向に位置決めすることができる。ウエハ天板501は、矩形の板状を有し、中央に窪み572が設けられ、窪み部分572にウエハを載置するためのウエハチャック571が設けられている。ウエハ天板501の側面にはレーザー干渉計のレーザー光(計測光)を反射するためのミラー529が設けられ、該干渉計によってウエハ天板501の位置が計測される。
次に、図10を参照しながら、Xステージ561の位置計測とウエハ天板501の位置計測について説明する。
Xステージ561の上板563の側面には、Xステージ561の位置計測を行うレーザー干渉計のレーザー光を反射するためのミラーが形成されている。レーザー干渉計538X、538Yは、X方向及びY方向からXステージ側面ミラー539にレーザー光を照射し、Xステージ561のXY方向の位置を精密に計測することができる。
ウエハ天板501の側面には、レーザー干渉計のレーザー光を反射するためのミラー529が設けられ、ウエハ天板501の位置を計測できるようになっている。ウエハ天板501には6本のレーザー光が照射され、ウエハ天板501の6自由度の位置が計測される。レーザー干渉計528X1、528X2は、X軸に平行でZ位置の異なる2本の干渉計ビームにより、ウエハ天板501のX方向の位置及びωy方向の回転量を計測する。また、レーザー干渉計528Y1、528Y2、528Y3は、Y軸に平行でX位置及びZ位置の異なる3本の干渉計ビームにより、Y方向の位置及びωx、ωz方向の回転量を計測する。Z位置計測器528Zは、ウエハチャック571に載置されたウエハに斜めに計測光を入射させ、この計測光の反射位置を計測することにより、ウエハのZ方向の位置(或いはウエハ天板のZ方向の位置)を計測する。
以上のように、Xステージ561及びウエハ天板501の位置は、別個に計測することができる。
次に、図11を参照しながら、Xステージ561とウエハ天板501との間で駆動力を発生する微動アクチュエータユニットについて説明する。
ウエハ天板501の下方には、図9に示すように、ウエハ天板501に推力や吸引力を作用させる際の基準となるXYステージ(Xステージ及びYステージで構成されるステージ)が配置されている。
ウエハ天板501の下面には、8個の微動リニアモータ可動子504(504X1、504X2、504Y1、504Y2、504Z1〜504Z4)が取り付けられている。各可動子504は、厚み方向に着磁された2極の磁石574及びヨーク575で構成される構造体を2組み有している。この2組の構造体が互いに対面するように側板576で連結されて箱状の構造が形成され、微動リニアモータ固定子505(505X1、505X2、505Y1、505Y2、505Z1〜505Z4)を非接触で挟み込む。
8個の可動子504のうちの4個の可動子504Z1〜504Z4は、矩形状天板501の4辺のそれぞれのほぼ中央部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してZ方向に微動駆動するためのZ可動子504Zを形成する。Z可動子504Zにおいては、2極の磁石574ZがZ方向に沿って配列されており、Z固定子505Z1〜505Z4の長円コイル578Z1〜578Z4に流れる電流と相互作用してZ方向の推力を発生する。これをZ1〜Z4可動子504Z1〜504Z4と名づける。
残りの4個の可動子504のうち矩形状天板の対角の隅部に配置される2個の可動子504X1、504X2は、ウエハ天板501をXステージ561に対してX方向に微動駆動するためのX可動子を形成する。X可動子504X1、504X2においては、2極の磁石574XがX方向に沿って配列されており、X方向に直角な直線部をもつX固定子505X1、505X2の長円コイル578X1、578X2に流れる電流と相互作用してX方向の推力を発生する。これをX1、X2可動子504X1、504X2と名づける。
残りの2個の可動子504Y1、504Y2もまた矩形状天板501の対角の隅部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してY方向に微動駆動するためのY可動子を形成する。Y可動子504Yにおいては、2極の磁石574がY方向に沿って配列されており、Y方向に直角な直線部をもつY固定子505Y1、505Y2の長円コイル578Y1、578Y2に流れる電流と相互作用してY方向の推力を発生する。これをY1、Y2可動子504Y1、504Y2と名づける。
また、矩形のウエハ天板501の下面のほぼ中央部には、円筒形状の磁性体支持筒580が設けられている。磁性体支持筒580の外周部には4つの円弧状の磁性体ブロック507(507X、507Y)が固定されている。これらのうち2個の円弧状磁性体ブロック507Xは、X方向の線上に磁性体支持筒580を挟んで配置され、やはりX方向の線上に磁性体支持筒580等を挟んで配置されたE形状電磁石508Xと非接触で対面し、E形状電磁石508XからX方向の大きな吸引力を受けられるようになっている。このようなX方向に沿って対向配置された円弧状の磁性体ブロック507XをX1、X2ブロックと名づける。ここで、1つの磁性体ブロック507Xとそれに対面する1つのE形状電磁石508Xとで1つの駆動ユニット(アクチュエータ)が構成される。
残りの2個の円弧状磁性体ブロック507Yは、Y方向の線上に磁性体支持筒580を挟んで配置され、やはりY方向の線上に磁性体支持筒580等を挟んで配置されたE形状電磁石508Yと非接触で対面し、E形状電磁石508YからY方向の大きな吸引力を受けられるようになっている。このようなY方向に沿って対向配置された円弧状の磁性体ブロック507YをY1、Y2ブロックと名づける。ここで、1つの磁性体ブロック507Yとそれに対面する1つのE形状電磁石508Yとで1つの駆動ユニット(アクチュエータ)が構成される。
円筒形状の磁性体支持筒580の中空部分には、自重補償ばね581が配置され、その上端がウエハ天板501の下面中央部と結合され、ウエハ天板501の自重を支持する。自重補償ばね581は、自重支持方向(鉛直方向)及び他の5自由度方向のばね定数が十分に小さく設計されており、ばね581を介してXステージ561からウエハ天板501への振動伝達をほぼ無視することができる。
X1、X2可動子504X1、504X2が発生する2つの力の作用線のZ座標は概ね一致している。X1、X2可動子504X1、504X2が発生する2つの力の作用線のZ座標は、X1、X2可動子504X1、504X2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜504Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体(可動体)の重心のZ座標と概ね一致する。したがって、X1、X2可動子504X1、504X2に発生するX方向の推力によっては、Y軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
Y1、Y2可動子504Y1、504Y2が発生する2つの力の作用線のZ座標は概ね一致している。Y1、Y2可動子504Y1、504Y2が発生する力の作用線のZ座標は、X1、X2可動子504Y1、405Y2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜405Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体(可動体)の重心のZ座標と概ね一致する。したがって、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2に発生するY方向の推力によっては、X軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
X1、X2ブロック507Xに作用する吸引力の作用線のZ座標は概ね一致している。X1、X2ブロック507Xに作用する2つの吸引力の作用線のZ座標は、X1、X2可動子504X1、504X2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体の重心のZ座標と概ね一致する。したがって、X1、X2ブロック507Xに作用するX方向の吸引力によっては、Y軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
また、X1、X2ブロック507Xに作用するX方向の2つの吸引力の作用線のX座標は、X1、X2可動子504X1、504X2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体(可動体)の重心のX座標と概ね一致する。したがって、X1、X2ブロック507Xに作用するX方向の吸引力によっては、Z軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
Y1、Y2ブロック507Yに作用する2つの吸引力の作用線のZ座標は概ね一致している。Y1、Y2ブロック507Yに作用する2つの吸引力の作用線のZ座標は、X1、X2可動子504X1、504X2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体の重心のZ座標と概ね一致する。したがって、Y1、Y2ブロック507Yに作用するY方向の吸引力によっては、X軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
また、Y1、Y2ブロック507Yに作用するY方向の2つの吸引力の作用線のX座標は、X1、X2可動子504X1、504X2、Y1、Y2可動子504Y1、504Y2、Z1〜Z4可動子504Z1〜Z4、磁性体支持筒580、4つの円弧状磁性体ブロック507、及び、ウエハ天板501を含む天板構造体の重心のX座標と概ね一致する。したがって、Y1、Y2ブロック507Yに作用するY方向の吸引力によっては、Z軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しない。
Xステージ上板563の上部には、ウエハ天板501を6軸方向に位置制御するための8個の微動リニアモータ(固定子504と可動子505で構成されるリニアモータ)503の固定子505(505X1、505X2、505Y1、505Y2、505Z1〜505Z4)、ウエハ天板501にXY方向の加速度を与えるための電磁石支持円筒583に支持された4個のE形電磁石508(508X1、508X2、508Y1、508Y2)、ウエハ天板501の自重を支持するための自重支持ばね581の一端が固定されている。
各固定子505は、長円形のコイル578(578X1、578X2、578Y1、578Y2、578Z1〜578Z4)をコイル固定枠506(506X1、506X2、506Y1、506Y2、506Z1〜506Z4)で支持する構造になっており、ウエハ天板501下面に固定されたリニアモータ可動子504(504X1、504X2、504Y1、504Y2、504Z1〜504Z4)と非接触で対面する。
8個の固定子505のうちの4個の固定子505Z(505Z1〜505Z4)は、矩形状のXステージ上板563の辺のほぼ中央部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してZ方向に微動駆動するためのZ固定子を形成する。Z固定子505Zは、長円コイル578Z(578Z1〜578Z4)の直線部がZ方向と直角になるように配置されており、Z可動子504ZのZ方向の線上に配置された2極の磁石574ZにZ方向の推力を作用させる。コイル578Z1〜578Z4をZ1〜Z4コイルと名づける。
残りの4個の固定子のうち2個の固定子505X(505X1、505X2)は、矩形状のXステージ上板563の対角の隅部に配置され、X固定子を形成する。X固定子505Xでは、長円コイル578X(578X1、578X2)の2つの直線部がX方向と直角になるように配置されており、X可動子504XのX方向の線上に配置された2極の磁石574XにX方向の推力を作用させる。コイル578X1、578X2をX1、X2コイルと名づける。
残りの2個の固定子505Y(505Y1、505Y2)も矩形状のXステージ上板563の対角の隅部に配置され、Y固定子を形成する。Y固定子505Yでは、長円コイル578Y(578Y1、578Y2)の2つの直線部がY方向と直角になるように配置されており、Y可動子504YのY方向の線上に配置された2極の磁石504YにY方向の推力を作用させる。このコイル578Y1、578Y2をY1、Y2コイルと名づける。
また、電磁石支持円筒583は、矩形状のXステージ上板563のほぼ中央部に配置され、電磁石支持円筒583の内部には4つのE形電磁石508(508X1、508X2、508Y1、508Y2)が設けられている。E形電磁石508は、Z方向から見たときに概ねE形の断面を有する磁性体ブロック585(585X1、585X2、585Y1、585Y2)と、コイル586(586X1、586X2、586Y1、586Y2)とを具備している。コイル585は、E形の中央の突起(歯)の周りに巻かれていれる。E形の3つの突起部の端面は、直線ではなく円弧になっている。このE形電磁石508の3つの突起部の端面は、ウエハ天板501に固定された円弧状磁性体ブロック507と数十ミクロン程度以上の空隙を介して非接触で対面し、コイル585に電流を流すことによって円弧状磁性体ブロック585に吸引力を作用するようになっている。
4個のE形電磁石508のうち2個は、X1、X2ブロック507Xに対面するようにX方向に沿って配置され、X1、X2ブロック507XにそれぞれX方向及び−X方向の吸引力を与える。これをX1X2電磁石508Xと名づける。
E形電磁石508のうち残りの2個は、Y1、Y2ブロック507Yに対面するようにY方向に沿って配置され、Y1、Y2ブロック507YにそれぞれY方向及び−Y方向の吸引力を与える。これをY1Y2電磁石508Yと名づける。
電磁石508は吸引力しか発生できないので、XYそれぞれの駆動方向について+方向に吸引力を発生する電磁石508と−方向に吸引力を発生する電磁石508を設けているのである。
また、磁性体ブロック507及びE形電磁石508の各々の対向面はZ軸まわりの円筒面とされ、4つの磁性体ブロック507と4つのE形電磁石508が、Z軸周り(ωz方向)に互いに接触することなく、自由に回転できる。つまり、ウエハ天板501とXステージ561が、ωz方向に相対移動可能となる。また、ωz方向に回転しても、E形電磁石508の端面と磁性体ブロック507との間の空隙に変化がなく、同一電流に対して電磁石508の発生する吸引力が変化しない。
図12は、図9〜図12を参照しながら説明したウエハステージを制御する制御系の構成例を示すブロック図である。
移動目標指示部521は、ウエハ天板501の6軸方向の位置等の目標値を位置プロファイル生成部522(522X、522Y、522Z、522ωx、522ωy、522ωz)と加速プロファイル生成部523(523X、523Y)に出力する。位置プロファイル生成部522は、目標指示部521からの目標値に基づいて、時間とウエハ天板501の位置との関係を、並進X、Y、Z方向及び回転ωx、ωy、ωz方向の6軸方向についてそれぞれ生成する。加速プロファイル生成部523は、目標指示部521からの目標値に基づいて、時間と発生すべき加速度との関係を、並進X、Y方向の2軸についてそれぞれ生成する。これらのプロファイルは、ウエハ天板501を剛体とみなしてその代表位置に対して与えられる。代表位置としては、ウエハ天板501の重心を用いるのが一般的である。
この実施の形態では、時間とウエハ天板501の重心位置及び重心周りの回転が時間の関数として位置プロファイル生成部522により与えられ、ウエハ天板501の重心のX、Y方向の加速プロファイルについては加速プロファイル生成部523により与えられる。
本実施形態では、Y軸方向のみ長距離移動するので、Y軸に関してのみ目標位置まで移動する位置プロファイルが与えられ、他の軸に関しては現在位置にとどまるよう一定値の位置プロファイルが与えられる。また、加速プロファイルもY軸は移動に伴う加減速パターンが加速プロファイル生成部により与えられ、移動のないX軸は常にゼロである。
6軸方向のウエハ天板501の重心位置及び重心周りの回転の位置プロファイル生成部522の出力は、微動リニアモータ503を制御する微動LM位置サーボ系に入力される。ここで、X位置プロファイル生成部522Xの出力とY位置プロファイル生成部522Yの出力は、Xステージ561をXY方向に移動させるXYステージの長距離リニアモータ510の電流をフィードバック制御する長距離LM位置サーボ系535にも入力される。
X加速プロファイル生成部523Xの出力とY加速プロファイル生成部523Yの出力は、電磁石508の吸引力をフィードフォワード制御する吸引FF系531に入力される。
微動LM位置サーボ系525は、差分器541と、演算部526と、出力座標変換部542と、微動電流アンプ群527と、ウエハ天板位置計測系528と、入力座標変換部543とを有する。差分器541は、位置プロファイル生成部522が出力するウエハ天板501の重心の現在のX、Y、Z、ωx、ωy、ωz位置(目標位置)とウエハ天板501の重心の実際のX、Y、Z、ωx、ωy、ωz位置(計測位置)との偏差を出力する。演算部526は、差分器541からの偏差信号に基づいて、PID等に代表される制御演算を施し、6軸分の駆動指令を計算する。出力座標変換部542は、6軸分の駆動指令をX1、X2、Y1、Y2、Z1〜Z4リニアモータ503に分配する演算を行い、その結果をアナログ電圧として出力する。微動電流アンプ群527は、該アナログ出力電圧に比例する電流をX1、X2、Y1、Y2、Z1〜Z4リニアモータ503に供給する。ウエハ天板501位置計測系528は、ウエハ天板501の概ね露光点のX、Y、Z、ωx、ωy。ωzの位置を計測するレーザー干渉計528等を備えた計測器を有する。入力座標変換部543は、ウエハ天板位置計測系からの信号に基づいて、ウエハ天板501の概ね露光点のXY、Z、ωx、ωy、ωzの位置をウエハ天板501の重心のX、Y、Z、ωx、ωy、ωz位置に換算する。
微動LM位置サーボ系525は、各軸ごとにみると、位置プロファイル生成部522の出力を指令値とする通常の位置サーボ系であるが、大推力が必要なときは、吸引FF系531から力をもらうようになっている。また、上述のように電磁石508の吸引力は、その作用線とウエハ天板501の重心を一致させることにより、ウエハ天板501に発生する回転力を小さくしている。そのため、微動リニアモータ503は、目標位置とのわずかな位置偏差を解消するための小さい推力を発生するだけでよいので、電流による発熱が抑えられている。また、ソフト的またはハード的にリニアモータの電流を制限して、吸引FF系531との連動が誤動作した場合でも発熱が問題になるような電流が流れないようにすることもできる。
吸引FF系531は、1対のX1、X2電磁石508XとX1、X2ブロック507Xとの間に加速プロファイル生成部523Xが出力に比例したX方向の合成推力を発生させるための制御系と、1対のY1、Y2電磁石508YとY1、Y2ブロック507Yとの間に加速プロファイル生成部523が出力に比例したY方向の合成推力を発生させるための制御系とを有する。各制御系は、補正部532(532X又は532Y)と、調整部533(533X又は533Y)と、1対の電磁石508のコイル586を各々独立に駆動する2つの電磁石用電流アンプ534(534X又は534Y)とを有する。
補正部532は、電磁石508の電流と推力の非線型関係を補正する。典型的には、補正部532は、符号を保存する平方根演算器として構成されうる。一般に電磁石の吸引力は電磁石の電流の二乗に比例する。要求される力は、加速プロファイル生成部523の出力に比例する力であるから、この出力の平方根をとってそれを電流指令とすれば、加速プロファイル生成部523の出力の平方根の2乗に比例する吸引力が働く。つまり、加速プロファイル生成部523の出力に比例した吸引力が働く。また、加速プロファイル生成部523の出力は、符号を含んでいるので、補正部532は、平方根演算を加速プロファイル生成部523の出力の絶対値に対して行い、演算後に符号を付加して調整部533に出力する。
また、調整部533は、1対の電磁石508を構成する各々の電磁石508と磁性体507との間に働く吸引力を調整し、両者の合力の大きさと方向を所望のものにする。電磁石508は電流の向きによらず磁性体507を吸引する力しか発生することができない。そこで、1対の電磁石508で磁性体507を挟み、各々の電磁石508で磁性体板に対して逆向きの力を発生するようにし、その2つの力を調整することで磁性体507に働く合力の大きさと方向を制御する。補正部532の出力の符号に基づいて、1対の電磁石508のうちのどちらに電流を与えるかを選択し、補正部532の出力に比例した値を電流アンプ534に供給し、他方の電磁石508の電流をゼロに制御する方式が最も簡単である。補正部532の出力がゼロの場合は、どちらの電磁石508の電流もゼロに制御される。以上の制御により、1対の電磁石508から磁性体507に対して、加速プロファイル生成部523の出力の大きさに比例した推力が所望の方向に付与される。
補正部532の出力がゼロのときに2つの電磁石508に等しいバイアス電流を流してもよい。これは電磁石508のBH曲線の動作中心において電流(すなわち磁界の強さ)と磁束密度の関係をより線形にする効果がある。この場合、補正部と調整部は一体となって、加速プロファイル出力に基づいて、2つの電磁石508に適当な電流を指令する動作をする。
具体的には、加速プロファイル生成部523の出力がプラス移動方向にVa、バイアス電流がIbのとき、プラス移動方向に吸引力を発生する電磁石508のコイル電流をIp、マイナス移動方向に吸引力を発生する電磁石508のコイル電流をImとすると、あらかじめ定めた比例定数Kに対して、
Va=K((Ip-Ib)^2-(Im-Ib)^2)
を満たすようなIp、Imを出力する(^2は2乗を意味する)。電磁石508の吸引力は、リニアモータのローレンツ力と比べて小さいアンペアターンで大きな推力を得ることができるので、リニアモータのみによるステージの加減速時の発熱と比較すると、電磁石の発熱はほとんど問題にならない。
また、ウエハ天板501が一定速度で走行している間は電磁石508の電流はゼロになるように制御される。このため、床振動等の外乱が電磁石508を通してウエハ天板501側に伝わることはない。この状態においては、微動リニアモータを用いてウエハ天板501の6軸方向の位置決めを高精度に制御する。
この実施の形態では、ウエハ天板501に連結された微動リニアモータ503及び電磁石508はストロークが短いので、そのままでは長距離にわたってウエハ天板501に力を付与することができない。そこで、ウエハ天板501に力を付与する基準となるXステージ561をXY方向に移動させながらウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させることにより、XY方向に関して長い距離にわたってウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させる。これを実現するために、長距離LM位置サーボ系525と、それに接続される2個のYリニアモータ510Y及び1個のXリニアモータ510Xが設けられている。
長距離LM位置サーボ系535は、X制御系とY制御系とを有する。X制御系は、1個のXリニアモータ510XによってXステージ561のX位置をX位置プロファイルにならうように制御する。Y制御系は、2個のYリニアモータ510YによってXステージ561及びYステージ551のY位置をY位置プロファイルに基づいて制御する。
長距離LM位置サーボ系535のX及びY制御系は、XまたはY方向の位置プロファイルと、Xステージ上板563の側面に構成された反射ミラーに照射される干渉計ビームにより計測されるXまたはY方向のXステージ561の現在位置との差分(偏差信号)を出力し、この偏差信号にPID等に代表される制御演算を施し、XまたはY方向の加速指令を計算し、これをXまたはYリニアモータ電流アンプ537を介してXリニアモータ510XまたはYリニアモータ510Yに出力する。
この結果、Yリニアモータ510Yは、Yステージ551、Xステージ561、及びウエハ天板501等の全体質量をY方向に加速するための推力を発生し、Xリニアモータ510Xは、Xステージ561及びウエハ天板501等の全体質量をX方向に加速するための推力を発生する。
この実施の形態では、加速プロファイル生成部522の出力を、長距離LM位置サーボ系535の制御演算器561(561X、561Y)の出力に加算してモータ電流アンプ537(537X、537Y)に提供することによって、加速度をフィードフォワード的に長距離リニアモータ510X、510Yに指令し、加速中に位置偏差がたまることを防止している。
この実施の形態では、加速プロファイルを吸引FF系531と長距離LM位置サーボ系535にフィードフォワード的に与えているが、これに加えて、微動LM位置サーボ系525にフィードフォワード的に与えるようにしてもよい。また、加速プロファイルをXY方向だけでなく6軸方向のすべてについて生成し、微動LM位置サーボ系525にフィードフォワード的に与えるようにしてもよい。
Xステージ561やウエハ天板501の加速終了後も、Xステージ561及びYステージ551はX位置及びY位置プロファイルに基づいて移動する。加速終了後は2個のYリニアモータと1個のXリニアモータはX1、X2、Y1、Y2の微動リニアモータが発生する推力の反力を発生しているだけである。
ここで、電磁石508X1、X2の発生する吸引力は、そのほとんどがX軸方向であり、電磁石508Y1、Y2の発生する吸引力は、そのほとんどがY軸方向(以下、これらを主方向と呼ぶことにする)である。しかしながら、これらの電磁石は、主に以下の2つの理由によりそれ以外の方向(以下、これらを従方向と呼ぶことにする)に対しても力を発生しうる。
第1に、ウエハ天板501と一体の天板構造体(可動体)の重心と、電磁石508の発生する吸引力の作用線とがずれている場合、天板構造体(可動体)の重心周りに回転方向の力が生じる。吸引力の作用線が可動体の重心を通ることが望ましいが、設計上の制約により作用線と重心とがずれることが避けられない場合もあり、その場合に上記のような回転力が生じてしまう。
第2に、電磁石508の発生する吸引力は、電磁石508と磁性体507との間隔により異なる。電磁石による吸引力は、一般に電磁石と磁性体の間隔の2乗に反比例し、間隔が狭いほど大きな力を発生する。
図13を参照しながら第2の理由を更に詳しく説明する。図13は、電磁石508及び磁性体ブロック507を模式的に示す図であり、(a)、(b)は上方から見た図、(c)、(d)は側方から見た図である。
主たる吸引力の発生方向(すなわち主方向)Aに対して、電磁石508の中心軸と磁性体ブロック507の中心軸とが横方向に相対的に位置ずれていた場合、電磁石508の左右においてE形断面磁性体ブロック585と磁性体ブロック507との間隔が不均一となるため、間隔が狭くなった方が大きな吸引力を発生する。そのため間隔が狭くなった方をさらに狭くするような横方向(すなわち従方向)Bの力が生じる。また、それと同時にわずかではあるが回転力も生じる。また、同様に、電磁石508の中心軸と磁性体ブロック507の中心軸とが平行でない場合も、間隔が狭くなった方をより狭くするような回転方向(すなわち従方向)Cに回転力を生じる。それと同時にわずかではあるが中心軸方向の並進力も生じる。このような従方向の吸引力の原因となる電磁石508と磁性体507との間隔の不均一は、組み立て誤差などの機械的要因によって生じうる他、ウエハ天板501を目標位置に駆動する際にも生じうる。後者について説明すると、電磁石508を駆動するのはウエハ天板501の加減速時であり、この時にウエハ天板501に大きな力が加わるため間隔変動や姿勢変動を生じやすい。
上記の従方向の力は、ウエハ天板501に対して外乱となるため、精度の悪化や整定時間の延びなどの性能悪化を引き起こす。
以下、このような従方向に発生する力を低減するための構成例を説明する。従方向の力は、例えば、吸引FF系(磁力による吸引機構についてのフィードフォワード制御系)531に従方向成分低減システムを組み込むことによって低減することができる。
[第1の実施の形態」
以下、第1の実施の形態として構成例1〜構成例4を説明する。
[構成例1]
図1は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531の第1の構成例を示すブロック図である。なお、図1において、従方向力低減システム600以外の構成は、図12に示す基本構成と同様である。この構成例では、従方向成分低減システム600は、X軸用の従方向成分補正部601XとY軸用の従方向成分補正部601Yを含む。
補正部532Xによって補正されたX軸の加速指令に基づいて従方向成分補正部601Xにより補正量が計算され、この補正量が加算器701YによってY軸の加速指令に加算される。同様に、補正部532Yよって補正されたY軸の加速指令に基づいて従方向成分補正部601Yにより補正量が計算され、この補正量が加算機701XによってX軸の加速指令に加算される。
典型的には、従方向成分補正部601X、601Yは、各軸の加速指令に対して適切な係数を乗じるだけでよい。これにより、組み立て誤差などにより、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔が初期状態あるいは定常状態で不均一となっている場合や、電磁石508の作用軸と天板構造体(ウエハ天板及びそれとともに移動する部材を含む構造体)の重心とがずれている場合において、簡単な構成で効果的に従方向成分を打ち消すことが可能となる。従方向成分補正部601X、601Yに設定する係数は、初期状態あるいは定常状態において各軸用の電磁石508を駆動し、その時に他の軸の方向に発生する力を計測することにより決定されうる。
[構成例2]
図2は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531の第2の構成例を示すブロック図である。この構成例は、従方向成分補正部601X、601Yにウエハ天板位置計測系528及び/又はステージ位置計測器538で計測したウエハ天板501及び/又はXステージ561の位置及び/又は姿勢に関する情報を提供する。従方向成分補正部601X、601Yがこのような位置情報を利用することにより、ウエハ天板501及び/又はXステージ561の位置変動及び/又は姿勢変動や加減速などにより電磁石508と磁性体ブロック507との間隔が変動した場合においても、より高精度に従方向成分を補正することができる。
この場合、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔と補正係数との関係を予め求めておく必要がある。ただし、吸引力は、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔の2乗に反比例するとともに、電磁石508に流れる電流の2乗に比例するため、典型的には、補正係数は、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔に対して、1次関数によって関係づけられる。
[構成例3]
図3は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531の第3の構成例を示すブロック図である。この構成例では、従方向成分補正部601X、601Yは、補正部532X、532Yで補正された加速指令の代わりに、電磁石508(508X1、508X2、508Y1、508Y2)に設けられた磁束計測器(磁束検出器)602(602X1、602X2、602Y1、602Y2)、例えばサーチコイルによって計測される磁束値を利用する。この構成例によれば、電磁石508によって実際に生じる吸引力を計測することができるため、より高精度な補正が可能となる。吸引力は磁束の2乗に比例するが、発生磁束は電流に比例するため、電流指令を求めるためには、1次関数による演算でよい。
[構成例4]
図4は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531の第4の構成例を示すブロック図である。この構成例は、第3の構成例の変形例であり、1つのユニット(1つの電磁石508及び1つの磁性体ブロック507)に対して複数の磁束計測器(磁束検出器)が設けられている。このような構成例によれば、従方向成分補正部601X、601Yは、複数の磁束計測器の出力を比較することにより、磁束の不均一性すなわち吸引力の不均一性を求めることができる。これにより、吸引力の従方向成分を直接的に求めることができ、より高精度な補正が可能となる。この構成例において、E型断面磁性体ブロック585の両端にサーチコイルを備えることにより、X方向用のユニット(電磁石508X及び磁性体ブロック507Xで構成されるユニット)においては、Y方向の従方向成分を計測することが可能となり、Y方向用のユニット(電磁石508Y及び磁性体ブロック507Yで構成されるユニット)においては、X方向の従方向成分を計測することが可能となる。
図11等に示されているように、この実施の形態のステージ構成では、吸引力を発生するユニットはX、Y方向にしか設けられていないため、これ以外のZ方向や回転方向に発生する成分については補償できない。しかし、これらの方向にも吸引力を発生するユニットを設けることにより、これらの方向の成分についても同様に補償することができる。磁束計測器に関しても、1ユニットに対して更に多くの磁束計測器を設けることにより、様々な方向の従方向成分を計測することが可能となる。
以上述べたように、電磁石と磁性体で構成される駆動ユニットが駆動方向以外の方向に発生する従方向成分を、該駆動ユニット以外の駆動ユニットを用いて打ち消すことにより、従方向成分によるウエハ天板等のステージの振動や変位を抑えることができ、位置決め時間を短縮したり、位置決め制御特性を向上させたりすることができる。
また、補正を行わない場合は、位置決め精度の向上や位置決め時間の短縮のために、アクチュエータの作用軸と天板構造体(ステージ)の重心を厳密に一致させたり、電磁石と磁性体との間隔が均一となるように、組み立て精度を上げたりする必要があるが、補正を行うことによりこれらの制約を緩和しても、位置決め精度や位置決め時間を維持することができる。
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態としての構成例1〜構成例4を説明する。この実施の形態は、従方向成分の補正のためにリニアモータを採用する。
[構成例1]
図5は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531及び微動LM位置サーボ系の第1の構成例を示すブロック図である。
補正部532Xによって補正される前のX軸の加速指令に基づいて従方向成分補正部601Xにより補正量が計算され、この補正量が微動LM位置サーボ系525の加算器710によって微動リニアモータの指令に加算される。同様に、補正部532Yよって補正される前のY軸の加速指令に基づいて従方向成分補正部601Yにより補正量が計算され、この補正量が微動LM位置サーボ系525の加算器701によって微動リニアモータの指令に加算される。
リニアモータの発生力は、電磁石と異なり、電流に比例する。そのため、補正前の加速指令を用いることにより、第1の実施の形態と同様に、従方向成分補正部601X、601Yは、各軸の加速指令に適切な係数を乗じるだけでよい。これにより、組み立て誤差などにより、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔が初期状態あるいは定常状態で不均一となっている場合や、電磁石508の作用軸と天板構造体の重心とがずれている場合に、簡単な構成で効果的に従方向成分を打ち消すことが可能となる。従方向成分補正部601X、601Yに設定する係数は、初期状態あるいは定常状態において各ユニット(電磁石508及び磁性体ブロック507で構成されるユニット)の電磁石を駆動し、その時に他の軸方向に発生する力を計測することにより求めることができる。
[構成例2]
図6は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531及び微動LM位置サーボ系の第2の構成例を示すブロック図である。この構成例は、従方向成分補正部601X、601Yにウエハ天板位置計測系528及び/又はステージ位置計測器538で計測したウエハ天板501及び/又はXステージ561の位置情報及び/又は姿勢情報を提供する。従方向成分補正部601X、601Yがこのような位置情報を利用することにより、ウエハ天板501及び/又はXステージ561の位置変動及び/又は姿勢変動や加減速などにより電磁石508と磁性体ブロック507の間隔が変動した場合においても、より高精度に従方向成分を補正することができる。
この場合、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔と補正係数との関係を予め求めておく必要がある。ただし、吸引力は、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔の2乗に反比例するとともに、電磁石508に流れる電流の2乗に比例するため、典型的には、補正係数は、電磁石508と磁性体ブロック507との間隔に対して、1次関数によって関係づけられる。
[構成例3]
図7は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531及び微動LM位置サーボ系の第3の構成例を示すブロック図である。この構成例では、従方向成分補正部601X、601Yは、補正部532X、532Yで補正された加速指令の代わりに、電磁石508(508X1、508X2、508Y1、508Y2)に設けられた磁束計測器602(602X1、602X2、602Y1、602Y2)、例えばサーチコイルによって計測される磁束値を利用する。この構成例によれば、電磁石508によって実際に生じる吸引力を計測することができるため、より高精度な補正が可能となる。ただし、吸引力は磁束の2乗に比例するため、磁束から電流指令を求めるためには、2次関数演算が必要となる。
[構成例4]
図8は、従方向成分低減システムが組み込まれた吸引FF系531及び微動LM位置サーボ系の第4の構成例を示すブロック図である。この構成例は、第3の構成例の変形例であり、1つのユニット(1つの電磁石508及び1つの磁性体ブロック507)に対して複数の磁束計測器が設けられている。このような構成例によれば、従方向成分補正部601X、601Yは、複数の磁束計測器の出力を比較することにより、磁束の不均一性、すなわち吸引力の不均一性を求めることができる。これにより、吸引力の従方向成分を直接的に求めることができ、より高精度な補正が可能となる。この構成例において、E型断面磁性体ブロック585の両端にサーチコイルを備えることにより、X方向用のユニット(電磁石508X、磁性体ブロック507X)においては、Y方向の従方向成分を計測することが可能となり、Y方向用のユニット(電磁石508Y、磁性体ブロック507Y)においては、X方向の従方向成分を計測することが可能となる。
図11等に示されているように、この実施の形態のステージ構成では、吸引力を発生するユニットはX、Y方向にしか設けられていないが、リニアモータ503(固定子504と可動子505で構成される)を用いることにより、X、Y方向以外のZ方向や回転方向に発生する成分についても同様に補償することができる。磁束計測器に関しても、1ユニットに対して更に多くの磁束計測器を設けることにより、様々な方向の従方向成分を計測することが可能となる。
以上述べたように、電磁石と磁性体を有する駆動ユニットが駆動方向以外の方向に発生する従方向成分を、該駆動ユニットと異なるリニアモータを用いて打ち消すことにより、従方向成分によるウエハ天板等のステージの振動や変位を抑えることができ、位置決め時間を短縮したり、位置決め制御特性を向上させたりすることができる。
また、補正を行わない場合は、位置決め精度の向上や位置決め時間の短縮のために、アクチュエータの作用軸と天板構造体(ステージ)の重心を厳密に一致させたり、電磁石と磁性体との間隔が均一となるように、組み立て精度を上げたりする必要があるが、補正を行うことによりこれらの制約を緩和しても、位置決め精度や位置決め時間を維持することができる。
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態として説明した従方向成分の補正と、第2の実施の形態として説明したリニアモータを用いた従方向成分の補正とを組み合わせて用いてもよい。電磁石は、リニアモータに比べると同一の電流値に対する発生力が大きいため、少ない電流及び発熱で大きな補正効果を得ることができる。その反面、電流に対して発生力が非線形なため、高精度な補正は困難である。それに対し、リニアモータは発生力こそ小さいが、線形で高精度な補正が可能である。そこで、相対的な大きな力を発生することができる電磁石と相対的に高精度な位置制御が可能なリニアモータとを併用することにより、低消費電力、低発熱で、高精度な補正が可能となる。
また、電磁石及び磁性体の端面形状は円筒形状に限られるものではなく、平面状、球面部を含む形状など様々な形状においても、間隔の不均一、吸引力作用線と重心のずれは生じうる。よって、これらの形状においても同様な補正を実施することが有効である。
以上のように、上記の各種の実施の形態によれば、電磁石と磁性体とで構成される第1アクチュエータが発生する従方向の力を、該第1アクチュエータと異なる方向に主たる吸引力を発生する電磁石と磁性体とで構成される第2アクチュエータ、又はリニアモータなどの他種のアクチュエータを用いて打ち消し又は低減することにより、該従方向の力よって生じるステージ等の可動体の変位や姿勢変動を抑えることができ、その結果、位置決め精度の向上させ、また位置決め時間を短縮することができる。また、このような構成によれば、位置決め装置の設計に対する制約を緩和することができる。
501:ウエハ天板、 502:ベース定盤、 503:微動リニアモータ、 504:微動リニアモータ可動子、 505:微動リニアモータ固定子、 506:コイル固定枠、 507:磁性体ブロック、 508:電磁石、 509:自重補償ばね、 510:長距離リニアモータ、 511:長距離リニアモータ可動子、 512:長距離リニアモータ固定子、 513:長距離リニアモータコイル、 514:コイル固定枠、 521:目標値指示部、 522:位置プロファイル生成部、 523:加速プロファイル生成部、 525:微動LM位置サーボ系、 526:演算部、 527:微動電流アンプ、 528:ウエハ天板位置計測系、 529:ウエハ天板側面ミラー、 531:吸引FF系、 532:補正部、 533:調整部、 534:電磁石用電流アンプ、 535:長距離LM位置サーボ系、 537:リニアモータ電流アンプ、 538:ステージ位置計測器、 539:Xステージ側面ミラー、 541:差分器、 542:出力座標変換部、 543:入力座標変換部、 550:Yヨーガイド、 551:Yステージ、 552:Xヨーガイド、 553:第1Yスライダ、 554:第2Yスライダ、 555:連結板、 561:Xステージ、 562:Xステージ側板、 563:Xステージ上板、 564:Xステージ下板、 571:ウエハチャック、 572:窪み、 574:磁石、 575:ヨーク、 576:側板、 578:コイル、 579:コイル固定枠、 580:磁性体支持筒、 581:自重補償ばね、 583:電磁石支持円筒、 585:E形磁性体、 586:コイル、 601:従方向成分補正部、 602:磁束検出部、 600:従方向力低減システム、 701:加算器